(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175410
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】メンテナンス装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20221117BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B41J2/165 305
B41J2/17 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081771
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】合田 光弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB09
2C056JC06
2C056JC10
2C056JC13
2C056JC18
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】ノズル面のブレードのスライド方向下流側の端部領域におけるインクの滞留を抑制することを目的とする。
【解決手段】メンテナンス装置30は、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触しながらスライドするブレード82と、ノズル面12Nのブレード82のスライド方向下流側の端部領域から、又は、端部領域に位置するブレード82から、インクを吸収する吸収体91と、を備える。吸収体91は、端部領域に対向又は接触している。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面に接触しながらスライドするブレードと、
前記ノズル面の前記ブレードのスライド方向下流側の端部領域から、又は、前記端部領域に位置する前記ブレードから、インクを吸収する吸収体と、を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記吸収体は、前記端部領域に対向又は接触していることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記端部領域は、前記スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、
前記ブレードは、少なくとも前記端部領域の前記スライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、
前記吸収体は、前記ブレードのスライド終了位置において前記ブレードに接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記端部領域は、前記スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、
前記ブレードは、少なくとも前記端部領域の前記スライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、
前記吸収体は、前記スライド終了位置よりも前記スライド方向上流側における前記ブレードが通過する領域の外側に設けられ、前記領域を通過する前記ブレードに接触することを特徴とする請求項1又は2に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記吸収体が前記インクで飽和した場合に落下した前記インクを受け止める受け皿を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記吸収体に吸収された前記インクを吸引するポンプを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドと、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置及びメンテナンス装置を備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのノズル面に残留したインクの落下によるシートの汚染を防ぐ技術が検討されている。例えば、特許文献1、2では、ノズル面に接触する可撓性を有するブレードを所定方向にスライドさせることによって、ノズル面に付着したインクを除去するメンテナンス装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-341078号公報
【特許文献2】特開2013-154490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のメンテナンス装置においては、ブレードが撓みながらスライドし、ブレードがノズル面の下流側の端部を通過する瞬間に急激に撓みが解消するため、ブレードに付着したインクが飛散するという問題がある。インクの飛散を防ぐ手段として、ブレードのスライドをノズル面の下流側の端部の手前で停止させることが考えられるが、その場合、ブレードが掻き取ったインクがノズル面の端部に滞留してしまう。インクの飛散を防ぐ別の手段としては、ノズル面の端部領域を下流側ほど高くなるように傾斜させることで、ブレードの撓みが解消する速さを遅くすることが考えられるが、その場合、傾斜部にインクが滞留してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、ノズル面のブレードのスライド方向下流側の端部領域におけるインクの滞留を抑制することのできるメンテナンス装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るメンテナンス装置は、インクジェットヘッドのノズル面に接触しながらスライドするブレードと、前記ノズル面の前記ブレードのスライド方向下流側の端部領域から、又は、前記端部領域に位置する前記ブレードから、インクを吸収する吸収体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記吸収体は、前記端部領域に対向又は接触していてもよい。
【0008】
前記端部領域は、前記スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、前記ブレードは、少なくとも前記端部領域の前記スライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、前記吸収体は、前記ブレードのスライド終了位置において前記ブレードに接触する位置に設けられていてもよい。
【0009】
前記端部領域は、前記スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、前記ブレードは、少なくとも前記端部領域の前記スライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、前記吸収体は、前記スライド終了位置よりも前記スライド方向上流側における前記ブレードが通過する領域の外側に設けられ、前記領域を通過する前記ブレードに接触してもよい。
【0010】
前記メンテナンス装置は、前記吸収体が前記インクで飽和した場合に落下した前記インクを受け止める受け皿を備えていてもよい。
【0011】
前記メンテナンス装置は、前記吸収体に吸収された前記インクを吸引するポンプを備えていてもよい。
【0012】
また、本発明に係るインクジェット記録装置は、前記インクジェットヘッドと、前記のいずれかのメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノズル面のブレードのスライド方向下流側の端部領域におけるインクの滞留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る作像ユニットのインクジェットヘッドの配置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るインク供給部を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るキャップユニットの斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るワイプユニットの斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係るワイプユニットの斜視図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係るメンテナンス装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ本発明の第1実施形態に係るプリンター1(インクジェット記録装置の一例)及びメンテナンス装置30について説明する。
【0016】
最初に、画像形成システム100の全体の構成について説明する。
図1は、プリンター1の内部の構成を模式的に示す正面図である。
図2は、作像ユニット6のインクジェットヘッド12の配置を示す斜視図である。
図3は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図4は、インク供給部60を模式的に示す図である。以下、
図1における紙面手前側を画像形成システム100の正面側(前側)とし、左右の向きは画像形成システム100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0017】
プリンター1は、直方体状のハウジング3を備える。ハウジング3内の下部には、普通紙、コート紙等の枚葉のシートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを右方に送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、シートSを吸着してY方向に搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクを吐出して画像を形成する作像ユニット6が設けられている。ハウジング3の右上部には、画像が形成されたシートSを排出する排紙ローラー8と、排出されたシートSが積載される排紙トレイ9が設けられている。
【0018】
ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から搬送ユニット7と作像ユニット6との間隙を経て排紙ローラー8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10は、シートSを通過させる間隙を空けて互いに対向する板状部材を主体として形成されており、シートSを挟持して搬送する搬送ローラー17が搬送方向Yの複数箇所に設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向Y上流側には、レジストローラー18が設けられている。
【0019】
搬送ユニット7は、無端の搬送ベルト21と、支持板23と、吸引部24と、を備える。搬送ベルト21は、多数の通気孔(図示省略)を有し、駆動ローラー22と従動ローラー25に巻き掛けられている。支持板23は、多数の通気孔を有し、上面が搬送ベルト21の内面に接触している。吸引部24は、支持板23の通気孔と搬送ベルト21の通気孔を介して空気を吸引することでシートSを搬送ベルト21に吸着させる。モーター等の駆動部(図示省略)により駆動ローラー22が反時計回り方向に駆動されることで搬送ベルト21が反時計回り方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSがY方向に搬送される。
【0020】
作像ユニット6は、ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11M(ヘッドユニット11と総称する)を備え、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する(
図1、2参照)。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mには、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ20Y、20Bk、20C、20M(インクコンテナ20と総称する)が接続されている(
図1参照)。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mは、ハウジング3に固定されたフレーム6Fに支持されている。
【0021】
ヘッドユニット11は、1つ以上のインクジェットヘッド12、例えば、千鳥に配置された複数のインクジェットヘッド12を備える(
図2乃至4参照)。インクジェットヘッド12は、前後方向を長手方向とする直方体状の筐体12Hと、筐体12Hの底部に設けられたノズルプレート12Pと、を備える。ノズルプレート12Pは、前後方向に並ぶ多数のノズルを備え(図示省略)、各ノズルの吐出口がノズルプレート12Pの下面であるノズル面12Nに設けられている。各ノズルには圧電素子(図示省略)が設けられ、筐体12Hの内部には圧電素子を駆動する駆動回路(図示省略)が設けられている。
【0022】
プリンター1は、インク供給部60を備える(
図4参照)。同図では、1色のインクに対応するインク供給部60が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、4系統の同様のインク供給部60が設けられている。プリンター1は、インクコンテナ20が装着されるコンテナ装着部61と、インクを濾過するフィルター62と、インクコンテナ20からフィルター62を介してインクを吸引するポンプ63と、ポンプ63から送り出されたインクを貯留するサブタンク64と、サブタンク64に貯留されたインクをインクジェットヘッド12に供給するポンプ65と、を備える。
【0023】
制御部2は、演算部と記憶部とを備える。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0024】
プリンター1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。外部のコンピューター等からプリンター1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY方向に搬送する。制御部2がシートSの搬送と同期させてインクジェットヘッド12の各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。排紙ローラー8は、画像が形成されたシートSを排紙トレイ9に排出する。
【0025】
次に、メンテナンス装置30の構成について説明する。
図5は、キャップユニット70の斜視図である。
図6は、ワイプユニット80の斜視図である。
図7乃至12は、メンテナンス装置30の斜視図である。なお、
図7乃至12では、キャップユニット70とワイプユニット80の細部は省略されている。
【0026】
[ワイプユニット]
ワイプユニット80(
図6参照)は、支持板81と、支持板81に対してスライドするブレードユニット83と、を備える。ブレードユニット83は、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触するブレード82を備える。
【0027】
支持板81は、板状の部材であり、その上面は、前後両端部から中央に向かって低くなるように傾斜している。支持板81の上面の最も低い箇所には、インクを排出する排出口が設けられている(図示省略)。排出口には、吸引ポンプ68と廃インクタンク69が接続されている(
図4参照)。支持板81の左右両端部には、前後方向を長手方向とするレール81Rが設けられている。支持板81の上面の前後両端部には、上方に突出した接続部81Cが設けられている。
【0028】
ブレードユニット83は、ブレード82と、ブレード82を支持する板状の底部83Bと、底部83Bの左右両端部の上方に設けられた側壁部83Sと、を備える。ブレード82は、ゴム等で形成された可撓性を有する板状の部材である。インクジェットヘッド12の各々に対応するブレード82が底部83Bの上面に千鳥に配置されている。左右の側壁部83Sの前後両端部付近には、左右方向を軸方向とする軸に支持された車輪83Wが
設けられている。ブレードユニット83には、駆動部(図示省略)が設けられている。駆動部は、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、車輪83Wに駆動力を伝達する。レール81Rは、前後方向に車輪83Wの転動を案内する。
【0029】
[キャップユニット]
キャップユニット70(
図5参照)は、キャップ72と、キャップ72を支持する支持板71と、を備える。インクジェットヘッド12の各々に対応するキャップ72が支持板71の上面に千鳥に配置されている。キャップ72は、ゴム等の樹脂で形成され、上方が開口した凹形をなしている。キャップ72は、圧縮ばね(図示省略)を介して支持板71に取り付けられている。キャップ72がノズル面12Nに押圧されると、圧縮ばねとキャップ72自体の弾性変形により、キャップ72とノズル面12Nとが密着する。
【0030】
キャップユニット70の支持板71の下面には、ワイプユニット80の接続部81Cに対応する箇所に、下方に突出した接続部71Cが設けられている。接続部71Cの先端は、上方に凹んでおり、ワイプユニット80の接続部81Cが嵌合する。キャップユニット70の支持板71の上面の接続部71Cに対応する箇所には、位置決めピン71Pが設けられている。位置決めピン71Pは、キャップユニット70がノズル面12Nに押圧される場合に作像ユニット6に接触することで、キャップユニット70の高さ方向の位置決めを行う。
【0031】
[フレーム、キャリッジ]
フレーム31(
図7参照)は、ハウジング3に固定され、上方と下方と左方が開口しており、キャリッジ32と搬送ユニット7を支持する。キャリッジ32は、上方と下方と左方が開口しており、ワイプユニット80とキャップユニット70を支持する。キャップユニット70は、ワイプユニット80の上方に配置されている。
【0032】
[昇降機構]
フレーム31には、昇降機構が設けられている(図示省略)。昇降機構は、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、フレーム31に対して搬送ユニット7を昇降させる。昇降機構は、搬送ユニット7を、画像形成を行う場合の画像形成位置(
図7参照)と、画像形成位置よりも下方の下方退避位置(
図8参照)と、の間で昇降させる。画像形成位置においては、搬送ベルト21とノズル面12Nとの間隔が1mm程度となるように搬送ユニット7が位置決めされる。下方退避位置においては、搬送ベルト21の上面とノズル面12Nとの間にキャップユニット70及びワイプユニット80を移動させることが可能な空間が形成される。
【0033】
[スライド機構]
フレーム31には、スライド機構が設けられている(図示省略)。スライド機構は、左右方向を長手方向とするレールと、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、レールに沿ってキャリッジ32を左右方向にスライドさせる。
【0034】
ワイプユニット80は、キャリッジ32に支持されており、スライド機構によりキャリッジ32とともに左右方向にスライド可能である。キャップユニット70もキャリッジ32に支持されているが、キャリッジ32はキャップユニット70に対して左右方向にスライド可能である。この構成により、キャップユニット70とワイプユニット80とをキャリッジ32により対向位置(作像ユニット6に対向する位置)に移動させる移動形態(
図9参照)と、キャップユニット70を側方退避位置(作像ユニット6に対向しない位置)に残してワイプユニット80のみをキャリッジ32により対向位置に移動させる移動形態(
図11参照)と、が可能である。
【0035】
対向位置において、キャップユニット70とワイプユニット80は、搬送ユニット7を用いて昇降可能である。具体的には、搬送ユニット7は、キャップユニット70のみ又はキャップユニット70とワイプユニット80の両方を搬送ユニット7の上部に載せた状態でキャリッジ32の内部を昇降可能である。昇降機構は、対向位置(
図9参照)とキャップ位置(
図10参照)との間でキャップユニット70を昇降させる。キャップ位置とは、キャップ72がノズル面12Nに押圧される位置である。また、昇降機構は、対向位置(
図11参照)とワイプ位置(
図12参照)との間でワイプユニット80を昇降させる。ワイプ位置とは、ブレード82の上端がノズル面12Nに接触する位置である。
【0036】
[洗浄液タンク]
インクジェットヘッド12には、洗浄液を供給する洗浄液供給部13が設けられている(
図4参照)。洗浄液供給部13は、洗浄液を収容する洗浄液タンク13Tと、ノズルプレート12Pの後側に設けられた接続部材13Cと、洗浄液タンク13Tと接続部材13Cとをつなぐパイプ13Pと、を備える。接続部材13Cには、上下方向に貫通した供給口13Aが設けられている。洗浄液タンク13Tの高さ調整、洗浄液タンク13T内の圧力調整等によって、供給口13Aの下端部に凸形のメニスカスが形成され、供給口13Aから膨出した洗浄液をブレード82が掻き取ることで、ノズル面12Nに洗浄液が供給される。ノズル面12Nの前側の端部領域には、前方に向かって底面が高くなるように(換言すれば、底面の前側が後側よりも上方に位置するように)傾斜した傾斜部12Sが設けられている。傾斜部12Sの左右方向の幅は、ブレード82よりも広い。
【0037】
次に、メンテナンス装置30の基本的な動作について説明する。以下の動作は、制御部2がメンテナンス装置30の各部を制御することで実行される。
【0038】
画像形成を行う場合(
図7参照)、キャップユニット70とワイプユニット80がキャリッジ32とともに側方退避位置に配置され、搬送ユニット7が画像形成位置に配置される。
【0039】
パージ処理とワイプ処理を行う場合、制御部2は、搬送ユニット7を下方退避位置に移動させ(
図8参照)、キャップユニット70を側方退避位置に残したまま、キャリッジ32によりワイプユニット80を対向位置に移動させる(
図11参照)。このとき、ブレードユニット83は、キャップユニット70の前後方向の中央の初期位置に配置されているため、制御部2は、ブレードユニット83をスライド可能範囲の後端のスライド開始位置に移動させ、搬送ユニット7を上昇させることでワイプユニット80をワイプ位置に移動させる(
図12参照)。続いて、制御部2は、インクジェットヘッド12のノズル内の圧力を上昇させてインクを吐出させ、洗浄液供給部13により供給口13Aから洗浄液を膨出させ、ブレードユニット83を前方にスライドさせる。すると、ブレード82の先端部が洗浄液を掻き取り、ノズル面12Nに接触して撓みながら、ノズル面12Nに付着したインクを除去する。インクは洗浄液で希釈される。
【0040】
次に、作像ユニット6にキャップユニット70を装着する場合、制御部2は、搬送ユニット7を下方退避位置に下降させることでワイプユニット80を対向位置に移動させ、ブレードユニット83を初期位置に移動させる(
図11参照)。次に、制御部2は、キャリッジ32によりワイプユニット80を側方退避位置に移動させる(
図8参照)。続いて、制御部2は、キャリッジ32によりキャップユニット70とワイプユニット80を対向位置に移動させ(
図9参照)、搬送ユニット7を上昇させることでワイプユニット80を介してキャップユニット70をキャップ位置に移動させる(
図10参照)。こうして、キャップ72がノズル面12Nに装着される。
【0041】
上記の構成に加えて、メンテナンス装置30は、以下の構成を備えている。
図13乃至16は、メンテナンス装置30の断面図である。同図では、1個のインクジェットヘッド12に対応する部分のみが図示されているが、他の11個のインクジェットヘッド12に対応する部分も同様に構成されている。
【0042】
メンテナンス装置30は、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触しながらスライドするブレード82と、ノズル面12Nのブレード82のスライド方向下流側の端部領域から、又は、端部領域に位置するブレード82から、インクを吸収する吸収体91と、を備える。
【0043】
吸収部90は、吸収体91と、吸収体91を支持する支持部材92と、を備える(
図6、13乃至16参照)。インクジェットヘッド12の各々に対応する吸収部90がワイプユニット80の支持板81の上面に千鳥に配置されている。吸収体91は、スポンジ、フェルト等であり、ノズル面12Nの前側(スライド方向下流側)の端部領域(傾斜部12S)に対向する。なお、吸収体91は、端部領域に接触していてもよい。
【0044】
支持部材92は、支持板81の上面に固定される基部92Bと、基部92Bの左右両端部から上方に突出する1対のアーム92A部と、を備える。吸収体91は、左右のアーム部92Aの上端部に架け渡されており、ブレード82の前側の面に対向している。ブレードユニット83の底部83Bには、ブレードユニット83がスライドする際に吸収部90との干渉を回避するためのスリット83BSが設けられている。
【0045】
図13は、ワイプ処理時にブレード82がスライドを開始する位置(以下、スライド開始位置という)に位置する様子を示し、
図16は、ワイプ処理時にブレード82がスライドを終了する位置(以下、スライド終了位置という)に位置する様子を示している。
図16に示されるように、ブレード82は、少なくとも端部領域(傾斜部12S)のスライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了する。吸収体91は、ブレード82のスライド終了位置においてブレード82の前側の面に接触する位置に設けられている。
【0046】
次に、メンテナンス装置30のワイプ処理時の動作について説明する。スライド開始位置において(
図13参照)、制御部2は、洗浄液供給部13により供給口13Aから洗浄液を膨出させ、ブレードユニット83を前方にスライドさせる。すると、ブレード82の先端部が洗浄液を掻き取り、ノズル面12Nに接触して撓みながら、ノズル面12Nに付着したインクを除去する(
図14参照)。ブレード82に掻き取られたインクは、ブレード82の表面に沿って下方に流れ落ちる。ノズル面12Nと傾斜部12Sとの境界部(
図15参照)を通過すると、ブレード82の撓みが徐々に解消され、スライド終了位置において(
図16参照)、ブレード82が傾斜部12Sから離間してブレード82の形状が復元される。このようにしてブレード82の撓みが徐々に解消されるため、ブレード82に付着したインクの飛散が抑制される。
【0047】
スライド終了位置において、ブレード82の前側の面が吸収体91に接触する。このとき、ブレード82に付着しているインクが吸収体91に吸収される。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触しながらスライドするブレード82と、ノズル面12Nのブレード82のスライド方向下流側の端部領域から、又は、端部領域に位置するブレード82から、インクを吸収する吸収体91と、を備えるから、ノズル面12Nのブレード82のスライド方向下流側の端部領域におけるインクの滞留を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、吸収体91は、端部領域に対向又は接触しているから、端部領域から吸収体91にインクを効率よく吸収させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、端部領域は、スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、ブレード82は、少なくとも端部領域のスライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、吸収体91は、ブレード82のスライド終了位置においてブレード82に接触する位置に設けられているから、端部領域が傾斜している場合に、端部領域から吸収体91にインクを効率よく吸収させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、吸収体91がインクで飽和した場合に落下したインクを受け止める受け皿(支持板81)を備えるから、落下したインクの飛散を防ぐことができる。
【0052】
[第2実施形態]
図17は、第2実施形態に係るワイプユニット80の斜視図である。
図18乃至21は、第2実施形態に係るメンテナンス装置30の断面図である。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ノズル面12Nのスライド方向下流側の端部領域は、スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、ブレード82は、少なくとも端部領域のスライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了する。一方、第1実施形態とは異なって、吸収体91は、スライド終了位置よりもスライド方向上流側におけるブレード82が通過する領域の外側に設けられ、その領域を通過するブレード82に接触する。
【0053】
具体的には、支持部材92は、支持板81の上面に固定される基部92Bと、基部92Bの左右両端部から上方に突出する1対のアーム92A部と、を備え、各アーム部92Aの上端部に吸収体91が設けられている。ノズル面12Nの端部領域の幅はブレード82の幅よりも広く、吸収体91がノズル面12Nの端部領域に対向又は接触している。左右の吸収体91は、ブレード82の左右方向の幅と等しい距離だけ離間している。
【0054】
次に、メンテナンス装置30のワイプ処理時の動作について説明する。スライド開始位置において(
図18参照)、制御部2は、洗浄液供給部13により供給口13Aから洗浄液を膨出させ、ブレードユニット83を前方にスライドさせる。すると、ブレード82の先端部が洗浄液を掻き取り、ノズル面12Nに接触して撓みながら、ノズル面12Nに付着したインクを除去する(
図19参照)。ブレード82に掻き取られたインクは、ブレード82の表面に沿って下方に流れ落ちる。ここまでの動作は、第1実施形態と同じである。
【0055】
ノズル面12Nと傾斜部12Sとの境界部(
図20参照)を通過すると、ブレード82は、傾斜部12Sと左右の吸収体91に接触しながらスライドを続ける。このとき、ブレード82に付着しているインクの一部が吸収体91に吸収される。ブレード82によって前方に押し出されたインクが傾斜部12Sに付着する場合があるが、傾斜部12Sの左右方向の幅がブレード82よりも広いため、インクの一部は、ブレード82によって左右に押し退けられ、吸収体91に吸収される。その後、ブレード82の撓みが徐々に解消され、スライド終了位置において(
図21参照)、ブレード82が傾斜部12Sから離間してブレード82の形状が復元される。
【0056】
こうして、ブレード82に掻き取られたインクの大部分が除去される。吸収体91よりもスライド方向下流側において傾斜部12Sにインクが残留する場合があるが、残留したインクは傾斜部12Sの高い側(前側)から低い側(後側)に流れて滞留する。滞留するインクの量が増えるにつれてインクが左右方向に広がり、吸収体91に吸収される。吸収体91がインクで飽和した場合には、吸収体91からアーム部92Aの表面に沿って支持板81にインクが流れ落ちる。
【0057】
以上説明した本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、ノズル面12Nのスライド方向下流側の端部領域は、スライド方向下流側ほど高くなるように傾斜しており、ブレード82は、少なくとも端部領域のスライド方向上流側の端部を通過してからスライドを終了し、吸収体91は、スライド終了位置よりもスライド方向上流側におけるブレード82が通過する領域の外側に設けられ、その領域を通過するブレード82に接触する。この構成によれば、端部領域が傾斜している場合に、端部領域から吸収体91にインクを効率よく吸収させることができる。
【0058】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0059】
上記実施形態の構成に加えて、吸収体91に吸収されたインクを吸引するポンプを備えていてもよい。例えば、アーム部92Aとしてパイプ状の部材を用い、アーム部92Aにポンプが接続されていてもよい。この構成によれば、吸収されたインクを回収することができる。また、吸収体91の飽和を防ぐことができる。
【0060】
上記実施形態では、ノズル面12Nのスライド方向下流側の端部領域が傾斜している例が示されたが、端部領域が傾斜していなくてもよい。この構成においても、端部領域におけるインクの滞留を抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
30 メンテナンス装置
81 支持板(受け皿)
82 ブレード
91 吸収体