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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175342
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】鉄道用枕木
(51)【国際特許分類】
   E01B 3/46 20060101AFI20221117BHJP
   E01B 3/02 20060101ALI20221117BHJP
   E01B 35/08 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E01B3/46
E01B3/02
E01B35/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081663
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康宏
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB02
(57)【要約】
【課題】劣化や振動による飛散を抑制し、且つ軌道の異常を適切に検知することができる鉄道用枕木を提供する。
【解決手段】鉄道用枕木は、直方体状の枕木本体2と、開口部32を有し枕木本体2の内部に配置される空洞部30と、空洞部30に固定され、振動を測定する振動測定部10と、空洞部30に固定され、振動測定部10で測定された振動データを発信する振動データ発信部20と、開口部32を覆うように設けられる蓋40と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の枕木本体と、
開口部を有し前記枕木本体の内部に配置される空洞部と、
前記空洞部に固定され、振動を測定する振動測定部と、
前記空洞部に固定され、前記振動測定部で測定された振動データを発信する振動データ発信部と、
前記開口部を覆うように設けられる蓋と、
を有することを特徴とする鉄道用枕木。
【請求項2】
前記空洞部における正対する一方の第1の壁ともう一方の第2の壁との間で、前記振動測定部を押圧する第1突っ張り部材を有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道用枕木。
【請求項3】
前記振動測定部が振動測定本体と振動センサー部とに分離し、
前記空洞部における正対する一方の第1の壁ともう一方の第2の壁との間で、前記振動センサー部を押圧する第2突っ張り部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉄道用枕木。
【請求項4】
前記空洞部の底面に前記枕木本体を貫通する貫通孔を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉄道用枕木。
【請求項5】
前記開口部は前記枕木本体の上面に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉄道用枕木。
【請求項6】
前記開口部は前記枕木本体の側面に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉄道用枕木。
【請求項7】
前記振動測定部及び前記振動データ発信部に電力を供給する発電機を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鉄道用枕木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用枕木に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道の枕木では、バラストが磨滅したり、沈降したり、枕木底面が磨滅したりして、列車通過時に上下運動が激しくなる場合がある。鉄橋上の無道床枕木では、ねじの緩みや枕木の磨滅により列車通過時に振動が激しくなる場合がある。レール継ぎ目部では、遊間が大きくなりすぎたり、継ぎ目落ちが発生して、振動が激しくなったりする場合がある。また、レールが、磨滅により欠けたり、レールに発生する疲労損傷の一つであるシェリングを起こしたりして、振動が激しくなる場合がある。
このように軌道に異常が発生すると、振動によりその異常状態が更に酷くなり、軌道が破損したり、列車運行に支障が発生したりする。
【0003】
特許文献1には、軌道に所定間隔をあけて配置された複数の振動発電機を設置し、計測された振動の量を計測点毎に比較することで、各計測点における軌道の動的変位を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5396294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、振動測定器もしくは振動発電機は、振動する物体と確実に密着して付設され、軌道に異常が起きていることを枕木の振動が大きくなっていることで検知する必要がある。また、枕木に振動測定器、データの処理装置及び発信機を長期的に付設する場合、雨水や温度変化等による劣化や振動による付設部分が外れた時の飛散が課題となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、劣化や振動による飛散を抑制し、且つ軌道の異常を適切に検知することができる鉄道用枕木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、振動測定部及び当該振動測定部で測定した振動データを発信する振動データ発信部を鉄道用枕木に組み込むことを考案した。具体的には、鉄道用枕木の上面又は側面に穴(空洞部)を空け、この空洞部に振動測定部及び振動データ発信部を固定し、当該空洞部の開口部に蓋を設けることに想到した。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
(1)本発明の一態様に係る鉄道用枕木は、
直方体状の枕木本体と、
開口部を有し前記枕木本体の内部に配置される空洞部と、
前記空洞部に固定され、振動を測定する振動測定部と、
前記空洞部に固定され、前記振動測定部で測定された振動データを発信する振動データ発信部と、
前記開口部を覆うように設けられる蓋と、
を有する。
(2)上記(1)に記載の態様において、
前記空洞部における正対する一方の第1の壁ともう一方の第2の壁との間で、前記振動測定部を押圧する第1突っ張り部材を有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の態様において、
前記振動測定部が振動測定本体と振動センサー部とに分離し、
前記空洞部における正対する一方の第1の壁ともう一方の第2の壁との間で、前記振動センサー部を押圧する第2突っ張り部材を有してもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の態様において、
前記空洞部の底面に前記枕木本体を貫通する貫通孔を設けてもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の態様において、
前記開口部は前記枕木本体の上面に設けられてもよい。
(6)上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の態様において、
前記開口部は前記枕木本体の側面に設けられてもよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の態様において、
前記振動測定部及び前記振動データ発信部に電力を供給する発電機を有してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、劣化や振動による飛散を抑制し、且つ軌道の異常を適切に検知することができる鉄道用枕木を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道用枕木の設置状態の概略を示す平面図である。
図2図1の側面図である。
図3図1のA1-A1矢視図である。
図4図3のB-B矢視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る鉄道用枕木の設置状態の概略を示す平面図である。
図6図5のA2-A2矢視図である。
図7図6のC-C矢視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る鉄道用枕木の設置状態の概略を示す平面図である。
図9図8の側面図である。
図10図8のD-D矢視図である。
図11図9のE-E矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る鉄道用枕木について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、各実施形態において共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0012】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して第1実施形態に係る鉄道用枕木1について説明する。
各図においては、鉄道用枕木1の長手方向(一対のレール3の幅方向)をX方向、鉄道用枕木1の幅方向(一対のレール3の延在方向)をY方向、鉄道用枕木1の高さ方向(X方向及びY方向と垂直な方向)をZ方向とする。鉄道用枕木1のZ方向において、後述するタイプレート4が装着される方向が上側である。他の実施形態についても同様である。
【0013】
図1は、本実施形態に係る鉄道用枕木1の設置状態の概略を示す平面図である。図2は、図1の側面図である。図1及び図2に示すように、鉄道用枕木1はタイプレート4を用いて一対のレール3に装着される。
鉄道用枕木1は、直方体状の枕木本体2と、開口部32を有し枕木本体2の内部に配置される空洞部30と、空洞部30に固定され、振動を測定する振動測定部10と、空洞部30に固定され、振動測定部10で測定された振動データを発信する振動データ発信部20と、開口部32を覆うように設けられる蓋40と、を有する。
【0014】
鉄道用枕木1の軌道の種類は特に問わない。例えば、バラスト上の枕木や鉄橋上の無道床枕木や分岐枕木やコンクリート直結枕木などである。
【0015】
枕木本体2は、直方体状である。枕木本体2の長手方向(一対のレール3の幅方向)がX方向、枕木本体2の幅方向(一対のレール3の延在方向)がY方向、枕木本体2の高さ方向(X方向及びY方向と垂直な方向)がZ方向である。枕木本体2において、タイプレート4が装着される面が上面2bである。枕木本体2において、枕木本体2のY方向と垂直な面が側面2aである。枕木本体2は、X方向に長い。
枕木本体2は、例えば合成枕木である。合成枕木は、例えば、ガラス繊維で補強されたウレタン発泡体で形成されている。合成枕木には、珪砂、フライアッシュやゴムチップなどの固体充填材が含まれていてもよい。また、合成枕木の一部分に、ゴムや樹脂シート等の異種材料が含まれていてもよい。具体的には、枕木本体2は、例えば、エスロン ネオランバーFFU(FFU、Fiber reinforced Foamed Urethane、登録商標、積水化学工業株式会社製)で形成することが好ましい。エスロン ネオランバーFFUは、ガラス長繊維を所定の方向(例えば、枕木本体2の長さ方向)に引き揃えて熱硬化性樹脂中に埋設し成型した熱硬化性樹脂発泡体である。
【0016】
なお、枕木本体2として、木枕木、プラスチック枕木等を採用してもよい。木枕木は、特に木材の種類を問わない。また、木枕木の一部に、ゴムや樹脂シート等の異種材料が含まれていてもよい。
プラスチック枕木は、熱可塑性樹脂からなる成形体で形成されている。プラスチック枕木には、珪砂、フライアッシュやゴムチップなどの固体充填材が含まれていてもよい。また、プラスチック枕木の一部分に、ゴムや樹脂シート等の異種材料が含まれていてもよい。
【0017】
枕木本体2の内部に空洞部30が配置される。本実施形態において、空洞部30は、枕木本体2の上面2bをくり抜いて形成され、直方体状である。図2においては、空洞部30は点線で示されている。空洞部30は、枕木本体2の上面2bをくり抜いて形成されるため、上面2bに開口部32を有する。ここで、くり抜いて形成されることは、実際に枕木本体2を切削して製造することに限らず、例えば、プラスチック枕木の場合、成型時に予め空洞部30が形成されていてもよい。
空洞部30には、装置(後述する振動測定部10及び振動データ発信部20等)が配置される。装置を空洞部30に配置することで、装置の耐久性を向上させることができる。装置の耐久性を損ねる要因は、例えば、雨水や温度変化、紫外線、固定が外れて脱落する、振動などがある。その内、雨水や温度変化、紫外線、固定の脱落に対しては、空洞部30の中に装置を配置して、開口部32に後述する紫外線対策を施した蓋40をすることで、対策することができる。
空洞部30は一対のレール3の間に配置される。空洞部30を一対のレール3の間に配置することで、空洞部30の両側のレール3の振動を効率的に検知することができる。空洞部30は、一対のレール3の外側に配置してもよい。一対のレール3の外側とは、X方向において一対のレール3の間(内側)と反対側である。
空洞部30は、例えば、X方向(長さ方向)の長さは50mmから300mm、Y方向(幅方向)の長さは50mmから150mm、Z方向(高さ方向)の長さは20mmから80mmである。
空洞部30は直方体状でなくてもよい。例えば、空洞部30は、円柱状、多角柱状でもよい。
空洞部30の数は、本実施形態の図では1つだが、1つに制限するものではない。ただし、空洞部30の数が多いと、枕木本体2の強度が低下するため、空洞部30の数は必要最低限であることが好ましい。
【0018】
空洞部30には、枕木本体2の振動を測定する振動測定部10が固定される。枕木本体2の振動を正確に測定するため、振動測定部10は空洞部30に確実に固定されることが好ましい。振動測定部10は、ねじや接着剤等で空洞部30に固定する。
振動測定部10の測定方式は特に問わない。例えば、機械式振動方式、静電容量方式、渦電流方式、圧電素子方式、レーザードップラー方式、電磁誘導方式などである。また、接触式または非接触式に関しては、接触式が望ましい。非接触式は、センサーが振動していない状態にする必要があるが、本実施形態では、振動している鉄道用枕木1に振動測定部10を配置するために接触式が望ましい。
【0019】
振動測定は、常時実施してもよい。一方で、軌道の状態を検知する事が目的であるため、タイマーにより時間を決めて行ってもよい。例えば、列車運行の少ない深夜は測定しない、または日中の所定時間において測定する、などである。測定時間を短縮することにより、使用する電力を減少させることができる。さらに、測定によって取得するデータを減らすことで、データを格納する媒体の容量を低減させることができる。
【0020】
空洞部30には、振動測定部10で測定された振動データを発信する振動データ発信部20が固定される。振動データ発信部20は、振動データを、軌道保線を担当する部門の受信機に発信する。振動データ発信部20は、ねじや接着剤等で空洞部30に固定する。
測定された振動データは、一旦振動データ発信部20に格納してから、時間を決めて発信しても良い。例えば、毎日振動データを発信しても良いし、週1回など期間をあけて発信しても良い。または、測定された振動データを振動データ発信部20に格納せずにそのまま発信してもよい。
振動データを格納して発信する場合、得られた振動データをそのまま発信してもよいし、得られた振動データのうち、一定の物理量以上の振動データを発信してもよいし、得られた最大の物理量の振動データを発信してもよい。ここで言う物理量とは、振動の加速度、速度、または振幅を表す。一定の物理量以上の振動データを発信する場合や最大の物理量の振動データを発信する場合、振動の周波数は、一定の周波数の範囲のものを選択することが望ましい。その理由は、軌道で発生する振動は、一定の周波数の範囲であるので、それ以外の周波数は、列車による振動ではない可能性が考えられるからである。
送信データの送信方法は、特に問わない。例えば、電話回線、インターネット経由、無線、有線などである。
【0021】
開口部32を覆うように蓋40が設けられる。蓋40は、例えばねじで枕木本体2に固定する。蓋40と枕木本体2との接触部分には、例えばシール用ゴムパッキンを配置することで、空洞部30に水等の浸入を低減することができる。蓋40は、水が浸透しないものが望ましい。また、蓋40は、熱伝導率の低いもの、例えばプラスチック製、ガラスウール、または発泡体を内側に配した材料が望ましい。また蓋40は、耐紫外線を施した材料が望ましい。
【0022】
上述のように、本実施形態に係る鉄道用枕木1は、振動測定部10及び振動データ発信部20が枕木本体2の空洞部30に固定されている。これにより、軌道の異常を適切に検知することができる。さらに、本実施形態に係る鉄道用枕木1は、空洞部30の開口部32を覆うように蓋40が設けられている。これにより、雨水や温度変化等による劣化や振動による飛散を抑制することができる。
【0023】
一方で、上述のように振動測定部10をねじや接着剤等で空洞部30に固定した場合、長期的には固定部が緩むおそれがある。鉄道用枕木1の振動をより正確に測定するため、振動測定部10をより的確に固定することが望ましい。このために、振動測定部10を押圧する第1突っ張り部材50を設けてもよい。具体的には、図3及び図4に示すように、空洞部30における正対する一方の第1の壁33ともう一方の第2の壁34との間で、振動測定部10を押圧する第1突っ張り部材50を有してもよい。第1突っ張り部材50は、例えば、くさび、バネである。
図3及び図4では、Y方向において第1の壁33と第2の壁34が正対している。図3及び図4では、第1の壁33に振動測定部10が当接し、第2の壁34に第1突っ張り部材50が当接している。第2の壁34からの反力により第1突っ張り部材50が振動測定部10を第1の壁33に押圧する。押圧する圧力は、望ましくは0.03MPa以上、1.5MPa以下である。押圧する圧力が0.03MPa未満では固定する効果が小さく、1.5MPa超では枕木本体2が変形してしまうおそれがある。押圧する圧力は、より好ましくは0.05MPa以上、1MPa以下である。
【0024】
このように、第1の壁33と第2の壁34との間において、第1突っ張り部材50により振動測定部10を押圧することにより、振動測定部10をより確実に固定することができ、さらに、軌道の異常を適切に検知することができる。
【0025】
空洞部30の底面35には、枕木本体2を貫通する貫通孔31を設けてもよい。空洞部30の内部に水が溜まった場合に、貫通孔31から水を抜くことができる。貫通孔31の直径は、5mmから20mmである。空洞部30の底面35は、空洞部30の底部の面であり、空洞部30の下側の面である。
貫通孔31の数は、本実施形態の図では1つだが、1つに制限するものではない。
【0026】
鉄道用枕木1は、振動測定部10及び振動データ発信部20に電力を供給する発電機60を有してもよい。発電機60の種類は、特に問わない。例えば、太陽電池、圧電素子による振動発電機、電磁誘導による振動発電機などである。発電機60が太陽電池の場合、配置する場所は、枕木本体2の上面2bが望ましい。発電機60が振動発電機の場合、配置場所は特に問わず、振動測定部10等を配置している空洞部30の内部に配置してもよい。
【0027】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について以下に説明を行う。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、その他同一構成については同一符号を用いるなどして重複説明を省略する。
【0028】
図5から図7を参照して本実施形態に係る鉄道用枕木1Aについて説明する。図5は、本実施形態に係る鉄道用枕木1Aの設置状態の概略を示す平面図である。上述の第1実施形態では、振動測定部10が第1突っ張り部材50によって押圧されるが、本実施形態では、振動測定部10の振動センサー部12が第2突っ張り部材51によって押圧される点において、第1実施形態と相違する。具体的には、本実施形態に係る鉄道用枕木1Aは、振動測定部10が振動測定本体11と振動センサー部12とに分離する場合であり、空洞部30における正対する一方の第1の壁33ともう一方の第2の壁34との間で、振動センサー部12を押圧する第2突っ張り部材51を有する。
【0029】
図6及び図7に示すように、振動測定部10が振動測定本体11と振動センサー部12とに分離する。振動センサー部12は枕木本体2の振動を検知する。
振動測定の方式は、機械式、電磁式、圧電式、光学式があり、機械式は、バネ等が内部に内蔵されている方式、電磁式はピックアップコイルを使用して振動を電気的に検出する方式、圧電式は圧電素子を使用して振動を電気的に検出する方式、光学式はレーザーを使用して振動を光学的に検出する方式である。機械式は、振動の大きさの精度が低い為、好ましくない。また、光学式は、センサー自体が振動する為に好ましくない。他の方式はいずれでも構わない。
従って振動測定本体11は、例えば電磁式、圧電式であり、振動センサーの検出した数値を増幅したり、加工したりする機能を有する。加工とは、例えば、検出した振動加速度を変位に加工したり、設定した周波数の範囲内の振動のみを抜き出したりすることである。振動測定本体11は、ねじや接着剤等で空洞部30に固定する。振動測定本体11は空洞部30に確実に固定されることが好ましい。
振動センサー部12は、例えば、電磁式では動的速度センサー、圧電式では圧電式加速度センサーである。振動センサー部12で振動を検知するため、振動センサー部12も空洞部30に確実に固定されることが好ましい。振動センサー部12をねじや接着剤等で空洞部30に固定した場合、長期的には固定部が緩むおそれがある。振動センサー部12をより確実に固定するために、振動センサー部12を押圧する第2突っ張り部材51を設ける。具体的には、図6及び図7に示すように、空洞部30における正対する一方の第1の壁33ともう一方の第2の壁34との間で、振動センサー部12を押圧する第2突っ張り部材51を設ける。第2突っ張り部材51は、例えば、くさび、バネである。
図6及び図7では、Y方向において第1の壁33と第2の壁34が正対している。図6及び図7では、第1の壁33に振動センサー部12が当接し、第2の壁34に第2突っ張り部材51が当接している。第2の壁34からの反力により第2突っ張り部材51が振動センサー部12を押圧する。押圧する圧力は望ましくは0.03MPa以上、1.5MPa以下である。押圧する圧力が0.03MPa未満では固定する効果が小さく、1.5MPa超では枕木本体2が変形してしまうおそれがある。押圧する圧力は、より好ましくは0.05MPa以上、1MPa以下である。
【0030】
このように、第1の壁33と第2の壁34との間において、第2突っ張り部材51により振動センサー部12を押圧することにより、振動センサー部12をより確実に固定することができ、軌道の異常を適切に検知することができる。
【0031】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について以下に説明を行う。本実施形態の説明では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明し、その他同一構成については同一符号を用いるなどして重複説明を省略する。
【0032】
図8から図11を参照して本実施形態に係る鉄道用枕木1Bについて説明する。図8は、本実施形態に係る鉄道用枕木1Bの設置状態の概略を示す平面図である。上述の第2実施形態では、空洞部30は枕木本体2の上面2bをくり抜いて形成されるため、上面2bに開口部32を有するが、本実施形態では、空洞部30Aは枕木本体2の側面2aをくり抜いて形成されるため、側面2aに開口部32Aを有する点において、第2実施形態と相違する。側面2aは、枕木本体2において、枕木本体2のY方向と垂直な面である。
【0033】
図8及び図9に示すように、本実施形態では、空洞部30Aは、枕木本体2の側面2aをくり抜いて形成され、直方体状である。図8においては、空洞部30Aは点線で示されている。空洞部30Aは枕木本体2の側面2aをくり抜いて形成されるため、開口部32Aは枕木本体2の側面2aに設けられる。
本実施形態に係る鉄道用枕木1Bは、図10及び図11に示すように、第2実施形態と同様に、振動測定部10が振動測定本体11と振動センサー部13とに分離し、空洞部30Aにおける正対する一方の第1の壁33Aともう一方の第2の壁34Aとの間で、振動センサー部13を押圧する第3突っ張り部材52を有する。
【0034】
振動測定本体11は、ねじや接着剤等で空洞部30Aに固定する。振動測定本体11は空洞部30Aに確実に固定されることが好ましい。
振動センサー部13で振動を検知するため、振動センサー部13も空洞部30Aに確実に固定されることが好ましい。振動センサー部13をねじや接着剤等で空洞部30Aに固定した場合、長期的には固定部が緩むおそれがある。振動センサー部13をより確実に固定するために、振動センサー部13を押圧する第3突っ張り部材52を設ける。具体的には、図10及び図11に示すように、空洞部30Aにおける正対する一方の第1の壁33Aともう一方の第2の壁34Aとの間で、振動センサー部13を押圧する第3突っ張り部材52を設ける。第3突っ張り部材52は、例えば、くさび、バネである。
図10及び図11では、Z方向において第1の壁33Aと第2の壁34Aが正対している。図10及び図11では、第1の壁33Aに振動センサー部13が当接し、第2の壁34Aに第3突っ張り部材52が当接している。第2の壁34Aからの反力により第3突っ張り部材52が振動センサー部13を押圧する。押圧する圧力は、望ましくは0.03MPa以上、1.5MPa以下である。押圧する圧力が0.03MPa未満では固定する効果が小さく、1.5MPa超では枕木本体2が変形してしまうおそれがある。押圧する圧力は、より好ましくは0.05MPa以上、1MPa以下である。
【0035】
このように、第1の壁33Aと第2の壁34Aとの間において、第3突っ張り部材52により振動センサー部12を押圧することにより、振動センサー部13をより確実に固定することができ、軌道の異常を適切に検知することができる。
【0036】
上述の第3実施形態においては、振動測定部10が振動測定本体11と振動センサー部13とに分離するが、第1実施形態のように振動測定部10が振動測定本体11と振動センサー部13とに分離しなくてもよい。すなわち、振動測定部10が第1の壁33Aと第2の壁34Aとの間において第3突っ張り部材52によって押圧されてもよい。
【実施例0037】
以下、実施例について説明するが、本開示に係る鉄道用枕木は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
以下、発明例1として上述の第2実施形態の鉄道用枕木1Aを用いて、下記の条件で検証した結果の一例について説明する。
(1)枕木本体2:ガラス繊維補強発泡ウレタン(比重0.74)、バラスト軌道上の枕木
(2)振動測定部10:振動測定本体11と振動センサー部12に分離する圧電式振動計
(3)振動データ発信部20:無線式
(4)発電機60:枕木本体2の上面2bに配置した太陽電池
(5)空洞部30(枕木本体2上面2bに配置):Z方向30mm、Y方向50mm、X方向100mm
(6)貫通孔31:φ10mm
(7)蓋40:Z方向20mm、Y方向100mm、長さX方向150mmのガラス長繊維発泡ウレタン(比重0.74)
【0039】
振動測定本体11及び振動データ発信部20は、ねじ及び接着剤で空洞部30の底面に固定した。空洞部30の第1の壁33に振動センサー部12を当接し、第2の壁34に第2突っ張り部材51を配置して、振動センサー部12を第1の壁33に押圧させた。押圧する圧力は0.1MPaとした。枕木本体2の上面2bの開口部32を覆うように蓋40を枕木本体2にねじ止めした。蓋40と枕木本体2の接触部分には、シール用ゴムパッキンを配置した。蓋40の表面には、耐紫外線用にアクリルウレタン塗料を塗布した。振動測定部10では、タイマーにより毎日午前7時から午前10時までの振動を測定し、その日の振動の最大変位を振動配信データ部から発信した。
【0040】
[実施例2]
以下、発明例2として上述の第3実施形態の鉄道用枕木1Bを用いて、下記の条件で検証した結果の一例について説明する。
(1)枕木本体2:ガラス繊維補強発泡ウレタン(比重0.74)、バラスト軌道上の枕木
(2)振動測定部10:振動測定本体11と振動センサー部13に分離する圧電式振動計
(3)振動データ発信部20:無線式
(4)発電機60:枕木本体2の上面2bに配置した太陽電池
(5)空洞部30A(枕木本体2側面2aに配置):Z方向30mm、Y方向50mm、X方向100mm
(6)貫通孔31:φ10mm
(7)蓋41:Z方向100mm、Y方向20mm、X方向150mmのガラス長繊維発泡ウレタン(比重0.74)
【0041】
振動測定本体11及び振動データ発信部20は、ねじ及び接着剤で空洞部30Aの底面に固定した。空洞部30Aの第1の壁33Aに振動センサー部13を当接し、第2の壁34あに第3突っ張り部材52を配置して、振動センサー部13を第1の壁33Aに押圧させた。押圧する圧力は0.1MPaとした。枕木本体2の側面2aの開口部32Aを覆うように蓋41を枕木本体2にねじ止めした。蓋41と枕木本体2の接触部分には、シール用ゴムパッキンを配置した。蓋41の表面には、耐紫外線用にアクリルウレタン塗料を塗布した。振動測定部10では、タイマーにより毎日午前7時から午前10時までの振動を測定し、その日の振動の最大変位を振動配信データ部から発信した。
【0042】
[比較例1]
以下、比較例の一例について説明する。
(1)枕木本体:ガラス繊維補強発泡ウレタン(比重0.74)、バラスト軌道上の枕木
(2)振動測定部:振動測定本体と振動センサー部に分離する圧電式振動計
(3)振動データ発信部:無線式
(4)発電機:枕木本体の上面に配置した太陽電池
(5)空洞部なしで、枕木上面に振動測定本体、振動センサー部を配置
【0043】
振動測定本体及び振動データ発信部は、ねじ及び接着剤で枕木上面に固定した。振動センサー部は、ねじで枕木上面に固定した押さえ金具で枕木上面に押圧させた。押圧する圧力は0.1MPaとした。振動測定部では、タイマーにより毎日午前7時から午前10時までの振動を測定し、その日の振動の最大変位を振動配信データ部から発信した。
【0044】
発明例1においては、振動測定本体11、振動センサー部12、及び振動データ発信部20を空洞部30に固定し、第2突っ張り部材51で振動センサー部12を押圧した。発明例2においては、振動測定本体11、振動センサー部13、及び振動データ発信部20を空洞部30Aに固定し、第3突っ張り部材52で振動センサー部13を押圧した。
このような構成により、振動センサー部12,13を確実に固定することができ、軌道の異常を適切に検知できた。また、空洞部30,30Aの開口部32,32Aを覆うように蓋40,41を設けたので、雨水や温度変化等による劣化や振動による飛散を抑制することができた。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
例えば、貫通孔31はなくてもよい。振動測定部10を枕木本体2の長手方向(X方向)に突っ張り部材で押圧してもよい。振動センサー部12を枕木本体2の長手方向(X方向)に突っ張り部材で押圧してもよい。突っ張り部材はなくてもよい。発電機60はなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 鉄道用枕木
2 枕木本体
3 レール
4 タイプレート
10 振動測定部
11 振動測定本体
12,13 振動センサー部
20 振動データ発信部
30,30A 空洞部
31 貫通孔
32,32A 開口部
33,33A 第1の壁
34,34A 第2の壁
35 底面
40,41 蓋
50 第1突っ張り部材
51 第2突っ張り部材
52 第3突っ張り部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11