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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175163
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】複層塗膜および複層塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20221117BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221117BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221117BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221117BHJP
【FI】
B32B27/20 A
C09D7/61
C09D201/00
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
B05D7/24 303C
B05D5/06 101A
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081371
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 千聡
(72)【発明者】
【氏名】菊地 由佳
(72)【発明者】
【氏名】上原 多麻美
(72)【発明者】
【氏名】迫山 和哲
(72)【発明者】
【氏名】北川 さくら
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA02
4D075AE03
4D075AE06
4D075BB16X
4D075BB25Z
4D075BB26Z
4D075BB28Z
4D075BB56Y
4D075BB60Z
4D075BB75X
4D075BB89X
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB13
4D075DA06
4D075DB02
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA43
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB35
4D075EC07
4D075EC10
4D075EC11
4D075EC23
4D075EC30
4D075EC54
4F100AA04D
4F100AA25D
4F100AB03D
4F100AB10A
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100AK00C
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AR00C
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100DE02A
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH61A
4F100EH61B
4F100EH61C
4F100EJ08A
4F100EJ08B
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100EJ68D
4F100EJ86A
4F100EJ86B
4F100EJ86C
4F100GB32
4F100JL10B
4F100JN01C
4F100JN24A
4F100YY00A
4F100YY00B
4J038CG041
4J038CG051
4J038HA066
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA10
4J038NA01
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】 明度および彩度が低い一方で輝度が認識される、第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜から構成される複層塗膜を提供すること。
【解決手段】 第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜をこの順に有する複層塗膜であって、第1塗膜は第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含む第1塗料組成物の硬化塗膜であり、第2塗膜は第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含む第2塗料組成物の硬化塗膜であり、第1塗膜中に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含み、第2塗膜中に含まれる着色顔料の含有量は塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であり、記複層塗膜は、入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、複層塗膜。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜をこの順に有する複層塗膜であって、
前記第1塗膜は、第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含む第1塗料組成物の硬化塗膜であり、
前記第2塗膜は、第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含む第2塗料組成物の硬化塗膜であり、
前記第1塗膜中に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含み、
前記第2塗膜中に含まれる着色顔料の含有量は、塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であり、
前記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、
入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、
複層塗膜。
【請求項2】
前記第1塗膜の膜厚は、3~13μmの範囲内であり、
前記第1塗膜に含まれる鱗片状アルミニウム顔料の含有量は、塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して3~13質量部の範囲内である、
請求項1に記載の複層塗膜。
【請求項3】
前記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝強度Si(45°)値が1以上17以下であり入射角45°受光角45°におけるL*(45°)値が2以上7以下である、
請求項1または2に記載の複層塗膜。
【請求項4】
被塗物に、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗料組成物を順次塗装して、複層塗膜を形成する方法であって、
前記第1塗料組成物は、第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含み、
前記第2塗料組成物は、第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含み、
前記第1塗料組成物中に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含み、
前記第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の含有量は、第2塗料組成物中に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であり、
前記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、
入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、
複層塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記複層塗膜の形成は、被塗物に、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗装して、複層塗膜を形成する方法である、
請求項4に記載の複層塗膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1~3いずれかに記載の複層塗膜を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜および複層塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体などの被塗物の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を順次形成して、被塗物を保護すると同時に美しい外観および優れた意匠を付与している。このような複数の塗膜の形成方法としては、導電性に優れた被塗物上に電着塗膜などの下塗り塗膜を形成し、その上に、必要に応じた中塗り塗膜、そして上塗り塗膜を順次形成する方法が一般的である。これらの塗膜において、特に塗膜の外観および意匠を大きく左右するのは、ベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜である。特に自動車において、車体上に形成されるベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜の外観および意匠は、極めて重要である。
【0003】
自動車に形成された塗膜の外観は、その自動車の高級感などといった外観価値に大きく関与する。また自動車を購入する顧客は、意匠性に優れた塗膜を有する自動車を求める傾向にある。消費者の好みの多様化および独自性志向により、より独特な意匠が求められている。
【0004】
例えば特開2016-107427号公報(特許文献1)には、光輝性層の上に黒色顔料が分散した透光性を有する着色層が積層されてなる積層塗膜であって、上記着色層の黒色顔料は、200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことを特徴とする積層塗膜が記載される。そして特許文献1の複層塗膜は、鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現することが記載される。
【0005】
特開2007-106925号公報(特許文献2)には、樹脂成分及び着色成分を含むメタリック塗料組成物であって、着色成分として、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料及び透明性着色顔料を含むことを特徴とするメタリック塗料組成物が記載される。このメタリック塗料組成物によって形成される塗膜は、低明度且つ高彩度の、深み感及び緻密感に優れた塗色の塗膜であることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-107427号公報
【特許文献2】特開2007-106925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の発明により、鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現することができると記載される。一方で特許文献1の塗膜は、特許文献1に記載される通り、グレー色として認識される塗膜である。また特許文献2の発明により、低明度であり、深み感及び緻密感に優れた塗色の塗膜を形成することができると記載される。一方で特許文献2の塗膜は、高彩度である塗膜である。
【0008】
上記特許文献に対して、本件発明は、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低い一方で、輝度が認識される、第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜の3層から構成される複層塗膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜をこの順に有する複層塗膜であって、
上記第1塗膜は、第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含む第1塗料組成物の硬化塗膜であり、
上記第2塗膜は、第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含む第2塗料組成物の硬化塗膜であり、
上記第1塗膜中に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含み、
上記第2塗膜中に含まれる着色顔料の含有量は、塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であり、
上記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、
入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、
複層塗膜。
[2]
上記第1塗膜の膜厚は、3~13μmの範囲内であり、
上記第1塗膜に含まれる鱗片状アルミニウム顔料の含有量は、塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して3~13質量部の範囲内である、
[1]に記載の複層塗膜。
[3]
上記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝強度Si(45°)値が1以上17以下であり入射角45°受光角45°におけるL*(45°)値が2以上7以下である、
[1]または[2]に記載の複層塗膜。
[4]
被塗物に、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗料組成物を順次塗装して、複層塗膜を形成する方法であって、
上記第1塗料組成物は、第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含み、
上記第2塗料組成物は、第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含み、
上記第1塗料組成物中に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含み、
上記第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の含有量は、第2塗料組成物中に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であり、
上記複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、
入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、
複層塗膜の形成方法。
[5]
上記複層塗膜の形成は、被塗物に、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗装して、複層塗膜を形成する方法である、
[4]に記載の複層塗膜の形成方法。
[6]
[1]~[3]いずれかに記載の複層塗膜を有する物品。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低い一方で、輝度が認識される複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本件発明者らは、意匠性に優れる塗色の塗膜の開発を目的として研究を行ってきた。この中で、一般に高級感があると認識される黒色の範囲で、特異的な外観を有する塗膜の開発を目的として、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低い一方で輝度が認識される塗膜を形成する手法を検討してきた。
【0012】
塗膜に輝度を持たせる手法の1つとして、例えばアルミニウム顔料などの光輝性顔料を塗膜に加える手法がある。しかしながら、塗膜に単にアルミニウム顔料を加える場合は、アルミニウム顔料自体の色味(銀色)が加わることにより明度が高くなってしまう。このような塗膜は、いわゆるメタリック調といわれるグレー色の塗膜となる。一方で、例えば光輝性顔料としてマイカを塗膜に加える場合は、塗膜全体に白濁のような濁りが生じてしまい、黒色感が低下してしまう。このように、黒色塗膜において輝度が視認できる塗膜を形成することは困難であった。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として研究を行った。そして、特定の第1塗膜および第2塗膜を組み合わせることにより、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低い一方で輝度が認識される複層塗膜を提供することができることを、実験により見出し、本件発明を完成するに至った。以下、第1塗膜を形成する第1塗料組成物、第2塗膜を形成する第2塗料組成物について順次記載する。
【0014】
第1塗料組成物
本開示における第1塗膜は、第1塗料組成物の硬化塗膜である。上記第1塗料組成物は、第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含む塗料組成物である。
【0015】
上記第1塗料組成物は第1塗膜形成樹脂を含む。第1塗膜形成樹脂として例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。上記第1塗料組成物は、水性塗料組成物であってもよく、溶剤型塗料組成物であってもよい。
【0016】
上記第1塗料組成物が水性塗料組成物である場合は、第1塗膜形成樹脂として例えば、アクリル樹脂エマルション(アクリルシリコーン樹脂エマルション、アクリルウレタン樹脂エマルションなども含む)、アクリル樹脂ディスパージョン(アクリルシリコーン樹脂ディスパージョン、アクリルウレタン樹脂ディスパージョンなども含む)、水溶性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂ディスパージョン、ポリウレタン樹脂ディスパージョン、エポキシ樹脂ディスパージョンなどを含むのが好ましい。これらの樹脂は1種のみを単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。上記樹脂は、当業者において通常用いられる方法により調製することができる。上記樹脂として市販品を用いてもよい。
【0017】
好ましい態様として例えば、アクリル樹脂エマルションおよび水溶性アクリル樹脂のうちいずれかまたは両方を用いる態様、アクリル樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂およびポリエステル樹脂ディスパージョンを用いる態様、アクリル樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂ディスパージョンを用いる態様などが挙げられる。
【0018】
アクリル樹脂エマルションは、例えば、α,β-エチレン性不飽和モノマー混合物の乳化重合によって調製することができる。アクリル樹脂エマルションの調製に用いられる好ましいα,β-エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーおよび水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニルなどが挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの両方を意味するものとする。
【0020】
酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α-ハイドロ-ω-((1-オキソ-2-プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1-オキソ-1,6-ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3-ビニルサリチル酸、3-ビニルアセチルサリチル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-ヒドロキシスチレン、2,4-ジヒドロキシ-4’-ビニルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0021】
水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーとして、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタリルアルコール、および、これらとε-カプロラクトンとの付加物などが挙げられる。これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、および、これらとε-カプロラクトンとの付加物である。
【0022】
上記α,β-エチレン性不飽和モノマー混合物はさらに、その他のα,β-エチレン性不飽和モノマーを用いてもよい。その他のα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、重合性アミド化合物、重合性芳香族化合物、重合性ニトリル、重合性アルキレンオキシド化合物、多官能ビニル化合物、重合性アミン化合物、α-オレフィン、ジエン、重合性カルボニル化合物、重合性アルコキシシリル化合物、重合性のその他の化合物を挙げることができる。上記α,β-エチレン性不飽和モノマーは目的に併せて、必要に応じて種々選択することができる。
【0023】
アクリル樹脂エマルションは、上記α,β-エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して調製することができる。乳化重合は、特に限定されず、通常の方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、水、または必要に応じてアルコール、エーテル(例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなど)などのような有機溶媒を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、上記α,β-エチレン性不飽和モノマー混合物および重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化したα,β-エチレン性不飽和モノマー混合物を同様に滴下してもよい。
【0024】
上記重合開始剤、乳化剤は、当業者に通常使用されているものを用いることができる。必要に応じて、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタンおよびα-メチルスチレンダイマーなどのような連鎖移動剤を用いて分子量を調節してもよい。反応温度、反応時間などは、当業者に通常用いられる範囲で適宜選択することができる。反応により得られたアクリル樹脂エマルションは、必要に応じて塩基で中和してもよい。
【0025】
上記アクリル樹脂エマルションは、数平均分子量の下限が3000であることが好ましい。また、上記アクリル樹脂エマルションは、水酸基価(固形分水酸基価)が下限20mgKOH/g上限180mgKOH/gを有することが好ましく、酸価(固形分酸基価)が下限1mgKOH/g上限80mgKOH/gであることが好ましい。
【0026】
本明細書において数平均分子量は、ポリスチレンを標準とするGPC法において決定される値である。本明細書において酸価および水酸基価は、JISの規定に基づいて、調製に用いられるモノマー組成から算出される値である。
【0027】
水溶性アクリル樹脂は、例えば、上記アクリル樹脂エマルションの調製に用いることができるα,β-エチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を溶液重合し、塩基性化合物により水溶化することにより調製することができる。アクリル樹脂ディスパージョンは、例えば、上記アクリル樹脂エマルションの調製に用いることができるα,β-エチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を溶液重合し、塩基性化合物でディスパージョン化することにより、調製することができる。
【0028】
ポリエステル樹脂ディスパージョンは、例えば、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを縮合し、塩基性化合物でディスパージョン化することにより、調製することができる。ポリウレタン樹脂ディスパージョンは、例えば、ポリオール化合物と、分子内に活性水素基と親水基を有する化合物と、有機ポリイソシアネートとを、必要により鎖伸長剤および重合停止剤を用いてポリマー化し、得られたポリマーを水中に溶解または分散することによって、調製することができる。
【0029】
上記第1塗料組成物が水性塗料組成物である場合は、上記第1塗膜形成樹脂に対して反応する硬化剤を用いるのが好ましい。このような硬化剤は、上記第1塗膜形成樹脂と反応して塗膜を形成する、塗膜形成成分である。硬化剤として、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオンなどを用いることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。上記成分は、当業者において通常用いられる方法により調製することができる。上記成分として市販品を用いてもよい。硬化剤として、メラミン樹脂およびブロックイソシアネート化合物のいずれかまたは両方を用いるのがより好ましい。
【0030】
メラミン樹脂は、水溶性メラミン樹脂および/または非水溶性メラミン樹脂を用いることができる。メラミン樹脂は、メラミン核(トリアジン核)の周囲に3個の窒素原子を介して水素原子または置換基(アルキルエーテル基、メチロール基など)が結合した構造を含む。上記メラミン樹脂は、一般的には、複数のメラミン核が互いに結合した多核体により構成されるものである。一方で上記メラミン樹脂は1個のメラミン核からなる単核体であってもよい。
【0031】
上記メラミン樹脂として市販品を用いてもよい。市販品の具体例として、例えば、Allnex社製のサイメルシリーズ(商品名)、具体的には、サイメル202、サイメル204、サイメル211、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル250、サイメル251、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141;および、三井化学社製のユーバン(商品名)シリーズなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ブロックイソシアネート化合物は、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどからなるポリイソシアネートに、活性水素を有するブロック剤を付加させることによって、調製することができる。このようなブロックイソシアネート樹脂は、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生し、上記樹脂成分中の官能基と反応して硬化する。
【0033】
硬化剤の量は、塗料樹脂固形分質量(上記塗膜形成樹脂および硬化剤を含む塗膜形成成分の固形分質量)を基準にして10~80質量%であるのが好ましく、15~60質量%であるのがより好ましい。
【0034】
上記第1塗料組成物は、光輝性顔料を含む。そして本開示においては、第1塗料組成物に含まれる光輝性顔料は鱗片状アルミニウム顔料を含む。
【0035】
上記鱗片状アルミニウム顔料は、平均粒子径が4~25μmであるのが好ましく、8~18μmであるのがより好ましい。上記鱗片状アルミニウム顔料はまた、平均厚さが0.01~0.1μmであるのが好ましく、0.04~0.08μmであるのがより好ましい。鱗片状アルミニウム顔料の平均粒子径および平均厚さが上記条件を満たすことによって、第1塗膜に良好な緻密感がもたらされ、これにより、複層塗膜において目的とする意匠を好適に得ることができる利点がある。
【0036】
上記鱗片状アルミニウム顔料の平均粒子径は、平均長径を意味する。平均粒子径の測定は、鱗片状アルミニウム顔料を、形状解析レーザーマイクロスコープ(例えばキーエンス社製 VK-X 250など)を用いて観察し、任意に選択した100個の顔料の最大長さ(長径)の数平均値を求めることによって測定することができる。
【0037】
上記鱗片状アルミニウム顔料の平均厚さは、上記鱗片状アルミニウム顔料を含む塗膜を形成し、得られた塗膜の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定して、測定値の平均値を求めることによって測定することができる。
【0038】
上記鱗片状アルミニウム顔料はまた、アスペクト比(顔料の最大径の平均/顔料の厚みの平均)が50~300の範囲内であるのが好ましく、100~200の範囲内であるのが好ましい。
【0039】
上記鱗片状アルミニウム顔料は、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。アルミニウム顔料に施すことができる表面処理として、例えば、金属酸化物系化合物を用いた表面処理、リン化合物を用いた表面処理、アミン化合物を用いた表面処理、シラン化合物を用いた表面処理などが挙げられる。
【0040】
上記金属酸化物系化合物として、例えば、構成金属として少なくとも遷移金属元素を含む金属酸化物及びそのアルカリ金属塩並びにそのアンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム塩、バナジン酸、バナジン酸アルカリ金属塩、バナジン酸アンモニウム塩等が挙げられる。なお、前記アルカリ金属としては、特に限定されるものではないが、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、前記金属酸化物系化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム塩、バナジン酸、バナジン酸アルカリ金属塩及びバナジン酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属酸化物系化合物が用いられるのが好ましい。
【0041】
上記リン化合物として、例えば、有機リン酸エステル、有機亜リン酸エステル、有機ホスホン酸、およびこれらの化合物のアミン塩などが挙げられる。これらのリン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0042】
上記アミン化合物として、例えば、直鎖状または分枝状一級アミン、直鎖状または分枝状二級アミン、直鎖状または分枝状三級アミン、脂環式一級アミン、脂環式二級アミン、脂環式三級アミン、芳香族基含有一級アミン、芳香族基含有二級アミン、芳香族基含有三級アミンなどが挙げられる。これらのアミン化合物は、必要に応じて置換基(例えば水酸基など)を有してもよい。これらのアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0043】
上記シラン化合物として、例えば、アルコキシシシラン化合物、ビニル基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、スチリル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、酸無水物基含有シランカップリング剤、およびこれらの部分縮合物などが挙げられる。これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0044】
上記表面処理は、当業者において通常用いられる処理条件により行うことができる。上記表面処理は1種のみを行ってもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0045】
特に、上記第1塗料組成物に含まれる光輝性顔料が鱗片状アルミニウム顔料であり、そして平均粒子径が例えば4~25μm、より好ましくは8~18μmである場合は、上記表面処理が施されていることによって、形成される複層塗膜の塗膜外観を損なうことなく、第1塗料組成物の安定性がより良好となるなどの利点がある。より具体的には、本開示の複層塗膜において、光輝性顔料として上記鱗片状アルミニウム顔料を用いることにより、白ぼけおよび有彩色などの色味が感じられず、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低く、その一方で複層塗膜として輝度が認識できる、複層塗膜を好適に形成することができる利点がある。
【0046】
上記鱗片状アルミニウム顔料として市販品を用いてもよい。市販品として例えば、
東洋アルミニウム社製アルペースト46シリーズ、97シリーズのうち例えば0519、01シリーズのうち例えば01-0651など;旭化成社製アルミペーストFDシリーズなど;エカルト社製Metallux 4860など;が挙げられる。
【0047】
上記光輝性顔料の量は、第1塗膜形成樹脂の樹脂固形分100質量部に対して3~13質量部の範囲内であるのが好ましく、8~11質量部の範囲内であるのがより好ましい。
【0048】
上記第1塗料組成物に含まれる光輝性顔料は、必要に応じて、鱗片状アルミニウム顔料以外の光輝性顔料、例えば、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムおよびこれらの合金などの金属製光輝性顔料、および、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料など、を含んでもよい。但しこれらの鱗片状アルミニウム顔料以外の光輝性顔料の含有量は、本開示の発明の効果が損なわれない範囲であることを条件とする。本開示の発明においては、上記第1塗料組成物に含まれる光輝性顔料は、鱗片状アルミニウム顔料であるのが、得られる複層塗膜の意匠性の点から好ましい。
【0049】
上記第1塗料組成物は、上記光輝性顔料以外にも、必要に応じた他の顔料を含んでもよい。但しこれらの他の顔料は、上記第1塗膜の性能を損なわない量であることを条件とする。他の顔料として、例えば、着色顔料、体質顔料などが挙げられる。体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどを挙げることができる。上記顔料はさらに、必要に応じて防錆顔料を含んでもよい。
【0050】
着色顔料として、各種無機着色顔料および有機着色顔料を用いることができる。なお本明細書において「着色顔料」は、有彩色の着色顔料および無彩色の着色顔料を含む。
着色顔料として、例えば、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、鉄クロムやビスマスマンガン等の複合金属酸化物、ペリレン系黒色顔料、アゾメチアゾ系顔料などの黒色系顔料;
紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルーなどの青色系顔料;
黄鉛、合成黄色酸化鉄、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、オーカー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエローなどの黄色系顔料;
酸化鉄、透明酸化鉄、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの赤色系顔料;
キナクリドンマゼンタ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジケトピロロピロールクロムバーミリオンなどの橙色系顔料;
塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーンなどの緑色系顔料;
ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどの紫色系顔料;
2酸化チタンなどの白色系顔料;
などを挙げることができる。
【0051】
水性第1塗料組成物は、上記成分に加えて、当業者において通常用いられる添加剤、例えば、表面調整剤、粘性制御剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などを含んでもよい。例えば粘性制御剤を用いることによって、チクソトロピー性を付与することができ、塗装作業性を調整することができる。粘性制御剤として、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩などのポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体などのポリエチレン系などのもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイトなどの有機ベントナイト系のものなどを挙げることができる。これらの添加剤を用いる場合は、当業者において通常用いられる量で用いることができる。
【0052】
上記水性第1塗料組成物は、必要に応じて、上記成分に加えてさらにリン酸基含有有機化合物を含んでもよい。
【0053】
上記水性第1塗料組成物は、溶媒として、水、そして必要に応じた水溶性または水混和性有機溶媒を含んでもよい。
【0054】
上記水性第1塗料組成物の製造は、第1塗膜形成樹脂、光輝性顔料、硬化剤、そして必要に応じた他の成分、添加剤などを、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダーなどを用いて混練・分散するなどの当業者において通常用いられる方法で製造することができる。上記製造方法において、例えば、光輝性顔料および必要に応じた顔料分散剤を含むペーストを予め調製し、混合するのが好ましい。顔料分散剤として、市販の顔料分散剤などを用いることができる。
【0055】
上記第1塗料組成物が溶剤型塗料組成物である場合は、第1塗膜形成樹脂として例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂なども含む)などが挙げられる。これらの樹脂は1種のみを単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0056】
アクリル樹脂は、例えば、α,β-エチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を、溶液重合を行うことにより調製することができる。上記アクリル樹脂は、数平均分子量が1000~20000であるのが好ましい。上記アクリル樹脂はまた、酸価(固形分酸価)が1~80mgKOH/gであるのが好ましく、10~45mgKOH/gであるのがより好ましい。また、水酸基価(固形分水酸基価)が10~200mgKOH/gであるのが好ましい。
【0057】
アクリル樹脂として市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、三菱レイヨン社製のダイヤナールHRシリーズなどが挙げられる。
【0058】
アクリル樹脂の量は、塗料樹脂固形分質量(塗膜形成成分の固形分質量)を基準にして30~80質量%であるのが好ましく、35~70質量%であるのがより好ましい。
【0059】
上記ポリエステル樹脂として、例えば水酸基含有ポリエステル樹脂を用いることができる。水酸基含有ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸および/または酸無水物などの酸成分と多価アルコールとを重縮合することによって調製することができる。
【0060】
上記第1塗料組成物が溶剤型塗料組成物である場合は、上記第1塗膜形成樹脂に対して反応する硬化剤を用いるのが好ましい。硬化剤として、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物などを用いることができる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。上記成分は、当業者において通常用いられる方法により調製することができる。上記成分として市販品を用いてもよい。
【0061】
上記硬化剤は、メラミン樹脂を含むのが好ましい。メラミン樹脂としては、特に限定されるものではなく、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル・ブチル混合型メラミン樹脂などを用いることができる。例えばAllnex社から市販されているサイメルシリーズ、三井化学社から市販されているユーバンシリーズなどが挙げられる。メラミン樹脂の量は、塗料樹脂固形分質量(上記塗膜形成樹脂および硬化剤を含む塗膜形成成分の固形分質量)を基準にして10~50質量%であるのが好ましく、15~40質量%であるのがより好ましい。
【0062】
上記硬化剤はさらに、ブロックイソシアネート化合物を含むのが好ましい。ブロックイソシアネート化合物は、ポリイソシアネートに、活性メチレン基を有する化合物、ケトン化合物またはカプロラクタム化合物などのブロック化合物を付加反応させることによって調製することができる。ブロックイソシアネート化合物として市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、旭化成社製のデュラネートシリーズ、住化コベストロウレタン社製のスミジュールシリーズなどが挙げられる。
【0063】
第1塗料組成物に含まれるブロックイソシアネート化合物の量は、塗料樹脂固形分質量(上記塗膜形成樹脂および硬化剤を含む塗膜形成成分の固形分質量)を基準にして10~30質量%であるのが好ましく、15~25質量%であるのがより好ましい。
【0064】
溶剤型第1塗料組成物は、上記第1塗膜形成樹脂および光輝性顔料を含む。光輝性顔料として、上記光輝性顔料を同様に用いることができる。溶剤型第1塗料組成物は、上記成分に加えて、当業者において通常用いられる添加剤、例えば、硬化触媒、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など、当業者において通常用いられる添加剤などを含んでもよい。
【0065】
溶剤型第1塗料組成物は、塗装時に、有機溶剤を用いて希釈することによって、固形分濃度および粘度を適宜調整することができる。用いることができる有機溶媒として、例えば、エステル系溶剤、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられる。
【0066】
上記溶剤型第1塗料組成物は、必要に応じて、上記成分に加えてさらにリン酸基含有有機化合物を含んでもよい。
【0067】
上記溶剤型第1塗料組成物の製造は、第1塗膜形成樹脂、硬化剤、顔料、リン酸基含有有機化合物および添加剤などを、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダーなどを用いて混練・分散するなどの当業者において通常用いられる方法で製造することができる。上記製造方法において、例えば、光輝性顔料および必要に応じた顔料分散剤を含むペーストを予め調製し、混合するのが好ましい。
【0068】
第2塗料組成物
本開示における第2塗膜は、第2塗料組成物の硬化塗膜である。上記第2塗料組成物は、第2塗膜形成樹脂および着色顔料を含む塗料組成物である。第2塗料組成物は、上記第1塗料組成物と同様に、水性塗料組成物であってもよく、溶剤型塗料組成物であってもよい。このような第2塗料組成物は、第1塗料組成物と同様の手順により調製することができる。
【0069】
第2塗膜形成樹脂として、上記第1塗膜形成樹脂と同様の樹脂を用いることができる。上記第1塗膜形成樹脂および第2塗膜形成樹脂は、同一の樹脂組成であってもよく、異なる樹脂組成であってもよい。
【0070】
本開示の複層塗膜において、上記第2塗膜中に含まれる着色顔料の含有量は、塗膜に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部の範囲内であることを条件とする。上記含有量の下限値は1.7質量部であってよい。上記下限値は、ある態様において、例えば2.0質量部であってよい。上記含有量の上限値は5.7質量部であってよく、5.5質量部であってよく、さらには5質量部であってよい。
【0071】
上記第2塗膜中に含まれる着色顔料の好適な例として、例えば、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、鉄クロムやビスマスマンガン等の複合金属酸化物、ペリレン系黒色顔料、アゾメチアゾ系顔料などの黒色系顔料が挙げられる。
【0072】
第2塗膜中に含まれる着色顔料として、必要に応じて、上記黒色系顔料以外の着色顔料を含んでもよい。他の着色顔料として、例えば、
シアニンブルー、スレンブルー、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルーなどの青色系顔料;
塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーンなどの緑色系顔料;
ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどの紫色系顔料;
酸化鉄、透明酸化鉄、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの赤色系顔料;
黄鉛、合成黄色酸化鉄、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、オーカー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエローなどの黄色系顔料;
キナクリドンマゼンタ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジケトピロロピロールクロムバーミリオンなどの橙色系顔料;
などが挙げられる。
【0073】
第2塗料組成物に含まれる着色顔料の好適量は、第2塗膜中における含有量と同様に、第2塗料組成物中に含まれる樹脂固形分100質量部に対して1.5~6質量部であるのが好ましい。上記含有量の下限値は1.7質量部であってよい。上記下限値は、ある態様において、例えば2.0質量部であってよい。上記含有量の上限値は5.7質量部であってよく、5.5質量部であってよく、さらには5質量部であってよい。好適に用いられる上記黒色系顔料が上記第2塗料組成物に上記含有量で含まれることによって、本開示において目的とする、黒色塗膜と認識されるほどに明度および彩度が低い一方で輝度が認識される意匠の複層塗膜を好適に形成することができる利点がある。
【0074】
上記第2塗料組成物は、上記着色顔料以外の他の顔料を含んでもよい。他の顔料として例えば、上記第1塗料組成物において例示した、体質顔料、防錆顔料などが挙げられる。体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどを挙げることができる。
【0075】
本開示において、第2塗料組成物は、光輝性顔料を実質的に含まないのが好ましい。例えば、第2塗料組成物における光輝性顔料の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して0.5質量部未満であるのが好ましく、0.3質量部未満であるのがより好ましく、0.1質量部未満であるのがさらに好ましい。
【0076】
複層塗膜形成
本開示の複層塗膜は、上記第1塗料組成物の硬化塗膜である第1塗膜、上記第2塗料組成物の硬化塗膜である第2塗膜、およびクリヤー塗膜を、この順で有する塗膜である。
【0077】
本開示の複層塗膜の形成において、上記塗料組成物を塗装する対象である被塗物は、特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、発泡体などを挙げることができる。上記塗料組成物は、特に金属および鋳造物に有利に用いることができ、電着塗装可能な金属に対して特に好適に用いることができる。このような金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛などおよびこれらの金属を含む合金が挙げられる。これらの被塗物は、成型物であってもよい。成型物の具体例として、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体およびその部品などが挙げられる。上記金属などの被塗物は、電着塗装する前に、予めリン酸系化成処理剤、ジルコニウム系化成処理剤などで化成処理するのがより好ましい。必要に応じた化成処理がなされた被塗物上に硬化電着塗膜が形成されているのが好ましい。硬化電着塗膜の形成に用いられる電着塗料組成物として、カチオン型およびアニオン型の何れも使用することができる。電着塗料組成物としてカチオン電着塗料組成物を用いることによって、より防食性に優れた塗膜を形成することができるため好ましい。
【0078】
上記被塗物はさらに必要に応じて、硬化電着塗膜の上に中塗り塗膜が形成されてもよい。中塗り塗膜の形成には中塗り塗料組成物が用いられる。中塗り塗料組成物として、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機系および/または無機系の各種着色成分および体質顔料などを含む塗料組成物を用いることができる。塗膜形成性樹脂および硬化剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、上記水性塗料組成物で挙げた塗膜形成性樹脂および硬化剤などを用いることができる。中塗り塗料組成物の塗膜形成樹脂として、得られる中塗り塗膜の諸性能などの観点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、アミノ樹脂および/またはイソシアネートとの組み合わせが好適に用いられる。
【0079】
上記第1塗料組成物および第2塗料組成物を用いた塗膜形成方法として、例えば以下の方法が挙げられる。
・被塗物に、上記第1塗料組成物をおよび第2塗料組成物を順次塗装し、次いでクリヤー塗料組成物を塗装する方法。このような塗装において、第1塗料組成物を塗装し加熱硬化させ、次いで第2塗料組成物を塗装し加熱硬化させてもよい。また、第1塗料組成物を塗装し、塗装した塗膜が未硬化の状態で、第2塗料組成物をウェットオンウェットで塗装し、次いで加熱硬化させてもよい。なお上記ウェットオンウェット塗装においては、塗装間に、必要に応じてプレヒートを行ってもよい。また、第1塗料組成物および第2塗料組成物を順次塗装して、常温で乾燥させてもよい。そして、第2塗料組成物を塗装して得られた第2塗膜に対してクリヤー塗料組成物を塗装して、クリヤー塗膜を設ける。
・被塗物に、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗装する方法。この塗装は詳しくは、第1塗料組成物、第2塗料組成物およびクリヤー塗膜をウェットオンウェットで順次塗装することにより、未硬化の第1塗膜、第2塗膜およびクリヤー塗膜を形成し、これらの未硬化の塗膜を一度に加熱硬化させる方法である。上記ウェットオンウェット塗装においては、塗装間に、必要に応じてプレヒートを行ってもよい。
【0080】
上記第1塗料組成物および第2塗料組成物は、塗料分野において一般的に用いられる手法によって、被塗物に対して塗装することができる。塗装方法として例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装(好ましくは2ステージ塗装)、エアー静電スプレー塗装と回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装などが挙げられる。
【0081】
上記第1塗料組成物は、硬化後の第1塗膜の膜厚が3~13μmの範囲内となるように塗装するのが好ましい。上記膜厚の下限値は3.5μmであってよい。また、上記膜厚の上限値は10μmであってよく、8μmであってよい。
また、第2塗料組成物は、硬化後の第2塗膜の膜厚が3~15μmの範囲内となるように塗装するのが好ましい。上記膜厚の下限値は3.5μmであってよい。また、上記膜厚の上限値は13μmであってよく、10μmであってよい。
【0082】
上記第1塗料組成物、第2塗料組成物を塗装して加熱硬化させる場合における加熱温度および時間は、塗料組成物の組成(水性または溶剤型)および被塗物の種類に応じて適宜選択することができる。加熱温度は例えば80~180℃の範囲、好ましくは100~160℃の範囲などで適宜選択することができる。加熱時間は、例えば5分~60分、好ましくは10分~30分の範囲などで適宜選択することができる。
【0083】
上記クリヤー塗料組成物は、特に限定されず、溶剤型、水性型および粉体型のクリヤー塗料組成物を挙げることができる。
【0084】
上記溶剤型クリヤー塗料組成物の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性などの点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、アミノ樹脂および/またはイソシアネートとの組み合わせ、あるいはカルボン酸/エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂などを挙げることができる。
【0085】
水性型クリヤー塗料組成物の例としては、上記溶剤型クリヤー塗料組成物の例として挙げた塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものが挙げることができる。この中和は重合の前または後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
【0086】
これらの溶剤型クリヤー塗料組成物そして水性型クリヤー塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤を含むのが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを用いることができる。粘性制御剤の例として、例えば、水性塗料組成物のところで挙げたものを用いることができる。併せて、塗料分野において一般的に用いられる添加剤を必要に応じて含んでもよい。
【0087】
粉体型クリヤー塗料組成物としては、例えば、熱可塑性粉体塗料組成物、熱硬化性粉体塗料組成物などの、塗料分野において一般的に用いられる粉体塗料組成物を用いることができる。これらの中でも、塗膜物性などの点から、熱硬化性粉体塗料組成物が好ましい。熱硬化性粉体塗料組成物の具体例として、エポキシ系、アクリル系およびポリエステル系の粉体クリヤー塗料組成物などが挙げられる。
【0088】
クリヤー塗料組成物の塗装は、クリヤー塗料組成物の塗装形態に従った、当業者に公知の塗装方法を用いて行うことができる。上記クリヤー塗料組成物を塗装することによって形成されるクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、一般に10~80μmが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。
【0089】
クリヤー塗料組成物の塗装によって得られた未硬化のクリヤー塗膜を加熱硬化させることによって、硬化したクリヤー塗膜を形成することができる。クリヤー塗料組成物を、未硬化の第2ベース塗膜の上に塗装した場合は、加熱させることによって、これらの未硬化塗膜が加熱硬化することとなる。加熱硬化温度は、硬化性および得られる複層塗膜の物性の観点から、80~180℃に設定されていることが好ましく、120~160℃に設定されていることがさらに好ましい。加熱硬化時間は、上記温度に応じて任意に設定することができる。加熱硬化条件として、例えば、加熱硬化温度120℃~160℃で10分~30分間加熱する条件などが挙げられる。
なお、塗料組成物の種類に応じて、上記塗料組成物を塗装した後、常温で乾燥させて塗膜を形成し、次いで、例えば反応硬化型クリヤー塗料組成物を塗装して、クリヤー塗膜を設けてもよい。
【0090】
本開示の複層塗膜は、
入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であり、
入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であり、入射角45°受光角25°におけるL*(25°)値が5以上25以下である、
ことを条件とする。
【0091】
上記明度L*は、L*C*h表色系におけるパラメータであり、JIS Z8729に準拠して求めることができる。このL*C*h表色系は、国際照明委員会により定められた表色系であり、Section 4.2 of CIE Publication 15.2(1986)に記載されている。L*C*h表色系において、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相角度を表す。彩度C*は、その数値が増加するに従い被測定物質のあざやかさが増し、その数値が小さくなるに従いくすみが増すことを意味する。明度L*は、その数値が増加するに従い被測定物質の明るさが増し、その数値が小さくなるに従い暗さが増すことを意味する。上記明度L*は、市販の多角度分光測色計を用いて測定することができる。多角度分光測色計として、例えばBYK-maci(BYK社製)などが挙げられる。
【0092】
上記入射角45°受光角25°の明度L*(25°)において、入射角および受光角は詳しくは、硬化塗膜の45°の角度から照射した光の正反射光の位置を0°とし、この正反射光から入射角方向へ25°の位置の受光角を意味する。
【0093】
本明細書において、複層塗膜の明度L*の測定は、上記第1塗料組成物の硬化塗膜、上記第2塗料組成物の硬化塗膜、およびクリヤー塗膜から構成される複層塗膜を用いて測定した値をいう。より具体的には、カチオン電着塗料組成物を塗装した鋼板に、ダークグレー系硬化中塗り塗膜を形成した塗板上に、上記第1塗料組成物を乾燥膜厚が4μmとなるようにスプレー塗装し、次いで上記第2塗料組成物を乾燥膜厚が4μmとなるようにウェットオンウェットでスプレー塗装し、次いでクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚が35μmとなるようにウェットオンウェットでスプレー塗装し、その後、未硬化の3層の塗膜を140℃で20分間加熱硬化させて得られた複層塗膜を用いて測定する。
【0094】
本開示の複層塗膜において、上記L*(25°)値は5以上25以下であることを条件とする。上記複層塗膜は、L*(25°)値が上記範囲内であり、いわゆるハイライト受光角条件下においても、複層塗膜が黒色塗膜と認識されるほどに明度が低いことを特徴の1つとする。上記L*(25°)値の下限値は7であるのが好ましく、10であるのがより好ましい。また、上記L*(25°)値の上限値は24.5であるのが好ましい。
【0095】
本開示の複層塗膜は、入射角45°受光角45°におけるL*(45°)値が2以上8以下であるのが好ましい。入射角45°受光角45°の測定条件は、ハイライト(受光角15~25°)からシェード(受光角75~110°)に移行する間の、いわゆるフェースと言われる受光角条件である。この測定条件における明度L*(45°)値が上記範囲内であることによって、正面条件から見た複層塗膜の明度が十分に低く、本開示が目的とする意匠を好適に有することとなる。
【0096】
本開示の複層塗膜はまた、入射角45°受光角15°における光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であることを条件とする。上記光輝強度(Si)は輝きの強さを示す指標であり、数値が高いほど輝きが強いことを意味する。
【0097】
本明細書において、上記光輝強度Siの測定値は、上記明度L*の測定と同様の手順で作成した複層塗膜を用いて測定した値をいう。上記光輝強度Si(15°)値は、LED光源を入射角45°で塗膜に対して照射し、この45°の角度から照射した光の正反射光の位置を0°とし、この正反射光から入射角方向へ15°の位置(受光角15°)に配置したCCDチップで画像を取得し、取得した画像を、明るさレベルのヒストグラムを用いた画像解析アルゴリズムで解析し、2次元分析を行うことによって、光輝度パラメータを計算し、光輝強度(Sparkle intensity=Si値)として表した数値である。
【0098】
複層塗膜の光輝強度Si(15°)値が1以上18以下であることにより、いわゆるハイライト受光角条件下において、複層塗膜から一定強度の光輝感が認識されることとなる。
【0099】
本開示の複層塗膜においてはさらに、入射角45°受光角45°における光輝強度Si(45°)値が1以上17以下であるのが好ましい。光輝強度Si(45°)値は、LED光源を入射角45°で塗膜に対して照射し、この45°の角度から照射した光の正反射光の位置を0°とし、この正反射光から入射角方向へ45°(受光角45°)の位置で、上記と同様の手順により画像取得し光輝強度として表した数値である。複層塗膜の光輝強度Si(45°)値が1以上17以下であることにより、いわゆるフェースと言われる受光角条件下においても複層塗膜から一定強度の光輝感が認識される、意匠上の利点がある。
【0100】
本開示の複層塗膜はまた、入射角45°受光角45°における光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であることを条件とする。光輝面積Sa値は、輝く部分の面積(大きさ)を数値として示す指標である。上記光輝面積Sa値の測定は、上記明度L*の測定と同様の手順で作成した複層塗膜を用いて測定した値をいう。上記光輝面積Sa(45°)値は、LED光源を入射角45°で塗膜に対して照射し、この45°の角度から照射した光の正反射光の位置を0°とし、この正反射光から入射角方向へ45°の位置(受光角15°)に配置したCCDチップで画像を取得し、取得した画像を、明るさレベルのヒストグラムを用いた画像解析アルゴリズムで解析し、2次元分析を行うことによって、光輝度パラメータを計算し、光輝面積(Sparkle area=Sa値)として表した数値である。
【0101】
複層塗膜の光輝面積Sa(45°)値が8以上35以下であることにより、いわゆるフェースと言われる受光角条件下において、複層塗膜から一定量面積の光輝感が認識されることとなる。
【0102】
本開示の複層塗膜は、上述の通り、輝度が認識される一方で、明度および彩度が低く、色相としては黒色塗膜と認識されるという、黒色でありながら輝度が認識できる独創的な意匠の塗膜である。
【実施例0103】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0104】
製造例1 アクリル樹脂エマルション(塗膜形成樹脂)の製造
反応容器に脱イオン水633部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、スチレン(ST)75.65質量部、メチルメタクリレート(MMA)178.96質量部、n-ブチルアクリレート(BA)75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)64.45質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)105.00質量部、の1段目のモノマー混合物、アクアロンHS-10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)25.00部、アデカリアソープNE-20(α-[1-[(アリルオキシ)メチル]-2-(ノニルフェノキシ)エチル]-ω-ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製)25.00部、および脱イオン水400部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム1.2部、および脱イオン水500部からなる開始剤溶液とを1.5時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
さらに、80℃で、スチレン(ST)53.65質量部、メチルメタクリレート(MMA)178.96質量部、n-ブチルアクリレート(BA)75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)64.45質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)105.00質量部、アクリル酸22質量部の2段目のモノマー混合物と、アクアロンHS-10 10部および脱イオン水250部からなるモノマーの乳化物と、過硫酸アンモニウム3.0部および脱イオン水500部からなる開始剤溶液とを1.5時間に渡り併行して、反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、脱イオン水100部およびジメチルアミノエタノール1.6部を加えpH6.5に調整し、平均粒子径150nm、不揮発分35%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/gのアクリル樹脂エマルションを得た。
【0105】
製造例2 リン酸基含有有機化合物の製造
攪拌機、温度調整器、冷却管を備えた1リットルの反応容器にエトキシプロパノール40部を仕込み、これにスチレン4部、n-ブチルアクリレート35.96部、エチルヘキシルメタアクリレート18.45部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.92部、メタクリル酸7.67部、エトキシプロパノール20部に、ホスマーPP(ユニケミカル社製アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート)20部を溶解した溶液40部、およびアゾビスイソブチロニトリル1.7部からなるモノマー溶液121.7部を120℃で3時間滴下した後、1時間さらに攪拌を継続した。得られたリン酸基含有有機化合物は、酸価105mgKOH/g、うちリン酸基価55mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量6000、不揮発分が63%であった。
【0106】
なお本明細書実施例において、数平均分子量の測定は、GPC装置として「HLC8220GPC」(商品名、東ソー(株)製)、カラムとして「Shodex KF-606M」、「Shodex KF-603」(いずれも昭和電工(株)製、商品名)の4本を用いて、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:0.6cc/分、検出器:RIの条件で行なった。
また本明細書実施例において、リン酸基含有有機化合物の酸価およびリン酸基価の算出は、JIS K5601 2-1の酸価の定義(試料(不揮発物)1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数)に基づいて計算を行って求めた。また水酸基価の算出は、JIS K0070の水酸基価の定義(試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数)に基づいて計算を行って求めた。
【0107】
実施例1
第1塗料組成物の調製
着色顔料分散ペースト
着色顔料であるシャニンブルーG314 6部、ファストゲンスーパーレッド400RG 4 部、ラーベン5000 20部、および、顔料分散剤であるDispex(登録商標)Ultra PA 4550(BASF社製) 18.6部、イオン交換水36.0部、消泡剤であるBYK-011 0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合分散して、着色顔料分散ペーストを得た。
【0108】
第1塗料組成物
製造例1のアクリル樹脂エマルション182部、ジメチルアミノエタノール2.2部、サイメル327(混合アルキル化型メラミン樹脂、Allnex社製、固形分90%)を40部、上記着色顔料分散ペーストを122部、アルミペーストSB-10(粉砕型アルミニウム光輝顔料、旭化成社製、平均粒子径10μm、平均厚さ0.06μm、有効成分65%)を樹脂固形分100質量部に対して10.2部、製造例2のリン酸基含有有機化合物5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(両親媒性化合物、第一工業製薬社製、数平均分子量4200、固形分55%) 5.5部(固形分換算で3部)、リノール酸(キシダ化学社製)3部を均一分散してpHが8.1となるようジメチルアミノエタノールを添加し、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度12質量%である水性塗料組成物を調製した。
【0109】
第2塗料組成物の調製
着色顔料分散ペースト
着色顔料であるラーベン5000 3部、顔料分散剤であるDispex(登録商標)Ultra PA 4550(BASF社製) 18.6部、イオン交換水36.0部、消泡剤であるBYK-011 0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合分散して、着色顔料分散ペーストを得た。
【0110】
第2塗料組成物
製造例1のアクリル樹脂エマルション182部、ジメチルアミノエタノール2.2部、サイメル327(混合アルキル化型メラミン樹脂、Allnex社製、固形分90%)を40部、上記手順で調製した着色顔料分散ペースト30部、製造例2のリン酸基含有有機化合物5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(両親媒性化合物、第一工業製薬社製、数平均分子量4200、固形分55%) 5.5部(固形分換算で3部)、リノール酸(キシダ化学社製)3部を均一分散してpHが8.1となるようジメチルアミノエタノールを添加し、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度15質量%である水性塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して1.5質量部であった。
【0111】
複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料組成物である「パワートップU-50)」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた塗板に、中塗り塗料組成物「OP-30P ミドルグレー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、ポリエステル・メラミン系塗料、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に予め希釈)を、アネスト岩田製エアスプレーガンW-101-132Gを用いて乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付け硬化させて、明度が60である硬化中塗り塗膜を形成した。
次いで、第1塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚4μmになるようにエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
プレヒート後に、第2塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚12μmになるように、ウェットオンウェットでエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
第2塗料組成物塗装後のプレヒート後に、塗装板を室温まで放冷し、クリヤー塗料としてマックフロー-O-1810(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃、30分間焼き付けを行うことにより、複層塗膜を有する塗装試験板を得た。
【0112】
実施例2
第2塗料組成物の調製
第2塗料組成物の調製において、顔料分散ペーストの量を35部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、第2塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して1.7質量部であった。
【0113】
複層塗膜の形成
上記より得られた第2塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、複層塗膜を形成した。
【0114】
実施例3
第2塗料組成物の調製
第2塗料組成物の調製において、顔料分散ペーストの量を40部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、第2塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して2.0質量部であった。
【0115】
複層塗膜の形成
上記より得られた第2塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、複層塗膜を形成した。
【0116】
実施例4
第2塗料組成物の調製
第2塗料組成物の調製において、顔料分散ペーストの量を50部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、第2塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して2.5質量部であった。
【0117】
複層塗膜の形成
上記より得られた第2塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、複層塗膜を形成した。
【0118】
比較例1
第2塗料組成物の調製
第2塗料組成物の調製において、顔料分散ペーストの量を10部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、第2塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して0.5質量部であった。
【0119】
複層塗膜の形成
上記より得られた第2塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、複層塗膜を形成した。
【0120】
比較例2
第2塗料組成物の調製
第2塗料組成物の調製において、顔料分散ペーストの量を160部に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、第2塗料組成物を調製した。
得られた第2塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して8.0質量部であった。
【0121】
複層塗膜の形成
上記より得られた第2塗料組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、複層塗膜を形成した。
【0122】
比較例3
塗料組成物の調製
塗料組成物として、実施例1で調製した第1塗料組成物を用いた。
【0123】
複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料組成物である「パワートップU-50)」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた塗板に、中塗り塗料組成物「OP-30P ミドルグレー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、ポリエステル・メラミン系塗料、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に予め希釈)を、アネスト岩田製エアスプレーガンW-101-132Gを用いて乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付け硬化させて、明度が60である硬化中塗り塗膜を形成した。
次いで、上記より得られた塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚4μmになるようにエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
上記プレヒート後に、塗装板を室温まで放冷し、クリヤー塗料としてマックフロー-O-1810(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃、30分間焼き付けを行うことにより、複層塗膜を有する塗装試験板を得た。
【0124】
比較例4
塗料組成物の調製
着色顔料分散ペースト
着色顔料であるHELIOGEN BLUE L6700F 2.8部、EMPEROR-2000 8.0部、HOSTAPERM VIOLET RL NFVP336 1.5部、そして、顔料分散剤であるDispex(登録商標)Ultra PA 4550(BASF社製) 18.6部、イオン交換水36.0部、消泡剤であるBYK-011 0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合分散して、着色顔料分散ペーストを得た。
【0125】
塗料組成物
製造例1のアクリル樹脂エマルション182部、ジメチルアミノエタノール2.2部、サイメル327(混合アルキル化型メラミン樹脂、Allnex社製、固形分90%)を40部、上記手順で調製した着色顔料分散ペースト48部、ASTROSHINE UC-6600(アルミニウム光輝性顔料、日本防湿工業社製、平均粒子径22μm)3.5部、製造例2のリン酸基含有有機化合物5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(両親媒性化合物、第一工業製薬社製、数平均分子量4200、固形分55%) 5.5部(固形分換算で3部)、リノール酸(キシダ化学社製)3部を均一分散してpHが8.1となるようジメチルアミノエタノールを添加し、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度26質量%である水性塗料組成物を調製した。
得られた塗料組成物中に含まれる着色顔料の量は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して2.9質量部であった。
【0126】
複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料組成物である「パワートップU-50)」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた塗板に、中塗り塗料組成物「OP-30P ミドルグレー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、ポリエステル・メラミン系塗料、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に予め希釈)を、アネスト岩田製エアスプレーガンW-101-132Gを用いて乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付け硬化させて、明度が60である硬化中塗り塗膜を形成した。
次いで、上記より得られた塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚12μmになるようにエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
上記プレヒート後に、塗装板を室温まで放冷し、クリヤー塗料としてマックフロー-O-1810(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃、30分間焼き付けを行うことにより、複層塗膜を有する塗装試験板を得た。
【0127】
上記実施例および比較例で形成した複層塗膜などを用いて、下記評価を行った。評価結果を下記表に示す。
【0128】
複層塗膜の光輝強度(Si)および光輝面積(Sa値)の測定
各実施例および比較例で形成した複層塗膜を有する塗装試験板を用いて、入射角45°受光角15°および45°における光輝強度Si値、入射角45°受光角45°における光輝面積Sa値を、BYK社製のBYK-mac i(マルチアングル(6角度)測色、光輝感・粒子感測定器)を用いて測定した。
【0129】
複層塗膜の明度L*の測定
各実施例および比較例で形成した複層塗膜を有する塗装試験板を用いて、入射角45°受光角25°および45°における明度L*値を、多角度分光測色計BYK-maci(BYK社製)を用いて測定した。
【0130】
複層塗膜の外観評価
各実施例および比較例で形成した複層塗膜を有する塗装試験板を目視観察し、下記基準により評価した。

○:複層塗膜が黒色でありながら輝度が感じられる
×:複層塗膜が黒色ではなく白みがかかったグレー色に感じられるか、または、黒色に感じられる一方で輝度が感じられない
【0131】
【表1】
【0132】
実施例の複層塗膜はいずれも、輝度が認識される一方で、明度および彩度が低く、色相としては黒色塗膜と認識される複層塗膜であることが確認された。
比較例1の複層塗膜は、L*(25°)値が高い例である。この例では、いわゆるハイライト受光角条件下の明度が高く、全体として明るさが認識されており、濃グレー色と認識される塗膜であった。
比較例2の複層塗膜は、L*(25°)値が低い例である。この例では、黒色塗膜と感じられる一方で、いわゆるハイライト受光角条件下においても輝度が感じられない塗膜であった。
比較例3、4は、第1塗料組成物および第2塗料組成物を用いるのではなく、1つの塗料組成物を用いて、輝度、低明度および低彩度の意匠の実現を試みた例である。比較例3は、本開示の第2塗膜を有しないことから、ハイライト受光角条件下の明度が高くなり、塗膜全体として明るく、グレー色と認識される塗膜であった。
比較例4は、比較例3と比べて着色顔料を多くした上で、輝度を認識できるよう光輝性顔料の種類を変更した例である。この例では、ハイライト受光角条件下の明度はある程度下がったものの、光輝強度が高くなり、全体として明るさが認識され、濃グレー色と認識される塗膜であった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示の複層塗膜は、黒色と認識されるほど明度および彩度が低い一方で輝度が認識される、黒色の重厚感および輝度による輝き感の両方を伴う、意匠性に優れた塗膜である。上記複層塗膜は、各種物品(例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体およびその部品など)の意匠性塗膜として好適に用いることができる。