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特開2022-175397樹脂組成物、成形体及びポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175397
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体及びポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20221117BHJP
   C08L 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20221117BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L3/00
C08L93/04
C08L57/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081754
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芝原 遼
(72)【発明者】
【氏名】川端 昭寛
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB042
4J002AF023
4J002BA003
4J002BA013
4J002BB031
4J002BB121
4J002BK003
4J002CE003
4J002FD090
4J002GG00
4J002GK00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造装置の汚染が抑制され、且つ成形加工性に優れるポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A)、熱可塑性デンプン(B)及びロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)、熱可塑性デンプン(B)及び
ロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が、ロジン系樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られる、成形体。
【請求項5】
ロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含む、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。
【請求項7】
(C)成分が、ロジン系樹脂である、請求項5又は6に記載のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体及びポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、優れた機械的性質を有しているため、射出成形品、中空成形品、フィルム、シート、繊維などに加工され各種用途に幅広く用いられている。
【0003】
近年、地球環境への関心が高くなっており、プラスチック成形物についてもできるだけ環境に優しい素材を用いる傾向が強くなっている。こうした素材として、デンプン系材料とポリオレフィン樹脂とを複合したポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物が代表的なものとして知られている。
【0004】
しかしながら、従来のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物は、ポリオレフィン樹脂とデンプン系材料との親和性が悪く、均一な複合物を形成することが難しいため、機械的特性が良好な成形物が得られないという問題があった。
【0005】
上記問題に対して、特許文献1では、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物に相溶化剤として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを用いることにより、ポリオレフィン樹脂とデンプン系材料との相溶性を向上させて、機械的特性が良好な成形物が得られることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010-523765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物は、溶融時の流動性が低いため、成形加工性に劣るものであった。また、当該ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の製造においては、ポリオレフィン樹脂とデンプン系材料が混ざりにくいため、混合されず残存したポリオレフィン樹脂やデンプン系材料により製造装置が汚染されてしまう問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造装置の汚染が抑制され、且つ成形加工性に優れるポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の製造における製造装置の汚染を抑制し、且つポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の成形加工性を向上し得る、新規な改質剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン樹脂及び熱可塑性デンプンを含む樹脂組成物に、特定の樹脂を用いることにより、上記課題を解決することを見出した。また、本発明者は、特定の樹脂を含む改質剤によって、上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物、成形体及び改質剤に関する。
【0011】
1.ポリオレフィン樹脂(A)、熱可塑性デンプン(B)及び
ロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含む、樹脂組成物。
【0012】
2.(A)成分が、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の樹脂組成物。
【0013】
3.(C)成分が、ロジン系樹脂である、上記項1又は2に記載の樹脂組成物。
【0014】
4.上記項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られる、成形体。
【0015】
5.ロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を含む、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。
【0016】
6.前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種である、上記項5に記載のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。
【0017】
7.(C)成分が、ロジン系樹脂である、上記項5又は6に記載のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物用改質剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、溶融時の流動性に優れるため、成形加工性に優れる。また、上記樹脂組成物は、その製造において製造装置の汚染が抑制されている。
【0019】
本発明の改質剤は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物に用いることにより、該複合組成物の溶融時の流動性を向上させるため、その成形加工性を向上させる。また、上記改質剤は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の製造において、製造装置の汚染を抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)(以下、(A)成分とも記す)、熱可塑性デンプン(B)(以下、(B)成分とも記す)、及び樹脂(C)(以下、(C)成分とも記す)を含むものである。
【0021】
<ポリオレフィン樹脂(A)>
(A)成分は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0022】
(A)成分は、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;前記α-オレフィンの二元又は三元の(共)重合体;前記α-オレフィンと、炭素数9~18程度のα-オレフィン、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル及び酢酸ビニル等との二元又は三元の(共)重合体等が挙げられる。
【0023】
上記炭素数2~18程度のα-オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等が挙げられる。上記不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル等が挙げられる。
【0024】
(A)成分は、例えば、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン系樹脂;ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体等のプロピレン系樹脂;1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体等の1-ブテン系樹脂;4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン-エチレン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系樹脂等が挙げられる。
【0025】
(A)成分は、成形加工性に優れる点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;前記α-オレフィンの二元又は三元の(共)重合体;前記α-オレフィンと、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数9~18程度のα-オレフィンとの二元又は三元の(共)重合体が好ましく、同様の点から、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0026】
<熱可塑性デンプン(B)>
(B)成分は、熱可塑性デンプン(TPS)であれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(B)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0027】
(B)成分は、例えば、デンプンを可塑剤と共に加熱混練することにより得られる。
【0028】
上記デンプンは、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。上記デンプンは、例えば、未加工デンプン(生デンプン)、加工デンプン等が挙げられる。上記デンプンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0029】
上記未加工デンプン(生デンプン)は、例えば、トウモロコシデンプン、豆デンプン、タピオカデンプン、いもデンプン、麦デンプン、米デンプン、キャッサバデンプン、ヒシデンプン、ハスデンプン、サゴデンプン、わらびデンプン、クズデンプン等が挙げられる。
【0030】
上記加工デンプンは、例えば、物理処理デンプン、化学処理デンプン等が挙げられる。物理処理デンプンは、例えば、アルファー化デンプン、湿熱デンプン、油脂加工デンプン等が挙げられる。
【0031】
上記化学処理デンプンは、例えば、酸化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプン、酢酸エステル化デンプン、ヒドロキシメチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテルデンプン、カルボキシメチルエーテル化デンプン、アリルエーテル化デンプン、メチルエーテル化デンプン、コハク酸エステル化デンプン、キサントゲン酢酸エステル化デンプン、硝酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、リン酸架橋デンプン、ホルムアルデヒド架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプン、エピクロルヒドリン架橋デンプン、カチオン化デンプン等が挙げられる。
【0032】
上記可塑剤は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。上記可塑剤は、例えば、多価アルコール、ヒドロキシル基を有しない水素結合形成有機化合物、糖アルコールの無水物、動物性タンパク質、植物性タンパク質、脂肪族酸、エステル化合物等が挙げられる。当該多価アルコールは、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グルコース、フラクトース、ソルビトール、シュークロース、トレハロース、マルトース等が挙げられる。当該脂肪族酸は、例えば、エチレンアクリル酸、エチレンマレイン酸、ブタジエンアクリル酸、ブタジエンマレイン酸、プロピレンアクリル酸、プロピレンマレイン酸、及びその他炭化水素塩基の酸等が挙げられる。当該エステル化合物は、フタル酸エステル、コハク酸エステル、酢酸グリセリンエステル(モノ体、ジ体、トリ体)、プロピオン酸グリセリンエステル(モノ体、ジ体、トリ体)、ブタン酸エステル、乳酸エステル、クエン酸エステル、アジピン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等が挙げられる。上記可塑剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0033】
(B)成分は、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、上記デンプンと上記可塑剤とを、80℃~230℃で混練することによって製造することができる。
【0034】
<樹脂(C)>
(C)成分は、ロジン系樹脂、石油樹脂及びテルペン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(C)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、(C)成分を用いることにより、樹脂組成物の溶融時における流動性が向上するため、成形し易くなり、成形加工性に優れる。また、本発明の樹脂組成物は、(C)成分を用いることにより、その製造において(A)成分と(B)成分が混ざり易くなるため、製造装置の汚染が抑制される。
【0036】
(ロジン系樹脂)
上記ロジン系樹脂は、例えば、馬尾松(Pinus massoniana)、スラッシュ松(Pinus elliottii)、メルクシ松(Pinus merkusii)、カリビア松(Pinus caribaea)、思茅松(Pinus kesiya)、テーダ松(Pinus taeda)及び大王松(Pinus palustris)等に由来する天然ロジン(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン)、精製ロジン(以下、天然ロジンと精製ロジンを纏めて、未変性ロジンともいう)、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、α,β―不飽和カルボン酸変性ロジン、これらロジンのエステル化物(以下、ロジンエステル類ともいう)、ロジンフェノール樹脂及びロジンジオール等が挙げられる。
【0037】
(精製ロジン)
上記精製ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、蒸留法、抽出法、再結晶法、吸着法等の各種公知の精製手段を用いて得ることができる。蒸留法は、例えば、上記天然ロジンを通常200~300℃程度の温度、0.01~3kPa程度の減圧下で蒸留する方法等が挙げられる。抽出法は、例えば、上記天然ロジンをアルカリ水溶液とし、不溶性の不ケン化物を各種の有機溶媒により抽出した後に水層を中和する方法等が挙げられる。再結晶法は、例えば、上記天然ロジンを良溶媒としての有機溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液とし、更に貧溶媒としての有機溶媒を添加する方法等が挙げられる。良溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルムなどの塩素化炭化水素溶媒、低級アルコール、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどの酢酸エステル類等が挙げられる。貧溶媒は、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。吸着法は、例えば、溶融状態の上記天然ロジン又は有機溶媒に溶解させた溶液状の上記天然ロジンを、多孔質吸着剤に接触させる方法等が挙げられる。多孔質吸着剤は、例えば、活性炭、金属酸化物、たとえばアルミナ、ジルコニア、シリカ、モレキュラーシーブス、ゼオライト、微細孔の多孔質クレー等が挙げられる。
【0038】
また、上記精製ロジンとしては、得られた精製ロジンに、更に後述の不均化、後述の水素化の各操作を単独で、又は2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0039】
(不均化ロジン)
上記不均化ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、上記未変性ロジンを不均化触媒の存在下に加熱する方法(不均化)により得ることができる。不均化触媒としては、パラジウム-カーボン、ロジウム-カーボン、白金-カーボン等の担持触媒;ニッケル、白金等の金属粉末;ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物の各種公知のものを使用できる。該触媒の使用量は、未変性ロジン100質量部に対して通常0.01~5質量部程度であり、好ましくは0.01~1質量部程度である。反応温度は100~300℃程度であり、好ましくは150~290℃程度である。
【0040】
また、上記不均化ロジンとしては、得られた不均化ロジンに、更に上記精製、不均化、後述の水素化の各操作を単独で、又は2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0041】
(水素化ロジン)
上記水素化ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、公知の水素化条件を用いて上記未変性ロジンを水素化することにより得ることができる。水素化条件は、例えば、水素化触媒の存在下、水素圧2~20MPa程度で、100~300℃程度に上記未変性ロジンを加熱する方法等が挙げられる。また、水素圧は5~20MPa程度、反応温度は150~300℃程度とすることが好ましい。水素化触媒としては、担持触媒、金属粉末等、各種公知のものを使用することができる。担持触媒としては、パラジウム-カーボン、ロジウム-カーボン、ルテニウム-カーボン、白金-カーボン等が挙げられる。金属粉末としては、ニッケル、白金等が挙げられる。これらの中でもパラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び白金系触媒が、上記未変性ロジンの水素化率が高くなり、水素化時間が短くなるため好ましい。なお、水素化触媒の使用量は、上記未変性ロジン100質量部に対して、通常0.01~5質量部程度であり、好ましくは0.01~2質量部程度である。
【0042】
上記水素化は、必要に応じて、上記未変性ロジンを溶剤に溶解した状態で行ってもよい。使用する溶剤は特に限定されないが、反応に不活性で原料や生成物が溶解しやすい溶剤であればよい。具体的には、例えば、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、デカリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に制限されないが、通常、上記未変性ロジンに対して固形分が10質量%以上、好ましくは10~70質量%程度の範囲となるように用いればよい。
【0043】
また、上記水素化ロジンとしては、得られた水素化ロジンに、更に上記精製、水素化、不均化の各操作を単独で、又は2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0044】
また、色調を向上させることを目的に、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンに対して、さらに脱水素化処理を行ってもよい。脱水素化処理は、特に限定されず、通常の条件を採用できる。脱水素化処理は、例えば、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンを脱水素化触媒の存在下、密閉容器中で水素初圧10kg/cm2未満、好ましくは5kg/cm2未満、反応温度100~300℃程度、好ましくは下限200℃、上限280℃の範囲で行う。脱水素化触媒としては特に制限なく各種公知のものを使用できるが、好ましくはパラジウム系、ロジウム系、白金系の触媒を例示でき、通常シリカ、カーボンなどの担体に担持して使用される。また、該触媒の使用量は、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンに対して通常0.01~5重量%程度、好ましくは下限0.05重量%、上限3重量%とされる。
【0045】
(重合ロジン)
上記重合ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、原料として、上記未変性ロジンを硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム、四塩化チタン等の触媒を含むトルエン、キシレン等の溶媒中、反応温度40~160℃程度で、1~5時間程度反応させる方法等が挙げられる。
【0046】
重合ロジンの具体例としては、原料としてガムロジンを使用したガム系重合ロジン(例えば、商品名「重合ロジンB-140」、新洲(武平)林化有限公司製)、トール油ロジンを使用したトール油系重合ロジン(例えば、商品名「シルバタック140」、アリゾナケミカル社製)、ウッドロジンを使用したウッド系重合ロジン(例えば、商品名「ダイマレックス」、イーストマンケミカル社製)等が挙げられる。
【0047】
また、上記重合ロジンとしては、重合ロジンに、上記精製、水素化、不均化、並びに、後述するアクリル化、マレイン化及びフマル化等のα,β―不飽和カルボン酸変性等の各種処理を施したものを使用しても良い。また、各種処理は、単独であっても2種以上を組み合わせても良い。
【0048】
(α,β―不飽和カルボン酸変性ロジン)
上記α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンは、上記未変性ロジンに、α,β-不飽和カルボン酸を付加反応させたものである。
【0049】
上記α,β-不飽和カルボン酸としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ムコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ムコン酸、マレイン酸ハーフエステル、フマル酸ハーフエステル、イタコン酸ハーフエステル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が好ましい。α,β-不飽和カルボン酸の使用量は、溶融時の流動性に優れ、成形加工性に優れる点から、通常は、上記未変性ロジン100質量部に対して1~20質量部程度、好ましくは1~3質量部程度である。
【0050】
上記α,β-不飽和カルボン酸変性ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、加熱下で溶融させた上記未変性ロジンに、上記α,β-不飽和カルボン酸を加えて、温度180~240℃程度で、1~9時間程度で反応させることが挙げられる。また、上記反応は、密閉した反応系内に窒素等の不活性ガスを吹き込みながら行っても良い。さらに反応では、例えば、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化スズ等のルイス酸や、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のブレンステッド酸等の公知の触媒を使用してもよい。これら触媒の使用量は、上記未変性ロジンに対して通常0.01~10質量%程度である。
【0051】
得られたα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンには、上記未変性ロジン由来の樹脂酸が含まれてもよく、その含有量は、10質量%未満である。
【0052】
また、上記α,β-不飽和カルボン酸変性ロジンとしては、得られたα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンに、更に上記水素化を施したものを使用しても良い。
【0053】
(ロジンエステル類)
上記ロジンエステル類は、例えば、上記未変性ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、α,β―不飽和カルボン酸変性ロジン(以下、これらを纏めてロジン類ともいう)とアルコールとの反応物が挙げられる。なお、本明細書において、未変性ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンのエステル化物を、それぞれ、未変性ロジンエステル、精製ロジンエステル、水素化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、α,β―不飽和カルボン酸変性ロジンエステルと称する。
【0054】
上記アルコールは、特に限定されず、各種公知のものを利用できる。上記アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ボルネオール等の1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジ(トリメチロールプロパン)等の4価アルコール;トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール等の6価アルコールなどが挙げられる。なお、該アルコールは、カルボン酸と反応してエステルとなる、グリシジルエーテル類や、グリシドールなどを用いてもよい。上記アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記アルコールは、樹脂組成物の溶融時における流動性に優れ、成形加工性に優れる点から、3~6価アルコールが好ましく、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールがより好ましい。
【0056】
上記ロジンエステル類は、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、上記ロジン類と上記アルコールとを、温度150~300℃程度で、1~24時間程度で反応させることが挙げられる。上記ロジン類及びアルコールの各仕込み量については、特に限定されないが、通常は、アルコールのOH基/ロジン類のCOOH基(当量比)が0.8~8程度、好ましくは1.1~1.3程度の範囲となるよう決定される。
【0057】
上記ロジンエステル類の製造方法において、反応時間を短縮する目的で、触媒の存在下でエステル化反応を進行させることができる。触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸、酢酸、メタンスルホン酸、次亜リン酸、硫酸などの酸触媒;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;塩化鉄、ギ酸カルシウム等の金属塩などが挙げられる。触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、エステル化反応の結果、水が生成するので、該反応は生成した水を系外に除きながら進行させることができる。得られるロジンエステルの色調を考慮すれば、不活性ガス気流下で反応を行うことが望ましい。また、該反応は、必要があれば加圧下で行うことができる。
【0058】
上記ロジンエステル類の製造方法において、上記ロジン類及びアルコールに対して非反応性の有機溶媒中で反応させても良い。該有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。なお、有機溶媒を使用した場合には、必要に応じて、有機溶媒又は未反応の原料を減圧留去することができる。
【0059】
上記ロジンエステル類の製造方法において、得られたロジンエステル類に、更に上記精製、水素化、不均化、及びα,β―不飽和カルボン酸変性等の各種処理を施してもよい。また、各種処理は、単独であっても2種以上を組み合わせてもよい。
【0060】
なお、水素化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル及びα,β―不飽和カルボン酸変性ロジンエステルの製造方法は、上記未変性ロジンと上記アルコールとの反応物に、それぞれ水素化、不均化、重合反応及びα,β―不飽和カルボン酸による変性反応を行う方法であっても良い。
【0061】
(ロジンフェノール樹脂)
上記ロジンフェノール樹脂は、上記未変性ロジンにフェノール類を反応させて得られる。
【0062】
上記フェノール類としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。具体的には、クレゾール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール類、フェノール、ビスフェノール類、ナフトール類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。フェノール類の使用量は、乳化性の点から、通常、上記原料ロジン1モルに対して0.8~1.5モル程度反応させればよい。
【0063】
上記ロジンフェノール樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記未変性ロジン及びフェノール類を必要に応じて酸触媒の存在下、加熱して反応させる方法が挙げられる。反応温度としては、通常、180~350℃で6~18時間程度反応させればよい。なお、当該反応に用いることができる酸触媒としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、塩化水素、三フッ化ホウ素等の無機酸触媒やパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸触媒を挙げることができる。酸触媒を使用する場合には、上記未変性ロジン100質量部に対し、0.01~1.0質量部程度用いればよい。また、ロジンフェノール樹脂は、上記反応で得られた樹脂に、更にアルコールを反応させてエステル化したものであっても良い。その際に用いるアルコールは上記同様である。
【0064】
(ロジンジオール)
ロジンジオールは、分子内に少なくとも2個のロジン骨格を有し、且つ分子内に少なくとも2個の水酸基を有する化合物である。
【0065】
上記ロジンジオールは、例えば、上記未変性ロジン、水素化ロジン、又は不均化ロジンと、エポキシ樹脂との反応物が挙げられる(特開平5-155972号参照)。
【0066】
上記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、脂肪族ポリエポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、モノエポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、スチルベン型エポキシ化合物、トリアジン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アリールアルキレン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0067】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0068】
上記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0069】
上記脂肪族ポリエポキシ化合物は、例えば、1,4-ブタンジオールジクリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0070】
上記脂環式エポキシ化合物は、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6‘-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4‘-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0071】
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物は、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0072】
上記グリシジルエステル型エポキシ化合物は、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0073】
上記ロジンジオールの製造方法は、特に限定されないが、例えば、触媒存在下、上記未変性ロジン、水素化ロジン又は不均化ロジンとエポキシ樹脂とを120~200℃で開環付加反応させる方法が挙げられる。
【0074】
該触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、2-メチルイミダゾール等のアミン系触媒、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4アンモニウム塩、ルイス酸、ホウ酸エステル、有機金属化合物、有機金属塩等を使用できる。
【0075】
(石油樹脂)
上記石油樹脂としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。上記石油樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水酸基含有石油樹脂、又はこれらの水素化物(以下、これらの水素化物を水添石油樹脂とする)等が挙げられる。上記石油樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0076】
(脂肪族系石油樹脂)
上記脂肪族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのC5石油留分から得られるC5系石油樹脂等が挙げられる。
【0077】
C5石油留分は、例えば、イソプレン、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4~6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4~6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素;これらの混合物等が挙げられる。
【0078】
(脂環族系石油樹脂)
上記脂環族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのシクロペンタジエン系石油留分から得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。シクロペンタジエン系石油留分は、例えば、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、及びこれらの2量体、3量体、共2量体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。該2量体は、例えば、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0079】
(芳香族系石油樹脂)
上記芳香族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのC9石油留分から得られるC9系石油樹脂、該C9系石油樹脂を単独又は複数重合させた共重合体等が挙げられる。C9石油留分は、例えば、スチレン等の炭素数8の芳香族化合物;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン等の炭素数9の芳香族化合物;1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン等の炭素数10の芳香族化合物;2,3-ジメチルインデン、2,5-ジメチルインデン等の炭素数11の芳香族化合物;これらの混合物等が挙げられる。
【0080】
(脂肪族・芳香族系石油樹脂)
上記脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、例えば、上記C5石油留分とC9石油留分から得られるC5/C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。
【0081】
(水酸基含有石油樹脂)
上記水酸基含有石油樹脂は、分子内に少なくとも2個の水酸基を有する石油樹脂であれば、特に限定されず各種公知のものを使用できる。上記水酸基含有石油樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記水酸基含有石油樹脂は、例えば、水酸基含有C5系石油樹脂、水酸基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水酸基含有C9系石油樹脂、水酸基含有C5・C9系石油樹脂、水酸基含有ジシクロペンタジエン・C9系石油樹脂等が挙げられる。
【0083】
上記水酸基含有C5系石油樹脂は、例えば、上記C5石油留分と水酸基含有化合物との反応物が挙げられる。
【0084】
上記水酸基含有化合物は、例えば、フェノール系化合物、水酸基含有オレフィン化合物等が挙げられる。フェノール系化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、アミルフェノール、ビスフェノールA、ビニルフェノール、及びブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のアルキルフェノール等が挙げられる。水酸基含有オレフィン化合物は、例えば、アリルアルコール系化合物、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0085】
上記アリルアルコール系化合物は、例えば、アリルアルコール、2-メチル-2-プロペン-1-オール、3-メチル-2-プロペン-1-オール、2-ブテン-1-オール、2-ペンテン-1-オール、2-ヘキセン-1-オール、5-メチル-2-ヘキセン-1-オール、4-シクロヘキシル-2-ブテン-1-オール、2,5-ヘキサジエン-1-オール、2,5-ヘプタジエン-1-オール、2,6-ヘプタジエン-1-オール、2,5-オクタジエン-1-オール、2,6-オクタジエン-1-オール、2,7-オクタジエン-1-オール、4-(1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-1-オール、4-フェニル-2-ブテン-1-オール、4-ナフチル-2-ブテン-1-オール、3,7-ジメチル-2,7-オクタジエン-1-オール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール、1-ペンテン-3-オール、1-ヘキセン-3-オール、5-メチル-1-ヘキセン-3-オール、4-シクロヘキシル-1-ブテン-3-オール、1,5-ヘキサジエン-3-オール、1,5-ヘプタジエン-3-オール、1,6-ヘプタジエン-3-オール、1,5-オクタジエン-3-オール、1,6-オクタジエン-3-オール、1,7-オクタジエン-3-オール、4-(1-シクロヘキセニル)-1-ブテン-3-オール、シンナミルアルコール、4-フェニル-1-ブテン-3-オール、4-ナフチル-1-ブテン-3-オール、3,7-ジメチル-2,7-オクタジエン-1-オール、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール等が挙げられる。
【0086】
上記水酸基含有モノ(メタ)アクリレートは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル等が挙げられる。
【0087】
上記水酸基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂は、例えば、上記シクロペンタジエン系石油留分と上記水酸基含有化合物との反応物が挙げられる。
【0088】
上記水酸基含有C9系石油樹脂は、例えば、上記C9石油留分と上記水酸基含有化合物との反応物が挙げられる。
【0089】
上記水酸基含有C5・C9系石油樹脂は、例えば、上記C5石油留分、C9石油留分及び上記水酸基含有化合物の反応物等が挙げられる。
【0090】
上記水酸基含有ジシクロペンタジエン・C9系石油樹脂は、例えば、上記シクロペンタジン系石油留分、上記C9石油留分及び上記水酸基含有化合物の反応物等が挙げられる。
【0091】
上記水酸基含有石油樹脂の製造方法は、特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、各種石油留分と上記水酸基含有化合物の共存下に、塩化アルミニウムや三フッ化ホウ素等のフリーデルクラフト触媒を用いてカチオン重合させる方法;各種石油留分と上記水酸基含有化合物の共存下に、オートクレーブ中で熱重合させる方法等が挙げられる。
【0092】
(水添石油樹脂)
上記水添石油樹脂は、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、公知の水素化条件を用いて、上記の各種石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水酸基含有石油樹脂)を水素化することにより得ることができる。
【0093】
水素化条件は、例えば、水素化触媒の存在下、水素分圧が0.2~30MPa程度で、200~350℃程度に該石油樹脂を加熱する方法等が挙げられる。水素化触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、コバルト、ルテニウム、白金及びロジウム等の金属や、該金属の酸化物が挙げられる。また、水素化触媒の使用量は、原料樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部程度とするのが好ましい。
【0094】
上記水素化は、上記の各種石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水酸基含有石油樹脂)を溶融して、又は溶剤に溶解した状態で行う。該石油樹脂を溶解する溶剤は特に限定されないが、反応に不活性で原料や生成物が溶解し易い溶剤であればよい。例えば、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、デカリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に制限されないが、通常、該石油樹脂に対して固形分が10質量%以上であり、好ましくは10~70質量%の範囲である。なお、上記水素化条件は反応形式として回分式を採用した場合について説明しているが、反応形式としては流通式(固定床式、流動床式等)を採用することもできる。
【0095】
なお、上記水素化条件は反応形式として回分式を採用した場合について説明しているが、反応形式としては流通式(固定床式、流動床式等)を採用することもできる。
【0096】
(テルペン系樹脂)
上記テルペン系樹脂としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。上記テルペン系樹脂は、例えば、公知のテルペン類とフェノール類とを共重合させた樹脂等が挙げられる。なお、テルペン系樹脂は水素化されたものであってもよい。上記テルペン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0097】
(C)成分は、製造装置の汚染が抑制され、樹脂組成物の成形加工性に優れる点から、ロジン系樹脂が好ましく、同様の点から、天然ロジン、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン、ロジンエステル類及びロジンフェノールからなる群より選択される少なくとも1種であるのがより好ましく、樹脂組成物の成形加工性が特に優れる点から、天然ロジン、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンからなる群より選択される少なくとも1種であるのが特に好ましい。
【0098】
(樹脂(C)の物性)
(C)成分の物性は、特に限定されない。(C)成分の酸価は、樹脂組成物の成形加工性がより優れる点から、130~350mgKOH/g程度が好ましく、同様の点から、140~330mgKOH/g程度がより好ましい。なお、本明細書において、酸価は、JIS K0070により測定した値である。
【0099】
(C)成分の軟化点は、樹脂組成物の成形加工性がより優れる点から、80~180℃程度が好ましく、同様の点から、100℃~160℃程度がより好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902の環球法により測定した値である。
【0100】
(C)成分の色調は、樹脂組成物における着色が抑制される点から、8ガードナー以下が好ましく、10~400ハーゼン程度がより好ましく、10~200ハーゼン程度が特に好ましい。なお、本明細書において、色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定されたものである。
【0101】
(C)成分は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種公知の添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、脱水剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いる事が出来る。
【0102】
(添加剤)
上記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、難燃剤(例えば、リン含有エポキシ樹脂や赤燐、ホスファゼン化合物、リン酸塩類、リン酸エステル類等)、シリコーンオイル、湿潤分散剤、消泡剤、脱泡剤、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、無機顔料、有機顔料、脱水剤、結晶核剤、可塑剤、(B)成分以外の流動性改良剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。
【0103】
上記無機顏料は、カドミウムレッド、カドミウムレモンイエロー、カドミウムイエローオレンジ、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黒色錯体無機顏料等が例示される。
【0104】
上記有機顏料は、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、 ベンジジン系黄色顏料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が例示される。
【0105】
(各成分の含有量)
上記樹脂組成物における(A)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、60~90質量部であるのが好ましい。
【0106】
上記樹脂組成物における(B)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、10~40質量部であるのが好ましい。
【0107】
上記樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の含有比率((A)/(B))は、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、60/40~90/10であるのが好ましい。
【0108】
上記樹脂組成物における(C)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~5質量部であるのが好ましい。
【0109】
(C)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1質量部以上である場合は、樹脂組成物の成形加工性により優れる。(C)成分の含有量が(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して5質量部以下である場合は、樹脂組成物の成形加工性により優れる。
【0110】
上記樹脂組成物における(C)成分の含有量は、製造装置の汚染が抑制され、樹脂組成物の成形加工性に優れる点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.5~2質量部であるのがより好ましい。
【0111】
上記樹脂組成物における上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂組成物100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0112】
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。上記樹脂組成物の製造方法は、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて上記添加剤を、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。当該溶融混練の温度は、特に制限されないが、通常170~230℃の範囲である。
【0113】
[成形体]
本発明の成形体は、各種公知の成形法により、上記樹脂組成物を成形して得られる。成形体の形状としては、特に制限はなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0114】
上記成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用できる。具体的には、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、延伸フィルム成形、インフレーション成形、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、プレス成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。中でも、成形は射出成形法により行われることが好ましい。射出成形機としては、超高速射出成形機、射出圧縮成形機等の公知の射出成形機等が挙げられる。
【0115】
上記成形体は、家庭用品から工業用品に亘る広い用途、例えば、自動車内装材、外板及びバンパー等の自動車材料、電気電子機器、家電部品、OA機器、情報端末機器、機械部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、各種容器、照明機器、フィルム、シート、繊維、その他工業用資材等に好適に用いられる。
【0116】
上記電気電子機器は、例えば、カーナビ、パソコン、ゲーム機、テレビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、DVD等のディスプレイ機器、携帯電話、タブレット型携帯機器、タッチパネル式携帯機器等が挙げられる。
【0117】
[改質剤]
本発明の改質剤は、上述の(C)成分を含むものである。本発明の改質剤は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物に用いることにより、該複合組成物の溶融時における流動性を向上させ、その成形加工性を向上させる。また、上記改質剤は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の製造において、ポリオレフィン樹脂とデンプン系材料を混ざり易くさせるため、製造装置の汚染を抑制し得る。なお、本発明の改質剤は、上記樹脂組成物とは異なるものである。
【0118】
上記改質剤は、各種公知のポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物に対して用いることができる。上記ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及びデンプン系材料を含む組成物が挙げられる。当該ポリオレフィン樹脂は、例えば、上述の(A)成分が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。また、当該デンプン系材料としては、例えば、上述の(B)成分が挙げられる。デンプン系材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0119】
上記改質剤が用いられるポリオレフィン樹脂としては、成形加工性に優れる点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;前記α-オレフィンの二元又は三元の(共)重合体;前記α-オレフィンと、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数9~18程度のα-オレフィンとの二元又は三元の(共)重合体が好ましく、同様の点から、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0120】
上記改質剤における(C)成分は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物の成形加工性を向上させ、製造装置における汚染を抑制する点から、ロジン系樹脂が好ましく、同様の点から、天然ロジン、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン、ロジンエステル類及びロジンフェノールからなる群より選択される少なくとも1種であるのがより好ましく、同様の点から、天然ロジン、精製ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンからなる群より選択される少なくとも1種であるのが特に好ましい。
【0121】
上記改質剤における(C)成分の酸価は、複合組成物の成形加工性を向上させる点から、130~350mgKOH/g程度が好ましく、同様の点から、140~330mgKOH/g程度がより好ましい。なお、本明細書において、酸価は、JIS K0070により測定した値である。
【0122】
上記改質剤における(C)成分の軟化点は、複合組成物の成形加工性を向上させる点から、80~180℃程度が好ましく、同様の点から、100℃~160℃程度がより好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902の環球法により測定した値である。
【0123】
上記改質剤における(C)成分の色調は、ポリオレフィン樹脂/デンプン複合組成物における着色を抑制させる点から、8ガードナー以下が好ましく、10~400ハーゼン程度がより好ましく、10~200ハーゼン程度が特に好ましい。なお、本明細書において、色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定されたものである。
【0124】
上記改質剤の使用量は、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂及びデンプン系材料の合計100質量部に対して、0.1~5質量部であるのが好ましい。
【0125】
上記改質剤の使用量が、ポリオレフィン樹脂及びデンプン系材料の合計100質量部に対して0.1質量部以上である場合は、複合組成物の成形加工性をより向上させる。上記改質剤の使用量が、ポリオレフィン樹脂及びデンプン系材料の合計100質量部に対して5質量部以下である場合は、複合組成物の成形加工性をより向上させる。
【0126】
上記改質剤の使用量は、複合組成物の成形加工性を向上させ、製造装置における汚染を抑制する点から、ポリオレフィン樹脂及びデンプン系材料の合計100質量部に対して、0.5~2質量部であるのがより好ましい。
【0127】
本発明の改質剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種公知の添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、脱水剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いる事が出来る。上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、改質剤100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0128】
本発明の改質剤の使用方法は、特に限定されない。上記改質剤の使用方法は、例えば、混合機に、ポリオレフィン樹脂とデンプン系材料と共に改質剤を添加し、当該混合機で溶融混練する方法等が挙げられる。上記混合機は、例えば、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等が挙げられる。
【実施例0129】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」とあるのは、それぞれ
「質量部」および「質量%」を表す。
【0130】
(樹脂(C)の製造
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、中国産ガムロジン(酸価170.0mgKOH/g、軟化点78℃、色調6ガードナー)700部、キシレン700部、および触媒として塩化亜鉛17.5部を仕込み、窒素気流下140℃で7時間、重合反応を行なった。反応生成物から触媒をろ別した後、液温200℃未満、減圧度1300Paの条件下でキシレンを留去した後、更に液温200~275℃、減圧度400Paの条件下でロジン分解物及び未反応ガムロジンを留去して、酸価145mgKOH/g、軟化点140℃、の重合ロジン(以下、(C1)成分とする)を得た。
【0131】
製造例2
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、中国産ガムロジン(酸価172mgKOH/g、軟化点75℃)1000部に不均化触媒として5%パラジウムカーボン(含水率50%)0.3部を加え、窒素シール下、280℃で4時間攪拌して不均化反応を行ない、酸価160mgKOH/g、軟化点80℃の不均化ロジン(以下、(C2)成分とする)を得た。
【0132】
製造例3
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、中国産ガムロジン1,000部仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、フマル酸267部を添加し、攪拌下に230℃まで昇温、1時間保温した後、酸価300mgKOH/g、軟化点150℃のフマル酸変性ロジン(以下、(C3)成分とする)を得た。
【0133】
製造例4
減圧蒸留容器に、中国産ガムロジン(酸価172mgKOH/g、軟化点75℃、色調6ガードナー)を仕込み、窒素シール下に0.4kPaの減圧下で蒸留し、酸価177mgKOH/g、軟化点80℃、色調3ガードナーの精製ロジンを得た。
【0134】
次に、別の減圧蒸留容器に上記精製ロジン700部と無水マレイン酸さ140部を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら220℃で4時間反応させた後、4kPaの減圧下に未反応物を除去することによって、酸価335mgKOH/g、軟化点121℃、色調8ガードナーの付加反応生成物を得た。
【0135】
さらに、当該付加反応生成物500部と5%パラジウムカーボン(含水率50%)6.0部(触媒量1.2%)を1リットル回転式オートクレーブに仕込み、系内の空気を水素に置換した後、水素にて10MPaに加圧し、220℃まで昇温し、同温度で5時間水素化反応させた。触媒をろ別し、酸価330mgKOH/g、軟化点120℃、色調150ハーゼンの無水マレイン酸変性ロジンの水素化物(以下、(C4)成分とする)を得た。
【0136】
製造例5
中国産ガムロジン(酸価172mgKOH/g、軟化点75℃、色調6ガードナー)1000部とキシレン500部をコルベンに入れ、加熱溶解させた後キシレンを350部程度留去し、次いでシクロヘキサン350部を入れ、室温まで冷却した。冷却により結晶約100部が生じたところで上澄み液を別のコルベンに移し、さらに室温で再結晶させた後、上澄み液は取り除き、シクロヘキサン100部で洗浄後、溶媒を留去し、精製ロジン700部を得た。
【0137】
次に、反応容器に精製ロジン660部とアクリル酸100部を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら220℃で4時間反応を行い、ついで減圧下に未反応物を除去することにより付加反応生成物720部を得た。
【0138】
さらに、上記付加反応生成物500部と5%パラジウムカーボン(含水率50%)5.0部を1リットル回転式オートクレーブに仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて10MPaに加圧し220℃まで昇温し、同温度で3時間水素化反応を行い、酸価240mgKOH/g、軟化点130℃、色調100ハーゼンのアクリル酸変性ロジンの水素化物(以下、(C5)成分とする)を得た。
【0139】
製造例6
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、中国産ガムロジン(酸価172mgKOH/g、軟化点75℃、色調6ガードナー)1000部、触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量5%、含水率50%)0.3部を仕込み、窒素シール下、280℃で4時間撹拌して不均化反応を行ない、酸価157mgKOH/g、軟化点77℃、色調7ガードナーの不均化ロジンを得た。次に、該不均化ロジンを窒素シール下に3mmHgの減圧下で蒸留し、得られた主留を精製不均化ロジンとした。
【0140】
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、上記精製不均化ロジン(酸価178mgKOH/g、軟化点83℃、色調4ガードナー)500部を仕込み、窒素シール下で180℃に昇温し、溶融攪拌下、200℃でグリセリン60部を加えたのち、280℃まで昇温し、同温度で12時間エステル化反応を行い、酸価4mgKOH/g、軟化点90℃、色調5ガードナーの精製不均化ロジンエステル515部を得た。
【0141】
1振とう式オートクレーブに、上記精製不均化ロジンエステル200部とパラジウムカーボン2部を仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて100Kg/cmに加圧し255℃まで昇温し、同温度で3時間水素添加反応を行い、酸価13mgKOH/g、軟化点90℃、色調50ハーゼンの水素化ロジンエステル((以下、(C6)成分とする)を得た。
【0142】
製造例7
攪拌装置、コンデンサー、温度計および窒素導入管・水蒸気導入管を備えた反応容器に、中国産馬尾松に由来するガムロジン100.0部、フェノール150.0部仕込んだ後、100℃まで昇温し、96%硫酸を2.1部仕込み窒素ガス気流下に4時間反応させた。消石灰を3.0部、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)(商品名「Lowinox TBM-6」、Addivant社製)を0.1部加えた後、10kPaに減圧下で280℃まで昇温し、同温度で4時間反応させて、ロジンフェノール樹脂(以下、(C7)成分とする)を得た。
【0143】
(酸価)
(C1)~(C7)成分の酸価はJIS K 0070により測定した。
【0144】
(軟化点)
(C1)~(C7)成分の軟化点はJIS K 5902により測定した。
【0145】
(色調)
(C1)~(C7)成分の色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定した。
【0146】
[樹脂組成物の調製]
実施例1
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ポリエチレン((株)ロンビック製、商品名「LLDPE RLL1BF」)(以下、PEとする)を80部、熱可塑性デンプンのペレット(SMS社製、商品名「TAPIOPLAST TPS」)(以下、TAPIOPLASTとする)20部及び(C1)成分を2部投入し、ローラ回転数40rpm、温度200℃で10分間混練した。その後、得られた樹脂(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、180℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0147】
実施例2
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C2)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0148】
実施例3
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C3)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0149】
実施例4
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C4)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0150】
実施例5
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C5)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0151】
実施例6
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C6)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0152】
実施例7
実施例1において、(C1)成分の代わりに(C7)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0153】
比較例1
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、PEを80部及びTAPIOPLASTを20部投入し、ローラ回転数40rpm、温度200℃で10分間混練した。その後、得られた混練物を当該混練装置から取り出し、180℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0154】
比較例2
実施例1において、(C1)成分の代わりに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、商品名「ユーメックス1010」)(以下、(c1)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0155】
比較例3
実施例1において、(C1)成分の代わりに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、商品名「ユーメックス1001」)(以下、(c2)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0156】
比較例4
実施例1において、(C1)成分の代わりに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、商品名「ユーメックス100TS」)(以下、(c3)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0157】
実施例8
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテックPP MA3」)(以下、PPとする)を80部、TAPIOPLASTを20部及び(C1)成分を2部投入しローラ回転数40rpm、温度180℃で10分間混練した。その後、得られた混練物を当該混練装置から取り出し、200℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0158】
実施例9
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C2)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0159】
実施例10
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C3)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0160】
実施例11
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C4)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0161】
実施例12
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C5)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0162】
実施例13
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C6)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0163】
実施例14
実施例8において、(C1)成分の代わりに(C7)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0164】
比較例5
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、PPを80部及びTAPIOPLASTを20部投入し、ローラ回転数40rpm、温度180℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、180℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0165】
比較例6
実施例8において、(C1)成分の代わりに、(c1)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0166】
比較例7
実施例8において、(C1)成分の代わりに、(c2)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0167】
比較例8
実施例8において、(C1)成分の代わりに、(c3)成分を2部使用した以外は、実施例8と同様に調製を行い、ペレットを得た。
【0168】
(成形加工性の評価)
JIS K 7210に準拠して、実施例1~7及び比較例1~4のペレットは温度190℃、荷重21.2N(2.16kg)の条件下にて、実施例8~14及び比較例5~8のペレットは温度230℃、荷重21.2N(2.16kg)の条件下にて、各ペレットのMFRを測定した。結果を表1及び2に示す。
【0169】
(装置汚染性の評価)
実施例1~14及び比較例1~8のペレットの調製において、混練後の混練装置内における樹脂残りを目視にて評価し、以下の基準にて装置汚染性を評価した。結果を表1及び2に示す。
◎:混練後に混練装置内の樹脂残りがほとんどない。
〇:混練後に混練装置内の樹脂残りがあまりない。
△:混練後に混練装置内の樹脂残りがやや多い。
×:混練後に混練装置内の樹脂残りが極めて多い。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
表1、2の配合量は、質量部の値である。表1、2中の略語は、以下の通りである。
(化合物の略語及び詳細)
PE:ポリエチレン、商品名「LLDPE RLL1BF」、(株)ロンビック製
PP:ポリプロピレン、商品名「ノバテックPP MA3」、日本ポリプロ(株)製
TAPIOPLAST:熱可塑性デンプン、商品名「TAPIOPLAST TPS」、
SMS社製