(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175344
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】車両の荷室構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081666
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彪
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA03
3D022BB04
3D022BC10
(57)【要約】
【課題】荷室におけるフロアボードの下方にスペアタイヤとトノカバーとの両方を収納することができるとともに、スペアタイヤおよびトノカバーの収納および取り出しの際の作業性に優れる車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】車両1の荷室1aでは、フロアボードの下方に、スペアタイヤ収納部1bとトノカバー収納部1cとが設けられている。トノカバー3は、筒部3aとシート部と延出板部3bとを有する。トノカバー収納部1bは、スペアタイヤ2と荷室1aのリアエンドとの間の部分であって、巻き取り状態のトノカバー3における筒部3aが配置される部分と、スペアタイヤ2の一部の上方の部分であって、シート部が筒部3a内に巻き取られた状態で当該筒部3aから外方に延出している延出板部3bが略水平の姿勢で配置される部分とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室のフロアボードの下方に、スペアタイヤと巻き取り式のトノカバーとを収納可能な車両の荷室構造であって、
前記フロアボードの下方に形成された、前記スペアタイヤを収納するためのスペアタイヤ収納部と、
前記フロアボードの下方に形成された、巻き取り状態の前記トノカバーを収納するためのトノカバー収納部と、
を備え、
前記トノカバーは、
筒形状を有する筒部と、
前記筒部の内方に対して巻き取り/引き出しが可能なシート部と、
前記シート部の端縁に接続され、前記シート部が前記筒部に巻き取られた状態において、前記筒部の外方に配される板状の延出板部と、
を有し、
前記トノカバー収納部は、
前記車両の前後方向における前記スペアタイヤ収納部と前記荷室のリアエンドとの間の部分であって、前記筒部が配置される部分と、
前記スペアタイヤ収納部に収納された前記スペアタイヤの一部の上方の部分であって、当該スペアタイヤの一部を覆うように、前記車両の上下方向に対して交差する方向に前記延出板部が配置される部分と、
を有する、
車両の荷室構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の荷室構造において、
前記トノカバー収納部は、前記荷室を上方から平面視する場合に、前記スペアタイヤにおける両側方および後方に隣接配置された、前記トノカバーを保持するトノカバー保持部材を有し、
前記トノカバー保持部材は、
前記スペアタイヤの両側方に設けられた、前記スペアタイヤに対して間隔を空けた状態となるように前記延出板部の一部を支持する前方支持部と、
前記前方支持部よりも後方側に設けられた、前記筒部の両端を支持する後方支持部と、
を有する、
車両の荷室構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の荷室構造において、
前記前方支持部は、前記後方支持部よりも上方に位置するよう形成されており、
前記車両の前後方向において、前記前方支持部と前記後方支持部との間を接続する段状の段差部をさらに有する、
車両の荷室構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の荷室構造において、
前記トノカバー保持部材は、当該トノカバー保持部材の厚み方向における前記段差部の裏面側に、オモテ面側に向けて凹入するように設けられた凹部をさらに有する、
車両の荷室構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の荷室構造において、
前記トノカバー保持部材は、前記裏面側に、他の部分よりも前記荷室の車体フロア側に向けて突設された、前記車両の前後方向および車幅方向での位置決めのための位置決め用凸部をさらに有する、
車両の荷室構造。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れかに記載の車両の荷室構造において、
前記トノカバー保持部材は、前記前方支持部よりも前方側に配された、前記前方支持部よりも上方に向けて高く形成された前方凸部をさらに有し、
前記前方凸部は、前記前方支持部に前記延出板部が載置された状態で、当該延出板部における前記前方凸部が設けられた側の端縁部との間に隙間が空くように設けられている、
車両の荷室構造。
【請求項7】
請求項2から請求項6の何れかに記載の車両の荷室構造において、
前記トノカバー保持部材は、車幅方向の両側方に設けられた前記後方支持部同士を接続する接続面部をさらに有し、
前記後方支持部は、前記筒部の後端部と前記荷室の前記リアエンドとの間に隙間が空くように配設され、
前記接続面部は、当該接続面部の上面と前記筒部との間に隙間が空くように形成されている、
車両の荷室構造。
【請求項8】
請求項2から請求項7の何れかに記載の車両の荷室構造において、
前記トナー保持部材は、発泡樹脂材料を含み形成されている、
車両の荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室構造に関し、特にフロアボードの下方にスペアタイヤを収納可能な構成を備える荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴンタイプの車両やSUV(Sport Utility Vehicle)などでは、後席の後方に荷室が設けられている。そして、このような車両においては、プライバシーの保護や防犯上の観点などから、荷室に積載した荷物の上方を覆うトノカバーが用いられる場合がある。トノカバーとしては、例えば、筒状の部分に対して巻き取り/引き出しが可能なシート部と、シート部の先端に取り付けられた板状の延出板部とを有するものが採用される。延出板部は、筒状の部分には巻き取られることはなく、当該筒状の部分から外方に延出している。
【0003】
特許文献1には、トノカバーの不使用時において、巻き取り状態のトノカバーをフロアボードの下方に設けられた溝部に収納することができる構成が開示されている。特許文献1に開示のトノカバーの収納構造は、筒状の部分の両端を引掛けられるように構成された溝状の凹部と、筒状の部分から下方に垂れた状態で延出板部を収納することができるように、溝状の凹部から下方に向けて形成された底側凹部とが互いに連続する形状で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、仕向地によっては、車両にスペアタイヤの搭載が義務付けられている場合がある。スペアタイヤは、フロアボードの下方に設けられたスペアタイヤ収納部に収納される。このような車両では、フロアボード下にスペアタイヤを収納するためのスペースとトノカバーを収納するためのスペースとを確保することが必要となる。この場合に、荷室の後方からのスペアタイヤおよびトノカバーの取り出しや収納を考慮して、スペアタイヤおよびトノカバーの収納箇所を設けることが必要となる。即ち、スペアタイヤもトノカバーも荷室の後方からユーザの手の届く範囲に収納することが求められる。
【0006】
なお、荷室におけるスペアタイヤの収納箇所と荷室のリアエンドとの間に、上記特許文献1に開示されたトノカバーの収納凹部を設けることも考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示のトノカバーの収納箇所は、延出板部が上下方向を向く姿勢で収納されるため、延出板部の幅分だけ地面からフロアボードまでの高さが高くなってしまい荷物の積載量の減少や使い勝手が悪くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、荷室におけるフロアボードの下方にスペアタイヤとトノカバーとの両方を収納することができるとともに、スペアタイヤおよびトノカバーの収納および取り出しの際の作業性に優れる車両の荷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車両の荷室構造は、荷室のフロアボードの下方に、スペアタイヤと巻き取り式のトノカバーとを収納可能な構造である。本態様に係る車両の荷室構造は、スペアタイヤ収納部とトノカバー収納部とを備える。前記スペアタイヤ収納部は、前記フロアボードの下方に形成された、前記スペアタイヤを収納するための部位である。前記トノカバー収納部は、前記フロアボードの下方に形成された、巻き取り状態の前記トノカバーを収納するための部位である。
【0010】
前記トノカバーは、筒形状を有する筒部と、シート部と、延出板部とを有する。前記シート部は、前記筒部の内方に対して巻き取り/引き出しが可能な部位である。前記延出板部は、前記シート部の端縁に接続され、前記シート部が前記筒部に巻き取られた状態において、前記筒部の外方に配される板状の部位である。
【0011】
前記トノカバー収納部は、前記車両の前後方向における前記スペアタイヤ収納部と前記荷室のリアエンドとの間の部分であって、前記筒部が配置される部分と、前記スペアタイヤ収納部に収納された前記スペアタイヤの一部の上方の部分であって、当該スペアタイヤの一部を覆うように、前記車両の上下方向に対して交差する方向に前記延出板部が配置される部分とを有する。
【0012】
上記態様に係る車両の荷室構造では、スペアタイヤとトノカバーとをフロアボードの下方に収納した状態において、トノカバーの延出板部がスペアタイヤの一部の上方を覆うように配される。よって、上記態様に係る車両の荷室構造では、荷室にスペアタイヤとトノカバーとの両方を収納しながら、前後方向における収納部分のサイズを小さく抑えることができる。即ち、上記態様に係る車両の荷室構造では、スペアタイヤ収納部とトノカバー収納部とが互いに重複しない位置関係をもって前後方向に並べた場合に比べて、スペアタイヤの上方に延出板部が配される分だけ、スペアタイヤ収納部を荷室の後部に配することができる。このため、上記態様に係る車両の荷室構造では、荷室に収納したスペアタイヤやトノカバーを荷室の後方から出し入れがし易い。
【0013】
また、上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバーの延出板部がスペアタイヤの上方を覆うように略水平(車両の上下方向に対して交差する方向)に配されるので、上記特許文献1に開示の構造に比べて、地面からフロアボードまでの高さが高くなってしまうという問題を生じず、荷物の積載量の減少や使い勝手が悪くなるということがない。
【0014】
従って、上記態様に係る車両の荷室構造では、荷室におけるフロアボードの下方にスペアタイヤとトノカバーとの両方を収納することができるとともに、スペアタイヤおよびトノカバーの収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【0015】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トノカバー収納部は、前記荷室を上方から平面視する場合に、前記スペアタイヤにおける両側方および後方に隣接配置された、前記トノカバーを保持するトノカバー保持部材を有し、前記トノカバー保持部材は、前記スペアタイヤの両側方に設けられた、前記スペアタイヤに対して間隔を空けた状態となるように前記延出板部の一部を支持する前方支持部と、前記前方支持部よりも後方側に設けられた、前記筒部の両端を支持する後方支持部と、を有する、としてもよい。
【0016】
上記態様に係る車両の荷室構造では、前方支持部と後方支持部とを有するトノカバー保持部材を備えるので、荷室のフロアボードの下方にスペアタイヤとトノカバーとを収納した場合に、トノカバーの延出板部とスペアタイヤとの接触や、車両の加減速等の際のトノカバーの前後方向への動きを規制することができる。
【0017】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記前方支持部は、前記後方支持部よりも上方に位置するよう形成されており、前記車両の前後方向において、前記前方支持部と前記後方支持部との間を接続する段状の段差部をさらに有する、としてもよい。
【0018】
上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバー保持部材において、車両の前後方向における前方支持部と後方支持部との間に段差部が形成されている。このため、上記態様に係る車両の荷室構造では、前方支持部と後方支持部との間を平面等で接続する場合に比べて、断面二次モーメントの確保によるトノカバー保持部材の剛性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トノカバー保持部材は、当該トノカバー保持部材の厚み方向における前記段差部の裏面側に、オモテ面側に向けて凹入するように設けられた凹部をさらに有する、としてもよい。
【0020】
上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバー保持部材における段差部の裏面側に凹部が形成されているので、当該凹部の形成による薄肉化の分だけトノカバー保持部材のボリュームを減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トノカバー保持部材は、前記裏面側に、他の部分よりも前記荷室の車体フロア側に向けて突設された、前記車両の前後方向および車幅方向での位置決めのための位置決め用凸部をさらに有する、としてもよい。
【0022】
上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバー保持部材の裏面側に位置決め用凸部が設けられているので、車両が加減速した際や方向転換した際などに車体フロアに対してトノカバー保持部材が動いてしまうのを規制することができる。
【0023】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トノカバー保持部材は、前記前方支持部よりも前方側に配された、前記前方支持部よりも上方に向けて高く形成された前方凸部をさらに有し、前記前方凸部は、前記前方支持部に前記延出板部が載置された状態で、当該延出板部における前記前方凸部が設けられた側の端縁部との間に隙間が空くように設けられている、としてもよい。
【0024】
上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバーを収納した状態で前方凸部と延出板部との間に隙間が空くようにトノカバー保持部材が配設されている。このため、上記態様に係る車両の荷室構造では、ユーザがトノカバー保持部材の前方支持部にトノカバーの延出板部を載置したり、載置した延出板部を取り出したりする際の作業性に優れる。
【0025】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トノカバー保持部材は、車幅方向の両側方に設けられた前記後方支持部同士を接続する接続面部をさらに有し、前記後方支持部は、前記筒部の後端部と前記荷室の前記リアエンドとの間に隙間が空くように配設され、前記接続面部は、当該接続面部の上面と前記筒部との間に隙間が空くように形成されている、としてもよい。
【0026】
上記態様に係る車両の荷室構造では、筒部の後端部と荷室のリアエンドとの間、および筒部と接続面部との間にそれぞれ隙間が空くようにトノカバー保持部材が配設されている。このため、上記態様に係る車両の荷室構造では、上記の隙間から指や手を差し込んでユーザがトノカバー収納部に対してトノカバーを収納あるいは取り出しを行うことができる。よって、上記態様に係る車両の荷室構造では、荷室におけるトノカバー収納部に対するトノカバーの収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【0027】
上記態様に係る車両の荷室構造において、前記トナー保持部材は、発泡樹脂材料を含み形成されている、としてもよい。
【0028】
上記態様に係る車両の荷室構造では、トノカバー保持部材が発泡樹脂材料(例えば、発泡スチロール)を含み形成されているので、軽量化を図ることができるとともに、車両の荷室に合わせた種々の形状に成型し易い。
【発明の効果】
【0029】
上記の各態様に係る車両の荷室構造では、荷室におけるフロアボードの下方にスペアタイヤとトノカバーとの両方を収納することができるとともに、スペアタイヤおよびトノカバーの収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の荷室構造を示す斜視図である。
【
図7】収納保持部材における後方部材を示す平面図である。
【
図8】
図7のVIII―VIII線断面を示す断面図である。
【
図9】
図7のIX-IX線断面を示す断面図である。
【
図10】収納保持部材とトノカバーとの配置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0032】
以下の説明で用いる図において、「Fr」は車両前方、「Re」は車両後方、「Ri」は車両右方、「Le」は車両左方、「Up」は車両上方、「Lo」は車両下方をそれぞれ示す。
【0033】
1.車両1における荷室1aの構造
本発明の実施形態に係る車両1における荷室1aの構造について、
図1を用いて説明する。なお、
図1では、荷室1aの下部に装着されるフロアボードの図示を省略している。
【0034】
図1に示すように、車両1の荷室1aには、図示を省略しているフロアボードの下方の領域に、スペアタイヤ収納部1bとトノカバー収納部1cとが設けられている。
【0035】
スペアタイヤ収納部1bには、スペアタイヤ2が収納可能である。トノカバー収納部3には、巻き取り状態のトノカバー3が収納可能である。
【0036】
そして、荷室1aには、スペアタイヤ収納部1bに収納されたスペアタイヤ2の周囲を囲むように、枠状部材4が配設されている。枠状部材4の役割については後述するが、枠状部材4は、発泡スチロールなどの発泡樹脂材料を含み形成されている。
【0037】
2.トノカバー3の構造
トノカバー3の構造について、
図2を用いて説明する。
【0038】
図2に示すように、トノカバー3は、巻き取り式のトノカバーであって、筒部3aとシート部3cと延出板部3bとを有する。筒部3aは、筒形状を有する。シート部3cは、筒部3aの内方(筒内空間)に対して、矢印Aで示すように巻き取り/引き出しが可能となっている。なお、筒部3aには、図示を省略するスプリングが取り付けられており、シート部3cを巻き芯Ax3回りに巻き取ろうとする付勢力が作用している。
【0039】
延出板部3bは、シート部3cの端縁に接続されており、シート部3cが筒部3a内に巻き取られた状態においても、筒部3aの外方に延出された状態となっている。延出板部3bは、板状の部材を含み形成されており、ユーザが把持するための把持穴部3dを有する。ユーザは、把持穴部3dを把持してシート部3cを筒部3aから引き出すことができる。
【0040】
3.荷室1aへのスペアタイヤ2とトノカバー3との収納形態
荷室1aへのスペアタイヤ2とトノカバー3との収納形態について、
図3および
図4を用いて説明する。なお、
図3および
図4でも、フロアボードを省略して図示をしている。
【0041】
図3および
図4に示すように、荷室1aのスペアタイヤ収納部1bは、下方に窪むように形成されたスペアタイヤパン1eを有する。スペアタイヤ2は、スペアタイヤパン1eの上に、径方向が略水平となる姿勢で載置される。
【0042】
枠状部材4は、スペアタイヤ収納部1bに収納されたスペアタイヤ2の周囲を囲むように配されている。詳細な説明は省略するが、枠状部材4には、車載工具やジャッキを保持する窪み部も設けられている。
【0043】
図4に示すように、トノカバー収納部1cに巻き取り状態のトノカバー3を収納した状態では、筒部3aがスペアタイヤ収納部1bと荷室1aのリアエンド1dとの間の領域に配置される。そして、
図3および
図4に示すように、トノカバー3の延出板部3bは、スペアタイヤ収納部1bに収納されたスペアタイヤ2の一部(後方側の部分)の上方を覆うように、略水平方向(車両1の上下方向に略直交する方向)に配置される。
【0044】
4.枠状部材4の構造
枠状部材4の構造について、
図5および
図6を用いて説明する。なお、
図5は枠状部材4のオモテ面側を斜め上方から見た斜視図であり、
図6は枠状部材4の裏面側を斜め下方から見た斜視図である。
【0045】
図5に示すように、枠状部材4は、前方部材41と後方部材42との組み合わせにより構成されている。前方部材41と後方部材42とは、前後方向に互いに当接または近接して配置される。前方部材41と後方部材42との組み合わせによる構成される枠状部材4は、上方からの平面視で、略矩形の外周形状を有し、想定されるスペアタイヤ2の外径よりも少し大径の開口部4aを有する。
【0046】
荷室1aでは、後方部材42の上方がトノカバー収納部1cに該当する。換言すると、トノカバー収納部1cは、トノカバー保持部材としての後方部材42を有する。後方部材42における左右の両側部分には、前方支持部4dと後方支持部4cとが形成されている。前方支持部4dは、巻き取り状態のトノカバー3における延出板部3bの両側端部を支持する部位である。後方支持部4cは、巻き取り状態のトノカバー3における筒部3aの両側端部を支持する部位である。
【0047】
図5の拡大部分に示すように、後方部材42では、前方支持部4dの方が後方支持部4cよりも上方に位置する。そして、後方部材42における前方支持部4dと後方支持部4cとの間の領域には、階段状に形成された段差部4eが設けられている。
【0048】
図6に示すように、枠状部材4の裏面4fには、前方部材41および後方部材42の両部材に亘って複数の位置決め用凸部4gが設けられている。位置決め用凸部4gは、裏面4fにおける他の部分よりも下方に突出しており、車体フロア上に枠状部材4を載置した際に位置決めを行うための部位である。
【0049】
また、枠状部材4の裏面4fには、後方部材42の左右両側部に、オモテ面側に向けて凹入された凹部4hが形成されている。
【0050】
5.後方部材42における左右両側部の詳細構造
トノカバー3を保持するための部材である後方部材42の左右両側部の詳細構造について、
図7から
図9を用いて説明する。
【0051】
図7に示すように、後方部材42は、巻き取り状態のトノカバー3が上方に配設されるトノカバー配置部4bを有する。トノカバー配置部4bにおける左右両側部には、上述のように、前方支持部4d、段差部4e、後方支持部4cが形成されている。
【0052】
図8に示すように、
図7のVIII-VIII線で断面視する場合に、トノカバー配置部4bにおける左右両側部は、段差部4e、中層部4i、および低層部4jの順で高さが低くなるように、階段状に形成されている。そして、中層部4iと低層部4jとの境界部分を含む領域の裏面4f側に凹部4hが設けられている。
【0053】
図9に示すように、IX-IX線で断面視する場合に、トノカバー配置部4bにおける左右両側部は、前方支持部4d、段差部4e、中層部4k、および後方支持部4cの順で高さが低くなるように、階段状に形成されている。そして、前方支持部4dのさらに前方には、前方支持部4dよりも高さが高い前方凸部4lが設けられ、後方支持部4cのさらに後方には、前方凸部4lと略同じ高さの後方凸部4mが形成されている。前方凸部4lは、前方支持部4dで支持されたトノカバー3の延出板部3bが前方に移動してしまわないようにするためのストッパー部である。後方凸部4mは、後方支持部4cで支持されたトノカバー3の筒部3aが後方に移動してしまわないようにするためのストッパー部である。
【0054】
前後方向において、前方凸部4lから後方支持部4cに亘る領域の裏面4f側には、凹部4hが設けられている。
【0055】
6.後方部材42に対するトノカバー3の配置形態
後方部材42に対するトノカバー3の配置形態について、
図10を用いて説明する。なお、
図10では、後方部材42およびトノカバー3における右側部分だけを抜き出して図示しているが、図示を省略する左側部分についても同様の配置関係を有する。
【0056】
図10に示すように、後方部材42は、トノカバー3を収納部材4における後方部材42の上に載置した状態で、トノカバー3における延出板部3bの前端縁部3eと後方部材42の前方凸部4lとの間に隙間が空くように設けられている(矢印G1で示す部分)。
【0057】
また、後方部材42は、トノカバー3が後方部材42に保持された状態で、トノカバー3の筒部3aの後端部3fと後方部材42の後方凸部4mとの間にも隙間が空くように設けられている(矢印G2で示す部分)。
【0058】
さらに、後方部材42は、トノカバー3が後方部材42に保持された状態で、トノカバー3の筒部3aの後端部3fと荷室1aのリアエンド1d(
図4を参照。)との間(矢印G3で示す部分)、およびトノカバー3の筒部3aと後方部材42の低層部(接続面部)4jとの間に隙間が空くように配設されている。
【0059】
7.効果
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、スペアタイヤ2とトノカバー3とをフロアボードの下方に収納した状態において、トノカバー3の延出板部3bがスペアタイヤ2の一部の上方を覆うように配される。よって、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、荷室1aにスペアタイヤ2とトノカバー3との両方を収納しながら、前後方向における収納部分のサイズ(スペアタイヤ収納部1bとトノカバー収納部1cの合計サイズ)を小さく抑えることができる。即ち、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、スペアタイヤ収納部とトノカバー収納部とが互いに重複しない位置関係をもって前後方向に並べた場合に比べて、スペアタイヤ2の上方に延出板部3bが配される分だけ、スペアタイヤ収納部1bを荷室1aの後部に配することができる。このため、車両1の荷室1aの構造では、荷室1aに収納したスペアタイヤ2やトノカバー3を荷室1aの後方(リアハッチ)から出し入れがし易い。
【0060】
また、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、トノカバー3の延出板部3bがスペアタイヤ2の上方を覆うように略水平(車両1の上下方向に対して交差する方向)に配されるので、上記特許文献1に開示の構造に比べて、地面からフロアボードまでの高さが高くなってしまうという問題を生じず、荷物1aの積載量の減少や使い勝手が悪くなるということがない。
【0061】
従って、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、荷室1aにおけるフロアボードの下方にスペアタイヤ2とトノカバー3との両方を収納することができるとともに、荷室1aの前後長を短く抑えることができ、スペアタイヤ2およびトノカバー3の収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【0062】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、前方支持部4dと後方支持部4cとを有する後方部材42を備えるので、荷室1aのフロアボードの下方にスペアタイヤ2とトノカバー3とを収納した場合に、トノカバー3の延出板部3bとスペアタイヤ2との接触や、車両1の加減速等の際のトノカバー3の前後方向への動きを規制することができる。
【0063】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、後方部材42において、車両1の前後方向における前方支持部4dと後方支持部4cとの間に段差部4eが形成されている。このため、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、前方支持部4dと後方支持部4cとの間を平面等で接続する場合に比べて、断面二次モーメントの確保による後方部材42の剛性の向上を図ることが可能となる。
【0064】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、後方部材42における段差部4eの裏面4f側に凹部4hが形成されているので、当該凹部4hの形成による薄肉化の分だけ後方部材42のボリュームを減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0065】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、後方部材42の裏面4f側に位置決め用凸部4gが設けられているので、車両1が加減速した際や方向転換した際などに車体フロアに対して後方部材42が動いてしまうのを規制することができる。
【0066】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、トノカバー3を収納した状態で前方凸部4lと延出板部3bの前縁端部3eとの間に隙間が空くように後方部材42が配設されている。このため、車両1の荷室1aの構造では、ユーザが後方部材42の前方支持部4dにトノカバー3の延出板部3bを載置したり、載置した延出板部3bを取り出したりする際の作業性に優れる。
【0067】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、トノカバー3の筒部3aの後端部3fと荷室1aのリアエンド1dとの間、およびトノカバー3の筒部3aと低層部4jとの間にそれぞれ隙間が空くように後方部材42が配設されている。このため、車両1の荷室1aの構造では、筒部3aとリアエンド1dおよび低層部4jとの各隙間に指や手を差し込んでユーザがトノカバー収納部1cに対してトノカバー3を収納あるいは取り出しを行うことができる。よって、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、荷室1aにおけるトノカバー収納部1cに対するトノカバー3の収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【0068】
本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、後方部材42を含む枠状部材4が発泡樹脂材料(例えば、発泡スチロール)を含み形成されているので、軽量化を図ることができるとともに、車両1の荷室1aに合わせた種々の形状に成型し易い。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る車両1の荷室1aの構造では、荷室1aにおけるフロアボードの下方にスペアタイヤ2とトノカバー3との両方を収納することができるとともに、スペアタイヤ2およびトノカバー3の収納および取り出しの際の作業性に優れる。
【0070】
[変形例]
上記実施形態では、トノカバー3の筒部3aや延出板部3bを支持する支持部4c,4dを有する後方部材42を備えることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、荷室の側方のトリムにトノカバーの筒部や延出板部を支持する部位を設けることも可能である。
【0071】
上記実施形態では、枠状部材4の後方部材42において、前方支持部4dと後方支持部4cとの間に段差部4eを設けて剛性の向上を図ることとしたが、本発明では、後方部材に段差部を設けることは必須の要件ではない。この場合に、前方支持部と後方支持部とを接続する面部に1条または複数条のリブを設けて剛性の向上を図ることも可能である。
【0072】
上記実施形態では、後方部材42の裏面4fに複数の位置決め用凸部4gを設けることとしたが、本発明では、後方部材の裏面に位置決め用凸部を設けることは必須の要件ではない。
【0073】
上記実施形態では、後方部材42において、左右のそれぞれに後方支持部4cを設けることとしたが、本発明では、車幅方向の中央部分に1つの支持部を設けることとしてもよい。
【0074】
上記実施形態では、枠状部材4における前方部材41および後方部材42を発泡樹脂材料(具体的には、発泡スチロール)を用いて形成することとしたが、本発明では、前方部材および後方部材の形成材料がこれに限定を受けるものではない。例えば、樹脂材料をブロー成型などして形成した中空枠体を採用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
1a 荷室
1b スペアタイヤ収納部
1c トノカバー収納部
2 スペアタイヤ
3 トノカバー
3a 筒部
3b 延出板部
3c シート部
4 枠状部材
4c 後方支持部
4d 前方支持部
4e 段差部
4g 位置決め用凸部
4h 凹部
41 前方部材
42 後方部材(トノカバー保持部材)