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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175237
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】セグメントシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/44 20060101AFI20221117BHJP
   F16J 15/3272 20160101ALI20221117BHJP
   F04D 29/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F16J15/44 C
F16J15/3272
F04D29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081482
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 勇気
(72)【発明者】
【氏名】足立 一磨
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優記
【テーマコード(参考)】
3H130
3J042
3J043
【Fターム(参考)】
3H130AA20
3H130AB40
3H130AB60
3H130AC30
3H130BA97F
3H130DC01X
3J042AA03
3J042AA11
3J042BA03
3J042CA03
3J042CA05
3J042CA15
3J042DA20
3J043AA16
3J043BA07
3J043CA03
3J043DA03
3J043HA04
(57)【要約】
【課題】パージガスの導入によるシール機能を高めたセグメントシールを提供する。
【解決手段】セグメントシールは、シール室10に収容されるセグメントリング2と、シール室にパージガスを供給する供給孔4とを備え、セグメントリングは、機内側から順に、第1セグメントリング21、第3セグメントリング23、及び第2セグメントリング22で構成され、第1セグメントリングは、回転軸100に摺接しない複数のセグメント片からなり、第2セグメントリングは、回転軸に摺接する複数のセグメント片からなり、第3セグメントリングは、周方向に互いに隙間2cを開けて分割され、回転軸に摺接する複数のセグメント片からなり、シール室に供給されるパージガスは、第3セグメントリングにおける各セグメント片間の隙間、及び第1セグメントリングと回転軸との隙間を流路として機内に導入される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周囲にシール室を区画するシールケースと、
前記シール室に収容され、前記回転軸に嵌挿されるセグメントリングと、
前記シールケースに設けられ、前記シール室にパージガスを供給する供給孔と、
を備えたセグメントシールであって、
前記セグメントリングは、
機内側に配置される第1セグメントリングと、
大気側に配置される第2セグメントリングと、
前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの間に配置される第3セグメントリングとで構成され、
前記第1セグメントリングは、周方向に互いに接して分割され、前記回転軸の外周面に摺接しない複数のセグメント片からなり、
前記第2セグメントリングは、周方向に互いに接して分割され、前記回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、
前記第3セグメントリングは、周方向に互いに隙間を開けて分割され、前記回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、
前記第3セグメントリングにおける各セグメント片間の隙間は、前記第1セグメントリングの端面、及び前記第2セグメントリングの端面により塞がれており、
前記シール室に供給されるパージガスは、前記第3セグメントリングにおける各セグメント片間の隙間、及び前記第1セグメントリングと前記回転軸の外周面との隙間を流路として、機内に導入される、セグメントシール。
【請求項2】
前記第2セグメントリングは、各セグメント片の分割面が、径方向に対して傾斜しているとともに、内周側において、各セグメント片間に隙間が設けられている、請求項1に記載のセグメントシール。
【請求項3】
前記第3セグメントリングは、各セグメント片の周方向端面に、外周面から内周面に延びる溝が形成されており、
前記第3セグメントリングと前記回転軸との摺動によって、前記第3セグメントリングの内周面が摩耗することにより、各セグメント片間の隙間がなくなったとき、前記シール室に供給されるパージガスは、前記溝を流路として、機内に導入される、請求項1または2に記載のセグメントシール。
【請求項4】
前記第3セグメントリングの各セグメント片には、外周面から内周面に貫通する貫通孔が形成されている、請求項1または2に記載のセグメントシール。
【請求項5】
前記機内には、粉体が封止されている、請求項1~4の何れかに記載のセグメントシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、粉体機器等の回転軸をシールするセグメントシールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ、粉体機器等の回転軸をシールするセグメントシールは、周方向に分割された複数のセグメント片で構成されたセグメントリングを備える。セグメントリングは、回転軸の周囲をシールケースで区画されたシール室に収容され、回転軸とシールケースとの間をシールする。
【0003】
特許文献1には、シールケースを2つに分け、各シール室にセグメントリングを収容した構造のセグメントシールが開示されている。このセグメントシールでは、シールケース間に、窒素等のパージガスを供給し、回転軸とセグメントリングとの隙間から、機内側と大気側にパージガスを導入することにより、シール機能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-116667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたセグメントシールは、シール室を2室に分け、各シール室にセグメントリングを収容しているため、セグメントシールの軸方向の寸法が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、コンパクトな構造で、パージガスの導入によるシール機能を高めたセグメントシールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセグメントシールは、回転軸の周囲にシール室を区画するシールケースと、シール室に収容され、回転軸に嵌挿されるセグメントリングと、シールケースに設けられ、シール室にパージガスを供給する供給孔とを備え、セグメントリングは、機内側に配置される第1セグメントリングと、大気側に配置される第2セグメントリングと、第1セグメントリングと第2セグメントリングとの間に配置される第3セグメントリングとで構成されている。
【0008】
第1セグメントリングは、周方向に互いに接して分割され、回転軸の外周面に摺接しない複数のセグメント片からなり、第2セグメントリングは、周方向に互いに接して分割され、回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、第3セグメントリングは、周方向に互いに隙間を開けて分割され、回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなる。
【0009】
第3セグメントリングにおける各セグメント片間の隙間は、第1セグメントリングの端面、及び第2セグメントリングの端面により塞がれており、シール室に供給されるパージガスは、第3セグメントリングにおける各セグメント片間の隙間、及び第1セグメントリングと回転軸の外周面との隙間を流路として、機内に導入される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンパクトな構造で、パージガスの導入によるシール機能を高めたセグメントシールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シール室が一つのセグメントシールの構造を模式的に示した図である。
図2】セグメントリング(ラジアルカットリング)の構造を示した図である。
図3】セグメントシールの構造を模式的に示した図である。
図4】セグメントリング(タンゼンシャルカットリング)の構造を示した図である。
図5】セグメントリング(クリアランスリング)の構造を示した図である。
図6】セグメントシールの構造を模式的に示した図である。
図7】セグメントリング2A及びセグメントリング2Cを、機内側から軸方向に見た図である。
図8】本発明の実施形態におけるセグメントシールの具体的な構成を示した図である。
図9】(A)~(C)は、第3セグメントリングの各状態を示した図である。
図10】(A)及び(B)は、他の実施形態における第3セグメントリングの構造を示した図である。
図11】他の実施形態における第3セグメントリングの構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を説明する前に、本発明を想到するに至った経緯を説明する。
【0013】
図1は、シール室が一つのセグメントシールの構造を模式的に示した図である。
【0014】
図1に示すように、セグメントシールを構成するセグメントリング2Aは、回転軸100に装着されている。セグメントリング2Aの内周面は、回転軸100の外周面100aと接触してシール面を形成している。また、セグメントリング2Aの軸方向端面は、シールケース3の内壁面と接触して、シール面を形成している。
【0015】
回転軸100の周囲にシールケース3によって区画されたシール室10にパージガスを供給し、供給されたパージガスを機内側及び大気側に導入するためには、セグメントリング2A自身に、パージガスを通す流路が必要となる。
【0016】
そこで、本願発明者等は、図2に示すような構造のセグメントリング2Aに着目した。このセグメントリング2Aは、ラジアルカットリングと称されるもので、周方向に互いに隙間2cを開けて分割された複数(図では3つ)のセグメント片2aからなり、回転軸100の外周面100aに摺接して配置される。このような構造のセグメントリング2Aは、回転軸100との摺動によってセグメントリング2の内周が摩耗しても、セグメント片2a間に隙間2cがあるため、摩耗に伴って、セグメントリング2Aの内径を縮小する機能(径方向縮小機能)を有し、これにより、回転軸100との摺接が維持される。
【0017】
本願発明者等は、図1に示した構成のセグメントシールにおけるセグメントリング2Aに、図2に示した構造のセグメントリング2Aを使用すれば、セグメント片2a間の隙間2cを、パージガスの流路にすることができることに気がついた。これにより、シール室が一つになるため、セグメントシールの軸方向寸法を縮小することが可能となる。
【0018】
しかしながら、図1に示すように、回転軸100の外周面100aと、シールケース3との間隔Dが大きいため、セグメント片2a間の隙間2cを通ったパージガスは、隙間Dで拡散してしまい、回転軸100の外周部を適正な圧力に保つことができない。そのため、パージガスによるシール機能を十分に発揮することができない。また、通常、機内側よりも大気側の方の圧力が低いため、パージガスの大半は、大気側に逃げてしまう。
【0019】
回転軸100の外周部を適切な圧力に保つためには、セグメント片2a間の隙間2cを通ったパージガスを、回転軸100の外周面100a近傍まで導く必要がある。そこで、図3に示すように、セグメントリング2Aの機内側に、さらに、図4に示すような構造のセグメントリング2Bを配置することが考えられる。
【0020】
図4に示したセグメントリング2Bは、タンゼンシャルカットリングと称されるもので、周方向に互いに分割された複数(図では3つ)のセグメント片2aからなり、回転軸100の外周面100aに摺接して配置される。このセグメントリング2Bは、各セグメント片2aの分割面2dが、径方向に対して傾斜しているとともに、内周側において、各セグメント片2a間に隙間2eが設けられている。
【0021】
このような構造のセグメントリング2Bは、図2に示したセグメントリング2Aと同様に、回転軸100との摺動によってセグメントリング2Bの内周が摩耗しても、セグメント片2a間に隙間2eがあるため、摩耗に伴って、セグメントリング2Bの内径を縮小する機能(径方向縮小機能)を有し。これにより、回転軸100との摺接を維持することができる。
【0022】
図3に示すように、セグメントリング2Aの機内側に、図4に示した構造のセグメントリング2Bを配置した場合、セグメントリング2Aにおけるセグメント片2a間の隙間2cは、セグメントリング2Bの端面で塞がれる。そのため、シール室10に供給されたパージガスは、セグメントリング2Aにおけるセグメント片2a間の隙間2cを通って、回転軸100の外周面100aまで導かれる。
【0023】
その後、パージガスは、セグメントリング2Bにおけるセグメント片2a間の隙間2eを、回転軸100の外周面100aに沿って、機内側に導かれる。従って、シール室10に供給されたパージガスを、高い圧力を保ったまま、回転軸100の外周部に供給できるため、パージガスによるシール機能を十分に発揮することができる。
【0024】
また、図3に示すように、セグメントリング2Aの大気側にも、図4に示した構造のセグメントリング2Bを配置すれば、セグメントリング2Aにおけるセグメント片2a間の隙間2cを、セグメントリング2Bの端面で塞ぐことができるため、パージガスが大量に大気側に逃げてしまうのを防止することができる。
【0025】
しかしながら、セグメントリング2Aの機内側に、図4に示した構造のセグメントリング2Bを配置した場合、機内に粉体が封止されていると、セグメント片2a間の隙間2eに粉体が入り込むことによって、隙間2eが詰まるおそれがある。その結果、セグメントリング2Bが、回転軸100との摺動による摩耗に伴って、セグメントリング2Bの内径が縮小する機能を損なわれ、セグメントリング2Bによるシール機能の低下を招くおそれがある。
【0026】
そこで、本願発明者等は、セグメントリング2Aの機内側に配置するセグメントリングとして、図4に示したセグメントリング2Bの代わりに、図5に示すようなセグメントリング2Cを使用すれば、粉体の詰まりによるシール機能の低下を防止できると考えた。
【0027】
図5に示したセグメントリング2は、クリアランスリングと称されるもので、周方向に互いに接して分割された複数(図では3つ)のセグメント片2aからなり、図6に示すように、回転軸100の外周面100aに摺接せずに配置される。図5に示したセグメントリング2Cは、セグメント片2a間に隙間がないため、機内側の粉体が隙間に入って詰まるような問題は生じない。
【0028】
図7は、図6に示したセグメントリング2A及びセグメントリング2Cを、機内側から軸方向に見た図である。図7に示すように、セグメントリング2Aにおけるセグメント片2a間の隙間2c、及び、セグメントリング2Cの内周面2gと回転軸100の外周面100aとの隙間が重なった部分Sは、軸方向に沿ったパージガスの流路となる。
【0029】
そのため、シール室10に供給されたパージガスは、セグメントリング2Aにおける隙間2cを通って、回転軸100の外周面100aまで導かれた後、重なり部分Sを、回転軸100の軸方向に沿って抜けて、機内側に導入される。このとき、回転軸100の外周面100aと、セグメントリング2Cとの隙間、すなわち、重なり部分Sは、回転軸100の外周面100aと、シールケース3との間隔に比べて十分に小さいため、回転軸100の外周面100aまで導かれたパージガスは、高い圧力を保ったまま、機内側に導入される。従って、パージガスによるシール機能を十分に発揮することができる。
【0030】
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、回転軸100の周囲に区画された一つのシール室10に、ラジアルカットリング2Aを、機内側からクリアランスリング2Cで、大気側からタンゼンシャルカットリング2Bで挟み込んだ1組のセグメントシールを収容することによって、軸方向の寸法を縮小したコンパクトな構造で、かつ、パージガスによるシール機能を高めたセグメントシールを実現することができる。
【0031】
以下、図8を参照しながら、本発明の実施形態におけるセグメントシールの具体的な構成を説明する。
【0032】
図8に示ように、本実施形態におけるセグメントシール1は、回転軸100の周囲にシール室10を区画するシールケース3と、シール室10に収容され、回転軸に嵌挿されるセグメントリング2と、シールケース3に設けられ、シール室10にパージガスを供給する供給孔4とを備えている。機内側には、例えば、粉体等が封止されている。
【0033】
セグメントリング2は、機内側に配置される第1セグメントリング21と、大気側に配置される第2セグメントリング22と、第1セグメントリング21と第2セグメントリング22との間に配置される第3セグメントリング23とで構成されている。
【0034】
第1セグメントリング21は、図5に示したクリアランスリング2Cの構成を有し、周方向に互いに接して分割され、回転軸100の外周面100aに摺接しない複数のセグメント片2aからなる。
【0035】
第2セグメントリング22は、図4に示したタンゼンシャルカットリング2Bの構成を有し、周方向に互いに接して分割され、回転軸100の外周面100aに摺接する複数のセグメント片2aからなる。また、各セグメント片2aの分割面2dは、径方向に対して傾斜しており、内周側において、各セグメント片2a間に隙間2eが設けられている。
【0036】
第3セグメントリング23は、図2に示したラジアルカットリング2Aの構成を有し、周方向に互いに隙間2cを開けて分割され、回転軸100の外周面100aに摺接する複数のセグメント片からなる。
【0037】
各セグメント片2aの外周面には、周方向に延びる溝2bが形成され、この溝2bに、ガータスプリング6を装着することによって、3つのセグメント片2aが一体的に拘束されている。なお、各セグメントリング21、22、23は、公知の方法(例えば、回り止めピン)により、回転を防止されている。
【0038】
第1セグメントリング21の各分割面、及び、第2セグメントリング22の各分割面は、それぞれ、第3セグメントリング23の分割面に対して、周方向にオフセットされて配置されている。これにより、第3セグメントリング23における各セグメント片2a間の隙間2cは、第1セグメントリング21の端面、及び第2セグメントリング22の端面により塞がれている。
【0039】
図8に示すように、第2セグメントリング22と、シールケース3の大気側内壁との間に、リテーナ7が配置され、リテーナ7を、シールケース3の大気側内壁に配置された圧縮バネ5で押圧することによって、1組のセグメントリング2を、シールケース3の機内側内壁に密着させている。
【0040】
(パージガスの供給)
第3セグメントリング23における各セグメント片2a間の隙間2cは、第1セグメントリング21の端面で覆われている。そのため、供給孔4からシール室10に供給されたパージガスは、各セグメント片2a間の隙間2cを通って、回転軸100の外周面100aまで導かれる。
【0041】
その後、パージガスは、第3セグメントリング23における各セグメント片2a間の隙間2c、及び、第1セグメントリング21の内周面2gと回転軸100の外周面100aとの隙間が重なった部分S(図7を参照)を、回転軸100の軸方向に沿って抜けて、機内側に導入される。
【0042】
このとき、回転軸100の外周面100aと、第1セグメントリング21との隙間、すなわち、重なり部分Sは、十分に小さいため、回転軸100の外周面100aまで導かれたパージガスは、高い圧力を保ったまま、機内に導入される。これにより、パージガスによるシール機能を十分に発揮することができる。
【0043】
本実施形態によれば、回転軸100の周囲に区画された一つのシール室10に、第1~第3セグメントリング21、22、23からなる1組のセグメントリング2を収容することによって、軸方向の寸法を縮小したコンパクトな構造で、かつ、パージガスによるシール機能を高めたセグメントシールを実現することができる。
【0044】
また、第1セグメントリング21は、セグメント片2a間に隙間がないため、機内側の粉体が隙間に入って詰まるような問題も生じない。
【0045】
(他の実施形態)
上記の実施形態において、1組のセグメントリング2のうち、真ん中に位置する第3セグメントリング23は、図9(A)に示すように、回転軸100の外周面100aに摺接するように配置され、各セグメント片2a間の隙間2cが、パージガスの流路となっている。
【0046】
しかしながら、このような構造の第3セグメントリング23は、回転軸100との摺動によって第3セグメントリング内周面の摩耗が進むと、次第に、隙間2cが小さくなり、最終的には、図9(B)に示すように、隙間2cが消滅し、セグメント片2a同士が接触する。このとき、パージガスの流路は閉鎖されるため、パージガスによるシール機能が消失した状態になる。
【0047】
さらに、第3セグメントリング23の内周面の摩耗が進むと、第3セグメントリング23は回転が規制されているだけで、固定はされていないため、回転軸100との摺動によって、図9(C)に示すように、第3セグメントリング23の内周面と、回転軸100の外周面100aとの間に、隙間が生じた状態になる。
【0048】
このような状態になると、第3セグメントリング23と、機内側に位置するセグメントリング21とは類似の構造になり、パージガスによるシール機能が消失していることから、機内側から大気側へ、大量の漏れが発生するおそれがある。
【0049】
図10(A)、(B)は、本実施形態における第3セグメントリング23の構造を示した図で、図9(B)、(C)に示した状態になっても、パージガスの流路を確保することが可能な構造を有する。ここで、図10(B)は、図10(A)のA-O-A線に沿った断面図である。
【0050】
図10(A)、(B)に示すように、第3セグメントリング23は、各セグメント片2aの周方向端面に、外周面から内周面に延びる溝2hが形成されている。なお、図面では、溝2hを、各セグメント片2aの周方向の両端面に形成しているが、一方の端面にだけ形成してもよい。ただし、この場合、各セグメント片2a間の隙間2cを挟んで対向する端面の何れかに、溝2hを形成する必要がある。
【0051】
図11は、第3セグメントリング23が、第3セグメントリング23の内周面が摩耗することにより、隙間2cが消滅し、セグメント片2a同士が接触した状態を示した斜視図である。図11に示すように、セグメント片2a同士が接触しても、溝2hは、第3セグメントリング23の外周面から内周面に貫通する貫通孔をなす。そのため、シール室10に供給されるパージガスを、溝2hを流路として、機内に導入することができる。その結果、図9(B)、(C)に示した状態になっても、パージガスによるシール機能を維持することができ、機内側から大気側へ、大量の漏れが発生するのを防止することができる。
【0052】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、第2セグメントリング22として、図4に示した構造のタンゼンシャルカットリングを用いたが、これに限定されず、周方向に互いに接して分割され、回転軸の外周面に摺接する複数のセグメント片からなり、かつ、径方向縮小機能する構造のものであればよい。
【0053】
また、上記他の実施形態では、第3セグメントリング23において、各セグメント片2aの周方向端面に、外周面から内周面に延びる溝2hを形成したが、各セグメント片2aに、外周面から内周面に貫通する貫通孔を形成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、機内に粉体が封止されている例を説明したが、これに限定されず、他の材質(液体または気体)が封止されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 セグメントシール
2 セグメントリング
2A、2B、2C セグメントリング
2a セグメント片
2b 溝
2c 隙間
2d 分割面
2e 隙間
2g 内周面
2h 溝
3 シールケース
4 供給孔
5 圧縮バネ
6 ガータスプリング
7 リテーナ
10 シール室
21 第1セグメントリング
22 第2セグメントリング
23 第3セグメントリング
100 回転軸
100a 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11