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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175200
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/18 20060101AFI20221117BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B29C65/18
B23K3/00 310A
B23K3/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081425
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】関本 隆司
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AK09
4F211AP05
4F211AP06
4F211AR06
4F211AR07
4F211TA01
4F211TN02
4F211TQ10
(57)【要約】
【課題】高い精度で被接合物の高さを制御する。
【解決手段】接合装置は、被接合物を上から押さえて加熱するヒータチップ2と、ヒータチップ2の温度を検出する温度センサ3と、ヒータチップ2に電流を供給して発熱させる電源8と、ヒータチップ2の温度に対応するヒータチップ2の高さ方向の位置を導出する位置導出部6と、位置導出部6の導出結果に基づいて熱膨張によるヒータチップ2の高さ方向の変位量を相殺するようにヒータチップ2の高さ方向の変位制御を行う昇降制御部7とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物を上から押さえて加熱するように構成されたヒータチップと、
前記ヒータチップの温度を検出するように構成された温度センサと、
前記ヒータチップに電流を供給して発熱させるように構成された電源と、
前記ヒータチップの温度に対応する前記ヒータチップの高さ方向の位置を導出するように構成された位置導出部と、
前記位置導出部の導出結果に基づいて熱膨張による前記ヒータチップの高さ方向の変位量を相殺するように前記ヒータチップの高さ方向の変位制御を行うように構成された昇降制御部とを備えることを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1記載の接合装置において、
前記昇降制御部は、前記ヒータチップを昇温して前記被接合物を加熱する加熱期間と、前記加熱期間の終了後に前記ヒータチップを降温して前記被接合物を冷却する冷却期間とにおいて、前記ヒータチップの高さ方向の変位制御を行うことを特徴とすることを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の接合装置において、
前記位置導出部は、前記ヒータチップの温度と前記ヒータチップの高さ方向の位置との既知の関係に基づいて、前記温度センサによって検出された温度から前記ヒータチップの高さ方向の位置を導出することを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスヒート方式の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルスヒート方式の接合装置では、被接合物を加圧する電極(ヒータチップ)に取り付けた熱電対によってヒータチップの温度を検出し、この温度が予め設定された温度になるようにヒータチップに供給する電流を制御していた。
【0003】
接合時には被接合物の溶融による沈み込みが発生するので、被接合物の高さが変化するが、製品によっては被接合物の高さを均一にすることが要求されることもある。そこで、従来は、ヒータチップの高さ方向の変位を検出して、ヒータチップの高さ方向の制御を行うことにより、被接合物の均一な高さを実現するようにしていた(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、発生するジュール熱によって高温になるヒータチップは、熱膨張するため、被接合物との接触面の高さ方向の位置が変化する。特許文献1に開示されたようなμmオーダーの微小変位制御を行う場合、ヒータチップの熱膨張の影響を無視できず、高い精度での変位制御を行うことができなかった。
【0005】
従来、ヒータチップの熱膨張の影響を軽減する技術として、特許文献2に開示された接合システムが知られている。特許文献2に開示された接合システムでは、まず室温から温度TM1までヒータチップを昇温して、2つの被接合物のうちヒータチップによって保持している一方の被接合物を加熱し、温度TM1に昇温した状態でヒータチップを下降させて2つの被接合物を接触させ、その時点でのヒータチップの高さを維持した状態で、さらに温度TM2(TM1<TM2)までヒータチップを昇温することによって2つの被接合物を接合するようにしていた。
【0006】
特許文献2に開示された接合システムでは、室温から温度TM1まで昇温した状態で2つの被接合物を接触させることで室温から温度TM1までの温度上昇に伴う熱膨張の影響を排除することができ、温度TM1から温度TM2までの昇温によるヒータチップの熱膨張量を、小さい熱膨張量(例えば数μm)に抑えることができるとしている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術においてもμmオーダーの熱膨張の影響を排除することができないので、上記のような微小変位制御を行う場合に、ヒータチップの熱膨張の影響を無視できず、高い精度での変位制御を行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-173522号公報
【特許文献2】特開2017-34282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来よりも高い精度で被接合物の高さを制御することができる接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接合装置は、被接合物を上から押さえて加熱するように構成されたヒータチップと、前記ヒータチップの温度を検出するように構成された温度センサと、前記ヒータチップに電流を供給して発熱させるように構成された電源と、前記ヒータチップの温度に対応する前記ヒータチップの高さ方向の位置を導出するように構成された位置導出部と、前記位置導出部の導出結果に基づいて熱膨張による前記ヒータチップの高さ方向の変位量を相殺するように前記ヒータチップの高さ方向の変位制御を行うように構成された昇降制御部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記昇降制御部は、前記ヒータチップを昇温して前記被接合物を加熱する加熱期間と、前記加熱期間の終了後に前記ヒータチップを降温して前記被接合物を冷却する冷却期間とにおいて、前記ヒータチップの高さ方向の変位制御を行うことを特徴とすることを特徴とするものである。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記位置導出部は、前記ヒータチップの温度と前記ヒータチップの高さ方向の位置との既知の関係に基づいて、前記温度センサによって検出された温度から前記ヒータチップの高さ方向の位置を導出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置導出部と昇降制御部とを設けることにより、従来よりも高い精度で被接合物の高さを制御することができる。本発明では、はんだ付けやACF(Anisotropic Conductive Film)接合における高品質な仕上がり外観を実現することができ、信頼性の高い接合性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ヒータチップの温度とヒータチップの高さ方向の位置との関係を示す図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る接合装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る接合装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、昇温開始時のヒータチップと被接合物の拡大断面図である。
図5図5は、温度プロファイルの1例を示す図である。
図6図6は、接合途中のヒータチップと被接合物の拡大断面図である。
図7図7は、接合終了時のヒータチップと被接合物の拡大断面図である。
図8図8は、温度プロファイルの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の原理]
ヒータチップの温度Tと、熱膨張によるヒータチップの中央部の高さ方向の位置Z(下方先端の位置)には、例えば次式のような直線関係が成り立つ(図1)。
Z=a・T+b ・・・(1)
【0014】
aは傾き、bは切片である。定数a,bは被接合物と接合装置によって変わるので、対象の被接合物と接合装置について事前の実験等により定数a,bを調べて設定しておけば、接合中にリアルタイムで高さ方向の位置を補正することができ、温度上昇に伴うヒータチップの熱膨張の影響を排除することができる。ただし、図1、式(1)は温度Tと位置Zの関係の1例であって、これに限定されるものではない。事前の実験等により求めた温度Tと位置Zの関係を記憶しておくようにしてもよい。
【0015】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の実施例に係る接合装置の構成を示すブロック図である。接合装置は、ヘッド部1と、ヒータチップ2と、ヒータチップ2の温度を検出する温度センサ3と、電気モータによってヒータチップ2を上下動させることが可能な昇降機構4と、ヒータチップ2の沈み込み量を検出する変位センサ5と、ヒータチップ2の温度に対応するヒータチップ2の高さ方向の位置(下方先端の位置)を導出する位置導出部6と、ヒータチップ2の昇降を制御する昇降制御部7と、ヒータチップ2に電流を供給する電源8と、電源8からヒータチップ2への通電量を制御する電源制御部9と、被接合物を載置するための保持台10とから構成される。
【0016】
ヘッド部1の下端には、例えばモリブデン等の高抵抗材料からなるヒータチップ2が取り付けられている。このヒータチップ2の先端付近には熱電対からなる温度センサ3が固定されている。また、ヘッド部1には、昇降機構4と変位センサ5とが設けられている。
【0017】
以下、本実施例の接合装置の動作を説明する。図3は接合装置の動作を説明するフローチャート、図4は昇温開始時のヒータチップ2と被接合物の拡大断面図である。
【0018】
接合装置の保持台10上に載置されたガラス板20の上には、導電体21が形成されている。一方、導体からなる端子23の接合予定部には、はんだ22が予め印刷されている。導電体21の接合予定部と端子23の接合予定部とが向かい合うように位置決めし、導電体21の上に端子23を載せた状態で、例えばユーザが接合開始を指示すると、昇降制御部7は、ヘッド部1の昇降機構4を制御し、ヒータチップ2を下降させる(図3ステップS100)。
【0019】
これにより、ヒータチップ2と保持台10とによって被接合物(導電体21とはんだ22と端子23)を上下方向から挟み込み加圧する(図4)。このとき、ヘッド部1には、図示しないロードセルが設けられており、被接合物に加わる荷重の大きさを検出できるようになっている。昇降制御部7は、検出された荷重が予め定められた値になるように昇降機構4を制御する。
【0020】
電源制御部9は、電源8からヒータチップ2にパルス電流を供給させ、温度センサ3によって検出されるヒータチップ2の温度が予め設定された温度プロファイルが示す温度と一致するように、電源8からヒータチップ2への通電量を制御する(図3ステップS101)。電源8から供給されるパルス電流は例えばヒータチップ2の端子20aから端子20bに流れ、ヒータチップ2が発熱する。温度プロファイルの1例を図5に示す。
【0021】
ヒータチップ2が発熱すると、図6に示すようにヒータチップ2が高さ方向の下側に熱膨張して変位が増す。
位置導出部6は、温度センサ3によって検出されたヒータチップ2の最新の温度Tに対応するヒータチップ2の中央部の高さ方向の最新の位置Zを式(1)の一次式により算出する(図3ステップS102)。また、位置導出部6は、昇温開始時に温度センサ3によって検出されたヒータチップ2の温度T0に対応する昇温開始時のヒータチップ2の中央部の高さ方向の位置Z0を式(1)の一次式により算出する。
【0022】
そして、昇降制御部7は、昇降機構4を制御してヒータチップ2を上昇させ、この上昇による昇温開始時からのヒータチップ2の上昇量の絶対値と、昇温開始時のヒータチップ2の中央部の高さ方向の位置Z0と最新の位置Zとの差(下降量)の絶対値とが等しくなるように高さ方向の変位制御を行うことにより、ヒータチップ2の高さ方向の位置を補正する(図3ステップS103)。すなわち、下側が膨らむヒータチップ2の熱膨張に対して反対側にヒータチップ2を動かす。
【0023】
昇降機構4の制御は、昇降機構4の電気モータ(不図示)にパルス信号を印加することで行う。昇降機構4は、例えば駆動信号の1パルス当たりXμmだけヒータチップ2を上昇させる。こうして、熱膨張によるヒータチップ2の高さ方向の変位を相殺することができる。
【0024】
接合装置は、温度プロファイルによって定められた通電停止タイミングまで、ステップS101~S103の処理を繰り返し実施する。
次に、電源制御部9は、温度プロファイルによって定められた通電停止タイミングになると(図3ステップS104においてYES)、電源8からヒータチップ2への通電を停止させる(図3ステップS105)。
【0025】
通電が終了すると、ヒータチップ2を降温して、被接合物をヒータチップ2によって加圧しつつ冷却する冷却期間となる。この冷却期間においても、ヒータチップ2は、昇温開始時よりも高い温度になっているので、熱膨張によって高さ方向の位置が変位している。
【0026】
そこで、位置導出部6は、ステップS102と同様に、温度センサ3によって検出されたヒータチップ2の最新の温度Tに対応するヒータチップ2の高さ方向の最新の位置Zを式(1)により算出する(図3ステップS106)。
【0027】
そして、昇降制御部7は、昇降機構4を制御してヒータチップ2を上昇させ、この上昇による昇温開始時からのヒータチップ2の上昇量の絶対値と、昇温開始時のヒータチップ2の中央部の高さ方向の位置Z0と最新の位置Zとの差(下降量)の絶対値とが等しくなるように高さ方向の変位制御を行うことにより、ヒータチップ2の高さ方向の位置を補正する(図3ステップS107)。
【0028】
昇降制御部7は、通電停止タイミングから一定時間が経過して冷却期間が終了するか、あるいはヒータチップ2の温度が所定温度まで下がって冷却期間が終了するまで、ステップS106,S107の処理を繰り返し実施する。
【0029】
昇降制御部7は、冷却期間の終了後に(図3ステップS108においてYES)、昇降機構4を制御し、ヒータチップ2を上昇させて被接合物から離間させる(図3ステップS109)。こうして、被接合物の接合が終了する。図7は接合終了時の状態を示している。図4に示した昇温開始時の状態と比べると、はんだ22の高さが変化していることが分かる。
【0030】
以上のように、本実施例では、接合中にリアルタイムでヒータチップ2の高さ方向の位置を補正することにより、温度上昇に伴うヒータチップ2の熱膨張の影響を排除することができ、被接合物の均一な高さを実現することができる。本実施例では、冷却期間においてもヒータチップ2の高さ方向の位置を補正するので、被接合物の沈込量を高精度に制御することができる。
【0031】
本実施例では、図5に示すようにヒータチップ2を一定温度にした後に所定の通電停止タイミングになったときにヒータチップ2への電流供給を停止して加熱を停止する例で説明しているが、加熱期間の終了時に通電を直ちに停止せずに温度が徐々に下がるように通電量を制御してもよい。この場合の温度プロファイルを図8に示す。
【0032】
また、本実施例では、位置導出部6はヒータチップ2の温度Tに対応するヒータチップ2の位置Zを式(1)により算出しているが、上記のとおり図1、式(1)は温度Tと位置Zの関係の1例である。事前の試験測定の結果から得られた温度Tと位置Zの関係を位置導出部6に予め登録しておき、位置導出部6は、この既知の関係に基づいて、ヒータチップ2の温度Tに対応するヒータチップ2の位置Zを導出するようにしてもよい。
【0033】
また、本実施例では、説明を簡単にするため、特許文献1に開示された微小変位制御について説明していないが、ヒータチップ2の高さ方向の変位を変位センサ5によって検出して昇降制御部7によりヒータチップ2の高さ方向の制御を行って被接合物の高さを均一にする微小変位制御と、本実施例の高さ方向の位置の補正とを同時に実施してもよいことは言うまでもない。
【0034】
本実施例で説明した位置導出部6と昇降制御部7と電源制御部9とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータによって実現することができる。このようなコンピュータにおいて、本発明の接合方法を実現させるためのプログラムは記憶装置に格納される。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、パルスヒート方式の接合装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…ヘッド部、2…ヒータチップ、3…温度センサ、4…昇降機構、5…変位センサ、6…位置導出部、7…昇降制御部、8…電源、9…電源制御部、10…保持台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8