(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175296
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】凝集サイクロン装置、それを用いた海洋プラスチック除去システム及びそのシステムを搭載した船舶並びにその船舶の運航方法
(51)【国際特許分類】
B04C 5/081 20060101AFI20221117BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20221117BHJP
B03C 1/28 20060101ALI20221117BHJP
B04C 5/12 20060101ALI20221117BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B04C5/081
B03C1/00 A
B03C1/28 107
B04C5/12 Z
B04C9/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081578
(22)【出願日】2021-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】519428155
【氏名又は名称】株式会社Ambitious Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 明
【テーマコード(参考)】
4D053
【Fターム(参考)】
4D053AA03
4D053AB04
4D053BA01
4D053BB02
4D053BD04
4D053CB02
4D053CC01
4D053CG03
(57)【要約】
【課題】従来の液体サイクロン装置は、フロックが破壊されやすいため、フロックの分離には使えなかった。また、海洋に漂うプラスチックやマイクロプラスチッも同時に除去できるバラスト水処理装置もなかった。さらに、海洋に漂うプラスチックやマイクロプラスチックによる汚染問題を解決する船舶とその航行方法もなかった。
【解決手段】壊れやすいフロックを含む流体をサイクロン方式で分離するために、磁性体を含むフロックを遠心力と磁気力でサイクロンの外殻近傍の流れに導き、内殻と外殻の間の流路に導き、下部流出くちから排出させる。フロックは内殻により、上昇流の影響を防ぐことで、フロックを確実に分離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流入させた磁性体を有するフロックを含む流体を螺旋状に回転させる逆円錐台形状の外殻と、
前記外殻の中央部に上方へ抜けるように配置された円筒部と、
前記外殻の内側かつ前記円筒部の下部を囲うように設置された皿状の内殻と、
前記外殻の外部側面に配置された磁石と、を有し、
前記円筒部と前記内殻の間の流体は、前記円筒部内に発生させた上昇流にのせて排出し、前記磁石により前記外殻と前記内殻の間に流れを誘導したフロックは、前記外殻の下端から排出する、
ことを特徴とする凝集サイクロン装置。
【請求項2】
前記円筒部は、複数の固定部材を間欠的に配置することで前記内殻と連結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の凝集サイクロン装置。
【請求項3】
前記磁石は、水平方向の磁気力を抑制するための磁気シールドが取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の凝集サイクロン装置。
【請求項4】
前記磁石は、螺旋状の流れに沿ってフロックが誘導されるように配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の凝集サイクロン装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一に記載の凝集サイクロン装置を用いてバラスト水を浄化するシステムであって、
海洋を浮遊する大型のプラスチックを回収機構で回収し、前記回収機構で回収されなかったマイクロプラスチックを前記凝集サイクロン装置で回収する、
ことを特徴とする海洋プラスチック除去システム。
【請求項6】
海洋を浮遊する大型のプラスチックをスリット機構で破壊して前記回収機構で回収する、
ことを特徴とする請求項5に記載の海洋プラスチック除去システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のシステムを搭載した、
ことを特徴とする船舶。
【請求項8】
請求項7に記載の船舶が、基地局から集められた海域交通情報、衛星から収集された海洋プラスチック汚染情報、当初計画されていた航路情報、気象情報、海流情報、及び運航経路の地理的情報をもとに生成された計画航路情報を計画航路情報センターから受信し、その計画航路情報に基づき運航される、
ことを特徴とする運航方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型プラスチックを回収した後のバラスト水からマイクロプラスチックを遠心力と磁気力で除去する凝集サイクロン装置、その凝集サイクロン装置を用いてバラスト水を浄化する海洋プラスチック除去システム、またそのシステムを搭載した船舶、さらにその船舶の運航方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋に廃棄されたプラスチックは、世界的な海洋汚染問題となっている。海洋中のプラスチックの発生原因は、洗濯機から下水を通じて海に排出されるマイクロプラスチック、タイヤの走行中に生じる摩耗による粉塵、都市の粉塵などが約90%といわれている。その他のプラスチックも紫外線や流体力等で細かく分解され、大きさが数十ミクロンから数ミリメートルの大きさのマイクロプラスチックとなる。海洋に漂流するプラスチックやマイクロプラスチックは、魚等の水生生物や海洋生物が間違って餌として体内に取り入れ、それによって死亡することが報告されている。
【0003】
さらに、マイクロプラスチックには、有害な物質が付着している場合もあり、該マイクロプラスチックを内部に含む魚等を食べることで、人類の健康に対しても、甚大な影響を及ぼすことが懸念されている。そこで、海洋に浮遊するプラスチックやマイクロプラスチックを除去する方法が望まれている。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特許文献1から特許文献4がある。特許文献1には、サイクロンに侵入する流体の流れに対抗した位置に電磁石を置くことで、磁性を有するフロックを引き付けるサイクロン式の凝集サイクロン装置が開示されている。特許文献2には、サイクロンにおいて、二重筒構造にすることによって、上昇気流にのって、粗い塵埃が上昇を妨げる構造が開示されている。特許文献3には、バラスト水処理システムにおいて、水質検査を行い、その検査結果がバラスト水の排出規制値を満足しない場合は、再度、バラスト水処理を行う方式が開示されている。特許文献4には、航路選択にあたり、経済性を維持しつつ、船舶同志の見合い関係の発生を低減する計画航路の生成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-176906号公報
【特許文献2】特許第3569915号公報
【特許文献3】特許第5945309号公報
【特許文献4】特開2018-073074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、原水の中の浮遊物質をマグネタイト等の磁性体と一緒に凝集して、フロックをつくり、該フロックを含む流体を、液体サイクロンで、水とフロックを遠心力と磁気力で分離している。しかし、本方法では、流体の流れ方向に対向して、電磁石が配置されているため、最大磁気力を示す極部に向かってフロックが突入して、フロックが電磁石に磁気力でサイクロンの外壁に固着されることが起こる。そのため、電磁石をオフにして、電流を流さないことで磁気力が発生しない状態をつくり、その時には、フロックがサイクロンの外壁から離れ、流れにのって移動し、下流出口から排出されるという装置であった。この装置では、固着されたフロックに、磁気力と直交方向に流体力が働き、フロックが壊れるという問題があった。また、上流出口の下部出口周辺は、流速が早いため、乱流エネルギーが高く、下部出口周辺でフロックが壊れてしまうという問題もあった。
【0007】
特許文献2では、粉塵が上昇気流にのって上昇することを妨げるために、二重の筒を有するサイクロンが開示されているが、上昇気流でフロックが破壊されるという問題があった。
【0008】
特許文献3では、バラスト水浄化システムとして、水質モニターをしながら、バラスト水を凝集サイクロンで処理していた。しかし、プラスチックの除去や海洋汚染問題の解決について考慮されていなかった。
【0009】
特許文献4では、特定の船舶の通過海域における海流の影響が加味された直近の複数の他の船舶の航路情報を入手して蓄積し、その航路情報によって、効率的な計画航路情報を生成していた。しかし、廃棄されたプラスチックの海洋汚染について考慮されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、マグネタイトなどの磁性を有する物質と、生物プランクトンやマイクロプラスチック等の流体内に浮遊している物質を凝集したフロックを遠心力と磁気力で回収する際に、フロックを破壊しない低コストで小型な回収装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、海洋などに浮遊するプラスチックを任意の大きさのメッシュフィルターで構成する回収機構で回収する。回収機構で回収できない、大きさが数ミリメートル以下のマイクロプラスチックは、凝集サイクロン装置で回収する。なお、バラスト水取込口近傍にスリット機構を設け、スリットでプラスチックをせん断することで、バラスト水が流れるパイプ内でのつまりを防止する。さらに、衛星情報を活用して、プラスチックが大量に浮遊している海域を発見して、当初予定していた航路と現在の船舶の位置を考慮して、大量の海洋プラスチックを短時間で回収できる最適な航路を決め、プラスチックが大量にある海域で海洋プラスチックを回収する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明である凝集サイクロン装置は、内部に流入させた磁性体を有するフロックを含む流体を螺旋状に回転させる逆円錐台形状の外殻と、前記外殻の中央部に上方へ抜けるように配置された円筒部と、前記外殻の内側かつ前記円筒部の下部を囲うように設置された皿状の内殻と、前記外殻の外部側面に配置された磁石と、を有し、前記円筒部と前記内殻の間の流体は、前記円筒部内に発生させた上昇流にのせて排出し、前記磁石により前記外殻と前記内殻の間に流れを誘導したフロックは、前記外殻の下端から排出する、ことを特徴とする。
【0013】
前記凝集サイクロン装置において、前記円筒部は、複数の固定部材を間欠的に配置することで前記内殻と連結される、ことを特徴とする。
【0014】
前記凝集サイクロン装置において、前記磁石は、水平方向の磁気力を抑制するための磁気シールドが取り付けられる、ことを特徴とする。
【0015】
前記凝集サイクロン装置において、前記磁石は、螺旋状の流れに沿ってフロックが誘導されるように配置される、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明である海洋プラスチック除去システムは、前記凝集サイクロン装置を用いてバラスト水を浄化するシステムであって、海洋を浮遊する大型のプラスチックを回収機構で回収し、前記回収機構で回収されなかったマイクロプラスチックを前記凝集サイクロン装置で回収する、ことを特徴とする。
【0017】
前記海洋プラスチック除去システムにおいて、海洋を浮遊する大型のプラスチックをスリット機構で破壊して前記回収機構で回収する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明である船舶は、前記システムを搭載した、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明である運航方法は、前記船舶が、基地局から集められた海域交通情報、衛星から収集された海洋プラスチック汚染情報、当初計画されていた航路情報、気象情報、海流情報、及び運航経路の地理的情報をもとに生成された計画航路情報を計画航路情報センターから受信し、その計画航路情報に基づき運航される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、マグネタイトなどの磁性を有する物質と、生物プランクトンやマイクロプラスチック等の流体内に浮遊している物質を凝集したフロックを遠心力と磁気力で回収する際に、フロックを破壊しない低コストで小型な回収装置を提供することができる。
【0021】
また、海洋などに浮遊するプラスチックを回収機構で回収する場合や、海洋プラスチックを細断するためのスリット機構を設け、前記海洋プラスチックを細断して、その後段の回収機構で回収することも可能である。スリット機構では破断できないマイクロプラスチックも凝集サイクロン装置で回収することで、海洋汚染問題を解決できるという効果がある。また、衛星情報を活用して、プラスチックが大量に浮遊している海域に向かって航路を決め、プラスチックが大量にある海域で海洋プラスチックを回収することで、海洋汚染の除去を効率的にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の凝集サイクロン装置を側面から見た構成図の一例である。
【
図2】本発明の凝集サイクロン装置の斜視図で流体の流れを示す図である。
【
図3】本発明の凝集サイクロン装置の内部の構成図の一例である。
【
図4】本発明の凝集サイクロン装置の内部の分解図である。
【
図5】本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムの一例である。
【
図6】本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムを搭載した船舶の運航方法の一例である。
【
図7】本発明の凝集サイクロン装置を船舶に搭載したときの数ミリメートル以上の大型のプラスチックの回収機構の一例である。
【
図8】本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムの一例である。
【
図9】本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムの運用方法の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0024】
貨物船などの船舶は、空荷で出港するときに海水や淡水をバラスト水としてタンクに取り込み、貨物を積載する港でバラスト水を船外に排出することで、重量のバランスを取っている。水中に海洋プラスチックやプランクトンなどの海洋生物が含まれていると、バラスト水を排出する際に汚染問題が発生するので、それらを除去することが望ましい。
【0025】
バラスト水を浄化するにあたり、海洋に漂う大型のプラスチックは、パイプ内で詰まらないようにスリット機構で小さく細断した上で、メッシュフィルターを用いた回収機構で回収し、それらで回収できない数ミクロンから数ミリ程度のマイクロプラスチックは、マグネタイトなどの磁性紛と凝集させ、磁性を有するフロックを作り、遠心力と磁気力で回収する。
【0026】
一般のサイクロンでは、前記フロックが乱流エネルギーで破壊されてしまうため、前記乱流エネルギーで破壊されないように、前記フロックは、低流速でサイクロン内部を周回させる。低速では、遠心力が小さいため、前記フロックが前記サイクロンの外殻周辺に移動しにくい。
【0027】
そこで、磁石をサイクロンの外部の近傍に配置して、前記フロックを外殻の近傍に磁気力で引き寄せる。さらに、サイクロン内部には、上昇流の発生箇所周辺の乱流エネルギーが高い領域から前記フロックを保護するために、内殻を設けることで、前記フロックは前記上昇気流の影響を受なくなり、破壊されることなく、回収される。
【0028】
図1は、本発明の凝集サイクロン装置の実施例を示す。凝集サイクロン装置は、テーパ状に先細りした逆円錐台形状の中空容器である磁気サイクロン9の外殻1と、前記外殻1の中央部に上方へ抜けるように縦向きで配置された円筒部3と、外殻1の内部かつ円筒部3の下方に設置された内殻4と、を有する。前記円筒部3は、下部流入口3aと上部流出口3bを有し、前記の下部流入口3aに、柱状の固定部材3cによって逆円錐台の皿状の内殻4が固定され、下部を囲うように側方から下面まで覆われている。
【0029】
フロック11aを含む流体10は、外殻1の側面上部に設けた流入口7から前記磁気サイクロン9内に前記円筒部3に垂直方向に流入する。前記流体10は、フロック11aの流れ10aと水等の流れ10bを含んでいる。流体10は、外殻1内かつ円筒部3の周りを螺旋状に回転し、外殻1の形状に合わせて徐々に径を小さくしながら下方へ移動する。前記フロック11aも、流れ10aに乗って、外殻1内かつ円筒部3の周りを螺旋状に回転するように流れる。
【0030】
内殻4の側面は、外殻1の逆円錐台の傾きと同等に傾斜させ、外殻1と内殻4の間に隙間を確保する。前記フロック11aは、遠心力と永久磁石等の磁石5aによる磁気力により、前記外殻1と前記内殻4の間に入り、重力によって、外殻1の下端に設けられた円筒部2の下部流出口2aからフロック11bとして排出される。円筒部3と内殻4の間に入った水など遠心力及び磁気力の影響が弱いものについては、水等の流れ10bが前記内殻4の底面4aから円筒部3の下部流入口3aに向かい、前記上部流出口3bへ向かって発生する上昇流8にのって排出される。
【0031】
磁石5aでフロック11aを外殻1に留めてしまうと流れ10aに逆らってフロック11aが破壊されるおそれがあり、また、円筒部3に吸い込まれる流れ10bによってもフロック11aが破壊されるおそれがあるので、フロック11aの流れ10aを内殻4より外側の外殻1寄りに誘導すれば良い。
【0032】
前記外殻1の外部の側面中間部の近傍には、磁石5aがフロック11aの流れ10aと垂直方向に配置されている。磁石5aは、複数(例えば、2個や4個など)を所定の間隔を置いて配置しても良い。前記磁石5aの側面には、水平方向に磁気力が働かないように被覆した磁気シールド5bが配置されている。
【0033】
なお、前記磁石5aの水平方向への磁気力が、円筒部2の下部流出口2aに向かうフロック11aの流れ10aを阻害しなければ、磁気シールド5bは、なくてもかまわない。磁石5aは、上側の磁力でフロック11aを誘導すれば良く、磁気サイクロン9は下方が先細りしているため、縦に配置された磁石5aの下側における磁気の影響は弱くなり、円筒部2の下部流出口2aに向かうフロック11aの流れ10aは阻害されない。
【0034】
図2は、本発明の凝集サイクロン装置の斜視図である。マイクロプラスチックやプランクトン等と、マグネタイト等の磁性体とを凝集したフロックを含む流体20が、磁気サイクロン9の逆円錐台の中空形状の外殻1の内側でかつ、円筒部3の周りを流れる。前記フロックは、磁石5aの磁気力で前記外殻1と逆円錐台の皿状の内殻4の間に流れ、円筒部2の下部流出口2aに向かって流れる。
【0035】
フロック等の浮遊物を含まない水等は、前記内殻4と前記円筒部3の間に流れ込み、逆円錐台状の底面4aの周辺から前記円筒部3の下部流入口3aから上昇し、上部流出口3bから排出される。前記下部流出口3aと前記内殻4の底面4aは、柱状の固定部材3cで固定されている。柱状の固定部材3c間には、隙間があるので、上昇流20aを発生させることができる。
【0036】
図3は、本発明の凝集サイクロン装置における磁気サイクロン9の内部の中央部に配置された円筒部3と逆円錐台状の内殻4の組立図である。前記円筒部3は、縦筒状であり、上部流出口3bと下部流入口3aがあり、前記下部流入口3aと内殻4の底面4aとは、内殻4内に流入した水等を円筒部3内へ送り込む隙間を確保するために、複数間欠的に配置された柱状の固定部材3cで連結される。
【0037】
図4は、本発明の凝集サイクロン装置における磁気サイクロン9の内部の中央部に配置された円筒部3と逆円錐台状の内殻4の分解図である。円筒部3の下部には、柱状の固定部材3cがつながっている。前記内殻4は、上部は開放されており、テーパ状に先細って、下部は、円盤状の底面4でつながっている。
【0038】
前記柱状の固定部材3cと底面4aをつなげることで、前記流体のうち、フロック等の磁気力で吸引された浮遊物や、水等より比重の大きな浮遊物は、前記円筒部3の内部へは流れ込まず、それ以外の液体が流れ込む。なお、前記円筒部3の下部の端面の近傍に液体の通過できる窓等を開けることでも、前記柱状の固定部材3cと前記底面4aで作る通路と同じ効果が期待できる。
【0039】
図5に、本発明の凝集サイクロン装置の別の実施例を示す。磁気サイクロン9では、外殻1の上部まで傾斜しているので、流体に斜め上に向かう力が働き、効率が落ちるおそれがある。磁気サイクロン29は、上部は円筒状の外殻21aと、下部は逆円錐台形状の外殻21bで成り立っている。前記円筒状の外殻21a及び前記逆円錐台形状の外殻21bの中央部に円筒部23が配置されている。前記円筒部23には、上部流出口23bと下部流入口23aがある。
【0040】
前記下部流入口23aは、逆円錐台状の内殻24の底面24aと柱状の固定部材23cで固定されている。前記内殻24の底面24aにおいて下部流入口23aから円筒部23の内部へ上部流出口23bに向かって上昇流28が発生する。流入口27から磁気サイクロン29に引き込まれた流体30のうち、水等の流れ30bは、前記上部流出口23bに向かって上昇流28にのって排出される。
【0041】
前記逆円錐台形状の外殻21bの外部の側面の近傍には、永久磁石等の磁石25a、26aをフロック31aの流れ30aと垂直方向に配置されている。磁石25a、26aは、フロック31aが螺旋状の流れ30aに沿って移動するように、配置や磁力の大きさを調整しても良い。例えば、磁石25aの位置を高くして磁力の大きいものを使用した方が、効率が良くなる。
【0042】
前記磁石25a、26aの側面は、水平方向に磁気力が働かないように抑制する磁気シールド25b、26bが取り付けられる。なお、前記磁石25aの水平方向への磁気力が、円筒部22の下部流出口22aに向うフロック31aの流れ30aを阻害しなければ、磁気シールド25b、26bは、なくてもかまわない。
【0043】
前記磁石25a、26aの磁気力と流体力と遠心力で、前記フロック31aの流れ30aは、前記外殻21bと内殻24の間の流れ31bとなり、前記上昇流28の影響を受けないで、重力の影響で下部流出口22aに向かっていく。
【0044】
図6に、本発明の凝集サイクロン装置を用いた海洋プラスチック除去システムの構成図の実施例を示す。まず、海洋プラスチック除去システムにおいて、図示してはいないが、大型のプラスチックを細断するための刃を縦、横又は斜めに間欠的に配置してスリット状にしたスリット機構をバラスト水取込口に配置しても良い。海洋を浮遊する大型のプラスチックをスリット機構で破壊して回収し、前記スリット機構で破壊できないマイクロプラスチックを前記凝集サイクロン装置(凝集磁気分離システム)で回収する。
【0045】
マイクロプラスチック等の浮遊物やプランクトン等の水生生物を含む海水や淡水等の流体58が、凝集磁気分離システム55に流入し、凝集剤貯留槽40から適量の凝集剤と、マグネタイト溶液貯留槽41から適量のマグネタイトが投入され、急速攪拌装置42内の攪拌器43で攪拌され、マイクロフロックを作る。無機凝集剤等の凝集剤とマグネタイトの投入順番は自由で、同時に投入してもよい。
【0046】
その後、ポリマー貯留槽46からポリマーなどの有機凝集剤を投入して、緩速攪拌装置44内の攪拌器45で攪拌され、数百ミクロンから数ミリの大きさのフロック59を作る。磁気サイクロン50では、遠心力と磁気力によって、前記フロック59を含む流体52と、フロック59を含まない流体51に分離される。
【0047】
図7に、本発明の凝集サイクロン装置を船舶に搭載したときの数ミリメートル以上の大型のプラスチックの回収機構の実施例を示す。数ミリメートル以上の大きさのプラスチック77を含む海水等の流体73は、バラストポンプ72で吸引されて、任意のメッシュサイズのフィルタで作られるエンドレスベルトフィルタ70を通過させられる。
【0048】
任意のメッシュサイズのフィルタで作られるエンドレスベルトフィルタ70が、ローラ71aとローラ71bの間を連続的に回転78する。そのローラ71aとローラ71bの間を、前記プラスチックを含む流体73が通過する際に、エンドレスベルトフィルタ70が、前記プラスチック77を保持し、移動させる。プラスチック77は、該エンドレスベルトフィルタ70に圧接しているスクレーパ75で分離させられ、フロック回収槽76に入れられる。前記フロック回収槽76が熱源を持っている場合、フロックから水分を蒸発させることもある。
【0049】
また、前記数ミリメートル以上の大きさのプラスチック77を除去された流体73は、パイプ74に流入する。流体73は、マイクロプラスチックやプランクトン等の微細の浮遊物を含んでおり、前述の凝集磁気分離システム55に送られる。
【0050】
図8に、本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムの実施例を示す。海洋プラスチックやマイクロプラスチックを含むバラスト水を浄化する海洋プラスチック除去システム100は、船舶110内に搭載され、海水又は淡水をポンプ102で取り込むが、大型のプラスチックが入ることを防ぐことでポンプ102を保護している。
【0051】
海洋プラスチック除去システム100は、大型のプラスチックなどを破断するためのスリットを備えたスリット機構部101と、海水または淡水を給水及び排水するポンプ102と、破断されたプラスチックなどの数十ミリメートル以上の大きな浮遊物を回収する回収機構部103と、回収された浮遊物を一時的に保存する回収槽104と、マイクロプラスチックやプランクトンなどの数十ミリメートル未満の微小な浮遊物を回収するための凝集サイクロン装置105と、マイクロプラスチックなどを含むフロックを除去して一時的に保存する回収槽106と、コンピュータ等で各装置を制御し全体を管理する制御部108からなっている。
【0052】
なお、前記スリット機構101は、大型のプラスチックを細断し、後段のパイプ内で詰まることを防止するために設置しているが、そのおそれが無ければ設置しなくても良い。また、凝集サイクロン装置105は、セラミックフィルタ等のフィルタとオゾンや紫外線を組み合わせた機構であってもかまわない。処理水は、バラストタンク107に一時的に搭載される。
【0053】
制御部108は、各装置から情報を取得し、必要に応じて情報を一時的又は長期的に記憶し、それらの情報を演算することにより各装置の動作条件などを算出し、算出結果を出力するとともに各装置に動作信号を送信する。
【0054】
図9に、本発明の凝集サイクロン装置を利用した海洋プラスチック除去システムの運用方法の実施例を示す。海洋プラスチック除去システムの運用方法の例として、船舶の運航方法がある。そのシステムを管理する計画航路情報センター210では、海域交通情報取得手段202と、海洋プラスチック汚染情報収集手段203と、地理的情報収集手段204と、計画航路生成手段205と、計画航路要求受信手段201と、計画航路提供手段206を備えている。
【0055】
計画航路要求受信手段201は、船舶220から通信手段を介して計画航路の要求信号を受信する。要求信号を受けて、海域交通情報取得手段202では、図示してはいないが、基地局から集められた船舶自動識別装置の情報等を収集する。海洋プラスチック汚染情報収集手段203では、衛星200によって収集された海域における海洋プラスチック等による海洋汚染状況の情報を収集する。地理的情報取得手段204では、計画航路要求信号に含まれる自船の位置、目的港、及び両者間の海域など運航経路の地理的情報を取得する。計画航路生成手段205では、上記の海域交通情報取得手段202と、海洋プラスチック汚染情報収集手段203と、地理的情報収集手段204で収集された情報をもとに、計画航路を生成する。
【0056】
例えば、衛星による画像情報を画像処理して、海洋プラスチックの濃度を計算し、当初計画されていた航路情報、海流の速度や温度などの海流情報、天候などの気象情報を考慮し、海洋プラスチックを効率よく大量に、短時間で回収されるような計画航路が生成される。この計画航路を生成する際、バラスト水の搭載の有無、バラスト水の搭載量、海洋プラスチック等海洋汚染除去作業を行うことができるか否か、海洋プラスチック除去作業の緊急性を考慮した計画航路を生成する。計画航路提供手段206は、計画航路を要求した船舶220に対して通信手段を介して生成した計画航路を送信する。
【0057】
船舶220には、計画航路要求送信手段221と計画航路受信手段222を有し、その結果を反映して操舵する操船手段223を有する。計画航路情報センター210に送信手段を介して計画航路を要求し、計画航路情報センター210から受信手段を介して取得した計画航路に基づき、船舶220が運航される。海洋プラスチック等海洋汚染除去作業海洋汚染除去作業を行った結果(除去した海域、除去した海洋プラスチック等海洋汚染物質の量等)を計画航路情報センター210に送信する。
【0058】
該計画航路情報センター210は、本情報を国際海事機関(IMO)等の公的機関や環境保護団体に送信する。国際海事機関などの国際機関や環境保護団体では、本情報を公開するとともに、海洋汚染対策の戦略策定を行う。その結果、さらなる除去が必要な場合は、該海域付近を航行予定の船舶に海洋汚染対策への協力を求める。また、回収した海洋プラスチック等の海洋汚染物質は、産業廃棄物として寄港地の政府、自治体が買い取ることで、該海洋プラスチック除去システムを搭載する船舶は、石油などの有価物の運搬以外に海洋掃除作業という仕事を受持つ。
【0059】
本発明では、マグネタイトなどの磁性を有する物質と、生物プランクトンやマイクロプラスチック等の流体内に浮遊している物質を凝集したフロックを遠心力と磁気力で回収する際に、フロックを破壊しない低コストで小型な回収装置を提供することができる。
【0060】
また、海洋などに浮遊するプラスチックを回収機構で回収する場合や、海洋プラスチックを細断するためのスリット機構を設け、前記海洋プラスチックを細断して、その後段の回収機構で回収することも可能である。スリット機構では破断できないマイクロプラスチックも凝集サイクロン装置で回収することで、海洋汚染問題を解決できるという効果がある。また、衛星情報を活用して、プラスチックが大量に浮遊している海域に向かって航路を決め、プラスチックが大量にある海域で海洋プラスチックを回収することで、海洋汚染の除去を効率的にできる。
【0061】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、石油生産時に発生する硫化水素などの有害な気体を発生する随伴水の処理において外気と接触させずに処理することができる。
請求項7に記載の船舶が、基地局から集められた海域交通情報、衛星から収集された海洋プラスチック汚染情報、当初計画されていた航路情報、気象情報、海流情報、及び運航経路の地理的情報をもとに生成された計画航路情報を計画航路情報センターから受信し、その計画航路情報に基づき運航される、
ことを特徴とする運航方法。