(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175164
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】有機性汚泥脱水剤
(51)【国際特許分類】
C02F 11/147 20190101AFI20221117BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C02F11/147 ZAB
B01D21/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081372
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉野 啓輔
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA08
4D059BE56
4D059BK01
4D059DB01
4D059DB24
4D059DB25
4D059DB26
4D059DB28
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】
汚泥脱水処理として使用される汚泥脱水剤に関するものであり、消臭作用を有し、より性能の高い汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
特定の組成を有する水溶性高分子とイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤を使用することで、悪臭の原因となる硫化水素やメチルメルカプタン等の硫黄系臭気を消臭あるいは抑臭し、汚泥脱水性能の向上を達成することができる。イソチアゾリン系化合物の水溶性高分子に対する含有率が、汚泥脱水剤製品に対して0.005~0.1質量%が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体1~99モル%、下記一般式(2)で表されるアニオン性単量体0~99モル%及び非イオン性単量体1~99モル%を構成単位とする水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
R
5は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
―、C
6H
4SO
3
―、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
―、C
6H
4COO
―あるいはCOO
―、R
6は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記イソチアゾリン系化合物が、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチルイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-t-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び4,5-ジクロロ-2-シクロヘキシル-4-イソチアゾリン-3-オン及びそれらの塩から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水剤。
【請求項3】
前記汚泥脱水剤の形態が油中水型エマルジョンであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の汚泥脱水剤。
【請求項4】
前記イソチアゾリン系化合物の含有率が、汚泥脱水剤製品に対して0.005~0.1質量%であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の汚泥脱水剤。
【請求項5】
前記請求項1~4の何れかに記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加し、脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥脱水剤として汎用されている水溶性高分子に関するものであり、詳しくは、消臭作用を有し汚泥脱水性能が向上する水溶性高分子を含有する汚泥脱水剤及びそれを用いた汚泥脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水から沈降させた初沈生汚泥、活性汚泥槽からの流出水から沈降させた余剰汚泥あるいは混合生汚泥、これら汚泥を嫌気消化処理した消化汚泥あるいは畜産汚泥といった有機性の汚泥の脱水処理に汚泥脱水剤として水溶性高分子が使用されている。
一般的な汚泥脱水剤としてポリアクリルアミド(PAM)系水溶性高分子が汎用され、汚泥脱水剤を添加された汚泥は、ベルトプレスやスクリュープレス等の適当な脱水機で脱水され脱水ケーキとして処理される。
これら汚泥や脱水ケーキには硫化水素やメチルメルカプタン等に起因する硫黄系臭気が発生し、汚泥脱水工程やその後の処理工程での労働環境や生活環境が悪化し問題となる場合がある。そこで、汚泥あるいは脱水ケーキ用消臭剤として、種々の化合物の適用が考案されている。
例えば、特許文献1では、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン塩を使用した脱水ケーキの消臭剤について開示されている。特許文献2では、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンとピリチオン化合物を含有する汚泥または脱水ケーキ用消臭剤について開示されている。
又、消臭剤と高分子凝集剤を汚泥脱水工程で使用する臭気発生防止方法が開示されている。特許文献3では、2-メルカプトベンゾイミダゾールの金属塩や2-メルカプトベンゾチアゾールの2価金属塩を汚泥に添加後、高分子凝集剤を添加する臭気発生防止方法が開示されている。
更に、消臭剤と高分子凝集剤を含有する汚泥脱水剤が開示されている。
特許文献4では、消臭剤としてメントール等のテルペン類やハッカ油、ユーカリ油等の精油を含有する乳濁液状のPAM系高分子汚泥脱水剤について開示されている。特許文献5では、PAM系高分子凝集剤とp-ジクロルベンゼンや植物精油を吸着させた腐植土を混合することにより消臭機能を有する高分子凝集剤が開示されている。
しかし、これらでも満足する消臭効果が得られない場合や、消臭効果や脱水効果を得るには添加率が多くなる場合が有る。そこで、消臭効果と脱水効果を備えたより効率的な汚泥脱水剤が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6-134492号公報
【特許文献2】特開2006-75704号公報
【特許文献3】特開2005-763号公報
【特許文献4】特開昭59-173110号公報
【特許文献5】特開昭59-112811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、汚泥脱水処理として使用される汚泥脱水剤に関するものであり、消臭作用を有し、より性能の高い汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、特定の組成を有する水溶性高分子とイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤を使用することで消臭作用を有し汚泥脱水性能の向上を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における汚泥脱水剤を使用することで、悪臭が発生し問題となっている有機性汚泥に対して、特に悪臭の原因となる硫化水素、メチルメルカプタン等の硫黄系臭気を消臭あるいは抑臭し、汚泥脱水性能の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における水溶性高分子としては、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体1~99モル%、下記一般式(2)で表されるアニオン性単量体0~99モル%、非イオン性単量体1~99モル%を構成単位とする。
一般式(1)で表されるカチオン性単量体20~99モル%が好ましく、30~99モル%がより好ましく、40~99モル%がより一層好ましい。これはカチオン性単量体の割合が中~高モルである方が、汚泥種への汎用性があるためである。一般式(2)で表されるアニオン性単量体を含有する場合は、アニオン性単量体1~20モル%が好ましく、1~15モル%がより好ましい。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
R
5は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
-、C
6H
4SO
3
-、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
-、C
6H
4COO
-あるいはCOO
-、R
6は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物である。例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等である。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。一般式(2)で表されるアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0009】
本発明で使用する非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらの中で(メタ)アクリルアミドが好ましい。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0010】
本発明における水溶性高分子は公知の方法により製造することができる。カチオン性単量体、非イオン性単量体、及びアニオン性単量体から選択される一種以上の単量体あるいは単量体混合物を共重合することによって製造することができる。共重合は任意の重合法によって行なう。例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルジョンあるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。この中でも分子量やポリマー構造の調整がしやすい油中水型エマルジョン重合が好ましい。
【0011】
油中水型エマルジョンの場合は、特開平10-140496号公報や特開2011-99076号公報等に挙げられる方法に準じて適宜に製造することができる。即ち、カチオン性単量体、非イオン性単量体、及びアニオン性単量体から選択される一種以上を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0012】
又、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類、ナフテン類、あるいは灯油、軽油、中油等の鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%~50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%~35質量%の範囲である。
【0013】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1~15のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは1~5質量%の範囲である。
【0014】
単量体の重合濃度は20~60質量%の範囲であり、単量体の組成、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。重合温度としては20~80℃、好ましくは20~60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性或いは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、レドックス系、過酸化物系の何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2、2’-アゾビスイソブチレート、1、1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2、2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0015】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド等を挙げることができる。
【0016】
本発明における水溶性高分子を製造する際の重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用することができる。イソチアゾリン系化合物と混合した場合の製品安定性の面から、架橋性単量体を単量体総量に対し、0.00005~0.050質量%の範囲内で存在させて製造した架橋型水溶性高分子が好ましい。単量体組成や重合条件により異なるが、0.050質量%を超えると架橋が進行しすぎて水不溶性となるため本発明の用途としては好ましくはない。架橋性単量体の例としては、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸-1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N-ビニル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0017】
又、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1~5質量%併用、あるいはギ酸ソーダを対単量体0.01~0.5質量%併用すると効果的である。
【0018】
重合後は、必要に応じて転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水に馴染み易くし、中の水溶性高分子が溶解し易くする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9~15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等が挙げられる。
【0019】
本発明における水溶性高分子は、汚泥脱水剤として性能を発揮するには一定の分子量が必要である。本発明においては、高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した4質量%食塩水溶液粘度(SLV;0.5質量%塩水溶液粘度)を分子量の指標とすることができる。本発明における水溶性高分子では、SLVが5mPa・s以上、100mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上、100mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以上、70mPa・s以下がより一層好ましい。この0.5質量%塩水溶液粘度は、B型粘度計において1号ローター、60rpmで測定した値である。B型粘度計としては東機産業TVB-10M等が使用される。尚、高分子溶解液は800rpmで30分間攪拌して作製する。
又、重量平均分子量では、100万~800万が好ましく、200万~800万がより好ましく、200万~600万がより一層好ましい。
【0020】
本発明におけるイソチアゾリン系化合物は、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチルイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-t-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び4,5-ジクロロ-2-シクロヘキシル-4-イソチアゾリン-3-オン及びそれらの塩から選択される1種以上を使用する。これらの中で、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及びそれらの塩が好ましく、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン及びその塩が最も好ましい。これは、本発明における水溶性高分子と混合する場合、製品安定性がその他のイソチアゾリン系化合物に比べて高い傾向にあるためである。
【0021】
水溶性高分子とイソチアゾリン系化合物の混合は、イソチアゾリン系化合物を含む水溶液を調製してから水溶性高分子製品と混合することができる。又、水溶性高分子溶解液にイソチアゾリン系化合物を添加し調製しても良く、イソチアゾリン系化合物水溶液を調製してから水溶性高分子溶解液と混合しても良い。実用性の面からイソチアゾリン系化合物水溶液を調製して水溶性高分子製品と混合し汚泥脱水剤とすることが好ましい。この場合、イソチアゾリン系化合物水溶液は、水溶液濃度にもよるが汚泥脱水剤製品に対して1質量%以下含有させることが好ましい。1質量%を超えると汚泥脱水剤製品の安定性や溶解性に問題が生じることがあるためである。尚、イソチアゾリン系化合物水溶液とは、水を50質量%以上含有するイソチアゾリン系化合物溶液のことである。
【0022】
イソチアゾリン系化合物を含む水溶液を調製してから水溶性高分子製品と混合する場合は、先ず、イソチアゾリン系化合物を水溶液中に溶解させるために、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール、プロピレングリコールエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコールを使用し任意の濃度に溶解する。
又、溶解時に無機塩を使用あるいは併用しても良い。無機塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられる。
【0023】
更にイソチアゾリン系化合物水溶液のpH調整に硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、ギ酸、スルファミン酸、クエン酸、フマル酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、リンゴ酸、サリチル酸等の酸あるいはその塩、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸銅、塩化銅あるいはそれらの含水塩等を一種以上添加することができる。イソチアゾリン系化合物水溶液のpH5.8~8.0に調整することで本発明における汚泥脱水剤の製品安定性と効果が向上する傾向があるので好ましい。これらイソチアゾリン系化合物水溶液の調製は、撹拌機、混合機、ホモジナイザー等を用いて任意の混合条件により混合処理する。混合処理により微粒子コロイドを形成すると、水溶性高分子試料との拡散性がより高まり効果が向上するため好ましい。イソチアゾリン系化合物水溶液中のイソチアゾリン系化合物濃度3~20質量%に調製することが好ましい。
【0024】
又、本発明で使用するイソチアゾリン系化合物は、一般の工業用原料として市販されているものが使用できる。例えば、「PROXEL(登録商標)GXL」(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの20質量%、ジプロピレングリコール溶液)、「PROXEL(登録商標)BDN」(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの35質量%、ジプロピレングリコール溶液)としてロンザジャパン社から市販されているもの、「ZONEN(登録商標)FP」(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの11.2重量%と2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの1.3質量%混合物、プロピレングリコール溶液)としてケミクレア社から市販されているもの、「KATHON(登録商標)LX1400」(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの10.6重量%、硝酸ナトリウム含有溶液)としてローム・アンド・ハース・ジャパン社から市販されているもの、「KATHON(登録商標)WT」(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの3:1混合物として13.9重量%、硝酸マグネシウム含有溶液)としてローム・アンド・ハース・ジャパン社から市販されているもの等が利用可能である。
【0025】
イソチアゾリン系化合物としては、汚泥脱水剤製品に対して、0.005~0.1質量%含有させることが好ましい。0.005質量%より低いと消臭効果及び脱水効果の大きな向上が得られず、0.1質量%を超えると汚泥脱水剤製品の安定性が不良になり長期保存に問題が生じる場合があるためである。
【0026】
本発明における汚泥脱水剤の作用機構は不明であるが、汚泥懸濁物質中の硫黄系臭気成分とイソチアゾリン系化合物の官能基との化学反応による臭気成分吸着作用が得られ、一方、凝集阻害因子として作用する硫黄系臭気成分が封鎖されることで水溶性高分子と汚泥中の懸濁物質との架橋吸着作用が助長され、凝集効果が向上することが推測される。即ち、臭気成分吸着作用と架橋吸着作用の相乗により、本発明における汚泥脱水剤の効果が発現するものと考えられる。
【0027】
本発明の汚泥脱水剤が適用可能な汚泥種は、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水などの生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)、畜産汚泥等であるが、特に脱水がより困難で、臭気問題が発生しやすい有機分比率の高い有機性汚泥に有効である。具体的には有機物の指標となる汚泥の有機物量(VSS、浮遊物質中の強熱減量、質量%対SS)が45質量%以上の汚泥である。
近年、これら有機性の汚泥では、VSSやVTS(蒸発残留物中の強熱減量、質量%対TS)が増加する傾向にあり、従来の汚泥脱水剤に比べて本発明の汚泥脱水剤の効果がより顕著となるため、VSSが60質量%以上の汚泥が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。尚、各種測定値は、定法(下水試験方法)に基づく測定による。
【0028】
本発明における汚泥脱水剤は、これら汚泥に任意の濃度に水で希釈して添加される。0.01~1.0質量%の範囲が好ましい。汚泥に対する添加率は、汚泥種、脱水機種によっても異なるが、汚泥液量に対し1~1000ppmである。使用する脱水機の種類は、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円板型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等に対応できる。又、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の無機系凝集剤と併用しても良い。
【実施例0029】
以下に本発明における汚泥脱水剤について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(水溶性高分子試料の製造)
特開昭59-130397号公報、特開平10-140496号公報、特開2011-99076号公報等に開示されている油中水型エマルジョンの常法により、本発明における水溶性高分子試料A~Cを製造した。これらは汚泥脱水剤として汎用されている製品である。これらの組成、物性を表1に示す。
【0031】
(表1)
単量体;DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、AAM:アクリルアミド、AAC:アクリル酸
形態;EM:油中水型エマルジョン
0.2質量%水溶液粘度:高分子濃度が0.2質量%になるように水で溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
0.5質量%塩水溶液粘度:4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0032】
(イソチアゾリン系化合物水溶液の調製)
1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンのジプロピレングリコール溶解液に硫酸第二鉄七水塩、10質量%水酸化ナトリウム、純水を、それぞれ24:15:4:57質量%の割合で加え、混合処理、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの濃度5質量%水溶液(pH6)を調製した。
【0033】
(実施例1)
(汚泥脱水剤の調製)
前記(表1)の水溶性高分子試料Aと前記調製したイソチアゾリン系化合物水溶液を混合し、汚泥脱水剤製品に対するイソチアゾリン系化合物0.01~0.03%含有する汚泥脱水剤試料をそれぞれ調製した。同様に水溶性高分子試料B、Cとイソチアゾリン系化合物水溶液を混合し、汚泥脱水剤製品に対するイソチアゾリン系化合物0.01~0.03%含有する汚泥脱水剤試料をそれぞれ調製した。これらを実施例1として以下の実施試験例で汚泥脱水剤として使用した。
【0034】
(実施試験例1、汚泥脱水試験)
畜産農場より発生した畜産汚泥(pH7.2、電気伝導度146mS/m、SS分14250mg/L、VSS89.5質量%、VTS87.5質量%、M-アルカリ度562mg/L、アニオン量5.81meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量200ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒10回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、実施例1の水溶性高分子試料Bとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤についても同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0035】
(比較試験例1、汚泥脱水試験)実施試験例1と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A、Bを用いて実施試験例1と同様な試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0036】
【0037】
(実施試験例2、臭気測定試験)
実施試験例1と同じ汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量100ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒10回撹拌後、40メッシュにて濾過した汚泥100mLを300mL三角フラスコに投入、ゴム管を付けたゴム栓にて三角フラスコを密閉、40℃ウォーターバスに固定し、3時間後の硫化水素(H2S)濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。
又、実施例1の水溶性高分子試料Bとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤についても同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0038】
(比較試験例2、臭気測定試験)実施試験例1と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A、Bを用いて実施試験例2と同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0039】
【0040】
本発明における汚泥脱水剤を添加した実施試験例1、2では、比較試験例1、2の同種の水溶性高分子試料を用いた場合に比べて濾水量が多く、ケーキ含水率が低下、且つ硫化水素濃度が低下を示し、本発明における水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤の脱水効果及び消臭効果が優れることが分かった。
【0041】
(実施試験例3、汚泥脱水試験)
食品工場より発生した余剰汚泥(pH7.2、電気伝導度199mS/m、SS分11750mg/L、VSS74.5質量%、VTS70.6質量%、M-アルカリ度980mg/L、アニオン量6.54meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.01質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量175ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表4に示す。
【0042】
(比較試験例3、汚泥脱水試験)実施試験例3と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A~Cを用いて実施試験例3と同様な試験を実施した。これらの結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
(実施試験例4、汚泥脱水試験)
食品工場より発生した加圧浮上のフロス汚泥(pH6.5、電気伝導度209mS/m、SS分81500mg/L、VSS95.1質量%、VTS94.6質量%、M-アルカリ度733mg/L、アニオン量4.85meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.01質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量200ppmあるいは350ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0045】
(比較試験例4、汚泥脱水試験)実施試験例4と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料Aを用いて実施試験例4と同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0046】
【0047】
(実施試験例5、汚泥脱水試験)
畜産農場より発生したし尿余剰汚泥(pH7.0、電気伝導度719mS/m、SS分17500mg/L、VSS40.0質量%、VTS39.8質量%、M-アルカリ度664mg/L、アニオン量9.83meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量75ppm添加(ポリマー純分)、10回転倒撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表6に示す。
【0048】
(比較試験例5、汚泥脱水試験)実施試験例5と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A、Bを用いて実施試験例5と同様な試験を実施した。これらの結果を表6に示す。
【0049】
【0050】
(実施試験例6、汚泥脱水試験)
製薬工場より発生したスラッジ汚泥(pH6.9、電気伝導度167mS/m、SS分21500mg/L、VSS18.6質量%、VTS18.5質量%、M-アルカリ度21mg/L、アニオン量4.06meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量320ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(T-1179L)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表7に示す。
【0051】
(比較試験例6、汚泥脱水試験)実施試験例6と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A~Cを用いて実施試験例6と同様な試験を実施した。これらの結果を表7に示す。
【0052】
【0053】
(実施試験例7、汚泥脱水試験)
下水処理場より発生したし尿汚泥(pH6.6、電気伝導度269mS/m、SS分2750mg/L、VSS90.0質量%、VTS76.5質量%、M-アルカリ度790mg/L、アニオン量1.30meq/L)について脱水試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Cとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量40ppmあるいは80ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過し濾水量を測定した。その後、ナイロン製濾布(#202)を用いて汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、ケーキ含水率(105℃で20時間乾燥)を測定した。これらの結果を表7に示す。
【0054】
(比較試験例7、汚泥脱水試験)実施試験例7と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料CあるいはAを用いて実施試験例7と同様な試験を実施した。これらの結果を表8に示す。
【0055】
【0056】
本発明における汚泥脱水剤を添加した実施試験例3~7では、それぞれの比較試験例3~7の同種の水溶性高分子試料を用いた場合に比べて濾水量が多く、ケーキ含水率が低下を示し、本発明における水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤が多種多様な汚泥に対して脱水効果が優れることが分かった。
【0057】
(実施試験例8、臭気測定試験)
養豚場より発生したし尿余剰汚泥(pH7.4、電気伝導度708mS/m、SS分23500mg/L、VSS69.1質量%、VTS63.4質量%、M-アルカリ度2613mg/L、アニオン量8.73meq/L)について
臭気測定試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.02質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量300ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過した汚泥100mLを
300mL三角フラスコに投入、ゴム管を付けたゴム栓にて三角フラスコを密閉、40℃ウォーターバスに固定し、2時間後の硫化水素(H2S)濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表9に示す。
【0058】
(比較試験例8、臭気測定試験)実施試験例8と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A、Bを用いて実施試験例8と同様な試験を実施した。これらの結果を表9に示す。
【0059】
【0060】
(実施試験例9、臭気測定試験)
下水処理場より発生した生汚泥(pH6.7、電気伝導度114mS/m、SS分6000mg/L、VSS87.5質量%、VTS84.6質量%、M-アルカリ度260mg/L、アニオン量1.48meq/L)について臭気測定試験を実施した。
汚泥200mLをポリビーカーに採取し、実施例1の水溶性高分子試料Aとイソチアゾリン系化合物を0.01質量%(対汚泥脱水剤製品)含有する汚泥脱水剤の0.2質量%水溶液を対汚泥液量100ppm添加(ポリマー純分)、ビーカー移し替え20回撹拌後、40メッシュにて濾過した汚泥200mLを
300mL三角フラスコに投入、ゴム管を付けたゴム栓にて三角フラスコを密閉、40℃ウォーターバスに固定し、1時間後の硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定した。又、実施例1のその他の汚泥脱水剤試料を用いて同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表10に示す。
【0061】
(比較試験例9、臭気測定試験)実施試験例9と同じ汚泥を用い、表1の水溶性高分子試料A~Cを用いて実施試験例9と同様な試験を実施した。これらの結果を表10に示す。
【0062】
【0063】
本発明における汚泥脱水剤を添加した実施試験例8、9では、それぞれの比較試験例8、9の同種の水溶性高分子試料を用いた場合に比べて硫化水素あるいはメチルメルカプタン濃度が低下を示し、本発明における水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤の消臭効果が優れることが分かった。
【0064】
本発明における水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する汚泥脱水剤を多種多様な汚泥、特に有機物量が多く含有する有機性汚泥に適用すると硫黄系臭気を消臭あるいは抑臭し、汚泥脱水性能が向上することが確認できた。