(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175390
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電力量計の開閉器の接点状態検出方法及び電力量計の開閉器駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20221117BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20221117BHJP
G01R 22/06 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H9/54 C
H01H47/00 D
G01R22/06 130A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081742
(22)【出願日】2021-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】神宮 崇了
(72)【発明者】
【氏名】迫山 光弘
【テーマコード(参考)】
5G034
【Fターム(参考)】
5G034AC02
(57)【要約】
【課題】開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握できる電力量計の接点状態検出方法及び電力量計の開閉器駆動回路。
【解決手段】励磁コイル11への電流の供給又は遮断により可動接点15bが固定接点15aに対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷1L,2Lへの供給遮断を行う電力量計の開閉器駆動回路であって、可動接点15bが開動作から閉動作のとき、1回目の駆動信号により可動接点15bが切り替わるときの励磁コイル11の第1電流波形を取得し、可動接点15bが閉動作のとき、2回目の駆動信号により励磁コイル11の第2電流波形を取得する電流センサ4と、電流センサ4で検出された第1電流波形と第2電流波形との差に基づき可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出するCPU2とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、
前記可動接点が開動作から閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、
前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、
前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項2】
励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、
前記可動接点が閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、
前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、
前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項3】
励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、
前記可動接点が閉動作から開動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、
前記可動接点が開動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、
前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の開動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項4】
励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、
前記可動接点が開動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、
前記可動接点が開動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、
前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の開動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項5】
前記第1電流波形と前記第2電流波形との少なくとも一方の電流波形の振幅値が所定値を超えたかどうかを判定し、前記電流波形の振幅値が前記所定値を超えた状態が所定時間継続している場合には、異常と判断することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項6】
前記第1電流波形の電流値と前記第2電流波形の電流値とが閾値を下回っている場合には、前記可動接点が開動作又は閉動作できないと判別することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電力量計の開閉器の接点状態検出方法。
【請求項7】
励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器駆動回路であって、
前記可動接点が開動作から閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得する電流センサと、
前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出する開閉動作検出部とを備えることを特徴とする電力量計の開閉器駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計の開閉器の接点状態検出方法及び電力量計の開閉器駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、例えば、特許文献1に記載された電磁継電器の異常検出方法が知られている。電磁継電器の異常検出方法は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断に伴って発生する電磁力によって可動接点と固定接点とが閉成又は開成する。
【0003】
可動接点が固定接点に対して動作していない状態で、第1検出パルス信号を供給したときの励磁コイルのコイル電流の第1過渡応答信号と、可動接点が固定接点に対して動作している状態で、第2検出パルス信号を供給したときのコイル電流の第2過渡応答信号との少なくとも一方に基づいて、可動接点の固定接点に対する動作異常を検出する。
【0004】
また、電力量計に用いられる開閉器は、電源側と負荷との間に設けられ、可動接点が開閉することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う。可動接点は固定接点に対して開動作と閉動作とを多数回繰り返している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、開閉器は、開閉動作が増えるにつれて劣化していく。このため、開閉動作回数を把握しておく必要がある。開閉指示の回数をソフトウェアでカウントしているが、実際に動作した回数が開閉指示の回数とは異なる場合がある。このため、開閉指示に対する開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することが望まれる。
【0007】
本発明の課題は、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる電力量計の開閉器の接点状態検出方法及び開閉器駆動回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、前記可動接点が開動作から閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、前記可動接点が閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする。
【0010】
請求項3は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、前記可動接点が閉動作から開動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が開動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の開動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする。
【0011】
請求項4は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器の接点状態検出方法であって、前記可動接点が開動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が開動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得し、前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の開動作が行われたかどうかを検出することを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記第1電流波形と前記第2電流波形との少なくとも一方の電流波形の振幅値が所定値を超えたかどうかを判定し、前記電流波形の振幅値が前記所定値を超えた状態が所定時間継続している場合には、異常と判断する。
【0013】
請求項6は、前記第1電流波形の電流値と前記第2電流波形の電流値とが閾値を下回っている場合には、前記可動接点が開動作又は閉動作できないと判別することを特徴とする。
【0014】
請求項7は、励磁コイルへの電流の供給又は遮断により可動接点が固定接点に対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う電力量計の開閉器駆動回路であって、前記可動接点が開動作から閉動作のとき、1回目の駆動信号により前記可動接点が切り替わるときの前記励磁コイルの第1電流波形を取得し、前記可動接点が閉動作のとき、2回目の駆動信号により前記励磁コイルの第2電流波形を取得する電流センサと、前記第1電流波形と前記第2電流波形との差に基づき前記可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出する開閉動作検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、可動接点が開動作から閉動作時の1回目の駆動信号による第1電流波形と、可動接点が閉動作時の2回目の駆動信号による第2電流波形との差に基づき可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0016】
請求項2によれば、可動接点が閉動作時の1回目の駆動信号による第1電流波形と、可動接点が閉動作時の2回目の駆動信号による第2電流波形との差に基づき可動接点の閉動作が行われたかどうかを検出する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0017】
請求項3によれば、可動接点が閉動作から開動作時の1回目の駆動信号による第1電流波形と、可動接点が開動作時の2回目の駆動信号による第2電流波形との差に基づき可動接点の開動作が行われたかどうかを検出する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0018】
請求項4によれば、可動接点が開動作時の1回目の駆動信号による第1電流波形と、可動接点が開動作時の2回目の駆動信号による第2電流波形との差に基づき可動接点の開動作が行われたかどうかを検出する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0019】
請求項5によれば、電流波形の振幅値が所定値を超えた状態が所定時間継続している場合には、開閉器の異常と判断することができる。
【0020】
請求項6によれば、第1電流波形の電流値と第2電流波形の電流値とが閾値を下回っている場合には、可動接点が開動作又は閉動作できないと判別することができる。
【0021】
請求項7によれば、請求項1の効果と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器駆動回路を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点の状態検出・異常検出を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の開動作から閉動作に切り替わる時の電流波形と閉動作時の安定状態の電流波形とを示す図である。
【
図5】の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の閉動作の電流波形と閉動作時の安定状態の電流波形とを示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の閉動作の検出を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の閉動作から開動作に切り替わる時の電流波形と開動作時の安定状態の電流波形とを示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の開動作から開動作に切り替わる時の電流波形と動作後の安定状態の電流波形とを示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の閉動作の検出を説明するフローチャートである。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る電力量計の開閉器の異常時の電流波形を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る電力量計の開閉器の異常検知のフローチャートである。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点溶着時の閉動作から開動作の電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る電力量計の開閉器の接点状態検出方法及び開閉器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の構成図を示す。電力量計は、電力系統の系統電圧と電流を検出し、検出された電圧と電流とに基づき電力を演算する。電力量計は、
図1に示すような開閉器1を備えている。
【0024】
開閉器1は、
図2に示すように、ラッチングリレーからなり、電源側1Sと負荷1Lとの間に設けられ、可動接点が固定接点に対して開閉することにより電力系統の電力の負荷1Lへの供給遮断を行う。
【0025】
開閉器1は、
図1に示すように、励磁コイル11と、鉄心12と、永久磁石13と、接点15と、永久磁石13と接点15とを連結する連結部14とを備えている。接点15は、固定接点15aと可動接点15bとからなる。
【0026】
コの字状の鉄心12には励磁コイル11が巻回されており、鉄心12のギャップ部には永久磁石13が挿通されている。永久磁石13のS極と接点15とは連結部14により連結されている。接点15は、固定接点15aと、連結部14により連結された可動接点15bとからなる。
【0027】
励磁コイル11に励磁電流を一方向に流すと、電磁力が発生して、電磁力により鉄心12のギャップ部の一方にN極が発生し、ギャップ部の他方にS極が発生する。このため、永久磁石13のN極がギャップ部のS極に引き寄せられ、永久磁石13のS極がギャップ部のN極に引き寄せられる。このため、可動接点15bが固定接点15aに対して閉動作する。
【0028】
一方、励磁コイル11に励磁電流を一方向とは逆方向に流すと、鉄心12のギャップ部の一方にS極が発生し、ギャップ部の他方にN極が発生する。このため、永久磁石13のN極がギャップ部のN極から離れ、永久磁石13のS極がギャップ部のS極から離れる。このため、可動接点15bが固定接点15aに対して開動作する。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力量計の開閉器駆動回路を示す図である。開閉器駆動回路は、開閉器1を駆動するものであって、開閉器1、CPU2、トライアック3、電流センサ4,5を備える。CPU2は、駆動信号を2回連続してトライアック3に出力し、励磁コイル11に励磁電流を流させて、接点15を切り替え動作させる。
【0030】
電源側1Sと電源側2Sとの間には、トライアック3と励磁コイル11と電流センサ4との直列回路が接続されている。電流センサ4は、励磁コイル11に流れる電流を検出し、検出電流を過渡応答信号としてCPU2に出力する。CPU2は、電流センサ4からの2つの電流波形をAD(アナログデジタル)変換して2つのデジタル信号を比較することで、ソフトウェアによって接点15の固定接点15aに対する可動接点15bの開閉動作状態を判別する。
【0031】
電流センサ5は、電源側1Sと負荷1Lとの間に開閉器1に直列に接続されて設けられている。電流センサ5は、接点が閉動作している時に電源側1Sから負荷1Lに流れる電流を検出する。電流センサ4,5としては、磁気センサやカレントトランス(ct)等がある。また、電流センサ4としては、コストや製造性の観点から基板に実装できるチップ抵抗器(シャント抵抗)が好ましい。
(電力量計の開閉器の接点状態検出方法の基本原理)
電力量計の開閉器1の接点状態検出方法は、開閉器1の接点15の状態によって変化する励磁コイル11に流れる電流波形から開閉器1の接点15の開動作又は閉動作状態を検出する。接点15の開状態(閉状態)を閉状態(開状態)に切り替えるとき、励磁コイル11と鉄心12とからなる電磁石の極性が反転することで自己誘導による逆起電力が発生する。このため、接点15が安定しているときに比べて励磁コイル11に流れる電流が減少する。
【0032】
この原理を利用するため、駆動信号を2回連続して入力し、それぞれの電流波形をAD変換し比較することで、ソフトウェアによって接点15の状態を判別する。この検出方法であれば、励磁コイル11の個体差や温度による変化の影響を吸収できる。この例では、AC(交流)駆動時の電流波形を用いて説明する。DC(直流)駆動の場合においても同様に接点15の状態を検出することができる。さらに、DC駆動の場合には励磁電流のパルス幅の制御が容易であるため、接点15が動作しない駆動信号を印加して接点15の状態を検出することができる。
(ソフトウェア処理)
図3は、第1の実施形態に係る電力量計の開閉器の接点15の状態検出・異常検知を示すフローチャートである。
図2に示す電力量計の開閉器駆動回路は、接点15の開閉動作時又は定期的に接点15の状態検出・異常検知の処理を実行する。
【0033】
まず、CPU2が駆動信号を2回連続してトライアック3に印加すると、励磁コイル11に励磁電流が2回連続して流れる。電流センサ4は、励磁コイル11に流れる2回連続した電流を計測する(ステップS11)。
【0034】
次に、CPU2は、電流センサ4からの2つの電流波形をAD変換して2つのデジタル信号を比較することで、ソフトウェアによって接点状態、即ち接点の閉動作又は開動作を判定する(ステップS12)。判定処理としては、ある時間において、電流値と閾値との比較を行う方法、ある区間の積分値を比較する方法、電流波形の類似度で判定する。CPU2は、接点の開動作又は閉動作を検出する開閉動作検出部を構成する。
【0035】
CPU2は、接点15の状態に異常がなければ(ステップS13)、接点15の開動作又は閉動作の状態をメモリに記憶する(ステップS14)。そして、CPU2は、接点状態の判定に用いる閾値を更新しておく(ステップS15)。
【0036】
定期的に閾値を更新することで、経年変化や設置環境の影響を吸収することができる。また、上記検出方法を用いて判定を行う際、電力量計の初期化時、または前回動作時にメモリに記録されている接点状態と比較することで、メモリ情報との不一致がないか確認することができる。
【0037】
一方、ステップS13において、CPU2は、接点15の状態に異常がある場合には、異常の状態を通知する(ステップS16)。
(接点の状態検出方法)
次に電力量計の開閉器の接点状態検出方法を説明する。電力量計の開閉器の接点状態検出方法は、励磁コイル11への電流の供給又は遮断により可動接点15bが固定接点15aに対して開動作と閉動作することにより電力系統の電力の負荷への供給遮断を行う。
(接点の閉動作の検出)
まず、接点15の閉動作を
図4~
図6を参照しながら説明する。可動接点15bが開動作から閉動作のとき、CPU2は、1回目の駆動信号をトライアック3を介して励磁コイル11に印加する。
【0038】
1回目の駆動信号により可動接点15bが開動作から閉動作に切り替わるときの励磁コイル11の第1電流波形を電流センサ4により取得する。可動接点15bが閉動作のとき、2回目の駆動信号により励磁コイル11の第2電流波形を電流センサ4により取得する。
図4に示すように、CPU2は、電流センサ4からの第1電流波形の振幅値と第2電流波形の振幅値との差が所定値以上であることから可動接点15bの閉動作が行われたと判定する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0039】
また、既に可動接点15bが閉じていた場合について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。CPU2は、閉制御信号の第1波をトライアック3を介して励磁コイル11に送出する(ステップS21)。
【0040】
電流センサ4は、励磁コイル11に流れる電流(過渡応答信号)の計測を開始する(ステップS22)。開閉器は、接点15の閉動作を開始する(ステップS23)。
【0041】
次に、CPU2は、閉制御信号の第2波をトライアック3を介して励磁コイル11に送出する(ステップS24)。
【0042】
開閉器は、接点15の閉動作を開始し(ステップS25)、その後、励磁コイル11に流れる電流の計測を終了する(ステップS26)。そして、CPU2は、電流センサ4からの第1電流波形の振幅値と第2電流波形の振幅値とが
図5に示すように、同じ安定状態の電流波形で差異がないと判定する(ステップS27)。これにより、接点15の可動接点15bが閉動作していることがわかる。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
(接点の開動作の検出)
次に、接点15の開動作を
図7~
図9を参照しながら説明する。可動接点15bが閉動作から開動作のとき、CPU2は、1回目の駆動信号をトライアック3を介して励磁コイル11に印加する。
【0043】
1回目の駆動信号により可動接点15bが閉動作から開動作に切り替わるときの励磁コイル11の第1電流波形を電流センサ4により取得する。可動接点15bが開動作のとき、2回目の駆動信号により励磁コイル11の第2電流波形を電流センサ4により取得する。
図7に示すように、CPU2は、電流センサ4からの第1電流波形の振幅値と第2電流波形の振幅値との差が所定値以上であることから可動接点15bの開動作が行われたと判定する。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
【0044】
また、既に可動接点15bが開いていた場合について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。CPU2は、開制御信号の第1波をトライアック3を介して励磁コイル11に送出する(ステップS31)。
【0045】
電流センサ4は、励磁コイル11に流れる電流(過渡応答信号)の計測を開始する(ステップS32)。開閉器は、接点15の開動作を開始する(ステップS33)。
【0046】
次に、CPU2は、開制御信号の第2波をトライアック3を介して励磁コイル11に送出する(ステップS34)。
【0047】
開閉器は、接点15の開動作を開始し(ステップS35)、その後、励磁コイル11に流れる電流の計測を終了する(ステップS36)。そして、CPU2は、電流センサ4からの第1電流波形の振幅値と第2電流波形の振幅値とが
図8に示すように、同じ安定状態の電流波形で差異がないと判定する(ステップS37)。これにより、接点15の可動接点15bが開動作していることがわかる。即ち、開閉器の接点の状態を検出して、正確な開閉動作回数を把握することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電力量計の開閉器は、CPU2に電流が流れ続けている場合には、異常と判断したものである。
【0048】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る電力量計の開閉器の異常時の電流波形を示す図である。
図11のフローチャートを参照しながら、開閉器の異常検知を説明する。
【0049】
まず、CPU2は、駆動信号をトライアック3を介して励磁コイル11に送出する。電流センサ4は、励磁コイル11に流れる電流の計測を行う(ステップs41)。CPU2は、電流センサ4からの電流波形の振幅値が所定値を超えたかどうかを判定する(ステップS42)。
【0050】
CPU2は、
図10に示すような電流波形のように、電流波形の振幅値が所定値を超えた状態が所定時間継続している場合には、異常と判断する(ステップS43)。さらに、CPU2は、異常状態の解除を行う(ステップS44)。
(第3の実施形態)
接点の溶着等により接点の開動作ができない場合、機構の不具合などで接点の閉動作できない場合には、1回目の駆動信号で接点状態が変わらない。このため、2回連続して駆動信号を励磁コイル11に印加した場合、電流が低下した時の波形が取得される。
【0051】
このとき、二つの電流波形には差異はないが、
図12に示すように二つとも電流値が
図7、
図8に示す電流値に対して、下がっている(両方とも安定状態と異なる)。このため、CPU2は、電流値が閾値を下回っている場合には接点15の開動作又は閉動作できないと判別することができる。これも極性が反転するだけなので、接点15の開閉いずれの状態でも判別することができる。
【0052】
また、永久磁石13の回転と連動させるための連結部14が何らかの理由で外れたことによる接点15が閉動作不可の場合がある。励磁コイル11の電流波形は、正常時の電流波形と変わらないため、異常検知ができない。
【0053】
しかしながら、この状況に陥った場合、接点15に繋がっている導体には応力がかかっており、支えが外れた場合はニュートラル状態になるのが普通である。ニュートラル状態が“閉”の開閉器を採用しておけば、電力量計は、
図2に示す1S-1L間の電流を電流センサ5で検出している。
【0054】
このため、開指令の後に1S-1L間に電流が流れていることで、電流センサ5によりこの異常を検知することができる。ニュートラル状態が“開”の場合、断定はできないが、逆の考え方で異常の疑いを知ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 開閉器
2 CPU
3 トライアック
4,5 電流センサ
11 励磁コイル
12 鉄心
13 永久磁石
14 連結部
15 接点
15a 固定接点
15b 可動接点