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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175198
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/04 20060101AFI20221117BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20221117BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20221117BHJP
   E04B 5/23 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E04B1/04 G
E03F3/04 A
E04B1/61 505A
E04B5/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081422
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000186898
【氏名又は名称】昭和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】越野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 辰也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 哲也
【テーマコード(参考)】
2D063
2E125
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2E125AE02
2E125AE03
2E125AG12
2E125BB08
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】PC鋼材をPC版の端面側で現場打ちコンクリートの付着に関与させる。
【解決手段】L字状をなす横面4及び縦面5を有するプレキャスト部材2と、PC鋼材12が埋設されたPC版11であって、前記横面4にPC版11の端部が載置され、前記縦面5にPC版11の端面が対峙したPC版11と、PC版11の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリート15とを含むコンクリート構造物1において、PC版11の端面からはみ出したPC鋼材12のはみ出し部13が、前記縦面5とPC版11の端面との間に回り込んだ現場打ちコンクリート15に埋設されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼材(12)が埋設されたPC版(11)と、
PC版(11)の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリート(15)とを含むコンクリート構造物において、
PC版(11)の端面からはみ出したPC鋼材(12)のはみ出し部(13)が、PC版(11)の端面側に回り込んだ現場打ちコンクリート(15)に埋設されていることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
L字状をなす横面(4)及び縦面(5)を有するプレキャスト部材(2)と、
PC鋼材(12)が埋設されたPC版(11)であって、前記横面(4)にPC版(11)の端部が載置され、前記縦面(5)にPC版(11)の端面が対峙したPC版(11)と、
PC版(11)の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリート(15)とを含むコンクリート構造物において、
PC版(11)の端面からはみ出したPC鋼材(12)のはみ出し部(13)が、前記縦面(5)とPC版(11)の端面との間に回り込んだ現場打ちコンクリート(15)に埋設されていることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項3】
プレキャスト部材(2)から突出した鉄筋(8,16)が、現場打ちコンクリート(15)に埋設されている請求項2記載のコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼材が埋設されたPC版と、PC版の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリートとを含む、土木構造物、建築構造物等のコンクリート構造物に関するものである。なお、プレキャストコンクリートを単にプレキャストという。また、プレストレストコンクリートをPCと記す。
【背景技術】
【0002】
大型のコンクリート構造物(例えば、高盛土条件下で使用されるボックスカルバート等)の完全なプレキャスト化は、運搬の困難性、分割形成した場合の接合性等の点で、困難である。一方、現場打ちコンクリートで構築するには、長い施工期間を要する。そこで、本発明者らは、プレキャスト部材とPC版と現場打ちコンクリートとの組み合わせを検討している。
【0003】
特許文献1には、図11(a)に示すように、プレキャスト製の側壁部材51から内側へ突出したハンチ52の上の間にPC版53(型枠部材)を架設し、PC版53上および隅角部(接合部)に鉄筋を配して現場打ちコンクリート55を打設し、PC版53と現場打ちコンクリート55とで頂版を形成したボックスカルバート50が開示されている。ここでいう「隅角部」は、側壁の上端と頂版の側端との間の直方体部位であって、「接合部」ともいわれる(本願では「接合部」の語の方を使用する)。
【0004】
このボックスカルバート50では、PC版53から突出した連結鉄筋58及びループ筋57(部材51から突出したループ筋56と重ねる)が現場打ちコンクリート55に埋設されることにより、PC版53と現場打ちコンクリート55との付着を図っている。しかし、このボックスカルバート50は、ラーメン構造の最も重要な部位である接合部を現場打ちで構築するため、品質が安定しにくく、日本道路協会「道路橋示方書」に沿わない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明者らは先に、図11(b)に示すように、壁はプレキャスト壁部材61からなり、頂版は、2つのプレキャスト壁部材61から内側へ突出したハンチ62の上に載置されて架設されているPC版63と、PC版63の上に形成されている現場打ちコンクリート65とを含み、接合部の全部がプレキャスト壁部材61の一部であり、該接合部内に鉄筋の重ね継手が無い、ボックスカルバート60を提案した(特許文献2)。
【0006】
このボックスカルバート60では、PC版63の粗面仕上げされた上面に現場打ちコンクリート65が食い込むとともに、PC版63から上方へ突設されたジベル鉄筋66が現場打ちコンクリート65に埋設されることにより、PC版63と現場打ちコンクリート65との付着を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-223370号公報(特許第4877654号)
【特許文献2】特開2020-105768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のボックスカルバートでは、PC版53,63に埋設されたPC鋼材54,64は、もっぱら曲げに抵抗できるようにPC版にプレストレスを付与するためのものであって、PC版53,63の端面から突出しておらず、該端面側で現場打ちコンクリート55,65との付着に関与していない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、PC鋼材が埋設されたPC版と、PC版の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリートとを含むコンクリート構造物において、PC鋼材をPC版の端面側で現場打ちコンクリートの付着に関与させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]PC鋼材が埋設されたPC版と、
PC版の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリートとを含むコンクリート構造物において、
PC版の端面からはみ出したPC鋼材のはみ出し部が、PC版の端面側に回り込んだ現場打ちコンクリートに埋設されていることを特徴とするコンクリート構造物。
【0011】
[2]L字状をなす横面及び縦面を有するプレキャスト部材と、
PC鋼材が埋設されたPC版であって、前記横面にPC版の端部が載置され、前記縦面にPC版の端面が対峙したPC版と、
PC版の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリートとを含むコンクリート構造物において、
PC版の端面からはみ出したPC鋼材のはみ出し部が、前記縦面とPC版の端面との間に回り込んだ現場打ちコンクリートに埋設されていることを特徴とするコンクリート構造物。
【0012】
[3]前記[2]において、プレキャスト部材から突出した鉄筋が、現場打ちコンクリートに埋設されていてもよい。
【0013】
[作用]
PC版の端面からはみ出したPC鋼材のはみ出し部が、PC版の端面側に回り込んだ現場打ちコンクリートに埋設されていることにより、該端面側で現場打ちコンクリートに付着し、この付着がPC版と現場打ちコンクリートとの強固な一体化に寄与する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PC鋼材が埋設されたPC版と、PC版の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリートとを含むコンクリート構造物において、PC鋼材をPC版の端面側で現場打ちコンクリートの付着に関与させて、PC版と現場打ちコンクリートとの強固な一体化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は実施例1のボックスカルバートの構成部材を示し、(a)はPC版の正面図、(b)はPC版の側面図、(c)はプレキャスト側壁部材の正面図、(d)はプレキャスト側壁部材の側面図である。
図2図2は2つのプレキャスト側壁部材を設置したときの斜視図である
図3図3(a)はプレキャスト側壁部材にPC版を載置したときの正面図、(b)はIIIb-IIIb断面図である。
図4図4図3(a)を斜めに見た斜視図である。
図5図5(a)は同プレキャスト部材に連続鉄筋を接続したときの正面図、(b)はVb-Vb断面図である。
図6図6図5(a)を斜めに見た斜視図である。
図7図7図6の部分拡大斜視図である。
図8図8(a)は同PC版の上に現場打ちコンクリートを打設して構築した1連ボックスカルバートの正面図、(b)はVIIIb-VIIIb断面図である。
図9図9図8(a)を斜めに見た斜視図である。
図10図10は実施例2の2連ボックスカルバートの斜視図である。
図11図11(a)は従来例(特許文献1)のボックスカルバートの部分断面図、(b)は別の従来例(特許文献2)のボックスカルバートの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.コンクリート構造物
コンクリート構造物としては、特に限定されないが、ボックスカルバート、橋梁、貯留槽、舗装版等の土木構造物や、床構造等の建築構造物を例示できる。
【0017】
2.プレキャスト部材
プレキャスト部材は、コンクリート構造物に応じたものである。
例えば、コンクリート構造物がボックスカルバートである場合には、プレキャスト部材はプレキャスト側壁部材であり、コンクリート構造物が橋梁である場合には、プレキャスト部材はプレキャスト桁である。
【0018】
3.PC鋼材
PC鋼材は、プレテンション方式又はポストテンション方式のいずれによってPC版に埋設されたものでもよい。
プレテンション方式によるPC鋼材は、(通常は脱型後にPC版の端面で切断するところ)PC版の端面からはみ出した箇所を切断することにより、はみ出し部が形成される。
ポストテンション方式によるPC鋼材は、PC版の端面からはみ出した箇所を掴んで緊張し、同箇所をナット、くさび等でPC版の端面に定着し、所定の長さに切断することにより、はみ出し部が形成される。
【0019】
PC鋼材のはみ出し部のはみ出し長は、特に限定されないが、付着力を大きくする点で30mm以上が好ましく、スペースが許す限り長くすることができる(上限はないが、敢えていえば200mm以下である)。
【実施例0020】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0021】
[実施例1]
図1図9に示す実施例1は、その完成品を図8及び図9に示すように、大型(例えば縦3000~10000mm、横4000~17000mm)の1連ボックスカルバートである。このボックスカルバート1は、左右2つのプレキャスト側壁部材2と、該プレキャスト側壁部材2の下部間に接続されたプレキャスト底版部材10と、該プレキャスト側壁部材2の上部間に架設されたPC版11と該PC版11の上面に接して打設形成された現場打ちコンクリート15とからなる頂版とで、構成されている。
【0022】
(プレキャスト側壁部材2)
上述した側壁と頂版との「接合部」は、その全部がプレキャスト側壁部材2の一部であり、該接合部内には鉄筋の重ね継手が無い。
プレキャスト側壁部材2は内側へ突出したハンチ3を有し、該ハンチ3の上面(横面4)は接合部の下端レベルにある。よって、ハンチ3の横面4と、接合部の内側面である縦面5とは、正面視でL字状をなしている。
【0023】
接合部の縦面5の付近には複数の機械式継手6(例えばネジ継手)が埋設され、機械式継手6はプレキャスト側壁部材2に埋設された補強鉄筋7に接続されている。
また、ハンチ3には複数の定着鉄筋8の基部が埋設され、定着鉄筋8の作用部はハンチ3の横面4から上方へ突設している。定着鉄筋8の上端部には、定着鉄筋8よりも径の大きい拡径部9がナットの螺着等により設けられている。
【0024】
(プレキャスト底版部材10)
プレキャスト底版部材10は、底版の中間部分をなすものであり、プレキャスト側壁部材2の下部と、現場でモルタル充填継手(図示略)により接合されている。なお、底版の中間部分を、プレキャスト底版部材10に代えて、現場打ちコンクリート15で形成してもよい。
【0025】
(PC版11)
PC版11はプレキャスト製であり、使用時に曲げに抵抗できるように、コンクリート版中にPC鋼材12を配置・埋設し、プレテンション方式又はポストテンション方式により、下縁にプレストレス(圧縮応力)を導入したものである。PC鋼材12は、PC版11の両端面から長さ方向にはみ出したはみ出し部13を有し、はみ出し部13のはみ出し長は例えば30~100mmである。
【0026】
PC版11には複数のジベル鉄筋14の基部が埋設され、ジベル鉄筋14の作用部はPC版11の上面から上方へ突設している。また、PC版11の上面及び断面は粗面仕上げされている。
PC版11は、その両端部がハンチ3の横面4に載置され、その両端面が接合部の縦面5に例えば50~150mmの間隔をおいて対峙し、同間隔にはみ出し部13が収まる。また、同載置時に、定着鉄筋8は、PC版11に形成されている貫通孔を通ってPC版11の上に突出する。
【0027】
(現場打ちコンクリート15)
現場打ちコンクリート15は、PC版11の上面に接するだけでなく、前記縦面5とPC版11の端面との間に回り込んで打設形成されている。頂版の厚さは500~2500mmであり、そのうち、PC版11の厚さは100~500mm、現場打ちコンクリート15の厚さは400~2000mmである。
【0028】
現場打ちコンクリート15は、PC版11の上方でジベル鉄筋14の主要部を埋設してこれに付着し、前記回り込んだPC版11の端面側でPC鋼材12のはみ出し部13を埋設してこれに付着し、さらにPC版11の粗面仕上げされた上面及び端面に食い込むことにより、PC版11に対して強固に接合し一体化している。
【0029】
現場打ちコンクリート15は、定着鉄筋8及び拡径部9を埋設してこれらに付着し、左右2つのプレキャスト側壁部材2の機械式継手6に接続され架設された連続鉄筋16を埋設してこれに付着することにより、プレキャスト側壁部材2に対して強固に接合し一体化している。
【0030】
以上のように構成された実施例のボックスカルバート1は、プレキャスト側壁部材2とプレキャスト底版部材10とPC版11とを施工現場に運搬し、施工現場で次のように組み立てられる。なお、複数のボックスカルバートを路長方向に連結して水路、道路等を形成することについては、公知の通りである。
【0031】
(1)まず、図2に示すように、左右2つのプレキャスト側壁部材2の下部間にプレキャスト底版部材10を接続する。
(2)次に、図3,4に示すように、PC版11をハンチ3に載置して架設する。
(3)次に、図5~7に示すように、機械式継手6に連続鉄筋16を接続する。このとき、PC版11は作業足場代わりとして利用できる。
(4)次に、図8,9に示すように、PC版11の上に現場打ちコンクリート15を打設する。このとき、PC版11は型枠の一部として機能し、PC版11はハンチ3に支持されているので、型枠支保工が不要である。
【0032】
本実施例によれば、次の作用効果が得られる。
・PC鋼材12をPC版11の端面側で現場打ちコンクリート15の付着に関与させて、PC版11と現場打ちコンクリート15との強固な一体化を図ることができる。
・定着鉄筋8により、打設前はPC版11の抜け・外れを防止することができ、打設後は現場打ちコンクリート15との強固な一体化を図ることができる。
・PC版11の粗面仕上げされた上面及び端面により、現場打ちコンクリート15との付着性を高めることができる。
・接合部に重ね継手が無いため、品質が安定し、日本道路協会「道路橋示方書」に沿う。
・重ね継手のための複雑な配筋が不要となり、施工性や労働者の安全性が向上する。
・現場作業減少による騒音振動の縮小、型枠廃材物の減少により、環境面への負荷も抑えることができる。
・現場打ちコンクリート15及び土被り荷重に抵抗できるだけのプレストレスを導入できるPC版11を使用したことにより、RC部材に比べてより長いスパンを確保することができ、カルバートの幅規格を広げることも可能となる。また、部材のひび割れ復元性があり、高耐久の構造物となる。
【0033】
[実施例2]
図10に示す実施例2は、ハンチを両側に有するプレキャスト中間壁部材22等を加えて、大型の2連ボックスカルバート21を構築した点において、実施例1と相違するものであり、その他は実施例1と共通である。実施例2によっても、実施例1の作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0034】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ボックスカルバート
2 プレキャスト側壁部材
3 ハンチ
4 横面
5 縦面
6 機械式継手
7 補強鉄筋
8 定着鉄筋
9 拡径部
10 プレキャスト底版部材
11 PC版
12 PC鋼材
13 はみ出し部
14 ジベル鉄筋
15 現場打ちコンクリート
16 連続鉄筋
21 ボックスカルバート
22 プレキャスト中間壁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11