(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175404
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】配線用遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/36 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
H01H73/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081763
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 昇悟
(72)【発明者】
【氏名】木根 京介
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030FA02
5G030FC05
5G030FC08
5G030YY06
(57)【要約】
【課題】比較的容易にカバーをベースに対して適切な位置に取り付けることができ、カバーをベースに対して適切な位置に取り付けることで、引外し機能を十分に発揮できる位置でヨークを支持できるようにすること。
【解決手段】ベースとカバーを備える筐体と、ヨークを有する瞬時引外し装置と、を備える配線用遮断器であって、ベースが瞬時引外し装置のヨークの下部を前後方向から挟み込むように支持するとともに、カバーが瞬時引外し装置のヨークの上部を前後方向から挟み込むように支持し、カバーの前面側若しくは後面側に、ベースの内側面に対して当接する当接部31を備えた構成とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとカバーを備える筐体と、ヨークを有する瞬時引外し装置と、を備える配線用遮断器であって、
ベースが瞬時引外し装置のヨークの下部を前後方向から挟み込むように支持するとともに、
カバーが瞬時引外し装置のヨークの上部を前後方向から挟み込むように支持し、
カバーの前面側若しくは後面側に、ベースの内側面に対して当接する当接部を備えた配線用遮断器。
【請求項2】
ベースに、底面と、底面の左右端部から垂直方向に延出する側壁と、端子間を区分けする隔壁を備え、
当接部はベースの側壁もしくは隔壁の少なくとも一方に対して前方若しくは後方から当接する請求項1に記載の配線用遮断器。
【請求項3】
当接部がハンドルの軸の一方側に位置し、ヨークがハンドルの軸の他方側に位置する請求項2に記載の配線用遮断器。
【請求項4】
カバーに、端子部と筐体内部を仕切る仕切り部を備え、
仕切り部の端子部側に当接部を備えた請求項3に記載の配線用遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から理解されるように、配線用遮断器の外郭を形成する筐体はベースの上からカバーを被せる上下分割式のものが一般的である。このようなベースやカバーは樹脂製であり、熱で溶かした樹脂を型に流し込むことで成型する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、熱せられた樹脂は冷めると僅かに収縮する。従来の製品においては、収縮によりベースが変形するとヨークが傾いた状態で載置される虞がある。また、従来のカバーでは、傾いてベースに載置されたヨークを適切な位置に修正することができない。一方、ヨークが適切な位置にないと、引外し機能が十分に発揮されない虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、比較的容易にベースに対してカバーを適切な位置に取り付けることができ、カバーをベースに対して適切な位置に取り付けることで、引外し機能を十分に発揮できる位置でヨークを支持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、ベースとカバーを備える筐体と、ヨークを有する瞬時引外し装置と、を備える配線用遮断器であって、ベースが瞬時引外し装置のヨークの下部を前後方向から挟み込むように支持するとともに、カバーが瞬時引外し装置のヨークの上部を前後方向から挟み込むように支持し、カバーの前面側若しくは後面側に、ベースの内側面に対して当接する当接部を備えた配線用遮断器とする。
【0007】
また、ベースに、底面と、底面の左右端部から垂直方向に延出する側壁と、端子間を区分けする隔壁を備え、当接部はベースの側壁もしくは隔壁の少なくとも一方に対して前方若しくは後方から当接する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、当接部がハンドルの軸の一方側に位置し、ヨークがハンドルの軸の他方側に位置する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、カバーに、端子部と筐体内部を仕切る仕切り部を備え、仕切り部の端子部側に当接部を備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、比較的容易にベースに対してカバーを適切な位置に取り付けることができ、カバーをベースに対して適切な位置に取り付けることで、引外し機能を十分に発揮できる位置でヨークを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における配線用遮断器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す配線用遮断器の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す配線用遮断器の一部を切った斜視図である。
【
図4】
図1に示す配線用遮断器の一部を切った側面図である。
【
図5】瞬時引外し装置の斜視図である。ただし、コイルは省略している。
【
図7】
図6のVIIで切った断面図である。ただし、カバーの一部を示している。
【
図8】
図4に示すIX-IX断面で切った配線用遮断器の断面図である。
【
図10】切欠き部の形状が分かるように切った挿通部周りの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図4に示されていることから理解されるように、本実施形態の配線用遮断器1は、ベース20とカバー30を備える筐体10と、ヨーク71を有する瞬時引外し装置70と、を備えている。この配線用遮断器1は、ベース20が瞬時引外し装置70のヨーク71の下部を前後方向から挟み込むように支持するとともに、カバー30が瞬時引外し装置70のヨーク71の上部を前後方向から挟み込むように支持し、カバー30の前面側若しくは後面側に、ベース20の内側面に対して当接する当接部31を備えた構成としている。このため、比較的容易にベース20に対して前後方向における適切な位置にカバー30を取り付けることができる。また、カバー30をベース20に対して適切な位置に取り付けることで、引外し機能を十分に発揮できる位置でヨーク71を支持することが可能となる。
【0013】
実施形態の配線用遮断器1の外郭を形成する筐体10は、設置面に取り付けられることになるベース20と、ベース20の上方に被せるカバー30を備えている。配線用遮断器1は前側と後側に配線を繋ぐことが可能な端子部51を備えており、これらにつなげられた配線間が電気的に接続された状態と接続が解除された状態とを切り替えることができる。この切り替えを手動で行えるようにするため、配線用遮断器1にはハンドル61が備えられており、回動可能なハンドル61を前方側に倒すか後方側に倒すかにより、遮断するか否かを切り替えることができる。
【0014】
配線用遮断器1の筐体10の内部には配線用遮断器1を機能させるために動作させる各種装置が収納されているが、その中の一つに瞬時引外し装置70がある(
図5参照)。この瞬時引外し装置70は、短絡電流等の大電流が生じた際に、遮断するように機能させるものであり、異常事態が生じた場合に、火災などの災害が生じないようにするために機能させるものである。
【0015】
実施形態の瞬時引外し装置70はヨーク71にポールピース73を備えたダッシュポット72やトリガレバー74などを取付け、その外周にコイル75を捲いたものである。この瞬時引外し装置70は、短絡電流等の大電流がコイル75に流れると、ポールピース73を図示しない瞬時バネに抗してダッシュポット72内に引き込み、トリガレバー74を動かして瞬時引外し動作を行う。
【0016】
この瞬時引外し装置70のヨーク71が筐体10に取り付けられるが、実施形態では、ベース20に備えらえたヨーク支持部29によりヨーク71の下部を前後方向から挟み込むように支持するとともに、カバー30に備えられたヨーク支持部39によりヨーク71の上部を前後方向から挟み込むように支持するようにしている。
【0017】
上記した構成であると、ヨーク71をしっかりと支持することができるが、この状態だけでは、樹脂の収縮に起因して、ヨーク71が予定していた状態よりも前後方向に傾いて取り付けられる可能性がある。しかしながら、ベース20とカバー30をねじ固定した後のヨーク71の状態は把握できない。そこで、カバー30とベース20の前後方向の相対的な位置を適切なものとすることを容易にするために、実施形態の配線用遮断器1は、カバー30の前面側に、ベース20の内側面に対して前後方向に当接する当接部31を備えるようにしている(
図6及び
図7参照)。この当接部31をベース20の内側面に対して前後方向に当接させた状態でカバー30をベース20に固定すれば、ヨーク71が予定よりも前後方向に傾いて取りついてしまうことを抑制することができる。
【0018】
もちろん、カバー30の後面側に、ベース20の内側面に対して前後方向に当接する当接部31を備えた構成としても良い。この場合でも、当接部31をベース20の内側面に対して前後方向に当接させた状態でカバー30をベース20に固定すれば、ヨーク71が予定よりも前後方向に傾いて取りついてしまうことを抑制することができる。
【0019】
なお、当接部31がハンドル61の軸62の一方側に位置し、ヨーク71がハンドル61の軸62の他方側に位置するように構成するのが好ましい。そうすれば、瞬時引外し装置70と離れた位置に当接部31を形成することができ、瞬時引外し装置70と干渉することなく当接スペースを確保することができる。
【0020】
ところで、実施形態では、ベース20に、底面21と、底面21の左右端部から垂直方向に延出する側壁22と、端子間を区分けする隔壁23を備えている。ベース20の内側面に対して当接する当接部31はベース20の側壁22もしくは隔壁23の少なくとも一方に対して後方から当接する(
図8及び
図9参照)。これは、当接部31がカバー30の前面側に設けられているからであり、当接部31がカバー30の後面側に設けられている場合には、当接部31はベース20の側壁22もしくは隔壁23の少なくとも一方に対して前方から当接するようにすれば良い。
【0021】
このように、ベース20に、底面21と、底面21の左右端部から垂直方向に延出する側壁22と、端子間を区分けする隔壁23を備え、当接部31はベース20の側壁22もしくは隔壁23の少なくとも一方に対して前方若しくは後方から当接する構成とすれば、ベース20側に当接部31と当接する箇所を容易に確保することができる。
【0022】
図9に示す例では、当接部31と当接する部分は、隔壁23については後ろ方向に向く面であり、側壁22については、端子部51の側方に位置する部分に内側に張り出すように形成した張出部24の後ろ方向に向く面としている。
【0023】
また、実施形態ではカバー30に、端子部51と筐体10の内部を仕切る仕切り部32を備えているが、この仕切り部32の端子部51側に当接部31を備えた構成としている(
図6から
図9参照)。これは、仕切り部32に当接部31を形成すれば、ベース20の側壁22もしくは隔壁23の少なくとも一方に対して容易に当接させることができるからである。また、当接部31を仕切り部32の端子部51側に形成すれば、当接部31が筐体10の内部空間で、機器配置などの障害となることを回避することができる。なお、
図8及び
図9に示す例においては、仕切り部32の電源側の端子部51側に当接部31を形成している。
【0024】
なお、より詳しく言うと、実施形態では突状の当接部31を、仕切り部32の両端から前方向に延びるように形成している。また、この当接部31は上下方向が長手方向となるように構成されている。したがって、当接部31がベース20に対して当接させた際にベース20及び仕切り部32にかかる荷重を分散させることができる。
【0025】
実施形態の仕切り部32には、複数の通気部33を設けるために、切り欠き状の部分を複数備えているが、このようにすることにより、アークが発生した場合などの異常事態に備えることができる。
【0026】
ところで、実施形態のヨーク71には、ダッシュポット72やトリガレバー74等が接続されている。このヨーク71に対してダッシュポット72を固定する際には、ヨーク71に設けたダッシュポット固定片76にダッシュポット72が固定されるが、より詳しくは、ダッシュポット固定片76に設けた挿通孔77にダッシュポット72を挿通した状態で固定をする。挿通孔77にダッシュポット72を挿通した状態でダッシュポット72とダッシュポット固定片76を固定する場合、はんだ付けをすればよいが、このはんだの使用量を抑制しつつ十分な強度を確保できるようにするため、挿通孔77は、貫通方向に向かうにしたがって拡径する部位を備えるように構成するのが好ましい。
【0027】
図10に示す例においては、挿通孔77の途中から下方に向かうにしたがって拡径するようにするために、切欠き部78を備えている。
【0028】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 配線用遮断器
10 筐体
20 ベース
21 底面
22 側壁
23 隔壁
30 カバー
31 当接部
32 仕切り部
61 ハンドル
62 軸
70 瞬時引外し装置
71 ヨーク