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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175217
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】脱水システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/12 20190101AFI20221117BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20221117BHJP
【FI】
C02F11/12 ZAB
C02F11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081448
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美有
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄也
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE08
4D059BE15
4D059BE55
4D059BJ01
4D059BJ02
4D059BJ16
4D059DA15
4D059DA22
4D059DB11
4D059EA01
4D059EA11
4D059EA20
4D059EB02
4D059EB06
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】濁質残渣の状態を示す指標値の精度の高い予測値を算定して、目標含水率を維持することができる脱水システムを提供する。
【解決手段】脱水システムは、濁質残渣を生成する脱水装置2と、懸濁液の状態を示す懸濁液データ、複数の運転パラメータを含む運転データ、および濁質残渣の状態を示す濁質残渣データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された複数の予測モデルが格納された制御システム6を備える。制御システム6は、懸濁液データおよび運転データを複数の予測モデルに入力し、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定するように構成されている。複数の予測モデルは、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルであり、第1の予測モデルの構築に使用される運転データは、第2の予測モデルの構築に使用される運転データに含まれていない項目を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液から液体を除去することで濁質残渣を生成する脱水装置と、
前記懸濁液の状態を示す懸濁液データ、前記脱水装置の複数の運転パラメータを含む運転データ、および前記濁質残渣の状態を示す濁質残渣データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された複数の予測モデルが格納された制御システムと、を備え、
前記制御システムは、懸濁液データおよび前記運転データを前記複数の予測モデルに入力し、前記濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定するように構成されており、
前記複数の予測モデルは、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルであり、
前記第1の予測モデルの構築に使用される運転データは、前記第2の予測モデルの構築に使用される運転データに含まれていない項目を含むことを特徴とする脱水システム。
【請求項2】
前記第1の予測モデルは、前記懸濁液データ、前記濁質残渣データ、および制御結果として得られるデータを含む前記運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されており、
前記第2の予測モデルは、前記懸濁液データ、前記濁質残渣データ、および制御可能な運転パラメータから構成された運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されており、
前記制御システムは、前記第1の予測モデルを用いて算定された予測値と、前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知する、または前記第1の予測モデルおよび前記第2の予測モデルのうちの少なくともいずれかの予測モデルを再構築または更新することを特徴とする請求項1に記載の脱水システム。
【請求項3】
濁質残渣の状態を表す物理量を測定する濁質残渣測定器をさらに備え、
前記制御システムは、前記物理量の測定値と、前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知する、または前記第2の予測モデルを再構築または更新することを特徴とする請求項2に記載の脱水システム。
【請求項4】
前記制御システムは、前記懸濁液データ、前記運転データ、前記濁質残渣データを含むデータベースを備え、
前記制御システムは、運転パラメータの振り幅を設定可能に構成されており、
前記制御システムは、前記脱水システムの運転時に新たに得られる懸濁液データ、前記脱水システムの運転時に新たに得られる運転データ、前記脱水システムの運転時に新たに得られる濁質残渣データ、前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる懸濁液データ、前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる運転データ、および前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる濁質残渣データのうちの少なくとも1つを前記データベースに登録し、前記データベースに登録されたデータのうちの少なくとも1つを用いて前記予測モデルの再構築または更新を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脱水システム。
【請求項5】
前記制御システムは、薬品量に関するパラメータ、または脱水装置本体の動作に関するパラメータの振り幅を設定可能にすることを特徴とする請求項4に記載の脱水システム。
【請求項6】
前記制御システムは、前記薬品量に関するパラメータ、または前記脱水装置本体の動作に関するパラメータの振り幅を設定した際に、前記第1の予測モデルを用いて算定された予測値と前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との少なくともいずれかが、予め設定した目標値を満たしていない場合、報知する、あるいは前記訓練データの取得を実施しないことを特徴とする請求項5に記載の脱水システム。
【請求項7】
前記制御システムは、前記運転パラメータの振り幅が設定された状態での前記脱水システムの運転時に、運転が異常であると判断した場合は、訓練データの取得を中止することを特徴とする請求項4または5に記載の脱水システム。
【請求項8】
前記制御システムは、前記予測値または前記複数の予測モデルの精度を表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記脱水装置から離れた遠隔地に設置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の脱水システム。
【請求項9】
前記制御システムは、前記脱水装置から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて前記複数の予測モデルの更新を実行することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の脱水システム。
【請求項10】
前記制御システムは、前記予測値または前記複数の予測モデルの精度を表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記脱水装置から離れた遠隔地に設置されており、
前記制御システムは、前記脱水装置から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて前記振り幅の設定を実行することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥またはスラリーなどの懸濁液を濁質と液体とに分離させる脱水装置を備えた脱水システムに関し、特に脱水装置の自動運転をさせることができる脱水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、産業排水処理場などの液体処理施設から排出される懸濁液(例えば汚泥)を圧搾して、該懸濁液から水を分離する(すなわち、脱水する)脱水機が使用されている。脱水装置の一例であるスクリュープレスは、汚泥脱水機として知られている。このスクリュープレスは、スクリーン(多孔板)から形成されたろ過筒と、ろ過筒の内部に配置されたスクリューとを備えており、スクリューを回転させることにより、ろ過筒に投入された懸濁液を圧搾し、脱水する。ろ過筒の下流側開口端には、懸濁液を堰き止める背圧板が配置され、この背圧板により、回転するスクリューにより送られてくるケーキ(脱水された汚泥)を滞留させ、ケーキからなるプラグ(栓)を形成する。このプラグは、後から送り込まれるケーキに背圧を加えて、ケーキをさらに圧搾する。プラグを形成するケーキは、後続のケーキに押されてろ過筒から少しずつ排出される。このようにして低含水率のケーキがスクリュープレスによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-51458号公報
【特許文献2】特開2020-113151号公報
【特許文献3】特開2020-114569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、機械学習モデルを用いてスクリュープレス脱水機の濁質残差の状態を予測するシステムであり、このシステムではスクリュープレス脱水機の懸濁液データの現在値と、前記運転パラメータを入力情報として、濁質残差の予測値を出力する、さらには最適な運転方法を計算するシステムである。しかしながら、濁質残差の含水率をリアルタイムで精度良く実測することは困難であるため、機械学習モデルの予測値と実測値のずれを逐次確認することができないという問題があった。
【0005】
特許文献2は、アルゴリズムの異なる複数の機械学習モデルを備えて高精度の予測値を出力するシステムであり、このシステムは、アルゴリズムを変えることで高精度の予測が可能なシステムであるが、予測精度はデータセットの内容に大きく影響する問題があった。また、予測精度の誤差が許容値を超えたらモデルを再構築し更新することができるが、含水率のように、リアルタイムで精度良く実測することが困難な対象への適応ができないことが問題であった。
【0006】
特許文献3は、機械学習モデルを用いて遠心脱水機の含水率を予測するシステムであり、このシステムは遠心脱水機の設定値や運転の結果により得られるトルクなどの運転状態に関するデータを入力情報として、含水率の予測値を出力するシステムであるが、運転の結果により得られる運転状態を入力として用いているため、含水率の予測はできるが、含水率を制御するための運転操作方法のシミュレーションができないことが問題であった。
【0007】
最終的に得られるケーキ(濁質残渣)の含水率を常に目標範囲内に収めるためには、機械学習で構築したモデルにより現在の運転条件下でのケーキの含水率を予測し、その予測結果に基づいてスクリュープレスの運転条件を変更することが望ましい。しかしながら、従来技術では以下の問題があった。第1に、構築したモデルに用いたデータセットに偏りがあった際(データ量が十分でない)に、運転データの少ないパラメータ数値範囲での予測を行うと予測結果が実測と大きく乖離する。第2に、汚泥性状(懸濁液性状)や脱水機の使用状況や経年劣化等の状態変化などの要因により、モデルの予測精度が悪化する。
このため、ケーキの含水率を継続的に、かつ、正確に予測すること、および目標含水率を維持することは難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、濁質残渣の状態を示す指標値の精度の高い予測値(例えばケーキの予測含水率)を算定して、目標含水率を維持することができる脱水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、懸濁液から液体を除去することで濁質残渣を生成する脱水装置と、前記懸濁液の状態を示す懸濁液データ、前記脱水装置の複数の運転パラメータを含む運転データ、および前記濁質残渣の状態を示す濁質残渣データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された複数の予測モデルが格納された制御システムと、を備え、前記制御システムは、懸濁液データおよび前記運転データを前記複数の予測モデルに入力し、前記濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定するように構成されており、前記複数の予測モデルは、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルであり、前記第1の予測モデルの構築に使用される運転データは、前記第2の予測モデルの構築に使用される運転データに含まれていない項目を含むことを特徴とする脱水システムが提供される。
【0010】
一態様では、前記第1の予測モデルは、前記懸濁液データ、前記濁質残渣データ、および制御結果として得られるデータを含む前記運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されており、前記第2の予測モデルは、前記懸濁液データ、前記濁質残渣データ、および制御可能な運転パラメータから構成された運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されており、前記制御システムは、前記第1の予測モデルを用いて算定された予測値と、前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知する、または前記第1の予測モデルおよび前記第2の予測モデルのうちの少なくともいずれかの予測モデルを再構築または更新することを特徴とする。
一態様では、濁質残渣の状態を表す物理量を測定する濁質残渣測定器をさらに備え、前記制御システムは、前記物理量の測定値と、前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知する、または前記第2の予測モデルを再構築または更新することを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記懸濁液データ、前記運転データ、前記濁質残渣データを含むデータベースを備え、前記制御システムは、運転パラメータの振り幅を設定可能に構成されており、前記制御システムは、前記脱水システムの運転時に新たに得られる懸濁液データ、前記脱水システムの運転時に新たに得られる運転データ、前記脱水システムの運転時に新たに得られる濁質残渣データ、前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる懸濁液データ、前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる運転データ、および前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる濁質残渣データのうちの少なくとも1つを前記データベースに登録し、前記データベースに登録されたデータのうちの少なくとも1つを用いて前記予測モデルの再構築または更新を行うことを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、薬品量に関するパラメータ、または脱水装置本体の動作に関するパラメータの振り幅を設定可能にすることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記薬品量に関するパラメータ、または前記脱水装置本体の動作に関するパラメータの振り幅を設定した際に、前記第1の予測モデルを用いて算定された予測値と前記第2の予測モデルを用いて算定された予測値との少なくともいずれかが、予め設定した目標値を満たしていない場合、報知する、あるいは前記訓練データの取得を実施しないことを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記運転パラメータの振り幅が設定された状態での前記脱水システムの運転時に、運転が異常であると判断した場合は、訓練データの取得を中止することを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記予測値または前記複数の予測モデルの精度を表示する表示部をさらに備え、前記表示部は、前記脱水装置から離れた遠隔地に設置されていることを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記脱水装置から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて前記複数の予測モデルの更新を実行することを特徴とする。
一態様では、前記制御システムは、前記予測値または前記複数の予測モデルの精度を表示する表示部をさらに備え、前記表示部は、前記脱水装置から離れた遠隔地に設置されており、前記制御システムは、前記脱水装置から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて前記振り幅の設定を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも一部の説明変数の項目が互いに異なる複数の予測モデルを用いて濁質残渣の状態予測を行うことで、より精度の高い濁質残渣の状態の予測を行うことができる。結果として、脱水システムは、目標含水率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】脱水システムの一実施形態を示す図である。
図2】訓練データを用いて機械学習により予測モデルを作成し、学習済みのモデルを使用して濁質残渣の状態を示す指標値(含水率)の予測値を算出するフローの一例を説明する図である。
図3】表示部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、脱水システムの一実施形態を示す図である。脱水システムは、懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽1と、懸濁液から液体を除去することで濁質残渣を生成する脱水装置2と、脱水装置2の動作を制御し、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定する制御システム6を備えている。
【0014】
脱水装置2は、薬品としての凝集剤を懸濁液に注入し、凝集剤と懸濁液を攪拌することにより凝集物を形成する凝集装置3と、凝集物から液体を除去し、濃縮物を形成する濃縮装置4と、濃縮された凝集物からなる濃縮物から液体をさらに除去して濁質残渣を形成する脱水装置本体5を備えている。脱水装置本体5は、凝集装置3によって形成された凝集物、または濃縮装置4によって形成された濃縮物から液体を除去し、濁質残渣を形成する。
【0015】
濁質残渣は、懸濁液から液体を除去した後に残る低含水率の物質である。脱水装置本体5によって懸濁液から液体を除去した後に残る濁質残渣は、一般に、ケーキと呼ばれる。以下の説明では、濁質残渣をケーキと呼ぶことがある。懸濁液の具体例としては、下水またはし尿、工場排水の処理時に発生する汚泥が挙げられる。また、汚泥以外の懸濁液の例としては、食料品、化粧品、紙などの工業製品の製造時に発生する産業廃棄物、またはスラリーが挙げられる。
【0016】
本実施形態では、濃縮装置4は、回転円板式脱液装置(例えば株式会社研電社製のスリットセーバー)であるが、濃縮装置4のタイプは特に限定されない。例えば、濃縮装置4は、ドラム式、スクリュー式、またはベルト式であってもよい。本実施形態の脱水装置本体5は、懸濁液を加圧して脱水するスクリュープレスから構成される。スクリュープレスは、懸濁液を脱水する加圧脱水機の一例である。スクリュープレスは特に限定されない。例えば、圧入式、軸摺動式、同軸差動式であってもよい。図1に示す脱水装置本体5は、軸摺動式のスクリュープレスである。
【0017】
図1に示すように、凝集装置3は、懸濁液を収容し、懸濁液を凝集剤と混合する凝集混和槽7と、凝集混和槽7内の懸濁液を攪拌するための攪拌機8と、凝集混和槽7に接続された懸濁液導入管14と、懸濁液導入管14に設けられたポンプ12を備えている。攪拌機8は、凝集混和槽7内に配置された攪拌羽根9と、攪拌羽根9に連結された攪拌モータ10を備えている。懸濁液貯留槽1は、懸濁液導入管14によって凝集混和槽7に接続されている。懸濁液は、ポンプ12により懸濁液導入管14を通じて懸濁液貯留槽1から凝集混和槽7に移送される。凝集混和槽7への懸濁液の流量は、ポンプ12の運転によって調整することが可能である。
【0018】
ポンプ12は制御システム6に接続されており、ポンプ12の動作、すなわち凝集混和槽7への懸濁液の流量は、制御システム6によって制御される。懸濁液導入管14には懸濁液の性状を測定するセンサ(例えば、温度センサ)22が取り付けられている。このセンサ22は、凝集混和槽7に導入される懸濁液の温度を測定するように構成されている。さらに、懸濁液導入管14には懸濁液濃度計24が取り付けられており、凝集混和槽7に導入される懸濁液中の懸濁物質の濃度は懸濁液濃度計24によって測定される。
【0019】
脱水システムは、懸濁液貯留槽1内の懸濁液(処理前の懸濁液)の画像データを生成する懸濁液撮像装置29を備えている。懸濁液撮像装置29は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、懸濁液撮像装置29は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。懸濁液撮像装置29は、制御システム6に接続されており、懸濁液撮像装置29によって生成された懸濁液(処理前の懸濁液)の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0020】
凝集装置3は、凝集混和槽7に接続された水供給ライン26と、水供給ライン26に取り付けられた流量制御弁27をさらに備えている。水供給ライン26は、水を凝集混和槽7内に供給し、凝集混和槽7内の懸濁液を希釈する。水供給ライン26を通って凝集混和槽7に供給される水の流量は流量制御弁27によって調整される。流量制御弁27は制御システム6に接続されており、流量制御弁27の動作、すなわち水の流量は、制御システム6によって制御される。一実施形態では、水供給ライン26を懸濁液導入管14に接続し、水を懸濁液導入管14に直接供給してもよい。
【0021】
凝集装置3は、凝集混和槽7に接続された凝集剤供給装置28をさらに備えている。この凝集剤供給装置28は、凝集剤を予め定められた流量で凝集混和槽7内の懸濁液に注入するように構成されている。凝集混和槽7内の懸濁液に注入される凝集剤の流量は、凝集剤供給装置28によって調整される。この凝集剤供給装置28は制御システム6に接続されており、凝集剤供給装置28の動作、すなわち凝集剤の流量は、制御システム6によって制御される。懸濁液は凝集剤とともに攪拌機8によって攪拌される。凝集混和槽7内で凝集剤と懸濁液を攪拌することにより、懸濁液内の懸濁物質が集合した凝集物が形成される。凝集混和槽7内で形成される凝集物は、一般に、凝集フロックと呼ばれる。凝集剤の例として、高分子凝集剤や、鉄・アルミ系の凝集剤が挙げられる。
【0022】
脱水システムは、凝集装置3によって形成された凝集物の画像データを生成する凝集物撮像装置31を備えている。凝集物撮像装置31は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、凝集物撮像装置31は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0023】
凝集物撮像装置31は、凝集混和槽7の内部を向いており、凝集混和槽7内の凝集物の画像データを生成するように配置されている。凝集物撮像装置31は、制御システム6に接続されており、凝集物撮像装置31によって生成された凝集物の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。一実施形態では、凝集物撮像装置31は、凝集混和槽7の出口を向き、凝集混和槽7から排出された凝集物の画像データを生成するように配置されてもよい。
【0024】
懸濁液の攪拌強度は、攪拌機8の回転速度によって調整することができる。攪拌機8は制御システム6に接続されており、攪拌機8の動作、すなわち懸濁液の攪拌強度は、制御システム6によって制御される。
【0025】
凝集混和槽7は、懸濁液移送管18によって濃縮装置4に連結されている。濃縮装置4は、凝集装置3と脱水装置本体5との間に配置されている。凝集装置3によって形成された凝集物からなる懸濁液は、懸濁液移送管18を通って濃縮装置4に移送される。
【0026】
脱水システムは、濃縮装置4によって形成された濃縮物(濃縮された凝集物)の画像データを生成する濃縮物撮像装置32をさらに備えている。濃縮物撮像装置32は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、濃縮物撮像装置32は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0027】
濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4に隣接して配置されている。より具体的には、濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の内部を向いており、濃縮装置4によって濃縮される工程中の凝集物の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の入口、または濃縮装置4の入口から濃縮装置4の上部を向き、凝集物から液体が除去されている状態の濃縮物の画像データを生成するように配置されてもよいし、または濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の出口を向き、濃縮装置4によって濃縮された後の凝集物、すなわち濃縮物の画像データを生成するように配置されてもよい。濃縮物撮像装置32は、制御システム6に接続されており、濃縮物撮像装置32によって生成された濃縮物の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0028】
脱水システムは、濃縮装置4によって凝集物から分離された液体の画像データを生成する分離液撮像装置33をさらに備えている。分離液撮像装置33は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、分離液撮像装置33は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。分離液撮像装置33は、濃縮装置4の排液ドレイン4aに隣接して配置されており、濃縮装置4から排出された液体の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、濃縮装置4は、濃縮装置4から排出された液体を受ける液体受け(図示せず)を有し、分離液撮像装置33はこの液体受けの内部を向いて配置されてもよい。分離液撮像装置33は、制御システム6に接続されており、分離液撮像装置33によって生成された液体の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0029】
濃縮装置4の出口は、脱水装置本体5の投入口35の上方に配置されており、濃縮装置4によって形成された濃縮物からなる懸濁液は、脱水装置本体5の投入口35に投入される。スクリュープレスとしての脱水装置本体5は、ろ過筒36と、ろ過筒36内に同心状に配置されたスクリュー軸37と、スクリュー軸37の外面に固定されたスクリュー羽根38と、スクリュー軸37およびスクリュー羽根38を回転させて懸濁液を排出室41に向かって送るスクリューモータ40と、スクリューモータ40に連結された軸摺動アクチュエータ42を備えている。
【0030】
ろ過筒36は、パンチングメタルなどの多孔板から構成されている。ろ過筒36の一端は閉塞壁44によって密封されており、ろ過筒36の他端は排出室41に接続されている。投入口35はろ過筒36に形成されており、かつ閉塞壁44に隣接している。
【0031】
スクリュー軸37は、ろ過筒36内を貫通して延びている。スクリュー軸37は、下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状を有している。スクリュー軸37は閉塞壁44を貫通して延びており、スクリュー軸37の端部はスクリューモータ40に連結されている。スクリューモータ40には、インバータ(図示せず)が内蔵されている。スクリューモータ40は制御システム6に接続されており、スクリューモータ40の動作、すなわちスクリュー軸37およびスクリュー羽根38の回転速度は、制御システム6によって制御される。
【0032】
スクリュー羽根38は、スクリュー軸37の長手方向に沿って螺旋状に延びる一枚羽根である。ろ過筒36の内面とスクリュー羽根38との間には微小な隙間が形成されており、スクリュー羽根38はろ過筒36に接触することなく回転することができる。投入口35からろ過筒36内に投入された懸濁液は、回転するスクリュー羽根38によりろ過筒36内を排出室41に向かって移送される。
【0033】
懸濁液がろ過筒36内で移送される空間は、ろ過筒36の内面と、スクリュー羽根38と、スクリュー軸37とによって形成される。この空間の容積は、懸濁液の進行方向に沿って漸次減少する。したがって、この空間をスクリュー羽根38によって移動されるに従って、懸濁液は圧搾され、脱水される。ろ過筒36を通過したろ液は、ろ過筒36の下方に配置されたろ液受け45によって回収された後に、ドレイン46を通じて排出される。
【0034】
ろ過筒36の下流側端部に対向して環状の背圧板50が配置されている。この背圧板50は、ろ過筒36内を移送された脱水懸濁液を受けるためのテーパー面を有する円錐台の形状を有している。背圧板50の中央部には、スクリュー軸37が貫通する貫通孔が形成されており、背圧板50はスクリュー軸37と同心状に配置されている。背圧板50はスクリュー軸37に固定されておらず、背圧板50は回転しない。
【0035】
背圧板50は、背圧板駆動装置51に連結されている。この背圧板駆動装置51は、背圧板50を、スクリュー軸37の軸方向に移動させるように構成されている。背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間は、背圧板駆動装置51によって調整される。背圧板駆動装置51は、例えば油圧シリンダーまたは電動シリンダーなどから構成されている。背圧板駆動装置51は制御システム6に接続されており、背圧板駆動装置51の動作、すなわち背圧板50の軸方向の位置は、制御システム6によって制御される。
【0036】
軸摺動アクチュエータ42は、スクリューモータ40をスクリュー軸37の軸方向に移動させるように構成されている。軸摺動アクチュエータ42がスクリューモータ40を軸方向に移動させると、スクリューモータ40に連結されたスクリュー軸37およびスクリュー羽根38は、ろ過筒36内でスクリュー軸37の軸方向に移動される。
【0037】
次に、脱水装置本体5の動作について説明する。濃縮装置4によって形成された濃縮物からなる懸濁液は、投入口35からろ過筒36内に投入される。懸濁液は、回転するスクリュー羽根38によりろ過筒36内を排出室41に向かって移送される。ろ過筒36内を移動されるに従って、懸濁液は圧搾され、脱水される。ろ過筒36を通過したろ液は、ろ液受け45によって回収され、ドレイン46を通じて排出される。懸濁液は、ろ過筒36内で脱水されてケーキ(濁質残渣)を形成する。洗浄装置55は、予め設定された時間間隔で、ろ過筒36の外周面に洗浄液を供給する。
【0038】
ろ過筒36内を移動してきたケーキは、背圧板50に押し付けられる。ケーキは、その移動を背圧板50によって妨げられることで圧縮される。この圧縮されたケーキは、ろ過筒36の下流側端部をシールするプラグ52を形成する。プラグ52は、後続のケーキに背圧を加えることにより、ろ過筒36内のケーキの含水率を低下させる。ケーキは、ろ過筒36内でプラグ52を形成しながら、後続のケーキにより押されて背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間を通過して、少しずつ排出室41に排出される。ケーキは、排出室41の下部に設けられた排出口53を通って排出室41から排出される。このようにして、懸濁液から液体が除去されて、低含水率のケーキが形成される。
【0039】
背圧板50の軸方向の位置によって背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間が変わり、結果として、ろ過筒36内の懸濁液に加わる圧縮力が変わる。より具体的には、背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間が小さくなると、プラグ52を押し出すのにより大きな力が必要となるので、ろ過筒36内の懸濁液に加わる圧縮力が増加する。よって、スクリュー羽根38の回転速度のみならず、背圧板50の位置によっても、懸濁液に加わる圧縮力を調整することができる。ろ過筒36内には圧力センサ61が配置されており、ろ過筒36内の懸濁液の圧力は、圧力センサ61によって測定される。圧力センサ61は制御システム6に接続されており、懸濁液の圧力の測定値は制御システム6に送られるようになっている。圧力センサ61の位置はろ過筒36内であれば特に限定されず、ろ過筒36内の前段、中段、または後段のいずれであってもよく、複数の圧力センサ61がろ過筒36内に配置されてもよい。
【0040】
プラグ52は、低含水率のケーキから形成されている。プラグ52を形成しているケーキの含水率が低下すると、プラグ52が硬くなり、ろ過筒36の下流側端部を閉塞してしまうことがある。このような場合は、軸摺動アクチュエータ42は、スクリュー軸37およびスクリュー羽根38を軸方向に移動させることで、硬い低含水率のケーキを強制的に排出することができる。結果として、脱水装置本体5は、安定した連続運転が可能となる。
【0041】
脱水システムは、脱水装置本体5によって形成されたケーキ(濁質残渣)の画像データを生成する濁質残渣撮像装置64と、脱水装置本体5から排出されたろ液の画像データを生成する脱水ろ液撮像装置65を備えている。濁質残渣撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、濁質残渣撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0042】
濁質残渣撮像装置64は、脱水装置本体5の排出口53に隣接して配置されてもよいし、またはケーキが排出される背圧板50に隣接して配置されてもよい。さらに、濁質残渣撮像装置64は、排出口53または排出室41内に配置されてもよい。脱水ろ液撮像装置65は、脱水装置本体5のドレイン46に隣接して配置されている。一実施形態では、脱水ろ液撮像装置65は、ろ液受け45の内部を向いて配置され、ろ液受け45に受けられたろ液の画像データを生成してもよい。さらに、一実施形態では、脱水ろ液撮像装置65は、ろ過筒36の下面を向いて配置されてもよい。濁質残渣撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、制御システム6に接続されており、濁質残渣撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65によって生成されたケーキの画像データおよびろ液の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0043】
脱水システムは、濁質残渣の状態を表す物理量を測定する濁質残渣測定器68をさらに備えている。本実施形態では、濁質残渣の状態を表す物理量は濁質残渣の含水率であり、濁質残渣測定器68は、濁質残渣に近赤外領域の波長の光を照射し、濁質残渣の水分量(含水率)を測定する近赤外線水分計である。一実施形態では、濁質残渣の状態を表す物理量は濁質残渣の濃度であってもよく、濁質残渣測定器68は、濁質残渣にマイクロ波を照射し、濁質残渣の濃度を測定するマイクロ波式濃度計であってもよい。
【0044】
濁質残渣測定器68は、脱水装置本体5の排出口53に隣接して配置されてもよいし、またはケーキが排出される背圧板50に隣接して配置されてもよい。さらに、濁質残渣測定器68は、排出口53または排出室41内に配置されてもよい。濁質残渣測定器68は、制御システム6に接続されており、濁質残渣測定器68によって測定された濁質残渣の状態を表す物理量の測定値は、制御システム6に送られるようになっている。
【0045】
脱水システムは、ろ過筒36の外面の画像データを生成するろ過筒撮像装置66をさらに備えている。ろ過筒撮像装置66は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、ろ過筒撮像装置66は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0046】
ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36の上方に配置され、脱水装置本体5が懸濁液を圧搾しているときのろ過筒36の外面の画像データを生成する。より具体的には、ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36から漏れ出る濁質(懸濁液中の固形物)の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36の側方または下方に配置されてもよい。ろ過筒撮像装置66は、制御システム6に接続されており、ろ過筒撮像装置66によって生成されたろ過筒36の外面の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0047】
脱水装置2は、制御システム6に電気的に接続されている。制御システム6は、後述する機械学習を実行してモデルを作成し、そのモデルを使用するためのプログラムが格納された記憶装置6aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置6bを備えている。記憶装置6aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置6bの例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、洗浄監視システム30の具体的構成はこの例に限定されない。
【0048】
制御システム6は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。制御システム6は、脱水装置2に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって脱水装置2に接続されたクラウドサーバまたはフォグサーバであってもよい。制御システム6は、ゲートウェイ、ルーターなどの中に配置されてもよい。一実施形態では、制御システム6は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよい。
【0049】
制御システム6は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、制御システム6は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。記憶装置6aと演算装置6bは、別々の場所に設置された複数のコンピュータ内にそれぞれ配置されてもよい。
【0050】
制御システム6は、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を、機械学習により構築された予測モデル(すなわち学習済みモデル)を用いて算定するように構成されている。予測モデルは、記憶装置6a内に格納されている。制御システム6の演算装置6bは、懸濁液の状態を示す懸濁液データ(現在の懸濁液データ)および脱水装置2の複数の運転パラメータ(現在の運転パラメータ)を含む運転データを予測モデルに入力し、予測モデルのアルゴリズムに従って濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定するように構成される。本実施形態では、上記濁質残渣の状態を示す指標値は、濁質残渣の含水率である。一実施形態では、濁質残渣の状態を示す指標値は、濁質残渣の濃度であってもよい。制御システム6は、複数の予測モデルを備えており、複数の予測モデルが記憶装置6a内に格納されている。制御システム6は、懸濁液データおよび運転データを複数の予測モデルに入力し、各予測モデルごとに濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を算定する。
【0051】
予測モデルは、訓練データを用いた機械学習によって作成される。訓練データは、以下の説明変数と、目的変数を含む。予測モデルには、説明変数が入力され、予測モデルからは目的変数が出力される。
説明変数:予測したい変数(目的変数)を導出するため変数。
目的変数:予測したい変数。本実施形態では、濁質残渣の状態を示す指標値(含水率)が目的変数である。
【0052】
訓練データに含まれる説明変数は、懸濁液の状態を示す懸濁液データと、脱水システムの運転データを含む。上記運転データは、脱水装置2の複数の運転パラメータを含む。目的変数は、運転データに対応する濁質残渣の状態を示す指標値である。本実施形態では、目的変数としての上記指標値は、濁質残渣の状態を表す物理量(例えば濁質残渣の含水率)の実測データである。以下、本明細書では、目的変数としての濁質残渣の状態を示す指標値を濁質残渣データと呼ぶことがある。制御システム6は、上記説明変数および上記目的変数を含む訓練データを用いて、予測モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。一実施形態では、制御システム6は、訓練データを定期的または不定期に取得し、得られた訓練データを用いて機械学習を実行し、モデルを更新する。説明変数には、演算値を設けてもよい。
【0053】
機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、または決定木法などが挙げられる。本実施形態では、機械学習にディープラーニング法(深層学習法)が採用されるが、本発明はこれに限定されない。
【0054】
説明変数は、懸濁液の状態を示す懸濁液データと、脱水システムの運転データを含む。上記運転データは、脱水装置2の複数の運転パラメータを含む。
懸濁液データの具体例は以下の通りである。
・性状(温度、粘度、pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量。TSは分析値でも良いし、汚泥濃度計でもよい。)
【0055】
運転データの具体例は以下の通りである。
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・ポンプ12の回転速度
・薬品(凝集剤)の注入量(凝集剤供給装置28の運転速度)
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌モータ10の回転速度)
・凝集混和槽7への水の流量(流量制御弁27の開度)
・濃縮装置4の運転速度(濃縮装置4の駆動モータの回転速度)
・濃縮装置4の運転トルク(濃縮装置4の駆動モータへの電流値)
・濃縮装置4の調整変数(例えば圧搾板圧力調整)
・濃縮装置4によって分離された液体の流量(図示しない流量計によって測定される)
・濃縮装置4によって濃縮された懸濁液濃度(図示しない濃度センサによって測定される
・スクリュー軸37の回転速度
・軸摺動の頻度
・スクリューモータ40への電流値(トルク値)
・背圧板50の開度(背圧板駆動装置51の設定値)
・背圧板50の圧力設定値(図示しない圧力センサによって測定される)
・ろ過筒36の洗浄頻度
・ろ過筒36内の汚泥の圧力(圧力センサ61によって測定される)
・脱水ろ液の流量(図示しない流量計によって測定される)
【0056】
運転データに含まれる運転パラメータの具体例は、次の通りである。以下に示す運転パラメータは制御可能な運転パラメータである。
・ポンプ12の回転速度
・薬品(凝集剤)の注入量(凝集剤供給装置28の運転速度)
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌モータ10の回転速度)
・凝集混和槽7への水の流量(流量制御弁27の開度)
・濃縮装置4の運転速度(濃縮装置4の駆動モータの回転速度)
・濃縮装置4の調整変数(例えば圧搾板圧力調整)
・スクリュー軸37の回転速度
・軸摺動の頻度
・背圧板50の開度(背圧板駆動装置51の設定値)
・背圧板50の圧力設定値(図示しない圧力センサによって測定される)
・ろ過筒36の洗浄頻度
【0057】
図2は、訓練データを用いて機械学習により予測モデルを作成し、学習済みのモデルを使用して濁質残渣の状態を示す指標値(含水率)の予測値を算出するフローの一例を説明する図である。制御システム6の演算装置6bは、記憶装置6aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って、訓練データを用いた機械学習を実行し、予測モデルを構築する。得られた予測モデルは記憶装置6a内に格納される。一実施形態では、予め構築した予測モデルを記憶装置6aに格納してもよい。
【0058】
制御システム6は、現在の懸濁液データおよび脱水システムの現在の運転データを、予測モデルに入力し、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を予測モデルに従って算定する。また、制御システム6は、懸濁液データの仮定条件あるいは実測値、および脱水システムの運転データの仮定条件を、予測モデルに入力し、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値を予測モデルに従って算定することもできる(仮定条件を入力し、含水率のシミュレーションができる)。また、制御システム6は上記の仮定条件の入力により得られた含水率の予測値を基に、目標含水率を維持するための制御可能な運転パラメータを出力することもできる。
【0059】
上述のように、制御システム6は、複数の予測モデルを有している。本実施形態では、複数の予測モデルは、第1の予測モデルと第2の予測モデルを含む。第1の予測モデルの構築に使用される運転データは、前記第2の予測モデルの構築に使用される運転データに含まれていない項目を含んでいる。少なくとも一部の説明変数の項目が互いに異なる複数の予測モデルを用いて濁質残渣の状態予測を行うことで、より精度の高い濁質残渣の状態の予測を行うことができる。結果として、脱水システムは、目標含水率を維持することができる。
【0060】
具体的には、第1の予測モデルは、懸濁液データ、濁質残渣データ、および制御結果として得られるデータを含む前記運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されている。第2の予測モデルは、懸濁液データ、濁質残渣データ、および制御可能な運転パラメータから構成された運転データを少なくとも含む訓練データを用いて構築されている。すなわち、第2の予測モデルを構築するための機械学習には、制御結果として得られるデータを含まない訓練データが用いられる。第1の予測モデルの機械学習に使用される訓練データは、制御可能な運転パラメータと制御結果として得られるデータの両方を含む。
【0061】
制御結果として得られるデータとは、制御不可な項目のデータである。制御結果として得られるデータ(制御不可なデータ)の一例として、圧力センサ61によって測定されるろ過筒36内の懸濁液の圧力が挙げられる。ろ過筒36内の懸濁液の圧力が上がるにつれて濁質残渣の含水率は低下する。制御不可なデータは、運転した結果により得られるため、運転パラメータをシミュレーションする際には制御不可なデータを用いて構築された予測モデルを使用することができない。上記のシミュレーションは、説明変数として制御不可なデータを含まない第2モデルが用いられる。
【0062】
第1の予測モデルを使用した場合、より精度の高い予測値の算定を行うことができる。予測モデルは、予測精度が様々な事象(人口や動態変化などによる懸濁液性状の変化、脱水システムの構成要素の劣化など)により、予測精度が徐々に悪化することがある。そのため、説明変数として制御不可なデータを加えた予測モデル(予測精度の高いモデル。すなわち第1の予測モデル)と、説明変数として制御不可なデータを含まない予測モデル(第2の予測モデル)を比較することで、第2の予測モデルの予測精度の悪化を検知することができる。一実施形態では、第1の予測モデルは、第2の予測モデルの精度の確認のために使用される。
【0063】
一実施形態では、制御システム6は、第1の予測モデルを用いて算定された予測値と、第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、図示していない拡声装置による警報や音声案内、あるいは表示装置による表示などを報知してもよい。さらに一実施形態では、制御システム6は、第1の予測モデルを用いて算定された予測値と、第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、機械学習を再度行い、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルのうちの少なくともいずれかの予測モデルを再構築または更新してもよい。
【0064】
一実施形態では、上記誤差は、第1の予測モデルによる予測値と、第2の予測モデルによる予測値との相対誤差である。さらに一実施形態では、制御システム6は、第1の予測モデルを用いて算定された予測値と、第2の予測モデルを用いて算定された予測値との差が予め設定された許容値を超えたときに、報知してもよく、機械学習を再度行い、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルのうちの少なくともいずれかの予測モデルを再構築または更新してもよい。
【0065】
さらに一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣測定器68による濁質残渣の状態を表す物理量の測定値(実測値)と、第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知してもよい。さらに一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣測定器68による濁質残渣の状態を表す物理量の測定値(実測値)と、第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、機械学習を再度行い、第2の予測モデルを再構築または更新してもよい。
【0066】
さらに一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣測定器68による濁質残渣の状態を表す物理量の測定値(実測値)と、第1の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、報知してもよい。さらに一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣測定器68による濁質残渣の状態を表す物理量の測定値(実測値)と、第1の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差が予め設定された許容値を超えたときに、機械学習を再度行い、第1の予測モデルを再構築または更新してもよい。上記物理量の実測値と、第1または第2の予測モデルを用いて算定された予測値との誤差は絶対誤差である。
【0067】
上記許容値は任意に設定可能である。例えば、制御システム6は、上述した誤差が許容値から2ポイント以上ずれたときに、報知してもよく、機械学習を再度行い、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルのうちの少なくともいずれかの予測モデルを再構築または更新してもよい。上記誤差の例として、RMSE(Root Mean Square Error)、MAE(Mean Absolute Error)、およびMSE(Mean Squared Error)が挙げられる。濁質残渣測定器68による上記物理量の実測値と第1および/または第2の予測モデルとの誤差、および/または第1の予測モデルを用いて算定された上記予測値と、第2の予測モデルを用いて算定された上記予測値との誤差をモニタリングすることで、予測モデルの精度の悪化を検出することができる。
【0068】
制御システム6は、懸濁液データ、運転データ、濁質残渣データを含むデータベースを備えている。上記データベースは記憶装置6aに格納されている。制御システム6は、運転パラメータの振り幅を設定可能に構成されている。運転パラメータの振り幅は、運転パラメータの設定範囲である。言い換えれば、本実施形態では、脱水装置2の運転パラメータを所定の振り幅の範囲内で少しずつ変化させながら、脱水を実行し、濁質残渣の状態を表す物理量の実測値を取得する。
【0069】
振り幅の設定が可能な運転パラメータは、制御可能な運転パラメータである。例えば、制御システム6は、薬品(凝集剤)量に関するパラメータ(すなわち、薬品(凝集剤)の注入量)や、脱水装置本体5の動作に関するパラメータ(例えば、スクリュー軸37の回転速度、スクリューモータ40への電流値、ろ過筒36の洗浄頻度など)の振り幅を設定可能に構成されている。振り幅の設定は、1つの運転パラメータにのみ行ってもよく、複数の運転パラメータに行ってもよい。特に、薬注量(薬品(凝集剤)の注入量)、濃縮装置4の運転速度、背圧、スクリュー軸37の回転数に関するデータについてふり幅設定を行うと予測モデルの精度向上のため運転データの取得を効率的に行うことができる。通常時の脱水システムの運転データ、または振り幅設定により意図的に得た運転データなどの訓練データを基に予測モデルを再構築・更新することにより、より精度の高い濁質残渣の状態予測が可能となる。
【0070】
運転パラメータの振り幅の具体例は、以下の通りである。
・薬注量の振り幅は、0.5~4.0%-TS(汚泥濃度)(0.5~4.0g/L)がよい。薬注量の振り幅が1.0~3.0%の場合だとさらに効率的に訓練データが取得できる。薬注量は、高分子凝集剤および鉄・アルミ系の凝集剤のそれぞれに設定可能である。
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌回転数、言い換えれば攪拌モータ10の回転速度)は、0~200min-1
・機械回転数(例えば、スクリュー軸37の回転速度)は、同軸差動型スクリュープレスの場合、0~3min-1
・濃縮装置4の運転速度(濃縮装置4の駆動モータの回転速度)は、0~100min-1
・濃縮装置4の背圧は、0~500kPa
・脱水装置本体5の背圧(背圧板50の圧力)は、0~5MPa
・ろ過筒36の洗浄頻度は、1~10時間ごとに1回
【0071】
懸濁液の処理量も振ることで効率的にデータが取得できる。また、振り幅の更新頻度は設備の滞留時間などを考慮して、任意の時間で変更してもよい(例えば薬注量や攪拌機8の攪拌速度は滞留時間が短いため即座に変化が出る。脱水装置本体5の回転数(スクリュー軸37の回転数)は滞留時間が長いため、数時間かけてデータ取りを行う必要がある。)。
【0072】
一実施形態では、制御システム6は、上記運転パラメータの振り幅が設定された状態での脱水システムの運転時に、運転が異常であると判断した場合は、訓練データの取得を中止してもよい。また、設定した運転パラメータでの含水率予測値が、維持したい含水率の値に満たない場合は警報が出る設定としてもよい。具体的には、制御システム6は、薬品量に関するパラメータ、または脱水装置本体5の動作に関するパラメータの振り幅を設定した際に、第1の予測モデルを用いて算定された濁質残渣の状態を示す指標値の予測値および/または第2の予測モデルを用いて算定された濁質残渣の状態を示す指標値の予測値があらかじめ設定した目標値を満たしていない場合、報知してもよく、あるいは訓練データの取得を実施しなくてもよい。
【0073】
薬注量および攪拌機8の攪拌速度の回転数など凝集操作に関わる運転パラメータは、懸濁液の凝集に大きな影響を及ぼすため、機械学習を用いた画像解析により凝集状態が異常であると判断した場合は、当該異常データを取得した上で、以降のふり幅設定値での運転を中止してもよい(画像解析により正常であればデータの取得を継続する)。具体的には、制御システム6は、凝集物撮像装置31によって生成された凝集フロックや濃縮状態についての画像データに基づいて画像解析を行い、正常・異常の出力を行う。
【0074】
脱水装置本体5の回転数(スクリュー軸37の回転数)などの脱水操作に関わる運転パラメータは、脱水に影響するため、機械学習を用いた画像解析により脱水状態が異常であると判断した場合は、当該異常データを取得した上で、以降の振り幅設定値での運転を中止してもよい。(画像解析により正常であればデータの取得を継続する)。具体的には、制御システム6は、撮像装置64,65,66によって生成された画像データに基づいて画像解析を行い、正常・異常の出力を行う。具体的には、制御システム6は、上記画像データに基づいて脱水ろ液(脱水装置本体5から排出されたろ液)の状態(色や濁度の多さ)、パンチングのリーク(ろ過筒36から漏れ出る濁質)の状況、脱水ケーキの状態(供回りしていないか、水分の含み具合など)についての解析を行い、正常・異常の出力を行う。
【0075】
その他懸濁液処理量等の汚泥情報にかかる運転パラメータ(懸濁液の性状等)は、凝集および脱水に影響するため、制御システム6は、上述した方法(例えば、懸濁液撮像装置29によって生成された画像データに基づく画像解析)により凝集状態あるいは脱水状態の正常・異常の判別を行ってもよい。
【0076】
一実施形態では、制御システム6は、脱水システムの運転時に新たに得られる懸濁液データ(現在の懸濁液データ)、脱水システムの運転時に新たに得られる運転データ(現在の運転データ)、脱水システムの運転時に新たに得られる濁質残渣データ(現在の濁質残渣データ)、振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる懸濁液データ、前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる運転データ、および前記振り幅が設定された状態での運転時に新たに得られる濁質残渣データのうちの少なくとも1つを上記データベースに登録し、上記データベースに登録されたデータのうちの少なくとも1つを用いて機械学習を再度行い、複数の予測モデルの再構築または更新を行ってもよい。
【0077】
一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣の状態を示す指標値の予測値または複数の予測モデルの精度を表示する表示部70をさらに備えていてもよい。図3に表示部70の一例を示す。本実施形態の表示部70には、以下の項目が表示される。
・複数の予測モデル(第1の予測モデルおよび第2の予測モデル)から出力される濁質残渣の状態を示す指標値(含水率)の予測値
・複数の予測モデル(第1および/または第2の予測モデル)の予測精度
・目標値(例えば、濁質残渣の含水率の目標値やコスト)
・運転推奨値(上記目標値を達成するための運転パラメータ推奨値)
・振り幅設定ウインドウ(効率的に訓練データを得るための設定画面)
一実施形態では、図3には図示されていないが、現在の運転状況(懸濁液の性状などの運転パラメータ)を表示してもよい。
【0078】
表示部70は、脱水装置2から離れた遠隔地に設置されていてもよい。例えば、複数の脱水システムを監視する遠隔監視室内に表示部70が配置されてもよい。一実施形態では、表示部70は、制御システム6の少なくとも一部を構成するエッジサーバまたはクラウドサーバに設けられていてもよい。
【0079】
一実施形態では、制御システム6は、脱水装置2から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて脱水装置2の運転パラメータの振り幅の設定を実行するように構成されていてもよい。具体的には、上述のように表示部70には振り幅設定ウインドウが表示される。ユーザは、表示部70の振り幅設定ウインドウを通じて運転パラメータの振り幅を設定することができる。制御システム6は、ユーザからの要求に応じて運転パラメータの振り幅を設定する。表示部70の例としては、脱水システムの機能の少なくとも一部を遠隔で操作可能なWebアプリケーションが挙げられる。
【0080】
さらに一実施形態では、制御システム6は、脱水装置2から離れた遠隔地のユーザの要求に基づいて複数の予測モデル(第1の予測モデルおよび/または第2の予測モデル)の更新を実行するように構成されていてもよい。具体的には、ユーザは、表示部70を通じて制御システム6に予測モデルの更新を実行させることができる。制御システム6がこのような表示部70を備えることにより、ユーザが現状の予測モデルの予測精度の確認や予測モデルの再構築や更新を遠隔で行うことができるため、作業の効率化を図ることができる。
【0081】
一実施形態では、制御システム6は、濁質残渣の状態を示す指標値の目標値と予測値があらかじめ定めたしきい値以上に乖離した場合は、報知するように構成されていてもよい。さらに一実施形態では、運転パラメータの推奨値を予測するための制御因子をグリッドサーチでシミュレーションしてもよく、個別にいくつかのパターンをユーザが入力してもよい。さらに一実施形態では、表示部70には、運転パラメータの重要度が表示されてもよい(振り幅設定ウインドウに表示)。
【0082】
さらに一実施形態では、表示部70には、脱水システムの運転制御を演算結果により変更する際のユーザ(運転員)の承認が必要な機構を設けられていてもよい(自動運転on/off)。さらに一実施形態では、ユーザは、表示部70を通じて制御項目を個別に設定可能であってもよく、制御値の幅の指定が可能であってもよい。さらに一実施形態では、表示部70には、予測モデルの更新を演算結果により自動で更新する場合は、承認が必要な機構が設けられていてもよい。さらに一実施形態では、ユーザは、表示部70を通じて過去の予測モデルを選択し、更新可能であってもよい。
【0083】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 懸濁液貯留槽
2 脱水装置
3 凝集装置
4 濃縮装置
5 脱水装置本体
6 制御システム
6a 記憶装置
6b 処理装置
7 凝集混和槽
8 攪拌機
9 攪拌羽根
10 攪拌モータ
12 ポンプ
14 懸濁液導入管
18 懸濁液移送管
22 センサ
24 懸濁液濃度計
26 水供給ライン
27 流量制御弁
28 凝集剤供給装置
29 懸濁液撮像装置
31 凝集物撮像装置
32 濃縮物撮像装置
33 分離液撮像装置
35 投入口
36 ろ過筒
37 スクリュー軸
38 スクリュー羽根
40 スクリューモータ
41 排出室
42 軸摺動アクチュエータ
44 閉塞壁
45 ろ液受け
46 ドレイン
50 背圧板
51 背圧板駆動装置
52 プラグ
53 排出口
55 洗浄装置
61 圧力センサ
64 濁質残渣撮像装置
65 脱水ろ液撮像装置
66 ろ過筒撮像装置
68 濁質残渣測定器
70 表示部
図1
図2
図3