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特開2022-175248配線基板、その製造方法、及び表面処理剤
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  • 特開-配線基板、その製造方法、及び表面処理剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175248
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】配線基板、その製造方法、及び表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20221117BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20221117BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20221117BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
H05K3/12 610C
H05K3/18 A
H05K3/38 Z
H05K1/03 610N
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081495
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520206988
【氏名又は名称】豊光社テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】志保 浩司
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
(72)【発明者】
【氏名】光田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】安 克彦
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA16
5E343AA18
5E343AA19
5E343BB16
5E343BB17
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB44
5E343BB48
5E343DD02
5E343DD03
5E343DD43
5E343EE37
5E343EE52
5E343EE56
5E343ER32
5E343ER43
5E343GG01
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】金属層の密着性が高い配線基板、このような配線基板の製造方法、及びこのような配線基板等の製造に用いることができる表面処理剤を提供する。
【解決手段】本発明の一形態は、基材と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備え、上記基材と上記金属粒子層との間、及び上記金属粒子層と上記金属めっき層との間の少なくとも一方には化合物αが介在し、上記化合物αが、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である、配線基板である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備え、
上記基材と上記金属粒子層との間、及び上記金属粒子層と上記金属めっき層との間の少なくとも一方には化合物αが介在し、
上記化合物αが、
一分子内に、
ベンゼン環と、
アルコキシシリル基と、
アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と
を有する化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、配線基板。
【請求項2】
上記基材は、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル又はフッ素樹脂を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
上記金属粒子層が、銀、金、銅、パラジウム及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する金属粒子を含む、請求項1又は請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
上記金属めっき層が、銅、ニッケル、銀及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
上記化合物α1が、下記式(1)又は(2)で表される化合物である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線基板。
【化1】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
上記式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【化2】
上記式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【請求項6】
基材上に、直接又は他の層を介して、金属粒子を含む金属インクを用いて金属粒子層を形成する工程、及び
上記金属粒子層上に、直接又は他の層を介して、めっき処理により金属めっき層を形成する工程
を備え、
上記金属粒子層が形成される上記基材の表面、及び上記金属めっき層が形成される上記金属粒子層の表面の少なくとも一方に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程
をさらに備え、
上記化合物αが、
一分子内に、
ベンゼン環と、
アルコキシシリル基と、
アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と
を有する化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、配線基板の製造方法。
【請求項7】
上記金属粒子層を形成する工程が、
上記金属インクをインクジェット印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷により塗布する工程、及び
塗布された上記金属インクを焼成する工程
を備える、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
上記金属インクの20℃における粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下である、請求項6又は請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
上記金属インクにおける上記金属粒子の含有量が、5質量%以上60質量%以下である、請求項6、請求項7又は請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
上記表面処理剤を塗布する工程の後に、上記化合物αに対する紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程をさらに備える、請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
金属めっき又は金属インク印刷用の表面処理剤であって、
一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である化合物αを含む、表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、その製造方法、及び表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板は、樹脂などの絶縁性基材の上に、めっきにより金属層を形成した後、この金属層の不要な部分をエッチングにより除去することによって配線パターンを形成するという方法で製造されてきた。配線基板の製造方法として、特許文献1には、樹脂基材の表面にパラジウム触媒を付着させた後、樹脂基材の表面にめっきをする方法が記載されている。このようなパラジウム触媒を用いる方法は、めっきにより形成される金属層の密着性を高めることができる。しかし、この方法の場合、パラジウム触媒が残存すること、パラジウム触媒が高価であることなどの問題がある。また、エッチング工程を含む製造方法は、製造工程が複雑であるという問題も有する。
【0003】
これに対し、インクジェット印刷などで金属粒子を含む金属インクを必要な部分にのみ塗布し、さらにめっき処理を行う手法が提案されている。特許文献2には、金属微粒子を含むインクを用いたインクジェット法により、絶縁基板上に直接、下地導電パターンを形成し、電解めっき処理して上記下地電導パターン上に導電パターンを形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-124583号公報
【特許文献2】特開2003-209341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線基板の製造に金属インクを用いる方法は、パラジウム触媒を必要とせず、また、製造工程の大幅な簡略化を可能とする。しかし、金属インクにより基材上に形成される金属層は、基材に対する密着性が低い。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、金属層の密着性が高い配線基板、このような配線基板の製造方法、及びこのような配線基板等の製造に用いることができる表面処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、基材と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備え、上記基材と上記金属粒子層との間、及び上記金属粒子層と上記金属めっき層との間の少なくとも一方には化合物αが介在し、上記化合物αが、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である、配線基板である。
【0008】
本発明の他の形態は、基材上に、直接又は他の層を介して、金属粒子を含む金属インクを用いて金属粒子層を形成する工程、及び上記金属粒子層上に、直接又は他の層を介して、めっき処理により金属めっき層を形成する工程を備え、上記金属粒子層が形成される上記基材の表面、及び上記金属めっき層が形成される上記金属粒子層の表面の少なくとも一方に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程をさらに備え、上記化合物αが、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である、配線基板の製造方法である。
【0009】
本発明の他の形態は、金属めっき又は金属インク印刷用の表面処理剤であって、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である化合物αを含む、表面処理剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態によれば、金属層の密着性が高い配線基板、このような配線基板の製造方法、及びこのような配線基板等の製造に用いることができる表面処理剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<配線基板>
本発明の一実施形態に係る配線基板は、基材と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備え、上記基材と上記金属粒子層との間、及び上記金属粒子層と上記金属めっき層との間の少なくとも一方には化合物αが介在している。金属粒子層と金属めっき層とを含む金属層が、配線を構成している。本発明の一実施形態に係る配線基板は、基材と金属粒子層との間、及び金属粒子層と金属めっき層との間の少なくとも一方には化合物αが介在しているため、これらの層間での剥離が生じ難く、基材に対する金属層(金属粒子層及び金属めっき層)、すなわち配線の密着性が高い。なお、「化合物αが介在している」とは、化合物αが反応しており、基材、金属粒子層又は金属めっき層を構成する分子又は原子と結合した状態で層間に存在している場合も含む意味である。以下、樹脂基材と金属粒子層との間、及び金属粒子層と金属めっき層との間の双方に化合物αが介在している形態を中心に具体的に説明する。
【0013】
図1に示す本発明の一実施形態に係る配線基板10は、基材11と、金属粒子層12と、金属めっき層13とをこの順に備える積層体である。基材11と金属粒子層12との間には、化合物αが介在し、この層間には、化合物αを含む第1中間層14aが存在する。第1中間層14aは、図1に示されるように、基材11の一方の面(図1における上面)の全面に積層されていてよい。第1中間層14aは、基材11の他方の面(図1における下面)及び側面にまでも積層されていてもよい。金属粒子層12は、基材11の一方の面(図1における上面)の全面に積層されていなくてよく、所定のパターンで積層されていてよい。また、金属粒子層12と、金属めっき層13との間にも、化合物αが介在し、この層間には、化合物αを含む第2中間層14bが存在する。金属めっき層13は、通常、金属粒子層12の一方の面(図1における上面)の全面に積層されている。第2中間層14bは、金属粒子層12と金属めっき層13との間以外の部分にまで積層されていてもよい。
【0014】
第1中間層14a及び第2中間層14bは、連続的な層として存在していてもよく、断続的な層として存在していてもよい。第1中間層14a及び第2中間層14bは、通常、非常に薄い層であるため、光学顕微鏡等によって層であることが確認できなくてもよく、基材11と金属粒子層12との間、又は金属粒子層12と金属めっき層13との間に、化合物αが存在することが確認できればよい。第1中間層14a及び第2中間層14bは、化合物αに由来する層であってもよい。
【0015】
配線基板10では、基材11と金属粒子層12との間、及び金属粒子層12と金属めっき層13との間が、化合物αにより化学的に界面接合されている。このため、この配線基板10は、配線である金属層(金属粒子層12及び金属めっき層13)の基材11に対する密着性が高い。従って、例えば金属粒子層12及び金属めっき層13により微細な配線(金属層)を形成した場合も剥離及び断線が生じ難い。また、当該配線基板10をフレキシブルプリント配線基板等として用いた場合にも、断線等が生じにくい。
【0016】
なお、他の実施形態として、基材11と金属粒子層12との間、及び金属粒子層12と金属めっき層13との間の一方は、中間層(第1中間層14a、第2中間層14b)が設けられていなくてよい。すなわち、基材11と金属粒子層12との間、及び金属粒子層12と金属めっき層13との間の一方は、直接積層されていてもよいし、化合物αを含まない層を介して積層されていてもよい。但し、特に樹脂と金属との間の密着性を高める観点から、少なくとも基材11と金属粒子層12との間に、化合物αが介在すること、すなわち第1中間層14aを設けることが好ましい。
【0017】
(基材)
基材11は、通常、絶縁性材料から形成されており、少なくとも金属粒子層12が積層される側の面(図1における上面)が導電性を有さない材料から形成されている。基材11は、樹脂基材、シリコン基材、ガラス基材、絶縁材料で被覆された金属基材等を用いることができるが、樹脂基材であることが好ましい。樹脂基材とは、樹脂を主成分とする基材をいう。本明細書において「主成分」とは、質量基準で最も含有量が多い成分を意味し、含有量が50質量%以上の成分であることが好ましく、70質量%以上の成分であることがより好ましい。
【0018】
基材11(樹脂基材)に含まれる樹脂としては特に限定されず、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ナイロン(ナイロン6,10、ナイロン4,6等)、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル及びフッ素樹脂が好ましく、ポリイミド及びフッ素樹脂がより好ましい。樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
基材11(樹脂基材)に含まれる樹脂に融点が存在する場合、その融点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。このような樹脂が用いられていることにより、基材11の耐熱性が高まり、当該配線基板10を製造する際の焼成等を十分に行うことなどができる。
【0020】
基材11(樹脂基材)における樹脂の含有量の下限は、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。一方、基材11における樹脂の含有量の上限は、100質量%であってもよく、99質量%であってもよい。
【0021】
基材11には、必要に応じて、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0022】
基材11の形状は特に限定されず、例えば、シート状、板状等が挙げられる。
【0023】
基材11の平均厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましく、30μm又は50μmがさらに好ましい場合もある。基材11の平均厚さを上記下限以上とすることで、十分な強度を保つことなどができる。一方、基材11の平均厚さの上限としては、3mmが好ましく、1mmがより好ましく、500μmがさらに好ましく、300μmがよりさらに好ましい。基材11の平均厚さを上記上限以下とすることで、配線基板10の薄型化及び軽量化等を図ることなどができる。なお、本明細書において「平均厚さ」とは、任意の10ヶ所で測定した厚さの平均値を意味する。
【0024】
基材11の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理、脱フッ素化処理等が施されていてもよい。
【0025】
(金属粒子層)
金属粒子層12は、金属粒子を含む層である。金属粒子層12において、金属粒子同士は、焼結等により結合していてもよい。また、金属粒子層12内に、化合物α、金属めっき等が存在していてもよい。
【0026】
金属粒子層12における金属粒子の含有量の下限は、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、99質量%がよりさらに好ましい。金属粒子層12における金属粒子の含有量の上限は、100質量%であってよい。金属粒子層12に含まれ得る、金属粒子以外の成分としては、例えば、金属インクを用いて金属粒子層12を形成する場合に、金属インクに含有する各成分が挙げられる。
【0027】
金属粒子は、金属を主成分とする粒子であり、実質的に金属のみから形成されている粒子であってよい。金属粒子における金属の含有量の下限は、90質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。金属粒子における金属の含有量の上限は、100質量%であってよい。金属粒子の一部は、金属酸化物粒子であってもよい。金属粒子層に金属酸化物粒子が含まれる場合、粒子表面に水酸基、カルボキシル基等、酸化物由来の置換基が存在してもよい。
【0028】
金属粒子に含まれる金属としては、銀、金、銅、パラジウム及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、導電性等の点から銀、金及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、銀がより好ましい。
【0029】
金属粒子は、表面に導電性有機物が付着した粒子等も用いることができる。このような金属粒子としては、国際公開第2011/114713号に記載された、無機ナノ粒子の表面に有機π共役系配位子がπ接合した粒子等が挙げられる。
【0030】
金属粒子の形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、針状、繊維状等、特に限定されない。
【0031】
金属粒子の平均粒径の下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、この平均粒径の上限としては、3μmが好ましく、1μmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。このような平均粒径の金属粒子を用いることで、均質性の高い金属粒子層12を形成することなどができ、特にインクジェット用インクに好適に用いられる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、特定対象の粒子を分散媒にて分散させ、動的光散乱法により測定した体積平均値を意味する。
【0032】
金属粒子層12の平均厚さの下限としては、10nmが好ましく、100nmがより好ましい。金属粒子層12の平均厚さを上記下限以上とすることで、密着性を高めることなどができる。一方、金属粒子層12の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、20μmがより好ましく、5μmがさらに好ましく、2μmがよりさらに好ましい場合もある。金属粒子層12の平均厚さを上記上限以下とすることで、生産コストを抑えることなどができる。
【0033】
金属粒子層12の形成材料としては、例えば、金属インクを使用することができる。具体的には、例えば特開2016-026237号公報、特開2017-218664号公報、特開2018-183934号公報、特開2018-184553号公報、特許5833540号、及び特許6029721号に記載の金属インクを用いることができる。このような金属インクは、例えば、インクジェット印刷により塗布される場合があり、この場合、インクジェット吐出に適合させるため溶液の粘度を調整する必要がある。溶液粘度が良好に調整された金属インクはポリマーを含まないことが多く、一般的にポリマーを含まない場合、形成された金属粒子層の他の層との密着性が低い場合がある。そこで、基材11の表面に化合物αを設け、その後金属インクを塗布することで、密着性高く金属粒子層12を形成することができる。また、インクジェット印刷などにより、基材11の表面上の一部分に特化して金属粒子層12を形成することができる。
【0034】
(金属めっき層)
金属めっき層13は、めっき処理により形成された金属層である。金属めっき層13における金属の含有量の下限は、90質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。金属めっき層13における金属の含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0035】
金属めっき層13に含まれる金属としては、銅、ニッケル、銀及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、経済性、導電性等の点から、銅がより好ましい。
【0036】
金属めっき層13の平均厚さの下限としては、30nmが好ましく、300nmがより好ましく、1μm、3μm又は10μmがさらに好ましい場合もある。金属めっき層13の平均厚さを上記下限以上とすることで、機械的強度及び導電性等を高めることができる。一方、金属めっき層13の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、30μmがより好ましく、10μm又は5μmがさらに好ましい場合もある。金属めっき層13の平均厚さを上記上限以下とすることで、生産コストを抑えることなどができる。
【0037】
(化合物α、中間層)
以下、基材11と金属粒子層12との間、及び金属粒子層12と金属めっき層13との間に介在する化合物αについて説明する。配線基板10において、化合物αは、基材11と金属粒子層12との間、及び金属粒子層12と金属めっき層13との間をそれぞれ接合している。また、化合物αは、第1中間層14a及び第2中間層14bをそれぞれ形成している。第1中間層14a及び第2中間層14bには、化合物α以外の成分が含まれていてもよい。基材11と金属粒子層12との間に介在する化合物αと、金属粒子層12と金属めっき層13との間に介在する化合物αとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、化合物αは、2つの物質の接合体(結合体)を界面分子結合により形成させるための材料であると考えられる。界面分子結合は、2つの物質の界面に、ある化合物を介在させ、化学反応により各物質と上記化合物とをそれぞれ化学結合させて上記2つの物質を結合させること、又はその結果生じる結合を意味する。
【0038】
化合物αは、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である。化合物αは、2種以上を用いることができ、化合物α1と化合物α2とを組み合わせて用いることもできる。
【0039】
アルコキシシリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基(オキシ炭化水素基)が結合した基をいう。アルコキシ基とは、酸素原子に炭化水素基が結合した基をいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の数は、1、2又は3であってよく、3が好ましい。アルコキシシリル基においては、ケイ素原子にアルコキシ基以外の基が結合していてもよく、このような基としては、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、水素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1以上12以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基がより好ましい。アルコキシシリル基の例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリベンジルオキシシリル基などが挙げられる。
【0040】
化合物αが有するアルコキシシリル基は、化学反応により、主に、金属等の無機物Mと「-Si-O-M-タイプ」の化学結合を形成することができる。また、化合物αが有するアジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基は、化学反応により、主に、樹脂等の有機物と「-N-C-タイプ」等の化学結合を形成することができる。ここで化学結合とは、共有結合、イオン結合、分子間力による結合等を意味し、好ましくは共有結合又はイオン結合を意味する。したがって、化合物αは、特に基材11と金属粒子層12との間を強固に結合(接合)させることができる。
【0041】
化合物αは、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が、ベンゼン環に直接結合している化合物であることが好ましい。アジド基等がベンゼン環に直接結合している場合、そうでない場合と比べて、紫外線照射又は加熱により、アジド基等から窒素分子(N)が脱離する反応の反応速度が大きくなる。また、ベンゼン環に直接結合したアジド基等は、例えばトリアジン環に直接結合したアジド基等と比べて、長波長の紫外線でも光分解反応の反応速度が十分に大きいという特徴をもつ。すなわち、トリアジン環の場合には、光分解反応の反応速度は、短波長紫外線の特定の波長を中心とするある波長幅のピークを有するのに対して、ベンゼン環の場合には、光分解反応の反応速度は、より波長の長い紫外線の特定の波長を中心とする同程度の波長幅のピークを有する。したがって、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、表面処理する物質(基材等)をあまり劣化させない長波長の紫外線を照射しても、効率的に処理を行うことが可能となる。また、比較的低温度及び短時間の加熱処理で効率的に処理を行うことができる。
【0042】
(化合物α1)
化合物α1は、下記式(1)又は(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0043】
【化1】
【0044】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
【0045】
式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【0046】
【化2】
【0047】
式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【0048】
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルコキシ基としては、上記したアルコキシ基等が挙げられる。
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
及びRで表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基、アルコキシ基、-Y-Z-Si-R (Y、Z及びRは、式(1)中のY、Z及びRとそれぞれ同義である。)で表される基、-COO-N-(-Z-SiR(Z、R、R及びRは、式(2)中のZ、R、R及びRとそれぞれ同義である。)、後述する式(14)で表される基等が挙げられる。
で表される炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0049】
式(1)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、Y等を含む基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、アミド基が好ましく、*-CONH-(*は、ベンゼン環との結合部位を示す。)で表されるアミド基がより好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
mは、3が好ましい。
【0050】
式(2)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
、R及びRとしては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、-COO-N-(-Z-SiRで表される基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
【0051】
化合物α1は、下記式(11)、(12)又は(13)で表される化合物であることも好ましい。
【0052】
【化3】
【0053】
式(11)~(14)中、X10、X11及びX12は、それぞれ独立して、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基である。E11及びE12は、それぞれ独立して、>C=O、メチレン基又は炭素数2以上12以下のアルキレン基である。Y11、Y12、Y13及びY14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は-J13-Si(OA103-k(R10で表される基である。J11、J12及びJ13は、それぞれ独立して、メチレン基、炭素数2以上12以下のアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子(-O-)を含む基である。Y15は、-R15又は-OA15で表される基である。Y16は、-R16又は-OA16で表される基である。A10、A15及びA16は、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下のアルキル基、ベンジル基又は水素原子である。R10、R15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下のアルキル基又はベンジル基である。kは、0以上2以下の整数である。Q10は、水素原子又は式(4)で表される有機基である。式(11)及び(12)において、Y11とY12との少なくとも一方は、酸素原子を含む。式(13)において、Y15とY16との少なくとも一方は酸素原子を含む。式(13)において、ベンゼン環に結合している基X11及びX12は、それぞれ独立して、パラ位又はメタ位に結合している。
【0054】
(化合物α1の合成方法)
化合物α1の合成方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシシリル基と、アルコキシシリル基以外の反応性基aとを有するシランカップリング剤Aと、上記反応性基aと結合反応可能な反応性基bと、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物Bとを公知の方法により反応させることにより得ることができる。反応性基aと反応性基bとの組み合わせとしては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等と、カルボキシ基との組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
シランカップリング剤Aとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
化合物Bとしては、アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸、3-(4-アジドフェニル)プロピオン酸、これらのカルボン酸の塩化物、アジドアニリン、アジドフェノール等が挙げられる。
【0057】
(化合物α2)
化合物α2においては、通常、未反応のアルコキシシリル基が残存している。すなわち、化合物α2も、通常、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する。
【0058】
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2は、化合物α1に由来する構造単位Aを有する。化合物α2は、構造が化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物と同一であれば、他の合成方法により得られたものであってもよい。化合物α2は、シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。化合物α2は、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基の少なくとも一方を有することが好ましく、ヒドロキシシリル基を有することがより好ましい。
【0059】
構造単位Aとしては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。下記式(4)で表される構造単位は、mが3である式(1)で表される化合物α1に由来する構造単位である。
【0060】
【化4】
【0061】
式(4)中、R、R、X、Y及びZは、式(1)中のR、R、X、Y及びZとそれぞれ同義である。aは、0から2の整数である。
【0062】
式(4)中のR、R、X、Y及びZの具体例は、式(1)中のR、R、X、Y及びZの具体例と同様である。式(4)中のRは、反応性等の観点からはヒドロキシ基又はアルコキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。aは、1が好ましい。
【0063】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Aの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0064】
化合物α2は、アミノ基(-NH)を含む構造単位Bを有することが好ましい。化合物α2が構造単位Bを有する場合、化合物α2の水溶性が向上するなどの利点がある。構造単位Bを与える加水分解性シラン化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Bの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0066】
化合物α2は、構造単位A及び構造単位B以外の構造単位Cを有していてもよい。構造単位Cを与える加水分解性シラン化合物としては、下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
【化5】
【0068】
式(C)中、Rは、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上10以下のアルケニル基、炭素数6以上15以下のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上6以下のアシル基、又は炭素数6以上15以下のアリール基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。xは0以上3以下の整数を表す。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。
【0069】
及びRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられる。Rで表されるアルケニル基の具体例としては、ビニル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。R及びRで表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基としては、イソシアネート基、イソシアヌレート構造とアルコキシシリル基とを有する基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基の炭素数としては、1以上40以下が好ましい。Rで表されるアシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。
【0070】
式(C)において、x=0の場合は4官能性シラン、x=1の場合は3官能性シラン、x=2の場合は2官能性シラン、x=3の場合は1官能性シランである。
【0071】
式(C)で表される加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p-メトキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0072】
また、式(C)で表される加水分解性シラン化合物には、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を5個以上有する化合物も含まれる。
【0073】
加水分解性シラン化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
化合物α2の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000以上100000以下、さらに好ましくは2000以上50000以下である。
【0075】
(化合物α2の合成方法)
化合物α2は、(i)化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得る方法、(ii)加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であって、構造単位Bを有する化合物に対して、「アミノ基と結合反応可能な反応性基と、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物X」(アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸等)を反応させて得る方法などが挙げられる。上記(ii)においては、構造単位B中のアミノ基が化合物Xと反応することにより、構造単位Aが形成される。
【0076】
化合物α2を得るための加水分解縮合には、一般的な方法を用いることができる。例えば、加水分解性シラン化合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、30から150℃で0.5から100時間程度加熱撹拌する。なお、撹拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)及び縮合副生物(水)等の留去を行ってもよい。
【0077】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒及び塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量は、加水分解性シラン化合物100質量部に対して0.01から10質量部が好ましい。
【0078】
化合物α2を含む溶液の貯蔵安定性の観点から、加水分解縮合後の溶液には触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法としては特に制限は無いが、好ましくは水洗浄及び/又はイオン交換樹脂の処理が挙げられる。水洗浄とは、溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0079】
加水分解縮合の反応に用いる溶媒は特に制限はないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110から250℃である化合物である。
【0080】
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
また、溶媒としては、アルコール性水酸基を有する化合物と共にその他の溶媒を用いてもよい。その他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0082】
(化合物αの具体例)
化合物αは、より具体的には下記式(15)、(16)、(17)、(18a)、(18b)、(18c)又は(19)で表される化合物を挙げることができる。下記式(15)、(16)及び(17)中、Etはエチル基を表す。
【0083】
【化6】
【0084】
【化7】
【0085】
式(19)で表される化合物は、式(19)中に示された3種類の構造単位が、それぞれl個、m個、n個結合して構成されるシルセスキオキサン化合物であり、Xはアジド基であり、lは0以上の任意の整数、mは1以上の任意の整数、nは0以上の任意の整数である。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は-O-である。Rは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上10以下のアルケニル基、炭素数6以上15以下のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。式(19)で表される化合物(「IMB-4KP」)は、例えば、l:m:n=1:1:0の場合には水溶性である。一般に、この化合物は、比l/(m+n)の値が0に近い場合(例えば、0.2未満又は0.1未満)を除いて水溶性である。すなわち、比l/(m+n)の値の下限は、水溶性の観点から、0.2が好ましく、0.5がより好ましく、1がさらに好ましい。比l/(m+n)の値の上限は、5が好ましく、2がより好ましい。
【0086】
第1中間層14a及び第2中間層14bには、化合物α以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物等が挙げられる。但し、第1中間層14a及び第2中間層14bにおける化合物αの含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。このように、第1中間層14a及び第2中間層14bにおける化合物αの含有割合が高いことで、層間の接合性(結合性)をより高めることができる。
【0087】
上述のように、第1中間層14a及び第2中間層14bは、通常、非常に薄い層であり、化合物αが存在すれば、十分な密着性の向上効果が確認できる。従って第1中間層14a及び第2中間層14bの平均厚さの下限は特に限定されず、1nmであってもよく、10nmであってもよく、50nmであってもよく、100nmであってもよい。一方、第1中間層14a及び第2中間層14bの平均厚さの上限は、例えば10μmであってもよく、1μmであってもよく、100nmであってもよく、50nmであってもよく、10nmであってもよい。
【0088】
本発明の一実施形態に係る配線基板は、従来公知の配線基板、プリント配線板等と同様の用途に用いることができる。本発明の一実施形態に係る配線基板は、例えば、半導体素子、弾性表面波素子、固体撮像素子等の電子部品に用いることができる。
【0089】
<配線基板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法は、
基材上に、直接又は他の層を介して、金属粒子を含む金属インクを用いて金属粒子層を形成する工程(金属粒子層形成工程)、及び
上記金属粒子層上に、直接又は他の層を介して、めっき処理により金属めっき層を形成する工程(金属めっき層形成工程)
を備え、
上記金属粒子層が形成される上記基材の表面、及び上記金属めっき層が形成される上記金属粒子層の表面の少なくとも一方に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程(表面処理剤塗布工程)
をさらに備える。
【0090】
表面処理剤に含まれる化合物αは、上記化合物α1及び上記化合物α2の少なくとも一方である。化合物αの具体例及び好適例は、本発明の一実施形態に係る配線基板において説明した通りである。
【0091】
なお、本明細書において「塗布する」とは、液体を対象の物体に「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことをいい、刷毛等により塗ることの他、滴下、スプレー、スピンコート、ロール、インクジェット等の印刷、浸漬等の方法により「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことを含む。
【0092】
2つのタイプの表面処理剤塗布工程に関し、金属粒子層が形成される基材の表面に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程(第1表面処理剤塗布工程)は、金属粒子層形成工程の前に行う。また、金属めっき層が形成される金属粒子層の表面に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程(第2表面処理剤塗布工程)は、金属粒子層形成工程後、金属めっき層形成工程前に行う。第1表面処理剤塗布工程及び第2表面処理剤塗布工程は、両方を行わなくてもよいが、少なくとも第1表面処理剤塗布工程を行うことが好ましい。
【0093】
また、各表面処理剤塗布工程の後、塗布された化合物αに対する紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程(UV照射・加熱工程)をさらに備えることが好ましい。さらに、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法は、第1表面処理剤塗布工程の前、又は、第1表面処理剤塗布工程を行わない場合の金属粒子層形成工程の前に、脱脂洗浄工程及び前処理工程を備えていてよい。以下、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法について、図2のフロー図を参照に順に詳説する。
【0094】
図2のフロー図で示す配線基板の製造方法は、脱脂洗浄工程S1、前処理工程S2、第1表面処理剤塗布工程S3、第1UV照射・加熱工程S4、金属粒子層形成工程S5、第2表面処理剤塗布工程S6、第2UV照射・加熱工程S7、及び金属めっき層形成工程S8をこの順に備える。第1表面処理剤塗布工程S3及び第2表面処理剤塗布工程S6の少なくとも一方と、金属粒子層形成工程S5と、金属めっき層形成工程S8以外の工程は任意の工程である。
【0095】
第1表面処理剤塗布工程S3及び第1UV照射・加熱工程S4は、繰り返し複数回行ってもよい。同様に、第2表面処理剤塗布工程S6及び第2UV照射・加熱工程S7は、繰り返し複数回行ってもよい。このようにすることで、十分な量の化合物αを、基材表面又は金属粒子層表面に設けることができる。
【0096】
(脱脂洗浄工程)
脱脂洗浄工程S1は、例えば、溶剤等を用いて基材を洗浄する工程である。例えば、基材をアセトン、エタノール等の溶剤に浸漬して超音波洗浄し、乾燥させることにより行うことができる。
【0097】
(前処理工程)
前処理工程S2は、基材に対して前処理を行う工程である。前処理としては、基材に対して酸素プラズマ、大気プラズマ等のプラズマで処理するプラズマ処理、基材の表面にコロナ放電照射を行うコロナ放電処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、基材の表面をシランカップリング剤等のカップリング剤を混入した燃焼ガスの燃焼炎にさらすイトロ処理、例えば基材がフッ素樹脂を含む場合の基材をアルカリ金属溶液に浸漬して脱フッ素化を行う脱フッ素化処理等が挙げられる。各前処理を施した基材に対して、シリコンクリーナ、酸クリーナ等の洗浄溶剤に浸漬して超音波洗浄することが好ましい。
【0098】
(第1表面処理剤塗布工程)
第1表面処理剤塗布工程は、基材の表面に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程である。この塗布は、少なくとも金属粒子層が形成される面に対して行う。この塗布は、基材の全面に対して行ってもよい。
【0099】
化合物αを含む表面処理剤は、通常、化合物αと溶媒とを含む溶液である。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル、テトラヒドロフラン(THF)、エチルブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテル、水等を用いることができる。また、加水分解縮合に用いられる溶媒として例示した溶媒も用いることができる。これらの中でも、アルコール、エーテル及び水が好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0100】
表面処理剤(化合物αを含む溶液)における化合物αの濃度としては、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。化合物αの濃度を上記範囲とすることで、適度な厚さの化合物αの層(図1における第1中間層14a)を効果的に形成することなどができるため、層間の結合性(接着性)を高めることができる。
【0101】
表面処理剤は、化合物α及び溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物、界面活性剤等を挙げることができる。但し、当該表面処理剤における全固形分(溶媒以外の全成分)に対する化合物αの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。当該表面処理剤における全固形分に対する化合物αの含有量は100質量%であってもよい。
【0102】
表面処理剤を基材の表面に塗布する方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、インクジェット方式、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。表面処理剤を塗布したときの塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の下限としては、例えば100nmが好ましく、1μmがより好ましく、3μmがさらに好ましい。一方、この塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。
【0103】
(第1UV照射・加熱工程)
第1UV照射・加熱工程S4は、基材表面に塗布された化合物α(化合物αを含む表面処理剤)に対して、紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程である。この紫外線照射は、例えば230nm以上300nmの波長領域を含む紫外線を照射することが好ましい。また、加熱温度の下限としては、例えば80℃が好ましく、90℃がより好ましい。加熱温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。加熱時間としては、1分以上60分以下が好ましい。また、第1UV照射・加熱工程S4の前に、塗布された表面処理剤を乾燥させる工程を別途設けてもよいし、この第1UV照射・加熱工程S4において、塗布された表面処理剤を乾燥させてもよい。なお、紫外線照射と加熱とを併用してもよい。紫外線照射と加熱とを併用する場合、いずれか一方を先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0104】
(金属粒子層形成工程)
金属粒子層形成工程S5は、基材上に、直接又は他の層を介して、金属粒子を含む金属インクを用いて金属粒子層を形成する工程である。第1表面処理剤塗布工程S3を行わない場合は、基材上に直接金属粒子層を形成する。一方、第1表面処理剤塗布工程S3を行う場合は、基材上に化合物αを含む層(図1における第1中間層14a)を介して金属粒子層を形成する。
【0105】
金属粒子層形成工程S5は、金属インクを塗布する工程、及び塗布された金属インクを焼成する工程を備えることが好ましい。
【0106】
金属インクは、通常、金属粒子及び分散媒を含む。金属インクは、その他に分散剤、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。但し、金属インク中の固形分に占める金属粒子の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。このような金属インクを用いることで、導電性等が良好な金属粒子層を形成することなどができる。なお、固形分とは、分散媒以外の成分をいう。
【0107】
金属インクを基材上に塗布する方法としては、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。その他、表面処理剤を基材の表面に塗布する方法として例示した方法も用いることができる。これらの中でも、インクジェット印刷スクリーン印刷及びフレキソ印刷が好ましく、インクジェット印刷及びスクリーン印刷がより好ましい。特にインクジェット印刷を用いることで、微細な又は複雑なパターン形状を有する金属粒子層も、効率的に形成することができる。
【0108】
金属インクの粘度の下限としては、例えば0.1mPa・sが好ましく、1mPa・sがより好ましく、2mPa・sがさらに好ましい。一方、金属インクの粘度の上限としては、例えば3,000mPa・sであってもよいが、500mPa・sが好ましく、100mPa・sがより好ましく、30mPa・sがさらに好ましく、20mPa・sがよりさらに好ましい。このように比較的低粘度の金属インクを用いることで、例えばインクジェット印刷による塗布を効果的に行うことができる。なお、金属インクの粘度は、20℃における値とする。
【0109】
金属インクにおける金属粒子の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、金属インクにおける金属粒子の含有量の上限としては、60質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。金属インクにおける金属粒子の含有量が上記範囲であることで、インクジェット印刷等により、効果的に良質な金属粒子層を形成することができる。
【0110】
塗布された金属インクを焼成することで、金属インク中の揮発分が揮発し、かつ金属粒子が焼結する。焼成は、オーブン等の公知の装置を用いて行うことができる。なお、焼成とは別に塗布された金属インクの乾燥を行ってもよい。
【0111】
焼成温度の下限としては、80℃が好ましく、100℃がより好ましい。焼成温度を上記下限以上とすることで、十分な焼結が生じると共に、揮発分を十分に揮発させることができる。一方、焼成温度の上限としては、300℃が好ましく、200℃がより好ましく、150℃がさらに好ましい。焼成温度を上記上限以下とすることで、基材の劣化を抑制することなどができる。
【0112】
焼成時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。焼成時間を上記下限以上とすることで、十分な焼結が生じると共に、揮発分を十分に揮発させることができる。一方、焼成時間の上限としては、120分が好ましく、60分がより好ましい。焼成時間を上記上限以下とすることで、生産効率を高めること、基材の劣化を抑制することなどができる。
【0113】
(第2表面処理剤塗布工程)
第2表面処理剤塗布工程S6では、金属めっき層が形成される金属粒子層の表面(露出面)に、化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程である。この際、金属粒子層以外の部分にも、表面処理剤が塗布されてもよい。第2表面処理剤塗布工程S6における表面処理剤の具体的な塗布方法は、上記した第1表面処理剤塗布工程S3と同様である。
【0114】
(第2UV照射・加熱工程)
第2UV照射・加熱工程S7は、少なくとも金属めっき層表面に塗布された化合物α(化合物αを含む表面処理剤)に対して、紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程である。第2UV照射・加熱工程S7における具体的な処理方法は、上記した第1UV照射・加熱工程S4と同様である。
【0115】
(金属めっき層形成工程)
金属めっき層形成工程S8は、金属粒子層上に、直接又は他の層を介して、めっき処理により金属めっき層を形成する工程である。第2表面処理剤塗布工程S6を行わない場合は、金属粒子層上に直接金属めっき層を形成する。一方、第2表面処理剤塗布工程S6を行う場合は、金属粒子層上に化合物αを含む層(図1における第2中間層14b)を介して金属めっき層を形成する。
【0116】
金属めっき方法は、特に限定されず、従来の無電解めっき、電解めっき等により行うことができる。このとき、パラジウム触媒を用いないことがより好ましい。例えば、無電解めっきにより銅をめっきする場合、めっき液としては、硫酸銅と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものを用いることが好ましい。電解めっきにより銅をめっきする場合、めっき液として硫酸銅と、硫酸と、水性媒体とを含有するものを用いることが好ましい。無電解めっき及び電解めっきの順に双方を行ってもよい。また、所望する金属めっき層の厚さになるように、めっき処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することが好ましい。なお、めっき処理の後、めっき応力を低減させるため、アニール処理等を施してもよい。
【0117】
<表面処理剤>
本発明の一実施形態に係る表面処理剤は、金属めっき又は金属インク印刷用の表面処理剤であって、上記化合物α1及び上記化合物α2の少なくとも一方である化合物αを含む、表面処理剤である。当該表面処理剤は、例えば、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法で用いる表面処理剤として説明したものである。本発明の一実施形態に係る表面処理剤は、化合物αと溶媒とを含む溶液であってもよく、その他、例えば化合物αのみからなる粉体等であってもよい。本発明の一実施形態に係る表面処理剤によれば、基材等に対して、密着性高く金属層(金属めっき層又は金属インク層)を形成することができる。
【0118】
<その他の実施形態>
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0119】
例えば、本発明の配線基板は、基材、金属粒子層、金属めっき層及び化合物αを含む層以外の層をさらに有していてもよい。また、上記したように、図1の配線基板10において、第1中間層14a及び第2中間層14bの一方を備えないものも本発明に含まれる。また、本発明の配線基板は、金属層(配線)が多層に設けられた多層配線基板であってもよく、ビアホール等が設けられているものであってもよい。
【実施例0120】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0121】
[調製例1]表面処理剤の調製
5.5gの4-アジド安息香酸、400gのTHF(テトラヒドロフラン)、及び74gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを2Lフラスコに秤取した。撹拌しながら、50gのTHFに溶解した5.4gの1,1-カルボニルイミダゾールを逐次添加し、24時間撹拌を続け、反応させた。反応終了後、THFをロータリーエバポレーターで留去し、上記式(15)で表されるN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4K)を含む、12gの反応混合物Aを得た。
10gの反応混合物A、860gの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、27gの水、及び3.3gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを2Lフラスコに秤取し、40℃で24時間撹拌し、反応混合物Bを得た。50gの反応混合物Bと450gの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとを混合し、表面処理剤を得た。
【0122】
また、(株)C-INKの導電性の有機被膜を有する銀ナノ粒子を含有する銀ナノインクを金属インクとして準備した(20℃での粘度5mPa・s、銀ナノ粒子含有量20質量%)。以下の実施例及び比較例では、いずれもこの銀ナノインクを用いた。
【0123】
[実施例1]
基材として、PIフィルム(平均厚さ125μm:東レ・デュポン「カプトンH」)を用いた。基材をエタノールに浸漬して、5分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行った。
次いで、この基材に対して、前処理として、酸素プラズマ処理を行った。条件は、酸素流量200mL/分、処理時間10分、処理出力500Wとした。
次いで、この基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。その後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、基材の一方の面に、銀ナノインクをバーコーター(ウェット厚さ:22.9μm)で塗布し、120℃で30分間焼成して、金属粒子層を設けた。
次いで、化合物αを介して金属粒子層が設けられた基材を、無電解銅めっき液(奥野製薬(株)「ARGカッパー」、pH12.5)中に浸漬し、金属粒子層の表面に無電解銅めっき膜(平均厚さ0.1μm)を設けた。次いで、上記で得られた無電解銅めっき膜の表面をカソードに設置し、含リン銅をアノードに設置し、硫酸銅を含む電気めっき液を用いて電解めっきを行った。電気めっき液としては、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、トップルチナSF(奥野製薬工業(株)の光沢剤)5g/リットルの溶液を用いた。これにより、金属粒子層の表面に、無電解銅めっき膜を含めた合計の平均厚さが20μmの金属めっき層(銅めっき層)を設けた。
以上により、基材と、第1中間層と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備える実施例1の積層体(配線基板)を得た。
【0124】
(評価)
実施例1の積層体について、金属層(金属粒子層及び金属めっき層)の剥離強度を測定した。縦型電動計測スタンドMX2-500N((株)イマダ)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。ピール強度は、最大値で4.8N/cm、時間平均値で3.4N/cmであり、高い密着性が確認できた。
【0125】
[実施例2]
電解めっきの処理条件を調整して平均厚さが10μmの金属めっき層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の積層体(配線基板)を得た。
【0126】
[実施例3]
電解めっきの処理条件を調整して平均厚さが15μmの金属めっき層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の積層体(配線基板)を得た。
【0127】
(評価)
実施例2、3の各積層体について、一片が2cmの正方形に切断し、はんだ浴耐熱試験を行った。試験条件は、288℃のはんだ浴に10秒間、3回浸漬させることとした。はんだ浴後の各サンプルについて、外観評価、クロスカット試験及びテープ剥離試験を行った。クロスカット試験は、JIS-K5600-5-6に記載のクロスカット法に準拠し、金属めっき層側に1mm幅、5×5マスでカットを入れて行った。テープ剥離試験は、金属めっき層側に17mm幅でカットを入れ、4N/cmの両面テープで積層体を固定することにより行った。
実施例2(金属めっき層10μm)及び実施例3(金属めっき層15μm)のいずれも、外観評価において端部剥離が無く、クロスカット試験及びテープ剥離試験において剥離が生じなかった。
【0128】
[実施例4]
基材として、PIフィルム(平均厚さ25μm:宇部興産「ユーピレックス25S」)を用いた。基材をエタノールに浸漬して、5分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行った。
次いで、この基材に対して、前処理として、酸素プラズマ処理を行った。条件は、酸素流量200mL/分、処理時間10分、処理出力500Wとした。
次いで、この基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。その後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、基材の一方の面に、銀ナノインクをバーコーター(ウェット厚さ:22.9μm)で塗布し、120℃で30分間焼成して、金属粒子層を設けた。
次いで、化合物αを介して金属粒子層が設けられた基材を、無電解銅めっき液(奥野製薬(株)「ARGカッパー」、pH12.5)中に浸漬し、金属粒子層の表面に平均厚さが3μmの金属めっき層(銅めっき層)を設けた。
以上により、基材と、第1中間層と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備える実施例4の積層体(配線基板)を得た。
【0129】
[実施例5]
基材として、PIフィルム(平均厚さ125μm:東レ・デュポン「カプトンH」)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の積層体(配線基板)を得た。
【0130】
[実施例6]
基材として、PTFEフィルム(平均厚さ200μm:日東電工「Nitoflon」)を用いたこと、及び前処理として、脱フッ化処理(Naナフタレン錯体溶液に5秒浸漬)を行ったこと以外は実施例4と同様にして、実施例6の積層体(配線基板)を得た。
【0131】
(評価)
実施例4~6の各積層体について、外観評価、クロスカット試験及びテープ剥離試験を行った。クロスカット試験及びテープ剥離試験は、上記した実施例2等と同じ条件とした。実施例4~6のいずれも、外観評価において端部剥離が無く、クロスカット試験及びテープ剥離試験において剥離が生じなかった。
【0132】
以下の実施例7~11は、表面処理剤の塗布量(ウェット厚さ)を変更して行った実施例である。
[実施例7]
基材を表面処理剤に3秒浸漬させたことに替え、基材の一方の面に表面処理剤をバーコーター(ウェット厚さ:7.0μm)で塗布したこと以外は実施例5と同様にして、実施例7の積層体(配線基板)を得た。
【0133】
[実施例8]
ウェット厚さを12.7μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例8の積層体(配線基板)を得た。
【0134】
[実施例9]
ウェット厚さを22.9μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例9の積層体(配線基板)を得た。
【0135】
[実施例10]
ウェット厚さを45.7μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例10の積層体(配線基板)を得た。
【0136】
[実施例11]
ウェット厚さを91.4μmに変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例11の積層体(配線基板)を得た。
【0137】
(評価)
実施例7~11の各積層体について、外観評価、クロスカット試験及びテープ剥離試験を行った。クロスカット試験及びテープ剥離試験は、上記した実施例2等と同じ条件とした。実施例7~11のいずれも、外観評価において端部剥離が無く、クロスカット試験及びテープ剥離試験において剥離が生じなかった。
【0138】
以下の実施例12~19は、各種基材を用い、基材上に表面処理剤の塗布を2回行った実施例である。
[実施例12]
基材として、Siウェハを用いた。基材をエタノールに浸漬して、1分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行った。
次いで、この基材に対して、前処理として、酸素プラズマ処理を行った。条件は、酸素流量200mL/分、処理時間10分、処理出力500Wとした。
次いで、この基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。空気乾燥後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
さらに、この基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。空気乾燥後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、基材の一方の面に、銀ナノインクをバーコーター(ウェット厚さ:100μm)で塗布し、120℃で30分間焼成して、金属粒子層を設けた。
次いで、化合物αを介して金属粒子層が設けられた基材を、無電解銅めっき液(奥野製薬(株)「ARGカッパー」、pH12.5)中に浸漬し、金属粒子層の表面に平均厚さが0.3μmの金属めっき層(銅めっき層)を設けた。その後、100℃で30分のアニール処理を行った。
以上により、基材と、第1中間層と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備える実施例12の積層体(配線基板)を得た。
【0139】
[比較例1]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例12と同様にして、比較例1の積層体(配線基板)を得た。
【0140】
[実施例13]
基材として、ソーダライムガラスを用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例13の積層体(配線基板)を得た。
【0141】
[比較例2]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例13と同様にして、比較例2の積層体(配線基板)を得た。
【0142】
[実施例14]
基材として、ITOガラスを用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例14の積層体(配線基板)を得た。
【0143】
[比較例3]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例14と同様にして、比較例3の積層体(配線基板)を得た。
【0144】
[実施例15]
基材として、Cu(銅)板を用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例15の積層体(配線基板)を得た。
【0145】
[比較例4]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例15と同様にして、比較例4の積層体(配線基板)を得た。
【0146】
[実施例16]
基材として、PIフィルムを用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例16の積層体(配線基板)を得た。
【0147】
[比較例5]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例16と同様にして、比較例5の積層体(配線基板)を得た。
【0148】
[実施例17]
基材として、COPフィルム(JSR(株)製:「ARTON」)を用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例17の積層体(配線基板)を得た。
【0149】
[比較例6]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例17と同様にして、比較例6の積層体(配線基板)を得た。
【0150】
[実施例18]
基材として、PETフィルム(東レ(株)製:「ルミラー」)を用いたこと以外は実施例12と同様にして、実施例18の積層体(配線基板)を得た。
【0151】
[比較例7]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例18と同様にして、比較例7の積層体(配線基板)を得た。
【0152】
[実施例19]
基材として、PTFEフィルムを用いたこと、及び前処理として、脱フッ化処理(Naナフタレン錯体溶液に5秒浸漬)を行ったこと以外は実施例12と同様にして、実施例19の積層体(配線基板)を得た。
【0153】
[比較例8]
表面処理剤の塗布を行わなかったこと以外は実施例19と同様にして、比較例8の積層体(配線基板)を得た。
【0154】
(評価)
実施例12~19及び比較例1~8について、めっき処理前の状態の積層体と、めっき処理及びアニール処理を経て得られた積層体とに対し、クロスカット試験及びテープ剥離試験を行った。クロスカット試験及びテープ剥離試験は、上記した実施例2等と同じ条件とし、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中の「-」は、試験を行っていないことを示す。以下の判断基準は目視で確認した。
◎:全くはがれなかった。 <100%密着>
○:一部剥がれた <80%以上100%未満の密着>
△:半分剥がれた <50%以上80%未満の密着>
×:一部残った <30%以上50%未満の密着>
××:ほとんど全部剥がれた <30%未満の密着>
【表1】
【0155】
いずれの基材に対しても、所定の表面処理剤による処理により金属層の密着性が高めらることが確認できた。
【0156】
[実施例20]
基材として、PIフィルム(平均厚さ25μm:宇部興産「ユーピレックス25S」)を用いた。基材をエタノールに浸漬して、5分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行った。
次いで、この基材に対して、前処理として、酸素プラズマ処理を行った。条件は、酸素流量200mL/分、処理時間10分、処理出力500Wとした。
次いで、この基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。空気乾燥後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、基材の一方の面に、銀ナノインクをバーコーター(ウェット厚さ:25μm)で塗布し、120℃で30分間焼成して、平均厚さ約1μmの金属粒子層を設けた。
次いで、金属粒子層が設けられた基材を調製例1で得られた表面処理剤に3秒浸漬させた。空気乾燥後、表面処理剤が塗布された基材に対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、表面処理剤が塗布された金属粒子層を備える基材を、無電解銅めっき液(奥野製薬(株)「ARGカッパー」、pH12.5)中に浸漬し、金属粒子層の表面に化合物αの層を介して、平均厚さが3μmの金属めっき層(銅めっき層)を設けた。その後、100℃で30分のアニール処理を行った。
以上により、基材と、第1中間層と、金属粒子層と、第2中間層と、金属めっき層とをこの順に備える実施例20の積層体(配線基板)を得た。
【0157】
[実施例21]
金属粒子層が設けられた基材に対して表面処理剤を塗布しなかったこと以外は実施例20と同様にして、基材と、第1中間層と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備える実施例21の積層体(配線基板)を得た。
【0158】
[比較例9]
金属粒子層を設ける前の基材、及び金属粒子層が設けられた基材の双方に対して表面処理剤を塗布しなかったこと以外は実施例20と同様にして、基材と、金属粒子層と、金属めっき層とをこの順に備える比較例9の積層体(配線基板)を得た。
【0159】
(評価)
実施例20、21及び比較例9の各積層体に対し、上記した実施例2等と同じ条件でテープ剥離試験を行った。
表面処理剤を塗布した実施例20、21の各積層体は、金属層の剥離が生じなかった。一方、表面処理剤を塗布しなかった比較例9の積層体は、金属層の剥離が生じた。
【0160】
[参考例]
<化合物αの合成>
合成物の同定には、(株)島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計IRTracer-100、日本電子(株)製の核磁気共鳴スペクトル装置 NMR spectrometer Z、及び(株)島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2020 NXを用いた。
【0161】
(1)4-アジド安息香酸クロリドの合成(原料物質の製造)
【化8】
塩化メチレン(CHCl)30mLとDMF(N,N-ジメチルホルムアミドCNO)0.3mLとの混合溶媒に、4-アジド安息香酸(NCOOH)2.6gを溶解させた。窒素ガスの雰囲気下、撹拌しながら、塩化メチレン20mLに溶かした塩化チオニル(SOCl)7.3gを、室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、塩化メチレンを含む低沸点物を留去し、4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)を含む黄色油状物を得た。この油状物は、更に精製することなく、直接に次の反応に供した。
【0162】
(2)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドの合成(IMB-4K)の合成
【化9】
【0163】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF(テトラヒドロフラン)15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン3.6g、及びTEA(トリエチルアミン)2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率66%(2.4g)で淡黄色オイルを得た。
IR、NMR及びQCMSの各分析から、生成物が、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0164】
(3)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3K)の合成
【化10】
【0165】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン(HN(CHSi(OC)3.6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%(2.2g)で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0166】
(4)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4KB)の合成
【化11】
【0167】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率61%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0168】
(5)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3KB)の合成
【化12】
【0169】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0170】
(6)N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)の合成
【化13】
【0171】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)2.8gをTHF30mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン(2.3mL)と、TEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。室温で一晩撹拌した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率50%で淡黄色オイルを得た。スペクトルから、生成物は、N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)であることを確認した。
【0172】
(7)上記式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物(IMB-4KP)の製造
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)をTHFに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物である原料オリゴマー(米国Gelest)とTEAをTHFに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物を精製して目的物を得た。この目的物が、式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物であった。スペクトルから、生成物においては、式(19)におけるlとmとnとが、l:m:n=1:1:0であることを確認した。
【0173】
<1.各種樹脂基材に対する無電解めっきにおけるIMB-Kの効果>
表2に示す各樹脂基材について、20μm厚の銅被覆を形成し、密着性を試験した。まず、脱脂洗浄として、表2に示すように、樹脂基材によりアセトン又はエタノールの処理を行った。次いで、前処理として、表2に示すように、樹脂基材によりコロナ放電処理又は酸素プラズマ処理(100mL/分、5分、200W)を施した。次いで、表面処理剤塗布として、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。次いで、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cmで紫外線を照射した。表面処理剤の塗布とUV照射とは、2回反復して行った。その後、表2に示すように、樹脂基材によって80℃、110℃又は125℃で10分間、保持する加熱(IMB後熱処理)を行った。その後、無電解めっき及び電解めっきを行い、20μm厚の銅被覆を得た。めっきの残留応力を緩和するため、150℃で10分間保持するアニール処理を行った。無電解めっき後、電解めっき後及びアニール後のそれぞれについて、各樹脂基材に形成された銅被覆の外観を観察した。また、各樹脂基材について銅被覆の剥離強度を測定した。縦型電動計測スタンドMX2-500N(株式会社イマダ製)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。各樹脂基材について3つのサンプルを作製して表面と裏面それぞれについて計測を行い、ピール強度の最大値と平均値について、それぞれ平均値を求めた。
【0174】
【表2】
【0175】
表2に記載の各樹脂基材はいずれも、表面処理剤の塗布なしでは無電解めっき銅被覆が形成されないか、形成されても銅被覆の密着強度が極めて弱い樹脂であるが、無電解めっき処理に先立って表面処理剤の塗布を行うことで、良好な外観と密着性を有する銅被覆が形成された。また、試料#9のフッ素系複合樹脂基材については、我々は従来、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジンを用いた表面処理剤の塗布と無電解めっき処理を組み合わせたプロセスにより、最大ピール強度6.82N/cmを得ていたが、IMB-4Kを用いた表面処理剤の塗布と無電解めっき処理により、それを大きく上回るピール強度が達成できることが分かった。
【0176】
<2.シクロオレフィンポリマー(COP)シートの無電解めっきにおける各種化合物αの効果>
COPシート(0.1mm厚、試料#41)について、20μm厚の銅被覆を形成し、密着性を試験した。まず、脱脂洗浄として、アセトンによる処理を行った。次いで、前処理として、酸素プラズマ処理(100mL/分、2分、200W)を施した。次いで、表面処理剤塗布として、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。次いで、UV照射・加熱として、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cmで紫外線を照射し、次いで、125℃で15分の加熱を行った。表面処理剤塗布とUV照射・加熱とは、2回反復して行った。その後、無電解めっき及び電解めっきを行い、20μm厚の銅被覆を得た。めっき後においては、110℃で60分のアニール処理を行った。電解めっき後、銅被覆の剥離強度を測定した。各試料について3つのサンプルを作製してそれぞれについて計測を行い、ピール強度の平均値について、平均値を求めた。ピール強度は、6.09N/cmであった。
【0177】
試料#41と同じ材質と厚みのCOPシート(試料#42~#45)について、表面処理剤塗布で用いる化合物αの種類、及びUV照射・加熱で加熱のみを行うのか(「H」と表す)、或いは、紫外線照射と加熱との両方を行うのか(「UV+H」と表す)、という点を除いて、試料#41と同様のプロセスで20μm厚の銅被覆を形成し、ピール強度を求めた。その結果を以下に示す。なお、紫外線照射及び加熱の各条件は、試料#41と同じでとした。
試料 化合物α UV照射・加熱 ピール強度(N/cm)
#41 IMB-4K UV+H 6.09
#42 IMB-3K UV+H 4.78
#43 IMB-3KB UV+H 4.23
#44 IMB-4K H 4.92
#45 IMB-3KB H 4.91
【0178】
<3.PIフィルムへの銀ナノペーストの塗布とIMB-Kの効果>
PIフィルム(50μm厚、試料#51)について、金属インクである銀ナノペーストを塗布して熱硬化させることにより導体被覆を形成し、密着性を試験した。銀ナノペーストは、ダイセル「DNS-009P」(粘度:90~100Pa・s、銀濃度:60~70質量%、基準焼成条件:120℃30分、体積抵抗率:5~10μΩ・cm)をイソプロパノール(IPA)で5倍に希釈したものを使用した。まず、脱脂洗浄として、エタノールを用い、試料#51に対して5分間の超音波洗浄を行った。次いで、表面処理剤塗布として、IMB-4KPのIPA溶液に試料を10分間浸漬した。次いで、UV照射・加熱として、試料を100℃に10分間保持した。続いて、試料に上記の希釈銀ナノペーストをスピンコートし(1500rpm、20秒)、その後、120℃で30分の熱処理を行い、導体被膜(金属粒子層)を形成した。
形成された導体被覆に17mm幅でカットを入れ、4N/cmの両面テープで試料を固定して、テープ剥離試験を行った。試料#51の導体被覆は、テープ剥離試験に耐える密着性を有していた。
【0179】
また、比較例として、試料#51と同じ材質と厚みのPIフィルム(試料#53)について、表面処理剤塗布工程として、6-((3-トリエトキシシリル)プロピルアミノ)-2,4-ビス((2-アミノ)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンの水溶液に試料を10分間浸漬させた点を除いては、試料#52と同一のプロセスに従って導体被覆を形成して、同様のテープ剥離試験を行った。試料#53の導体被覆は、テープ剥離試験に耐える密着性を有しなかった。
さらに、比較例として、試料#51と同じ材質と厚みのPIフィルム(試料#57)について、表面処理剤塗布工程を行わない点を除いては、試料#51と同一のプロセスに従って導体被覆を形成して、同様のテープ剥離試験を行った。試料#57の導体被覆は、ほとんど密着性を有しなかった。
【0180】
上記参考例の結果から、一分子内に、ベンゼン環と、アルコキシシリル基と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物α1、及び上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2の少なくとも一方である化合物αを用いることで、金属と樹脂との間などを強く接合できることがわかる。従って、このような化合物αを配線基板の層間に塗布した場合、実施例1等と同様に、金属層の密着性が高い配線基板が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0181】
10 配線基板
11 基材
12 金属粒子層
13 金属めっき層
14a 第1中間層
14b 第2中間層
図1
図2