(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175329
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】分散システム、及びデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221117BHJP
B60S 5/00 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
G06Q50/10
B60S5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081641
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 忠信
(72)【発明者】
【氏名】新保 健一
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
【テーマコード(参考)】
3D026
5L049
【Fターム(参考)】
3D026BA01
3D026BA28
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】あるエッジデバイスに異常が発生した場合、その要因となったコンポーネントを採用する他のエッジデバイスを特定する分散システム及びデータ処理方法を提供する。
【解決手段】分散システム10
1は、エッジデバイスを構成する換装可能なユニットの構成要素としてのコンポーネントの状態を表す状態データを、所定の診断アルゴリズムに従って診断データに変換するエッジデバイス20と、第1のエッジデバイスから診断データを取得し、第1のエッジデバイスに採用されているコンポーネントに対する関連コンポーネントを採用している第2のエッジデバイスを特定する診断CS30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であるエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムであって、
前記エッジデバイスは、
前記エッジデバイスを構成する換装可能なユニットの構成要素としてのコンポーネントの状態を表す状態データを、所定の診断アルゴリズムに従って診断データに変換し、
前記診断データ計算機は、
第1のエッジデバイスから前記診断データを取得し、
前記エッジデバイスの構成に関するデータベースを参照し、前記第1のエッジデバイスに採用されている前記コンポーネントに対する関連コンポーネントを採用している第2のエッジデバイスを特定する
分散システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記第1のエッジデバイスから取得した前記診断データに基づき、前記第1のエッジデバイスの異常及び故障の少なくとも一方を診断し、
前記第1のエッジデバイスから取得した前記診断データに基づき、前記第1のエッジデバイスの異常及び故障の少なくとも一方の要因となった要因コンポーネントを特定し、
前記要因コンポーネントに対する前記関連コンポーネントを採用している前記第2のエッジデバイスのグループを特定する
分散システム。
【請求項3】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記第1のエッジデバイスと、前記第2のエッジデバイスの関連度を判定し、
前記関連度及び前記第2のエッジデバイスから取得した診断データに基づき、前記第2のエッジデバイスにおける異常及び故障の少なくとも一方の発生の可能性を判定する
分散システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
異常及び故障の少なくとも一方の発生の可能性がある前記第2のエッジデバイスに対して、前記状態データの収集及び前記診断データの送信に関する収集条件の変更を指示する
分散システム。
【請求項5】
請求項4に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記収集条件の変更を指示した前記第2のエッジデバイスに対して、前記収集条件の復元を指示する
分散システム。
【請求項6】
請求項3に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
異常及び故障の少なくとも一方の発生の可能性がある前記第2のエッジデバイスに関するサービス運営事業者に対してアラートを出力する
分散システム。
【請求項7】
請求項1に記載の分散システムであって、
前記診断データ計算機は、
前記エッジデバイスに対して前記診断アルゴリズムを送信する
分散システム。
【請求項8】
自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であるエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムによるデータ処理方法であって、
前記エッジデバイスは、
前記エッジデバイスを構成する換装可能なユニットの構成要素としてのコンポーネントの状態を表す状態データを、所定の診断アルゴリズムに従って診断データに変換し、
前記診断データ計算機は、
第1のエッジデバイスから前記診断データを取得し、
前記エッジデバイスの構成に関するデータベースを参照し、前記第1のエッジデバイスに採用されている前記コンポーネントに対する関連コンポーネントを採用している第2のエッジデバイスを特定する
データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散システム、及びデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両において発生した故障を診断する車両外の故障診断装置において、車両で検出された故障情報を取得し、その車両で故障が検出された場合、車両と同型車種の他の車両における故障についての故障発生判定基準をデフォルトの設定よりも故障と判定しやすくなるように変更して、故障が車両に固有のものか、或いは、車両と同型車種の車両一般に発生し得るものであるかを判定する故障診断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、ある車両に故障が発生した場合、該車両と同型車種の他の車両にも同じ故障が発生する可能性があるか否かを判定できる。しかしながら、同じ故障が発生する可能性を判定できる車両は、故障した車両と同型車種に限られている。
【0005】
また、車両に代表されるエッジデバイスは、数多くのコンポーネントから構成されており、各コンポーネントは同型車種に限らず、多種多様なエッジデバイスに採用されている。よって、エッジデバイスにおいて故障や異常が発生した場合、その要因が特定のコンポーネントであるならば、今後において故障や異常が発生し得るエッジデバイスは、故障や異常が発生したエッジデバイスと同型車種に限られない。したがって、該コンポーネントを採用している多種多様なエッジデバイスに対して、故障や異常が発生し得るかを判定したり、アラートを出力したりできるようになることが望ましい。しかしながら、現在、そのような技術は確立されていない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、あるエッジデバイスに異常が発生した場合、その要因となったコンポーネントを採用する他のエッジデバイスを特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る分散システムは、自動稼働可能な移動体及び設備の少なくとも一方であるエッジデバイスと、診断データ計算機と、を備える分散システムであって、前記エッジデバイスは、前記エッジデバイスを構成する換装可能なユニットの構成要素としてのコンポーネントの状態を表す状態データを、所定の診断アルゴリズムに従って診断データに変換し、前記診断データ計算機は、第1のエッジデバイスから前記診断データを取得し、前記エッジデバイスの構成に関するデータベースを参照し、前記第1のエッジデバイスに採用されている前記コンポーネントに対する関連コンポーネントを採用している第2のエッジデバイスを特定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、あるエッジデバイスに異常が発生した場合、その要因となったコンポーネントを採用する他のエッジデバイスを特定することが可能となる。
【0010】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分散システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、分散システムの適用例を示す図である。
【
図3】
図3は、計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る分散システムの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、状態データの送受信プロトコルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、エッジデバイスの製造業者・修理業者向け要因分析結果画面の表示例を示す図である。
【
図7】
図7は、エッジデバイスの運用業者向け要因分析結果画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0013】
また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0014】
さらに、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0015】
同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合及び原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値及び範囲についても同様である。
【0016】
また、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の各実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
<本発明の第1の実施形態に係る分散システム10
1の構成例>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分散システム10
1の構成例を示している。
【0018】
分散システム101は、エッジデバイス20、及び、診断クラウドサーバ(CS)30を備える。エッジデバイス20は、ネットワーク1を介して診断クラウドサーバ30に接続する。ネットワーク1は、例えば、携帯電話通信網、インターネット(Ethernetを含む)等に代表される双方向通信網である。なお、同図においては、エッジデバイス20が1台のみ図示されているが、実際には、各種のサービス業者によって運用されている多種多様なエッジデバイス20が存在し、ネットワーク1を介して診断クラウドサーバ30に接続されているものとする。
【0019】
エッジデバイス20は、例えば自動稼働可能な移動体(例えば車両、ドローン、ロボット)や、設備(例えばロボットアームや工作機械、数値制御旋盤等)が想定される。ここで、自動稼働には自動運転が含まれるものとする。ここで、自動稼働とは、電子制御による稼働を指し、人の制御を不要とする完全自動稼働のみでなく、可動部の一部を自動で電子制御されるような部分的な自動稼働や、限定条件下での自動稼働も含むものとする。一例として、エッジデバイス20は、自動運転可能な車両を挙げることができる。
【0020】
エッジデバイス20は、エッジ内コントローラ21、複数のコンポーネント25、及び通信部26を備える。
【0021】
エッジ内コントローラ21は、例えば、ECU(Electronic Control Unit),CPU(Central Processing Unit),ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のコンピュータから成る。エッジ内コントローラ21は、制御部22、データ収集診断部23、及びシーケンス格納メモリ24を有する。
【0022】
制御部22は、データ収集診断部23、及びコンポーネント25の動作を制御する。例えば、制御部22は、データ収集診断部23がコンポーネント25から収集した状態データに基づいて、コンポーネント25に含まれるアクチュエータ等(不図示)を制御する。
【0023】
データ収集診断部23は、収集条件に従い、各コンポーネント25のメモリ252から、コンポーネント25の構成物であるセンサ、電源、アクチュエータ等(いずれも不図示)の状態データを収集する。また、データ収集診断部23は、所定の診断アルゴリズムに従い、コンポーネント25から収集した状態データをエッジ内コントローラ21の内部の状態を表す診断データに変換して通信部26に出力する。具体的には、例えば、状態データと所定の閾値とを比較し、その比較結果に基づいて診断データに変換する。
【0024】
シーケンス格納メモリ24には、収集する状態データの種類、周期、手順等からなる収集条件、状態データを診断データに変換する診断アルゴリズムが予め格納されている。
【0025】
コンポーネント25は、エッジデバイス20が備える移動機構や作動機構等の換装可能な各種ユニットを実現するための機能的、論理的、または物理的な構成要素である。例えば、エッジデバイス20が車両である場合、ユニットには例えば、エンジン、モータ、ブレーキ、カーナビゲーション、ECU等が含まれる。
【0026】
コンポーネント25は、データ取得部251、及びメモリ252を有する。
【0027】
データ取得部251は、各コンポーネント25内のレジスタやログデータ等からコンポーネント25の状態を表す状態データを取得する。
【0028】
メモリ252には、データ取得部251が取得した状態データが一時的に格納される。
【0029】
通信部26は、データ収集診断部23から入力された診断データに対して該エッジデバイス20の識別情報を付与し、ネットワーク1を介して診断クラウドサーバ30に送信する。また、通信部26は、診断クラウドサーバ30からネットワーク1を介して送信された収集条件や診断アルゴリズムを受信して制御部22に出力する。
【0030】
診断クラウドサーバ30は、ネットワーク1上に存在する1台以上の計算機から構成される。本実施形態においては、診断クラウドサーバ30等のクラウドサーバに代えて、ローカルに存在する1台以上の計算機を採用してもよい。反対に、ローカルの計算機に代えてクラウドサーバを採用してもよい。診断クラウドサーバ30は、本発明の診断計算機に相当する。
【0031】
診断クラウドサーバ30は、通信部31、処理メモリ32、エッジデバイスDB(データベース)33、及び処理部34を備える。
【0032】
通信部31は、ネットワーク1を介してエッジデバイス20から送信された診断データを受信する。また、通信部31は、ネットワーク1を介し、エッジデバイス20に対して制御情報を送信する。
【0033】
処理メモリ32には、通信部31によって受信されたエッジデバイス20の診断データ、処理部34による各種の処理結果等が一時的に格納される。
【0034】
エッジデバイスDB33には、エッジデバイス20に関する情報、例えば、エッジデバイス20の型式、エッジデバイス20の構成情報(エッジデバイス20を構成するユニットに採用されているコンポーネント25の型式、コンポーネント25の使用箇所等)、エッジデバイス20のメーカ、エッジデバイス20を運用するサービス事業者、修理業者等が関連付けて記憶されている。
【0035】
処理部34は、診断処理P1、要因分析処理P2、エッジグループ検索処理P3、グループ内診断処理P4、及び異常判定処理P5を実行する。各処理については以下に説明する。
【0036】
<分散システム101の動作概要>
以上のように構成された分散システム101においては、エッジデバイス20のデータ収集診断部23が、予め診断クラウドサーバ30から送信されてシーケンス格納メモリ24に格納されている収集条件に従ってコンポーネント25のメモリ252から状態データを収集し、診断アルゴリズムに従って状態データを診断データに変換する。そして、通信部26が、診断データを所定の通信プロトコルに従いネットワーク1を介して診断クラウドサーバ30に送信する。
【0037】
診断クラウドサーバ30では、通信部31がエッジデバイス20から送信された診断データを受信して処理メモリ32に格納する。そして、処理部34が、診断処理P1として、処理メモリ32に格納されているエッジデバイス20の診断データに基づき、エッジデバイス20における異常や故障の有無を診断する。診断結果は、診断データに関連付けて処理メモリ32に格納される。ここで、異常や故障の有無が診断されたエッジデバイス20は、本発明の第1のエッジデバイスに相当する。
【0038】
次に、処理部34が、要因分析処理P2として、エッジデバイス20の診断データを分析し、異常や故障の要因となったコンポーネント25を特定する。異常や故障の要因には、コンポーネント25のハードウェアの故障と、ソフトウェアによる動作における異常とが含まれる。故障要因の分析方法は、例えば、診断データを要因となったコンポーネント25との相関関係をデータベース化し、そのデータベースを基に故障要因を求める。このデータベースの実装方法は、条件と結果をリスト化しても良く、ニューラルネットワークを利用した機械学習を用いてもよい。つまり、診断データとエッジデバイス内の故障要因との相関を関係付ける形式と探索する方法であればよい。異常や故障の発生部位の特定方法は、状態データと異常や故障の要因の相関関係を使用して部位を求めてもよい。
【0039】
次に、処理部34が、エッジグループ検索処理P3として、エッジデバイスDB33を参照し、異常や故障の要因となったコンポーネント25に関連するコンポーネントが採用されているエッジデバイス20のグループを検索する。ここで、異常や故障の要因となったコンポーネント25に関連するコンポーネントとは、異常や故障の要因となったコンポーネント25と完全に同一のコンポーネントの他、例えば、基本設計が共通であり、仕様違いやバージョン違い、OEM商品等を含む。以下、異常や故障の要因となったコンポーネント25を要因コンポーネントと称し、要因コンポーネントに関連するコンポーネントを関連コンポーネントと称する。なお、要因コンポーネントに対するコンポーネントの関係は、上述した例の他、利用者が設定できるようにしてもよい。
【0040】
このグループ検索では、関連コンポーネントが採用されているエッジデバイス20を様々な観点でグループ分けする。例えば、関連コンポーネントが採用されており、且つ、同一型式のエッジデバイス20をグループとしたり、関連コンポーネントが採用されており、且つ、同一メーカによって製造されたエッジデバイス20をグループとしたり、関連コンポーネントが採用されており、且つ、同一のサービス事業者で運用されているエッジデバイス20をグループとしたり、関連コンポーネントが採用されており、且つ、使用環境(使用地域等)や使用状況(例えば、エッジデバイスが車両の場合、走行距離等)が略等しいエッジデバイス20をグループとしたり、メーカやサービス事業者に拘わらず関連コンポーネントが採用されており、且つ、関連コンポーネントが同一の機構に採用されているエッジデバイス20をグループとしたり、関連コンポーネントが採用されており、且つ、エッジデバイス20における関連コンポーネントと他のコンポーネントとの接続形態が同一または類似しているエッジデバイス20をグループとしたりする。なお、グループ分けの種類は上述した例に限られない。グループ分けの条件は、利用者が決定できる。
【0041】
次に、処理部34が、グループ内診断処理P4として、要因コンポーネントが採用されているエッジデバイス20と、該エッジデバイス20と同じグループに属する、すなわち、関連コンポーネントが採用されているエッジデバイスとの関連度を診断する。例えば、要因コンポーネントと関連コンポーネントがそれぞれのエッジデバイス20における同じ機構に採用されている場合には関連度が高いと診断し、異なる機構に採用されている場合には関連度が低いと診断する。該エッジデバイス20と同じグループに属するエッジデバイスは、本発明の第2のエッジデバイスに相当する。
【0042】
次に、処理部34が、異常判定処理P5として、グループ分けされた各エッジデバイスの関連度に応じ、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じグループに属する他のエッジデバイスの診断データに基づき、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じ異常や故障が発生する可能性を判定する。具体的には、例えば、診断データの時系列変化と、異常や故障が発生する可能性(確率)との相関関係をデータベース化し、そのデータベースを基に異常や故障が発生する可能性を判定すればよい。このデータベースの実装方法は、状態データの時系列変化と確率をリスト化しても良く、ニューラルネットワークを利用した機械学習を用いてもよい。
【0043】
さらに、異常判定処理P5では、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じグループに属し、異常や故障が発生する可能性があると判定した他のエッジデバイスに対するアラートを、該他のエッジデバイスの製造業者、修理業者、運用業社等(以下、一括してサービス事業者と称する)に出力する。なお、出力するアラートは、異常や故障が発生する確率に応じて、緊急、警告、留意、報告等を区別して出力することができる。また、アラートの粒度は、エッジデバイス単位、機構単位、コンポーネント単位等を利用者が任意に設定することができる。
【0044】
以上説明したように、分散システム101によれば、エッジデバイス20と、エッジデバイス20の外部の診断クラウドサーバ30とが連携して、エッジデバイス20に生じた異常や故障を診断し、要因コンポーネントを特定できる。また、要因コンポーネントに対する関連コンポーネントが採用されているエッジデバイスのグループを検索して、グループに属する他のエッジデバイスにおいて、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じ異常や故障が発生する可能性を診断し、診断結果に応じたアラートを、他のエッジデバイスに関わるサービス事業者等に出力できる。これにより、サービス事業者等では、実際に異常や故障が発生する前にエッジデバイスのメンテナンスを実施することができ、エッジデバイスの異常や故障を回避できるので、エッジデバイスの稼働率を向上させることができる。
【0045】
<分散システム10
1の適用例>
次に、
図2は、
図1に示された分散システム10
1の適用例である分散システム1000におけるデータの流れを示している。
【0046】
分散システム1000は、多層化されており、1台以上のエッジデバイス20、データマネジメント層40に含まれる1台以上のクラウドサーバ(または計算機)、及び、データ活用層50に含まれる1台以上のクラウドサーバ(または計算機)を含む。
【0047】
なお、分散システム1000において、
図1の診断クラウドサーバ30は、診断管理クラウドサーバ301と分析アウトソーシングクラウドサーバ302とに分割されている。診断管理クラウドサーバ301はデータマネジメント層40に配置され、分析アウトソーシングクラウドサーバ302はデータ活用層50に配置されている。
【0048】
エッジデバイス20は、エッジ内コントローラ21、移動・作動機構221、及び、センサ222を有する。
【0049】
エッジ内コントローラ21は、例えばECU等からなり、移動・作動機構221を制御する。移動・作動機構221は、移動機構及び作動機構の少なくとも一方である。移動機構は、例えば移動体におけるエンジンやモータ等である。作動機構は、例えば設備におけるモータや油圧等のアクチュエータである。移動・作動機構221は、コンポーネント25(
図1)から構成されるユニットに相当する。
【0050】
移動・作動機構221に関連し、「作動」とは、少なくとも「ある動作を行うことによって、機器がその操作された指令どおりの状態の変化を行うこと(JIS B 0132準拠)。」を意味する。
【0051】
以下の説明では、説明を簡略化するため、エッジデバイス20が移動体であり、移動・作動機構221が移動機構である場合を例にして説明する。また、エッジ内コントローラ21を、ECTL(Edge Controller)21と略称する。
【0052】
ECTL21は、エッジデバイス20の自動稼働を実現するための処理の少なくとも一部を担当する。そのため、ECTL21は、ハードウェアまたはソフトウェアの視点で複雑化しつつある。例えば、ハードウェアの複雑化の例としては、機械学習処理導入や各種センサやカメラからのデータ入力をリアルタイムに認知、判断する処理導入のために、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ニューラルネットワーク専用プロセッサや、その他機械学習を加速させるハードウェアが含まれる場合もある。
【0053】
データマネジメント層40は、説明を簡略化するために導入した仮想的な層またはグループである。データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバ(または計算機)は、主に、エッジデバイス20が生成したデータを格納する用途に用いられる。
【0054】
なお、データマネジメント層40は、前述した用途以外のクラウドサーバ(または計算機)が含まれてもよい。また、データマネジメント層40から、前述した用途のクラウドサーバ(または計算機)が省かれていてもよい。
【0055】
同図の場合、データマネジメント層40は、エッジデバイス製造会社計算機41、エッジデータ配信会社クラウドサーバ(CS)42、及び、診断管理クラウドサーバ(CS)301を含む。
【0056】
エッジデバイス製造会社計算機41は、エッジデバイス20を設計、または製造する会社が有する計算機である。当該製造会社は、自社製品の開発や保守のためにエッジデバイス20に関するエッジデータを管理しているため、便宜上、データマネジメント層40に含めている。エッジデバイス製造会社計算機41は、エッジデータのアップデートデータD23をエッジデータ配信会社クラウドサーバ42に送信する。
【0057】
エッジデータ配信会社クラウドサーバ42は、エッジデバイス20に関するエッジデータを格納し、他のクラウドサーバからの要求に応じて、無加工または加工後のエッジデータD25を要求元のクラウドサーバに送信する。エッジデータD25は、例えば、エッジデバイス20の構成物に関する情報等が想定される。
【0058】
ここで、データの加工とは、例えば、データの表現形式の変更、差分値の計算、統計値の計算、暗号化、復号化、圧縮、非圧縮、不要なデータの除去、冗長コードの付与または除去、データ抽出等であるが、処理主体が受信したデータを一部または全てを変更して送信するのであれば、それを加工とみなしてもよい。
【0059】
診断管理クラウドサーバ301は、診断データ(以後、エッジ内コントローラ診断データ、ECTL診断データとも称する)D11を格納し、他のクラウドサーバからの要求に応じて無加工または加工後の診断データD21,D27を送信する。なお、ECTL診断データはエッジデータの一例である。
【0060】
なお、一視点として、データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバ(または計算機)を有する会社は、エッジデバイス20やそのパーツの設計や製造を行う会社、またはエッジデータの配信を担当する会社と見做してもよい。当該視点からみると、通信会社や、スマートフォンにて実行されるカーナビゲーションプログラムを提供する会社や、移動機構の製造会社のクラウドサーバは、データマネジメント層40に含まれると見做すことができる。
【0061】
データ活用層50は、説明を簡略化するために導入した仮想的な層またはグループである。データ活用層50に含まれるクラウドサーバ(または計算機)は、データマネジメント層40に含まれるクラウドサーバと比較して、サービス提供により近い部分を担う用途に用いられる。
【0062】
データ活用層50に含まれるクラウドサーバによって提供されるサービスとしては、エッジデバイス20を利用したり、エッジデバイス20に関連するエンティティを対象としたり、エッジデバイス20そのものを対象としたりするエッジデバイス関連サービスが想定される。
【0063】
ここで、エンティティとは、例えば、人間の集合や集団、動物、装置(信号機、エッジデバイス20を運搬する船、エッジデバイス20の外部でエッジデバイス20の自動稼働を支援する装置)が想定される。
【0064】
同図の場合、データ活用層50は、ディーラ/修理会社クラウドサーバ(CS)51、保険会社クラウドサーバ(CS)52、運輸会社クラウドサーバ(CS)53、MaaS会社クラウドサーバ(CS)54、レンタル会社クラウドサーバ(CS)55、分析アウトソーシングクラウドサーバ(CS)302等の各種のサービス事業者のクラウドサーバを含む。
【0065】
ディーラ・修理会社クラウドサーバ51は、エッジデバイス20の修理や保守の手配、エッジデバイス20の修理を行うディーラや修理会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32を受け取り、保守サービス(故障予防、改修等)、または修理サービス(事故対応)に必要な情報を生成してユーザに提示する。
【0066】
保険会社クラウドサーバ52は、エッジデバイス20を利用して所定の機能を発揮する会社の業務に関係する所定のリスクを引き受ける保険会社にて、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32を参照して保険料率を決定するための一部または全ての処理を実行する。なお、保険会社が引き受けるリスクは、エッジデバイス20を利用するエンティティに関係するリスクであってもよい。例えば、個人が契約する自動車保険等が想定される。
【0067】
運輸会社クラウドサーバ53は、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他の運輸会社のサービスを用いて運輸業を営む運輸会社にて、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD32に基づいて運輸サービスを提供するための処理を実行する。当該処理の一例は、エッジデバイス20の配車計画、運賃の計算、運賃を含むサービス仕様改訂のための分析処理等が想定される。
【0068】
MaaS(Mobility as a Service)会社クラウドサーバ54は、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他社のサービスを用いて移動手段の提供サービスを営むMaaS会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD31を受け取り、保有車両の保守計画等に必要な情報を生成する。当該情報は、MaaS会社の社員等に提供される。
【0069】
レンタル会社クラウドサーバ55は、MaaS会社クラウドサーバ54と同様、エッジデバイス20を直接的に利用するか、または他社のサービスを用いて移動手段の提供サービスを営むレンタル会社の業務を支援するため、エッジデータD25または分析アウトソーシングクラウドサーバ302から提供される分析後データD31を受け取り、保有車両の保守計画等に必要な情報を生成する。当該情報は、レンタル会社の社員等に提供される。
【0070】
分析アウトソーシングクラウドサーバ302は、データ活用層50に含まれる会社の、サービス提供、またはサービスの改善に必要なサービス関連分析処理のアウトソーシング先となるクラウドサーバである。分析アウトソーシングクラウドサーバ302は、状態データや診断データ(特にECTL診断データ)D11の分析のアウトソーシングを担当しているが、データマネジメント層40に含まれるエッジデバイス製造会社等の分析のアウトソーシングを担当することもできる。なお、分析アウトソーシングクラウドサーバ302によるサービス関連分析処理は、後述する各ソリューションにおけるエッジデバイス20またはECTL21の内部状態に関する要因分析処理に相当する。
【0071】
なお、データマネジメント層40とデータ活用層50との分け方は同図に示された例に限らず、さらに排他的でなくてもよい。例えば、通信会社のクラウドサーバは、前述したエッジデータの配信に関する視点では、データマネジメント層40に含まれるエッジデータ配信会社クラウドサーバ42に相当するが、エッジデバイス20に「通信サービス」を提供する視点では、データ活用層50に含まれるとも考えられる。
【0072】
さらに、別の視点として、データ活用層50に含まれるクラウドサーバを有する会社は、エッジデバイス20やそのパーツの設計または製造を行わない会社と見做すことができる。
【0073】
<クラウドサーバを構成する計算機100の構成例>
次に、
図3は、診断クラウドサーバ30等のクラウドサーバを成す計算機100のハードウェア構成の一例を示している。
【0074】
計算機100は、プロセッサ101、メモリ102、外部記憶装置103、音声出力装置104、生体情報入力装置105、操作入力装置106、出力装置107、及び通信装置108がデータバス109を介して接続されて構成される。
【0075】
プロセッサ101は、CPU、GPU、FPGA等からなり、計算機100の全体を制御する。メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置である。外部記憶装置103は、デジタル情報を記憶可能なHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置である。
【0076】
音声出力装置104は、スピーカ等からなる。生体情報入力装置105は、カメラ、視線入力装置、マイクロフォン等からなる。操作入力装置106は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる。出力装置107は、ディスプレイ、プリンタ等からなる。
【0077】
通信装置108は、NIC(Network Interface Card)等からなる。通信装置108は、有線通信及び無線通信の少なくとも一方により、同一のネットワークに接続された他の装置との通信を行う。その通信には、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によるパケット通信を採用するが、これに限られるものではなく、UDP(User Datagram Protocol)等の他のプロトコルによる通信を採用してもよい。
【0078】
なお、計算機100のハードウェア構成は上述した例に限らず、上述した一部の構成要素を省いたり、他の構成要素を含んだりしてよい。また、計算機100は、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、テレビジョン装置等の各種の情報処理装置であってもよい。
【0079】
計算機100は、OS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーションプログラム等のプログラムを記憶したり、外部から読み込んだりすることができ、これらのプログラムをプロセッサ101が実行することにより、各種の処理を実行できる。
【0080】
<本発明の第2の実施形態に係る分散システム10
2の構成例>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る分散システム10
2の構成例を示している。
【0081】
分散システム102は、分散システム101に対して、診断クラウドサーバ30の処理部34が実行する処理に収集条件変更処理P6を追加したものである。
【0082】
収集条件変更処理P6では、異常判定処理P5にて異常や故障が発生する可能性があると判定されたエッジデバイスにて状態データを収集し、診断データに変換して診断クラウドサーバ30に送信する際の収集条件(収集する状態データの種類、周期、手順等)を変更できるようになされている。
【0083】
これにより、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じグループに属する他のエッジデバイスにおける異常や故障を早期に捉えることができる。
【0084】
例えば、コンポーネント25としての電子機器は高温時にエラーを発生し易いので、他のエッジデバイス20の使用環境(使用地域)が判断できるように位置情報を取得するようにし、夏場において温暖地を走行しているような場合には、診断データの収集周期がより短くなるように変更を指示する。
【0085】
また例えば、異常や故障と診断されていない定常時には読み出していなかったステータスレジスタ等の値を状態データとして収集し、そのまま診断データとして送信するように変更を指示する。
【0086】
また例えば、コンポーネント25の内部にてケーブルの劣化が起こり易い問題が発生したことに応じて、定常時には監視していなかったコンポーネント25の内部における通信エラー数を診断データとして送信するように変更を指示する。
【0087】
なお、診断クラウドサーバ30の処理部34は、収集条件変更処理P6にて変更を指示した収集条件を、所定のトリガ(例えば、利用者からの操作や処理部34による判断)に応じ、変更前の収集条件に復元することを指示できる。これにより、収集条件が変更されたことによりエッジデバイス20が過負荷となってしまい通常の動作に支障が生じてしまうことを抑止できる。
【0088】
以上に説明した分散システム102によれば、分散システム101と同様の作用・効果に加え、収集条件を変更することにより、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じグループに属する他のエッジデバイスに異常や故障が発生する可能性をより高い精度で診断できる。よって、異常や故障が発生する前にメンテナンスを行うことによって、エッジデバイスの稼働率向上、保守コスト削減を実現できる。
【0089】
次に、
図5は、分散システム10
2におけるエッジデバイス20と診断クラウドサーバ30との間の送受信プロトコルの一例を示している。
【0090】
エッジデバイス20では、エッジ内コントローラ21のデータ収集診断部23が、所定の周期で定期的にコンポーネント25から状態データを収集して診断データに変換し、通信部26が診断データを診断クラウドサーバ30に送信する。
【0091】
次に、診断クラウドサーバ30では、受信した診断データを処理メモリ32に格納し、診断データに基づいて、診断処理P1、要因分析処理P2、エッジグループ検索処理P3、グループ内診断処理P4、及び異常判定処理P5を実行する。そして、収集条件変更処理P6として、異常や故障が発生する可能性があると診断されたエッジデバイスにおける収集条件の変更指示(例えば、状態データの収集の周期を短くする指示等)を生成し、該エッジデバイスに送信する。
【0092】
次に、収集条件の変更指示を受信したエッジデバイスでは、これ以降、変更された収集条件に従って、コンポーネント25から状態データを収集して診断データに変換し、通信部26が診断データを診断クラウドサーバ30に送信する。
【0093】
そして、診断クラウドサーバ30では、変更された収集条件に従って収集、送信された診断データに基づき、診断処理P1、要因分析処理P2、エッジグループ検索処理P3、グループ内診断処理P4、及び異常判定処理P5を実行することになる。
【0094】
図5からわかるように、あるエッジデバイス20が異常や故障と診断された場合、該エッジデバイスと同じグループに属するエッジデバイスに対して収集条件を変更することができる。これにより、異常や故障と診断されたエッジデバイス20と同じグループに属する他のエッジデバイスにおける異常や故障をより早く正確に捉えることができる。
【0095】
<要因分析結果画面の表示例>
次に、
図6は、エッジデバイス製造会社計算機41やディーラ・修理会社クラウドサーバ51(いずれも
図2)等に表示される製造業者・修理業者向けの要因分析結果画面500の表示例を示している。要因分析結果画面500は、その画面情報が処理部34によって生成され、診断クラウドサーバ30に接続してきたエッジデバイス製造会社計算機41等の画面に表示される。
【0096】
要因分析結果画面500には、診断クラウドサーバ30によって異常や故障と診断されたエッジデバイス20の名称・型式、及び使用者履歴、並びに、要因分析結果が表示される。
【0097】
要因分析結果には、異常発生部位、同一運用事業者管理デバイス、収集条件・環境情報、及び、異常要因の項目が設けられている。
【0098】
異常発生部位の項目には、異常や故障と診断されたエッジデバイス20における要因コンポーネントの名称、発生日、及び発生時刻が表示される。
【0099】
同一運用事業者管理デバイスの項目には、異常や故障と診断されたエッジデバイス20を運用している運用事業者が管理している他のエッジデバイスであって、要因コンポーネントの関連コンポーネントが使用されている他のエッジデバイスの名称・型式、及び関連度が表示される。
【0100】
収集条件・環境情報の項目には、状態データの収集条件を表すルールタイプ、温度、湿度が表示される。
【0101】
異常要因の項目には、要因コンポーネントにおける具体的な異常要因が表示される。異常要因には、ソフトウェア異常かハードウェア異常かを判断する情報も含まれる。ソフトウェア異常とハードウェア異常とでは、解消の方法が大きく異なることが多いためである。
【0102】
エッジデバイス20の製造業者や修理業者は、要因分析結果画面500を見ることにより、異常や故障が発生したエッジデバイス20とその要因となった要因コンポーネントを把握することができる。さらに、要因コンポーネントの関連コンポーネントが採用されている他のエッジデバイスの名称・型式、及び関連度を把握することができる。よって、エッジデバイス20の製造業者は、例えば、要因コンポーネントや関連コンポーネントの基本設計を見直したり、他のコンポーネントと入れ替えることを検討したりすることができる。エッジデバイス20の修理業者は、例えば、今後依頼され得る修理に備えて、要因コンポーネントや関連コンポーネントの換装品を準備したりすることができる。
【0103】
次に、
図7は、運輸会社クラウドサーバ53、MaaS会社クラウドサーバ54、レンタル会社クラウドサーバ55(いずれも
図2)等に表示される、エッジデバイス20を運用している運用業者向けの要因分析結果画面600の表示例を示している。要因分析結果画面600は、その画面情報が処理部34によって生成され、診断クラウドサーバ30に接続してきた運輸会社クラウドサーバ53等の画面に表示される。
【0104】
要因分析結果画面600には、要因分析結果画面500(
図5)と同様に、診断クラウドサーバ30によって異常や故障と診断されたエッジデバイス20の名称・型式、及び使用者履歴、並びに、要因分析結果が表示される。
【0105】
要因分析結果には、異常発生部位、異常発生地点、異常対応緊急度、グループ内要対応デバイス、対応内容、及び異常要因・異常発生履歴の項目が設けられている。
【0106】
異常発生部位の項目には、異常や故障と診断されたエッジデバイス20における要因コンポーネントの名称、発生日、及び発生時刻が表示される。異常発生地点の項目には、異常や故障が発生した地点を表す住所や緯度・経度が表示される。
【0107】
異常対応緊急度の項目には、即時交換・修理要、返却後対応要、または定期保守時対応のいずれかが強調して表示される。
【0108】
グループ内要対応デバイスの項目には、当該運用会社が運用しているエッジデバイス20のうち、修理等の対応が必要なエッジデバイス20の名称・型式、及び関連度が表示される。
【0109】
対応内容の項目には、修理等の対応の具体的な内容が表示される。異常要因・異常発生履歴の項目には、要因コンポーネントにおける具体的な異常要因と、要因コンポーネントにおける異常発生の履歴が表示される。
【0110】
エッジデバイス20の運用業者は、要因分析結果画面600を見ることにより、異常や故障が発生したエッジデバイス20とその要因となったコンポーネント25を把握することができる。さらに、異常対応の緊急度や修理費用を把握することができる。
【0111】
これにより、エッジデバイス20の運用業者は、以下の対処方法を選択することができる。
【0112】
対処方法1:異常発生地点が、運用業者の拠点位置より遠いエッジデバイス20を優先して修理作業を行う。当該優先が反映される例としては代替用のエッジデバイス20の手配である。
【0113】
対処方法2:緊急度が低い異常状態を緊急度が高い異常状態になる前に解消する。例えば単体ではエッジデバイス20に致命的ではない異常状態であれば優先度を低とすることができるが、相関性が高い異常状態が緊急度の高いものであれば、前者の異常状態を低よりも高い中や高にする。
【0114】
対処方法3:緊急度に基づいた修理作業の優先付けを実施する。特に同じエッジデバイス20内で緊急度の異なる異常状態が発生した場合は、緊急度の高い異常状態の解消を行うことで緊急度が低い異常状態も解消していることがある。
【0115】
次に、本ソリューションを保険会社に適用した場合について説明する。
【0116】
保険の契約条件は、保険料が低額であっても、保険金支払いの条件が厳しいと契約エンティティが契約に至らない。一方で、保険金支払いの条件を緩和し過ぎると保険会社の収支が悪化し過ぎてサービスが継続できない。そこで、分析アウトソーシングクラウドサーバ302が提供する加工後のデータを参照するようにすれば、エッジデバイス20の内部の異常状態の発生頻度も踏まえて保険金支払い条件を設定することができる。
【0117】
例えば、特定の条件(例えばエッジデバイス20の種類、利用環境、利用エンティティの種類)で、エッジデバイス20の内部の異常状態の発生頻度が高くなることが分かれば、当該条件の場合の保険料を高め、反対に発生頻度が低い条件の場合は保険料を低くする、といった保険料の適正化が可能となる。
【0118】
またエッジデバイス20の状態を監視することで、機能障害が発現する前に対処することが可能となり、事故や故障による機会損失を防ぐ確率を高める。その場合、保険支払いを軽減することができ、保険料率を下げることが可能となる。このメリットは、自動稼働の普及によってエッジデバイス20が関連する異常が多くなる場合はより大きなメリットとなる。
【0119】
本発明に係る技術は、分散システム、及びデータ送信方法に限られず、計算機、コンピュータ読み取り可能なプログラム等の様々な態様で提供できる。
【0120】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0121】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1・・・ネットワーク、101,102・・・分散システム、20・・・エッジデバイス、21・・・エッジ内コントローラ、22・・・制御部、23・・・データ収集診断部、24・・・シーケンス格納メモリ、25・・・コンポーネント、251・・・データ取得部、252・・・メモリ、26・・・通信部、30・・・診断クラウドサーバ、31・・・通信部、32・・・処理メモリ、34・・・処理部、40・・・データマネジメント層、41・・・エッジデバイス製造会社計算機、42・・・エッジデータ配信会社クラウドサーバ、50・・・データ活用層、51・・・ディーラ・修理会社クラウドサーバ、52・・・保険会社クラウドサーバ、53・・・運輸会社クラウドサーバ、54・・・MaaS会社クラウドサーバ、55・・・レンタル会社クラウドサーバ、100・・・計算機、101・・・プロセッサ、102・・・メモリ、103・・・外部記憶装置、104・・・音声出力装置、105・・・生体情報入力装置、106・・・操作入力装置、107・・・出力装置、108・・・通信装置、109・・・データバス、221・・・移動・作動機構、222・・・センサ、301・・・診断管理クラウドサーバ、302・・・分析アウトソーシングクラウドサーバ、500,600・・・要因分析結果画面、1000・・・分散システム