(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175367
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ルアー用フックおよびこれを備えた釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 83/00 20060101AFI20221117BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A01K83/00 Z
A01K85/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081706
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】513231661
【氏名又は名称】株式会社スタジオコンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】関口 一成
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307AB01
2B307AB02
2B307BA42
2B307BA46
(57)【要約】
【課題】製造が容易で、また水中への脱落などを防止できる新規なルアー用フックおよびそれを備えた釣り用ルアーの提供。
【解決手段】ほぼJ字形をした2本または3本のフック部材31,32を変形可能で復元性を有する連結体30で束ねたルアー用フック100であって、前記連結体30は、前記各フック部材31,32をその軸部31a、32aで束ねるように自己融着テープTをその周囲に巻き付けてなる。これによって、特別な工具やテクニックを要することなく簡単にフック部材31、32を連結できる。また、経年劣化によって破断する可能性が低く、仮に破断してもそのまま各フック部材31、32表面に粘着して残り易くなるため、水中に脱落して環境や生態系に悪影響を及ぼす可能性も低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼJ字形をした2本または3本のフック部材を変形可能で復元性を有する連結体で束ねたルアー用フックであって、
前記連結体は、前記各フック部材をその軸部で束ねるように自己融着テープをその周囲に巻き付けてなることを特徴とするルアー用フック。
【請求項2】
ほぼJ字形をした2本または3本のフック部材を変形可能で復元性を有する連結体で束ねたルアー用フックであって、
前記連結体は、伸縮体の一端部を前記フック部材のいずれかに連結すると共に、その伸縮体を前記各フック部材をその軸部で束ねるようにその周囲に巻き付け、その他端部を前記フック部材のいずれかに連結してなることを特徴とするルアー用フック。
【請求項3】
請求項2に記載のルアー用フックにおいて、
前記伸縮体は、輪ゴムまたはゴムバンドからなることを特徴とするルアー用フック。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のルアー用フックにおいて、
前記連結体を熱収縮チューブで覆ったことを特徴とするルアー用フック。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載のルアー用フックをルアーボディのフックアイに取り付けたことを特徴とする釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーフィッシングに用いる釣り用ルアーに係り、特にそのルアーボディに取り付けられるルアー用フックおよびこれを備えた釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にルアーフィッシングに用いる釣り用ルアーとしては、プラグ、ミノー、ジグやスプーンなどと称される小魚や小動物、昆虫などに似せたルアーボディの腹部や尾びれ部にフックをぶら下げた構造のものが多く利用されている。このルアーボディに取り付けられたフックは、魚に触れるとその口やエラなどに引っかかるようにその針先がJ字形に曲げられると共にその先端には引っかかった針が魚から外れるのを防ぐためのかえしが形成されている。
【0003】
また、このフックはあらゆる方向からの魚の食いつきに対応するために、3本の針先を等間隔、すなわちルアーボディ側に連結される軸に対してそれぞれ約120°の間隔で3本の針先を放射状に配置したものが多く利用されている。また、針先がルアーボディに衝突する音を軽減するために2本の針先を有するフックも多く用いられている。
【0004】
しかし、このように3本または2本の針先を有する従来のフックは、その針先同士の間隔(角度)が固定されているため、いずれか1つの針先に魚が食いついた(引っかかった)後は、さらに他の針先に引っかかる可能性は低い。そのため、その針先に引っかかった魚が暴れると、その浅く引っかかった部分(口やエラ)がちぎれてしまい、そのままフックアウトして魚が逃げてしまうことがある。
【0005】
また、仮に2つ以上の針先に掛かったとしても各針先の間隔が固定されているため、いずれかの針先に力が集中して力の分散ができず、その結果、同様な不都合を招く。そして、さらに食いついた魚が大型であると、その重さや抵抗力に耐えきれずにその針先が伸びたり、折れたりしてしまい、その針先から魚が抜け落ちてしまうこともある。そのため、本発明者はこれらを課題を解決するために種々の発明を提案している。
【0006】
例えば以下の特許文献1に示すように、そのフックとして、互いに独立したJ字形の第1フック部材と第2フック部材とから構成すると共に、これら一対のフック部材をゴムチューブなどからなる拡縮自在な連結体で束ねるように連結して構成したものを発明している。このような構成にすることにより、第1のフック部材と第2のフック部材とが他方の動きにかかわらずそれぞれ独自に動くようになるため、例えば一方のフック部材にのみ魚が引っかかった後に、魚が暴れるなどしてさらに他方のフックに対して魚の他の部分が引っかかる可能性が高くなる。
【0007】
これによって2本の独立したフックで魚を捉えることになり、また、魚の動きに対して2本の独立したフックが逃げ惑う魚の動きに追従するため、両方のフックに力が均一に分散する。この結果、フックが浅く引っかかった部分がちぎれたり、魚の重さや抵抗によって針先が伸びたり、折れたりしてしまうといった不都合を回避することを可能としている。
【0008】
一方、このようにチューブ状の連結体で連結した構造の場合、ルアーの着水時の衝撃や魚がかかった際の動きなどによって各フック部材がその連結体内で捩れたり上下にずれてしまうことがある。そのため、以下の特許文献2に示すように、この連結体に、独立した2つの保持穴を形成し、これら各保持穴にそれぞれ第1フック部材と第2フック部材を貫通させて保持することによって、魚がかかるなどして各フック部材が互いに大きく動いてもそのフック部材同士が連結体内で捩れたりずれたりするのを防止した発明も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5923676号公報
【特許文献2】特開2020-80420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記のような発明は、いずれもゴムチューブやシリコンチューブなどからなる連結体を作成し、そのチューブ状の連結体にフック部材を通す構造となっているため、製造に際してはテクニックを要すると同時に専用の工具が必要となる。また、大きな負荷がかかったり、劣化などによってその連結体が裂けてしまうと、やがてその連結体がフック部材から脱落してそれが水中にゴミとなって残ってしまう。
【0011】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は製造が容易で、また水中への脱落などを防止できる新規なルアー用フックおよびそれを備えた釣り用ルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために第1の発明は、ほぼJ字形をした2本または3本のフック部材を変形可能で復元性を有する連結体で束ねたルアー用フックであって、前記連結体は、前記各フック部材をその軸部で束ねるようにシリコンゴムやブチルゴムなどからなる自己融着テープをその周囲に巻き付けてなることを特徴とするルアー用フックである。このような構成によれば、特別な工具やテクニックを要することなく簡単に2本または3本のフック部材を連結することができる。
【0013】
また、一般に市販されている自己融着テープは、引っ張って伸ばすことでその表面の皮膜が破れてブチルゴムが表面に出てくるため、既に巻き付けてある部分にその端部を押しつければ簡単に融着して一体化することができる。すなわち、シリコンゴムやブチルゴムは、石油を原料とする合成ゴムであり、耐老化性、耐水性にすぐれ、高度な電気絶縁性を有している。そして、この自己融着テープは、このシリコンゴムやブチルゴムを加硫せずに使っていることから、もともと自らくっつく性質を持っている。
【0014】
そのため、市販の状態では、そのテープの間に特性の布セパレータを挟んで販売されているが、布セパレータに代わり、テープの表面に薄い皮膜をつくってテープ同士がくっつかないようにしたものもある。従って、この薄い皮膜を有するタイプのものを用いれば、巻き付ける際にテープを引っ張ることによって皮膜が破れて、シリコンゴムやブチルゴムが表面に出てくるため、軽く押し当てるだけでもテープ同士が融着してくっつくことになる。
【0015】
そして、この自己融着テープは、変形可能で復元性を有することから、従来のゴムチューブなどと同様にフック部材に力が加わったときにはその動きを阻害することなく、また、力が抜けるとを元の位置に戻すように作用する。さらに、この自己融着テープからなる連結体は、従来のゴムチューブやシリコンチューブのように経年劣化によって破断する可能性が低く、また、仮に破断してもそのまま各フック部材表面に粘着して残るため、水中に脱落し難く、環境や生態系に悪影響を及ぼすこともない。
【0016】
第2および第3の発明は、ほぼJ字形をした2本または3本のフック部材を変形可能で復元性を有する連結体で束ねたルアー用フックであって、前記連結体は、ゴム紐や輪ゴムまたはゴムバンドのようなテープ状または紐状の伸縮体の一端部を前記フック部材のいずれかに連結すると共に、その伸縮体を前記各フック部材をその軸部で束ねるようにその周囲に巻き付け、その他端部を前記フック部材のいずれかに連結してなることを特徴とするルアー用フックである。このように構成しても第1の発明と同様な作用効果を得ることができる。
【0017】
第4の発明は、前記連結体を熱収縮チューブで覆ったことを特徴とするルアー用フックである。このような構成によれば、連結体の表面が滑らかになって美観が向上すると共に水の抵抗が減少し、さらに連結体を構成する自己融着テープがその先端から解けるような事態も防止できる。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第4のルアー用フックをルアーボディのフックアイに取り付けたことを特徴とする釣り用ルアーである。このような構成をした釣り用ルアーを用いれば、かかった魚が暴れても針先が魚も動きに合わせて可動するため、確実にフックすることができ、優れた釣果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るルアー用フックは、複数のフック部材の軸部にシリコンゴム製やブチルゴム製の自己融着テープを巻き付けて束ねるようにして連結体を構成したことから、特別な工具やテクニックを要することなく簡単に2本または3本のフック部材を連結することができる。また、この自己融着テープからなる連結体は、従来のゴムチューブやシリコンチューブからなる連結体と同様な作用効果を奏するだけでなく、ゴムチューブやシリコンチューブのように経年劣化によって破断する可能性が低く、また、仮に破断してもそのまま各フック部材表面に粘着して残るため、水中に脱落し難くなって環境や生態系への悪影響を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る釣り用ルアー100の実施の一形態を示す側面図である。
【
図3】(A)は第1フック部材31を上方から見た平面図、(B)は第2フック部材32を上方から見た平面図である。
【
図5】本発明に係るルアー用フック30の製造例を示す説明図である。
【
図6】本発明に係るルアー用フック30の作用(動き)を示す説明図である。
【
図7】本発明に係るルアー用フック30の他の構成を示す正面図である。
【
図8】本発明に係るルアー用フック30の他の実施の形態を示す説明図である。
【
図9】本発明に係るルアー用フック30の他の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る釣り用ルアー100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこの釣り用ルアー100は、魚形状をしたルアーボディ10と、このルアーボディ10の腹部および尾びれ部付近に設けられたフックアイ20,20に、溶接リングやスプリットリングなどからなる連結リング21,21を介して揺動自在に係合するルアー用フック30,30とから構成されている。
【0022】
このルアーボディ10は、実際の魚や小動物、昆虫などの形態を模したプラスチックや金属、ゴムなどで形成されており、その口元付近のラインアイ22に接続されたライン40に引っ張られるようにして水中または水面付近に位置して周囲の魚を引きつけるように機能する。なお、このルアーボディ10は、その尾びれ部分が中折れ式で左右に揺動するものもある。
【0023】
ルアー用フック30は、
図2に示すようにほぼJ字形をした第1フック部材31と第2フック部材32とを連結体33で束ねて構成されている。第1フック部材31は、炭素鋼などの高強度の針金からなっており、直線状の軸部31aの頂部にリング状の吊下げ部31bを有していると共に、その下端部にはJ字形に湾曲した針先部31cが一体的に形成されている。さらに、この針先部31cは、
図3(A)に示すようにリング状の吊下げ部31bの上方から見ると、その環状面S1に対して約45°~60°程度左側に湾曲した状態となっている。
【0024】
一方、
図2に示すように第2フック部材32も第1フック部材31と同様に、直線状の軸部32aの上端にリング状の吊下げ部32bを有していると共に、その下端部はJ字形に湾曲した針先部32cが一体的に形成されているが、この針先部32cは、
図3(B)に示すようにリング状の吊下げ部32bの上方から見ると、第1フック部材31とは反対にその環状面S2に対して約45°~60°程度右側に湾曲した状態となっている。なお、この角度に関しては45°~60°に限定されるものでなく、使用するルアーの幅や形状によってさまざまに異なる。
【0025】
従って、
図2に示すようにこれら第1フック部材31の吊下げ部31bと第2フック部材32の吊下げ部32bとを重ね合わせるような状態で束ねると、それぞれの針先部31c、32cは左右斜め方向にそれぞれ約45°~60°づつ扇状に外側に開いた状態となっている。なお、
図7に示すようにこれら各フック部材31,32の針先部31c、32cの内側にそれぞれ、魚が食いついた後に針が外れ難くするためのかえし(バーブ)31d、32dを設けても良い。
【0026】
この第1フック部材31と第2フック部材32とを束ねる連結体33は、
図2および
図4に示すように、直線状となっている各軸部31a、32aのほぼ全体を束ねるように設けられている。この連結体33は、シリコンゴムやブチルゴムからなる自己融着テープTから構成されており、例えば
図5に示すようにして構成されている。すなわち、
図5(A)に示すように第1フック部材31と第2フック部材32を、その吊下げ部31b、吊下げ部32bを重ね合わせるように保持した状態で、予め所定の長さに切断した自己融着テープTの一端を各軸部31a、32aに押しつけて粘着させる。
【0027】
ここで、この自己融着テープTの厚さとしては様々なもの(0.1~1.0mm)が市販されており、特に限定するものではないが、例えばシリコンゴム製のものを用いた場合のフレックス(第1フック部材31および第2フック部材32の左右への動き具合)は、自己融着テープTの厚さが薄いとそれを抑える力が弱く、また、厚くなるに従って抑える大きくなる。従って、この性質を利用して小さい魚を対象とする細いフック部材には、薄いもの(例えば0.2mm)を使用してもフック部材やその針先部の伸びや破断を防ぐことができ、大きな魚を対象とする太いフック部材には、厚いもの(例えば0.5mm)を使用すれば、対象とする魚の大きさに適した最適な強度や復元力を得ることができる。
【0028】
また、この連結体33の強度や復元力は、自己融着テープTの巻き方によっても調整できる。つまり、自己融着テープTを破断しない程度に引っ張ってテンションをかけて巻くとその力により、フック部材の動きを抑えることができ、反対にテンションを緩めて軽く巻くとフック部材が動き易くなるため、対象とする魚の種類や大きさなどに合わせて適宜招請することができる。ちなみに、従来のゴムチューブやシリコンチューブからなる連結体33の場合は、そのチューブの肉厚のみによって調整していいたため、材料となるゴムチューブやシリコンチューブの在庫管理が重要となってくる。
【0029】
次に、その状態を保持したまま、自己融着テープTを引っ張ってその表面の皮膜を破いてブチルゴムを露出させた状態で同図(B)に示すように各軸部31a、32aの周囲にこれを覆うように下方に向かって螺旋状に巻き付けていく。そして、そのまま各軸部31a、32aの下部まで巻き付けたならば、その自己融着テープTの他端を既に巻き付けてある部分に強く押しつける。これによってその端部が既に巻き付けてある部分と融着して一体化するため、そのまま手を離してもバラけるようなことはない。
【0030】
また、同図(C)に示すように第1フック部材31と第2フック32部材が連結体33によってその軸部31a、32a部分でしっかりと連結されると共に、吊下げ部31b、32b同士が密着しつつ、それらの針先部31c、32cが所定の角度(環状面S1,S2上に対してそれぞれ約45°~60°)で前方に開くような形態で保持される。
【0031】
そして、この第1フック部材31および第2フック部材32に対して何ら外力が加わらない状態では、
図6(A)に示すようにその元の形状が維持されるが、この第1フック部材31および第2フック部材32はもともとそれぞれ独立していることから、他方の状態にかかわらず、その連結体33を軸として互いに自由に動くことができる。
【0032】
図6(B)は、第1フック部材31および第2フック部材32の針先部31c、32c同士が離間するように外側に向けて動いた状態を示したものであり、同図(C)はその針先部31c、32c同士が接近するように内側に向けて動いた状態を示したものである。もちろんいずれか一方のみが動くことも可能である。そして、外力が加わってその針先部31c、32cが向きを変えた場合には、その環状の吊下げ部31b、32b同士が互いに干渉し合うため、同図(B)、(C)に示すようにその軸部31a、32a同士が離れて連結体33が一時的に広がるように変形するが、その外力を取り除くとその連結体33の復元力(収縮力)によって同図(A)に示すように軸部31a、32a同士が平行になるように自然に元の状態に戻ることになる。
【0033】
そして、このフック30を
図1に示すようにその針先部31c、32cがライン40方向に向くようにしてルアーボディ10に取り付けると、第1フック部材31または第2フック部材32がそれぞれ独自に動くことになるため、そのいずれか一方にのみ、例えば第1フック部材31にのみ魚が引っかかった後に、その魚が暴れるなどしてさらに他方の第2フック部材32に接触してこれがその魚の他の部分に引っかかる可能性が極めて高くなる。
【0034】
第1フック部材31および第2フック部材32の針先部31c、32cはJ字形に湾曲しているため、一旦引っかかった針先部31c、32cは簡単に抜け落ちることはない。また、この第1フック部材31および第2フック部材32は外力が加わることにより他方のフック部材の位置や動きに規制されずにそれぞれ独自に動くため、一旦引っかかった後は魚が暴れるほどにより深く魚の口やエラに食い込むことになる。これによって、独立して動く2本のフック部材31,32で魚をしっかりと捉えることができるため、第1フック部材31または第2フック部材32の一方にのみ浅く引っかかった部分がちぎれて魚が逃げてしまったり、魚の重さや抵抗によって針先が伸びて抜け落ちてしまうといった不都合を回避することができる。
【0035】
従って、一旦食いついた後は魚が暴れたり、大型であってもこれを逃がすことなく確実に釣り上げることができる。そして、このようにして釣り上げた魚を取り外した後のフック30は、その外力が無くなることによってその連結体33の復元力によって元の状態に自然に戻るため、各フック部材31,32の位置を調整するなどといった、特に手を加えることなくそのまますぐに再利用することができる。
【0036】
また、本発明のフック30は、第1フック部材31および第2フック部材32が独立して魚の口などに絡みつくようになっているため、一旦引っかかった後は魚が暴れた程度では簡単に外れることはない。そのため、第1フック部材31および第2フック部材32のかえし(バーブ)31d、32dを省略できる(バーブレスフック)ため、釣った魚の損傷を最小限に抑えることができる。従って、キャッチアンドリリースを前提としたスポーツフィッシングで用いる釣り用のフックとしても最適である。また、釣った魚を他人に譲ったり販売するときにはその商品価値を損なうことがない。
【0037】
そして、このように自己融着テープTからなる連結体33は、テープを巻き付けるだけで形成されるため、特別な工具やテクニックを要することなく第1フック部材31および第2フック部材32を簡単且つ確実に連結することができる。また、この自己融着テープTからなる連結体33は、従来のゴムチューブやシリコンチューブのように経年劣化によって破断する可能性が低く、また、仮に破断してもそのまま各フック部材表面に粘着して残るため、水中に脱落して環境や生態系に悪影響を及ぼす可能性も極めて低い。
【0038】
このように本実施の形態では、2本のフック部材を用いた例で説明したが、従来の針先が固定されたトリプルフックのように3本の独立したフック部材を束ねるようにしても同様な作用効果を発揮できる。また、
図8に示すように、この連結体33を輪ゴムやゴム紐あるいは片面に接着層を有するゴムバンドのような伸縮体Vで構成してもよい。例えば、同図(A)に示すように輪ゴムからなる伸縮体Vの一端部を一方のフック部材32に引っ掛けるかあるいは結び付ける(連結)と共に、その輪ゴムを各フック部材31,32の軸部31a、32aを束ねるようにその周囲に巻き付け、その他端部をフック部材31,32のいずれかあるいは両方に連結する。
【0039】
このようにして得られる連結体33も自己融着テープTと同様に特別な工具やテクニックを要することなく各フック部材31、32を簡単且つ確実に連結することができる。また、その両端が各フック部材31、32に連結されているため、仮に破断したとしてもそのまま各フック部材31、32表面に繋がって残るため、水中に脱落して環境や生態系に悪影響を及ぼすこともない。
【0040】
さらに、
図9に示すように、この自己融着テープTからなる連結体33を熱収縮チューブCで覆うようにしてもよい。すなわち、同図(A)に示すように、自己融着テープTからなる連結体33の上に、従来と同様に両端が開口した熱収縮チューブCを被せる。熱収縮チューブCを被せる方法としては、例えば同図(C)に示すように各フック部材31、32の針先部31c、32cを指で挟んでくっつけた状態にしてからその先端側から熱収縮チューブCを挿入すれば簡単に装着できる。なお、この熱収縮チューブCとしては、従来と同様にポリオレフィン、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマーなどからなる熱収縮チューブを用いることができる。
【0041】
そして、その熱収縮チューブCを連結体33の位置まで挿入したら、その熱収縮チューブCをヒーターで加熱すれば、これが収縮して同図(B)に示すように連結体33の表面に密着して連結体33全体をカバーするようになる。これによって、連結体33の表面が滑らかになって美観が向上すると共に水の抵抗が減少し、さらに連結体33を構成する自己融着テープTがその先端から解けるような事態も防止できる。なお、この熱収縮チューブCも経年劣化によって破断する可能性があるが、覆っている自己融着テープTからなる連結体33の表面に強く粘着しているため、簡単に水中に脱落するようなことはない。
【0042】
また、この連結体33は、第1フック部材31と第2フック32部材の軸部31a、32a全体に亘って設ける必要は必ずしもなく、十分な強度や復元力が得られるのであれば、その一部分、例えば軸部31a、32aの上半分だけであってもよい。このように連結体33を軸部31a、32aの上半分だけに設けた場合は、その連結体33が魚の口に触れ難くなるため、連結体33が魚に食いちぎられるといった事態も回避できる。
【0043】
なお、この自己融着テープTは前記のようにシリコンゴムまたはブチルゴムのいずれも使用可能であるが、シリコンゴムはブチルゴムよりも復元力が大きく、また、ブチルゴムはシリコンゴムよりも密着性(吸着性、接着性、融着性)が高い傾向がある。そのため、復元性を優先させたい場合にはシリコンゴム製のものを用い、また、耐久性(解けにくい)や破断時の脱落防止を重視したい場合にはブチルゴム製を用いるなど、使用場所や使用目的などに応じて適宜使い分けることができる。
【符号の説明】
【0044】
100…釣り用ルアー
10…ルアーボディ
20…フックアイ
21…連結リング
22…ラインアイ
30…ルアー用フック
31…第1フック部材
32…第2フック部材
31a、32a…軸部
31b、32b…吊下げ部
31c、32c…針先部
31d、32d…かえし(バーブ)
33…連結体
40…ライン
T…自己融着テープ
V…伸縮体(輪ゴム)
C…熱収縮チューブ