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特開2022-175418カーテンエアバッグ及びカーテンエアバッグ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175418
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ及びカーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20221117BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20221117BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20221117BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/213
B60R21/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081784
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】杉森 栄
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC08
3D054CC38
3D054CC42
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】各種車種の車幅に応じて膨張展開するカーテンエアバッグの厚み、形状を調整することによる、膨張展開時のフロントピラーガーニッシュへの負荷を低減するカーテンエアバッグ及びカーテンエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】カーテンエアバッグ1は、車両室内の側面に沿って下方へ膨張展開するものであり、車両内側及び外側に位置するパネル2,3と、パネル2,3の周縁部に沿う結合部10と、膨張展開時にフロントピラーを覆う位置に設けられ、パネル2,3を接着し、内圧が所定値以上となった時に接着が剥離する接着部31と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内の側面に沿って下方へ膨張展開するカーテンエアバッグであって、
車両内側に位置する第1パネル及び車両外側に位置する第2パネルと、
前記第1パネル及び前記第2パネルの周縁部に沿う結合部と、
膨張展開時にフロントピラーを覆う位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを接着し、内圧が所定値以上となった時に接着が剥離する第1接着部と、
を備えるカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記第1接着部は、フロントピラーと平行に延在することを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記第1接着部の両端は、前記結合部から離隔していることを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記第1接着部の両端のいずれか一方は、前記結合部に連なっていることを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
運転席用エアバッグが接触する位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを接着し、内圧が所定値以上となった時に接着が剥離する第2接着部をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項6】
運転席用エアバッグが接触する位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを縫合により結合する環状結合部をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグと、前記カーテンエアバッグにガスを供給するインフレータとを有するカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサイドドアの窓等に沿って膨張展開するカーテンエアバッグと、このカーテンエアバッグを備えたカーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車乗員頭部の拘束用のエアバッグとして、自動車の室内の天井部と側面部との交差隅部付近に配置され、ガス導入口から導入されるガスによってサイドドアの窓等に沿って膨張するよう構成されたカーテンエアバッグがある。
【0003】
カーテンエアバッグ装置を備えた自動車にあっては、自動車が側面衝突を受けたり、横転したりした場合などの緊急時に、該カーテンエアバッグが車両室内の側面(例えばドアやピラーなど)に沿って車体下方に向って膨張し、乗員の頭部を拘束すると共に、窓が開いているときには乗員が車外に投げ出されることを防止する。
【0004】
カーテンエアバッグは、略ロッド状に折り畳まれて、車体上部のルーフサイドレール内及びフロントピラー(Aピラー)内に格納される。緊急時にカーテンエアバッグにガスが供給されると、膨張を開始し、ルーフサイドガーニッシュ及びフロントピラーガーニッシュが車室内方へ開き出す。そして、カーテンエアバッグが、ルーフサイドレール及びフロントピラーから車内に放出され、膨張展開する。
【0005】
従来のカーテンエアバッグでは、膨張展開したカーテンエアバッグの形状によっては、フロントピラーガーニッシュに強い負荷がかかり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6803872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各種車種の車幅に応じて膨張展開するカーテンエアバッグの厚み、形状を調整することにより、膨張展開時のフロントピラーガーニッシュへの負荷を低減するカーテンエアバッグ及びカーテンエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカーテンエアバッグは、車両室内の側面に沿って下方へ膨張展開するカーテンエアバッグであって、車両内側に位置する第1パネル及び車両外側に位置する第2パネルと、前記第1パネル及び前記第2パネルの周縁部に沿う結合部と、膨張展開時にフロントピラーを覆う位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを接着し、内圧が所定値以上となった時に接着が剥離する第1接着部と、を備えるものである。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1接着部は、フロントピラーと平行に延在する。
【0010】
本発明の一態様では、前記第1接着部の両端は、前記結合部から離隔している。
【0011】
本発明の一態様では、前記第1接着部の両端のいずれか一方は、前記結合部に連なっている。
【0012】
本発明の一態様では、運転席用エアバッグが接触する位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを接着し、内圧が所定値以上となった時に接着が剥離する第2接着部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様では、運転席用エアバッグが接触する位置に設けられ、前記第1パネル及び前記第2パネルを縫合により結合する環状結合部をさらに備える。
【0014】
本発明のカーテンエアバッグ装置は、かかる本発明のカーテンエアバッグと、このカーテンエアバッグを膨張させるためのインフレータとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカーテンエアバッグによれば、フロントピラーガーニッシュへの負荷を調整し、膨張展開時のフロントピラーガーニッシュとの干渉を抑制できる。また、運転席用エアバッグとの強干渉を抑制し、乗員を正規ポジション方向へ案内できる。また、展開性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
図2】別の実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
図3】別の実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
図4】別の実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
図5】別の実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
図6】別の実施の形態に係るカーテンエアバッグの膨張前の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1の通り、カーテンエアバッグ1の本体部1aの上辺の長手方向の中央部に、上方かつ斜め後方に延出する短い筒状のガス導入部1bが設けられ、このガス導入部1bの先端がガス導入口1cとなっている。インフレータ9の先端はこのガス導入口1cに差し込まれ、バンド(図示略)により結束される。インフレータ9は、取付部材(図示略)により自動車の車体のルーフサイド部に固定されている。
【0019】
このカーテンエアバッグ1は、ほぼ同一形状の2枚のパネル(基布)2,3を重ね合わせ、これらパネル2,3同士を線状結合部10~13及び環状結合部21~25によって結合したものである。なお、図示は省略するが、ガス導入部1b付近では複数枚のパッチクロス(基布)が縫着されている。
【0020】
各パネル2,3は、それぞれ、全体として一連一体のものであってもよく、本体部1aとガス導入部1bとを別体としたものであってもよい。
【0021】
カーテンエアバッグはシリコンシールを有してもよく、有していなくてもよい。
【0022】
各線状結合部10~13及び各環状結合部21~25は、パネル2,3同士を気密に結合し、かつカーテンエアバッグ1の内圧が設計上限圧力にまで上昇してもパネル2,3同士が離反しないような強固な結合手段により形成されている。例えば、各線状結合部10~13及び各環状結合部21~25は、強度の高い縫糸による縫合部である。
【0023】
線状結合部10はカーテンエアバッグ1を周回していると共に、その一部10a,10bは、ガス導入部1bの前縁と後縁に沿って延在している。
【0024】
環状結合部21~25は、カーテンエアバッグ本体部1aの前後方向に間隔をおいて配置されている。環状結合部21は、パネル2,3の後端2bよりも所定距離前方に位置している。環状結合部21は、パネル2,3の上下方向の中間部に位置している。
【0025】
線状結合部11は環状結合部21,22を結ぶように延在している。具体的には、線状結合部11は、環状結合部21から車両前側の斜め上方に延伸し、続いて車両前側へ延伸し、続いて車両前側の斜め下方に延伸し、その延伸の終端部が環状結合部22に接続されている。
【0026】
環状結合部23は、ガス導入部1bの下方、かつパネル2,3の上下方向の中間部に位置している。環状結合部24は、環状結合部23より上方かつ前方に位置している。線状結合部12は環状結合部23、24を結ぶように延在している。具体的には、線状結合部12は、環状結合部23から車両後側の斜め上方に延伸し、続いて車両前側へ延伸し、その延伸の終端部が環状結合部24に接続されている。
【0027】
環状結合部25は、環状結合部24より下方かつ前方に位置している。線状結合部13は、環状結合部25から下方かつ前方に延在して下縁部の線状結合部10に連なっている。
【0028】
環状結合部25の上方かつ前方の領域に、パネル2,3同士を接着部材で接着する接着部31(第1接着部)が設けられている。図1に示す例では、接着部31は線状であり、前方ほど低位となるように斜め方向に延在する。接着部31は、カーテンエアバッグ1が車室内で膨張展開した際に、フロントピラー(Aピラー)の下方でフロントピラーを覆う位置に相当する。すなわち、カーテンエアバッグ1の膨張展開時の接着部31の延在方向は、フロントピラーの延在方向と略平行となる。接着部材は、接着剤でもよいし、シリコンシールのようなシート状のものであってもよい。
【0029】
接着部31の上端(後端)は、上縁部の線状結合部10から所定距離下方に位置している。接着部31の下端(前端)は、パネル2,3の前端2f側の線状結合部10から所定距離後方に位置している。
【0030】
接着部31によるパネル接着強度は、線状結合部10~13及び環状結合部21~25によるパネル結合強度よりも低い。接着部31は、エアバッグ内圧が所定値以上となった時に、接着が解離(解除)するようになっている。
【0031】
そのため、接着部31と、接着部31の上端(後端)よりも前方かつ接着部31の下端(前端)よりも上方に位置する線状結合部10とで囲まれた膨張室(以下、サブチャンバ1Sと呼ぶ)は、それ以外の膨張室(以下、メインチャンバ1Mと呼ぶ)よりも遅れて膨張展開する。例えば、メインチャンバ1Mが膨張を開始してから20ms程度経過後に接着部31による接着が解離して、サブチャンバ1Sが膨張を開始する。
【0032】
接着部31の下方、かつ線状結合部13の前方の領域には、パネル2,3同士を接着部材で接着する接着部32が設けられている。接着部31が設けられる位置は、カーテンエアバッグ1が膨張展開した際に、膨張展開した運転席用エアバッグと接触(干渉)する位置に対応する。
【0033】
接着部32によるパネル接着強度は、線状結合部10~13及び環状結合部21~25によるパネル結合強度よりも低い。接着部32は、エアバッグ内圧が所定値以上となった時に、接着が解離(解除)するようになっている。接着部32の接着部材は、接着部31と同じものを使用することができる。
【0034】
図1に示す例では、接着部32はU字状になっているが、接着部32の形状は特に限定されない。
【0035】
パネル2,3の前端2fからは、本体部1aを車体のフロントピラーに連結するためのテザー50が延びている。また、パネル2,3の後端2bからは、本体部1aを車体のCピラーに連結するためのテザー(図示略)が延びている。
【0036】
パネル2,3の上部には、本体部1aを車体のルーフサイドレールに連結するための複数のタブ4が接続されている。複数のタブ4のうち、最も前方のタブ4aは、接着部31の上方に位置し、他のタブ4よりも長くなっている。タブ4aは、フロントピラー内に接続される。テザー50及びタブ4は、膨張展開時におけるカーテンエアバッグ1の位置決めを行う部品である。
【0037】
カーテンエアバッグ1の本体部1aは、車体の前後方向に延在するようにロール折り等により細長く折り畳まれ、結束具(図示略)で結束され、保形される。この結束具は、カーテンエアバッグ1が膨張するときには断裂するか又は結束を解く強度を有している。結束具は、折畳体の長手方向に間隔をおいて複数個所に配置されている。
【0038】
このカーテンエアバッグ1の折畳体が自動車の天井部と側面部との交差部付近に沿って配置される。例えば、タブ4がルーフサイドレールに接続され、折畳体がルーフサイドガーニッシュに覆われる。また、テザー50の前端部がフロントピラーに取り付けられ、折畳体のサブチャンバ1Sを含む部分はフロントピラーガーニッシュに覆われる。
【0039】
このように構成されたカーテンエアバッグ装置を備えた車両が側突又は横転した場合、インフレータがガス噴出作動し、ガスがカーテンエアバッグ1に供給され、カーテンエアバッグ1が膨張を開始し、ルーフサイドガーニッシュの下縁が車室内方へ開き出し、カーテンエアバッグ1がサイドウィンドウに沿って下方に膨張展開する。このとき、カーテンエアバッグ1のサブチャンバ1Sを含む部分も同時にフロントピラーから車室内方に放出される。
【0040】
カーテンエアバッグ1に供給されたガスは、メインチャンバ1Mを膨張展開させる。メインチャンバ1Mの膨張展開に伴いカーテンエアバッグ1の内圧が所定値以上となると、接着部31の接着が剥離し、サブチャンバ1Sが膨張展開する。カーテンエアバッグ1が車室内方に放出され、メインチャンバ1Mよりも遅れてサブチャンバ1Sが膨張展開するため、フロントピラーガーニッシュとカーテンエアバッグ1との干渉を抑制できる。
【0041】
また、カーテンエアバッグ1の内圧が所定値に達するまでは、カーテンエアバッグ1の接着部32の接着は剥離せず、この部分は凹部になり、運転席用エアバッグとの干渉が抑制される。そのため、運転席用エアバッグは所望の位置で乗員を拘束できる。
【0042】
接着部32に代えて、図2に示すような、強度の高い縫糸による縫合部を用いた環状結合部26としてもよい。環状結合部26は、カーテンエアバッグ1の内圧が設計上限圧力にまで上昇してもパネル2,3同士が離反しないように結合する。カーテンエアバッグ1の膨張展開時において、環状結合部26は凹部(非膨張部)となり、運転席用エアバッグとの干渉が抑制される。
【0043】
図2に示す構成では、線状結合部14が、環状結合部25,26を結ぶように延在している。具体的には、線状結合部14は、環状結合部25から車両前側の斜め下方に延伸し、その延伸の終端部が環状結合部26に接続される。線状結合部15が、環状結合部26から下方に延在して下縁部の線状結合部10に連なっている。
【0044】
上記実施形態では、メインチャンバ1Mとサブチャンバ1Sとを区画する線状の接着部31の両端が、線状結合部10から離隔する構成について説明したが、図3に示すように、接着部31の上端(後端)が上縁部の線状結合部10に連なっていてもよい。
【0045】
あるいはまた、図4に示すように、接着部31の下端(前端)が、前端2f側の線状結合部10に連なっていてもよい。図5に示すように、接着部31の上端(後端)が上縁部の線状結合部10に連なると共に、下端(前端)が前端2f側の線状結合部10に連なっていてもよい。
【0046】
上記実施形態では、カーテンエアバッグ1の膨張展開時の接着部31の延在方向は、フロントピラーの下方でフロントピラーの延在方向と略平行となる構成について説明したが、車幅やカーテンエアバッグ1の展開速度を考慮して、図6に示すように、フロントピラーの延在方向と平行になっていなくてもよい。
【0047】
線状の接着部31は、連続していてもよいし、一部が途切れていてもよい。
【0048】
カーテンエアバッグ1は、車両前方ほど膨張展開時の厚みが大きくなるようにしてもよい。カーテンエアバッグ1は、フロントピラーを覆うように展開する。
【0049】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 カーテンエアバッグ
1a カーテンエアバッグ本体部
1b ガス導入部
2,3 パネル
4 タブ
10~15 線状結合部
21~26 環状結合部
31,32 接着部
50 テザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6