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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175214
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】乗物用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/217 20170101AFI20221117BHJP
   F21V 14/08 20060101ALI20221117BHJP
   B60Q 3/80 20170101ALI20221117BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B60Q3/217
F21V14/08
B60Q3/80
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081444
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽見 晃
【テーマコード(参考)】
3D023
3K040
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3K040AA02
3K040CA04
3K040GB08
3K040GC14
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で意匠性に優れた照明態様を実現可能な乗物用照明装置を提供する。
【解決手段】透光性を有する意匠パネル23と、意匠パネル23の室外側に配され、透光部26および遮光部27を備えるステンシル部材25と、ステンシル部材25の室外側に配され、ステンシル部材25に向けて発光する発光部34と、ステンシル部材25および発光部34のいずれか一方に連結され、ステンシル部材25と発光部34との間の距離を変化させるアクチュエータ35と、を備え、アクチュエータ35によりステンシル部材25と発光部34との間の距離を変化させることによって、意匠パネル23に映し出されるステンシル部材25の像を変化可能とした乗物用照明装置20。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材に設けられて乗物の室内意匠面を構成する乗物用照明装置であって、
透光性を有する意匠パネルと、
前記意匠パネルの室外側に当該意匠パネルと対向して配され、透光性を有する透光部および遮光性を有する遮光部を備えるステンシル部材と、
前記ステンシル部材の室外側に配され、前記ステンシル部材に向けて発光する発光部と、
前記ステンシル部材および前記発光部のいずれか一方に連結され、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を変化させるアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータにより前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を変化させることによって、前記意匠パネルに映し出される前記ステンシル部材の像を変化可能とした乗物用照明装置。
【請求項2】
前記発光部は複数の発光体が支持部材に支持されてなり、
前記ステンシル部材および前記支持部材の少なくとも一方は可撓性を有するシート部材とされ、
前記シート部材を前記アクチュエータによって部分的に撓ませることにより、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を部分的に変化可能とした請求項1に記載の乗物用照明装置。
【請求項3】
前記ステンシル部材は可撓性を有する前記シート部材とされ、
前記アクチュエータは、前記支持部材側から前記ステンシル部材側に向けて伸びる伸長状態と前記支持部材側に縮む短縮状態との間で個別に伸縮可能な複数の伸縮ピンを備えるとともに、前記複数の伸縮ピンの先端が前記ステンシル部材と連結されており、
前記複数の伸縮ピンを個別に伸縮させて前記ステンシル部材を部分的に撓ませることにより、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を部分的に変化可能とした請求項2に記載の乗物用照明装置。
【請求項4】
前記伸縮ピンは印加された電圧によって伸縮する導電性高分子アクチュエータまたは形状記憶合金アクチュエータにより構成されている請求項3に記載の乗物用照明装置。
【請求項5】
前記伸縮ピンは前記支持部材に対して伸縮可能な状態で取り付けられている請求項3または請求項4のいずれか一項に記載の乗物用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、照明装置を備える車両用の内装材が記載されている。この照明装置は、半透明レンズの背後に複数の表示層を設けた構成のものである。詳細には、照明装置は、ハウジングと、そのハウジング内に収容されてそれぞれが表示を有する透明光学素子からなる複数の層と、それら複数の層の各々に連結された複数の光源と、を備え、複数の層の各々を選択的に点灯させることで、それら複数の層の各々に形成された表示を組み合わせて、種々の視覚効果を創出することが可能なものとなっており、車両用内装材の意匠性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-506180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上記特許文献1に記載の乗物用内装材のように、例えば高級感を出す等の目的で、乗物用内装材の加飾が行われるようになっている。また、乗物室内の意匠性を向上することへのニーズも高まっており、照明装置についても、より変化に富み、意匠性に優れたものが求められている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の照明装置は、加飾のために、透明光学素子からなる複数の層および複数の光源が必要である。したがって、意匠のバリエーションを広げようとすると、複数の層および複数の光源を増加させる必要や、ディスプレィやプロジェクターなどの映像表示装置が必要になり、その構成が複雑化するとともに、コストが増加するという問題がある。
【0006】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で意匠性に優れた照明態様を実現可能な乗物用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本明細書に開示される技術は、乗物用内装材に設けられて乗物の室内意匠面を構成する乗物用照明装置であって、透光性を有する意匠パネルと、前記意匠パネルの室外側に当該意匠パネルと対向して配され、透光性を有する透光部および遮光性を有する遮光部を備えるステンシル部材と、前記ステンシル部材の室外側に配され、前記ステンシル部材に向けて発光する発光部と、前記ステンシル部材および前記発光部のいずれか一方に連結され、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を変化させるアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータにより前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を変化させることによって、前記意匠パネルに映し出される前記ステンシル部材の像を変化可能とした乗物用照明装置である。
【0008】
上記構成によれば、発光部から発せられて意匠パネルを照射する光のうち、ステンシル部材の遮光部により遮られた部分の影が、意匠パネルに映し出される。すなわち、ステンシル部材の像が、意匠パネルに映し出される。この時、ステンシル部材と発光部との間の距離をアクチュエータにより変化させることによって、ステンシル部材の透光部を透過した光の広がり方が変化するから、意匠パネルに映し出される像(遮光部の影)を動きのある、変化に富んだものとすることができる。
【0009】
前記発光部は複数の発光体が支持部材に支持されてなり、前記ステンシル部材および前記支持部材の少なくとも一方は可撓性を有するシート部材とされ、前記シート部材を前記アクチュエータによって部分的に撓ませることにより、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を部分的に変化可能としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ステンシル部材と発光部(複数の発光体)との間の距離を部分的に変化させることが可能であるから、意匠パネルに映し出される像を、より変化に富んだものとすることができる。
【0011】
前記ステンシル部材は可撓性を有する前記シート部材とされ、前記アクチュエータは、前記支持部材側から前記ステンシル部材側に向けて伸びる伸長状態と前記支持部材側に縮む短縮状態との間で個別に伸縮可能な複数の伸縮ピンを備えるとともに、前記複数の伸縮ピンの先端が前記ステンシル部材と連結されており、前記複数の伸縮ピンを個別に伸縮させて前記ステンシル部材を部分的に撓ませることにより、前記ステンシル部材と前記発光部との間の距離を部分的に変化可能としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ステンシル部材と発光部との間の距離を部分的に変化させる具体的な一構成が実現可能とされる。
【0013】
前記伸縮ピンは印加された電圧によって伸縮する導電性高分子アクチュエータまたは形状記憶合金アクチュエータにより構成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、伸縮ピンを機械的構造でつくる構成と比較して部品点数が少なく、簡易な構成とすることができる。また、簡易な構成でありながら、大面積や曲面状のシート部材に対応し易く、シート部材の形状(撓み方)のバリエーションの自由度が高い。また、軽量化および薄型化も可能である。さらに、機械的構造とする場合と比較して静穏性にも優れる。
【0015】
前記伸縮ピンは前記支持部材に対して伸縮可能な状態で取り付けられていてもよい。このように、発光部を支持する支持部材を利用して伸縮ピンを取り付けることにより、乗物用照明装置を簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示される技術によれば、簡易な構成で意匠性に優れた照明態様を実現可能な乗物用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の照明装置を備えるドアトリムの斜視図
図2】照明装置の分解斜視図
図3】ステンシルシートの正面図
図4図1のI-I線における断面図
図5】伸縮ピンが伸長している状態の、図1のII-II線における断面図
図6】伸縮ピンの一部が短縮し、ステンシルシートの一部が撓んでいる状態の、図1のII-II線における断面図
図7】伸縮ピンが伸長し、ステンシルシートが意匠パネルに沿った状態における光の進み方を表す説明図
図8】伸縮ピンの一部が短縮し、ステンシルシートの一部が撓んでいる状態における光の進み方を表す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態を図1から図8によって説明する。本実施形態では、車両が備えるサイドドアの車室内面(室内意匠面)を構成するドアトリム(乗物用内装材の一例)10に設けられた照明装置(乗物用照明装置の一例)20について例示する。なお、各図に示した矢印FR及びRRの方向はそれぞれ前方(車両進行方向)及び後方を示し、矢印IN及びOUTの方向はそれぞれ車室内側及び車室外側を示し、矢印UP及びDWの方向はそれぞれ上方及び下方を示す。
【0019】
ドアトリム10は、車両用サイドドアのインナパネルに対して車室内側から取り付けられる。ドアトリム10は、車両のウィンドウの下方に配され、図1に示すように、ロアボード11と、アッパボード12と、照明装置20と、を含んで構成されている。ロアボード11の上端には、アームレスト13が車室内側に張り出すように形成されており、このアームレスト13の上方に、照明装置20が設けられている。
【0020】
照明装置20は、内部に空間Sが形成されたハウジング21を備える。ハウジング21は、図2に示すように、車両前後方向に延びる長手状のものであり、アッパボード12において、アームレスト13の上方に設けられた車室内外方向に貫通する開口部14を車室外側から塞ぐ形で、ドアトリム10に対して固定されている(図4から図6参照)。
【0021】
ハウジング21は概して箱状のものであり、図2に示すように、車室外側の部分を構成する収容部22と、車室内側の部分を構成する意匠パネル23と、からなり、それら収容部22と意匠パネル23とによって囲まれた位置に空間Sを形成するものである。
【0022】
詳細には、収容部22は、底壁22A(車室外側の部分)と、底壁22Aの周縁から車室内側に立ち上がる立壁22Bと、を有し、概して浅皿状の部材とされている。収容部22は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料や、木質系材料と合成樹脂を混合したものなどにより構成されている。
【0023】
一方、意匠パネル23は、浅皿状に成形された収容部22の開口を塞ぐ板状の部材とされている。具体的には、意匠パネル23は、車室内外方向における視点において収容部22と同じ外形形状のものとされ、その外周縁が収容部22の立壁22Bの内周縁に嵌め入れられるとともに接合されている(図4から図6参照)。
【0024】
意匠パネル23は、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂等からなる透光性の高い合成樹脂からなる。本実施形態においては、意匠パネル23は、アクリル樹脂により構成されている。
【0025】
意匠パネル23の車室内側の面(意匠面23A)には、透光性を有する表皮材24が貼着されている。表皮材24は、収容部22の立壁22Bの外周まで覆っている(図4から図6参照)。表皮材24としては、合成皮革や、織物、編物、不織布等の布帛等を使用することができる。
【0026】
これら意匠パネル23および意匠パネル23に貼付された表皮材24により、車両の室内意匠面が形成されている。
【0027】
ハウジング21の空間S内には、ステンシルシート(ステンシル部材の一例)25と、面状発光体(発光部の一例)34とが収容されている。
【0028】
ステンシルシート25は、意匠パネル23の車室外側に意匠パネル23と対向するように配されている。ステンシルシート25は、透光性を有するとともに可撓性を有する材料により構成されている。ステンシルシート25は、意匠パネル23に意匠の投影像を作り出すためのものであって、図3に示すように、後述する面状発光体34から発せられた光を透過させる透明な透光部26と、光を遮断する遮光部27とにより、投影像の基となる図柄が描写されている。遮光部27は、黒色印刷により形成されている。ステンシルシート25の周縁部は、意匠パネル23の周縁部に対して接着やネジ留め等の固定手段により一体とされている。なおステンシルシート25は、周縁部の一部だけが意匠パネル23に対して固定される構成としてもよい。
【0029】
ステンシルシート25の車室外側には、点灯・消灯可能な矩形の発光面34Aを有する複数の面状発光体(発光部の一例)34が設けられている。ステンシルシート25の車室外側には、ステンシルシート25と対向する形で板状の支持板(支持部材の一例)31が配されており、複数の面状発光体34は、支持板31のうちステンシルシート25と対向する対向面31A側に固定されている。
【0030】
面状発光体34は、光透過性を有する板状部材からなる。詳細には、面状発光体34は、車室内外方向における視点において矩形の平板状をなし、屈折率が空気よりも十分に高く且つほぼ透明な合成樹脂材料(例えばPMMAなどのアクリル樹脂やポリカーボネートなど)などで形成されている。面状発光体34は、その側面に対向して配された図示しない光源からの光を内部に導入して、内部で伝播させつつ、一方の板面(発光面34A)から出射させる構成となっている。
【0031】
複数の面状発光体34は、図2に示すように、支持板31の長手方向(前後方向)に沿って並ぶ横並びとされている。複数の各面状発光体34は、図4に示すように、支持板31の対向面31Aに当該対向面31Aから窪むように設けられた凹部32に嵌め入れられる形で、支持板31に固定されている。面状発光体34の発光面34Aは、支持板31の対向面31Aと面一とされている。
【0032】
これら複数の面状発光体34は、個別に点灯状態を制御可能なものとなっている。具体的には、各面状発光体34は、照度を一定範囲で変更可能であり、点灯・消灯を切り替え可能とされるとともに、点灯時においては、相対的に明るい高照度から暗い低照度の範囲で段階的に照度を変更可能とされている。
【0033】
横並びとされて互いに隣り合う各面状発光体34の間には、例えば図5に示すように、支持板31を貫通する複数の孔部33が設けられている。孔部33は、上下方向に3つずつ並んで、各面状発光体34の間に設けられている。なお孔部33は、ステンシルシート25の遮光部27に対応する位置に設けられている。
【0034】
各孔部33には、伸縮ピン36が挿通されている。伸縮ピン36は細長い棒状の部材であって、アクチュエータ35を構成するものである。
【0035】
本実施形態のアクチュエータ35は、伸縮ピン36を、電極間に電圧を印加することによって所定方向に伸縮する導電性高分子または形状記憶合金を使用して構成した、導電性高分子アクチュエータまたは形状記憶合金アクチュエータである。電極は、通電・切電を制御する駆動装置(図示せず)に接続されている。
【0036】
各伸縮ピン36は、通電により支持板31側からステンシルシート25側に向けて伸びる伸長状態と、切電により支持板31側に縮む短縮状態との間で個別に伸縮制御可能とされている。また各伸縮ピン36の先端面は、それぞれ、ステンシルシート25の室外面25Bに接着剤等により固定されている。ステンシルシート25は、各伸縮ピン36を個別に伸縮させることにより、部分的に撓ませることが可能とされている。すなわち、各伸縮ピン36を個別に伸縮させることにより、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を部分的に変化可能とされている(図5および図6参照)。
【0037】
図7は、伸縮ピン36(同図には図示せず)が伸長し、ステンシルシート25が意匠パネル23に近接して当該意匠パネル23に沿った状態における光の進み方を表す説明図であり、図8は、伸縮ピン36(同図には図示せず)の一部が短縮し、ステンシルシート25の一部が面状発光体34側(図8の右側)に引っ張られて撓んでいる状態における光の進み方を表す説明図である。
【0038】
伸縮ピン36が伸長し、図7に示すように、ステンシルシート25が意匠パネル23に近接して当該意匠パネル23に沿った状態では、面状発光体34から発せられ、ステンシルシート25の透光部26を透過した光は、意匠パネル23の板面に対して垂直方向に入射する。このため、意匠面23Aに映し出されるステンシルシート25の像は、高照度で、透光部26と遮光部27との境界がはっきりとした明瞭な像となる。
【0039】
一方、図8に示すように、ステンシルシート25の一部が伸縮ピン36の短縮により面状発光体34側に引っ張られて撓んでいる状態では、面状発光体34から発せられ、ステンシルシート25の透光部26を透過した光は、空間S内(ステンシルシート25と意匠パネル23との間の隙間)において拡散しつつ進行し、意匠パネル23に入射される際には、透光部26の透過時より広がった状態で、意匠パネル23の板面に対して斜め方向に進む光を含んで入射する。このため、意匠面23Aに映し出されるステンシルシート25の像は、ステンシルシート25が意匠パネル23に近接して沿った状態とされた場合と比較して、低照度で、透光部26と遮光部27との境界がはっきりとしない、ぼやけた像となる。
【0040】
つまり、アクチュエータの駆動によりステンシルシート25の意匠パネル23に対する位置を変化させることにより、意匠パネル23に映し出されるステンシルシート25の像を変化させることが可能となる。さらに、面状発光体34の照度を変化させることによっても、より、像を変化させることが可能となる。
【0041】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の照明装置20は、ドアトリム10に設けられて車両の室内意匠面を構成するものであって、透光性を有する意匠パネル23と、意匠パネル23の車室外側に当該意匠パネル23と対向して配され、透光性を有する透光部26および遮光性を有する遮光部27を備えるステンシルシート25と、ステンシルシート25の車室外側に配され、ステンシルシート25に向けて発光する面状発光体34と、ステンシルシート25に連結され、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を変化させるアクチュエータ35と、を備え、アクチュエータ35によりステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を変化させることによって、意匠パネル23に映し出されるステンシルシート25の像を変化可能としたものである。
【0042】
上記構成によれば、面状発光体34から発せられて意匠パネル23を照射する光のうち、ステンシルシート25の遮光部27により遮られた部分の影が、意匠パネル23に映し出される。すなわち、ステンシルシート25の像が、意匠パネル23に映し出される。この時、ステンシルシート25と面状発光体34(支持板31)との間の距離をアクチュエータ35により変化させることによって、ステンシルシート25の透光部26を透過した光の広がり方が変化するから、意匠パネル23に映し出される像(遮光部27の影)を動きのある、変化に富んだものとすることができる。つまり、高品質な空間を乗員に提供することができる。
【0043】
面状発光体34は複数設けられるとともに支持板31に支持されており、 ステンシルシート25は可撓性を有するシート状とされ、ステンシルシート25をアクチュエータ35によって部分的に撓ませることにより、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を部分的に変化可能としている。
【0044】
上記構成によれば、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を部分的に変化させることが可能であるから、意匠パネル23に映し出される像を、より変化に富んだものとすることができる。
【0045】
アクチュエータ35は、支持板31側からステンシルシート25側に向けて伸びる伸長状態と支持板31側に縮む短縮状態との間で個別に伸縮可能な複数の伸縮ピン36を備えるとともに、複数の伸縮ピン36の先端面がステンシルシート25と連結されており、複数の伸縮ピン36を個別に伸縮させてステンシルシート25を部分的に撓ませることにより、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を部分的に変化可能としている。
【0046】
また、伸縮ピン36は印加された電圧によって伸縮する導電性高分子アクチュエータまたは形状記憶合金アクチュエータにより構成されている。
【0047】
上記構成によれば、伸縮ピン36を機械的構造でつくる構成と比較して部品点数が少なく、簡易な構成とすることができる。また、簡易な構成でありながら、大面積や曲面状のシート部材、複雑な形状に対応し易く、シート部材の形状(撓み方)のバリエーションの自由度が高い。また、軽量化および薄型化も可能である。さらに、機械的構造と比較して静穏性にも優れる。
【0048】
また、伸縮ピン36は支持板31に対して伸縮可能な状態で取り付けられている。このように、面状発光体34を支持する支持板31を利用して伸縮ピン36を取り付けることにより、照明装置20を簡易な構成とすることができる。
【0049】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0050】
(1)上記実施形態では、ステンシルシート25を可撓性を有するシート状とし、当該ステンシルシート25をアクチュエータ35により撓ませる構成を示したが、ステンシル部材の代わりに支持部材を可撓性とし、アクチュエータを支持部材に連結して支持部材を撓ませることにより、ステンシル部材と支持部材との間の距離を変化可能な構成としてもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、ステンシルシート25の縁部を意匠パネル23側に固定する構成としたが、ステンシル部材の縁部は、支持部材側に固定する構成とすることもできる。また、ステンシル部材は縁部に限らず、縁部以外の一部分を意匠パネルや支持部材に固定する構成とすることもできる。
【0052】
(3)ステンシル部材および支持部材がともに可撓性を有さない構成も本明細書に開示される技術に含まれる。その場合、ステンシル部材と発光体との間の距離は、部分的でなく、全体が一律に変化する。
【0053】
(4)上記実施形態では、照明装置20はドアトリム10とは別体のハウジング21を備える構成としたが、ハウジング21の収容部22をドアトリム10と一体に連続させる構成としてもよい。また、収容部22を省略し、ステンシル部材および発光部を、意匠パネルとインナパネルとの間に剥き出しで設置することもできる。
【0054】
(5)上記実施形態では、車両のサイドドアの車室内側を覆うドアトリム10に設けられる照明装置20を示したが、照明装置はドアトリムに限らず、天井やインパネ等に設けるものも含まれる。
【0055】
(6)上記実施形態では、ステンシルシート25と面状発光体34との間の距離を導電性高分子または形状記憶合金のアクチュエータ35を用いて変化させる形態を示したが、アクチュエータは電磁式や機械式ものを使用することもできる。また、伸縮ピン36以外の形態を採用することもできる。
【0056】
(7)上記実施形態では、アクチュエータ35(伸縮ピン36)を支持板31に取り付ける構成を示したが、アクチュエータ(伸縮ピン)は、発光体を支持する支持部材に限らず、別途部材を設けてその部材に取り付ける構成とすることもできる。
【0057】
(8)上記実施形態では、面状発光体34を支持板31に取り付ける構成を示したが、発光体はハウジング内に単体で設ける構成としてもよい。また、アクチュエータを発光体に直接取り付ける構成としてもよい。
【0058】
(9)発光部は面状発光体34に限るものでなく、例えば、テープ状の線状発光体や、点状発光体等、他の形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
10:ドアトリム(乗物用内装材)、20:照明装置(乗物用照明装置)、21:ハウジング、22:収容部、23:意匠パネル、23A:意匠面、24:表皮材、25:ステンシルシート(ステンシル部材)、26:透光部、27:遮光部、31:支持板(支持部材)、33:孔部、34:面状発光体(発光部)、35:アクチュエータ、36:伸縮ピン、S:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8