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特開2022-175294感知器用保護カバーおよび施工管理システム並びに着脱器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175294
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】感知器用保護カバーおよび施工管理システム並びに着脱器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20221117BHJP
   G08B 17/10 20060101ALI20221117BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20221117BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/10 H
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081575
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宇宙太
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
5L049
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AC05
5C085CA15
5C085CA16
5C085CA18
5C085CA21
5C085CA26
5C085FA11
5C085FA12
5C085FA16
5G405AA01
5G405AB02
5G405AD02
5G405AD05
5G405BA07
5G405CA22
5G405CA25
5G405CA30
5G405CA36
5G405CA55
5G405FA06
5G405FA11
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】大幅なコストアップを招くことなく、施工や点検の進捗を把握するために施工管理システムを一時的に構築することができる感知器用保護カバーを提供する。
【解決手段】感知器の一部と係合することで建造物または施設に設置されている感知器の表面に被着可能な感知器用保護カバーにおいて、少なくとも前記感知器の表面を外側から覆うカバー本体と、無線で情報信号を送信する発信手段と、前記発信手段へ電源電圧を供給する電源手段と、を備えるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器の一部と係合することで建造物または施設に設置されている感知器の表面に被着可能な感知器用保護カバーであって、
少なくとも前記感知器の表面を外側から覆うカバー本体と、
無線で情報信号を送信する発信手段と、
前記発信手段へ電源電圧を供給する電源手段と、
を備えていることを特徴とする感知器用保護カバー。
【請求項2】
前記発信手段と前記電源手段は、1つのケースに収納されるユニットとして構成され、
前記ケースが前記カバー本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感知器用保護カバー。
【請求項3】
建造物または施設の所定エリアに設置されている監視システムを構成する感知器の表面に被着された請求項1または2に記載の感知器用保護カバーと、
前記発信手段からの情報信号を受信する機能と、通信ネットワークを介して無線通信する機能と、を有する携帯通信端末と、
通信ネットワークを介して前記携帯通信端末と通信可能な管理用サーバと、
を備え、前記管理用サーバは、前記携帯通信端末より受信した前記発信手段から受信した情報と前記携帯通信端末の機器情報とに基づいて、前記携帯通信端末の位置を把握することを特徴とする施工管理システム。
【請求項4】
前記管理用サーバは、
前記携帯通信端末の帯同者と実施する作業内容との関係を示すリストおよび/または作業に使用する機材と作業内容との関係を示すリストを記憶部内に備え、
前記携帯通信端末の位置と前記リストの情報とに基づいて施工や点検の進捗状況を把握する機能を有するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の施工管理システム。
【請求項5】
前記管理用サーバは、施工終了後に、前記所定エリア内を移動する作業者が帯同する前記携帯通信端末が、前記感知器用保護カバーの前記発信手段からの情報信号を受信した場合に保護カバーの外し忘れと判定する機能を有するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の施工管理システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の感知器用保護カバーを、建造物または施設の高所に設置されている前記感知器の表面に被着するために使用する着脱器であって、
長尺な操作棒の先端に装着された椀状のホルダーに、前記発信手段からの情報信号を受信可能な受信手段と情報信号を受信した場合に前記情報信号に含まれる固有情報を収集することで未回収の保護カバーを把握し報知する報知手段が設けられていることを特徴とする着脱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器などの感知器を保護する感知器用保護カバーおよびこの保護カバーを利用した施工管理システム並びに保護カバーの着脱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物や施設内に火災感知器等の感知器を設置して火災報知システムを構築する場合に、施工が終了するまでの間に内装工事等が実施されることがあり、工事の作業中に発生した粉塵等から火災感知器を保護するため、防塵カバー(保護カバー)を感知器に装着することが行われている。なお、上記のような感知器の防塵カバーおよび防塵カバーを設置済みの感知器に脚立を用いることなく装着できるようにするための着脱器に関する発明がある(特許文献1)。
【0003】
また、従来、建造物や施設内に、火災検知システムの他に位置情報システムを構築することがあり、位置情報を送信する情報発信モジュール(ビーコン)を、火災感知器を利用してその化粧カバー(感知器ケース)の内側に収容部を設けて配置するようにした発明がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-21009号公報
【特許文献2】特開2020-126700号公報
【特許文献3】特開2016-148983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている防塵カバーは工事終了後に外すことになるが、防塵カバーの外し忘れというミスが発生するおそれがある。
なお、カバーの外し忘れを防止するため、保護カバーの下部に発光部(LED)を設けるようにした発明がある(特許文献3)。しかし、特許文献3のように保護カバーの下部に発光部を設けた場合、カバーの外し忘れを発見することができるという利点があるものの、人の目で発光部の発光状態の有無を確認する必要があるため、感知器が設置されているすべてのエリアを巡回して確認しなければならず、確認作業の負担が大きいとともに、本来巡回すべきエリアを見逃すおそれがあり、その場合カバーの外し忘れを発見できないという課題が残ることとなる。
【0006】
一方、本発明者らは、顧客側が位置情報システムを不要として火災報知システムのみを構築したい建造物や施設においても、位置情報システムがあれば火災報知システムの施工中における工事の進捗を把握するのに利用できることを見出した。しかし、特許文献2に記載されている発明のように、化粧カバーの内側に収容部を設けて感知器を配置するようにした場合には、工事後には感知器内の情報発信モジュールが無駄になる、あるいは化粧カバーを外して情報発信モジュールを外して回収する作業が必要になってしまうという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されている発明によれば、情報発信モジュールを感知器とは別個に設置して位置情報システムを構築する場合に比べて、コストアップを抑制することができるという利点があるものの、化粧カバーの内側に収容部を設けて感知器を配置するようにしているため、位置情報システムを利用できる感知器の制約があり感知器のコストアップが生じ、顧客側の負担の増大を招くという課題がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、大幅なコストアップを招くことなく、施工や点検の進捗を把握するために施工管理システムを一時的に構築することができる感知器用保護カバーを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、施工後における感知器用保護カバーの外し忘れを容易に発見することができる施工管理システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、施工後における感知器用保護カバーの外し忘れを確実に発見することができる保護カバーの着脱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明は、
感知器の一部と係合することで建造物または施設に設置されている感知器の表面に被着可能な感知器用保護カバーにおいて、
少なくとも前記感知器の表面を外側から覆うカバー本体と、
無線で情報信号を送信する発信手段と、
前記発信手段へ電源電圧を供給する電源手段と、を備えるようにしたものである。
【0010】
上記のような構成によれば、感知器に被着される保護カバーに無線で情報信号を送信する発信手段が設けられているため、建造物や施設に設置された火災報知システムを構成する感知器に発信手段を有する保護カバーを被着することによって、工事中に発生する粉塵等から感知器を保護しつつ、携帯通信端末を帯同した作業者の位置および施工や点検の進捗状況を把握可能な施工管理システムを一時的に構築することができる。
また、感知器に被着される保護カバーに無線で情報信号を送信する発信手段を設けているため、感知器には何ら変更を加える必要がなく、感知器のコストアップを回避することができる。さらに、施工が終了した後に、保護カバーを外して回収し再利用することができるため、保護カバーのコストアップを抑制することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記発信手段と前記電源手段は、1つのケースに収納されるユニットとして構成され、前記ケースが前記カバー本体に着脱可能になるように構成する。
かかる構成によれば、情報を発信するユニットがカバー本体に対して着脱可能に構成されているため、感知器を出荷する際には、カバー本体のみを感知器に被着した状態で出荷することができ、コストダウンを図ることができる。また、カバー本体と通信ユニットのいずれか一方が破損または故障したような場合に、一方の部品のみの交換で対応することが可能になる。
【0012】
また、本出願の他の発明は、
建造物または施設の所定エリアに設置されている監視システムを構成する感知器の表面に被着された上記構成を有する感知器用保護カバーと、
前記発信手段からの情報信号を受信する機能と、通信ネットワークを介して無線通信する機能と、を有する携帯通信端末と、
通信ネットワークを介して前記携帯通信端末と通信可能な管理用サーバと、
を備え、前記管理用サーバは、前記携帯通信端末より受信した前記発信手段から受信した情報と前記携帯通信端末の機器情報とに基づいて、前記携帯通信端末の位置を把握するように構成したものである。
【0013】
上記のような構成によれば、建造物や施設に設置された監視システムを構成する感知器に発信手段を有する保護カバーを被着することで携帯通信端末の位置を把握することができるようになるため、施工管理システムを一時的かつ安価に構築することができる。また、保護カバーを施工完了後に回収して再利用することにより、システムの構築に要するコストを抑制することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記管理用サーバは、
前記携帯通信端末の帯同者と実施する作業内容との関係を示すリストおよび/または作業に使用する機材と作業内容との関係を示すリストを記憶部内に備え、
前記携帯通信端末の位置と前記リストの情報とに基づいて施工や点検の進捗状況を把握する機能を有するように構成する。
かかる構成によれば、作業者のみならず機材の位置も把握することができるため、より詳細な施工管理を行うことができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記管理用サーバは、施工終了後に、前記所定エリア内を移動する作業者が帯同する前記携帯通信端末が、前記感知器用保護カバーの前記発信手段からの情報信号を受信した場合に保護カバーの外し忘れと判定する機能を有するように構成する。
かかる構成によれば、施工完了後に保護カバーを回収する作業をした場合に、保護カバーの外し忘れを容易に発見することができるとともに、外し忘れた保護カバーの位置を容易かつ確実に把握することができる。
【0016】
さらに、本出願に係る他の発明は、
上述したような構成を有する感知器用保護カバーを、建造物または施設の高所に設置されている前記感知器の表面に被着するために使用する着脱器であって、
長尺な操作棒の先端に装着された椀状のホルダーに、前記発信手段からの情報信号を受信可能な受信手段と情報信号を受信した場合に前記情報信号に含まれる固有情報を収集することで未回収の保護カバーを把握し報知する報知手段が設けられているようにしたものである。
【0017】
上記のような構成によれば、長尺な操作棒を有する保護カバーの着脱器に保護カバーの発信手段からの情報信号を受信可能な受信手段が設けられているため、操作棒の先端のホルダーを保護カバーに近づけることで保護カバーの外し忘れを確実に発見することができる。また、着脱器が長尺な操作棒を有しているため、保護カバーの被着および取り外しの際に、脚立等を用いた高所作業が不要となり、作業の効率および安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る感知器用保護カバーによれば、大幅なコストアップを招くことなく、施工や点検の進捗を把握するために施工管理システムを一時的に構築することができる。また、本発明の施工管理システムによれば、施工後における感知器用保護カバーの外し忘れを容易に発見することができる。さらに、本発明の保護カバーの着脱器によれば、施工後における感知器用保護カバーの外し忘れを確実に発見することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る感知器用保護カバーの一実施形態および感知器の概略構成を示す斜視図である。
図2】(A)は図1の被着前の感知器用保護カバーおよび感知器の詳細な構成を示す断面図、(B)は感知器用保護カバーの他の構成例を示す断面図である。
図3】被着直後の感知器用保護カバーおよび感知器を示す断面図である。
図4】本発明に係る施工管理システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
図5】アドレス設定器によりアドレスの設定を行う火災感知器等の端末器が設置されているフロアのレイアウトを示す設備図面(フロア図)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る感知器用保護カバーおよびそれを用いた施工管理システム並びに保護カバーの着脱器の実施形態について説明する。
図1には本発明に係る感知器用保護カバーおよび感知器の斜視図が、また図2には感知器および感知器用保護カバーの断面図が示されている。なお、図1および図2において示されている感知器は煙感知器である。
【0021】
図1に示すように、感知器10は、天井に固定されるベース11と、該ベース11に着脱自在に取り付けられている感知器本体12とを備えており、感知器本体12は、ドーム状をなすケース本体部13と、該ケース本体部13の中央側から下方に突き出た略円筒状をなすヘッド部14とを有している。
ヘッド部14の側面には、感知器10の内部に煙を流入させるための複数の開口14aが形成されている。なお、本実施形態では、感知器10として煙感知器を示したが、熱感知器、炎感知器等の他の形式の火災感知器であっても良い。
【0022】
本実施形態の感知器用保護カバー20は、図1および図2に示すように、感知器本体12のヘッド部14を覆う有底筒状のカップ部21と、感知器本体12のケース本体部13を囲繞する有底環状の外環部22と、カップ部21と外環部22とを繋ぐ繋ぎ部23とを備えており、全体として感知器10の外形に対応した形状を有している。
また、感知器用保護カバー20は、樹脂材料により弾性変形可能になるように、その厚みは比較的薄く成形されている。
【0023】
また、感知器用保護カバー20のカップ部21の周壁部には、円周方向に所定の間隔をおいて内側に突出した複数(4個)の係合凸部21aが設けられており、この係合凸部21aは、感知器10のヘッド部14の開口14aに係合して、感知器用保護カバー20を感知器10に被着させるために使用される。
また、外環部22には、感知器用保護カバー20の立体形状を保持するために補強構造部21bが形成されている。本実施形態では、外環部20の外側面に4つの補強構造部21bが周方向に等間隔で設けられている。
【0024】
上記のような構成を有する感知器用保護カバー20を天井に設置されている感知器10に被着したり外したりするのに用いる保護カバーの着脱器50は、図2(A)に示すように、上記保護カバー20のカップ部21に対応する大きさの椀状をなすホルダー部51と、ホルダー部51の外面(図では下面)に一端が固設された連結部52とを備えている。
連結部52の他端(図では下端面)には、図示しない長尺な操作棒を連結可能であり、操作棒が連結されることで、作業員は脚立等を使用することなく、本実施形態の着脱器50を用いて感知器用保護カバー20を天井Cに設置されている感知器10に被着したり外したりすることができる。
【0025】
ホルダー部51には、上端から鉛直方向下方へ向かって一対の平行スリットを設けることでそれぞれ鉛直方向上方へ延びる爪部53が180°対向するように一対形成されており、爪部53はそれぞれ上端部が径方向へ弾性変形可能である。また、上記爪部53には内側へ突出する突起部53aがそれぞれ設けられており、この突起部53aは、保護カバー20の係合凸部21aの外側に係合可能な大きさに形成されている。
これにより、図2(A)に示すように、着脱器50のホルダー部51の突起部53aの上に保護カバー20のカップ部21を載せた状態で、操作棒を持ち上げてホルダー部51を上昇させ、天井面Cに取り付けられている感知器10のヘッド部14にカップ部21を嵌合させて押し上げると、係合凸部21aが感知器10のヘッド部14の開口14aに係合して、感知器用保護カバー20を感知器10に被着させることができる。
【0026】
また、感知器10から保護カバー20を外す場合には、図3に示すように、着脱器50のホルダー部51に保護カバー20のカップ部21を嵌合させて、感知器10のヘッド部14に覆い被せ、ホルダー部51の爪部53の突起部53aを保護カバー20の係合凸部21aの外側に係合させた状態で、操作棒を引き下げてホルダー部51を降下させると、係合凸部21aが感知器10のヘッド部14の開口14aから外れて、感知器用保護カバー20を感知器10から外すことができる。
【0027】
本実施形態の感知器用保護カバー20は、図1に示すように、上記保護カバー20のカップ部21の底面に、所定周波数の信号(電波)を発信する情報発信ユニット24が設けられている。情報発信ユニット24は、図2(B)に示すように、発信モジュール24Aと電源モジュール24Bを内蔵している。発信モジュール24Aの通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LANなど公知の通信方式を利用することができる。発信モジュール24Aの電波強度は、隣接するそれぞれの発信モジュール24Aの通信範囲同士が接するか、一部が互いに少し重なるような強さが望ましい。
【0028】
また、上記情報発信ユニット24は、保護カバー20と一体でも良いが、例えば図2(B)に示すように、保護カバー20のカップ部21の底面に鉤状の係止片21cを設け、情報発信ユニット24のケース24Dの上面に上記カップ部21の底面に係止片21cと係合可能な係合凹部24cを設け、係止片21cと係合可能な係合凹部24cに係合させることで、一体に結合されるように構成しても良い。係止片21cと係合凹部24cとの関係は逆、すなわち係止片21cが情報発信ユニット24のケース24Dの上面に設けられ、係合凹部24cがカップ部21の底面に設けられていても良い。
【0029】
なお、係止片21cと係合可能な係合凹部24cは、係止片21cを係合凹部24cの端部に挿入して係合させた後、カバー本体21を若干回転させることによって情報発信ユニット24が抜け落ちない位置に移動するような構造にすると良い。かかる構造は、感知器を感知器ベースに固定する構造として知られているものと同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0030】
上記のように、情報発信ユニット24を保護カバー20の本体に対して着脱可能に構成することで、施工管理システムの構築に使用したい感知器と施工管理システムの構築に使用しない感知器とで保護カバー20を共用することができる。また、火災感知器を出荷する際には、保護カバー20のみを感知器に被着した状態で出荷することができるため、コストダウンを図ることができる。さらに、保護カバー20と情報発信ユニット24のいずれか一方が破損または故障したような場合に、一方の部品のみの交換で対応することが可能になる。
【0031】
図4には、感知器用保護カバー20に設けられる情報発信ユニット24およびこれを用いた施工管理システムの構成の一実施形態が示されている。
図4に示すように、本実施形態の施工管理システムは、情報発信ユニット24と、該情報発信ユニット24から送信された信号を受信するスマートフォンのような携帯通信端末30と、インターネットのような通信ネットワーク(公衆無線通信網)NWを介して携帯通信端末30と接続される管理用サーバ40とから構成されている。
【0032】
感知器用保護カバー20の情報発信ユニット24は、自身の固有情報(機器IDや設備情報等)を含む所定周波数の信号を発信するビーコンとしての発信モジュール24Aと、発信モジュール24Aに対して電力を供給する電源モジュール(電池)24Bを備える。なお、電源モジュール24Bの電池には、ボタン型電池のような薄型電池を使用するのが望ましく、かつ電池を交換可能にする構造を情報発信ユニット24のケース24Dに設けておくのが望ましい。
また、図示しないが、発信モジュール24Aの動作を有効にするオン/オフ・スイッチや、電源が入っていることを示すLEDなどからなる表示灯を備えていても良い。表示灯は保護カバー20を感知器に被着した状態で見える位置に配置される。
【0033】
携帯通信端末30は、無線通信部31、CPUなどからなる制御部32、操作部33、表示部34、電源部35などを備え、無線通信部31には発信モジュール24Aからの信号を受信する受信手段と管理用サーバ40との間の通信を行うLTE,WiFi等の無線通信手段が設けられている。
管理用サーバ40は、無線通信部41、CPUなどからなる制御部42、記憶部(データベース)43、電源部44などを備えるコンピュータ装置であり、パーソナルコンピュータを使用しても良い。記憶部(データベース)43には、火災感知器10A,10B,10C……が設置されているフロアのレイアウトを示す図5のような設備図面(フロア図)が記憶されている。
【0034】
なお、図5において、感知器を示す各ブロック10A,10B,10C……内に記されている「D」は感知器の種別(火災感知器)を表す符号、「24h」,「25h」,「26h」……は各火災感知器に付与された通信アドレス、♯01,♯02,♯03……は感知器に被着された情報発信ユニット24の機器IDである。感知器を設置する施工作業においては、図5の設備図面を参照しながら、情報発信ユニット24の機器IDと火災感知器の通信アドレスとが対応するようにアドレスの設定が行われる。あるいは、既に通信アドレスが設定されている感知器に、アドレスと対応した機器IDを有する情報発信ユニット24が装着される。
【0035】
また、管理用サーバ40の記憶部(データベース)43には、図5のような設備図面(フロアマップ)の他、設置されている感知器10と被着されている保護カバー20との対応関係を示すリストや、施工を担当する作業員全員のIDと担当作業の種類や各作業の平均所要時間等との対応を示すリストが記憶されている。さらに、管理用サーバ40は、作業員の各エリアでの滞在時間等に基づいて、上記リストを参照して実施した作業の種類と施工や点検の進捗状況を把握し管理する機能を有している。
【0036】
本実施形態の施工管理システムにおいては、作業員が作業実施のために携帯通信端末30を帯同して所定のフロアへ移動すると、当該フロアに設置されている感知器に被着されている情報発信ユニット24の発信情報を携帯通信端末30が受信して、通信ネットワークNWを介して管理用サーバ40へ自端末のIDと共に情報発信ユニット24から受信した情報を送信する。そのため、管理用サーバ40は、記憶部(データベース)43内の情報(リスト)を参照することで、携帯通信端末30の位置を把握することができる。従って、各情報発信ユニット24と携帯通信端末30と管理用サーバ40によって位置情報システムが構築されることとなる。
【0037】
これにより、管理用サーバ40は、携帯通信端末30より受信した情報とフロアマップとから、当該携帯通信端末30を保有する作業者の位置、担当作業の種類を判定し、当該フロアの滞在時間を算出することによって作業を実施したか否か予測し、それに基づいて施工や点検の進捗状況を把握することができる。また、施工時に必要な機材を搬送するキャリー等に携帯通信端末30のような通信機能を有するものを搭載しておくとともに、リストに記載しておけば、管理用サーバ40は、より正確に施工や点検の進捗状況を把握するとともに機材を管理することもできる。
【0038】
また、施工がすべて終了すると、各感知器から情報発信ユニット24が外されて回収され、オン/オフ・スイッチ等で発信モジュール24Aの動作を無効にすることとなるが、回収作業の終了後において、例えば、携帯通信端末30の操作により回収作業が終了であることを示す信号を管理用サーバ40へ送信し、携帯通信端末30を帯同した作業者が各フロアを巡回する。すると、外し忘れの情報発信ユニット24があれば、その情報発信ユニット24の発信情報が携帯通信端末30に受信されて、管理用サーバ40へ送信される。
そのため、管理用サーバ40は回収作業の終了後に情報発信ユニット24の発信情報を受信すると、ユニットの外し忘れがあると判断することができる。また、情報発信ユニット24を外す作業を、施工後における各感知器の試験を実施する際に行うように手順が決められている場合、試験をしていない感知器があることを把握することができる。尚、回収作業後に巡回することが特に好ましいが、携帯通信端末30を利用している作業者が多く、あらゆる場所で作業を行う場合においては、巡回せずとも外し忘れの情報発信ユニット24からの発信情報を携帯通信端末30にて受信するので、必ずしも巡回しなくてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の保護カバーおよび施工管理システムによれば、施工や点検の進捗状況を把握することができるとともに、作業員および機材を適切に管理することができる。また、施工対象の火災検知システムを構成するすべての火災感知器10の設置後、試験を行う段階において、すべての火災感知器10から保護カバー20および情報発信ユニット24を外して回収する。そのため、保護カバー20および情報発信ユニット24の再利用が可能である。
【0040】
さらに、本実施形態の保護カバーによれば、情報発信ユニット24の外し忘れを容易に発見するとともに、設備図面(フロアマップ)と照らし合わせることで、外し忘れた情報発信ユニット24が装着されている感知器の場所を容易に見つけることでことができる。また、感知器は何ら変更する必要がないため、感知器のコストアップを回避することができ、顧客側の負担が増加することもないという利点がある。
【0041】
なお、上記実施形態では、携帯通信端末30を用いて設置されている感知器に情報発信ユニット24が被着されているか判断するようにしているが、図2に示されているような着脱器50の操作棒先端のホルダー部51の底壁上面等に保護カバー20の情報発信ユニット24からの信号を受信可能な受信器を設けるとともに、ホルダー部51の外面に表示ランプ等を設けて、信号を受信できたときに表示ランプを点灯させることで、情報発信ユニット24の有無を視覚で確認できるように構成しても良い。
また、着脱器50の操作棒の下端に表示ランプ等を設けて操作棒内にケーブルを這わせ、情報発信ユニット24の有無を手元で確認できるように構成しても良い。
さらに、表示ランプの代わりにブザーまたはスピーカを設けて音で報知、あるいは携帯通信端末へ信号を送って報知するように構成しても良い。
【0042】
情報発信ユニット24からの信号を受信可能な受信器を設けた上記着脱器50を用いて設置した感知器(保護カバー)を把握する方法としては、設置前に予めリストを作成するか、設置前に携帯通信端末にて各固有情報を収集する、着脱器を用いて設置することで設置する際に各固有情報を収集する、の3通りの方法が考えられる。そして、上記のいずれかの方法で設置した感知器(保護カバー)を把握し記憶しておいて、回収時にも着脱器で固有情報を受信し比較することで、差分から未回収の保護カバーを把握することができる。
また、報知方法としては、例えば着脱器50に表示画面又はスピーカを設け、残数を表示又は音声で報知するか、着脱器50に携帯通信端末30との通信機能を設け、携帯通信端末側の画面上でリスト又はマップでの表示を行うか音声で報知することが考えられる。
【0043】
なお、以上の機能を実現するための、未回収の保護カバーを把握する等の機能を有する処理部を設ける場所は、着脱器50であっても携帯通信端末30であっても管理用サーバ40であってもよい。また、着脱器50が設置状況を把握し且つ報知機能も有するという場合を除き、着脱器50には携帯通信端末30と通信する機能を設ける。
着脱器50を上記のように構成することにより、着脱器50を用いて保護カバー20を回収する際に固有情報を収集することで、未回収の保護カバーの残数や位置を把握できるため、未回収の保護カバーの発見が容易となり、取り外し忘れを防ぐと共に、感知器が設置されているすべてのエリアを巡回して確認する必要がなくなり、確認作業の負担を減らすことが可能になるという効果を奏することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、保護カバー20の底面に情報発信ユニット24を着脱可能に取り付けているが、保護カバー20と情報発信ユニット24は一体に構成しても良い。また、情報発信ユニット24は情報を発信する機能のみ備えると説明したが、双方向通信が可能な通信ユニットとして構成しても良い。さらに、情報発信ユニット24が携帯端末から受信した情報を管理用サーバ40へ送信する機能を有していても良い。
【0045】
さらに、上記実施形態では、感知器の例として火災報知システムを構成する火災感知器を挙げているが、情報発信ユニット24を有する保護カバー20を被着する感知器は火災感知器に限定されず、監視システムを構成するガス感知器、人感センサのような検知器であっても良いし、火災感知器は煙感知器、熱感知器等、どのような検知方式のものであっても良い。さらに本施工管理システムは、工事における感知器の施工後や感知器の点検後の他、前記点検後に感知器の保護を目的とした保護カバーの再被着から回収を行う際に適用されても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 感知器(火災感知器)
11 ベース
12 感知器本体
13 ケース本体部
14 ヘッド部
20 感知器用保護カバー
21 カップ部
22 外環部
23 繋ぎ部
24 情報発信ユニット
24A 発信モジュール
24B 電源モジュール(電池)
30 携帯通信端末
31 無線通信部
32 制御部(情報処理手段)
33 操作部
34 表示部
35 電源部
40 管理用サーバ
41 無線通信部
42 制御部(情報処理手段)
43 記憶部(データベース)
44 電源部
50 着脱器
51 ホルダー部
52 連結部
53 爪部
図1
図2
図3
図4
図5