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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175326
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】体支持装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20221117BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61F5/02 N
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081637
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】513070004
【氏名又は名称】サンコロナ小田株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520179822
【氏名又は名称】アルケリス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 俊暁
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 高之
(72)【発明者】
【氏名】池端 正一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
【テーマコード(参考)】
3C707
4C098
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK45
4C098BB11
4C098BC05
4C098BC42
(57)【要約】
【課題】体支持装置の支持部材を、カーボン素材により形成することにより、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させる。
【解決手段】体支持装置100は、右大腿91に沿う第1フレーム10、右下腿92に沿う第2フレーム20、右足93に対応する接地部30、第1フレーム10と第2フレーム20とを回動可能に連結する第1回動部40、第2フレーム20と接地部30とを回動可能に連結する第2回動部50、第1及び第2フレーム10,20に取り付けられて右脚90の周囲に沿う湾曲部62,72を有する脚部支持部材1を備え、脚部支持部材1は、炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させた積層体を含む成形体であり、一般肉厚に対して2倍以上の厚みを有する高剛性部65,75を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の大腿に沿って延びる、第1フレームと、
前記装着者の下腿に沿って延びる、第2フレームと、
前記装着者の足に対応して位置する、接地部と、
前記第1フレームと前記第2フレームとを回動可能に連結する、第1回動部と、
前記第2フレームと前記接地部とを回動可能に連結する、第2回動部と、
前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられて、前記装着者の脚部の周囲に沿って延びる湾曲部を有する、脚部支持部材と
を備え、
前記脚部支持部材は、
炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させた積層体を含む成形体であって、
一般肉厚に対して2倍以上の厚みを有する高剛性部を有している、体支持装置。
【請求項2】
前記高剛性部は、前記脚部支持部材について、装着者から負荷される荷重F(N)に対する変位X(cm)を弾性係数k(N/cm)を用いて数式F=kXで表したとき、前記弾性係数kが1000(N/cm)以上2000(N/cm)以下となるように形成されている、
請求項1に記載の体支持装置。
【請求項3】
前記脚部支持部材は、
前記湾曲部の端部に連続して、前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられる、被取付部と、
前記湾曲部から前記装着者の上体側へ突出した、突出部と
をさらに有しており、
前記脚部支持部材のうち、前記突出部の前記上体側の縁部のうち前記装着者からの荷重を最も高く受ける荷重入力部位と、前記湾曲部のうち、前記被取付部との境界部上において前記装着者の前記足側に位置する足側端部とを、前記湾曲部に沿って接続する仮想線に対して、前記湾曲部及び前記突出部のうち、前記上体側に位置する部分を上体側部分としたとき、
前記高剛性部は、前記上体側部分の略全体に構成されている、
請求項1又は2に記載の体支持装置。
【請求項4】
前記湾曲部の端部に連続して、前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられる、被取付部と、
前記湾曲部から前記装着者の上体側へ突出した、突出部と
をさらに有しており、
前記高剛性部は、前記湾曲部及び前記突出部の外表面にわたって前記装着者の前記脚部とは反対側に突出するリブ状に設けられており、
前記高剛性部は、前記突出部の前記上体側の縁部のうち前記装着者からの荷重を最も高く受ける荷重入力部位と、前記湾曲部のうち前記被取付部との境界部上において前記装着者の前記上体側に位置する上体側端部とを接続している、
請求項1~3のいずれか1つに記載の体支持装置。
【請求項5】
前記高剛性部は、前記湾曲部の内表面から前記装着者の前記脚部へ向かってハニカム状断面で突出するように設けられている、
請求項1~4のいずれか1つに記載の体支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装着者の大腿裏に装着される第1支持部と、装着者の脛に装着される第2支持部と、装着者の足近傍に位置する接地部と、第1支持部と第2維持部とを回動可能に連結する第1回動部と、第2支持部と接地部とを回動可能に連結する第2回動部とを有する体支持装置が開示されている。この第1支持部及び第2支持部はカーボン素材により形成されており、これにより、第1支持部及び第2支持部を、軽量でありながら強度を保ちつつしなりを有するように構成することが企図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/110929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボン素材(炭素繊維複合材料)として、一般的に連続した炭素繊維からなる炭素繊維織物を使用することが考えられる。炭素繊維織物は、繊維の延在方向における強度は優れる一方で、他の方向における強度が劣り、等方性がない。また、炭素繊維織物は、成形性が悪く、複雑な形状を成形することができず且つ成形速度が遅いため、生産性に課題がある。したがって、カーボン素材を用いて第1支持部及び第2支持部を構成しつつ、等方性と生産性とを向上させる観点で、特許文献1の体支持装置をさらに改良する余地がある。
【0005】
本発明は、体支持装置の支持部材を、カーボン素材により形成することにより、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
装着者の大腿に沿って延びる、第1フレームと、
前記装着者の下腿に沿って延びる、第2フレームと、
前記装着者の足に対応して位置する、接地部と、
前記第1フレームと前記第2フレームとを回動可能に連結する、第1回動部と、
前記第2フレームと前記接地部とを回動可能に連結する、第2回動部と、
前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられて、前記装着者の脚部の周囲に沿って延びる湾曲部を有する、脚部支持部材と
を備え、
前記脚部支持部材は、
炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させた積層体を含む成形体であって、
一般肉厚に対して2倍以上の厚みを有する高剛性部を有している、体支持装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、脚部支持部材は、炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させた積層体を含む成型体で構成されている。すなわち、脚部支持部材には非連続の炭素繊維がランダムに配置されているので、炭素繊維を用いながら等方性を高めやすく物性が安定しやすい。
【0008】
ここで、非連続の炭素繊維を含む積層体は、連続した炭素繊維を含む炭素繊維織物に比して一般に強度が劣り撓みも大きくなりやすい。しかしながら、上記積層体は、成形性が炭素繊維織物に比して優れているため、炭素繊維を用いながら、積層体を、例えばプレス成型により、一般肉厚部と高剛性部とを一体的に成形できる。よって、脚部支持部材は、高剛性部によって剛性が高められるので、耐久性と適度な撓み性とを確保できる。
【0009】
なお、非連続の炭素繊維を含む材料を用いて射出成型することにより、脚部支持部材を成形することも考えられる。しかしながら、この場合、本発明のようにランダムに積層されたシート状部材からプレス成型したときに得られる不連続の炭素繊維が2次元平面状にランダムに配置された状態を維持することができず、等方性が低下する。
【0010】
したがって、脚部支持部材を、非連続の炭素繊維を含む積層体から高剛性部を有するように成形することによって、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させることができる。
【0011】
前記高剛性部は、前記脚部支持部材について、装着者から負荷される荷重F(N)に対する変位X(cm)を弾性係数k(N/cm)を用いて数式F=kXで表したとき、前記弾性係数kが1000(N/cm)以上2000(N/cm)以下となるように形成されていてもよい。
【0012】
本構成によれば、脚部支持部材は、弾性係数kが1000N/cm以上2000N/cm以下となるような撓み性を有しているので、装着者から負荷される荷重に対する過度の歪の発生を防止しつつ、適度に撓ませることができ装着者の脚部に良好なフィット感を与えることができる。
【0013】
弾性係数kが1000N/cm未満であると、脚部支持部材に過度な歪が生じやすく破損するおそれがある。弾性係数kが2000N/cmを超過すると、脚部支持部材は撓み性が不足し、装着者の脚部の動きに追従するように変形しにくくフィットしにくい。したがって、高剛性部を、脚部支持部材が適度な弾性係数kを有するように形成することによって、脚部支持部材の良好なフィット性と耐久性とを確保することができる。
【0014】
前記脚部支持部材は、
前記湾曲部の端部に連続して、前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられる、被取付部と、
前記湾曲部から前記装着者の上体側へ突出した、突出部と
をさらに有しており、
前記脚部支持部材のうち、前記突出部の前記上体側の縁部のうち前記装着者からの荷重を最も高く受ける荷重入力部位と、前記湾曲部のうち、前記被取付部との境界部上において前記装着者の前記足側に位置する足側端部とを、前記湾曲部に沿って接続する仮想線に対して、前記湾曲部及び前記突出部のうち、前記上体側に位置する部分を上体側部分としたとき、
前記高剛性部は、前記上体側部分の略全体に構成されていてもよい。
【0015】
脚部支持部材は、突出部のうち荷重入力部位を力点とし被取付部側を支点として変形するが、突出部が被取付部よりも上体側に位置しているため、特に上体側部分において変形が大きくなりやすい。
【0016】
本構成のように、脚部支持部材のうち変形が大きくなりやすい上体側部分を足側部分より厚くすることによって、脚部支持部材を、装着者から負荷される荷重に対して抗するように効率的に剛性を増大させることができる。よって、脚部支持部材を、全体的に厚みを増大させる場合に比して、重量及びコストの増大を抑制しつつ、剛性を効率的に向上させることができる。
【0017】
また、前記湾曲部の端部に連続して、前記第1フレーム又は前記第2フレームに取り付けられる、被取付部と、
前記湾曲部から前記装着者の上体側へ突出した、突出部と
をさらに有しており、
前記高剛性部は、前記湾曲部及び前記突出部の外表面にわたって前記装着者の前記脚部とは反対側に突出するリブ状に設けられており、
前記高剛性部は、前記突出部の前記上体側の縁部のうち前記装着者からの荷重を最も高く受ける荷重入力部位と、前記湾曲部のうち前記被取付部との境界部上において前記装着者の前記上体側に位置する上体側端部とを接続していてもよい。
【0018】
脚部支持部材は、上体側部分のなかでも、被取付部との境界部上の突出部側に位置しておりこのため大きく変形する突出部と固定された被取付部との境界となる上体側端部の周辺において特に大きく歪が生じやすい。
【0019】
したがって、本構成のように、高剛性部を、荷重入力部位と上体側端部とを湾曲部及び突出部に沿って接続するリブ状に設けることによって、脚部支持部材を、装着者から負荷される荷重に対して抗するように、より効率的に剛性を増大させることができる。よって、脚部支持部材を、重量及びコストの増大をさらに抑制しつつ剛性を向上させることができる。
【0020】
また、前記高剛性部は、前記湾曲部の内表面から前記装着者の前記脚部へ向かってハニカム状断面で突出するように設けられていてもよい。
【0021】
本構成によれば、脚部支持部材は、ハニカム状突部によって、重量の過度な増大を抑制しながら肉厚を増大させることができる。これによって、脚部支持部材を、適度な撓み性を確保しつつ剛性を向上させることができる。また、ハニカム状突部の頂面において装着者の脚部に接触するので、ハニカム状突部によるフィット感の悪化が防止される。さらに、ハニカム状突部によって、脚部支持部材の美観性を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、体支持装置の支持部材を、炭素繊維複合材料により形成することにより、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る体支持装置の側面図。
図2】体支持装置の正面図。
図3】第1支持部材の斜視図。
図4】第2支持部材の斜視図。
図5図4のV-V線に沿った第2支持部材の断面図。
図6図4のVI-VI線に沿った第2支持部材の断面図。
図7】変形例に係る第1支持部材の斜視図。
図8】変形例に係る第2支持部材の斜視図。
図9図7のIX-IX線に沿った第1支持部材の断面図。
図10図8のX-X線に沿った第2支持部材の断面図。
図11】さらなる変形例に係る第1支持部材の斜視図。
図12】さらなる変形例に係る第2支持部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る体支持装置を添付図面にしたがって説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係る体支持装置100の左側面図であり、図2は体支持装置100の正面図である。なお、図1図2には、左右一対の体支持装置のうち右脚用の体支持装置100が示されている。図示は省略するが、左脚用の体支持装置は、右脚用の体支持装置100に対して左右対称に構成されている。以下、右脚用の体支持装置100について説明する。なお、図1,2において、装着者の右脚90が二点鎖線で示されている。
【0026】
また、以下の説明では、体支持装置100及び各部材の各方向を、体支持装置100を着用した起立状態の装着者から見た方向として説明する。
【0027】
図1図2に示されるように、体支持装置100は、装着者の右大腿91の内側に沿って上下方向に延びる第1フレーム10と、装着者の右下腿92の内側に沿って上下方向に延びる第2フレーム20と、装着者の右足93に対応して位置する接地部30と、第1フレーム10と第2フレーム20とを回動可能に連結する第1回動部40と、第2フレーム20と接地部30とを回動可能に連結する第2回動部50と、装着者の右脚90を支持する脚部支持部材1とを備えている。
【0028】
脚部支持部材1は、第1フレーム10に取り付けられて装着者の右大腿91を後方から支持する第1支持部材60と、第2フレーム20に取り付けられて装着者の右脛94を前方から支持する第2支持部材70とを含んでいる。
【0029】
第1フレーム10は、装着者の右大腿91の内側(左側)に隣接しており、右膝95の近傍に位置する下端11から右大腿91の上下方向における略中央に位置する上端12まで上方に延びている。第1フレーム10は、後端面13に第1支持部材60が前方へ差し込まれて取り付けられる第1取付部14を備えている。また、第1フレーム10は、前端面15の上部に、後述する第1サポート19が係止される第1係止部材16が取り付けられている。
【0030】
第2フレーム20は、装着者の右下腿92の内側(左側)に隣接しており、右踝96の近傍に位置する下端21から右膝95の近傍に位置する上端22まで上方に延びている。第2フレーム20は、前端面23に第2支持部材70が後方へ差し込まれて取り付けられる第2取付部24を備えている。また、第2フレーム20は、後端面25の上方よりの位置に、後述する第2サポート29が係止される第2係止部材26が取り付けられている。
【0031】
接地部30は、装着者の右足93の近傍に位置している。接地部30は、装着者の右踝96の近傍に位置する上端31から下方に延びている。接地部30は、下端部32が装着者の右足93の踵部分93aの近傍に位置する後端33と爪先部分93bの近傍に位置する前端34との間を前後方向に延びている。また、接地部30は、装着者の右足93の甲部分93cに係止される第3サポート39を有している。
【0032】
第1回動部40は、第1フレーム10の下端11と、第2フレーム20の上端22とを、左右方向に延びる第1回動軸線O1周りに回動可能に連結している。第1回動部40は、第1フレーム10と第2フレーム20との間の回動を所定の角度範囲に規制する。具体的には、第1回動部40は、第1フレーム10と第2フレーム20とが後方において近づく方向の回動を、装着者がある程度右膝95を曲げたときの所定の角度で規制する。
【0033】
第2回動部50は、第2フレーム20の下端21と、接地部30の上端31とを、左右方向に延びる第2回動軸線O2周りに回動可能に連結している。第2回動部50は、第1回動部40とは異なり、第2フレーム20と接地部30との間の回動を所定の角度範囲に規制せずに、これら両者を互いに回動自在に連結している。
【0034】
第1回動部40は装着者の右膝95の近傍に位置しており、第2回動部50は装着者の右踝96(右足首)の近傍に位置している。第1回動部40において、第1フレーム10及び第2フレーム20の間の、互いに近づく方向の角度が所定の角度に規制されるので、右膝95を曲げるときに関節が所定の角度に固定されるので、装着者は所望の姿勢を安定して維持しやすい。
【0035】
第1サポート19は、上下方向に所定幅を有するバンド状部材であって、弾性又は伸縮性を有している。図3を併せて参照して、第1サポート19は、第1支持部材60のスリット62aに係止される一端19aから、右大腿91の周囲を後方から外側を通って前方へ周回しており、他端19bにおいて第1係止部材16に係止されている。なお、図示は省略するが、第1支持部材60に、スリット62aに換えて、第1サポート19がワンタッチで着脱できるワンタッチバックルを取り付けて、該ワンタッチバックルに第1サポート19の一端19aを係止するようにしてもよい。
【0036】
第2サポート29は、上下方向に所定幅を有するバンド状部材であって、弾性又は伸縮性を有している。図4を併せて参照して、第2サポート29は、第2支持部材70に取り付けられた第3係止部材27に係止される一端29aから、右下腿92の周囲を前方から外側を通って後方へ周回しており、他端29bにおいて第2係止部材26に係止されている。なお、図示は省略するが、第2支持部材70に、第3係止部材27に換えて、第2サポート29がワンタッチで着脱できるワンタッチバックルを取り付けて、該ワンタッチバックルに第2サポート29の一端29aを係止するようにしてもよい。
【0037】
次に、第1支持部材60及び第2支持部材70について詳述する。第1支持部材60及び第2支持部材70は、炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させたカーボン素材(炭素繊維複合材料)を、プレス成型することによって形成された成形体である。
【0038】
前記カーボン素材は、炭素繊維原糸を、極薄(例えば厚さ30μ)に拡繊(開繊)し、これに熱可塑性樹脂を含侵させて、所定の繊維含有率(例えば40%)とするボイドレス極薄UDテープ(例えば厚さ35μ)を形成し、これを所定長さ(例えば、100mm以下)に切断したものを、等方性を有するように各炭素繊維の向きがランダムに均一(例えば、変動係数CVが5%以下)に延びるように積層させることによってシート状に形成される。
【0039】
例えば、前記カーボン素材として、サンコロナ小田株式会社製のフレックスカーボン(Flexcarbon:登録商標)のグレードFlexcarbon26L40VF(繊維長26mm)又はグレードFlexcarbon13L40VF(繊維長13mm)を使用できる。
【0040】
図3は、第1支持部材60を後方内側(左側)から見た斜視図である。図3に示されるように、第1支持部材60は、上記カーボン素材をプレス成型することによって、第1被取付部61と、第1湾曲部62と、第1突出部63とが一体的に成型されている。
【0041】
第1被取付部61は、前後方向及び上下平行に平行な面内を、所定の上下方向幅において前後方向に延びる板状部分であって、第1フレーム10の第1取付部14(図1参照)に対して後方から差し込まれて例えば不図示の締結手段によって取り付けられている。
【0042】
第1湾曲部62は、第1被取付部61の後端部から後方に向かって外側(右側)に湾曲して、装着者の右大腿91の後方に延びている。第1湾曲部62の右端部には、上下方向に延びるスリット62aが形成されている。スリット62aには、第1サポート19の一端19aが係止される。
【0043】
第1突出部63は、第1湾曲部62の上部に連続して、装着者の右大腿91の後方を上方に延びている。第1突出部63は、上縁部に後方に湾曲した第1鍔部64を有している。
【0044】
ここで、体支持装置100は、第1フレーム10と第2フレーム20とが第1回動部40によって互いに近づく方向の回動が所定の角度位置で規定され、このとき、第1支持部材60は、第1鍔部64において装着者の右大腿91の裏に最も強く当接する。より具体的には、第1鍔部64のうち、最も後方に位置する後端部64aにおいて、装着者の右大腿91に最も強く当接して最も荷重を受けるようになっており、後端部64aは、本発明に係る荷重入力部位を構成する。
【0045】
第1支持部材60は、第1鍔部64の後端部64aにおいて、装着者の右大腿91から荷重が負荷される一方で、第1被取付部61において第1フレーム10に取り付けられている。したがって、第1支持部材60は、後端部64aが力点として作用し、第1被取付部61と第1湾曲部62との間の第1境界部68を起点として変形しやすい。すなわち、第1支持部材60は、装着者の右大腿91から荷重が負荷されると、第1鍔部64の後端部64aと第1境界部68の足側に位置する下端部68a(足側端部)とを結ぶ第1下側仮想線X1より上側に位置する第1上側部分60a(上体側部分)において大きく変形しやすい。
【0046】
したがって、第1支持部材60には、第1上側部分60aの変形を抑制するように、第1上側部分60aに装着者の右大腿91とは反対側にリブ状に突出する第1高剛性部65が一体的に成型されている。第1高剛性部65は、メイン第1リブ66と、複数のサブ第1リブ67とを含んでいる。
【0047】
メイン第1リブ66は、第1上側部分60aの上下方向の略中央部に位置しており、第1鍔部64から第1被取付部61に向かって、第1突出部63及び第1湾曲部62の外表面に沿って円弧状に伸びている。具体的には、メイン第1リブ66は、第1鍔部64の後端部64aに位置する一端66aから下方に向かって内側(左側)に湾曲しつつ第1被取付部61に向かって延び、他端66bが第1境界部68上の上端部68b(上体側端部)に至る第1上側仮想線X2に沿って延びている。
【0048】
複数のサブ第1リブ67は、メイン第1リブ66の下方において、所定の間隔を空けて上下に並設されている。複数のサブ第1リブ67は、メイン第1リブ66に比して、リブ長さ、リブ幅、リブ高さのいずれも小さい。
【0049】
サブ第1リブ67は、第1境界部68上の一端67aから後方に向かって外側(左側)に所定長さ湾曲した他端67bにおいて終端している。サブ第1リブ67は、第1被取付部61から後方に向かうにつれて、リブ高さが低くなると共にリブ幅が小さくなる。
【0050】
図4は、第2支持部材70を前方内側(左側)から見た斜視図である。図4に示されるように、第2支持部材70は、上記カーボン素材をプレス成型することによって、第2被取付部71と、第2湾曲部72と、第2突出部73とが一体的に成型されている。
【0051】
第2被取付部71は、前後方向及び上下平行に平行な面内を、所定の上下方向幅において前後方向に延びる板状部分であって、第2フレーム20の第2取付部24(図2参照)に対して前方から差し込まれて例えば不図示の締結手段によって取り付けられている。
【0052】
第2湾曲部72は、第2被取付部71の前端部から前方に向かって外側(右側)に湾曲して、装着者の右脛94の前方に延びている。第2湾曲部72の右端部には、貫通孔72aが形成されている。図2に示されるように、貫通孔72aには、第3係止部材27が取り付けられている。第3係止部材27には、第2サポート29の一端29aが係止される。
【0053】
図4に戻って、第2突出部73は、第2湾曲部72の上部に連続して、装着者の右脛94の前方を上方に延びている。第2突出部73は、上縁部に前方に湾曲した第2鍔部74を有している。
【0054】
ここで、体支持装置100は、第1フレーム10と第2フレーム20とが第1回動部40によって互いに近づくように回動すると共に、第2フレーム20と接地部30とが第2回動部50によって互いに近づく方向に回動するとき、第2支持部材70は、第2鍔部74において右脛94に最も強く当接する。より具体的には、第2鍔部74のうち、最も前方に位置する前端部74aにおいて、右脛94に最も強く当接して最も荷重を受けるようになっており、前端部74aは、本発明に係る荷重入力部位を構成する。
【0055】
第2支持部材70は、第2鍔部74の前端部74aにおいて、装着者の右脛94から荷重が負荷される一方で、第2被取付部71において第2フレーム20に取り付けられている。したがって、第2支持部材70は、前端部74aが力点として作用し、第2被取付部71と第2湾曲部72との間の第2境界部78を起点として変形しやすい。すなわち、第2支持部材70は、装着者の右脛94から荷重が負荷されると、第2鍔部74の前端部74aと第2境界部78の足側に位置する下端部78a(足側端部)とを結ぶ第2下側仮想線Y1より上側に位置する第2上側部分70a(上体側部分)において大きく変形しやすい。
【0056】
したがって、第2支持部材70には、第2上側部分70aの変形を抑制するように、第2上側部分70aに、装着者の右脛94とは反対側にリブ状に突出する第2高剛性部75が一体的に成型されている。第2高剛性部75は、メイン第2リブ76と、複数のサブ第2リブ77とを含んでいる。
【0057】
メイン第2リブ76は、第2上側部分70aの上下方向の略中央部に位置しており、第2鍔部74から第2被取付部71に向かって、第2突出部73及び第2湾曲部72の外表面に沿って円弧状に伸びている。具体的には、メイン第2リブ76は、第2鍔部74の前端部74aに位置する一端76aから下方に向かって内側(左側)に湾曲しつつ第2被取付部71に向かって延び、他端76bが第2境界部78の上端部78b(上体側端部)に至る第2上側仮想線Y2に沿って延びている。
【0058】
複数のサブ第2リブ77は、メイン第2リブ76の下方において、所定の間隔を空けて上下に並設されている。複数のサブ第2リブ77は、メイン第2リブ76に比して、リブ長さ、リブ幅、リブ高さのいずれも小さい。
【0059】
サブ第2リブ77は、第2境界部78上の一端77aから前方に向かって外側(左側)に所定長さ湾曲した他端77bにおいて終端している。サブ第2リブ77は、第2被取付部71から前方に向かうにつれて、リブ高さが低くなると共にリブ幅が小さくなる。
【0060】
図5は、図4のV-V線に沿った、メイン第2リブ76の一端76aに近接した部位における延在方向に直交する断面形状である。図6は、図4のVI-VI線に沿った、メイン第2リブ76の他端76bに近接した部位における延在方向に直交する断面形状である。なお、図5及び図6は同一の縮尺で図示されている。
【0061】
第2支持部材70は、第2被取付部71、第2湾曲部72及び第2突出部73の肉厚が、第2高剛性部75が形成された部位を除いて、略一定の一般肉厚t0に形成されている。例えば、本実施形態では、第2支持部材70は一般肉厚t0が3.0mmに形成されている。一方、メイン第2リブ76は中実に形成されており、第2支持部材70は、メイン第2リブ76が形成された部位における肉厚t1が一般肉厚t0の2倍以上に形成されている。
【0062】
メイン第2リブ76は、一端76a側におけるリブ高さH1が、他端76b側におけるリブ高さH2に比して小さい。具体的には、メイン第2リブ76は、一端76aから他端76bへ向かうにつれて、リブ高さが増大するように形成されている。例えば、メイン第2リブ76は、他端76bにおけるリブ高さが14.55mmに形成されている。したがって、メイン第2リブ76は、一端76aから他端76bに向かって、剛性が増大するように構成されている。
【0063】
すなわち、第2支持部材70は、第2境界部78に向かって剛性が高くなるメイン第2リブ76および複数のサブ第2リブ77によって、第2上側部分70aのうち変形の起点となる第2境界部78側において好適に剛性が効果的に高められている。この結果、第2支持部材70は、前端部74aに装着者からの荷重が負荷された場合に、起点側での変形が抑制されるので、全体的な形状変化が抑制される。よって、第2支持部材70において生じ得る応力が低く抑えられている。
【0064】
また、メイン第2リブ76およびサブ第2リブ77は、断面形状において、基端部に向かって円弧状に拡がるように構成されている。
【0065】
図示は省略するが、第1支持部材60も厚み及びメイン第1リブ66の断面形状について同様に構成されている。例えば、本実施形態では、第1支持部材60は、一般肉厚が2.5mmであり、メイン第1リブ66は、他端66bにおけるリブ高さが最大12mmに形成されている。
【0066】
より具体的には、第1高剛性部65及び第2高剛性部75はそれぞれ、第1支持部材60及び第2支持部材70それぞれについて、装着者から負荷される荷重F(N)に対する変位X(cm)を弾性係数k(N/cm)を用いて数式F=kXで表したとき、弾性係数kが1000N/cm以上且つ2000N/cm以下の範囲となるように、設定されている。これによって、第1支持部材60及び第2支持部材70は、剛性を向上させながらも、適度な撓み性を有するように構成されている。
【0067】
上記実施形態に係る体支持装置100によれば次の効果を奏する。
【0068】
(1)第1支持部材60及び第2支持部材70は、炭素繊維が一方向に配列された炭素繊維ストランドに熱可塑性樹脂を含侵させて小片に切断したチョップドストランドプリプレグをランダムに積層させた積層体を含む成型体で構成されている。すなわち、第1支持部材60及び第2支持部材70には非連続の炭素繊維がランダムに配置されているので、炭素繊維を用いながら等方性を高めやすく物性が安定しやすい。
【0069】
ここで、非連続の炭素繊維を含む積層体は、連続した炭素繊維を含む炭素繊維織物に比して一般に強度が劣り撓みも大きくなりやすい。しかしながら、上記積層体は、成形性が炭素繊維織物に比して優れているため、炭素繊維を用いながら、積層体を、例えばプレス成型することにより、第1支持部材60及び第2支持部材70を、被取付部61,71、湾曲部62,72及び突出部63,73と共に、高剛性部65,75を一体的に成形できる。よって、第1支持部材60及び第2支持部材70は、高剛性部65,75によって剛性が高められるので、耐久性と適度な撓み性とを確保できる。
【0070】
なお、非連続の炭素繊維を含む材料を用いて射出成型することにより、第1支持部材60及び第2支持部材70を成形することも考えられる。しかしながら、この場合、本発明のようにランダムに積層されたシート状部材からプレス成型したときに得られるような不連続の炭素繊維が2次元平面状にランダムに配置された状態を維持することができず、等方性が低下する。
【0071】
したがって、第1支持部材60及び第2支持部材70を、非連続の炭素繊維を含む積層体から高剛性部65,75を有するように成形することによって、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させることができる。
【0072】
(2)第1支持部材60及び第2支持部材70は、弾性係数kが1000N/cm以上2000N/cm以下となるような撓み性を有しているので、装着者から負荷される荷重に対する過度の歪の発生を防止しつつ、適度に撓ませることができ装着者の脚部に良好なフィット感を与えることができる。
【0073】
すなわち、装着者が体支持装置100に対して荷重を負荷した際に、装着者の脚部に良好なフィット感を与えることができる。第1フレーム10及び第2フレーム20は金属(主に鉄)製であるため僅かに撓むものの、バネ性という観点では、体支持装置100全体への寄与率は小さく、第1支持部材60及び第2支持部材70による撓みが大半を占める。また、装着者の作業環境及び作業内容等によって、作業中に体支持装置100に作用する荷重は異なる。このため、ある程度の撓み性を有することによって、リクライニングのようなしなやかさを実現することができ、更にX脚やO脚等の様々な装着者にも装着時の快適性を提供できる。体支持装置100は、装着者の立ち姿勢で体を支持することによって、長時間の作業による身体の疲労を大幅に軽減することができる。さらに、脛と腿とによって体重を分散して支えることができるので、体幹が安定し装着者の高いパフォーマンスが得られる。
【0074】
弾性係数kが1000N/cm未満であると、第1支持部材60及び第2支持部材70に過度な歪が生じやすく破損するおそれがある。弾性係数kが2000N/cmを超過すると、第1支持部材60及び第2支持部材70は撓み性が不足し、装着者の脚部の動きに追従するように変形しにくくフィットしにくい。したがって、高剛性部65,75を、第1支持部材60及び第2支持部材70が適度な弾性係数kを有するように形成することによって、第1支持部材60及び第2支持部材70の良好なフィット性と耐久性とを確保することができる。
【0075】
(3)第1支持部材60及び第2支持部材70は、第1上側部分60a及び第2上側部分70aのなかでも、湾曲部62,72のうち被取付部61,71に隣接した第1境界部68及び第2境界部78上の上端部68b,78bの周辺において特に大きく歪が生じやすい。
【0076】
したがって、メイン第1リブ66及びメイン第2リブ76を、第1上側仮想線X2及び第2上側仮想線Y2に沿ってリブ状に設けることによって、第1支持部材60及び第2支持部材70を、装着者から負荷される荷重に対して抗するように、より効率的に剛性を増大させることができる。よって、第1支持部材60及び第2支持部材70を、重量及びコストの増大をさらに抑制しつつ剛性を向上させることができる。
【0077】
(4)メイン第1リブ66及びメイン第2リブ76は、湾曲した第1上側仮想線X2及び第2上側仮想線Y2に沿って延びているので、屈曲した直線部を接続して構成する場合に比して該直線部の接続部等への応力の集中がなく、生じ得る応力を、第1湾曲部62及び第1突出部63と、第2湾曲部72及び第2突出部73とにそれぞれ分散せることができる。これによって、第1支持部材60及び第2支持部材70の耐久性を向上させることができる。
【0078】
(5)メイン第1リブ66及びメイン第2リブ76は、断面形状が基端部に向かって円弧状に拡がるように構成されているので、プレス成形時におけるカーボン素材の流動性が確保されており、さらにリブの最大高さが制限されていることと相まって、カーボン素材の充填性が確保されており、成型後のリブの先端部分にショート(欠け)が発生することが防止され、該ショートによる歩留まりの悪化が防止されている。
【実施例0079】
カーボン素材としてサンコロナ小田株式会社製のフレックスカーボン(Flexcarbon:登録商標)のグレードFlexcarbon26L40VFを用いてプレス成型により成形した実施例1及び実施例2と、同カーボン素材のグレードFlexcarbon13L40Vfを用いてプレス成形により成形した実施例3及び実施例4とについて、所定条件における変位(cm)、応力(MPa)及び弾性係数(N/cm)をCAE解析により評価した。なお、実施例1及び実施例3は、第1支持部材60をベースに弾性係数が上記目標範囲となるように第1高剛性部65が形成されたものであり、第2支持部材70をベースに弾性係数が上記目標範囲内となるように第2高剛性部75が形成されたものである。
【0080】
実施例1及び実施例3に係る第1支持部材60のCAE解析では、第1鍔部64の後端部64aに対して下向きに荷重1274.86Nを負荷したときの、後端部64aの変位量、第1支持部材60における最大応力及び弾性係数を評価した。同様に、実施例2及び実施例4に係る第2支持部材70のCAE解析では、第2鍔部74の前端部74aに対して下向きに荷重1274.86Nを負荷したときの、前端部74aの変位量、第2支持部材70における最大応力及び弾性係数を評価した。
【0081】
なお、下向きの荷重1274.86Nは、装着者が躓いたり姿勢を崩したりしたときに突発的にかかり得る荷重として設定した。また、CAE結果に合わせて、フィット性を装着者による官能により評価した。CAE解析結果及び官能評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示されるように、実施例1における最大応力は124.9MPaであり、実施例2における最大応力は299.7MPaであり、実施例3における最大応力は116.6MPaであり、実施例4における最大応力は279.7MPaであり、いずれも上記カーボン素材の曲げ強度509MPaに対して十分な余裕を有している。また、弾性係数が高い実施例1及び実施例3は、実施例2及び実施例4に対して変形しにくいため最大応力が低下する結果となった。
【0084】
フィット性に関して、実施例1は弾性係数が1917N/cmであり、実施例2は弾性係数が1122N/cmであり、実施例3は弾性係数が1789N/cmであり、実施例4は弾性係数が1047N/cmであり、上記目標範囲(1000N/cm以上2000N/cm以下)に設定されているため、良好なフィット性が得られた。
【0085】
また、Flexcarbon26L40VF(繊維長26mm)から成形された実施例1及び実施例2は、Flexcarbon13L40Vf(繊維長13mm)から成形された実施例3及び実施例4に比して、変位量及び最大応力も低くなり、弾性係数が高い結果となった。すなわち、カーボン素材に含まれる繊維長が相対的に長い26mmである実施例1及び実施例2が、繊維長が相対的に短い13mmである実施例3及び実施例4よりも剛性が高くなっている。
【0086】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0087】
上記実施形態では、高剛性部をリブ状に突出した第1高剛性部65及び第2高剛性部75によって構成したが、これに限らない。図7及び図8には、変形例に係る第1支持部材160及び第2支持部材170が示されている。図7及び図8を参照して、第1支持部材160及び第2支持部材170について説明する。なお、上記実施形態に係る第1支持部材60及び第2支持部材70に対応する部分については同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0088】
図7に示されるように、第1支持部材160は、第1湾曲部62及び第1突出部63にわたって、第1下側仮想線X1に対して、上側に位置する第1上側部分161と、下側に位置する第1下側部分162と、第1上側部分161と第1下側部分162との間に位置しており第1下側仮想線X1に沿った第1遷移部分163とを有している。
【0089】
図9は、図7のIX-IX線に沿った、第1下側仮想線X1に直交する第1支持部材160の断面図である。図9に示されるように、第1支持部材160は、第1上側部分161が厚肉に形成されている一方で、第1下側部分162が一般肉厚t0に形成されており、第1遷移部分163において第1下側部分162から第1上側部分161に向かって肉厚が次第に増大するように、形成されている。
【0090】
第1上側部分161の厚さt11は、第1下側部分162の厚さ(一般肉厚)t0の2倍以上に形成されている。本実施形態では、第1下側部分162の厚さt0は、2.5mmであり、第1上側部分161は厚さt11が一般肉厚t0の2倍の4.5mm~5mmである。すなわち、第1支持部材160は、第1上側部分161が本発明に係る第1高剛性部65として構成されており、第1上側部分60aの略全体に構成されている。
【0091】
同様に、図8に示されるように、第2支持部材170は、第2湾曲部72及び第2突出部73にわたって、第2下側仮想線Y1に対して、上側に位置する第2上側部分171と、下側に位置する第2下側部分172と、第2上側部分171と第2下側部分172との間に位置しており第2下側仮想線Y1に沿った第2遷移部分173とを有している。
【0092】
図10は、図8のX-X線に沿った、第2下側仮想線Y1に直交する第2支持部材170の断面図である。図10に示されるように、第2支持部材170は、第2上側部分171が厚肉に形成されている一方で、第2下側部分172が一般肉厚t0に形成されており、第2遷移部分173において第2下側部分172から第2上側部分171に向かって肉厚が次第に増大するように、形成されている。
【0093】
第2上側部分171の厚さt21は、第2下側部分172の厚さ(一般肉厚)t0の2倍以上に形成されている。本実施形態では、第2下側部分172の厚さt0は、3mmであり、第2上側部分171の厚さt21が一般肉厚t0の2倍の6mm~6.5mmである。すなわち、第2支持部材170は、第2上側部分171が本発明に係る第2高剛性部75として構成されており、第2上側部分70aの略全体に構成されている。
【0094】
なお、第1上側部分161及び第2上側部分171の厚さt11,t21及び形成範囲は、第1支持部材160及び第2支持部材270の弾性係数kが1000N/cm以上2000N/cm以下となるように、適宜設定されている。
【0095】
変形例に係る第1支持部材160及び第2支持部材170によれば、変形が大きくなりやすい第1上側部分161及び第2上側部分171を、この下側に位置する第1下側部分162及び第2下側部分172より厚くすることによって、第1支持部材160及び第2支持部材170を、装着者から負荷される荷重に対して抗するように効率的に剛性を増大させることができる。よって、第1支持部材160及び第2支持部材170を、全体的に厚みを増大させる場合に比して、重量及びコストの増大を抑制しつつ、剛性を効率的に向上させることができる。
【0096】
また、図11及び図12には、さらなる変形例に係る第1支持部材260及び第2支持部材270が示されている。図11及び図12を参照して、第1支持部材260及び第2支持部材270について説明する。なお、上記実施形態に係る第1支持部材60及び第2支持部材70に対応する部分については同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0097】
図11及び図12に示されるように、第1支持部材260及び第2支持部材270は、脚部に対向する内表面に、装着者の脚部に向かってハニカム状断面で突出するハニカム状突部261,271が一体的に形成されている。ハニカム状突部261,271の突出高さ、面積、ハニカムの大きさ及びハニカムの数については、第1支持部材260及び第2支持部材270の弾性係数kが1000N/cm以上2000N/cm以下となるように、適宜設定されている。
【0098】
本実施形態では、ハニカム状突部261,271は、第1支持部材260及び第2支持部材270のうち、被取付部61,71に対して上方に突出しており、装着者からの荷重の負荷によってより変形しやすい突出部63,73に対応して設けられている。
【0099】
さらなる変形例に係る第1支持部材260及び第2支持部材270によれば、ハニカム状突部261,271によって、重量の増大を抑制しながら肉厚を増大させることができる。これによって、第1支持部材260及び第2支持部材270を、適度な撓み性を確保しつつ剛性を向上させることができる。また、ハニカム状突部261,271の頂面において装着者の脚部に接触するので、ハニカム状突部261,271によるフィット感の悪化が防止される。さらに、ハニカム状突部に261,271よって、第1支持部材260及び第2支持部材270の美観性を高めることができる。
【0100】
上記実施形態に係る第1支持部材60及び第2支持部材70と、変形例に係る、第1支持部材160,260及び第2支持部材170,270とは、それぞれ互いに組み合わせてもよい。
【0101】
上記実施形態では、第1支持部材60及び第2支持部材70の弾性係数kを1000N/cm以上且つ2000N/cmに設定したが、第1支持部材60の第1弾性係数k1と第2支持部材70の第2弾性係数k2とを異なる範囲に設定してもよい。具体的には、第2弾性係数k2の設定範囲を、第1弾性係数k1の設定範囲より高く設定してもよい。
【0102】
すなわち、本願発明者等が、体支持装置100を装着した装着者の作業時の、第1支持部材60及び第2支持部材70に作用する荷重について調べた結果、第2支持部材70の方が第1支持部材60よりも高い荷重が作用することが判明した。例えば、体支持装置100を含めた装着者の総重量を130kgとしたとき、装着者が右膝95を折り曲げて第1回動部40が所定の角度(第1フレーム10と第2フレーム20とが直線状に並ぶ場合を180°とした場合の、両者の間の角度が158°)に規制された状態では、第1支持部材60には後端部64aに32.7kgfの荷重が作用する一方で、第2支持部材70には前端部74aに39.2kgfの荷重が作用していた。
【0103】
したがって、より高い荷重が作用する第2支持部材70が、第1支持部材60よりも高剛性となるように設定するほうが好ましい。これによって、第1支持部材60及び第2支持部材70それぞれの変形量を適度な範囲に抑えられるので、フィット性を向上させつつ過度な変形による破損が抑制されている。例えば、第1弾性係数k1が1000N/cm以上且つ1500N/cm以下となるように第1高剛性部65を構成し、第2弾性係数k2が1500N/cm以上且つ2000N/cm以下となるように第2高剛性部75を構成するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明によれば、体支持装置の支持部材を、カーボン素材により形成することにより、軽量でありながら耐久性と適度な撓み性とを確保しつつ、さらに生産性と等方性とを向上させることができるので、あらゆる作業分野での立作業において作業者の足腰の負担を軽減し長時間の立ち仕事ができるアシストスーツ(立位補助装具)として好適に利用される。
【符号の説明】
【0105】
1 脚部支持部材
10 第1フレーム
20 第2フレーム
30 接地部
40 第1回動部
50 第2回動部
60 第1支持部材
60a 第1上側部分
61 第1被取付部
62 第1湾曲部
63 第1突出部
64 第1鍔部
64a 後端部
65 第1高剛性部
66 メイン第1リブ
67 サブ第1リブ
68 第1境界部
70 第2支持部材
70a 第2上側部分
71 第2被取付部
72 第2湾曲部
73 第2突出部
74 第2鍔部
74a 前端部
75 第2高剛性部
76 メイン第2リブ
77 サブ第2リブ
78 境界部
100 体支持装置
160 第1支持部材
161 第1上側部分
162 第1下側部分
163 第1遷移部分
170 第2支持部材
171 第2上側部分
172 第2下側部分
173 第2遷移部分
260 第1支持部材
261 ハニカム状突部
270 第2支持部材
271 ハニカム状突部
X1 第1下側仮想線
X2 第1上側仮想線
Y1 第2下側仮想線
Y2 第2上側仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12