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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175291
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20221117BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221117BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221117BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B01J27/185 A ZAB
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 200
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081571
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 久也
(72)【発明者】
【氏名】定井 麻子
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091BA11
3G091GA06
3G091GB01W
3G091GB03W
3G091GB04W
3G091GB07Y
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AA30
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB08
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA15X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BA44X
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB16
4D148BC02
4D148BC03
4D148BC05
4D148CC36
4D148EA04
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05B
4G169BB06B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC69A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EB14Y
4G169EC28
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】排気ガス浄化用触媒のP被毒及びCa被毒に対策する。
【解決手段】エンジンの排気通路に配設され、該エンジンのP及びCaを含有する排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒であって、担体2と該担体2上に形成され上記排気ガスを浄化するための触媒層3を備え、この触媒層3がBa13を分散して含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に配設され、該エンジンのP及びCaを含有する排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒であって、
担体と該担体上に形成され上記排気ガスを浄化するための触媒層を備え、
上記触媒層がBa13を分散して含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記触媒層は、活性アルミナに貴金属を担持させた貴金属担持アルミナ及びCe含有酸素吸蔵放出材を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項2において、
上記触媒層は内側触媒層と外側触媒層を備え、
上記内側触媒層は、上記活性アルミナに上記貴金属としてPdを担持させたPd担持アルミナと、上記Ce含有酸素吸蔵放出材に上記貴金属としてPdを担持させたPd担持酸素吸蔵放出材とを含有し、
上記外側触媒層は、上記活性アルミナに上記貴金属としてRhを担持させたRh担持アルミナと、上記Ce含有酸素吸蔵放出材に上記貴金属としてRhを担持させたRh担持酸素吸蔵放出材とを含有し、
上記Ba13が上記外側触媒層に含まれていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンの排気通路には、排気ガス中のHC(炭化水素)、CO、NOx(窒素酸化物)など有害成分を浄化するための触媒が配置される。ところで、エンジンの作動には、酸化防止剤等を添加したエンジンオイルが必要となる。このエンジンオイルにはP、Ca等の触媒毒となる物質が含まれており、それが排気ガスに混じる。従って、触媒は、その使用が長くなると、それら物質による被毒によって性能が低下してくる。
【0003】
特許文献1には、CeZrNd複合酸化物にRhを担持させてなる触媒のP被毒抑制のために、このCeZrNd複合酸化物にBaを担持することが記載されている。Baが排気ガス中のPとリン酸バリウムを形成することを利用して、触媒のP被毒を抑えるというものである。
【0004】
特許文献2には、セリアとアルミナを含有する触媒層の表面をリン酸バリウムによって被覆することが記載されている。リン酸バリウムがリン酸基を有することによって排気ガス中のP成分を引きつけないから、リン成分はリン酸バリウムに遮られて三元触媒を素通りし、従って、触媒層のセリア及びアルミナのP被毒が抑制されるというものである。
【0005】
特許文献3には、Ce、Al等の酸化物を含有する触媒層を、不飽和リン酸塩を含有する表層で覆うことが記載されている。不飽和リン酸塩が排気ガス中のPと化合して飽和リン酸化合物となるため、触媒層のCe、Al等の酸化物のP被毒が抑制されるというものである。不飽和リン酸塩としては、Ca、Al、Znから選ばれる少なくとも一種を含むリン酸水素化合物、並びにLaを含むリン酸化合物が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-170047号公報
【特許文献2】特許4161722号公報
【特許文献3】特開2015-66529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
触媒の被毒物質としては、従来から種々の対策が取られている上記Pの他にCaがあるが、Ca被毒対策についての報告は少ない。排気ガス中のCaはPと反応してリン酸カルシウム(β-Ca(PO))を形成する。このリン酸カルシウムはガラス質であり、触媒層を覆うことによって触媒層内部への排気ガスの拡散を阻害する。そのために、触媒の排気ガス浄化性能が低下する。
【0008】
本発明の課題は、排気ガス浄化用触媒のP被毒及びCa被毒に対策することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、排気ガス中のCaをトラップしてリン酸カルシウムを形成させる化合物を触媒層に分散させるようにした。
【0010】
ここに開示する排気ガス浄化用触媒は、エンジンの排気通路に配設され、該エンジンのP及びCaを含有する排気ガスを浄化するものであり、担体と該担体上に形成され上記排気ガスを浄化するための触媒層を備え、該触媒層がBa13を分散して含有することを特徴とする。
【0011】
これによれば、排気ガス中のP及びCaが触媒層のBa13上にβ-Ca(PO)を形成してトラップされる。本発明者は、β-Ca(PO)及びBa13各々の電子線回折像を重ね合わせて両者に結晶学的な相の一致が見られることを確認している。この両者の結晶学的な関連により、β-Ca(PO)がBa13上に連続して形成され易いということである。従って、触媒層の触媒成分がP被毒及びCa被毒することが抑制される。加えて、β-Ca(PO)はガラス質であるものの、その形成場所は触媒層のBa13上という局部的であるから、触媒層における排気ガスの拡散が阻害されることも避けられる。よって、本発明によれば、排気ガス中のP及びCaによる触媒の被毒劣化が効果的に抑えられる。
【0012】
一実施形態では、上記触媒層は、活性アルミナに貴金属を担持させた貴金属担持アルミナ及びCe含有酸素吸蔵放出材を含有する。上述の如く、排気ガス中のPはβ-Ca(PO)を形成してBa13にトラップされる。従って、排気ガス中のPがAlPOを形成して活性アルミナの表面積を低下させることや、PがCePOを形成してCe含有酸素吸蔵放出材のCe3+⇔Ce4+の価数変化を阻害して酸素吸蔵放出性を低下させることが避けられる。
【0013】
一実施形態では、上記触媒層は内側触媒層と外側触媒層を備え、
上記内側触媒層は、上記活性アルミナに上記貴金属としてPdを担持させたPd担持アルミナと、上記Ce含有酸素吸蔵放出材に上記貴金属としてPdを担持させたPd担持酸素吸蔵放出材とを含有するPd触媒層であり、
上記外側触媒層は、上記活性アルミナに上記貴金属としてRhを担持させたRh担持アルミナと、上記Ce含有酸素吸蔵放出材に上記貴金属としてRhを担持させたRh担持酸素吸蔵放出材とを含有するRh触媒層であり、
上記Ba13が上記外側触媒層に含まれていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、排気ガス中のNOxの分解が主として外側のRh触媒層で行なわれ、排気ガス中のHCの酸化分解及びCOの酸化が主として内側のPd触媒層で行なわれる。Pd触媒層を内側にしRh触媒層を外側にしたから、Rh触媒層の障壁効果によってPdの熱劣化、Pb被毒やS被毒を避けることができる。そうして、被毒の面で内側触媒層よりも厳しい環境になる外側のRh触媒層にBa13を配置したから、このRh触媒層のP及びCaによる被毒が効果的に抑制され、よって、長期間にわたって触媒性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排気ガスを浄化する触媒層がBa13を分散して含有するから、排気ガス中のP及びCaがBa13上にβ-Ca(PO)を形成してトラップされ、P及びCaによる触媒の被毒劣化が効果的に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハニカム担体の斜視図及び部分断面図。
図2】触媒層の模式的断面図。
図3】実施例及び比較例のHC及びNOxの浄化に関するライトオフ温度T50を示すグラフ図。
図4】実施例触媒のHAADF-STEM像及び同一視野のBaとCaのSTEM-EDSマッピング図。
図5】Ba13及びβ-Ca(PO)各々のED像と両ED像の重ね合わせを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
(排気ガス浄化触媒の構成)
図1に示す本発明の実施形態に係る排気ガス浄化用触媒1は、自動車のエンジンの排気通路に配設され、エンジンの排気ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する。排気ガス浄化用触媒1は、コージェライト製のハニカム担体2のセル壁(排気ガス通路壁)に触媒層3が形成されてなる。図1では、ハニカム担体のセル断面形状を矩形状に示しているが、これに限られず、例えば六角形状の六角セルハニカム構造であってもよい。
【0019】
図2に示すように、触媒層3は内側触媒層3aと外側触媒層3bの2層構造である。内側触媒層3aは、ハニカム担体2のセル壁上に形成され、触媒金属としてPdを用いた触媒層(以下、「Pd触媒層」ともいう。)である。外側触媒層3bは、内側触媒層3aの上(排気ガス通路側)に形成され、触媒金属としてRhを用いた触媒層(以下、Rh触媒層」ともいう。)である。
【0020】
内側触媒層3aのPdは活性アルミナ及びCe含有酸素吸蔵放出材に担持されている。内側触媒層3aは、さらに、助触媒として、触媒金属を担持しない活性アルミナを含有する。
【0021】
外側触媒層3bのRhは活性アルミナ及びCe含有酸素吸蔵放出材に担持されている。外側触媒層3bは、さらに、助触媒として、触媒金属を担持しない酸素吸蔵放出材を含有し、触媒被毒防止剤として、Ba13を分散して含有する。
【0022】
Ce含有酸素吸蔵放出材としては、例えば、CeとZrとの複合酸化物、CeとZrと希土類元素(Nd、La、Y、Pr等)との複合酸化物、或いはセリアを採用することができる。そのような複合酸化物は共沈法等によって調製することができる。
【0023】
触媒被毒防止剤としてのBa13は次のようにして調製することができる。炭酸バリウムBaCOとリン酸二アンモニウム(NH)HPO水溶液をBa:Pのモル比が1:1となるように混合する。この混合物を大気雰囲気において120℃で乾燥させた後、COを0.6vol%含有するNガス中にて800℃の温度で2時間焼成する。得られた焼成物を粉砕して微粒化する。
<実施例>
外側触媒層(Rh触媒層)と内側触媒層(Pd触媒層)の成分構成は次のとおりである。
【0024】
[外側触媒層(Rh触媒層)]
触媒粉末(1);Rh担持ZrCeNd複合酸化物(72.9g/L(Rh;0.32g/L))
触媒粉末(2);Rh担持活性アルミナ(29.5g/L(Rh;0.1g/L))
助触媒(3);活性アルミナ(12.7g/L)
触媒被毒防止剤;Ba13(Ba担持量30g/L相当量)
バインダ;ジルコニアバインダ(12.8g/L)
Rh担持ZrCeNd複合酸化物は、ZrCeNd複合酸化物にRhを蒸発乾固法によって担持させた触媒粉末である。そのZrCeNd複合酸化物の組成は、ZrO:CeO:Nd=80:10:10(質量比)である。Rh担持活性アルミナは、活性アルミナにRhを蒸発乾固法によって担持させた触媒粉末である。活性アルミナはLa安定化アルミナである。この点は助触媒(3)及び後述する他の活性アルミナも同じである。「g/L」は担体1L当たりの担持量のことである。この点は次に説明する内側触媒層も同じである。
【0025】
[内側触媒層(Pd触媒層)]
触媒粉末(4);Pd担持ZrCeNd複合酸化物(35g/L(Pd;0.69g/L))
触媒粉末(5);Pd担持活性アルミナ(45.1g/L(Pd;1.39g/L))
助触媒(6);ZrCeNd複合酸化物(5.72g/L)、セリア(5.72g/L)
バインダ;ジルコニアバインダ(7.69g/L)
Pd担持ZrCeNd複合酸化物は、ZrCeNd複合酸化物にPdを蒸発乾固法によって担持させた触媒粉末である。ZrCeNd複合酸化物の組成は、ZrO:CeO:Nd=67:23:10(質量比)である。Pd担持活性アルミナは活性アルミナにPdを担持させた触媒粉末である。
【0026】
-触媒の調製法-
触媒粉末(4),(5)、助触媒(6)及びバインダを混合してスラリー化し、ハニカム担体にコーティングする。そして、空気中で450℃において2時間の焼成を行なうことにより、内側触媒層(Pd触媒層)を形成する。次に触媒粉末(1),(2)、助触媒(3)、触媒被毒防止剤Ba13及びバインダを混合してスラリー化し、上記内側触媒層の上にコーティングする。そして、空気中で450℃において2時間の焼成を行なうことにより、外側触媒層(Rh触媒層)を形成する。
<排気ガス浄化性能の評価>
上記成分構成及び調製法によって実施例触媒を調製した。ハニカム担体としては、直径25mm、長さ50mmのものを用いた。
【0027】
浄化性能の評価のために、次の比較例1-3の触媒を調製した。比較例1-3のハニカム担体も実施例触媒と同じ寸法のものである。
【0028】
-比較例1-
実施例と同様にして、ハニカム担体に内側触媒層(Pd触媒層)を形成した。次に触媒粉末(1),(2)、助触媒(3)及びバインダを混合してスラリー化し、上記内側触媒層の上にコーティングした後、空気中で450℃において2時間の焼成を行なうことにより、外側触媒層(Rh触媒層,触媒被毒抑制対策なし)を形成した。
【0029】
-比較例2-
比較例1と同様にして、内側触媒層(Pd触媒層)及び外側触媒層(Rh触媒層)を形成した。しかる後、触媒被毒防止剤としての水酸化バリウム溶液を当該内外の触媒層にBa担持量が全体で30g/Lとなるように含浸し、空気中で450℃において2時間の焼成処理を行なった。
【0030】
-比較例3-
比較例1と同様にして、内側触媒層(Pd触媒層)を形成した。次に、触媒粉末(1),(2)、助触媒(3)、触媒被毒防止剤としてのLaPO(不飽和リン酸塩)36g/L及びバインダを混合してスラリー化し、上記内側触媒層の上にコーティングした。そして、空気中で450℃において2時間の焼成を行なうことにより、外側触媒層(Rh触媒層)を形成した。
【0031】
-評価方法-
実施例及び比較例1-3の各触媒に次のベンチエージングを行なった後に模擬排気ガスにてHC及びNOxの浄化性能を調べた。
【0032】
(ベンチエージング)
エンジンベンチシステムを用い、アイドル運転(A/F(空燃比)=14.7)1分間→加速運転(エンジン回転数3560rpm,A/F=13.5)1分間→定常運転(エンジン回転数3300rpm,A/F=14.7)2分間→燃料カット運転(A/F>20)→アイドル運転に戻るというエンジン運転モードの繰り返しにより、触媒にエージングを行なった。触媒温度は930℃、エージング時間は100時間である。このエージングにおいて、エンジンオイルを30mL/hの流量にて吸気マニホールドからエンジンに供給した。
【0033】
(HC及びNOxの浄化率の測定)
ベンチエージング後の実施例及び比較例1-3の各触媒をガス流通反応装置に取り付け、触媒に流入する模擬排気ガスの温度を常温から漸次上昇させていく一方、触媒を流出するガスのHC及びNOxの濃度を検出してHC及びNOxの浄化率を求めた。
【0034】
模擬排気ガスについては、A/F=14.7のベースガスに2種類の変動用ガスをパルス状に追加することにより、A/Fに1Hzで±0.9の変動を与えた。ベースガス組成は、HC=C;1500ppmC、CO;0.56%、O;0.6%、H;1800ppm,CO;13.9%,HO;10.0%、残Nである。このベースガスに変動用ガスとしてOを1.05%追加してA/F=15.6(リーン)とし、変動用ガスとしてCOを2%及びHを5400ppm追加してA/F=13.6(リッチ)とするようにした。A/Fの変動パターンは、ベースガスのみ(0.25秒)→リーン(0.25秒)→ベースのみ(0.25秒)→リッチ(0.25秒)であり、この繰り返しでA/Fを変動させた。模擬排気ガスの流量は26.1L/分(空間速度SV=約60,000h-1)、摸擬排気ガスの昇温速度は15℃/分である。
【0035】
(測定結果)
HC浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度T50(HC)と、NOx浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度T50(NOx)を図3に示す。同図によれば、触媒層に水酸化バリウムを含浸させた比較例2や外側触媒層にLaPOを添加した比較例3でも触媒被毒抑制の効果が認められるが、実施例では、比較例2,3よりもさらに顕著な触媒被毒抑制効果が認められる。これは、Ba13を外側触媒層に分散させたことによる効果である。
【0036】
図4は、実施例触媒の外側触媒層のHAADF-STEM(高角度円環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像と同一視野で測定したBaとCaのSTEM-EDS(エネルギー分散形X線分光器)によるマッピングデータを示す。マッピングデータのBaマップ像はBa13のBaによるものであり、Caマップ像は排気ガス中のCa成分とP成分から生じたβ-Ca(PO)のCaによるものである。マッピングデータによれば、Caマップ像とBaマップ像が隣接する関係になっているから、Ba13上にβ-Ca(PO)が形成されているということができる。
【0037】
図5はBa13及びβ-Ca(PO)各々のED(電子線回折)像と両ED像の重ね合わせを示す。両ED像を重ね合わせると一致することから,排気ガス中のCa及びPがBa13上にβ-Ca(PO)を形成する要因は,結晶学的な相の一致にあることが示唆される。すなわち、この両者の結晶学的な関連により、β-Ca(PO)がBa13上に連続して形成され易いということである。従って、触媒層の触媒成分がP被毒及びCa被毒することが抑制される。加えて、β-Ca(PO)はガラス質であるものの、その形成は触媒層のBa13上という局部的であるから、触媒層における排気ガスの拡散が阻害されることも避けられる。
【0038】
なお、上記実施形態の触媒層は二層構造であるが、触媒層は単層であっても、三層以上の積層構造であってもよい。触媒金属は、RhやPdに限らず、Ptなど他の貴金属或いは他の遷移金属であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 排気ガス浄化用触媒
2 ハニカム担体
3 触媒層
3a 内側触媒層
3b 外側触媒層
図1
図2
図3
図4
図5