(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175221
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】立体物印刷装置、および、立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20221117BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221117BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20221117BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20221117BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221117BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221117BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20221117BHJP
B05B 12/00 20180101ALN20221117BHJP
B05B 13/04 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J3/407
B05C5/00 101
B05D7/00 K
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B25J13/00 Z
B05B12/00 A
B05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081452
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】望月 建寿
【テーマコード(参考)】
2C056
3C707
4D075
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB37
2C056EC11
2C056EC31
2C056EC35
2C056FA04
2C056FB01
2C056FB09
2C056HA12
3C707AS13
3C707BS12
3C707LU01
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075EA05
4D075EA33
4D075EA35
4F035AA03
4F035BB32
4F035BC02
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD06
4F035CD08
4F035CD12
4F035CD15
4F035CD18
4F035CD19
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA13
4F041BA22
4F042AA01
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA10
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】ヘッドの移動に伴って生じるロボットの振動を抑制すること。
【解決手段】立体的なワーク上の印刷領域に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、前記ワークと前記ヘッドとの相対的な位置および姿勢を変化させるロボットと、を有する立体物印刷装置であって、前記ロボットが前記ヘッドの位置を印刷準備位置から前記印刷準備位置よりも前記印刷領域に近い印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を調整する第1速度調整動作と、前記印刷開始位置において前記ヘッドが前記印刷領域に対して液体の吐出を開始し、前記ヘッドから液体を吐出しつつ、前記ロボットが前記ヘッドの位置および姿勢を変化させる印刷動作とを実行し、前記第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作の実行中における前記単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワーク上の印刷領域に対して液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持し、前記ワークと前記ヘッドとの相対的な位置および姿勢を変化させるロボットと、
を有する立体物印刷装置であって、
前記ロボットが前記ヘッドの位置を印刷準備位置から前記印刷準備位置よりも前記印刷領域に近い印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を調整する第1速度調整動作と、
前記印刷開始位置において前記ヘッドが前記印刷領域に対して液体の吐出を開始し、前記ヘッドから液体を吐出しつつ、前記ロボットが前記ヘッドの位置および姿勢を変化させる印刷動作と、
を実行し、
前記第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作の実行中における前記単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記第1速度調整動作は、
前記ヘッドの位置を前記印刷準備位置から前記印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を前記印刷準備位置における速度である第1速度から前記印刷開始位置における速度である第2速度へと調整し、
前記第1速度調整動作の実行中における期間において、前記ヘッドの移動速度は、前記第1速度から前記第2速度へと近づくように単調増加または単調減少する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記第1速度調整動作と前記印刷動作との間の期間において、前記ヘッドの移動速度を前記第2速度に維持しつつ、前記印刷開始位置に向かって前記ヘッドを移動させる速度維持動作を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記ロボットが前記ヘッドの位置を前記印刷準備位置よりも前記印刷領域から離れた待機位置において待機させる待機動作と、
前記ロボットが前記ヘッドを前記待機位置から前記印刷準備位置に向かって移動させる移動動作と、
を前記第1速度調整動作よりも前に実行する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記印刷準備位置において、前記ワークに対する前記ヘッドの相対的な移動を一定期間停止する印刷準備動作を前記第1速度調整動作の前に実行する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記第1速度調整動作は、
前記ヘッドの位置を前記印刷準備位置から前記印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を前記印刷準備位置における速度である第1速度から前記印刷開始位置における速度である第2速度へと調整し、
前記第2速度が、前記第1速度より大きい、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記第1速度調整動作は、
前記ヘッドの位置を前記印刷準備位置から前記印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を前記印刷準備位置における速度である第1速度から前記印刷開始位置における速度である第2速度へと調整し、
前記第2速度が、前記第1速度より小さい、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記ヘッドが液体の吐出を停止し、前記ヘッドの移動速度を変化させる第2速度調整動作を前記印刷動作に続いて実行し、
前記第2速度調整動作における前記ヘッドの加速度の絶対値は、前記第1速度調整動作における前記ヘッドの加速度の絶対値に比べて大きい、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記ヘッドは、液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記第1速度調整動作における単位移動量あたりの前記複数のノズルの配列方向まわりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作における前記単位移動量あたりの前記配列方向まわりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
立体的なワーク上の印刷領域に対して液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを支持し、前記ワークと前記ヘッドとの相対的な位置および姿勢を変化させるロボットと、
を用いた立体物印刷方法であって、
前記ロボットが前記ヘッドの位置を印刷準備位置から前記印刷準備位置よりも前記印刷領域に近い印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を調整する第1速度調整動作と、
前記印刷開始位置において前記ヘッドが前記印刷領域に対して液体の吐出を開始し、前記ヘッドから液体を吐出しつつ、前記ロボットが前記ヘッドを移動し、且つ、前記ヘッドの姿勢を変化させる印刷動作と、
を実行し、
前記第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作の実行中における前記単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置、および、立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、ワーク上の印刷領域に対してインク等の液体を吐出するヘッドと、ヘッドを支持し、ワークとヘッドとの相対的な位置を変化させるロボットとを有する立体物印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、印刷の実行中において、ヘッドの移動に伴ってロボットに振動が生じ、ロボットに生じた振動がヘッドに伝搬して、印刷品質が劣化する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、立体的なワーク上の印刷領域に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、前記ワークと前記ヘッドとの相対的な位置および姿勢を変化させるロボットと、を有する立体物印刷装置であって、前記ロボットが前記ヘッドの位置を印刷準備位置から前記印刷準備位置よりも前記印刷領域に近い印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を調整する第1速度調整動作と、前記印刷開始位置において前記ヘッドが前記印刷領域に対して液体の吐出を開始し、前記ヘッドから液体を吐出しつつ、前記ロボットが前記ヘッドの位置および姿勢を変化させる印刷動作とを実行し、前記第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作の実行中における前記単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい。
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、立体的なワーク上の印刷領域に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、前記ワークと前記ヘッドとの相対的な位置および姿勢を変化させるロボットと、を用いた立体物印刷方法であって、前記ロボットが前記ヘッドの位置を印刷準備位置から前記印刷準備位置よりも前記印刷領域に近い印刷開始位置に向かって移動しつつ、前記ヘッドの移動速度を調整する第1速度調整動作と、前記印刷開始位置において前記ヘッドが前記印刷領域に対して液体の吐出を開始し、前記ヘッドから液体を吐出しつつ、前記ロボットが前記ヘッドを移動し、且つ、前記ヘッドの姿勢を変化させる印刷動作と、を実行し、前記第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量は、前記印刷動作の実行中における前記単位期間あたりの前記ヘッドの姿勢変化量よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態における液体吐出ユニット300の概略構成を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートを示す図。
【
図5】立体物印刷方法を実行中の一連の動作を説明するための説明図。
【
図6】第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の移動経路RUを説明するための説明図。
【
図7】参考例における移動経路RUaを説明するための説明図。
【
図8】第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の姿勢を説明するための説明図。
【
図9】経過時刻に対する出力信号D1_5を示す図。
【
図10】第1実施形態における関節230_1の振動の強度を説明するための図。
【
図11】参考例における関節230_1の振動の強度を説明するための図。
【
図12】第2実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートを示す図。
【
図13】第2実施形態に係る立体物印刷方法を実行中の一連の動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0010】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のワークWおよび基部210が設置される空間に設定されるベース座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置100は、立体的なワークWの表面の一部の印刷領域WFにインクジェット方式により印刷を行う装置である。
図1では、印刷領域WFは、ワークWの表面の一部であるが、表面の全部でもよい。
【0012】
図1に示す例では、ワークWは、長軸AXまわりの長球状をなすラグビーボールであり、印刷領域WFは、曲率が略一定の曲面である。但し、印刷領域WFは、曲率が一定でない曲面でもよい。本実施形態では、ワークWは、長軸AXがX軸に平行となるように配置される。なお、ワークWは、ラグビーボールに限定されない。例えば、ワークWは、何らかの製品となる物であり、印刷領域WFに印刷を行うことは、この製品を製造する一連の工程の一つである。ワークWの形状および大きさの態様は、
図1に示す例に限定されず、任意であり、例えば、ワークWの表面は、平面、段差面または凹凸面等の面を有してもよい。また、ワークWの設置姿勢も、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0013】
図1に示す例では、立体物印刷装置100は、垂直多関節ロボットを用いるインクジェットプリンターである。具体的には、
図1に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200と液体吐出ユニット300と液体供給ユニット400とコントローラー600とメンテナンスユニット800とを有する。以下、まず、
図1に示す立体物印刷装置100の各部を順次簡単に説明する。
【0014】
ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ユニット300の位置および姿勢を変化させる移動機構である。
図1に示す例では、ロボット200は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。具体的には、ロボット200は、基部210とアーム220とを有する。
【0015】
基部210は、アーム220を支持する台である。
図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面等の設置面BNにネジ止め等により固定される。なお、基部210が固定される設置面BNは、いかなる方向を向く面でもよく、
図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0016】
アーム220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム220は、アーム部品221、アーム部品222、アーム部品223、アーム部品224、アーム部品225およびアーム部品226を有し、これらがこの順に連結される。
【0017】
アーム部品221は、基部210に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節230_1を介して連結される。アーム部品222は、アーム部品221に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節230_2を介して連結される。アーム部品223は、アーム部品222に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節230_3を介して連結される。アーム部品224は、アーム部品223に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節230_4を介して連結される。アーム部品225は、アーム部品224に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節230_5を介して連結される。アーム部品226は、アーム部品225に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節230_6を介して連結される。なお、以下では、関節230_1から関節230_6までのそれぞれを関節230という場合がある。
【0018】
関節230_1から関節230_6までのそれぞれは、隣り合う2つのアーム部品の一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。
図1では図示しないが、関節230_1から関節230_6までのそれぞれには、隣り合う2つのアーム部品の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、当該駆動機構の集合体は、後述の
図2に示すアーム駆動機構240に相当する。また、当該エンコーダーは、後述の
図2等に示すエンコーダー241に相当する。
【0019】
回動軸O1は、基部210が固定される設置面BNに対して垂直な軸である。回動軸O2は、回動軸O1に対して垂直な軸である。回動軸O3は、回動軸O2に対して平行な軸である。回動軸O4は、回動軸O3に対して垂直な軸である。回動軸O5は、回動軸O4に対して垂直な軸である。回動軸O6は、回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0020】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90度である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90度から±5度程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5度程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0021】
以上のアーム220の先端部、すなわち、アーム部品226には、エンドエフェクターとして、液体吐出ユニット300がネジ止め等により固定された状態で装着される。
【0022】
液体吐出ユニット300は、液体の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド310を有する機器である。本実施形態では、液体吐出ユニット300は、ヘッド310のほか、ヘッド310に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整弁320と、ワークWとの間の距離を計測するセンサー330と、を有する。これらは、ともにアーム部品226に固定されるので、互いの位置および姿勢の関係が固定される。
【0023】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよい。
【0024】
図1では図示しないが、ヘッド310は、圧電素子と、インクを収容するキャビティーと、当該キャビティーに連通するノズルと、有する。ここで、当該圧電素子は、キャビティーごとに設けられており、当該キャビティーの圧力を変化させることにより、当該キャビティーに対応するノズルからインクを吐出させる。このようなヘッド310は、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、当該圧電素子は、後述の
図2に示す圧電素子311に相当する。また、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティー内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0025】
圧力調整弁320は、ヘッド310内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド310内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、ヘッド310のノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0026】
センサー330は、ヘッド310とワークWとの間の距離を計測する光学式の変位センサーである。なお、センサー330は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。また、
図1に示す例では、液体吐出ユニット300が有するヘッド310および圧力調整弁320のそれぞれの数が1個であるが、当該数は、
図1に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁320の設置位置は、アーム部品226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0027】
液体供給ユニット400は、インクをヘッド310に供給するための機構である。液体供給ユニット400は、液体貯留部410と供給流路420とを有する。
【0028】
液体貯留部410は、インクを貯留する容器である。液体貯留部410は、例えば、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックである。
【0029】
図1に示す例では、液体貯留部410は、常にヘッド310よりもZ1方向に位置するように、壁、天井または柱等に固定される。すなわち、液体貯留部410は、ヘッド310の移動領域よりも鉛直方向での上方に位置する。このため、ポンプ等の機構を用いなくても、液体貯留部410からヘッド310に所定の加圧力でインクを供給することができる。
【0030】
なお、液体貯留部410の設置場所は、液体貯留部410からヘッド310に所定の圧力でインクを供給することができればよく、ヘッド310よりも鉛直方向での下方に位置してもよい。この場合、例えば、ポンプを用いて、液体貯留部410からヘッド310に所定の圧力でインクを供給すればよい。
【0031】
供給流路420は、液体貯留部410からヘッド310にインクを供給する流路である。供給流路420の途中には、圧力調整弁320が設けられる。このため、ヘッド310と液体貯留部410との位置関係が変化しても、ヘッド310内のインクの圧力の変動を低減することができる。
【0032】
供給流路420は、例えば、管体の内部空間で構成される。ここで、供給流路420に用いる管体は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されており、可撓性を有する。このように、可撓性を有する管体を用いて供給流路420を構成することにより、液体貯留部410と圧力調整弁320との相対的な位置関係の変化が許容される。したがって、液体貯留部410の位置および姿勢を固定したまま、ヘッド310の位置または姿勢が変化しても、液体貯留部410から圧力調整弁320へインクを供給することができる。
【0033】
なお、供給流路420の一部が可撓性を有しない部材で構成されてもよい。また、供給流路420の一部は、インクを複数箇所に分配する分配流路を有する構成でもよいし、ヘッド310または圧力調整弁320と一体で構成されてもよい。
【0034】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御するロボットコントローラーである。
図1では図示しないが、コントローラー600には、液体吐出ユニット300における吐出動作を制御する制御モジュールが電気的に接続される。コントローラー600および当該制御モジュールには、コンピューターが通信可能に接続される。なお、当該制御モジュールは、後述の
図2に示す制御モジュール500に相当する。当該コンピューターは、後述の
図2に示すコンピューター700に相当する。
【0035】
メンテナンスユニット800は、液体吐出ユニット300のヘッド310のメンテナンスを行うための機構である。
図1に示す例では、メンテナンスユニット800は、ケース810とキャップ部820と支持台830と吸引機構840とワイパー部850とを有する。ケース810は、
図1に示すように、ロボット200の基部210と同様に、設置面BNにネジ止め等により固定される。ただし、ケース810は、基部210が固定された設置面BNとは異なる面に固定されてもよい。また、メンテナンスとは、ヘッド310のノズル面Fをキャップ部820によって被覆すること、吸引機構840によって吸引を行うこと、および、ワイパー部850によってワイピングすることなどを含む概念である。
【0036】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、立体物印刷装置100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。また、
図2では、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6までを含むアーム駆動機構240が示される。アーム駆動機構240は、関節230_1から関節230_6までを動作させる前述の駆動機構の集合体である。エンコーダー241_1からエンコーダー241_6までのそれぞれは、関節230_1から関節230_6までのそれぞれに対応して設けられ、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6の回転角度等の動作量を計測する。なお、以下では、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6のそれぞれをエンコーダー241という場合がある。
【0037】
図2に示すように、立体物印刷装置100は、前述のロボット200と液体吐出ユニット300とコントローラー600とメンテナンスユニット800とのほか、制御モジュール500とコンピューター700とを有する。なお、以下に述べる電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、制御モジュール500またはコントローラー600の機能の一部または全部は、コントローラー600に接続されるコンピューター700により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー600に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0038】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御する機能と、ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。なお、本実施形態のコントローラー600は、メンテナンスユニット800の駆動を制御する機能をも有するが、当該機能は、コンピューター700等の他の機器により実現されてもよい。
【0039】
コントローラー600は、記憶回路610と処理回路620とを有する。
【0040】
記憶回路610は、処理回路620が実行する各種プログラムと、処理回路620が処理する各種データと、を記憶する。記憶回路610は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路610の一部または全部は、処理回路620に含まれてもよい。
【0041】
記憶回路610には、経路情報Daが記憶される。経路情報Daは、ヘッド310の移動すべき経路を示す情報である。具体的には、経路情報Daは、前述のツール座標系の原点を示すツールセンターポイントの移動すべき経路を示す情報を含む。経路情報Daは、例えば、ベース座標系の座標値を用いて表される。経路情報Daは、ワークWの位置および形状を示すワーク情報と、メンテナンスユニット800の位置および形状を示す情報とに基づいて決められる。当該ワーク情報は、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データ等の情報を前述のベース座標系に対応付けることにより得られる。以上の経路情報Daは、コンピューター700から記憶回路610に入力される。
【0042】
処理回路620は、経路情報Daに基づいて関節230_1から関節230_6までの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。具体的には、処理回路620は、経路情報Daを関節230_1から関節230_6のそれぞれの回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路620は、関節230_1から関節230_6のそれぞれの実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、ロボット200のアーム駆動機構240に含まれるエンコーダー241_1からエンコーダー241_6までのそれぞれの出力信号D1_1から出力信号D1_6までのそれぞれに基づいて、制御信号Sk_1から制御信号Sk_6までのそれぞれを出力する。制御信号Sk_1から制御信号Sk_6までのそれぞれは、関節230_1から関節230_6までのそれぞれに対応しており、対応する関節230に設けられるモーターの駆動を制御する。なお、出力信号D1_1から出力信号D1_6までのそれぞれは、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6までのそれぞれに対応する。以下では、出力信号D1_1から出力信号D1_6までのそれぞれを出力信号D1という場合がある。
【0043】
また、処理回路620は、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6のうちの少なくとも1つからの出力信号D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路620は、エンコーダー241_1からエンコーダー241_6までのうちの1つのエンコーダー241からの出力信号D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0044】
以上の処理回路620は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路620は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0045】
制御モジュール500は、コントローラー600から出力される信号D3とコンピューター700からの印刷データImgとに基づいて、ヘッド310の吐出動作を制御する回路である。制御モジュール500は、タイミング信号生成回路510と電源回路520と制御回路530と駆動信号生成回路540とを有する。
【0046】
タイミング信号生成回路510は、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路510は、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0047】
電源回路520は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、立体物印刷装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路520は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ユニット300に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路540に供給される。
【0048】
制御回路530は、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路540に入力され、それ以外の信号は、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される。
【0049】
制御信号SIは、ヘッド310が有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、圧電素子311に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定する。この指定により、例えば、圧電素子311に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。以上の信号のうち、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される信号については、後に詳述する。
【0050】
以上の制御回路530は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路530は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0051】
駆動信号生成回路540は、ヘッド310が有する各圧電素子311を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路540は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路540では、当該DA変換回路が制御回路530からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路520からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、スイッチ回路340を介して、駆動信号生成回路540から圧電素子311に供給される。スイッチ回路340は、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0052】
コンピューター700は、コントローラー600に経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール500に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。また、本実施形態のコンピューター700は、前述のセンサー330に電気的に接続されており、センサー330からの信号D2に基づいて、経路情報Daを補正するための情報をコントローラー600に供給する。なお、コンピューター700は立体物印刷装置100の制御部として機能し、コントローラー600および制御モジュール500を介して、ロボット200および液体吐出ユニット300に、後述する印刷動作と、印刷動作の前後に含まれる一連の動作と、を実行させる。
【0053】
1-3.液体吐出ユニット
図3は、第1実施形態における液体吐出ユニット300の概略構成を示す斜視図である。
【0054】
以下の説明は、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、a軸に沿う一方向をa1方向といい、a1方向と反対の方向をa2方向という。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向をb1方向およびb2方向という。また、c軸に沿って互いに反対の方向をc1方向およびc2方向という。
【0055】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のロボット200の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0056】
液体吐出ユニット300は、前述のように、ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とを有する。これらは、
図3中の二点鎖線で示される支持体350に支持される。
【0057】
支持体350は、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、
図3では、支持体350が扁平な箱状をなすが、支持体350の形状は、特に限定されず、任意である。
【0058】
以上の支持体350は、前述のアーム220の先端、すなわちアーム部品226に装着される。このため、ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とのそれぞれは、アーム部品226に固定される。
【0059】
図3に示す例では、圧力調整弁320は、ヘッド310に対してc1方向に位置する。センサー330は、ヘッド310に対してa2方向に位置する。
【0060】
供給流路420は、圧力調整弁320により上流流路421と下流流路422とに区分される。すなわち、供給流路420は、液体貯留部410と圧力調整弁320とを連通させる上流流路421と、圧力調整弁320とヘッド310とを連通させる下流流路422と、を有する。
図3に示す例では、供給流路420の下流流路422の一部が流路部材422aで構成される。流路部材422aは、圧力調整弁320からのインクをヘッド310の複数箇所に分配する流路を有する。流路部材422aは、例えば、樹脂材料で構成される複数の基板の積層体であり、各基板には、インクの流路のための溝または孔が適宜に設けられる。
【0061】
ヘッド310は、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。
図3に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとに区分される。第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのそれぞれは、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド310における第1ノズル列Laの各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列Lbの各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0062】
ただし、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0063】
1-4.立体物印刷装置の動作および立体物印刷方法
図4は、第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
図5は、立体物印刷方法を実行中の一連の動作を説明するための説明図である。当該立体物印刷方法は、前述の立体物印刷装置100を用いて行われる。
図5では、立体物印刷方法を実行中の一連の動作の各動作を実行した時刻とヘッド310の移動速度との関係を示すグラフgv1と、この一連の動作の各動作を実行した時刻とヘッド310の移動距離との関係を示すグラフgd1とを示す。
【0064】
図4および
図5に示すように、立体物印刷装置100は、立体物印刷方法を実行中の一連の動作として、待機動作を行うステップS110と、第1移動動作を行うステップS120と、印刷準備動作を行うステップS130と、第1速度調整動作を行うステップS140と、速度維持動作を行うステップS150と、印刷動作を行うステップS160と、第2速度調整動作を行うステップS170と、第2移動動作を行うステップS180とを、この順で実行する。なお、
図4および
図5に示す動作は、コンピューター700がコントローラー600および制御モジュール500を介して、ロボット200および液体吐出ユニット300を制御することで実行される。
なお、第1移動動作は、「ロボットがヘッドを待機位置から印刷準備位置に向かって移動させる移動動作」の一例である。
【0065】
ステップS110の待機動作は、ヘッド310を待機させる動作である。ヘッド310を待機させる位置は、典型的には、ノズル面Fがキャップ部820に被覆される位置である。以下、ヘッド310を待機させる位置を、「待機位置」と称し、ノズル面Fがキャップ部820に被覆される位置を、「キャップ位置」と称する。ヘッド310がキャップ位置にあることにより、印刷動作が長期にわたり実行されなくても、ノズル面Fのインクの増粘または固化を低減することができる。但し、待機位置は、キャップ位置に限らず、ロボット200が設置される空間内の任意の位置でもよい。グラフgv1に示すように、時刻t10から時刻t11まで、ヘッド310は移動しておらず、グラフgd1に示すように、ヘッド310を待機位置で待機させている。
【0066】
ステップS120の第1移動動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310を待機位置からワークWの近傍である印刷準備位置PPまで移動させる動作である。図示していないが、待機位置は、印刷準備位置PPよりも印刷領域WFから離れた位置にある。但し、待機位置は、印刷準備位置PPよりも印刷領域WFに近い位置にあってもよい。
【0067】
立体物印刷装置100は、例えば、制御モジュール500が信号D3と印刷データImgとを受け付けた場合に、第1移動動作を実行する。第1移動動作では、どのような速度でヘッド310を移動させてもよい。第1移動動作にかかる期間を短くするために、ヘッド310の最大速度Vmaxで移動させることが好ましい。グラフgv1に示すように、時刻t11から時刻t12までの間に、ロボット200は、ヘッド310を最大速度Vmaxまで加速させる。そして、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに到達した場合、ロボット200は、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに維持し、印刷準備位置PPにヘッド310が近付いた場合、ヘッド310の移動速度が速度V0になるまでヘッド310を減速させる。速度V0は、印刷準備位置PPにおけるヘッド310の移動速度であり、0メートル/秒である。
【0068】
ステップS130の印刷準備動作は、ワークWに対するヘッド310の相対的な移動を一定期間停止する動作である。印刷準備動作は、第1移動動作によって発生したヘッド310の振動を減衰させて、この振動が印刷動作中に残留しないようにするために設けられる。一定期間は、例えば、0.5秒である。但し、立体物印刷装置100は、印刷準備動作を実行しなくてもよい。グラフgv1に示すように、印刷準備動作の実行期間である時刻t12から時刻t13まで、ヘッド310は移動しておらず、グラフgd1に示すように、ヘッド310を印刷準備位置PPで停止させている。なお、本実施形態において、停止するとは、ヘッド310が完全に静止することに加え、ヘッド310が500マイクロメートル以下の振幅で微小に振動することも含む概念である。こうした微小な振動には、前述のような移動動作に伴う慣性によって発生し残留する振動に加え、制御的な誤差や機械的な誤差に伴う振動が含まれる。
【0069】
ステップS140の第1速度調整動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310の移動速度を調整する動作である。より詳細には、第1速度調整動作は、ヘッド310の移動速度を速度V0から印刷速度VPへ調整する。第1速度調整動作では、ヘッド310の姿勢も変化させることが好ましいが、ヘッド310の姿勢を変化させなくてもよい。印刷速度VPは、印刷開始位置PSにおけるヘッド310の移動速度であり、速度V0より大きい速度である。グラフgv1に示すように、時刻t13から時刻t14までの間に、ロボット200は、ヘッド310の移動速度を速度V0から印刷速度VPへと調整し、グラフgd1に示すように、印刷準備位置PPから速度維持開始位置PJまで移動する。ロボット200は、ヘッド310の移動速度を、速度V0から印刷速度VPへと近づくように単調増加させる。本明細書における単調増加とは、広義の単調増加を意味する。
なお、第1実施形態において、速度V0が「第1速度」の一例であり、印刷速度VPが「第2速度」の一例である。
【0070】
ステップS150の速度維持動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310の移動速度を印刷速度VPで維持し、第1速度調整動作においてヘッド310が加速したことによって発生する振動を低減させる動作である。但し、立体物印刷装置100は、速度維持動作を実行しなくてもよい。速度維持動作中においてヘッド310の姿勢が変化しなくてもよいし、印刷動作と同等またはそれ以下の範囲でヘッドの姿勢が変化してもよい。グラフgv1に示すように、時刻t14から時刻t15まで、ヘッド310の移動速度は、印刷速度VPに維持され、グラフgd1に示すように、ヘッド310は、速度維持開始位置PJから印刷開始位置PSまで移動する。
【0071】
ステップS160の印刷動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置および姿勢を変化させつつ、ヘッド310がインクを吐出する動作である。なお、印刷動作の開始とは、ヘッド310がワークWに対するインクの吐出を開始することを指す。また、印刷動作の終了とは、ヘッド310がワークWに対するインクの吐出を停止することを指す。なお、ステップS120の第1移動動作と、ステップS130印刷準備動作と、ステップS140の第1速度調整動作と、ステップS150の速度維持動作と、ステップS170の第2速度調整動作と、ステップS180の第2移動動作と、の実行中においては、ヘッド310がインクを吐出しないことが好ましい。
【0072】
複数の関節230のうち、印刷動作において動作する関節230の数は特に限定されないが、印刷動作では、他の動作と比較して、より少ない数の関節230の動作によりヘッド310の移動が行われることが好ましい。他の動作よりも少ない数の関節230を動作させることで、ヘッド310の理想的な移動経路に対する実際の移動経路のずれが低減される。本実施形態における印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節230のうち、3つの関節230の動作によりヘッド310の移動が行われる。より詳細には、第1実施形態では、ロボット200は、印刷動作の実行中において、関節230_2と関節230_3と関節230_5とのそれぞれの回動軸をY軸に平行な状態とし、これらの関節230を動作させる。このように、回動軸O2と回動軸O3と回動軸O5とを互いに平行な状態に設定するが、これに限定されず、例えば、回動軸O2と回動軸O3と回動軸O6とを互いに平行な状態としてもよい。
【0073】
グラフgv1に示すように、時刻t15から時刻t16まで、ヘッド310の移動速度は、印刷速度VPに維持され、グラフgd1に示すように、ヘッド310は、印刷開始位置PSから印刷終了位置PEまで移動する。第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の移動経路RUについて、
図6を用いて説明する。
【0074】
図6は、第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の移動経路RUを説明するための説明図である。
図6では、印刷準備位置PPに位置する液体吐出ユニット300を二点鎖線で示し、印刷開始位置PSに位置する液体吐出ユニット300と、印刷終了位置PEに位置する液体吐出ユニット300とを実線で示す。さらに、図面の煩雑化を避けるため、速度維持開始位置PJに位置する液体吐出ユニット300の表示を省略し、液体吐出ユニット300が速度維持開始位置PJに位置する場合の回動軸O6のみを示す。移動経路RUは、印刷準備位置PPから速度維持開始位置PJまでの経路RPと、速度維持開始位置PJから印刷開始位置PSまでの経路RJと、印刷開始位置PSから印刷終了位置PEまでの経路RSとを含む。
図6に示すように、印刷開始位置PSは、印刷領域WFの端部に位置しているため、印刷準備位置PPよりも印刷領域WFに近い。
【0075】
印刷動作の実行中において、ロボット200は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系のb軸と、ベース座標系のY軸と、が互いに平行な状態が保たれるように関節230_2と関節230_3と関節230_5とを動作させる。つまり、印刷動作の実行中において、ロボット200は、第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbが、関節230_2と関節230_3と関節230_5と平行な状態を保つ。換言すれば、印刷動作の実行中において、ロボット200は、回動軸がY軸と平行でない関節230である関節230_1と関節230_4と関節230_6とを動作させない。
【0076】
印刷動作では、ヘッド310とワークWとの間の最短距離WGは、所定距離以内に維持される。ヘッド310とワークWとの間の最短距離WGは、「ワークギャップ」とも称される。本実施形態において、印刷領域WFは、曲率が略一定であるため、経路RSの曲率も略一定である。一方、経路RPと経路RJとは、ワークWの形状に沿わず、経路RSよりも緩やかに湾曲する経路である。経路RPと経路RJとのそれぞれの曲率は、経路RSの曲率よりも小さい。なお、曲率は、ある点における曲がり度合いを円で近似したときの円の半径の逆数である。第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい。
ヘッド310の姿勢とは、b軸に沿って見た場合に、b軸まわりのヘッド310の姿勢である。また、ヘッド310の姿勢は、回動軸O5に沿って見た場合に、設置面BNの法線方向に沿った仮想直線LVに対して回動軸O6がなす角度によって示されるとも言える。
図6では、液体吐出ユニット300が印刷準備位置PPに位置する場合のヘッド310の姿勢を角度θとして示してある。液体吐出ユニット300が印刷開始位置PSにおけるヘッド310の姿勢が、0度であるとし、仮想直線LVに対して回動軸O6が反時計回りに回転する方向を正の方向、時計回りに回転する方向を負の方向とする。
単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量について、単位期間は、どのような期間長でもよい。ある単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、ある単位期間の終了時点におけるヘッド310の姿勢を示す角度から、ある単位期間の開始時点におけるヘッド310の姿勢を示す角度を減じた値の絶対値を、単位期間の長さで除した値である。この除法について、被除数は0以上の値であり、除数は正の値である。したがって、ヘッド310の姿勢変化量は、0以上の値である。第1速度調整動作または印刷動作の実行期間が複数の単位期間に亘る場合、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、複数の単位期間の各々のヘッド310の姿勢変化量の代表値である。代表値としては、例えば、平均値、最大値、または、中央値である。
代表値が平均値である場合、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、複数の単位期間の各々のヘッド310の姿勢変化量の平均値である。例えば、印刷動作の実行期間が、2つの単位期間に亘り、1つ目の単位期間におけるヘッド310の姿勢変化量が、10度/秒であり、2つ目の単位期間におけるヘッド310の姿勢変化量が、20度/秒である場合、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、(10+20)/2=15度/秒である。
また、代表値が最大値である場合、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、複数の単位期間の各々のヘッド310の姿勢変化量の最大値である。例えば、印刷動作の実行期間が、2つの単位期間に亘り、1つ目の単位期間におけるヘッド310の姿勢変化量が、10度/秒であり、2つ目の単位期間におけるヘッド310の姿勢変化量が、20度/秒である場合、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、Max(10,20)=20度/秒である。ただし、Max()は、1以上の引数のうち、最大値の引数の値を出力する関数である。
【0077】
図6の例示では、第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、5度/秒であり、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、10度/秒である。したがって、第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい。なお、図面では、角度の単位を「deg」と表記し、秒の単位を「sec」と表記してある。
【0078】
さらに、第1実施形態では、第1速度調整動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さいという条件を満たす。単位移動量は、どのような長さでもよい。単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量は、ヘッド310が単位移動量移動した後のb軸まわりのヘッド310の姿勢を示す角度から、ヘッド310が単位移動量移動する前のb軸まわりのヘッド310の姿勢を示す角度を減じた値の絶対値を、単位移動量の長さで除した値である。
なお、b軸は、「複数のノズルの配列方向」の一例である。
【0079】
説明を
図4および
図5に戻す。ステップS170の第2速度調整動作は、印刷動作の後にロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、印刷終了位置PEからヘッド310を減速する動作である。グラフgv1に示すように、時刻t16から時刻t17まで、ヘッド310の移動速度は、印刷速度VPから速度V0である0メートル/秒に減速される。
【0080】
さらに、第2速度調整動作では、印刷動作が終了しているため、第2速度調整動作の終了後にヘッド310が大きく振動していても問題がない。したがって、第2速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値は、第1速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値に比べて大きくてもよい。
図6の例では、第2速度調整動作における微小期間Δt2に対する速度変化ΔV2の絶対値は、第1速度調整動作における微小期間Δt1に対する速度変化ΔV1の絶対値より大きい。微小期間Δt1と微小期間Δt2とは、略同一の期間長を有する。
なお、微小期間Δt1に対する速度変化ΔV1は、「第1速度調整動作におけるヘッドの加速度」の一例であり、微小期間Δt2に対する速度変化ΔV2は、「第2速度調整動作におけるヘッドの加速度」の一例である。
【0081】
ステップS180の第2移動動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310を待機位置に移動させる動作である。第2移動動作では、どのような速度でヘッド310を移動させてもよい。第2移動動作にかかる期間を短くするために、ヘッド310の最大速度Vmaxで移動させることが好ましい。グラフgv1に示すように、時刻t17から時刻t18までの間に、ロボット200は、ヘッド310を最大速度Vmaxまで加速させる。そして、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに到達した場合、ロボット200は、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに維持し、待機位置にヘッド310が近付いた場合、移動速度が0になるまでヘッド310を減速させる。また、グラフgd1に示すように、ヘッド310は、時刻t18に待機位置に到達する。
【0082】
ステップS180の処理終了後、ヘッド310は待機位置に移動する。立体物印刷装置100は、例えば、制御モジュール500が信号D3と印刷データImgとを受け付けた場合に、第1移動動作を再び実行する。
【0083】
1.5.第1実施形態のまとめ
立体物印刷装置100は、立体的なワークW上の印刷領域WFに対してインクを吐出するヘッド310と、ヘッド310を支持し、ワークWとヘッド310との相対的な位置および姿勢を変化させるロボット200と、を有する。立体物印刷装置100は、第1速度調整動作と、印刷動作とを実行する。第1速度調整動作は、ヘッド310の位置を印刷準備位置PPから印刷準備位置PPよりも印刷領域WFに近い印刷開始位置PSに向かって移動しつつ、ヘッド310の移動速度を調整する。印刷動作は、印刷開始位置PSにおいてヘッド310が印刷領域WFに対してインクの吐出を開始し、ヘッド310からインクを吐出しつつ、ロボットがヘッド310の位置および姿勢を変化させる印刷動作と、を実行する。第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい。
ヘッド310の姿勢を変化させると、関節230に大きな回動が発生し、関節230に生じた振動は、アーム220を介してヘッド310に伝搬してヘッド310が振動することになる。ヘッド310が振動すると、ヘッド310の理想的な経路とに対してヘッド310の実際の経路との間に差が生じて、印刷画質の低下を招く。特に、印刷動作の前に生じた振動は、印刷動作の実行中にも残留し、印刷品質が劣化する。
ここで、印刷動作の前では、ヘッド310がインクを吐出しないため、ワークWの形状に応じたヘッド310の姿勢変化は、必須ではない。第1実施形態では、第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量が、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい、言い換えれば、印刷動作の前に実行される第1速度調整動作では、ワークWに沿った経路よりも曲がり度合いが緩やかな経路に沿ってヘッド310が移動する。第1速度調整動作において、ワークWに沿った経路よりも曲がり度合いが緩やかな経路に沿ってヘッド310が移動することにより、単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量を小さくすることで、参考例と比較して、関節230に発生する振動を抑制できる。振動を抑制できることをより詳細に説明するため、参考例における移動経路RUaについて
図7で説明し、第1実施形態と第1参考例とにおけるヘッド310の姿勢変化量について、
図8を用いて説明し、関節230_1に生じる振動について、
図9および
図10を用いて説明する。
【0084】
図7は、参考例における移動経路RUaを説明するための説明図である。移動経路RUaの全てが、ワークWの形状に沿う点で、ワークWの形状に一部が沿った経路である移動経路RUと相違する。より詳細には、移動経路RUaは、経路RPの替わりに経路RPaを有し、経路RJの替わりに経路RJaを有する点で、移動経路RUと相違する。経路RPaは、印刷準備位置PPaから速度維持開始位置PJaまでの経路である。経路RJaは、速度維持開始位置PJaから印刷開始位置PSまでの経路である。移動経路RUaの全てがワークWの形状に沿うため、印刷準備位置PPaとワークWとの間の最短距離WG、および、速度維持開始位置PJaとワークWとの間の最短距離WGは、所定距離以内である。
【0085】
図7では、
図6と同様に、印刷準備位置PPaに位置する液体吐出ユニット300を二点鎖線で示し、印刷開始位置PSに位置する液体吐出ユニット300と、印刷終了位置PEに位置する液体吐出ユニット300とを実線で示す。さらに、図面の煩雑化を避けるため、速度維持開始位置PJaに位置する液体吐出ユニット300の表示を省略し、液体吐出ユニット300が速度維持開始位置PJに位置する場合の回動軸O6のみ示す。
【0086】
図7に示すように、参考例では、第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、10度/秒であり、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、10度/秒である。したがって、参考例において、第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量と略同一である。
【0087】
図8は、第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の姿勢を説明するための説明図である。
図8に示すグラフgkについて、横軸が第1速度調整動作から印刷動作までのヘッド310の移動距離を示し、縦軸がヘッド310の姿勢を示す。グラフgkは、第1実施形態におけるヘッド310の姿勢の特性を示す姿勢特性K1と、参考例におけるヘッド310の姿勢の特性を示す姿勢特性K2とを示す。第1実施形態と参考例とにおいて、印刷開始位置PSにおけるヘッド310の姿勢は、0度である。姿勢特性K2が示すように、参考例では、第1速度調整動作から印刷動作まで、姿勢特性K2の傾きが一定である。一方、姿勢特性K1が示すように、ヘッド310が加速する第1速度調整動作では、姿勢特性K1の傾きは緩やかであり、印刷開始位置PS以降ではヘッド310の姿勢がワークWの形状に沿うため、姿勢特性K1の傾きが一定である。
【0088】
図9は、経過時刻に対する出力信号D1_5を示す図である。出力信号D1_5は、回動軸O5の回動量を示す。
図9に示すグラフgmは、ヘッド310が印刷開始位置PSに位置する時刻を含む期間のそれぞれの時刻における出力信号D1_5が示すパルス値を示す。グラフgmでは、ヘッド310が印刷開始位置PSに位置する時刻を0とし、時刻である秒の単位を[sec]と表記してある。グラフgmは、第1実施形態における回動軸O5の回動量の特性を示す回動量特性M1と、参考例における回動軸O5の回動量の特性を示す回動量特性M2とを示す。参考例では、回動量特性M2が示すように、印刷動作の前では、時間経過に伴う回動軸O5の回動量の絶対値が大きいため、関節230_5に振動が発生する。一方、第1実施形態では、回動量特性M1が示すように、参考例と比較して、時間経過に伴う回動軸O5の回動量の変化が抑制される。回動軸O5の回動量の変化が抑制されるため、関節230_5に発生する振動が抑制され、ヘッド310の振動を抑制できる。
【0089】
なお、
図9では、回動軸O5の回動量を示したが、回動軸O2および回動軸O3についても、回動軸O5と同様である。すなわち、参考例では、時間経過に伴う回動軸O2の回動量の絶対値および回動軸O3の回動量の絶対値が大きいため、関節230_2および関節230_3に振動が発生する。一方、第1実施形態では、参考例と比較して、時間経過に伴う回動軸O2の回動量の変化および回動軸O3の回動量の変化が抑制される。
【0090】
図10は、第1実施形態における関節230_1の振動の強度を説明するための図である。
図11は、参考例における関節230_1の振動の強度を説明するための図である。
図10では、第1実施形態の印刷動作の実行中におけるエンコーダー241_1の出力信号D1_1を示し、
図11では、参考例において、エンコーダー241_1の出力信号D1_1を示す。第1実施形態における印刷動作、および、参考例における印刷動作では、関節230_1が有するモーターは動作せず、アーム部品221を回動させるための駆動力を発生しない。しかしながら、関節230に生じる振動によって、アーム部品221が回動軸O1まわりに極めて微量に回動する。
【0091】
図10に示すグラフge1は、印刷動作の実行中における出力信号D1_1を示す。グラフge1の横軸が印刷動作の開始時点からの経過時刻を示し、グラフge1の縦軸が、エンコーダー241_1が示すパルス値を示す。同様に、
図11に示すグラフge2は、参考例の印刷動作の実行中における出力信号D1_1を示す。グラフge2の横軸が印刷動作の開始時点からの経過時刻を示し、グラフge2の縦軸が、出力信号D1_1が示すパルス値を示す。
【0092】
グラフge1およびグラフge2に示すように、関節230に生じる振動によってアーム部品221が回動軸O1まわりに極めて微量に回動するため、パルス値も振動する。パルス値が0であることは、アーム部品221が回動していないことを示し、パルス値の絶対値が大きいことは、アーム部品221が比較的大きく回動したことを示す。したがって、パルス値の振動の振幅は、関節230_1に生じた振動の強度を示すとも言える。
【0093】
グラフge1におけるパルス値の振動の最大振幅は、幅w1であり、グラフge2におけるパルス値の振動の最大振幅は、幅w2である。幅w1は、幅w2よりも狭い。したがって、第1実施形態は、参考例と比較して、関節230に発生する振動を抑制できる。
【0094】
また、第1速度調整動作は、ヘッド310の位置を印刷準備位置PPから印刷開始位置PSに向かって移動しつつ、ヘッド310の移動速度を印刷準備位置PPにおける速度である速度V0から印刷開始位置PSにおける速度である印刷速度VPへと調整する動作である。第1速度調整動作の実行中における時刻t13から時刻t14までの期間において、ヘッド310の移動速度は、速度V0から印刷速度VPへと近づくように単調増加する。
ヘッド310の移動速度が単調増加であるため、加速と減速とを繰り返すことがない。加速と減速とを繰り返さないことにより、ヘッド310の振動が抑制されるので、印刷品質を向上できる。
【0095】
また、立体物印刷装置100は、第1速度調整動作と印刷動作との間の期間において、ヘッド310の移動速度を印刷速度VPに維持しつつ、印刷開始位置PSに向かってヘッド310を移動させる速度維持動作を実行する。
速度維持動作を実行することによりインクが吐出される直前の速度変動を抑制できるので、立体物印刷装置100は、印刷品質を向上できる。
なお、ヘッド310の振動に伴う印刷品質の劣化を抑制する観点から、速度維持動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量と同等、もしくは、印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さいことが好ましい。
【0096】
立体物印刷装置100は、ロボット200がヘッド310の位置を印刷準備位置PPよりも印刷領域から離れた待機位置において待機させる待機動作と、ロボット200がヘッド310を待機位置から印刷準備位置PPに向かって移動させる移動動作と、を第1速度調整動作よりも前に実行する。
ワークWを立体物印刷装置100が印刷できる位置に設定する場合、通常、ヘッド310は待機位置に待機させておく。ヘッド310をワークWから離れた待機位置に待機させておくことにより、ワークWを設置する際にヘッド310が干渉することを抑制できる。さらに、待機位置がキャップ位置であることにより、ノズルNの乾燥および固化を防止することができる。
【0097】
また、立体物印刷装置100は、印刷準備位置PPにおいて、ワークWに対するヘッド310の相対的な移動を一定期間停止する印刷準備動作を第1速度調整動作の前に実行する。
ヘッド310の移動を一定期間停止することにより、第1移動動作によって生じた振動を減衰させることができる。
【0098】
前述したように、第1速度調整動作において、ヘッド310の移動速度は、速度V0から印刷速度VPへと近づくように単調増加する。単調増加であるため、印刷速度VPが、速度V0より大きい。
このように、第1速度調整動作では、速度V0である0メートル/秒から加速しているため、第1速度調整動作の前に発生した振動を減衰させた状態で、印刷動作を開始できるので、印刷品質を向上できる。
【0099】
また、立体物印刷装置100は、ヘッド310がインクの吐出を停止し、ヘッド310の移動速度を変化させる第2速度調整動作を印刷動作に続いて実行する。第2速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値は、第1速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値に比べて大きい。
第1速度調整動作ではヘッド310の加速度の絶対値を第2速度調整動作におけるヘッド310の絶対値と比較して抑制することにより、ヘッド310の振動を抑制して印刷品質を高めることができる。一方、第2速度調整動作ではヘッド310の加速度の絶対値を第1速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値と比較して大きくすることにより、製品の製造にかかるタクトタイムを短くし、製品の生産性を向上できる。
【0100】
また、第1速度調整動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量は、印刷動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい。
第1実施形態によれば、第1速度調整動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量が印刷動作における単位移動量あたりのb軸まわりのヘッド310の姿勢変化量よりも大きい態様と比較して、関節230に発生する振動を抑制できる。
【0101】
2.第2実施形態
第2実施形態にける立体物印刷方法は、印刷準備動作と、第2速度調整動作とを実行しない点で、第1実施形態と相違する。以下、第2実施形態について説明する。
【0102】
図12は、第2実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
図13は、第2実施形態に係る立体物印刷方法を実行中の一連の動作を説明するための説明図である。
図13では、第2実施形態に係る立体物印刷方法を実行中の一連の動作の各動作を実行した時刻とヘッド310の移動速度との関係を示すグラフgv2と、この一連の動作の各動作を実行した時刻とヘッド310の移動距離との関係を示すグラフgd2とを示す。ヘッド310の移動距離は、立体物印刷方法の実行を開始した時点からのヘッド310の移動距離を意味する。
【0103】
図12および
図13に示すように、第2実施形態に係る立体物印刷装置100は、第2実施形態に係る立体物印刷方法を実行中の一連の動作として、待機動作を行うステップS210と、第1移動動作を行うステップS220と、第1速度調整動作を行うステップS230と、速度維持動作を行うステップS240と、印刷動作を行うステップS250と、第2移動動作を行うステップS260とを、この順で実行する。
【0104】
ステップS210の待機動作は、印刷動作の前にヘッド310を待機させる動作である。ステップS210の待機動作は、第1実施形態におけるステップS110の待機動作と同一であるため、説明を省略する。
グラフgv2に示すように、時刻t20から時刻t21まで、ヘッド310は移動しておらず、グラフgd2に示すように、ヘッド310を待機位置で待機させている。
【0105】
ステップS220の第1移動動作は、印刷動作の前にロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310を待機位置から印刷準備位置PPまで移動させる動作である。但し、第2実施形態では、ヘッド310が印刷準備位置PPで停止せずに通過する点で、第1実施形態と相違する。第2実施形態において、第1移動動作の終了時におけるヘッド310の移動速度は、印刷速度VPより速い。第1移動動作の終了時におけるヘッド310の移動速度が印刷速度VPより速ければどのような速度でもよいが、第1移動動作にかかる期間を短くするために、第1移動動作の終了時におけるヘッド310の移動速度は、ヘッド310の最大速度Vmaxであることが好ましい。グラフgv2に示すように、時刻t21から時刻t22までの間に、ロボット200は、ヘッド310を最大速度Vmaxまで加速させる。そして、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに到達した場合、ロボット200は、印刷準備位置PPを通過するまでヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに維持する。
【0106】
ステップS230の第1速度調整動作は、印刷動作の前にロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310の移動速度を調整する動作である。より詳細には、ステップS230の第1速度調整動作は、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxから印刷速度VPへ調整する。印刷速度VPは、最大速度Vmaxより小さい速度である。グラフgv2に示すように、時刻t22から時刻t23までの間に、ロボット200は、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxから印刷速度VPへと調整し、グラフgd2に示すように、印刷準備位置PPから速度維持開始位置PJまで移動する。ロボット200は、ヘッド310の移動速度を、最大速度Vmaxから印刷速度VPへと近づくように単調減少させる。本明細書における単調減少とは、広義の単調減少を意味する。
第2実施形態において、最大速度Vmaxが「第1速度」の一例であり、印刷速度VPが「第2速度」の一例である。
【0107】
ステップS240の速度維持動作は、印刷動作の前にロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310の移動速度を印刷速度VPで維持し、第1速度調整動作においてヘッド310が減速したことによって発生する振動を低減させる動作である。グラフgv2に示すように、時刻t23から時刻t24まで、ヘッド310の移動速度は、印刷速度VPに維持され、グラフgd2に示すように、速度維持開始位置PJから印刷開始位置PSまで移動する。
【0108】
ステップS250の印刷動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310がインクを吐出する動作である。グラフgv2に示すように、時刻t24から時刻t25まで、ヘッド310の移動速度は、印刷速度VPに維持され、グラフgd2に示すように、ヘッド310は、印刷開始位置PSから印刷終了位置PEまで移動する。
【0109】
ステップS260の第2移動動作は、ロボット200がワークWに対してヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、ヘッド310を待機位置に移動させる動作である。第2移動動作では、どのような速度でヘッド310を移動させてもよい。第2移動動作にかかる期間を短くするために、ヘッド310の最大速度Vmaxで移動させることが好ましい。グラフgv2に示すように、時刻t25から時刻t26までの間に、ロボット200は、ヘッド310を最大速度Vmaxまで加速させる。そして、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに到達した場合、ロボット200は、ヘッド310の移動速度を最大速度Vmaxに維持し、待機位置にヘッド310が近付いた場合、ヘッド310の移動速度が速度V0になるまでヘッド310を減速させる。
【0110】
ステップS260の処理終了後、ヘッド310は待機位置に移動する。第2実施形態における立体物印刷装置100は、例えば、制御モジュール500が信号D3と印刷データImgとを受け付けた場合に、ステップS220の第1移動動作を再び実行する。
【0111】
ここで、ステップS230の第1速度調整動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量は、ステップS250印刷動作の実行中における単位期間あたりのヘッド310の姿勢変化量よりも小さい。このため、第1実施形態と同様に関節230に発生する振動を抑制し、印刷品質を向上できる。
【0112】
2.1.第2実施形態のまとめ
以上説明したように、第2実施形態における第1速度調整動作の実行中における時刻t22から時刻t23において、ヘッド310の移動速度は、最大速度Vmaxから印刷速度VPへと近づくように単調減少する。
ヘッド310の移動速度が単調減少のため、加速と減速とを繰り返すことがない。加速と減速とを繰り返さないことにより、ヘッド310の振動を抑制し、印刷品質を向上できる。
【0113】
前述したように、第2実施形態における第1速度調整動作の実行中において、ヘッド310の移動速度は、最大速度Vmaxから印刷速度VPへと近づくように単調減少する。単調減少であるため、印刷速度VPが、最大速度Vmaxより小さい。
第2実施形態における第1速度調整動作では、第1実施形態における第1速度調整動作と比較して、第1速度調整動作におけるヘッド310の平均の移動速度は大きくなる。この理由は、第2実施形態では、ヘッド310の移動速度は印刷速度VPより大きい速度から減速している一方で、第1実施形態では第1速度調整動作においてヘッド310の移動速度が印刷速度VPより小さい速度V0から加速するためである。したがって、第2実施形態では、第1実施形態と比較して、第1速度調整動作におけるヘッド310の平均の移動速度は大きいため、第2実施形態における立体物印刷装置100は、第1速度調整動作にかかる期間を短縮できる。
さらに、第2実施形態における第1移動動作では、第1実施形態における第1移動動作と比較して、第1移動動作におけるヘッド310の平均の移動速度は大きくなる。この理由は、第2実施形態では、第1移動動作の終了時のヘッド310の移動速度は、最大速度Vmaxである一方で、第1移動動作の終了時のヘッド310の移動速度は、速度V0であるためである。したがって、第2実施形態では、第1実施形態と比較して、第1移動動作におけるヘッド310の平均の移動速度が大きいため、第2実施形態における立体物印刷装置100は、第1移動動作にかかる期間を短縮できる。
以上により、第2実施形態では、第1実施形態と比較して、第1移動動作および第1速度調整動作にかかる期間が短縮されるため、製品の製造にかかるタクトタイムを短縮でき、製品の生産性を向上できる。
一方、第1実施形態では、第1速度調整動作では、速度V0である0メートル/秒から加速しているため、第1速度調整動作の前に発生した振動を減衰させた状態で印刷動作を開始できるので、第2実施形態と比較して、印刷品質を向上できる。
【0114】
3.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0115】
3-1.第1変形例
第1実施形態における第1速度調整動作において、ヘッド310の移動速度は、速度V0から印刷速度VPへと近づくように単調増加することを記載したが、単調増加せず、増加と減少とを繰り返しながら速度V0から印刷速度VPへと近づいてもよい。同様に、第2実施形態における第1速度調整動作において、ヘッド310の移動速度は、最大速度Vmaxから印刷速度VPへと近づくように単調減少することを記載したが、単調減少せず、減少と増加とを繰り返しながら最大速度Vmaxから印刷速度VPへと近づいてもよい。
【0116】
3-2.第2変形例
第1実施形態および第2実施形態において、待機位置と印刷開始位置PSが近い場合には、立体物印刷装置100は、第1移動動作を実行しなくてもよい。第1移動動作を実行しない場合、待機位置が印刷準備位置PPであるとして、立体物印刷装置100は、ヘッド310の位置を待機位置から印刷開始位置PSに向かって移動しつつ、ヘッド310の移動速度を調整する。
【0117】
3-3.第3変形例
第1実施形態に記載したように、印刷準備動作を実行しなくてもよい。さらに、印刷準備動作を実行しない場合に、第1移動動作の終了時および第1速度調整動作の開始時におけるヘッド310の移動速度は、速度V0に限らず、速度V0よりも大きく、かつ、印刷速度VP以下の速度であってもよい。第2変形例において、速度V0よりも大きく、かつ、印刷速度VP以下の速度が、「第1速度」の一例である。
【0118】
3-4.第4変形例
第2実施形態において、最大速度Vmaxが「第1速度」の一例であると記載したが、これに限らない。例えば、「第1速度」は、印刷速度VPより大きく最大速度Vmax未満の速度でもよい。
【0119】
3-5.第5変形例
第2実施形態において、立体物印刷装置100は、第2速度調整動作を実行しないが、第2速度調整動作を印刷動作と第2移動動作との間に実行してもよい。第5変形例においても、第2速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値は、第1速度調整動作におけるヘッド310の加速度の絶対値に比べて大きいことが好ましい。
【0120】
3-6.第6変形例
前述の形態では、アーム220の先端に対するヘッド310の固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、アーム220の先端に装着されるハンド等の把持機構によりヘッド310を把持することにより、アーム220の先端に対してヘッド310を固定してもよい。
【0121】
3-7.第7変形例
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種類以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0122】
3-8.第8変形例
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0123】
100…立体物印刷装置、200…ロボット、210…基部、220…アーム、221,222,223,224,225,226…アーム部品、230,230_1,230_2,230_3,230_4,230_5,230_6…関節、240…アーム駆動機構、241,241_1…エンコーダー、300…液体吐出ユニット、310…ヘッド、311…圧電素子、320…圧力調整弁、330…センサー、340…スイッチ回路、350…支持体、400…液体供給ユニット、410…液体貯留部、420…供給流路、421…上流流路、422…下流流路、422a…流路部材、500…制御モジュール、510…タイミング信号生成回路、520…電源回路、530…制御回路、540…駆動信号生成回路、600…コントローラー、610…記憶回路、620…処理回路、700…コンピューター、800…メンテナンスユニット、810…ケース、820…キャップ部、830…支持台、840…吸引機構、850…ワイパー部、AX…長軸、BN…設置面、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、Com…駆動信号、D1,D1_1,D1_5…出力信号、D2,D3…信号、Da…経路情報、F…ノズル面、Img…印刷データ、K1,K2…姿勢特性、LAT…ラッチ信号、La…第1ノズル列、Lb…第2ノズル列、M1,M2…回動量特性、N…ノズル、O1,O2,O3,O4,O5,O6…回動軸、PA…印刷領域、PD…駆動パルス、PE…印刷終了位置、PJ,PJa…速度維持開始位置、PP,PPa…印刷準備位置、PS…印刷開始位置、PTS…タイミング信号、RD,RDa,RP,RPa,RS…経路、RU,RUa…移動経路、SI,Sk_1…制御信号、V0…速度、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、VP…印刷速度、Vmax…最大速度、W…ワーク、WF…印刷領域、WG…最短距離、dCom…波形指定信号、gd1,gd2,ge1,ge2,gk,gm1,gv1,gv2…グラフ、ΔV1,ΔV2…速度変化、Δt1,Δt2…微小期間、θ…角度。