(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175142
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システム
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20221117BHJP
F28F 25/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F28F27/00 501D
F28F25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081333
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
(57)【要約】
【課題】冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、冷却塔の下部水槽に貯留される冷媒が当該下部水槽の水槽縁から溢れ出ることを抑制することができる冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムを提供する。
【解決手段】冷却塔付吸収式冷温水機1は、冷却塔3が、冷媒Wを貯留する下部水槽12と、下部水槽12の水位が排水水位を超えると排水を行うオーバーフロー管13と、下部水槽12の水位を測る液面計15とを有する。吸収式冷温水機2は、下部水槽12に連通し、冷媒Wを冷却塔3との間で循環させる冷媒用配管21と、開状態で冷媒用配管21を大気開放する電磁弁22とを有する。コントローラー4は、冷房運転から暖房運転ができる状態にする際に、液面計15で測定された下部水槽12の水位に基づいて、当該水位がオーバーフロー管13と水槽縁31との間に位置するように、電磁弁22の開閉を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房運転及び冷媒を用いた冷房運転の一方を行う吸収式冷温水機と、
前記吸収式冷温水機が冷房運転状態である場合、前記吸収式冷温水機で使用する前記冷媒を気化させて冷却する冷却塔と、
外部からの指示に応じて、前記吸収式冷温水機の運転状態を前記冷房運転または前記暖房運転に切り替える制御部と、を備え、
前記冷却塔は、
前記吸収式冷温水機から排出される前記冷媒を一時的に貯留する上部水槽と、
前記上部水槽から滴下された前記冷媒を外気と接触させることで気化させて冷却する充填層と、
前記充填層から滴下された前記冷媒を貯留する下部水槽と、
前記下部水槽に設けられ、当該下部水槽の水位が水槽縁より下側に設定されている排水水位を超えると当該排水水位まで排水を行うオーバーフロー管と、
前記下部水槽に設けられ、当該下部水槽の水位を測る液面計と、を有し、
前記吸収式冷温水機は、
一方の端部が前記下部水槽に連通し、他方の端部が前記上部水槽に連通し、給水ポンプの駆動により前記冷媒を前記冷却塔との間で循環させる冷媒用配管と、
前記冷媒用配管に設けられ、開状態で前記冷媒用配管を大気開放する電磁弁と、を有し、
前記制御部は、
冷房運転から暖房運転に切り替える指示に応じて冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、前記液面計により測定された前記下部水槽の水位に基づいて、前記下部水槽の水位が前記オーバーフロー管と前記水槽縁との間に位置するように、前記電磁弁の開閉を制御する、
ことを特徴とする冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記液面計により測定された前記下部水槽の水位に応じて前記電磁弁の開度を制御する開度制御を行う、
請求項1に記載の冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電磁弁を全開にした後に前記開度制御を行う、
請求項2に記載の冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収式冷温水機は、例えば、蒸発、吸収、再生、及び凝縮の4つの作用により、冷房運転時に必要な冷水、暖房運転時に必要な温水を生成するものである。このような吸収式冷温水機には、例えば、冷却塔と一体的に構成された冷却塔付吸収式冷温水機がある。
【0003】
吸収式冷温水機は、冷媒(例えば冷却水)が循環する冷媒用配管を介して冷却塔に接続され、冷却塔で冷却された冷媒を利用して冷水を生成する。冷媒用配管は、一方の端部が冷却塔の下部に設けられた下部水槽に連通し、他方の端部が冷却塔の上部に設けられた上部水槽に連通し、給水ポンプの駆動により吸収式冷温水機と冷却塔との間で冷媒を循環させる。冷却塔は、吸収式冷温水機が冷房運転状態である場合、吸収式冷温水機で使用された冷媒を気化させて冷却するものである。冷却塔は、具体的には、吸収式冷温水機から排出される冷媒を上部水槽で一時的に貯留し、上部水槽から充填層に滴下された冷媒を外気と接触させることで気化させて冷却し、充填層から滴下された冷媒を下部水槽で貯留する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような冷却塔付吸収式冷温水機では、冷房運転状態から暖房運転ができる状態にするために、冷媒用配管内に残留する冷媒を空にする必要がある。そこで、給水ポンプを停止すると共に、冷温水機側に設置された空気取入弁を開状態にして冷媒用配管を大気開放すると、冷媒用配管内に残留する冷媒が下部水槽に流入する。下部水槽には、水槽縁から冷媒が溢れ出ないように、一定の水位以上で排水を行うオーバーフロー管が設けられている。冷媒用配管内に残留する冷媒が下部水槽に一気に流入すると、排水量に対して流入量が多く、水位が急激に上昇して水槽縁から冷媒が溢れる場合がある。
【0006】
本発明は、冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、冷却塔の下部水槽に貯留される冷媒が当該下部水槽の水槽縁から溢れ出ることを抑制することができる冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムは、暖房運転及び冷媒を用いた冷房運転の一方を行う吸収式冷温水機と、前記吸収式冷温水機が冷房運転状態である場合、前記吸収式冷温水機で使用する前記冷媒を気化させて冷却する冷却塔と、外部からの指示に応じて、前記吸収式冷温水機の運転状態を前記冷房運転または前記暖房運転に切り替える制御部と、を備え、前記冷却塔は、前記吸収式冷温水機から排出される前記冷媒を一時的に貯留する上部水槽と、前記上部水槽から滴下された前記冷媒を外気と接触させることで気化させて冷却する充填層と、前記充填層から滴下された前記冷媒を貯留する下部水槽と、前記下部水槽に設けられ、当該下部水槽の水位が水槽縁より下側に設定されている排水水位を超えると当該排水水位まで排水を行うオーバーフロー管と、前記下部水槽に設けられ、当該下部水槽の水位を測る液面計と、を有し、前記吸収式冷温水機は、一方の端部が前記下部水槽に連通し、他方の端部が前記上部水槽に連通し、給水ポンプの駆動により前記冷媒を前記冷却塔との間で循環させる冷媒用配管と、前記冷媒用配管に設けられ、開状態で前記冷媒用配管を大気開放する電磁弁と、を有し、前記制御部は、冷房運転から暖房運転に切り替える指示に応じて冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、前記液面計により測定された前記下部水槽の水位に基づいて、前記下部水槽の水位が前記オーバーフロー管と前記水槽縁との間に位置するように、前記電磁弁の開閉を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムによれば、冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、冷却塔の下部水槽に貯留される冷媒が当該下部水槽の水槽縁から溢れ出ることを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機を冷房運転から暖房運転に切り替えたときの状態を示す模式図である。
【
図3】
図3(A)は、実施形態に係る冷却塔下部水槽の概略構成を示す模式図、
図3(B)は、実施形態に係る冷却塔下部水槽の水位変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムによる水位調整時の電磁弁開度と水位との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコントローラーにより実行される下部水槽の水位調整処理を示すフローチャート図である。
【
図6】
図6は、
図5のステップS2における水位に応じた電磁弁の開度制御処理を示すフローチャート図である。
【
図7】
図7(A)は、実施形態の変形例に係る冷却塔下部水槽の概略構成を示す模式図、
図7(B)は、変形例に係る冷却塔下部水槽の水位変化の一例を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、従来の冷却塔下部水槽の概略構成を示す模式図、
図8(B)は、従来の冷却塔下部水槽の水位変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムの実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。すなわち、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
[実施形態]
本実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムを
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムの概略構成を示す模式図である。
図2は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機を冷房運転から暖房運転に切り替えたときの状態を示す模式図である。
図3(A)は、実施形態に係る冷却塔下部水槽の概略構成を示す模式図、
図3(B)は、実施形態に係る冷却塔下部水槽の水位変化の一例を示す図である。
図4は、実施形態に係る冷却塔付吸収式冷温水機の水位調整システムによる水位調整時の電磁弁開度と水位との関係を示す図である。
図5は、実施形態に係るコントローラーにより実行される下部水槽の水位調整処理を示すフローチャート図である。
図6は、
図5のステップS2における水位に応じた電磁弁の開度制御処理を示すフローチャート図である。なお、
図1は、冷却塔付吸収式冷温水機の冷房運転状態を示す。
図2は、冷却塔付吸収式冷温水機の運転状態を冷房運転から暖房運転に切り替えた後の状態を示す。
【0012】
冷却塔付吸収式冷温水機1は、冷却塔と一体的に構成され、例えば、ビルなどの建物や施設において冷暖房の空調を行うものである。本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1は、
図1及び
図2に示すように、吸収式冷温水機2と、冷却塔3と、コントローラー4とを含んで構成される。
【0013】
吸収式冷温水機2は、蒸発、吸収、再生、及び凝縮の4つの作用により、冷房運転時に必要な冷水、暖房運転時に必要な温水を生成するものである。生成された冷水は、吸収式冷温水機2と不図示の室内機との間で循環して冷房に利用され、温水は暖房に利用される。本実施形態における吸収式冷温水機2は、暖房運転及び冷媒Wを用いた冷房運転の一方を行う。冷媒Wは、例えば冷却水である。吸収式冷温水機2は、例えば、冷媒用配管21と、電磁弁22と、給水ポンプ23と、大気開放用配管24とを備える。なお、吸収式冷温水機2は、上記以外に、蒸発器、吸収器、再生器、及び凝縮器等を有するが、これらの詳細については省略する。
【0014】
冷媒用配管21は、冷媒Wを吸収式冷温水機2と冷却塔3との間で循環させる配管である。冷媒用配管21は、一方の端部が、冷却塔3内の下部水槽12に連通し、他方の端部が冷却塔3内の上部水槽10に連通している。冷媒用配管21の途中には、給水ポンプ23が配置されている。冷媒用配管21は、給水ポンプ23の駆動により冷媒Wが内部を流れる。冷媒Wは、冷却塔3内の下部水槽12から冷媒用配管21に流れ込み、給水ポンプ23により冷媒用配管21内を圧送され、冷媒用配管21上の電磁弁22を介して冷却塔3内の上部水槽10に流れ込む。
【0015】
電磁弁22は、コントローラー4に電気的に接続され、当該コントローラー4からの制御信号に応じて開閉する。電磁弁22は、冷媒用配管21に設けられ、開状態で冷媒用配管21を大気開放する、いわゆる空気取入弁である。電磁弁22は、一方向に冷媒用配管21が接続され、一方向に大気開放用配管24が接続されている。電磁弁22は、閉状態において、大気開放用配管24側の弁を閉じ、かつ二方向の冷媒用配管21を連通させる。また、電磁弁22は、開状態において、大気開放用配管24側の弁を開き、かつ大気開放用配管24と二方向の冷媒用配管21とを連通させる。
【0016】
電磁弁22は、コントローラー4の制御により、冷房運転時には閉状態が維持される。また、電磁弁22は、コントローラー4の制御により、冷房運転状態から暖房運転ができる状態に切り替える際には、全開、全閉をそれぞれ維持するだけでなく、一定の開度を維持することもできる。また、電磁弁22は、コントローラー4の制御により、一定の開度から全閉にすることも、全開にすることも可能である。電磁弁22を開閉する速度は、原則として一定速であるが、コントローラー4の制御により、可変させることも可能である。
【0017】
給水ポンプ23は、冷媒用配管21に設けられ、冷媒用配管21内の冷媒Wを循環させるものである。給水ポンプ23は、吸収式冷温水機2と冷却塔3との間の冷媒用配管21に設けられている。給水ポンプ23は、コントローラー4に電気的に接続され、例えば、コントローラー4からの駆動信号に応じて駆動し、駆動停止信号に応じて駆動を停止する。
【0018】
本実施形態における吸収式冷温水機2は、暖房を行うときには冷媒用配管21内の冷媒Wを、電磁弁22を開状態にすることにより抜く。一方、吸収式冷温水機2は、冷房を行うときには給水ポンプ23を駆動し、冷却塔3の下部水槽12の冷媒Wを冷媒用配管21へ圧送し、当該冷媒用配管21内に冷媒Wを充填させる。
【0019】
冷却塔3は、例えば、吸収式冷温水機2に隣接して配置されている。冷却塔3は、気化熱を利用して冷媒Wを冷やす機能を有し、吸収式冷温水機の付帯機器として使用される。冷却塔3は、吸収式冷温水機2が冷房運転状態である場合、吸収式冷温水機2で使用する冷媒Wを気化させて冷却する。冷却塔3は、上部水槽10と、充填層11と、下部水槽12と、オーバーフロー管13と、液面計15とを有する。
【0020】
上部水槽10は、吸収式冷温水機2から排出される冷媒Wを一時的に貯留する。上部水槽10は、吸収式冷温水機2から延在する冷媒用配管21の一方の開口と連通し、給水ポンプ23の駆動により冷媒用配管21を通って圧送された冷媒Wを一時的に貯留する。上部水槽10は、貯留している冷媒Wを充填層11に散布する。散布する方法は、例えば、上部水槽10から冷媒Wを散水装置(不図示)に送って当該散水装置により充填層11に散水してもよいし、他の方法であってもよい。上部水槽10は、電磁弁22が開状態となり、かつ給水ポンプ23が駆動すると、冷媒用配管21を介して冷媒Wが流れ込み、冷媒Wを貯留する。一方、上部水槽10は、給水ポンプ23が駆動停止し、かつ電磁弁22が開状態になると、貯留していた冷媒Wが全て充填層11に落下して空の状態になる。
【0021】
充填層11は、上部水槽10から滴下された冷媒Wを外気と接触させることで気化させて冷却するものである。充填層11は、例えば、送風機16によって送風された空気が冷媒Wに効率よく接触するように、散水装置によって散水された冷媒Wを一時的に滞留させ、冷媒Wと空気との接触面積を増やすものである。充填層11は、例えば、多孔質の充填材や、櫛状の充填材で構成される。
【0022】
下部水槽12は、充填層11から滴下された冷媒Wを貯留するものである。下部水槽12は、吸収式冷温水機2から延在する冷媒用配管21の一方の開口端と連通し、給水ポンプ23により冷媒用配管21を通って圧送された冷媒Wを貯留する。下部水槽12は、給水ポンプ23が駆動停止し、かつ電磁弁22が開状態になると、上部水槽10に貯留していた冷媒Wが全て充填層11を介して落下する。また、上部水槽10は、電磁弁22が開状態となり、かつ給水ポンプ23が駆動すると、冷媒用配管21を介して冷媒Wが流れ込み、冷媒Wを貯留する。下部水槽12は、
図3の(A)に示すように、鉛直方向上側に水槽縁31を有し、冷媒Wの水位が水槽縁31を超えると、当該水槽縁31から冷却塔3の外部に溢れ出る。なお、本実施形態において、「下部水槽12の水位」とは、「下部水槽12の冷媒Wの水位」と同義である。
【0023】
オーバーフロー管13は、
図3の(A)に示すように、下部水槽12に設けられ、当該下部水槽12の水位が水槽縁31より下側に設定されている排水水位Loを超えると当該排水水位Loまで排水を行うものである。排水水位Loは、水槽縁31からオーバーフロー管13の開口端13aまでの高さに設定される。つまり、本実施形態では、下部水槽12の水位の基準は、水槽縁31における冷媒Wの水面となる。冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、冷媒用配管21を流れる冷媒Wを電磁弁22を開放することにより、冷却塔3の下部水槽12に戻すため、下部水槽12の運転水位Lsを超えることになり、オーバーフロー管13の開口端13aから排水される。ここで運転水位Lsは、例えば、冷房運転状態における下部水槽12の水位であり、オーバーフロー管13の開口端13aより下側に位置するように設定される。冷房運転状態において、運転水位Lsが排水水位Loを超えると、オーバーフロー管13から冷媒Wが排水されてしまうので、運転水位Lsは、排水水位Loを超えない位置に設定される。
【0024】
液面計15は、下部水槽12に設けられ、水槽縁31の水面を基準として、当該下部水槽12の水位を測るものである。液面計15は、コントローラー4に電気的に接続されており、下部水槽12の水位情報をコントローラー4に送信する。
【0025】
コントローラー4は、制御部の一例であり、吸収式冷温水機2及び冷却塔3の各部を統括的に制御するものである。コントローラー4は、例えば周知のマイクロコンピューターを主体とする電子回路を含んで構成される。コントローラー4は、例えば、外部からの指示に応じて、吸収式冷温水機の運転状態を冷房運転または暖房運転に切り替える。外部からの指示とは、例えば、冷却塔付吸収式冷温水機1を管理する管理者によるコントローラー4への操作や、外部の端末からコントローラー4に送信される制御信号等が含まれる。本実施形態のコントローラー4は、例えば、液面計15、電磁弁22、及び給水ポンプ23に電気的に接続されている。コントローラー4は、給水ポンプ23に駆動信号または駆動停止信号を送信して当該給水ポンプを駆動制御する。
【0026】
コントローラー4は、冷房運転から暖房運転に切り替える指示に応じて冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、液面計15により測定された下部水槽12の水位に基づいて、電磁弁22の開閉を制御する。例えば、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が予め設定された水位になったとき、電磁弁22を全開状態にしたり、全閉状態にしたりすることができる。この場合、コントローラー4は、電磁弁22の全開状態を維持することが可能であり、全閉状態を維持することも可能である。また、コントローラー4は、
図3の(B)に示すように、液面計15により測定された下部水槽12の水位が予め設定された水位になったとき、電磁弁22の開度を制御し、下部水槽12の水位が水槽縁31を超えないようにすることができる。この場合、下部水槽12の最大水位Lmaxが水槽縁31を超えないようにすることができる。また、コントローラー4は、液面計15から連続して受信した複数の水位情報を比較し、同じ水位であっても当該水位が上昇しているときの水位か、水位が下降しているときの水位かを判定することができる。また、コントローラー4は、例えば、
図4のA7に示すように、下部水槽12の水位変化に応じて、電磁弁22を、予め設定された開度0%と開度100%との間で制御することができる。また、コントローラー4は、電磁弁22を全開にした後に、液面計15により測定された下部水槽12の水位に応じて電磁弁22の開度を制御する開度制御を行う。
【0027】
次に、冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムにおける水位制御について
図4~
図6を参照して説明する。
図5及び
図6に示す処理は、コントローラー4により実行されるものである。
【0028】
図5において、ステップS1では、コントローラー4は、冷暖切り替え準備を行う。具体的には、コントローラー4は、冷房運転から暖房運転に切り替える指示に応じて冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする。コントローラー4は、給水ポンプ23の駆動を停止すると同時に、電磁弁22を全閉から全開に切り替えて、ステップS2へ進む。給水ポンプ23が駆動を停止し、電磁弁22が全開に切り替わると、下部水槽12には、上部水槽10に貯留していた全ての冷媒Wが充填層11を経由して落下すると共に、冷媒用配管21に残留していた冷媒Wが給水ポンプ23を経由して流れ込む。下部水槽12への冷媒Wの流入により水位が上昇するが、冷媒Wの水位がオーバーフロー管13の排水水位Loを超えると、オーバーフロー管13を通って冷媒Wが排水される。オーバーフロー管13による排水量に対して下部水槽12への流入量が多くなると、下部水槽12の水位が排水水位Loを超えて上昇していく(
図4のA1)。
【0029】
従来の下部水槽120では、例えば、
図8の(A)及び
図8の(B)に示すように、冷暖切替時に運転水位Lsから水位が急激に上昇するため、冷媒Wが水槽縁31から溢れないように、水槽縁31の高さを冷暖切替時の最大水位Lmaxより高く設定したり、オーバーフロー管13の排水水位Loと水槽縁31との高低差を大きくしたりする必要がある。冷却塔3では、循環する冷媒Wを空気に触れて気化させていることから、冷媒Wを定期的に補充する必要があるが、周囲環境の変化により冷媒Wが減る量も異なる。冷媒Wの減った量に対して補充する量が多い場合、冷却塔3を循環する冷媒Wの総量が増加し、冷暖切替時に冷媒Wが水槽縁31から溢れ出す可能性がある。
【0030】
ステップS2では、コントローラー4は、下部水槽12の水位に応じた電磁弁22の開度制御処理を行う。ステップS2の開度制御処理の詳細を
図6に示す。
【0031】
図6において、ステップS11では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が、排水水位Loを超えて水槽縁31から-30mmの位置に達したか否かを判定する。下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達した場合、ステップS12へ進む。一方、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達していない場合は、ステップS11を繰り返す。
【0032】
ステップS12では、コントローラー4は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達したので、電磁弁22を一定速で閉じていく。つまり、電磁弁22は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達するまでは全開状態を維持し、水槽縁31から-30mmの位置に達すると、徐々に閉じていく(
図4のA2)。コントローラー4の制御により電磁弁22を全開から全閉に切り替えたとして、直ちに冷媒用配管21に残っている冷媒Wの下部水槽12への流入が止まらないことから、冷媒Wの水位が最大水位Lmaxに達する前に、電磁弁22を全開から全閉に切り替える。冷媒Wの水位が最大水位Lmaxの状態となっても、水槽縁31の高さは最大水位Lmaxよりも上側に設定されている。
【0033】
ステップS13では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が水槽縁31から-10mmの位置に達したか否かを判定する。下部水槽12の水位が水槽縁31から-10mmの位置に達した場合、ステップS14へ進む。一方、下部水槽12の水位が水槽縁31から-10mmの位置に達していない場合は、ステップS13を繰り返す。
【0034】
ステップS14では、コントローラー4は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-10mmの位置に達したので、電磁弁22を全閉にする(
図4のA3)。電磁弁22を全閉にしても下部水槽12への冷媒Wの流入は直ちに止まらないので、しばらくオーバーシュートして下部水槽12の水位は上昇する(
図4のA4)。本実施形態では、電磁弁22を全閉にしたとしても水槽縁31から溢れない水位を水槽縁31から-10mmの位置とし、電磁弁22の全閉タイミングを水槽縁31との高低差-10mmとしたが、これに限定されるものではない。
【0035】
ステップS15では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達したか否かを判定する。下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達した場合、ステップS16へ進む。一方、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達していない場合は、ステップS15を繰り返す。
【0036】
ステップS16では、コントローラー4は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達したので、電磁弁22を一定速で開けていく(
図4のA5)。つまり、電磁弁22は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-30mmの位置に達するまで全閉となる。
【0037】
ステップS17では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達したか否かを判定する。下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達した場合、ステップS18へ進む。一方、下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達していない場合は、ステップS17を繰り返す。
【0038】
ステップS18では、コントローラー4は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達したので、電磁弁22を一定速で開けていき全開にする(
図4のA6)。電磁弁22を全開にしても下部水槽12への冷媒Wの流入は直ちに始まらないので、下部水槽12の水位は下降する(
図4のA6)。
【0039】
ステップS19では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位に応じて電磁弁22の開度の比例制御を行う(
図4のA7)。コントローラー4は、上述したように、下部水槽12の水位変化に応じて、電磁弁22を、予め設定された開度50%を基準として、開度0%と開度100%との間で制御する。例えば、コントローラー4は、水槽縁31から-10mmの位置を電磁弁22の開度100%、水槽縁31から-50mmの位置を電磁弁22の開度0%、水槽縁31から-30mmの位置を電磁弁22の開度50%と設定し、水位が水槽縁31から-50mmの位置に達するごとに、水位の下降時には電磁弁22の開度を上げていき、水位の上昇時には電磁弁22の開度を下げていく。
【0040】
ステップS20では、コントローラー4は、液面計15により測定された下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達したか否かを判定する。下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達した場合、ステップS21へ進む。一方、下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達していない場合は、ステップS20を繰り返す。
【0041】
ステップS21では、コントローラー4は、下部水槽12の水位が水槽縁31から-50mmの位置に達したので、電磁弁22を全開して(
図4のA8)、リターンする。電磁弁22の開度が100%(全開)の状態で、冷暖切り替え完了となる。コントローラー4は、例えば、液面計15により測定された下部水槽12の水位がオーバーフロー管13の排水水位まで低下したと判定すると、本処理を終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムは、冷却塔3が、冷媒Wを貯留する下部水槽12と、下部水槽12の水位が排水水位を超えると排水を行うオーバーフロー管13と、下部水槽12の水位を測る液面計15とを有する。吸収式冷温水機2は、下部水槽12に連通し、冷媒Wを冷却塔3との間で循環させる冷媒用配管21と、開状態で冷媒用配管21を大気開放する電磁弁22とを有する。コントローラー4は、冷房運転から暖房運転ができる状態にする際に、液面計15で測定された下部水槽12の水位に基づいて、当該水位がオーバーフロー管13と水槽縁31との間に位置するように、電磁弁22の開閉を制御する。
【0043】
上記構成により、冷媒用配管21に残留する冷媒Wを一気に下部水槽12に流入させることなく、冷房運転状態から暖房運転ができる状態にすることができ、冷媒Wの流入により下部水槽12の水位が急激に上昇しても、下部水槽12の水槽縁31から冷媒Wが溢れないようにすることができる。また、液面計15で測定された下部水槽12の水位に基づいて電磁弁22の開閉を制御することにより、下部水槽12への冷媒Wの流入を抑制することが可能となり、例えば、
図3の(B)に示すように、冷暖切替時の最大水位Lmaxを排水水位Loの近くまで引き下げることができ、また、排水水位Loと水槽縁31との高低差を小さくすることが可能となる。
【0044】
また、従来の下部水槽120では、冷暖切替から30分後に暖房へ切り替える制御になっているが、排水に10分程度しかかかっておらず、30分が経過するまでは次の制御へ移行しないため、時間的な余裕がある。本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムによれば、液面計15で測定された下部水槽12の水位に基づいて電磁弁22の開閉を制御することにより、下部水槽12への冷媒Wの流入を抑制することが可能となるが、30分以内には排水が完了することから、従来のものと同様に、時間的な余裕を十分に確保することができる。
【0045】
また、本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムは、コントローラー4が、液面計15により測定された下部水槽12の水位に応じて電磁弁22の開度を制御する開度制御を行う。これにより、冷媒用配管21に残留する冷媒Wを徐々に下部水槽12に流入させることができ、従来のように、下部水槽12の水位が一気に上昇することを抑制することができる。その結果、下部水槽12の運転水位Lsから最大水位Lmaxまでの振れ幅を小さくすることができ、オーバーフロー管13の排水水位Loを従来よりも高くして水槽縁31の高さまで近づけることができる。オーバーフロー管13の排水水位Loを従来よりも高くして水槽縁31の高さまで近づけると、水位が上昇してもオーバーフロー管13から容易に排水されなくなるので、冷媒Wの排水量を削減して節水を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムは、コントローラー4が、電磁弁22を全開にした後に開度制御を行う。これにより、冷房運転から暖房運転に切り替えられた直後に、冷媒用配管21に残留する冷媒Wを短時間で下部水槽12側には排出することができ、冷房運転状態から暖房運転ができる状態にする際に、冷媒用配管21に残留する冷媒Wを短時間で空の状態に近づけることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、
図3の(A)に示すように、オーバーフロー管13の排水水位Loを、運転水位Lsに近い位置に設定していたが、これに限定されるものではない。本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムによれば、
図7の(B)に示すように、オーバーフロー管13の排水水位Loを、運転水位Lsから離間させ、かつ水槽縁31に近い位置に設定する構成であってもよい。本実施形態の冷却塔付吸収式冷温水機1の水位調整システムによれば、液面計15で測定された下部水槽12の水位に基づいて電磁弁22の開閉を制御することにより、下部水槽12の水位の急激な上昇を抑えることができるので、オーバーフロー管13の排水水位Loを、従来の位置よりも高くすることができる。その結果、運転水位Lsと排水水位Loとの高低差を大きくすることで、冷暖切替時に運転水位Lsから水位が急激に上昇しても排水水位Loに容易に達することなく、オーバーフロー管13からの排水量を抑制しかつ低減することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、コントローラー4は、下部水槽の水位が水槽縁31から-30mmの位置で電磁弁22の開閉を切り替えているが、電磁弁22の開閉切り替えタイミングを水槽縁31から-30mmに限定するものではない。また、コントローラー4は、水槽縁31から-10mmの位置を電磁弁22の開度100%、水槽縁31から-50mmの位置を電磁弁22の開度0%、水槽縁31から-30mmの位置を電磁弁22の開度50%と設定し、水位が水槽縁31から-50mmの位置に達するごとに、水位の下降時には電磁弁22の開度を上げていき、水位の上昇時には電磁弁22の開度を下げていくが、これらに限定されるものではない。例えば、オーバーフロー管13の排水量や下部水槽12の容量等の仕様に基づいて、基準となる電磁弁22の開度を変更したり、水位の変動に応じた電磁弁22の開度度合いを変更したりしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 冷却塔付吸収式冷温水機
2 吸収式冷温水機
3 冷却塔
4 コントローラー
10 上部水槽
11 充填層
12 下部水槽
13 オーバーフロー管
13a 開口端
15 液面計
21 冷媒用配管
22 電磁弁
23 給水ポンプ
24 大気開放用配管
31 水槽縁
W 冷媒
Lmax 最大水位
Lo 排水水位
Ls 運転水位