(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175374
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】構造物移動方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/35 20060101AFI20221117BHJP
E04G 23/06 20060101ALI20221117BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E04B1/35 D
E04G23/06 A
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081716
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000156640
【氏名又は名称】間瀬建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】神前 泰
(72)【発明者】
【氏名】芝田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和憲
【テーマコード(参考)】
2E174
2E176
【Fターム(参考)】
2E174CA06
2E174CA30
2E174DA01
2E176AA07
2E176AA09
2E176CC02
(57)【要約】
【課題】動力付与手段にかかる費用を削減でき、かつ、動力付与手段に対する制御を容易にできる構造物移動方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る構造物移動方法は、複数の動力付与手段を用いて構造物を横移動させる構造物移動方法において、構造物(鉄骨構造物2M)の移動方向後側に設けられて構造物に動力を付与する複数の後側動力付与手段(後側押圧ジャッキ13R)を使用するとともに、構造物の移動方向前側に設けられて構造物に動力を付与する複数の前側動力付与手段(前側押圧ジャッキ13F)を使用し、かつ、前側動力付与手段の数を後側動力付与手段の数よりも少なくしたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動力付与手段を用いて構造物を横移動させる構造物移動方法において、
構造物の移動方向後側に設けられて構造物に動力を付与する複数の後側動力付与手段を使用するとともに、
構造物の移動方向前側に設けられて構造物に動力を付与する複数の前側動力付与手段を使用し、
かつ、前側動力付与手段の数を後側動力付与手段の数よりも少なくしたことを特徴とする構造物移動方法。
【請求項2】
前側動力付与手段及び後側動力付与手段を駆動させて構造物を横移動させるとともに、構造物の進行方向がずれた場合に、各前側動力付与手段の駆動量を調整して構造物の進行方向を修正したことを特徴とする請求項1に記載の構造物移動方法。
【請求項3】
後側動力付与手段は、構造物の進行方向と直交する構造物の横幅方向において構造物の両端側に設けられるとともに、構造物の横幅方向の両端間において1つ以上設けられ、
前側動力付与手段は、構造物の横幅方向の両端側には設けられず、構造物の横幅方向の両端間において2つ以上設けられたことを特徴とする請求項2に記載の構造物移動方法。
【請求項4】
構造物の横幅方向の両端間の中央側に2つの後側動力付与手段が設けられるとともに、構造物の横幅方向の両端間の中央側に2つの前側動力付与手段が設けられ、この中央側の各後側動力付与手段及び各前側動力付与手段は、構造物の横幅方向の各端部の位置から等しい距離の位置に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の構造物移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の動力付与手段を用いて構造物を横移動させる構造物移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力付与手段としてのジャッキを用いて構造物を横移動させるトラベリング工法等と呼ばれる構造物移動方法が知られている(特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-94732号公報
【特許文献2】特開昭62-99515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構造物移動方法では、構造物の重量が重くなれば、動力付与手段の数を多くしたり、耐力の大きい動力付与手段が必要となり、動力付与手段にかかる費用が増えるという課題や、動力付与手段に対する操作や監視等の制御が煩雑になるという課題等があった。
本発明は、上述した課題に鑑みて、動力付与手段にかかる費用を削減でき、かつ、動力付与手段に対する制御を容易にできる構造物移動方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る構造物移動方法は、複数の動力付与手段を用いて構造物を横移動させる構造物移動方法において、構造物の移動方向後側に設けられて構造物に動力を付与する複数の後側動力付与手段を使用するとともに、構造物の移動方向前側に設けられて構造物に動力を付与する複数の前側動力付与手段を使用し、かつ、前側動力付与手段の数を後側動力付与手段の数よりも少なくしたことを特徴とする。
また、前側動力付与手段及び後側動力付与手段を駆動させて構造物を横移動させるとともに、構造物の進行方向がずれた場合に、各前側動力付与手段の駆動量を調整して構造物の進行方向を修正したことを特徴とする。
また、後側動力付与手段は、構造物の進行方向と直交する構造物の横幅方向において構造物の両端側に設けられるとともに、構造物の横幅方向の両端間において1つ以上設けられ、前側動力付与手段は、構造物の横幅方向の両端側には設けられず、構造物の横幅方向の両端間において2つ以上設けられたことを特徴とする。
また、構造物の横幅方向の両端間の中央側に2つの後側動力付与手段が設けられるとともに、構造物の横幅方向の両端間の中央側に2つの前側動力付与手段が設けられ、この中央側の各後側動力付与手段及び各前側動力付与手段は、構造物の横幅方向の各端部の位置から等しい距離の位置に設けられたことを特徴とする。
本発明に係る構造物移動方法によれば、動力付与手段にかかる費用を削減でき、かつ、動力付与手段に対する制御を容易にできる。
また、構造物の推進と進行方向制御とを行えるようになるため、構造物を目的地に正確に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】鉄骨構造物の施工方法の概要を示す斜視図(実施形態、実施例)。
【
図2】鉄骨構造物の施工方法の概要を示す平面図(実施形態、実施例)。
【
図3】鉄骨構造物の施工方法の概要を示す側面図(実施形態、実施例)。
【
図4】柱下端部と柱主要部とに分けて形成された柱を示す側面図(実施例)。
【
図6】柱主要部の下端部の構造を示す断面図(実施例)。
【
図7】柱主要部の下端に設けられた底板の下面及び凹部を示す図(実施例)。
【
図8】鉄骨構造物の施工方法の施工手順の一例を示す図(実施例)。
【
図9】鉄骨構造物の施工方法の施工手順の一例を示す図(実施例)。
【
図10】鉄骨構造物の施工方法の施工手順の一例を示す図(実施例)。
【
図11】柱主要部を動力付与手段を用いて移動させた状態を示す斜視図(実施例)。
【
図12】柱主要部を上下動手段を用いて上下動させる状態を示す斜視図(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態
実施形態に係る構造物移動方法は、例えば
図1~
図3に示すように、複数の動力付与手段としての押圧ジャッキ13,13…を用いて構造物としての例えば移動可能に構成された鉄骨構造物2Mを移動方向Mに向けて横移動させる構造物移動方法である。
尚、本明細書においては、構造物の移動方向Mとは、構造物を移動させる方向のことであり、構造物の移動方向前側とは、構造物を移動させる側のことであり、構造物の移動方向後側とは、構造物を移動させる側とは反対側のことである。以下、構造物の移動方向前側を、単に「構造物(鉄骨構造物2M)の前側」、構造物の移動方向後側を、単に「構造物(鉄骨構造物2M)の後側」と言う場合もある。
実施形態に係る構造物移動方法においては、移動可能に構成された鉄骨構造物2Mの前側に設けられて鉄骨構造物2Mに動力を付与する動力付与手段として前側押圧ジャッキ13F(13)の数と、鉄骨構造物2Mの後側に設けられて鉄骨構造物2Mに動力を付与する動力付与手段として後側押圧ジャッキ13R(13)の数とを異ならせるようにした。
即ち、
図1,
図2に示すように、鉄骨構造物2Mの後側に設けられて鉄骨構造物2Mに動力を付与する複数の後側押圧ジャッキ13Rを使用するとともに、鉄骨構造物2Mの前側に設けられて鉄骨構造物2Mに動力を付与する複数の前側押圧ジャッキ13Fを使用し、かつ、前側押圧ジャッキ13Fの数を後側押圧ジャッキ13Rの数よりも少なくした。
このように、前側押圧ジャッキ13Fの数を、後側押圧ジャッキ13Rの数よりも少なくし、鉄骨構造物2Mを移動方向に沿って推進(前進)させる推進ジャッキとして複数の後側押圧ジャッキ13R及び複数の前側押圧ジャッキ13Fを機能させるとともに、複数の前側押圧ジャッキ13Fを鉄骨構造物2Mの移動方向を制御するための方向制御ジャッキとしても機能させることによって、鉄骨構造物2Mの推進と方向制御を行う移動方法を実現した。
つまり、
図1,
図2に示すように、複数の後側押圧ジャッキ13R,13R…と複数の前側押圧ジャッキ13F,13Fとを同時に駆動させて、鉄骨構造物2Mを移動方向に沿って推進させる。この際、鉄骨構造物2Mの実際の進行方向が予定の移動方向Mからずれた場合に、複数の前側押圧ジャッキ13F,13Fの伸長ストローク量(駆動量)を調整して鉄骨構造物2Mの進行方向を修正することにより、推進と進行方向制御とを行いながら、鉄骨構造物2Mを移動させる。
具体的には、
図1~
図3に示すように、横移動可能に構成される鉄骨構造物2Mが、移動方向Mに沿った方向において2スパン、移動方向Mと直交する横幅方向において3スパンである場合は、次のようにする。
この場合、鉄骨構造物2Mの後側において横幅方向に所定の間隔を隔てて設置された4本の鉄骨柱3,3,3,3の後側にそれぞれ後側押圧ジャッキ13R,13R,13R,13Rを設置するとともに、鉄骨構造物2Mの前側において横幅方向に所定の間隔を隔てて設置された4本の鉄骨柱3のうち横幅方向中央側の2本の鉄骨柱3,3(即ち、横幅方向両端に位置される鉄骨柱3,3以外の鉄骨柱3,3)の後側にそれぞれ前側押圧ジャッキ13F,13Fを設置する。
即ち、横幅方向中央側の各後側押圧ジャッキ13R,13R及び横幅方向中央側の各前側押圧ジャッキ13F,13Fは、鉄骨構造物2Mの横幅方向の各端部の位置から等しい距離の位置に設置されている。
そして、鉄骨構造物2Mの後側の4本の鉄骨柱3,3,3,3を後側押圧ジャッキ13R,13R,13R,13Rで押圧するとともに、鉄骨構造物2Mの前側の横幅方向中央側の2本の鉄骨柱3,3を前側押圧ジャッキ13F,13Fで押圧することにより、鉄骨構造物2Mを移動方向Mに沿って推進させる。この際、鉄骨構造物2Mの実際の進行方向が予定の移動方向Mからずれた場合に、複数の前側押圧ジャッキ13F,13Fの伸長ストローク量を調整することにより、鉄骨構造物2Mの進行方向を修正することができるようになる。即ち、鉄骨構造物2Mを移動方向Mに沿って推進させることができるとともに、鉄骨構造物2Mの進行方向制御を行うことができる。
実施形態に係る構造物移動方法によれば、鉄骨構造物2Mの前側においては、横幅方向中央側の2本の鉄骨柱3,3の後側にだけ前側押圧ジャッキ13F,13Fを設けるようにしたので、動力付与手段にかかる費用を削減できて、かつ、動力付与手段に対する制御を容易にできる。さらに、鉄骨構造物2Mの推進と進行方向制御とを行えるようになるため、鉄骨構造物2Mを目的地に正確に移動させることができる。
以下、本発明の構造物移動方法を採用した、鉄骨構造物の施工方法の実施例を
図1乃至
図12に基づいて説明する。
【0008】
実施例
実施例の鉄骨構造物の施工方法は、移動範囲設定ステップと、柱形成ステップと、移動始点部側ステップと、鉄骨構造物移動ステップと、移動終点部側ステップとを備える。
移動範囲設定ステップは、
図1(a)に示すように、建設予定地1に、移動始点部Sと移動終点部Eとを設定するステップである。
尚、
図1,2においては、後述する横移動路7が設けられる位置を二点鎖線で示し、かつ、横移動路7に並行設置されるガイドレール8が設けられる位置を一点鎖線で示す。
柱形成ステップでは、
図4に示すように、柱(鉄骨柱)3を、柱下端部4と柱主要部5とに分けて形成するステップである。
つまり、柱形成ステップでは、移動始点部Sで組み立てられる鉄骨構造物2Sを構成する柱3、又は、移動終点部Eで構築される鉄骨構造物2を構成する柱3を、柱下端部4と柱主要部5とに分けて形成するようにした。
即ち、実施例の鉄骨構造物の施工方法では、柱下端部4と柱主要部5とに分けて形成された柱3を使用するようにした。
つまり、実施例の鉄骨構造物の施工方法は、柱下端部4と柱下端部4に連結された柱主要部5とを備えた柱3を使用して実現される。
移動始点部側ステップは、移動始点部Sにおいて、各柱基礎10に取付けられた各柱下端部4の上に柱主要部5を設けてこれら隣合う各柱主要部5,5間に補強梁(鉄骨補強梁)6,梁(鉄骨梁)61を組付けた鉄骨構造物2Sを移動可能な鉄骨構造物2Mに構成するステップである(
図1(b),
図2(a),
図3(a)参照)。
鉄骨構造物移動ステップは、
図9(c)に示すように、移動始点部側ステップにおいて移動可能に構成された鉄骨構造物2Mを移動始点部Sから移動終点部Eまで横移動させるステップである。
移動終点部側ステップは、
図10(c)に示すように、移動終点部Eにおいて、柱基礎10,10…に固定された各柱下端部4,4…に、横移動されてきた鉄骨構造物2Mの各柱主要部5,5…を固定することにより、移動終点部Eの柱基礎10,10…に固定された鉄骨構造物2を構築するステップである(
図1(c),
図2(b),
図3(b)参照)。
【0009】
当該鉄骨構造物の施工方法においては、建設予定地1に、移動始点部Sと移動終点部Eとを設定した後、まず、当該移動始点部S及び移動終点部Eに、
図8(a)に示すように、地盤Gにそれぞれ独立した柱基礎10,10…を構築し、かつ、各隣り合う柱基礎10,10…間には、地上階の鉄筋コンクリート床Fを構築しておく。当該鉄筋コンクリート床Fは、例えば、
図8(a)に示すように、土砂Jを埋め戻した後、当該土砂Jの上にコンクリートを打設して構築したり、あるいは、図外のスラブ型枠にコンクリートを打設して構築する。
移動始点部Sとは、移動始点部Sに設けられた柱基礎10,10…に、仮設の鉄骨構造物2Sを組み立てるとともに、移動可能な鉄骨構造物2Mに構成し、この鉄骨構造物2Mを移動終点部Eまで移動させる開始地点となる場所である。
また、移動終点部Eとは、移動始点部Sから移動させた鉄骨構造物2Mの移動終点となり、かつ、当該移動させた鉄骨構造物2Mが柱基礎10,10…に固定されることにより、所望の鉄骨構造物2が構築される場所である。
【0010】
図8(a)に示すように、柱基礎10は、図外の型枠で囲まれて形成された基礎コンクリート打設空間に設けられた柱脚ベース20と、基礎コンクリート打設空間に組まれた図外の配筋と、基礎コンクリート打設空間に打設されたコンクリートが固化した基礎コンクリート30とで構成される。
柱脚ベース20は、基礎コンクリート打設空間の底部に設けられたコンクリート部(捨てコンクリート)21と、当該コンクリート部21にアンカー22で固定されたセットフレーム23と、セットフレーム23に取付けられて上方に延長するように設けられた複数のアンカーボルト24,24…と、複数のアンカーボルト24,24…の上端側に図外のナットで固定されたゲージプレート25とを備えて構成される。
そして、基礎コンクリート打設空間にコンクリートが打設されて基礎コンクリート30が形成され、複数のアンカーボルト24,24…の上端側が基礎コンクリート30の上端面30tよりも上方に突出するように構成される(
図8(b),
図4参照)。
【0011】
柱下端部4は、断面ロ字状の中空で短尺な鋼等の金属製の角柱であり、下端には、柱基礎10に固定されるベースプレート41を備えるとともに、上端には、柱主要部5の下端部が固定される固定面42を備えて構成される。
柱下端部4は、例えば、
図5に示すように、4つの平鋼板4A,4A…を組み合わせて上下端(両端)が開口した中空の短尺な四角柱4Bと、当該四角柱4Bの下端の開口の断面積よりも大きい四角形の板面を有した平鋼板により構成されて当該四角柱4Bの下端の開口を塞ぐように設けられたベースプレート41と、当該四角柱4Bの上端の開口の断面積よりも大きい四角形の板面を有した平鋼板により構成されて当該四角柱4Bの上端の開口を塞ぐように設けられた上端側プレート43とを備えて構成される。尚、この場合、柱下端部4の固定面42は、上端側ベースプレート43の上面となる板面により形成されることになる。
また、例えば、当該四角柱4Bの中心軸とベースプレート41の四角形の板面の中心とが一致するように、当該四角柱4Bの下端の開口縁とベースプレート41の上面となる板面とが溶接にて接合されたとともに、当該四角柱4Bの中心軸と上端側プレート43の四角形の板面の中心とが一致するように、当該四角柱4Bの上端の開口縁と上端側プレート43の下面となる板面とが溶接にて接合されたことによって、柱下端部4が形成される。
尚、例えば、予め工場等において、柱下端部4の四角柱4Bの上端近傍の周面を形成する4つの側面にはそれぞれ建方用ピース(エレクションピース)44が溶接にて取付けられている。
【0012】
柱主要部5は、断面ロ字状の中空でかつ柱下端部4よりは長尺な鋼等の金属製の角柱であり、
図6,7に示すように、下端には、下面52を有するとともに当該下面52より上方に窪む凹部55を有した底板51を備えて構成される。
柱主要部5は、柱下端部4と同様に、例えば、
図5に示すように、4つの平鋼板5A,5A…を組み合わせて上下端(両端)が開口した中空の長尺な四角柱5Bと、当該四角柱5Bの下端の開口の断面積に対応した大きさの四角形の板面を有した鋼板により構成されて当該四角柱5Bの下端の開口を塞ぐように設けられた底板51とを備えて構成される。
また、例えば、当該四角柱5Bの中心軸と底板51の四角形の板面の中心とが一致するように、当該四角柱5Bの下端の開口の内側に底板51が嵌め込まれた状態で、当該四角柱5Bと底板51とが溶接にて接合されたことによって、柱主要部5が形成される。
尚、
図4に示すように、柱主要部5の四角柱5Bの下端側の周面には、当該周面より突出するダイヤフラム53が設けられ、当該ダイヤフラム53には、補強梁6が接合される。当該ダイヤフラム53は、通しダイヤフラムによって構成されることが好ましい。
即ち、柱主要部5は、通常の鉄骨柱の下端側に上述した底板51を設けた構成の鉄骨柱である。
尚、例えば、予め工場等において、柱主要部5の四角柱5Bの下端近傍の周面を形成する4つの側面にはそれぞれ建方用ピース(エレクションピース)54が溶接にて取付けられている。
【0013】
図6,7に示すように、底板51の下面52となる板面に形成された凹部55は、柱主要部5の移動方向Mの後側(
図6の左側)及び左右両側(
図6の紙面と直交する方向の両側、及び、
図7の上下側)に位置される後側壁56B,左側壁56L,右側壁56Rを有するとともに、柱主要部5の移動方向Mの前側が開口された前側開口部57を備えた構成とした。尚、柱主要部5の移動方向Mとは、後述するように横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mを移動する際の柱主要部5の移動方向のことである。
また、凹部55の底面58と凹部55の後側壁56B,左側壁56L,右側壁56Rとの境界部分には、後述する摩擦軽減材としての摩擦軽減板9の後側側面91,左側側面,左側側面と上面92との境界となる角(以下、「境界角」という)93と凹部55の底面58と後側壁56B,左側壁56L,右側壁56Rとの境界となる角(以下、「境界角」という)との接触を回避するための溝部59が形成されている。
例えば、
図7に示すように、凹部55の底面58には、当該凹部55の底面58と凹部55の後側壁56B,左側壁56L,右側壁56Rとの境界線より延長してかつ当該境界線に沿って延長するように形成された細幅の溝部59、即ち、凹部55の底面58の周縁に沿って当該底面58よりも更に上方に窪む細幅の溝部59を備える。
即ち、摩擦軽減板9の上面92の周辺の境界角93と凹部55の底面58の周辺の境界角との接触を回避して、摩擦軽減板9の後側側面91と凹部51の後側壁56Bとの良好な面接触状態を形成するために、当該凹部55に当該溝部59を設けた構成とした。
【0014】
また、柱主要部5の下面となる底板51の下面52の大きさは、柱下端部4の上面となる固定面42の大きさよりも小さくなるように構成した。
このように、柱主要部5の下面52の大きさを柱下端部4の固定面42の大きさよりも小さくしたことにより、柱主要部5の下面52の外周縁と柱下端部4の固定面42とを後述するように溶接する際においては、柱主要部5の下面52が柱下端部4の固定面42の所定の位置に正確に位置決めされなくとも、柱主要部5の下面52全体が柱下端部4の固定面42上に位置されていれば、柱主要部5の下面52の外周縁と柱下端部4の固定面42とを溶接して固定することが可能となり、柱主要部5の移動作業に伴う、柱下端部4の固定面42に対する柱主要部5の下面52の位置決め作業が容易となる。
【0015】
移動終点部Eにおいては、当該移動終点部Eに形成された各柱基礎10,10…に予め柱下端部4,4…を固定しておく。
即ち、移動終点部Eでは、柱基礎10の基礎コンクリート30の上にベースモルタル26を設けた後、所定時間経過後に、図外の建方装置を用いて、アンカーボルト24,24…に仮止めされた柱下端部4のベースプレート41と基礎コンクリート30との間の間隔を調整して柱下端部4の建入歪み直し(柱下端部4の垂直度調整)を行った後に、アンカーボルト24に座金27を介してナット28を締結して、柱下端部4のベースプレート41を柱基礎10のアンカーボルト24に固定する本締め作業を行うことにより、柱下端部4を柱基礎10に固定しておく。
当該建方装置は、柱下端部4の建入歪み直しを行えるものであれば、どのような建方装置を用いても構わない。
【0016】
移動始点部側ステップは、より具体的には、鉄骨構造物組立ステップと、鉄骨構造物移動前準備ステップとを備える。
【0017】
鉄骨構造物組立ステップでは、移動始点部Sの各柱基礎10,10…に取付けられた柱下端部4,4…に柱主要部5,5…を取り外し可能に取付けるとともに、当該取り外し可能に取付けられて隣合う各柱主要部5,5間に、補強梁6,梁61を組付けた鉄骨構造物2Sを組み立てる。
【0018】
当該鉄骨構造物組立ステップでは、まず、移動始点部Sに形成された各柱基礎10,10…に、それぞれ、柱下端部4を設置する。
移動始点部Sにおいては、
図8(a)に示すように、柱基礎10の基礎コンクリート30を形成した後に、
図8(b)に示すように、柱脚ベース20のゲージプレート25を取り除いて、基礎コンクリート30の上にベースモルタル26を設けた後、柱下端部4のベースプレート41に形成された貫通孔45にアンカーボルト24の上端側を貫通させて、柱基礎10の基礎コンクリート30の上にベースモルタル26を介して柱下端部4のベースプレート41を設置しておく(
図4参照)。つまり、アンカーボルト24に座金27を介してナット28を仮締めすることにより、柱下端部4のベースプレート41を柱基礎10のアンカーボルト24に仮止めしておく。
即ち、移動始点部Sでは、各柱基礎10,10…に柱下端部4,4…を仮止めして、当該各柱基礎10,10…に仮止めされた柱下端部4,4…に、柱主要部5,5…を取り外し可能に取付けた状態で、鉄骨構造物2Sを組み立てた後に、アンカーボルト24に座金27を介してナット28を締結して、柱下端部4のベースプレート41を柱基礎10のアンカーボルト24に固定する本締め作業を行うことにより、柱下端部4を柱基礎10に固定する。
【0019】
柱下端部4に柱主要部5を取り外し可能に取付ける取付作業は、柱下端部4と柱主要部5とに取り外し可能に取付けられて、柱下端部4と柱主要部5との目違い調整、レベル調整、倒れ調整等の建方調整を行える建方装置11を用いることが好ましい。
【0020】
また、鉄骨構造物組立ステップにおいては、柱下端部4と柱主要部とを取り外し可能に取付けるために柱下端部4と柱主要部5とに取り外し可能に取付けられた建方装置11、及び、上述した図外の建方装置を用いて、建方作業を行う。
即ち、これら建方装置11、及び、上述した図外の建方装置を用いて、柱下端部4と柱主要部5とで構成される柱3の建入歪み直し(垂直度調整)作業を行いながら、隣り合う各柱3,3における柱主要部5,5間に補強梁6,梁61を組付けることによって、移動始点部Sに鉄骨構造物2Sを組み立てることが好ましい。
【0021】
即ち、上述した図外の建方装置としては、柱基礎10に対する柱下端部4あるいは柱3の建入歪み直し(垂直度調整)を行える建方装置を用いればよい。
また、上述した建方装置11としては、柱下端部4と柱主要部5との目違い調整、レベル調整、倒れ調整等の建方調整、即ち、柱下端部4に対する柱主要部5の建方調整を行える建方装置を用いればよい。
【0022】
移動始点部Sでの鉄骨構造物2Sの構築作業は、例えば、1節分の各柱主要部5,5…を各柱下端部4,4…に取り外し可能に取付けた状態で行う。
即ち、隣り合う各柱主要部5,5の下端側間に補強梁6を組み付ける。その後、隣り合う各柱主要部5,5の2階床を支持する梁挿入位置に梁61を組み付け、さらに、梁61,61間にデッキプレート62を敷設する。さらに、2節目の柱を繋いで、3階床を支持する梁挿入位置に梁61を組み付け、さらに、梁61,61間にデッキプレート62を敷設する。また、屋上床を支持する梁挿入位置に梁61を組み付け、さらに、梁61,61間にデッキプレート62を敷設する。尚、
図1では、3階建ての鉄骨造建物を構築するための鉄骨構造物2Sを図示したが、階数は、任意に決めればよい。
このように、実施例に係る鉄骨構造物の施工方法は、柱下端部4と柱主要部5とが連結されて構成された柱3と、隣り合う柱3と柱3とに連結された梁とを備えた鉄骨構造物を使用して実現される。尚、当該鉄骨構造物は、梁として少なくとも上述した梁61を備えた構成であればよい。
【0023】
尚、移動始点部Sに構築される鉄骨構造物2S、及び、後述する鉄骨構造物移動前準備ステップにおいて移動始点部Sに構築される横移動可能な鉄骨構造物2Mは、少なくとも自立可能に構成される。
【0024】
また、実施例の鉄骨構造物の施工方法においては、隣り合う各柱主要部5,5の下端側間に補強梁6を組み付けた鉄骨構造物としたので、当該鉄骨構造物自体を補強できるとともに、当該鉄骨構造物を移動終点部Eに移動させる際の鉄骨構造物の歪み、ねじれなどを抑制できるようになる。
【0025】
鉄骨構造物移動前準備ステップでは、鉄骨構造物組立ステップで移動始点部Sに組み立てられた鉄骨構造物2Sの各柱主要部5,5…を各柱下端部4,4…から取り外して横移動可能な鉄骨構造物2Mを構成する。
即ち、建方装置11を用いて移動始点部Sにおいて補強された鉄骨構造物2Sを組み立てた後、建方装置11を取り外すことにより、補強された鉄骨構造物2Sの各柱主要部5,5…を各柱下端部4,4…から取り外して補強された横移動可能な鉄骨構造物2Mを構成する。
【0026】
鉄骨構造物移動ステップは、より具体的には、横移動路構成ステップと、移動ステップとを備える。
横移動路構成ステップでは、移動方向Mに沿って隣り合う柱主要部5,5間において移動方向に沿って延長する横移動路7を構成する。
移動ステップでは、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mを横移動路7を介して移動始点部Sから移動終点部Eまで横移動させる。
【0027】
具体的には、横移動路構成ステップにおいては、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間において移動方向Mに沿って延長する移動路形成部材を設置するとともに、柱基礎10に固定された柱下端部4の固定面42に取付けられた平滑面形成部材75の上面と移動路形成部材の上端面に取付けられた平滑面形成部材75の上面とが同一水平レベルの路面となる横移動路7が構成される。
【0028】
移動路形成部材は、例えば、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間に設置される主レール材70と、柱下端部4の柱際に設置される柱際レール材71とで構成される。
主レール材70及び柱際レール材71は、例えば、H形鋼のような形鋼を用い、H形鋼の一方のフランジが柱下端部4,4間の鉄筋コンクリート床Fに固定され、H形鋼の他方のフランジの外面が上端面となるように構成される。
当該移動路形成部材は、移動方向Mに沿って連続するように設けられる。例えば、当該移動路形成部材は、移動方向Mに沿って一直線状に連続するように設けられたり、あるいは、移動方向Mに沿って曲線状に連続するように設けられる。
【0029】
また、横移動路構成ステップにおいては、鉄筋コンクリート床Fに横移動路7と並行させたガイドレール8を設けるとともに、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mからガイドレール8に支持される支持手段を設けたことにより、当該鉄骨構造物がガイドレール8にガイドされた状態で横移動可能に構成される。
具体的には、当該支持手段は、
図11に示すように、補強梁6からガイドレール8に向けて延長するように設けられた支持梁65と、当該支持梁65の下端側に設けられたガイドローラ66とで構成される。
また、ガイドレール8は、例えば、H形鋼のような形鋼を用い、H形鋼の一方のフランジが垂直面で形成されるガイドレール面となるように鉄筋コンクリート床Fに固定されて構成される。
従って、ガイドローラ66が当該ガイドレール面を転がるように構成されることによって、鉄骨構造物2Mをスムーズに、かつ、鉄骨構造物2Mの柱主要部5を移動方向Mに向けて正確に直進させることができるようになり、鉄骨構造物2Mの横移動をスムーズかつ正確に行うことができるようになる。
【0030】
そして、移動ステップにおいては、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mの柱主要部5の底板51の凹部55に摩擦軽減材としての摩擦軽減板9を設置して、当該摩擦軽減板9を底板51の下面52よりも下方に突出させ、当該摩擦軽減板9と横移動路7の路面とを接触させながら、当該鉄骨構造物2Mを移動終点部Eまで横移動させる。
即ち、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mの移動時においては、摩擦軽減板9と横移動路7の路面とを接触させるとともに、鉄骨構造物2Mの柱主要部5の底板51の下面52と横移動路7の路面とが接触しない非接触とした状態で移動させる。
従って、平滑面形成部材75により平滑面に形成された横移動路7の路面と摩擦軽減板9との接触により、鉄骨構造物2Mの移動時の摩擦抵抗を減らすことができ、鉄骨構造物2Mを容易に横移動させることができるようになる。
【0031】
尚、摩擦軽減板9としては、例えば、モノマーキャストナイロン(ポリアミド樹脂)等の低摩擦材料により形成された摩擦軽減板を用いればよい。当該摩擦軽減板9は、例えば、直方体の板材により構成される。当該摩擦軽減板9を構成する直方体の長辺の長さは、凹部55の後側壁56Bから前側開口部57までの長さ寸法よりも長く、当該直方体の短辺の長さは、凹部55の左側壁56Lと右側壁56Rとの間の間隔寸法に対応した寸法に形成され、かつ、当該直方体の高さ(板厚)は、凹部55の底面58から底板51の下面52までの長さ寸法よりも長い長さに形成されている。
換言すれば、凹部55は、底板51の下面52の一部を除去して形成されて、柱主要部5の移動方向Mの後側に位置されて摩擦軽減板9の後側側面91と接触する後側壁56Bを有するとともに、移動方向Mの前側が開口された前側開口部57に形成され、かつ、底板51の下面52から底面58までの凹部55の深さ寸法が、当該凹部55の底面58と横移動路7の路面との間に挿入される摩擦軽減板9の板厚寸法よりも小さい寸法に形成された構成とした。
【0032】
そして、移動ステップにおいて、柱主要部5の凹部55に摩擦軽減板9を設置する際には、摩擦軽減板9の一端側の後側側面91を凹部55の後側壁56Bに接触させるとともに摩擦軽減板9の他端側の前側側面側99を前側開口部57を介して凹部55より突出させる。即ち、摩擦軽減板9を形成する直方体の短辺と短辺との間の一方の側面により形成された後端側面91を凹部55の側壁56Bに接触させるとともに、直方体の短辺と短辺との間の他方の側面側である前側側面側99を凹部55の前側開口部57を介して凹部55より外方に突出させた状態に設置する。
この状態で鉄骨構造物2Mを横移動させると、凹部55には上述した溝部59を備えるため、摩擦軽減板9の後側側面91と凹部55の後側壁56Bとを確実に面接触させることができ、底板51に加わる力を、凹部55の後側壁56Bを介して摩擦軽減板9の後側側面91に確実に伝達できるようになるので、鉄骨構造物2Mをよりスムーズに横移動させることができるようになる。
即ち、鉄骨構造物2Mの移動時においては、柱主要部5の凹部55の後側壁56から摩擦軽減板9の後側側面91に力が確実に伝達されて、鉄骨構造物2Mと摩擦軽減板9とが一緒に移動することにより、鉄骨構造物2Mの横移動時の摩擦を軽減できる。さらに、鉄骨構造物2Mの移動後、移動終点部側ステップにおいて、摩擦軽減板9を凹部55から取り除く際に、前側開口部57を介して凹部55より外方に突出している前側側面側99を持つことができ、摩擦軽減板9を凹部55から容易に取り除くことができるようになる。
【0033】
尚、
図12に示すように、摩擦軽減板9を凹部55に設置する作業、及び、摩擦軽減板9を凹部55から容易に取り除く作業は、上下動手段としての上下動ジャッキ15を用いて、柱主要部5を上方に移動させた状態で行う。
この場合、補強された鉄骨骨組構造物を上下動ジャッキ15で持ち上げる際の支圧部として、
図12に示すように、補強梁6,6を利用することによって、鉄骨骨組構造物を上下動ジャッキ15で簡単に持ち上げることができるようになるとともに、鉄骨骨組構造物を上下動ジャッキ15で持ち上げる際に鉄骨骨組構造物に加わる負担を軽減できるようになる。
また、
図12において、符号16は、上下動ジャッキ15の設置高さを調整するための高さ調整台である。
【0034】
また、移動ステップにおいて、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mを横移動路7を介して移動始点部Sから移動終点部Eまで横移動させるための動力は、例えば、動力付与手段としての押圧ジャッキ13(13F,13R)による押圧力を用いる。
尚、押圧ジャッキ13,13…の配置は、例えば、
図1(b)の鉄骨構造物2Mにおいて、鉄骨構造物2Mの後側に位置される4本の柱主要部5,5…にそれぞれ押圧力を付与するために4本の柱主要部5,5…の後側にそれぞれ後側押圧ジャッキ13R(13)を設置するとともに、鉄骨構造物2Mの前側に位置される4本の柱主要部5,5…においては、
図1(b)の左右側の柱主要部5,5以外の中央側の2本の柱主要部5,5の後側にそれぞれ前側押圧ジャッキ13F(13)を設置するようにした。
即ち、鉄骨構造物2Mの前側に設置する前側押圧ジャッキ13Fの数を、鉄骨構造物2Mの後側に設置する後側押圧ジャッキ13Rの数よりも少なくして、鉄骨構造物2Mの後側に設置した4つの押圧ジャッキ13R及び鉄骨構造物2Mの前側の横幅方向中央側に設置した2つの押圧ジャッキ13Fを駆動させて鉄骨構造物2Mを横移動させながら、鉄骨構造物2Mの進行方向がずれた場合に、鉄骨構造物2Mの前側の2つの押圧ジャッキ13F,13Fの伸長ストローク量を調整することにより、鉄骨構造物2Mの進行方向を修正する構成とした。
このように、鉄骨構造物2Mの前側に設置する前側押圧ジャッキ13Fの数を、鉄骨構造物2Mの後側に設置する後側押圧ジャッキ13Rの数よりも少なくしたことにより、押圧ジャッキ13にかかる費用を削減できるとともに、鉄骨構造物2Mを横移動させる際に鉄骨構造物2Mの進行方向を修正しながら移動させることができるようになるため、鉄骨構造物2Mを移動終点部Eまで正確に移動させることができるようになる。
また、押圧ジャッキ13の数を少なくできるので、押圧ジャッキ13に対する制御を容易にできる。
尚、押圧ジャッキ13(13F,13R)は、例えば
図11に示すように、ピストン側を、柱主要部5の移動方向後側の側面の下端側に取付けられた取付ピース12に連結するとともに、シリンダー側に設けられた固定装置14を、動始点部Sに設置されたジャッキ取付レール17や主レール材70に固定した後、ピストンを伸長させる。
【0035】
移動終点部側ステップにおいては、移動終点部Eまで横移動させた鉄骨構造物2Mの柱主要部5を上下動ジャッキ15を用いて上方に移動させて、摩擦軽減板9を柱主要部5の底板51の凹部55から取り除くとともに、柱下端部4の上面となる固定面42に取付けられた平滑面形成部材75を取り除いた後に、摩擦軽減板9が取り除かれた凹部55に金属板としての例えば鋼板51A(
図10(b),(c)参照)を設置して、柱主要部5の下面52の外周縁と柱下端部4の上端面となる固定面42とを溶接して接合するとともに、凹部55の前側開口部57側において、鋼板51Aと柱下端部4の固定面42とを溶接して接合し、かつ、鋼板51Aと柱主要部5の底板51とを溶接して接合したことにより、移動終点部Eにおいて、鉄骨構造物2を構築する。
尚、鋼板51Aは、板厚寸法が、柱主要部5の下面52から凹部55の底面58までの凹部55の深さ寸法と同じ寸法に形成されたものを用いる。
【0036】
尚、溶接作業が終了した後、鉄骨構造物2から補強梁6、支持梁65を取り外す(
図10(c)参照)。当該取り外された補強梁6、支持梁65は、当該鉄骨構造物2の他の部位に再利用するか、又は、当該鉄骨構造物2以外の鉄骨構造物を構築する際に再利用するなどすれば、補強梁6や支持梁65の有効利用、即ち、資源の有効活用が図れるので、好ましい。
【0037】
そして、移動終点部Eに構築された鉄骨構造物2(
図1(c),
図2(b),
図3(b)参照)に、例えば、外壁、床スラブ、内装などを施工することにより、鉄骨造の建物を構築する。
【0038】
以下、実施例に係る鉄骨構造物の施工方法による施工手順の一例を
図8乃至
図10に基づいて説明する。
まず、
図8(a)に示すように、建設予定地1における移動始点部S、及び、移動終点部Eに、構築する鉄骨構造物2の柱3,3の間隔(スパン)に合わせて、柱基礎10,10…を構築するとともに、柱基礎10,10…間に鉄筋コンクリート床Fを構築しておく。尚、移動始点部Sと移動終点部Eとが離れている場合においては、移動始点部Sと移動終点部Eとの間にも、柱基礎10,10…及び鉄筋コンクリート床Fを構築しておけばよい。
次に、
図8(b)に示すように、移動始点部Sの各柱基礎10,10…に、それぞれ、柱下端部4を仮止めする。この際、柱下端部4の固定面42に、ステンレスシート等の平滑面形成部材75を取付けておく。
さらに、
図8(c)に示すように、建方装置11を設置して、柱主要部5,5…を各柱下端部4,4…に対して取り外し可能に取付けるとともに、図外の建方装置を柱下端部4側に設置することにより、柱3を組立てて、柱3の建入歪み直し(垂直度調整)を行いながら、隣り合う柱3,3の柱主要部5,5の下端側間に補強梁6を組み付けていく。補強梁6の組付け作業が終了したならば、次に、2階部分の梁61を組付けるとともに、2階部分のデッキプレート62を敷設していく。そして、所望の階数分の梁61の組付け、及び、デッキプレート62の敷設作業を行って、移動始点部Sに所望の鉄骨構造物2Sを構築する。
尚、鉄骨構造物2Sを構築する前に、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間に、主レール材70を鉄筋コンクリート床Fに設置するとともに、柱下端部4の柱際に、柱際レール材71を鉄筋コンクリート床Fに設置する。この場合、
図8(c)、
図9(a)に示すように、主レール材70を先行して取付けた後、柱際レール材71を取付けるようにしても良いし、逆に、柱際レール材71を先行して取付けた後、主レール材70を取付けるようにしても良い。
また、この際、主レール材70の上端面74、及び、柱際レール材71の上端面74に、ステンレスシート等の平滑面形成部材75を予め取付けておく。即ち、後に、移動可能な鉄骨構造物2Mを移動させる際の摩擦軽減のため、柱下端部4の固定面42にステンレスシート等の平滑面形成部材75を取付けておくととともに、同様に、主レール材70の上端面74、及び、柱際レール材71の上端面74にもステンレスシート等の平滑面形成部材75を取付けておく。
移動始点部Sにおいて鉄骨構造物2Sを構築したならば、
図9(a)に示すように、建方装置11及び図外の建方装置を取り外すことによって、移動始点部Sにおいて移動可能な鉄骨構造物2Mを構成する。そして、上下動ジャッキ15を用いて、柱主要部5を上方に移動させ(若干持ち上げて)、柱主要部5の底板51の凹部55と柱下端部4の固定面42に取付けられた平滑面形成部材75との間に、摩擦軽減板9を設置した後、上下動ジャッキ15を下降させて、柱主要部5を下降させる(
図9(a)参照)。
そして、
図9(a)に示すように、鉄骨構造物2Mの後側に設置された4本の柱主要部5の下端側において移動方向後側の側面に後側押圧ジャッキ13R(13)の一端を取付けるための取付ピース12を取付けるとともに、鉄骨構造物2Mの後側に設置された4本の柱主要部5の後側に位置される鉄筋コンクリート床Fにそれぞれジャッキ取付レール17を設置する。
そして、
図9(b)に示すように、後側押圧ジャッキ13Rの一端を取付ピース12に取付けるとともに、後側押圧ジャッキ13Rの他端側に設けられた固定装置14をジャッキ取付レール17に固定することにより、反力を取れる状態に後側押圧ジャッキ13Rを設置する(
図11参照)。
また、鉄骨構造物2Mの前側に設置された2本の柱主要部5の後方にも同様にして前側押圧ジャッキ13F(13)を設置する。
尚、例えば、取付ピース12は建方用ピース54の横に並ぶように取付ける。
例えば
図11に示すように、建方用ピース54は、柱主要部5の下端側における移動方向Mの前後方向に位置される各側面においては、隣り合う左右の側面との境界近傍位置にそれぞれ1つずつ設けられるとともに、柱主要部5の下端側における移動方向Mの左右方向に位置される各側面においては、当該各側面の中央位置に1つずつ設けられる。この場合、例えば
図11に示すように、取付ピース12は、柱主要部5の下端側における移動方向Mの後側に位置される側面において、左右間の中央側に位置するように設けられる。
また、例えば
図11に示すように、建方用ピース44は、柱下端部4における移動方向Mの前後方向に位置される各側面においては、隣り合う左右の側面との境界近傍位置にそれぞれ1つずつ設けられるとともに、柱下端部4における移動方向Mの左右方向に位置される各側面においては、当該各側面の中央位置に1つずつ設けられる。
そして、
図9(c)に示すように、後側押圧ジャッキ13R及び前側押圧ジャッキ13Fを駆動させながら、後側押圧ジャッキ13R及び前側押圧ジャッキ13Fを1ストローク伸長させて移動可能な鉄骨構造物2Mを移動方向Mに押して移動させる毎に、後側押圧ジャッキ13R及び前側押圧ジャッキ13Fを盛り変える。このように、後側押圧ジャッキ13R及び前側押圧ジャッキ13Fの駆動、後側押圧ジャッキ13R及び前側押圧ジャッキ13Fの盛替え作業を繰り返すことにより、移動可能な鉄骨構造物2Mを、移動終点部Eまで横移動させる。また、鉄骨構造物2Mの進行方向が予定する移動方向Mからずれた場合には、前側押圧ジャッキ13F(13)の伸長ストローク量を調整することにより、鉄骨構造物2Mの進行方向のずれを修正する。
尚、鉄骨構造物2Mの進行方向のずれは、例えば、測量機械等を監視装置として用いて、柱主要部5に付けた印や柱主要部5の向き等を鉄骨構造物2Mの移動動作中に逐次監視するようにして検出すればよい。
鉄骨構造物2Mを、
図10(a)に示すように、移動終点部Eまで横移動させた後、柱際レール材71を撤去して、その後、上下動ジャッキ15を用いて、柱主要部5を上方に移動させて(若干持ち上げて)、柱主要部5の底板51の凹部55と柱下端部4の固定面42との間から摩擦軽減板9を取り除くとともに、柱下端部4の固定面42に取付けられている平滑面形成部材75を取り除いた後、上下動ジャッキ15を下降させて、柱主要部5を下降させる。
そして、
図10(a)に示すように、移動終点部Eまで横移動させた鉄骨構造物2Mの柱主要部5と柱下端部4とに建方装置11を再度取付けて、柱下端部4と柱主要部5との建入歪み直し作業を行う。
建入歪み直し作業を行った後、
図10(b)に示すように、建方用ピース44,54を撤去した後、柱主要部5の下面52の外周縁と柱下端部4の固定面42とを溶接することにより、柱主要部5と柱下端部4とを固定する。尚、この場合、上述したように、柱主要部5の凹部55と底面58と柱下端部4の固定面42との間に、例えば凹部55の前側開口部57を介して鋼板51Aを挿入し、凹部55の前側開口部57側において、鋼板51Aと柱下端部4の固定面42とを溶接して接合するとともに、鋼板51Aと柱主要部5の底板51とを溶接して接合することにより、柱主要部5の下面52の外周縁の全周を柱下端部4の固定面42に確実に溶接することができる。
溶接作業が終了した後、
図10(c)に示すように、補強梁6、支持梁65、主レール材70を撤去することにより、移動終点部Eの柱基礎10,10…に柱3が固定された所望の鉄骨構造物2が構築されることになる。
【0039】
実施例の鉄骨構造物の施工方法によれば、特許文献2のように、鉄骨構造物の多数の柱の下端に設けられた各ベースプレートの固定孔と対応する各柱固定部のねじ孔との位置合わせ作業を不要とできるため、施工性に優れた鉄骨構造物の施工方法を提供できるようになる。
また、移動始点部Sに、柱下端部4を取付けるための柱基礎10を構築したので、移動始点部Sにおいて、鉄骨構造物2Sを組み立てる構築作業を正確に行えるとともに、横移動可能な鉄骨構造物2Mを構成する作業を安全に行えるようになる。さらには、当該横移動可能な鉄骨構造物2Mを移動終点部Eに移動させた後、移動始点部Sの各柱基礎10,10…に固定された各柱下端部4,4…を利用して、移動始点部Sに鉄骨構造物を構築することができるようになる。
【0040】
尚、実施例においては、横移動路構成ステップにおいて、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間において移動方向Mに沿って延長する移動路形成部材を設置するとともに、柱下端部4の固定面42に取付けられた平滑面形成部材75の上面と移動路形成部材の上端面74に取付けられた平滑面形成部材75の上面とが同一水平レベルの路面となる横移動路7が構成されるようにし、かつ、移動ステップにおいて、横移動可能に構成された鉄骨構造物2Mの柱主要部5の底板51の凹部55に摩擦軽減板9を設置して、当該摩擦軽減板9を底板51の下面52よりも下方に突出させ、当該摩擦軽減板9と横移動路7の路面とを接触させながら当該鉄骨構造物2Mを移動終点部Eまで横移動させる例を示した。しかしながら、柱下端部4の固定面42自体、及び、移動路形成部材の上端面74自体が平滑な路面として機能するように構成されていれば、上述した平滑面形成部材75を設ける必要はない。
即ち、横移動路構成ステップにおいては、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間において移動方向Mに沿って延長する移動路形成部材を設置するとともに、柱基礎10に固定された柱下端部4の固定面42と移動路形成部材の上端面74とが同一水平レベルの路面となる横移動路7が構成されるようにしてもよい。
【0041】
また、実施例では、移動終点部側ステップにおいて、摩擦軽減板9が取り除かれた凹部55に鋼板51Aを設置して、凹部55の前側開口部57において、鋼板51Aと柱下端部4の固定面42とを溶接して接合するとともに、鋼板51Aと柱主要部5の底板51とを溶接して接合した例を示したが、凹部55に金属板としての鋼板51Aを設置しないようにしても構わない。
【0042】
また、実施例では、柱主要部5の底板51に形成された凹部55が、柱主要部5の移動方向Mの後側に位置される後側壁56Bを有するとともに、柱主要部5の移動方向Mの前側が開口された前側開口部57を備えた構成のものを例示したが、柱主要部5の底板51に形成された凹部55は、柱主要部5の移動方向Mの前側が開口されていないものであってもよい。即ち、当該凹部55は、底板51の下面52だけに開口して、底板51の周面には開口しない構成の凹部であってもよいし、あるいは、柱主要部5の移動方向Mの前側及び後側以外の左側又は右側又は左右側が開口された開口部を備えた構成の凹部であってもよい。
【0043】
また、実施例では、柱主要部5の下面52の外周縁と柱下端部4の固定面42とを溶接して固定した例、即ち、鉄骨構造物の柱主要部52の下端部と柱下端部4の上端部とを溶接して固定した例を示したが、溶接以外の固定方法を用いても構わない。
【0044】
また、実施例では、各柱主要部5,5間に梁6,61、デッキプレート62を組付けた鉄骨構造物を移動させる例を示したが、少なくとも各柱主要部5,5間に梁6,61を組付けた鉄骨構造物を移動させるようにすればよい。
【0045】
また、実施例で説明した建入歪み直し作業は、上述した建方装置を用いて行うことが好ましいが、当該建入歪み直し作業を転倒防止ワイヤ―等を用いて行うようにしてもよい。
【0046】
また、実施例では、柱(鉄骨柱)3を構成する柱下端部4と柱主要部5として角柱を用いた例を示したが、柱3を構成する柱下端部4と柱主要部5として、角柱以外の柱、例えば、丸柱、多角柱等を用いても構わない。
【0047】
また、実施例では、移動始点部Sにおいて、各柱基礎10,10…に仮止めされた柱下端部4,4…に、柱主要部5,5…を取り外し可能に取付けた状態で、鉄骨構造物2Sを組み立てた後に、柱下端部4を柱基礎10に固定するようにした例を示したが、移動終点部Eと同じように、移動始点部Sにおいて、移動始点部Sに形成された各柱基礎10,10…に柱下端部4,4…を本締め作業により固定した後に、各柱基礎10,10…に固定された柱下端部4,4…に、柱主要部5,5…を取り外し可能に取付けた状態で、鉄骨構造物2Sを組み立てるようにしてもよい。
【0048】
また、実施例では、上下動ジャッキ15を用いて、柱主要部5を上方に移動させ(若干持ち上げて)て、柱主要部5の底板51の凹部55と柱下端部4の固定面42に取付けられた平滑面形成部材75との間に、摩擦軽減板9を設置するようにした例を示したが、摩擦軽減板9を柱主要部5の凹部55の底面55に予め接着テープ等で取付けておいてもよい。
また、移動始点部Sにおいて柱下端部4の上に柱主要部5を設ける際に、柱下端部4の固定面42に取付けられた平滑面形成部材75の上に摩擦軽減板9を載置した後に、柱下端部4の上に柱主要部5を設けることによって、柱下端部4の上面になる平滑面形成部材75と柱主要部5の凹部55との間に、摩擦軽減板9を設置するようにしてもよい。
【0049】
また、実施例では、移動路形成部材を、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間に設置される主レール材70と柱際レール材71とで分けて構成した例を示したが、移動路形成部材を、移動方向Mに沿って隣り合う柱下端部4,4間に設置される単一のレール材で構成するようにしてもよい。
【0050】
また、実施例では、柱下端部4に予め建方用ピース44を取付けておくとともに、柱主要部5の下端側に予め建方用ピース54を取付けておいて、押圧ジャッキ13の設置時に柱主要部5の下端側に取付ピース12を取付ける例を示したが、建方用ピース44,54、取付ピース12を取付けるタイミングはいつであってもよく、要は、柱下端部4に、建方用ピース44を必要な時までに取付け、柱主要部5の下端側に、建方用ピース54、取付ピース12を必要な時までに取付けるようにすればよい。
【0051】
また、実施例では、取付ピース12を建方用ピース54の横に並ぶように取付けた例を示したが、例えば、柱下端部4の各側面の中央位置に予め建方用ピース44を1つずつ設け、かつ、柱主要部5の下端側の各側面の中央位置に予め建方用ピース54を1つずつ設けるような場合には、建方用ピース54を取り外して取付ピース12を取付けたり、あるいは、建方用ピース54をそのまま押圧ジャッキ13の取付ピースとして利用するようにしてもよい。
【0052】
また、実施例では、移動始点部Sにおいて、柱基礎10,10…を構築し、構築した各柱基礎10,10…にそれぞれ柱下端部4,4…を取付け、各柱基礎10,10…に取付けられた各柱下端部4,4…の上に柱主要部5,5…を設けてこれら隣合う各柱主要部5,5間に梁61を組付けた鉄骨構造物を移動可能に構成する例を示したが、移動始点部Sに柱基礎10,10…及び柱下端部4,4…を設けないようにしてもよい。
例えば、移動始点部Sに移動路を形成するレール材を設置して当該レール材の上面に取付けられた平滑面形成部材75の上に柱主要部5,5…を設けてこれら隣合う各柱主要部5,5間に梁61を組付けた鉄骨構造物を移動可能に構成するようにしてもよい。
即ち、移動始点部側ステップにおいては、移動始点部Sにおいて、各柱主要部5,5…を自立させることができるとともに、隣合う各柱主要部5,5…間に梁61を組付けた鉄骨構造物を構築でき、かつ、当該鉄骨構造物を移動させることができるようにするために必要な構成を設けるようにすればよい。つまり、移動始点部Sには、各柱主要部5,5…の設置及び移動のために必要な載台や路面等の構成を設けるようにすればよい。
【0053】
また、実施例では、柱として、柱下端部と柱主要部とに分けて形成された柱(鉄骨柱)を用いた鉄骨構造物の施工方法を説明したが、本発明は、柱として、柱下端部と柱主要部とに分けて形成されていない通常の鉄骨柱を用いた鉄骨構造物の施工方法にも当然に適用可能である。
例えば、柱として、柱下端部と柱主要部とが一体となって柱下端部と柱主要部との区分が無いように形成された柱部の下端にベースプレートを備えたような通常の鉄骨柱(例えば特許文献2に記載されたような鉄骨柱)を用いた鉄骨構造物の施工方法にも適用可能である。
また、この場合、横移動路は、平滑面を有した平板等で構成された横移動路としてもよい。
【0054】
尚、上記では、動力付与手段として押圧ジャッキ(押圧手段)13を用いた例を示したが、動力付与手段として牽引ジャッキ(牽引手段)を用いてもかまわない。
また、動力付与手段として、ジャッキ以外の押圧手段や牽引手段を用いても構わない。
【0055】
また、上記では、前側動力付与手段の数を、後側動力付与手段の数よりも少なくした例として、後側動力付与手段を4つ、前側動力付与手段を2つ設けた例を示したが、設置数は、構造物の構成等によって、適宜変更すればよい。
【0056】
上記では、構造物として鉄骨構造物を例示したが、本発明において対象となる構造物としては、鉄骨構造物以外の構造物、例えば、木造構造物、その他の構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
2M 鉄骨構造物(構造物)、13 押圧ジャッキ(動力付与手段)、
13F 前側押圧ジャッキ(前側動力付与手段)、
13R 後側押圧ジャッキ(後側動力付与手段)、M 移動方向。