IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2022-175319複合材切断装置および複合材切断方法
<>
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図1
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図2
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図3
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図4
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図5
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図6
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図7
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図8
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図9
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図10
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図11
  • 特開-複合材切断装置および複合材切断方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175319
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】複合材切断装置および複合材切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/46 20060101AFI20221117BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20221117BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B26D1/46 501C
C08J5/04
B26D1/46 501F
B26D1/46 501G
B26D1/46 501E
B26D1/46 501H
B26D7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081628
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】金升 将征
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晃
(72)【発明者】
【氏名】湯下 篤
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉山 隆士
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎治
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD08
4F072AD13
4F072AD23
4F072AD37
4F072AD38
4F072AD42
4F072AD44
4F072AD45
4F072AD46
4F072AG03
4F072AH21
4F072AL02
(57)【要約】
【課題】長尺状の複合材を解体する際のコストを低減する。
【解決手段】繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材200の長手方向LDの先端部201を鉛直方向VDの上方で支持し、かつ複合材200の長手方向LDの基端部202を鉛直方向VDの下方で浮遊した状態とする支持部10と、支持部10により支持された複合材200の先端部201と基端部202との間の切断位置CPで複合材200を切断する切断部20と、を備える複合材切断装置100を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の長手方向の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持部と、
前記支持部により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置で前記複合材を切断する切断部と、を備える複合材切断装置。
【請求項2】
前記第2端部が前記鉛直方向の下方で浮遊した状態を維持するように、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を保持する保持部を備える請求項1に記載の複合材切断装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を、前記鉛直方向の上方から吊り下げられた袋体に収容して保持する請求項2に記載の複合材切断装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を、前記鉛直方向の上方から吊り下げられた吊り下げ部材に固定して保持する請求項2に記載の複合材切断装置。
【請求項5】
前記支持部により支持された前記複合材の下方に配置され、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分が落下した際の衝撃を吸収する衝撃吸収部を備える請求項1に記載の複合材切断装置。
【請求項6】
前記鉛直方向から傾斜した傾斜方向に延びるとともに前記支持部が設置される設置面に一端が固定された線状部材と、
前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方に固定されるとともに前記線状部材が挿入される挿入穴が形成された挿入部材と、を備え、
前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分は、前記線状部材に沿って前記設置面に向けて前記傾斜方向に導かれる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の複合材切断装置。
【請求項7】
前記切断部は、切断部材を水平方向に沿って前記複合材の前記切断位置へ押し当てることにより、前記複合材を切断する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合材切断装置。
【請求項8】
前記切断部は、前記切断部材を前記水平方向および前記鉛直方向の双方に沿って移動させることにより、前記複合材を所定サイズ以下の断片に分割する請求項7に記載の複合材切断装置。
【請求項9】
繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の長手方向の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持工程と、
前記支持工程により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置で前記複合材を切断する切断工程と、を備える複合材切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材切断装置および複合材切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の主翼の骨組構造を、繊維強化樹脂複合材を用いて一体成形する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。航空機の主翼は、他の部品とともに胴体に取り付けられる。また、航空機を解体する際には、主翼を胴体から取り外し、主翼を解体場所まで運搬する。解体場所に運搬された主翼は、作業者により所定の大きさに切断あるいは分解され、粉砕機により粉砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-48097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、航空機の主翼等の長尺状の複合材を解体場所まで運搬するには、多大な労力が必要であり、運搬に要するコストも高くなってしまう。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、長尺状の複合材を解体する際のコストを低減することが可能な複合材切断装置および複合材切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る複合材切断装置は、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の長手方向の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持部と、前記支持部により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置で前記複合材を切断する切断部と、を備える。
【0007】
本開示に係る複合材切断方法は、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の長手方向の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持工程と、前記支持部により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置で前記複合材を切断する切断工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、長尺状の複合材を解体する際のコストを低減することが可能な複合材切断装置および複合材切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る複合材切断装置を示す正面図である。
図2図1に示す複合材切断装置のA-A矢視断面図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る複合材切断方法を示すフローチャートである。
図4図1に示す複合材切断装置の第1変形例を示す正面図である。
図5図1に示す複合材切断装置の第2変形例を示す正面図である。
図6図1に示す複合材切断装置の第3変形例を示す正面図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る複合材切断装置を示す正面図である。
図8図7に示す複合材切断装置の第1変形例を示す正面図である。
図9図7に示す複合材切断装置の第2変形例を示す正面図である。
図10図7に示す複合材切断装置の第3変形例を示す正面図である。
図11】本開示の第3実施形態に係る複合材切断装置を示す。
図12図11に示す複合材切断装置のB-B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係る複合材切断装置100について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る複合材切断装置100を示す正面図である。本実施形態の複合材切断装置100は、長尺状の複合材200を切断する装置である。長尺状の複合材200は、例えば、航空機の主翼であり、航空機の胴体から取り外されたものである。
【0011】
複合材200は、繊維基材を含む樹脂材料により形成されている。繊維基材は、例えば、炭素繊維,ガラス繊維等の強化繊維材料により形成されるシートを複数層に渡って積層した部材である。また、繊維基材は、樹脂材料が予め含浸されたプリプレグや部分的に含浸したプリプレグでも良く、プリプレグと強化繊維材料の組み合わせでも良い。
【0012】
樹脂材料は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド等の熱硬化性樹脂材料、またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等の熱可塑性樹脂である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の複合材切断装置100は、複合材200を支持する支持部10と、複合材200を切断する切断部20と、複合材200を固定する固定部30と、切断部20および固定部30を運搬するゴンドラ40と、衝撃吸収部50と、を備える。
【0014】
支持部10は、複合材200の先端部(第1端部)201を鉛直方向VDの上方で支持し、かつ複合材200の長手方向LDの基端部(第2端部)202を鉛直方向VDの下方で設置面Sから浮遊した状態とする装置である。設置面Sは、複合材切断装置100が設置される面である。図1において、軸線Zは、鉛直方向VDに沿って延びる軸線である。軸線Zにおいて、基端部202の位置Z2は、設置面Sの位置Z0よりも上方の位置である。軸線Zにおいて、先端部201の位置Z1は、位置Z2よりも上方の位置である。
【0015】
支持部10は、設置面Sに設置されるベース部11と、ベース部11に固定されるとともに鉛直方向VDに沿って延びる支柱12と、支柱12に対して支点12aを中心に回転するアーム13と、アーム13の先端に固定されるワイヤ巻取機構14と、を有する。ワイヤ巻取機構14は、一対のワイヤ14a,14bの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ14a,14bの一端は、それぞれ複合材200の先端部201に取り付けられた一対のアイボルト203に固定されている。
【0016】
ワイヤ巻取機構14は、一対のワイヤ14a,14bを巻き取ることにより、複合材200を支持しながら鉛直方向VDに沿って下方から上方へ移動させることができる。同様に、ワイヤ巻取機構14は、一対のワイヤ14a,14bを巻き出すことにより、複合材200を支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。
【0017】
切断部20は、支持部10により支持された複合材200の先端部201と基端部202との間の切断位置CPで、複合材200を切断する装置である。切断部20は、ゴンドラ40に設置されている。切断部20が複合材200を切断する切断位置CPは、軸線Zにおいて先端部201の位置Z1と基端部202の位置Z2との間の位置である。
【0018】
図1に示すように、切断部20は、切断ワイヤ(切断部材)21(図2参照)を鉛直方向VDに直交する水平方向HDに沿って複合材200の切断位置CPへ押し当てることにより、複合材200を切断する。図2に示すように、切断部20は、切断ワイヤ21と、主プーリ22と、複数の従プーリ23と、一対のレール24と、一対の駆動機構25と、を有する。
【0019】
切断ワイヤ21は、主プーリ22と、複数の従プーリ23に掛けまわされている。主プーリ22をモータ(図示略)で回転させることにより、主プーリ22および複数の従プーリ23に掛けまわされた切断ワイヤ21を回転させる。一対のレール24は、水平方向HDに沿って平行に延びるとともに切断ワイヤ21と主プーリ22と複数の従プーリ23とが一体となった切断機構を支持するものである。
【0020】
一対の駆動機構25は、切断機構を水平方向HDに沿って移動させる駆動力を発生する装置である。一対の駆動機構25により駆動力が付与された切断機構は、水平方向HDに沿って複合材200へ近づく方向に移動することにより、切断ワイヤ21を複合材200に押し当てる。切断機構は、複合材200の切断位置CPを完全に切断すると、図2に点線で示す位置に到達する。一対の駆動機構25は、複合材200の切断位置CPを完全に切断した後に、切断機構を図2に実線で示す位置まで退避させる。
【0021】
固定部30は、切断部20により複合材200を切断する際に、複合材200が移動しないように固定する装置である。固定部30は、ゴンドラ40に設置されている。固定部30は、例えば、複合材200の表面に吸着部材を接触させ、吸着部材に対して吸引力を付与することにより複合材200を一定の位置に固定する。
【0022】
ゴンドラ40は、支柱12に対して鉛直方向VDに沿って移動可能に取り付けられる装置である。ゴンドラ40には、切断部20および固定部30を操作する作業者が乗り込むことができる。また、ゴンドラ40は、作業者が操作することにより、切断部20および固定部30を鉛直方向VDに沿った任意の位置に移動させることができる。したがって、切断部20は、複合材200の長手方向LDの任意の位置を切断位置CPとして設定することができる。
【0023】
衝撃吸収部50は、支持部10により支持された複合材200の下方に配置され、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が落下した際の衝撃を吸収する部材である。
【0024】
ここで、本実施形態の複合材切断装置100を用いて複合材200を切断する複合材切断方法について図面を参照して説明する。図3は、本実施形態の複合材切断方法を示すフローチャートである。
【0025】
ステップS101(支持工程)において、航空機の胴体から取り外された複合材200の先端部201に一対のアイボルト203を固定し、一対のアイボルト203に一対のワイヤ14a,14bを固定する。その後、ワイヤ巻取機構14は、一対のワイヤ14a,14bを巻き取ることにより、複合材200を鉛直方向VDに沿って下方から上方へ移動させ、図1に示す状態とする。
【0026】
ステップS102(固定工程)において、固定部30は、切断部20により複合材200を切断する際に、複合材200が移動しないように固定する。固定部30は、例えば、複合材200の表面に吸着部材を接触させ、吸着部材に対して吸引力を付与することにより複合材200を一定の位置に固定する。
【0027】
ステップS103(切断工程)において、切断部20は、支持部10により支持された複合材200の先端部201と基端部202との間の切断位置CPで複合材200を切断する。複合材切断装置100は、切断位置CPを軸線Z上の任意の位置に設定することができる。
【0028】
複合材切断装置100は、例えば、複合材200を長手方向LDに沿って2分割する場合には、先端部201と基端部202との中間位置の近傍の1箇所のみを切断位置CPとして設定し、1箇所の切断位置CPを切断する。また、複合材切断装置100は、例えば、複合材200を長手方向LDに沿って3分割する場合には、先端部201と基端部202との間を3分割する2カ所の位置を切断位置CPとして設定する。この場合、切断部20は、基端部202に近い切断位置CPを最初に切断し、その後に先端部201に近い切断位置CPを切断する。
【0029】
このように、複合材切断装置100は、複合材200を分割するために1または複数の鉛直方向VDの位置を切断位置CPとして設定し、基端部202から先端部201に向けて複数の切断位置において複合材200を切断する。これにより、複合材200を任意のサイズで切断することができる。
【0030】
切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、重力により設置面Sに向けて鉛直方向VDに沿って下方に落下する。落下した複合材200の部分は、衝撃吸収部50に接触する際に、落下による衝撃が吸収される。そのため、落下した複合材200の部分は、衝撃吸収部50が配置されていない場合に比べ、設置面Sに衝撃する際の音が低減されるとともに設置面Sに接触した際に複合材200の破片が飛散することが防止される。
【0031】
ここで、本実施形態の複合材切断装置100の第1変形例について説明する。図4は、図1に示す複合材切断装置100の第1変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100は、衝撃吸収部50を備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100は、複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する保持部60を備えている。
【0032】
第1変形例の複合材切断装置100が備える保持部60は、複合材200の基端部202が鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持するように、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する装置である。図4に示すように、保持部60は、袋体61と、支柱12に対して支点12bを中心に回転するアーム62と、アーム62の先端に固定されるワイヤ巻取機構63と、を有する。
【0033】
袋体61は、複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を内部に収容して保持する袋状の部材である。ワイヤ巻取機構63は、一対のワイヤ63a,63bの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ63a,63bの一端は、それぞれ袋体61の上端部に固定されている。
【0034】
ワイヤ巻取機構63は、一対のワイヤ63a,63bを巻き出すことにより、切断位置CPで切断された複合材200の切断位置CPの下方の部分を支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。これにより、切断位置CPで切断された複合材200の切断位置CPの下方の部分を、重力により落下させることなく安全に設置面Sに降ろすことができる。図4に点線で示す複合材200は、設置面Sに降ろされた複合材200の切断位置CPの下方の部分を示す。
【0035】
次に、本実施形態の複合材切断装置100の第2変形例について説明する。図5は、図1に示す複合材切断装置100の第2変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100は、衝撃吸収部50を備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100は、複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する保持部70を備えている。
【0036】
第2変形例の複合材切断装置100が備える保持部70は、複合材200の基端部202が鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持するように、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する装置である。図5に示すように、保持部70は、支柱12に対して支点12bを中心に回転するアーム71と、アーム71の先端に固定されるワイヤ巻取機構72と、を有する。
【0037】
ワイヤ巻取機構72は、一対のワイヤ(吊り下げ部材)72a,72bの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ72a,72bの一端は、それぞれ複合材200の切断位置CPよりも下方の部分に固定されたアイボルト203に取り付けられている。保持部70は、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を、鉛直方向VDの上方から吊り下げられた一対のワイヤ72a,72bに固定して保持する。
【0038】
ワイヤ巻取機構72は、一対のワイヤ72a,72bを巻き出すことにより、切断位置CPで切断された複合材200の切断位置CPの下方の部分を支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。これにより、切断位置CPで切断された複合材200の切断位置CPの下方の部分を、重力により落下させることなく安全に設置面Sに降ろすことができる。図5に点線で示す複合材200は、設置面Sに降ろされた複合材200の切断位置CPの下方の部分を示す。
【0039】
次に、本実施形態の複合材切断装置100の第3変形例について説明する。図6は、図1に示す複合材切断装置100の第3変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100は、衝撃吸収部50を備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100は、ワイヤ(線状部材)80と、複数のアイボルト(挿入部材)204と、を備える。
【0040】
ワイヤ80は、鉛直方向VDから傾斜した傾斜方向IDに延びるとともに支持部10が設置される設置面Sに一端が固定された金属製の線状部材である。ワイヤ80の他端は、アーム13の先端に固定されている。
【0041】
複数のアイボルト204は、複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方および上方の双方に固定されるとともにワイヤ80が挿入される挿入穴が形成された部材である。図6に示すように、複合材200に固定されるアイボルト204には、ワイヤ80が挿入されている。
【0042】
切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、ワイヤ80に沿って設置面Sに向けて傾斜方向IDに導かれる。図6に点線で示す複合材200は、設置面Sに降ろされた複合材200の切断位置CPの下方の部分を示す。
【0043】
以上説明した本実施形態の複合材切断装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の複合材切断装置100によれば、例えば、長尺状の主翼等の複合材200を解体するために航空機の胴体から取り外す際に、支持部10が、長尺状の複合材200の先端部201を鉛直方向VDの上方で支持し、かつ基端部202を鉛直方向VDの下方で浮遊した状態とすることができる。そして、切断部20が、支持部10により支持された複合材の先端部201と基端部202との間の切断位置CPで複合材を切断する。これにより、長尺状の複合材200を解体場所へ運搬することなく複合材200を切断し、長尺状の複合材200を解体する際のコストを低減することができる。
【0044】
また、本実施形態の複合材切断装置100によれば、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が保持部60,70により保持され、基端部202が鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持することができる。そのため、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態の複合材切断装置100によれば、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が袋体61に収容されるため、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の複合材切断装置100によれば、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が落下した際の衝撃が、衝撃吸収部50により吸収される。そのため、切断部20により切断された複合材200の切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の複合材切断装置100によれば、切断部20により切断された複合材の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、アイボルト204の挿入穴に挿入されたワイヤ80が延びる傾斜方向IDに沿って傾斜方向IDに導かれ、設置面Sに到達する。切断された複合材200が設置面Sに到達する際に複合材200が設置面Sに衝突するが、複合材200がアイボルト204を介してワイヤ80に拘束されている。そのため、切断された複合材200が到達した後に設置面Sから受ける衝撃により飛散する危険を防止することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る複合材切断装置100Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0049】
図7は、本開示の第2実施形態に係る複合材切断装置100Aを示す正面図である。本実施形態の複合材切断装置100Aは、長尺状の複合材200Aを切断する装置である。長尺状の複合材200Aは、再生可能エネルギー発電に用いられる翼であって、例えば、風車や潮流発電などの翼である。本実施形態では、長尺状の複合材200Aは、設置面Sに設置される支柱301に固定されたナセルに取り付けられている。
【0050】
複合材200Aは、繊維基材を含む樹脂材料により形成されている。繊維基材や樹脂材料については、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態の複合材切断装置100Aは、複合材200Aを支持するハブ(支持部)10Aと、複合材200Aを切断する切断部20Aと、複合材200Aを固定する固定部30Aと、切断部20Aおよび固定部30Aを運搬するゴンドラ40Aと、衝撃吸収部50Aと、を備える。
【0052】
ハブ10Aは、ナセル302に回転可能に取り付けられており、複合材200Aの基端部(第1端部)201Aを鉛直方向VDの上方で支持し、かつ複合材200Aの長手方向LDの基端部(第2端部)202Aを鉛直方向VDの下方で設置面Sから浮遊した状態とする装置である。設置面Sは、複合材切断装置100Aが設置される面である。図7において、軸線Zは、鉛直方向VDに沿って延びる軸線である。軸線Zにおいて、先端部202Aの位置Z2は、設置面Sの位置Z0よりも上方の位置である。軸線Zにおいて、基端部201Aの位置Z1は、位置Z2よりも上方の位置である。
【0053】
切断部20Aは、ハブ10Aにより支持された複合材200Aの基端部201Aと先端部202Aとの間の切断位置CPで、複合材200Aを切断する装置である。切断部20Aは、ゴンドラ40Aに設置されている。切断部20Aが複合材200Aを切断する切断位置CPは、軸線Zにおいて基端部201Aの位置Z1と先端部202Aの位置Z2との間の位置である。
【0054】
図7に示すように、切断部20Aは、切断ワイヤ(図示略)を鉛直方向VDに直交する水平方向HDに沿って複合材200Aの切断位置CPへ押し当てることにより、複合材200Aを切断する。切断部20Aの構成は、第1実施形態の図2に示すものと同様である。
【0055】
固定部30Aは、切断部20Aにより複合材200Aを切断する際に、複合材200Aが移動しないように固定する装置である。固定部30Aは、ゴンドラ40Aに設置されている。固定部30Aは、例えば、複合材200Aの表面に吸着部材を接触させ、吸着部材に対して吸引力を付与することにより複合材200Aを一定の位置に固定する。
【0056】
ゴンドラ40Aは、ナセル302に対して鉛直方向VDに沿って移動可能に取り付けられる装置である。ゴンドラ40Aには、切断部20Aおよび固定部30Aを操作する作業者が乗り込むことができる。また、ゴンドラ40Aは、作業者が操作することにより、切断部20Aおよび固定部30Aを鉛直方向VDに沿った任意の位置に移動させることができる。したがって、切断部20Aは、複合材200Aの長手方向LDの任意の位置を切断位置CPとして設定することができる。
【0057】
衝撃吸収部50Aは、ハブ10Aにより支持された複合材200Aの下方に配置され、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が落下した際の衝撃を吸収する部材である。
【0058】
切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、重力により設置面Sに向けて鉛直方向VDに沿って下方に落下する。落下した複合材200Aの部分は、衝撃吸収部50Aに接触する際に、落下による衝撃が吸収される。そのため、落下した複合材200Aの部分は、衝撃吸収部50Aが配置されていない場合に比べ、設置面Sに衝撃する際の音が低減されるとともに設置面Sに接触した際に複合材200Aの破片が飛散することが防止される。
【0059】
ここで、本実施形態の複合材切断装置100Aの第1変形例について説明する。図8は、図7に示す複合材切断装置100Aの第1変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100Aは、衝撃吸収部50Aを備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100Aは、複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する保持部60Aを備えている。
【0060】
第1変形例の複合材切断装置100Aが備える保持部60Aは、複合材200Aの先端部202Aが鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持するように、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する装置である。図8に示すように、保持部60Aは、袋体61Aと、支柱64Aに対して支点64Aaを中心に回転するアーム62Aと、アーム62Aの先端に固定されるワイヤ巻取機構63Aと、を有する。
【0061】
袋体61Aは、複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を内部に収容して保持する袋状の部材である。ワイヤ巻取機構63Aは、一対のワイヤ63Aa,63Abの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ63Aa,63Abの一端は、それぞれ袋体61Aの上端部に固定されている。
【0062】
ワイヤ巻取機構63Aは、一対のワイヤ63Aa,63Abを巻き出すことにより、切断位置CPで切断された複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。これにより、切断位置CPで切断された複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を、重力により落下させることなく安全に設置面Sに降ろすことができる。
【0063】
次に、本実施形態の複合材切断装置100Aの第2変形例について説明する。図9は、図7に示す複合材切断装置100Aの第2変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100Aは、衝撃吸収部50Aを備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100Aは、複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する保持部70Aを備えている。
【0064】
第2変形例の複合材切断装置100が備える保持部70Aは、複合材200Aの先端部202Aが鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持するように、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を保持する装置である。図9に示すように、保持部70Aは、支柱73Aに対して支点73Aaを中心に回転するアーム71Aと、アーム71Aの先端に固定されるワイヤ巻取機構72Aと、を有する。
【0065】
ワイヤ巻取機構72Aは、一対のワイヤ(吊り下げ部材)72Aa,72Abの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ72Aa,72Abの一端は、それぞれ複合材200Aの切断位置CPよりも下方の部分に固定されたアイボルト203Aに取り付けられている。保持部70Aは、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分を、鉛直方向VDの上方から吊り下げられた一対のワイヤ72Aa,72Abに固定して保持する。
【0066】
ワイヤ巻取機構72Aは、一対のワイヤ72Aa,72Abを巻き出すことにより、切断位置CPで切断された複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。これにより、切断位置CPで切断された複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を、重力により落下させることなく安全に設置面Sに降ろすことができる。図9に点線で示す複合材200Aは、設置面Sに降ろされた複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を示す。
【0067】
次に、本実施形態の複合材切断装置100Aの第3変形例について説明する。図10は、図7に示す複合材切断装置100Aの第3変形例を示す正面図である。本変形例の複合材切断装置100Aは、衝撃吸収部50Aを備えていない。一方、本変形例の複合材切断装置100Aは、ワイヤ(線状部材)80Aと、複数のアイボルト(挿入部材)204Aと、を備える。
【0068】
ワイヤ80Aは、鉛直方向VDから傾斜した傾斜方向IDに延びるとともに支持部10が設置される設置面Sに取り付けられたアイボルト205に一端が固定された金属製の線状部材である。ワイヤ80Aの他端は、支柱301に取り付けられたアイボルト205に固定されている。
【0069】
複数のアイボルト204Aは、複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方および上方の双方に固定されるとともにワイヤ80Aが挿入される挿入穴が形成された部材である。図10に示すように、複合材200Aに固定されるアイボルト204Aには、ワイヤ80Aが挿入されている。
【0070】
切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、ワイヤ80Aに沿って設置面Sに向けて傾斜方向IDに導かれる。図10に点線で示す複合材200Aは、設置面Sに降ろされた複合材200Aの切断位置CPの下方の部分を示す。
【0071】
以上説明した本実施形態の複合材切断装置100Aが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の複合材切断装置100Aによれば、例えば、長尺状の風車や潮流発電などの翼等の複合材200Aを解体する際に、ハブ10Aが、長尺状の複合材200Aの基端部201Aを鉛直方向VDの上方で支持し、かつ先端部202Aを鉛直方向VDの下方で浮遊した状態とすることができる。そして、切断部20Aが、ハブ10Aにより支持された複合材の基端部201Aと先端部202Aとの間の切断位置CPで複合材200Aを切断する。これにより、長尺状の複合材200Aを解体場所へ運搬することなく複合材200Aを切断し、長尺状の複合材200Aを解体する際のコストを低減することができる。
【0072】
また、本実施形態の複合材切断装置100Aによれば、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が保持部60A,70Aにより保持され、先端部202Aが鉛直方向VDの下方で浮遊した状態を維持することができる。そのため、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態の複合材切断装置100Aによれば、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が袋体61Aに収容されるため、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の複合材切断装置100Aによれば、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分が落下した際の衝撃が、衝撃吸収部50Aにより吸収される。そのため、切断部20Aにより切断された複合材200Aの切断位置CPよりも下方の部分が落下することによる危険を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の複合材切断装置100Aによれば、切断部20Aにより切断された複合材の切断位置CPよりも鉛直方向VDの下方の部分は、アイボルト204Aの挿入穴に挿入されたワイヤ80Aが延びる傾斜方向IDに沿って傾斜方向IDに導かれ、設置面Sに到達する。切断された複合材200Aが設置面Sに到達する際に複合材200Aが設置面Sに衝突するが、複合材200Aがアイボルト204Aを介してワイヤ80Aに拘束されている。そのため、切断された複合材200Aが到達した後に設置面Sから受ける衝撃により飛散する危険を防止することができる。
【0076】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る複合材切断装置100Bについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0077】
図11は、本開示の第3実施形態に係る複合材切断装置100Bを示す正面図である。本実施形態の複合材切断装置100Bは、長尺状の複合材200Bを切断する装置である。長尺状の複合材200Bは、例えば、航空機の主翼であり、航空機の胴体から取り外されたものである。
【0078】
図11に示すように、本実施形態の複合材切断装置100Bは、複合材200Bを支持する支持部10Bと、複合材200Bを切断する切断部20Bと、複合材200Bを固定する固定部30Bと、切断部20Bおよび固定部30Bを運搬するゴンドラ40Bと、粉砕装置90Bと、ベルトコンベア95Bと、を備える。
【0079】
支持部10Bは、複合材200Bの先端部(第1端部)201Bを鉛直方向VDの上方で支持し、かつ複合材200Bの長手方向LDの基端部(第2端部)202Bを鉛直方向VDの下方で設置面Sから浮遊した状態とする装置である。設置面Sは、複合材切断装置100Bが設置される面である。図11において、軸線Zは、鉛直方向VDに沿って延びる軸線である。軸線Zにおいて、基端部202Bの位置Z2は、設置面Sの位置Z0よりも上方の位置である。軸線Zにおいて、先端部201Bの位置Z1は、位置Z2よりも上方の位置である。
【0080】
支持部10Bは、設置面Sに設置されるベース部11Bと、ベース部11Bに固定されるとともに鉛直方向VDに沿って延びる支柱12Bと、支柱12Bに対して支点12Baを中心に回転するアーム13Bと、アーム13Bの先端に固定されるワイヤ巻取機構14Bと、を有する。ワイヤ巻取機構14Bは、一対のワイヤ14Ba,14Bbの巻き取りおよび巻き出しが可能な機構である。一対のワイヤ14Ba,14Bbの一端は、それぞれ複合材200Bの先端部201Bに取り付けられた一対のアイボルト203Bに固定されている。
【0081】
ワイヤ巻取機構14Bは、一対のワイヤ14Ba,14Bbを巻き取ることにより、複合材200Bを支持しながら鉛直方向VDに沿って下方から上方へ移動させることができる。同様に、ワイヤ巻取機構14Bは、一対のワイヤ14Ba,14Bbを巻き出すことにより、複合材200Bを支持しながら鉛直方向VDに沿って上方から下方へ移動させることができる。
【0082】
切断部20Bは、支持部10Bにより支持された複合材200Bの先端部201Bと基端部202Bとの間の切断位置CPで、複合材200Bを切断する装置である。切断部20Bは、ゴンドラ40Bに設置されている。切断部20Bが複合材200Bを切断する切断位置CPは、軸線Zにおいて先端部201Bの位置Z1と基端部202Bの位置Z2との間の位置である。
【0083】
図11に示すように、切断部20Bは、切断ワイヤ(切断部材)21B(図12参照)を鉛直方向VDに直交する水平方向HDに沿って複合材200Bの切断位置CPへ押し当てることにより、複合材200Bを切断する。図12に示すように、切断部20Bは、切断ワイヤ21Bと、主プーリ22Bと、複数の従プーリ23Bと、一対のレール24Bと、一対の駆動機構25Bと、を有する。
【0084】
切断ワイヤ21Bは、主プーリ22Bと、複数の従プーリ23Bに掛けまわされている。主プーリ22Bをモータ(図示略)で回転させることにより、主プーリ22Bおよび複数の従プーリ23Bに掛けまわされた切断ワイヤ21Bを回転させる。一対のレール24Bは、水平方向HDに沿って平行に延びるとともに切断ワイヤ21Bと主プーリ22Bと複数の従プーリ23Bとが一体となった切断機構を支持するものである。
【0085】
一対の駆動機構25Bは、切断機構を水平方向HDに沿って移動させる駆動力を発生する装置である。一対の駆動機構25Bにより駆動力が付与された切断機構は、水平方向HDに沿って複合材200Bへ近づく方向に移動することにより、切断ワイヤ21Bを複合材200Bに押し当てる。切断機構は、複合材200Bの切断位置CPを完全に切断すると、図11に点線で示す位置に到達する。一対の駆動機構25Bは、複合材200Bの切断位置CPを完全に切断した後に、切断機構を退避させる。
【0086】
本実施形態の切断部20Bは、水平方向HDの複数箇所において切断ワイヤ21Bが通過するように、切断ワイヤ21Bが蛇行する形状に配置されている。そのため、切断部20Bを図12に示す状態で鉛直方向VDに沿って下方から上方へ移動させると、複合材200Bが水平方向HDの複数の位置で鉛直方向VDに沿って切断される。
【0087】
そして、複合材200Bが水平方向HDの複数の位置で鉛直方向VDに沿って切断された状態で、切断部20Bを水平方向HDに沿って移動させると、水平方向HDの複数の位置で鉛直方向VDに沿って切断された部分が複数の小片となり、粉砕装置90Bに落下する。切断部20は、小片のサイズが、粉砕装置90Bが粉砕可能な最大サイズ以下のサイズなるように複合材200Bを切断する。
【0088】
切断部20Bは、切断ワイヤ21Bを水平方向HDおよび鉛直方向VDの双方に沿って移動させることにより、複合材200Bを粉砕装置90Bが粉砕可能な最大サイズ以下の断片に分割する。具体的には、切断部20Bは、図11に示すように、切断部20Bの先端の位置を以下の順で移動させる。
【0089】
位置P0から位置P1へ水平方向HDに沿って移動させ、その後に鉛直方向VDに沿って位置P1から位置P2へ移動させる。位置P2から位置P3へ水平方向HDに沿って移動させる。位置P2から位置P3へ移動する際に、複合材200Bの小片が粉砕装置90Bへ落下する。
【0090】
位置P3から位置P5への移動は、位置P0から位置P3への移動と同様であり、位置P3,位置P2,位置P4,位置P5の順である。その後は、位置P5,位置P4,位置P6,位置P7,位置P6,位置P8,位置P9,位置P8,位置P10,位置P11の順に、切断部20Bの先端の位置を水平方向HDおよび鉛直方向VDに沿って移動させる。
【0091】
固定部30Bは、切断部20Bにより複合材200Bを切断する際に、複合材200Bが移動しないように固定する装置である。固定部30Bは、ゴンドラ40Bに設置されている。固定部30Bは、例えば、複合材200Bの表面に吸着部材を接触させ、吸着部材に対して吸引力を付与することにより複合材200Bを一定の位置に固定する。
【0092】
ゴンドラ40Bは、支柱12Bに対して鉛直方向VDに沿って移動可能に取り付けられる装置である。ゴンドラ40Bには、切断部20Bおよび固定部30Bを操作する作業者が乗り込むことができる。また、ゴンドラ40Bは、作業者が操作することにより、切断部20Bおよび固定部30Bを鉛直方向VDに沿った任意の位置に移動させることができる。したがって、切断部20Bは、複合材200Bの長手方向LDの任意の位置を切断位置CPとして設定することができる。
【0093】
粉砕装置90Bは、切断部20Bにより切断された複合材200Bを粉砕する装置である。粉砕装置90Bにより粉砕された複合材200Bは、ベルトコンベア95Bに供給され、ベルトコンベア95Bにより廃棄場所(図示略)まで搬送される。
【0094】
本実施形態の複合材切断装置100Bによれば、切断ワイヤ21Bを水平方向HDおよび鉛直方向VDの双方に沿って移動させることにより複合材200Bを所定サイズ以下(例えば、粉砕装置90Bが粉砕可能な最大サイズ以下)に分割することにより、切断された複合材200Bの運搬コストを低減することができる。
【0095】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、切断部20,20A,20Bとして、切断ワイヤ21,21A,21Bを用いる装置を採用することとしたが、他の態様であってもよい。例えば、切断した際の切粉の発生を抑制するために湿式ワイヤーソーを採用してもよい。また、レーザー切断機やウォータジェット式切断機を採用しても良い。
【0096】
以上の説明において、切断部20,20A,20Bは、作業者が操作するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、切断部20,20A,20Bを、制御装置(図示略)から伝達される制御信号により制御するようにしてもよい。この場合、ゴンドラ40,40A,40Bに切断位置CPを撮像するカメラを取り付け、制御装置がカメラから得られる画像に基づいて切断部20,20A,20Bを制御するのが好ましい。
【0097】
以上説明した本実施形態に記載の複合材切断装置は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る複合材切断装置(100)は、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材(200)の長手方向(LD)の第1端部(201)を鉛直方向(VD)の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部(202)を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持部(10)と、前記支持部により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置(CP)で前記複合材を切断する切断部(20)と、を備える。
【0098】
本開示に係る複合材切断装置によれば、例えば、長尺状の複合材を解体するために他の部材から取り外す際に、支持部が、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ第2端部を鉛直方向の下方で浮遊した状態とすることができる。そして、切断部が、支持部により支持された複合材の第1端部と第2端部との間の切断位置で複合材を切断する。これにより、長尺状の複合材を解体場所へ運搬することなく複合材を切断し、長尺状の複合材を解体する際のコストを低減することができる。
【0099】
本開示に係る複合材切断装置においては、前記第2端部が前記鉛直方向の下方で浮遊した状態を維持するように、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を保持する保持部(60,70)を備える構成としてもよい。
本構成の複合材切断装置によれば、切断部により切断された複合材の切断位置よりも鉛直方向の下方の部分が保持部により保持され、第2端部が鉛直方向の下方で浮遊した状態を維持することができる。そのため、切断部により切断された複合材の切断位置よりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0100】
上記構成の複合材切断装置において、前記保持部は、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を、前記鉛直方向の上方から吊り下げられた袋体(61)に収容して保持する態様としてもよい。
【0101】
本態様の複合材切断装置によれば、切断部により切断された複合材の切断位置よりも鉛直方向の下方の部分が袋体に収容されるため、切断部により切断された複合材の切断位置よりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0102】
上記構成の複合材切断装置において、前記保持部は、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分を、前記鉛直方向の上方から吊り下げられた吊り下げ部材に固定して保持する態様としてもよい。
【0103】
本態様の複合材切断装置によれば、切断部により切断された複合材の切断位置よりも鉛直方向の下方の部分が吊り下げ部材に固定されるため、切断部により切断された複合材の切断位置よりも下方の部分が落下することによる危険を防止することができる。
【0104】
本開示に係る複合材切断装置においては、前記支持部により支持された前記複合材(200)の下方に配置され、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分が落下した際の衝撃を吸収する衝撃吸収部(50)を備える構成としてもよい。
【0105】
本構成の複合材切断装置によれば、切断部により切断された複合材の切断位置よりも鉛直方向の下方の部分が落下した際の衝撃が、衝撃吸収部により吸収される。そのため、切断部により切断された複合材の切断位置よりも下方の部分が落下することによる危険を抑制することができる。
【0106】
本開示に係る複合材切断装置においては、前記鉛直方向から傾斜した傾斜方向に延びるとともに前記支持部が設置される設置面に一端が固定された線状部材と、前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方に固定されるとともに前記線状部材が挿入される挿入穴が形成された挿入部材と、を備え、前記切断部により切断された前記複合材の前記切断位置よりも前記鉛直方向の下方の部分は、前記線状部材に沿って前記設置面に向けて前記傾斜方向に導かれる構成としてもよい。
【0107】
本構成の複合材切断装置によれば、切断部により切断された複合材の切断位置よりも鉛直方向の下方の部分は、挿入部材の挿入穴に挿入された線状部材が延びる傾斜方向に沿って傾斜方向に導かれ、設置面に到達する。切断された複合材が設置面に到達する際に複合材が設置面に衝突するが、複合材が挿入部材を介して線状部材に拘束されている。そのため、切断された複合材が到達した後に設置面から受ける衝撃により飛散する危険を防止することができる。
【0108】
本開示に係る複合材切断装置において、前記切断部は、切断部材(20)を水平方向(HD)に沿って前記複合材の前記切断位置へ押し当てることにより、前記複合材を切断する構成としてもよい。
本構成の複合材切断装置によれば、切断部材を水平方向に沿って複合材の切断位置に押し当てることにより、複合材を切断することができる。
【0109】
上記構成の複合材切断装置において、前記切断部は、前記切断部材を前記水平方向および前記鉛直方向の双方に沿って移動させることにより、前記複合材を所定サイズ以下の断片に分割する態様としてもよい。
本態様の複合材切断装置によれば、切断部材を水平方向および鉛直方向の双方に沿って移動させることにより複合材を所定サイズ以下(例えば、粉砕装置が粉砕可能な最大サイズ以下)に分割することにより、切断された複合材の運搬コストを低減することができる。
【0110】
以上説明した本実施形態に記載の複合材切断方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る複合材切断方法は、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ前記複合材の前記長手方向の第2端部を前記鉛直方向の下方で浮遊した状態とする支持工程(S101)と、前記支持工程により支持された前記複合材の前記第1端部と前記第2端部との間の切断位置で前記複合材を切断する切断工程(S103)と、を備える。
【0111】
本開示に係る複合材切断方法によれば、例えば、長尺状の複合材を解体するために他の部材から取り外す際に、支持工程が、繊維基材を含む樹脂材料により形成される長尺状の複合材の第1端部を鉛直方向の上方で支持し、かつ第2端部を鉛直方向の下方で浮遊した状態とすることができる。そして、切断工程が、支持部により支持された複合材の第1端部と第2端部との間の切断位置で複合材を切断する。これにより、長尺状の複合材を解体場所へ運搬することなく複合材を切断し、長尺状の複合材を解体する際のコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0112】
10,10B 支持部
10A ハブ(支持部)
11,11B ベース部
12,12B 支柱
13,13B アーム
14,14B ワイヤ巻取機構
20,20A,20B 切断部
21,21A,21B 切断ワイヤ(切断部材)
30,30A,30B 固定部
40,40A,40B ゴンドラ
50,50A 衝撃吸収部
60,60A 保持部
61,61A 袋体
62,62A アーム
63,63A ワイヤ巻取機構
64A 支柱
70,70A 保持部
71,71A アーム
72,72A ワイヤ巻取機構
80,80A ワイヤ(線状部材)
90B 粉砕装置
95B ベルトコンベア
100,100A,100B 複合材切断装置
200,200A,200B 複合材
201,201B 先端部(第1端部)
201A 基端部(第1端部)
202,202B 基端部(第2端部)
202A 先端部(第2端部)
203,203A,203B アイボルト
204,204A アイボルト
301 支柱
302 ナセル
CP 切断位置
HD 水平方向
LD 長手方向
S 設置面
VD 鉛直方向
Z 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12