(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175242
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】背部用ストレッチ装置
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61H1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081488
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】509154268
【氏名又は名称】株式会社惣田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】惣田 亘
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA46
4C046BB03
4C046CC12
4C046DD08
4C046DD42
(57)【要約】
【課題】背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる背部用ストレッチ装置を提供する。
【解決手段】背部用ストレッチ装置100は、ストレッチ装置本体101とコントローラ130とを備えている。ストレッチ装置本体101は、ベース体102上に第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109を備えている。ベース体102は、被施術者Uの身長方向および左右の幅方向にそれぞれ凸状に湾曲する湾曲面で構成されている。第1背部用エアバッグ105は、細部105aと幅広部105bとで構成されている。細部105aは、被施術者Uの左右の肩甲骨Kの間の骨間部S内に配置される幅で形成されている。この第1背部用エアバッグ105上には、骨間部S内に配置されて骨間部Sに向かって突出する背筋突出部106が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仰臥した被施術者の背部を載置可能な長さに形成されるとともに前記背部を載置する上面における前記背部の左右の幅方向に沿って凸状に盛り上がるおよび/または前記背部の身長方向に沿って凸状に盛り上がる隆起上面部を有したベース体と、
前記隆起上面部上に設けられて前記背部を圧迫する背部用エアバッグとを備えたことを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載した背部用ストレッチ装置において、
前記隆起上面部は、
前記背部の左右幅方向および身長方向に沿ってそれぞれ凸状に隆起していることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した背部用ストレッチ装置において、さらに、
前記背部用エアバッグに空気を供給するエアポンプを備え、
前記エアポンプは、
前記ベース体内に設けられていることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した背部用ストレッチ装置において、さらに、
前記背部用エアバッグの上面に凸状に突出して背筋方向に延びる背筋突出部を備えることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項5】
請求項4に記載した背部用ストレッチ装置において、
前記背筋突出部は、
上面が前記背部の左右幅方向に沿って凸状に湾曲していることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載した背部用ストレッチ装置において、
前記背筋突出部は、弾性変形可能な弾性体で構成されていることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した背部用ストレッチ装置において、
前記背部用エアバッグは、
前記被施術者の左右の肩甲骨の間に配置されて同肩甲骨の間に入り込む幅に形成されていることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した背部用ストレッチ装置において、さらに、
前記被施術者の臀部を圧迫する臀部用エアバッグを備えることを特徴とする背部用ストレッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施術者の背中をマッサージする背部用ストレッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被施術者の背中をストレッチするストレッチ器具が知られている。例えば、下記特許文献1には、仰臥した被施術者の背部の下に配置して背部をストレッチする背当て体が開示されている。この場合、背当て体は、クッション部上に粒状部を配置して被施術者の背筋に沿って長尺に延びるかまぼこ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された背当て体においては、被施術者の背中に対応した形に変形するがかまぼこ状の基本形状は固定であるため、背中の表面形状を超えた背中自体の形状または大きさの違いに対応してストレッチを行うことができないとともにストレッチも単調でストレッチの満足感が得られ難いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる背部用ストレッチ装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、仰臥した被施術者の背部を載置可能な長さに形成されるとともに背部を載置する上面における背部の左右の幅方向に沿って凸状に盛り上がるおよび/または背部の身長方向に沿って凸状に盛り上がる隆起上面部を有したベース体と、隆起上面部上に設けられて背部を圧迫する背部用エアバッグとを備えたことにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、被施術者の背部の下方に配置されて背部を支持するベース体上にエアバッグが設けられているため、このエアバッグが膨張または収縮することで背部を圧迫または開放することができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、隆起上面部は、背部の左右幅方向および身長方向に沿ってそれぞれ凸状に隆起していることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、隆起上面部が背部の左右幅方向および身長方向に沿ってそれぞれ凸状に隆起しているため、被施術者の胸部および腹部を体の幅方向および身長方向にそれぞれ伸ばして満足感の高いストレッチを行うことができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、さらに、背部用エアバッグに空気を供給するエアポンプを備え、エアポンプは、ベース体内に設けられていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、背部用エアバッグに空気を供給するエアポンプがベース体内に設けられているため、背部用ストレッチ装置をコンパクトに構成できる。また、本発明に係る背部用ストレッチ装置は、ポンプとエアバッグとの距離を短くしてエアの供給経路を短くできるため、ポンプの容量を小さくできるとともにエア漏れなどの損失を抑えることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、さらに、背部用エアバッグの上面に凸状に突出して背筋方向に延びる背筋突出部を備えることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、背部用エアバッグの上面に凸状に突出して背筋方向に延びる背筋突出部が設けられているため、エアバッグが膨張または収縮することで背部に対してより大きな圧迫または開放をすることができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、背筋突出部は、上面が背部の左右幅方向に沿って凸状に湾曲していることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、背筋突出部の上面が背部の左右幅方向に沿って凸状に湾曲しているため、背部を過度な押圧力が加わることを抑えながら強く押すことができ背部に対してより大きな圧迫または開放をすることができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、背筋突出部は、弾性変形可能な弾性体で構成されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、背筋突出部が弾性変形可能な弾性体で構成されているため、背部への強い当たりを抑えながら背部に対してより大きな圧迫または開放をすることができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。特に、本発明に係る背部用ストレッチ装置は、被施術者が背筋突出部上に背部を載置した際およびエアバッグが収縮した際における強い当たり(押圧感)を緩和することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記背部用ストレッチ装置において、背部用エアバッグは、被施術者の左右の肩甲骨の間に配置されて同肩甲骨の間に入り込む幅に形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、背部用エアバッグが被施術者の左右の肩甲骨の間に配置されて同肩甲骨の間に入り込む幅に形成されているため、エアバッグが膨張した際に左右の肩甲骨を左右方向に押し広げることで胸部および腹部を体の幅方向に伸ばして満足感の高いストレッチを行うことができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、背部用ストレッチ装置において、さらに、被施術者の臀部を圧迫する臀部用エアバッグを備えることにある。
【0021】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、背部用ストレッチ装置は、被施術者の臀部を圧迫する臀部用エアバッグを備えているため、胸部側との高低差を生み出すことで被施術者の胸部および腹部を体の身長方向に伸ばして満足感の高いストレッチを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る背部用ストレッチ装置の外観構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す背部用ストレッチ装置100の配管構成および制御構成を模式的に示すシステム構成図である。
【
図3】
図1に示すストレッチ装置本体について外装カバーを外した状態の外観構成の概略を示す平面図である。
【
図4】
図3に示すストレッチ装置本体の外観構成の概略を示す側面図である。
【
図5】
図3に示す第1背部用エアバッグについて被施術者の左右の肩甲骨との関係とともに示す平面図である。
【
図6】
図3に示す背筋突出部の外観構成の概略を示す斜視図である。
【
図7】
図1に示す背部用ストレッチ装置上に被施術者が仰臥した状態を示す側面図である。
【
図8】
図7に示す背部用ストレッチ装置において第1背部用エアバッグが膨張した状態を示す側面図である。
【
図9】
図8に示す背部用ストレッチ装置を左側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る背部用ストレッチ装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る背部用ストレッチ装置100の外観構成の概略を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す背部用ストレッチ装置100の配管構成および制御構成を模式的に示すシステム構成図である。この背部用ストレッチ装置100は、被施術者Uのけ背中から腰までの背部および臀部の範囲に対して圧迫または圧迫の開放によるストレッチを行う機械装置である。
【0024】
(背部用ストレッチ装置100の構成)
背部用ストレッチ装置100は、ストレッチ装置本体101とコントローラ130とを備えて構成されている。ストレッチ装置本体101は、被施術者Uの背部および臀部が載置されて圧迫および開放を行う機械装置であり、主として、ベース体102、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109および外装カバー120をそれぞれ備えて構成されている。
【0025】
ベース体102は、
図3および
図4にそれぞれ示すように、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108、臀部用エアバッグ109、エアポンプ111および電池116をそれぞれ支持しつつ被施術者Uの背部および臀部が載置される部品であり、被施術者Uの荷重によって押し潰されない程度の剛性を有した硬質の発泡樹脂フォーム(例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン)で構成されている。このベース体102は、被施術者Uの身長方向に延びる棒状に形成されている。この場合、ベース体102は、平面視において帯状に延びて形成されるとともに、両端部の幅が絞られて狭くなるように形成されている。また、ベース体102は、平面状に形成された底部103の上方に凸状に盛り上がった状態で隆起上面部104が形成されている。本実施形態においては、ベース体102は、90cmの長さに形成されている。
【0026】
底部103は、ベース体102が床面に載置される部分であり、平坦面で構成されている。本実施形態においては、底部103は、長手方向(被施術者Uの身長方向に対応する)が90cmに形成されるとともに、この長手方向に直交する幅方向(被施術者Uの左右方向に対応する)が16cmの底面視で長方形状に形成されている。この底部103の中央部は、上方(隆起上面部104側)に向かって凹状に切り欠かれた収容部103aが形成されており、この収容部103a内にエアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114c、圧力検出器115a~115cおよび電池116がそれぞれ収容されている。
【0027】
隆起上面部104は、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109をそれぞれ支持しつつ被施術者Uの背部および臀部が載置される部分であり、上方に向かって凸状に盛り上がって形成されている。この場合、隆起上面部104は、長手方向に直交する幅方向に沿って同幅方向を頂上部とする円弧状に湾曲する湾曲面に形成されている。また、隆起上面部104は、長手方向において両端部から中央部に向かって徐々に緩やかな円弧状に隆起する湾曲面で構成されている。本実施形態においては、隆起上面部104は、底部103から8cmの高さに隆起して形成されている。
【0028】
第1背部用エアバッグ105は、被施術者Uの背部における頭部側、より具体的には、左右の肩甲骨Kの間の部分である骨間部Sを中心とした領域を圧迫または圧迫の開放を行うための部品である。より具体的には、第1背部用エアバッグ105は、互いに重ね合された2枚の樹脂製(例えば、ポリウレタン樹脂)のシート材の外縁部を互いに溶着することでこの溶着部の内側に空気を収容する密閉空間を形成したシート状の部品である。
【0029】
この第1背部用エアバッグ105は、
図5に示すように、平面視で細部105aと幅広部105bとで構成されている。細部105aは、被施術者Uの骨間部Sに配置されてエアバッグの膨張時にこの骨間部Sを圧迫または開放する部分であり、エアバッグの膨張時に骨間部Sの長さ(左右の肩甲骨Kの間の間隔)以下の幅の部分が形成されるように形成されている。本実施形態においては、幅広部105bから幅が徐々に狭くなる平面で三角形状に形成されている。また、細部105aの身長方向の長さは、肩甲骨Kの身長方向の長さよりも長くても良いが、本実施形態においては肩甲骨Kの身長方向の長さの半分の長さ以上かつ肩甲骨Kの身長方向の長さ未満の長さに形成されている。
【0030】
幅広部105bは、被施術者Uの左右の肩甲骨Kの身長方向の下部分の領域を圧迫または開放する部分であり、左右の肩甲骨Kの間の長さ(間隔)以上の長さの平面視で長方形状に形成されている。この第1背部用エアバッグ105は、ベース体102内に収容されるエアポンプ111にエア配管112aを介して繋がった状態で隆起上面部104の稜線部分(頂上部分)上に接着剤によって固定されている。また、第1背部用エアバッグ105の上面には、背筋突出部106が設けられている。
【0031】
背筋突出部106は、
図6に示すように、骨間部Sを押圧する部品であり、軟質の発泡樹脂フォーム(例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン)で構成されている。この背筋突出部106は、被施術者Uの身長方向に延びる棒状に形成されている。より具体的には、背筋突出部106は、長手方向に延びる平坦面の上方が円弧状に盛り上がった半円柱体で構成されている。また、背筋突出部106は、骨間部Sの幅以下の幅で形成されている。本実施形態においては、背筋突出部106は、20cmの長さに形成されている。この背筋突出部106は、収納袋107を介して第1背部用エアバッグ105の上面における幅方向中央部に設けられている。
【0032】
収納袋107は、背筋突出部106を第1背部用エアバッグ105上で相対変位可能な状態で保持するための部品であり、伸縮性のある布材を背筋突出部106を収納可能な深さに形成した長細い袋状に形成されている。この収納袋107は、長手方向の両端部がベース体102の隆起上面部104上に接着剤を介して固定されている。
【0033】
第2背部用エアバッグ108は、被施術者Uの背部における腰部を圧迫または圧迫の開放を行うための部品である。より具体的には、第2背部用エアバッグ108は、第1背部用エアバッグ105と同様に、互いに重ね合された2枚の樹脂製(例えば、ポリウレタン樹脂)のシート材の外縁部を互いに溶着することでこの溶着部の内側に空気を収容する密閉空間を形成して構成されている。本実施形態においては、第2背部用エアバッグ108は、縦横が17cmずつの平面視で方形に形成されている。この第2背部用エアバッグ108は、ベース体102内に収容されるエアポンプ111にエア配管112bを介して繋がった状態で隆起上面部104の稜線部分(頂上部分)上に接着剤によって固定されている。
【0034】
臀部用エアバッグ109は、被施術者Uの臀部を圧迫または圧迫の開放を行うための部品である。より具体的には、臀部用エアバッグ109は、第1背部用エアバッグ105および第2背部用エアバッグ108と同様に、互いに重ね合された2枚の樹脂製(例えば、ポリウレタン樹脂)のシート材の外縁部を互いに溶着することでこの溶着部の内側に空気を収容する密閉空間を形成して構成されている。本実施形態においては、臀部用エアバッグ109は、縦が20cmおよび横が17cmの平面視で方形に形成されている。この臀部用エアバッグ109は、ベース体102内に収容されるエアポンプ111にエア配管112cを介して繋がった状態で隆起上面部104の稜線部分(頂上部分)上に接着剤によって固定されている。
【0035】
エアポンプ111は、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109にそれぞれ大気中の空気を供給するための機器であり、制御装置131よって作動が制御される。このエアポンプ111は、エア配管112a~112cをそれぞれ介して第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109に繋がった状態でベース体102の収容部103a内に保持されている。
【0036】
この場合、エアポンプ111は、エア配管112a~112cの一部、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114c、圧力検出器115a~115cとともに樹脂製の収容ボックス117内に収容されて収容部103a内に保持されている。この収容ボックス117は、ベース体102における臀部が載置される部分を避けて背部が配置される部分、さらには、肩甲骨Kが載置される部分に配置されている。
【0037】
エア配管112a~112cは、エアポンプ111が出力する空気を第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109にそれぞれ導くとともに、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109の各内部の空気を三方向流通弁114a~114cに導くための樹脂製のチューブである。
【0038】
このエア配管112a~112cは、エアポンプ111から延びた後、3つに分岐してそれぞれ二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114cおよび圧力検出器115a~115cを介して第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109に接続されている。
【0039】
二方向流通弁113a~113cは、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109に対してそれぞれ三方向流通弁114a~114cを介してエアポンプ111を連通または遮断させる電磁弁であり、それぞれ制御装置131によって作動が制御される。
【0040】
三方向流通弁114a~114cは、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109に対してそれぞれ大気に連通または二方向流通弁113a~113cを介してエアポンプ111に連通させる電磁弁であり、それぞれ制御装置131によって作動が制御される。より具体的には、三方向流通弁114a~114cは、OFF状態において第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109をそれぞれ大気に連通させる。
【0041】
一方、三方向流通弁114a~114cは、ON状態において第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109をそれぞれ二方向流通弁113a~113cを介してエアポンプ111に連通させる。なお、二方向流通弁113a~113cおよび三方向流通弁114a~114cは、配置関係を相互に入れ替えてもよいものである。
【0042】
圧力検出器115a~115cは、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109の各内部圧力に対応する検出信号を制御装置131に出力する圧力検出装置である。これらの圧力検出器115a~115cは、コントローラ130内における三方向流通弁114a~114cよりも下流側のエア配管112a~112c上にそれぞれ設けられている。これらのエア配管112a~112c、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114cおよび圧力検出器115a~115cは、ベース体102内に収容部103aとともに溝状または貫通孔状に形成された切欠き部内(図示せず)にそれぞれ収容されている。
【0043】
電池116は、家庭用電源(100V)などの外部電源を介して蓄えた電力をエアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114c、圧力検出器115a~115cおよび制御装置131にそれぞれ供給する装置であり、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池で構成されている。したがって、この背部用ストレッチ装置100は、外部電源から電池116に電気を導くための電気コードおよび電源回路からなる充電アダプタ(図示せず)を有している。この場合、充電アダプタは、電池116に対して着脱自在に構成されている。
【0044】
この電池116は、ベース体102に凹状に形成された収容部103a内に収容されている。この場合、電池116は、ベース体102における臀部が載置される部分を避けて背部が配置される部分、さらには、腰部が載置される部分に配置されている。
【0045】
外装カバー120は、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108、臀部用エアバッグ109、エアポンプ111および電池116をそれぞれ備えたベース体102の外表面を覆う部品であり、伸縮性のある樹脂製の生地で袋状に形成されている。この場合、外装カバー120は、隆起上面部104を覆う部分に内側面に弾力性を有する軟質の発泡樹脂製のシート(図示せず)が設けられており、第1背部用エアバッグ105、背筋突出部106、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109による凹凸および接触時の不快感を和らげている。この外装カバー120には、ファスナ121および取っ手122がそれぞれ設けられている。
【0046】
ファスナ121は、袋状に形成された外装カバー120を開閉するための部品であり、ベース体102の側部に対向する部分にベース体102の長手方向に沿って設けられている。
【0047】
取っ手122は、ストレッチ装置本体101を把持し易くするための部品であり、外装カバー120の外側面上に両端部が固着された帯状に形成されている。この取っ手122は、弾力性を有する軟質の発泡樹脂製のシート(図示せず)を内蔵している。そして、この取っ手122は、ベース体102上に被施術者Uが仰臥した際に被施術者Uの頭部が載置される部分に設けられてヘッドレストとしても機能する。
【0048】
コントローラ130は、制御装置131およびこの制御装置131に被施術者Uからの操作を受け付ける操作パネル132を備えた樹脂製の箱体であり、電気コードを介してストレッチ装置本体101に電気的に繋がっている。なお、
図3、
図4、
図7、
図8および
図9においては、コントローラ130の図示を省略している。
【0049】
制御装置131は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ROMなどの記憶装置に記憶されている図示しない制御プログラムを実行することで背部用ストレッチ装置100の全体の作動を総合的に制御する。具体的には、制御装置131は、操作パネル132の操作に応じてエアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114cおよび圧力検出器115a~115cの各作動を制御して第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109に対する空気の供給または排気を行う。したがって、制御装置131は、エアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114cおよび圧力検出器115a~115cにそれぞれ電気的に接続されている。
【0050】
操作パネル132は、制御装置131に対して被施術者Uの指示を入力するスイッチ群を備えるとともに、制御装置131からの情報を表示するためのランプを備えたユーザインターフェースである。この操作パネル132は、コントローラ130の外表面に露出した状態で制御装置131に電気的に接続されている。
【0051】
(背部用ストレッチ装置100の作動)
次に、このように構成した背部用ストレッチ装置100の作動について説明する。まず、この背部用ストレッチ装置100を使用する被施術者Uは、背部用ストレッチ装置100を用意する。この場合、被施術者Uは、背部用ストレッチ装置100の電池116を家庭用電源などの外部電源に接続して予め充電しておく。
【0052】
次に、被施術者Uは、ストレッチを行う床面に背部用ストレッチ装置100を配置して背部用ストレッチ装置100を起動させる。具体的には、被施術者Uは、背部用ストレッチ装置100における操作パネル132を操作して背部用ストレッチ装置100の電源を入れる。これにより、背部用ストレッチ装置100の制御装置131は、図示しない所定の制御プログラムを実行することにより被施術者Uからの指令の入力を待つ待機状態となる。
【0053】
次に、被施術者Uは、
図7に示すように、背部用ストレッチ装置100のストレッチ装置本体101上に仰臥位の姿勢で寝る。この場合、被施術者Uは、自身の肩甲骨Kの骨間部Sに背筋突出部106が位置するようにストレッチ装置本体101上に寝る。これにより、被施術者Uは、ベース体102における隆起上面部104の湾曲形状によって身長方向および左右の幅方向にそれぞれ凸状に反った姿勢となる。なお、背部用ストレッチ装置100は、収容ボックス117および電池116がベース体102における背部側に配置されているため、被施術者Uがベース体102上における臀部用エアバッグ109上に腰を下ろした場合においても収容ボックス117および電池116に直接的な荷重が掛かることによる損傷を防止することができる。
【0054】
次に、被施術者Uは、コントローラ130の操作パネル132を操作することにより、背部用ストレッチ装置100の制御装置131に対してストレッチ動作の開始を指示する。この指示に応答して、制御装置131は、ROMなどの記憶装置に予め記憶されている図示しない制御プログラムを実行することによってエアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114cおよび圧力検出器115a~115cの各作動を開始させてストレッチ動作を開始する。
【0055】
具体的には、制御装置131は、エアポンプ111、二方向流通弁113a~113cおよび三方向流通弁114a~114cの各作動を制御して、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109のうちの少なくとも1つに空気を供給して膨張させるとともにこの膨張状態を所定時間維持した後、エアバッグ内の空気を大気中に排出する。この場合、制御装置131は、圧力検出器115a~115cからの検出信号を用いて第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109の各内部の空気圧を検出して空気の供給量を調節する。
【0056】
制御装置131は、制御プログラムに従って膨張させるエアバッグと収縮させるエアバッグとを組み合わせながらストレッチ動作を行う。これにより、被施術者Uは、背中から臀部に掛けての領域の仰け反り具合が変化することでストレッチを行うことができる。この場合、第1背部用エアバッグ105は、
図8および
図9にそれぞれ示すように、細部105aが被施術者Uの左右の肩甲骨Kの間の骨間部Sに入り込んで膨張するため、左右の肩甲骨Kの姿勢を頭部側から見て山形に変化させて大きく胸を張らせることができる。
【0057】
また、制御装置131は、第1背部用エアバッグ105を膨張させた状態で第2背部用エアバッグ108および/または臀部用エアバッグ109を膨張または収縮させるほか、第1背部用エアバッグ105を収縮させた状態で第2背部用エアバッグ108および/または臀部用エアバッグ109を膨張または収縮させる。これらにより、背部用ストレッチ装置100は、被施術者Uの肩甲骨Kの姿勢を種々変化させて所謂「肩甲骨はがし」を行うことができる。ここで、「肩甲骨はがし」とは、肩甲骨Kの周囲の筋肉またはファシア(皮膚や筋肉、臓器、骨または血管などを包みこんでつなぐ繊維状の組織)の緊張状態を解すことである。
【0058】
そして、制御装置131は、制御プログラムに規定された所定のストレッチプログラムの実行の終了または操作パネル132を介した被施術者Uによる作動の停止指示によってストレッチ動作を終了することができる。この後、被施術者Uは、ストレッチ装置本体101上から離脱することでストレッチを終了することができる。
【0059】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、背部用ストレッチ装置100は、被施術者Uの背部の下方に配置されて背部を支持するベース体102上に第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109がそれぞれ設けられているため、これらのエアバッグが膨張または収縮することで背部を圧迫または開放することができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。
【0060】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、背部用ストレッチ装置100は、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109の3つのエアバッグを備えて構成した。しかし、背部用ストレッチ装置100は、被施術者Uの背部の下方に配置されて背部を支持するベース体102上に少なくとも1つの背部用エアバッグが設けられていればよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、第1背部用エアバッグ105は、細部105aを備えて構成した。しかし、第1背部用エアバッグ105は、第2背部用エアバッグ108のように細部105aを省略して平面視で方形に形成することもできる。また、第1背部用エアバッグ105は、幅広部105bを省略して細部105aのみで構成することもできる。なお、この細部105aを備えた第1背部用エアバッグ105は、本発明に係る背部用ストレッチ装置100以外のストレッチ装置またはマッサージ装置に適用することもできる。例えば、細部105aを備えた第1背部用エアバッグ105は、単体でまたは平板上に固定したストレッチ装置として使用することができるとともに、チェア型のマッサージ装置における背もたれ部に内蔵して使用することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、ベース体102における隆起上面部104は、被施術者Uの身長方向および左右の幅方向にそれぞれ凸状にカーブする曲面で構成した。しかし、隆起上面部104は、仰臥した被施術者Uの背部の左右の幅方向および身長方向のうちの少なくとも一方に沿って凸状に盛り上がって形成されていればよい。したがって、隆起上面部104は、仰臥した被施術者Uの背部の左右の幅方向にのみ、または身長方向にのみ凸状に盛り上がって形成することができる。また、隆起上面部104は、円弧状のほか、直線状に盛り上がる傾斜面で構成されていてもよい。これらの場合、隆起上面部104は、被施術者Uの身長方向に対しては両端部がそれぞれ床面に向かって鋭角状に延びて形成されることで楽な姿勢で仰臥することができる。また、隆起上面部104は、左右の幅方向に対して両端部がそれぞれ床面に向かって略垂直または曲率が幅方向中央部よりも両側が大きくなるように形成されることで仰臥した被施術者Uが効果的に胸を張ることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、ベース体102は、被施術者Uの頭部から臀部までを載置可能な長さに形成した。しかし、ベース体102は、仰臥した被施術者Uの少なくとも背部を載置可能な長さに形成されていればよい。また、ベース体102は、硬質ではあるが弾力性を有する発泡樹脂で構成したが、弾力性を有しない材料、例えば、樹脂材、金属材または木材で構成することもできる。
【0065】
また、上記実施形態においては、ベース体102は、背筋突出部106を備えて構成した。これにより、第1背部用エアバッグ105が膨張または収縮した際に背部に対してより大きな圧迫または開放をすることができ背部の形状または大きさに拘らずストレッチの満足感を向上させることができる。しかし、ベース体102は、背筋突出部106を省略して構成することもできる。また、ベース体102は、背筋突出部106を第1背部用エアバッグ105に代えてまたは加えて第2背部用エアバッグ108、さらには臀部用エアバッグ109に設けることもできる。
【0066】
また、上記実施形態においては、背筋突出部106は、上面が円弧状の曲面に形成した。しかし、背筋突出部106は、上面が平坦面に形成されていてもよいし断面形状が三角形になるように先鋭的に形成されていてもよい。また、背筋突出部106は、弾性変形しない剛体(例えば、樹脂材、金属材または木材)で構成されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、エアポンプ111および電池116は、ベース体102の内部にそれぞれ設けた。しかし、エアポンプ111および電池116は、ベース体102とは別に設けて外部から供給するように構成してもよいことは当然である。
【0068】
また、上記実施形態においては、ストレッチ装置本体101は、外装カバー120を備えて構成した。これにより、背部用ストレッチ装置100は、第1背部用エアバッグ105、第2背部用エアバッグ108および臀部用エアバッグ109への接触感を和らげることできるとともにこれらの汚損を防止することができる。しかし、ストレッチ装置本体101は、外装カバー120を省略して構成することもできる。また、外装カバー120は、取っ手122を省略して構成することもできる。
【0069】
また、上記実施形態においては、電池116は、二次電池で構成した。しかし、電池116は、繰り返しの充電を行うことができない一次電池で構成されていてもよい。また、背部用ストレッチ装置100は、電池116を省略して外部電源から常に電力の供給を受けてエアポンプ111、二方向流通弁113a~113c、三方向流通弁114a~114c、圧力検出器115a~115cおよび制御装置131を作動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
U…被施術者、K…肩甲骨、S…骨間部、
100…背部用ストレッチ装置、
101…ストレッチ装置本体、102…ベース体、103…底部、103a…収容部、104…隆起上面部、105…第1背部用エアバッグ、105a…細部、105b…幅広部、106…背筋突出部、107…収納袋、108…第2背部用エアバッグ、109…臀部用エアバッグ、
111…エアポンプ、112a~112c…エア配管、113a~113c…二方向流通弁、114a~114c…三方向流通弁、115a~115c…圧力検出器、116…電池、117…収容ボックス、
120…外装カバー、121…ファスナ、122…取っ手、
130…コントローラ、131…制御装置、132…操作パネル。