(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175428
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】傘および傘の製造方法
(51)【国際特許分類】
A45B 25/18 20060101AFI20221117BHJP
A45B 25/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A45B25/18 F
A45B25/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081801
(22)【出願日】2021-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】392017624
【氏名又は名称】テックワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅章
(72)【発明者】
【氏名】浅野 明
(72)【発明者】
【氏名】北野 高広
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104RA01
3B104RA03
3B104UA01
(57)【要約】
【課題】周りに居る者に露先が当たって起きる事故を少なく出来、特に、従来からの普通の一直線状の筒タイプの露先にも適用可能であり、そして露先先端部まで傘布(シート)が存在しているので、中心から露先先端までの長さが従来の傘と同じならば、従来の傘よりも雨に濡れ難く、又、日陰が大きく、直射日光を避けるのに効果的であり、これ等の特長は傘布(シート)を工夫する事で得られ、従来構造の傘に簡単に適用でき、コストも低廉な傘を提供する。
【解決手段】シートと前記シートを保持する親骨と前記親骨の先端に設けられた露先部材とを具備した傘であって、前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が前記シートに設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘であって、
前記シートは、
略三角形状のシート片を具備してなり、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋がれてなり、
前記シート片は、
前記略三角形状の底辺部が折り返されてなり、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、かつ、前記略三角形状のシート片同士が繋がれた位置よりも内側の位置において、繋がれてなり、
前記シート片同士の繋がりと前記折り返されて重なった部分における繋がりとによって、前記折り返されて重なった部分が袋状に構成されてなり、
前記露先部材の先端側は前記袋状部内に挿入されて覆われている
傘。
【請求項2】
前記略三角形状の底辺部側から見た場合に、前記折り返されて重なった部分が略∩形状に繋がれてなる
請求項1の傘。
【請求項3】
前記繋ぎが縫合または溶着による
請求項1又は請求項2の傘。
【請求項4】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘であって、
前記シートには、前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が、前記挿入に前以って、設けられてなる
傘。
【請求項5】
前記袋状部の口部が、前記露先部材の先端側が前記袋状部内に挿入後にあっては、閉じられてなる
請求項1~請求項4いずれかの傘。
【請求項6】
前記露先部材は先端側に大形部を有する
請求項1~請求項5いずれかの傘。
【請求項7】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘の製造方法であって、
略三角形状のシート片の底辺部が折り返される工程と、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、繋ぎ合わされる工程と、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋ぎ合わされて前記シートになる工程と、
前記繋ぎ合わせ工程を経て前記重なった部分に構成された袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程
とを具備する傘の製造方法。
【請求項8】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘であって、
前記シートに袋状部を設ける工程と、
前記袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程
とを具備する傘の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傘に関する。
【背景技術】
【0002】
雨傘・日傘を問わず、傘は、一般的に、
図10に示される構造である。すなわち、シャフト(中棒:中軸)、ハンドル(手元)、石突、シート(カバー:傘布:傘地)、露先、親骨(リブ)、受骨などを具備する。
【0003】
前記露先(露先部材)は、傘を開いている時は、外側に飛び出しているのが一般的である。
従って、傘の扱い方によっては、周囲に居る者に露先が当たる。
【0004】
斯かる問題を解決すべく様々な提案がなされている。
例えば、実開昭50-77051(特許文献1)は
図11~
図14に示される構造の傘を提案している。図中、1はナイロンテグス、2は錨型キャップ(所謂、露先)、2’はナイロンテグス1を通す孔、3は親骨、4は表・裏傘布(シート)の縫合線、5は表傘布、5’は裏傘布、6は傘布とじ部、7は傘布とじ糸である。この提案にあっては、露先が傘布(シート)で覆われている。従って、露先が飛び出していないので、それだけ、安全性に富む。
【0005】
例えば、特開2020-65906(特許文献2)は
図15に示される構造の傘を提案している。
図15中の符号は特許文献2に記載の通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭50-77051号公報
【特許文献2】特開2020-65906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1にあっては、シート(傘布)を裏側まで回して(シート(傘布)を折り返して)傘骨先端(錨型キャップ、所謂、露先)を被い、傘骨5の傘布とじ部6に表・裏傘布5,5’を傘布とじ糸7でとじて固定し、次いで符号4で示す線に沿って表傘布5と裏傘布5’とを縫合して完成したものである。この提案の傘は、シート(傘布)を折り返して錨型キャップ(露先)が覆われた後において、表傘布5と裏傘布5’とが縫合されたものである。
この提案にあっては、仮に、露先が錨型ではなく普通の一直線状の筒タイプであったとしても、シート(傘布)を折り返して露先を覆った後に、糸で表傘布5と裏傘布5’とを傘布とじ糸7でとじて固定したり、又、縫合線4の位置で表傘布5と裏傘布5’とを縫合する事から、手間が非常に掛かる。コストが高く付く。縫合線4の位置で表傘布5と裏傘布5’とを縫合するのは、錨型キャップ(露先)を越えて行くのであるから、実に、大変である。錨型キャップ(露先)先端をシート(傘布)で覆う前に、縫合線4の位置で表傘布5と裏傘布5’とを縫合したのでは、錨型キャップ(露先)をシート(傘布)で覆う事が出来ない。
【0008】
前記特許文献2にあっては、特殊形状(構造)の露先を前提にしている。
前記特許文献1にあっても、露先が錨型キャップであるものの、錨型キャップに代えて通常の一直線状の筒タイプの露先に応用する事が可能であるかも知れない。なぜならば、シート(傘布)を折り返して露先を覆うと言う技術思想のみであれば、露先が特定の形状・構造でなければならない要件は緩和される。
しかしながら、特許文献2において、露先を通常の一直線状の筒タイプにした場合には、応用できない。なぜならば、露先を通常の一直線状の筒タイプにした場合には、傘を開いた場合には、露先(先端)が傘の外側に飛び出してしまい、周囲に居る者に露先が当たる。尤も、特許文献2は、露先が当たる問題を解決しようとしてなされたものでないから、露先を通常の一直線状の筒タイプにした場合の問題が解決できないとしても致し方無い。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決する事である。
すなわち、周りに居る者に露先が当たって起きる事故を少なく出来る傘を提供する事である。特に、通常の一直線状の筒タイプの露先にも適用可能な技術を提供する事である。傘布(シート)を工夫する事で従来構造の傘に簡単に適用できる技術を提供する事である。低廉なコストの傘を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘であって、
前記シートには、前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が、前記挿入に前以って、設けられてなる
傘を提案する。
【0011】
本発明は、
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘であって、
前記シートに袋状部を設ける工程と、
前記袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程
とを具備する傘の製造方法を提案する。
【0012】
本発明は、
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘であって、
前記シートは、
略三角形状のシート片を具備してなり、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋がれてなり、
前記シート片は、
前記略三角形状の底辺部が折り返されてなり、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、かつ、前記略三角形状のシート片同士が繋がれた位置よりも内側の位置において、繋がれてなり、
前記シート片同士の繋がりと前記折り返されて重なった部分における繋がりとによって、前記シートにおける前記折り返されて重なった部分が袋状に構成されてなり、
前記露先部材の先端側は前記袋状部内に挿入されて覆われている
傘を提案する。
【0013】
本発明は、
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘の製造方法であって、
略三角形状のシート片の底辺部が折り返される工程と、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、繋ぎ合わされる工程と、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋ぎ合わされて前記シートになる工程と、
前記繋ぎ合わせ工程を経て前記重なった部分に構成された袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程
とを具備する傘の製造方法を提案する。
【0014】
本発明は、前記傘であって、前記略三角形状の底辺部側から見た場合に、前記折り返されて重なった部分が略∩形状に繋がれてなる傘を提案する。
【0015】
本発明は、前記傘であって、前記繋ぎが縫合または溶着による傘を提案する。
【0016】
本発明は、前記傘であって、前記袋状部の口部が、前記露先部材の先端側が前記袋状部内に挿入後にあっては、閉じられてなる傘を提案する。
【0017】
本発明は、前記傘であって、前記露先部材は先端側に大形部を有する傘を提案する。
【発明の効果】
【0018】
露先先端部がシート(傘布)で覆われているので、露先先端部が身体に当たっても、怪我する恐れが少ない。
数多くの一般的な傘に採用されている形状・構造の露先であっても対応できる。すなわち、露先が特別な形状・構造を要求されて来た従来技術の傘に比べて汎用性が高く、かつ、コスト増も少ない。実施が簡単である。
露先先端までシート(傘布)が存在しているので、中心から露先先端までの長さが従来の傘と同じならば、従来の傘の場合よりも濡れ難く、又、直射日光が避けられ易い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態になる傘の内側(下側)からの概略斜視図
【
図2】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の平面図
【
図3】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の底面図
【
図4】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の正面図
【
図5】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の背面図
【
図6】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の右側面図
【
図7】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)の左側面図
【
図8】本発明の実施形態になるシート(傘布:傘地)のA-A線拡大断面図
【
図9】本発明の実施形態になる傘のB-C部拡大底面側斜視図
【
図11】従来技術(特許文献1)における傘の骨組の平面図
【
図12】従来技術(特許文献1)における傘布を張った傘の平面図
【
図13】従来技術(特許文献1)における傘骨先端の斜視図
【
図15】従来技術(特許文献2)における傘の断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は傘である。前記傘はシート(傘布:傘地)を具備する。前記シートは、傘を開いた状態において、平面視では、一般的には正多角形状である。例えば、正八角形状である。勿論、是に限られない。前記シートの中央部には孔が設けられている。前記孔に傘のシャフトが挿通され、前記シート(傘布:傘地)の上から前記シャフトに石突(キャップ)が設けられる。これによって、前記シート(傘布:傘地)中央部が固定される。前記傘は親骨を具備する。前記親骨に前記シート(傘布:傘地)は取り付けられる。前記取付け方は固定方式が考えられる。面ファスナー(所謂、マジックテープ)を用いたならば、前記シート(傘布:傘地)は前記親骨に対して着脱自在(着脱可能)となる。何れの取り付け方であっても良い。是によって、前記シートは親骨に保持される。前記傘は露先部材(所謂、露先)を具備する。前記露先部材の基端側が前記親骨に取り付けられる。一般的に、前記露先部材は直線状である。従来の一般的な形状・構造のものが用いられる。特許文献1,2の如きの特別な形状である必要はない。寧ろ、特別な形状・構造の露先ではないから、即ち、従来の一般的な傘の露先であるから、それだけ傘のコストが低廉である。尚、直線状とは、多少は湾曲(円弧状など)している場合も含まれる。それは本発明の本質的要素ではないからである。前記露先部材は前記親骨の先端に設けられる。例えば、筒状の露先の基端側が前記親骨の先端に差し込まれる。シート(傘布:傘地)に取り付けられた露先を前記親骨の先端に差し込む事によって取付が行われる。前記シート(傘布:傘地)には、前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が設けられている。前記袋状部内に前記露先部材を差し込む(挿入する)だけで、前記露先部材の配置(配設)作業は終了する。是は至って簡単である。つまり、前記シート(傘布:傘地)に予め設けられていた袋状部内に前記露先部材を差し込む(挿入する)だけで、前記露先部材を覆う作業は終了する。
【0021】
前記シート(傘布:傘地)の好適な例が以下に述べられる。勿論、以下のものに限られない。前記シートは略三角形(例えば、略二等辺三角形)状のシート片を具備する。複数枚(傘を開いた状態における平面視が正八角形の場合には、8枚)の前記略三角形状のシート片の側辺部(等辺部)同士が繋がれている(シート片が、布であれば、例えば縫合されている。シート片が樹脂(プラスチック)製フィルムであれば、縫合でも溶着(加熱溶着あるいは超音波溶着)でも良い。)。これによって、例えば多角形状の一枚のシート(傘布:傘地)が出来る。前記略三角形状の底辺部(前記側辺部(等辺部)以外の残りの辺部)が折り返されている(折り畳まれている)。この折り返しによって、前記シート(傘布:傘地)の先端側は折返構造を有していると言う事になる。前記折り返されて重なった部分は、前記略三角形状の両側辺部に沿って、かつ、前記略三角形状のシート片同士が繋がれた位置よりも内側の位置において、繋がれている(シート片が、布であれば、例えば縫合によって、繋がれている。シート片が樹脂(プラスチック)製フィルムであれば、縫合あるいは溶着によって、繋がれている。)。前記略三角形状の底辺部側から見た場合に、前記折り返されて重なった部分は、例えば略∩形状に繋がれている。是は、前記略三角形状の両側辺部に沿ってのみの縫合あるいは溶着に過ぎない場合は、折り返し(折り畳み)部分に風が入り込むと捲れる等の現象が起き兼ねないからである。前記縫合あるいは溶着によって、前記折り返されて重なった部分に、袋状部が構成されている事になる。すなわち、袋状部が前記シートに構成された事になる。前記露先部材の先端側が前記袋状部内に挿入されていると、前記露先部材の先端側が前記シート(傘布:傘地)で覆われている事になる。
【0022】
前記袋状部の口部は、前記露先部材の先端側が前記袋状部内に挿入後にあっては、例えば縫合あるいは溶着によって、閉じられている。是は、前記露先部を前記袋状部から取り外れ難くする為である。従って、完璧な閉鎖でなくても良い。
【0023】
前記露先部材は先端側に大形部を有する。大形部は、例えば丸形状(例えば、略球形状)である。是は、前記露先部材を前記袋状部から取り外れ難くする為である。
【0024】
第2の発明は傘の製造方法である。上記傘の製造方法である。前記方法は前記シート(傘布:傘地)に袋状部を設ける工程を具備する。前記袋状部は、例えば次のようにして設けられる。勿論、是に限られない。例えば、略三角形(略二等辺三角形)状のシート片が、複数枚、用意される。複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋ぎ合わされる。是は、例えば縫合あるいは溶着によってなされる。是に拠って一枚の前記シート(傘布:傘地)が出来る。前記シート片の略三角形状の底辺部が折り返される(折り畳まれる)。前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部(二等辺部)に沿って、繋ぎ合わされる。是は、例えば縫合あるいは溶着によってなされる。前記シート片の略三角形状の底辺部が折り返し及び/又は前記両側辺部(二等辺部)に沿っての繋ぎ合わしと、略三角形状のシート片の側辺部同士の繋ぎ合わしとは、どちららが先でも後でも良い。例えば、シート片の側辺部同士が繋ぎ合わさって一枚のシートが出来た後で、シート片の略三角形状の底辺部が折り返されても良い。或いは、シート片の略三角形状の底辺部が折り返された後、又はシート片の略三角形状の底辺部に沿って折り返されて重なった部分が前記略三角形状の両側辺部(二等辺部)に沿って繋ぎ合わされた後、シート片の側辺部同士が繋ぎ合わされて一枚のシートが出来るようにしても良い。但し、複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋ぎ合わされて一枚のシートになった後で前記シート片の略三角形状の底辺部が折り返される(折り畳まれる)場合の方が作業性は良い。このような工程を経る事によって、前記シート片の前記折り返されて重なった部分に袋状部が構成される。前記袋状部の内側に前記露先部材が挿入される。前記シートが前記親骨に取り付けられる。前記シートが前記親骨に取り付けられた後に前記露先部材が前記親骨に取り付けられても、前記露先部材が前記親骨に取り付けられた後に前記シートが前記親骨に取り付けられても良い。何れにしても、前記露先部材が挿入される袋状部が前記シートに予め設けられているので、安全性に富む傘が簡単に得られる。
【0025】
以下、具体的な実施例が挙げられる。本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0026】
図1~
図9は本発明になる傘の一実施形態における説明図である。
図1は本発明の実施形態になる傘の内側(下側)からの概略斜視図、
図2は本発明の実施形態になる傘のシートの平面図、
図3は本発明の実施形態になる傘のシートの底面図、
図4は本発明の実施形態になる傘のシートの正面図、
図5は本発明の実施形態になる傘のシートの背面図、
図6は本発明の実施形態になる傘のシートの右側面図、
図7は本発明の実施形態になる傘のシートの左側面図である。
図8は本発明の実施形態になる傘のシートのA-A線拡大断面、
図9は本発明の実施形態になる傘のB-C部拡大底面側斜視図である。
図1~
図9は傘のシートの部分意匠(実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。)としての図面である。
【0027】
図1~
図9に示される傘も、シャフト、ハンドル、石突、シート(カバー:傘布:傘地)、露先(露先部材)、親骨、受骨などを具備する。これ等の各部位(部品)の構造は、
図10にも示された如く、周知であるから、詳細な説明は省略される。
以下では、本発明における特徴的個所が主として説明される。
【0028】
本実施形態にあっては、前記シート21は、8枚の略二等辺三角形状のシート片21a,21b,…,21hからなる。勿論、8枚には限られない。シート片21aの右側等辺部とシート片21bの左側等辺部とが縫合され、シート片21aとシート片21bとが繋がっている(連結されている)。シート片21bの右側等辺部とシート片21cの左側等辺部とが縫合され、シート片21bとシート片21cとが繋がっている。シート片21cの右側等辺部とシート片21dの左側等辺部とが縫合され、シート片21cとシート片21dとが繋がっている。シート片21dの右側等辺部とシート片21eの左側等辺部とが縫合され、シート片21dとシート片21eとが繋がっている。シート片21eの右側等辺部とシート片21fの左側等辺部とが縫合され、シート片21eとシート片21fとが繋がっている。シート片21fの右側等辺部とシート片21gの左側等辺部とが縫合され、シート片21fとシート片21gとが繋がっている。シート片21gの右側等辺部とシート片21hの左側等辺部とが縫合され、シート片21gとシート片21hとが繋がっている。シート片21hの右側等辺部とシート片21aの左側等辺部とが縫合され、シート片21hとシート片21aとが繋がっている。すなわち、8枚のシート片が1枚のシート(傘布)を構成するように配置(シート片21a,21b,…,21hの頂点(二等辺三角形の二つの等辺が共有する頂点)が中心に位置するよう配置、かつ、側片部が一部重なるよう配置)され、シート片の隣接(重合)部位が縫い合わされて(連結されて)1枚のシート(傘布)が構成されたものである。シート片(シート)が樹脂フィルム製ならば、糸で縫い合わせる代わりに、溶着(熱溶着とか超音波溶着)で連結されても良い。斯かる構成も、従来の傘において採用されている。22はシート片と隣接シート片との連結部(縫合ライン)である。この連結部(縫合ライン)は、
図2,4~7において点線で表れているものの、符号22は図示されていない。シート片21a,21b,…,21hは、その等辺部(二等辺三角形における等辺)が、上述の通り、隣接位置のシート片21b,…,21h,21aに連結されている。
【0029】
シート片21a,21b,…,21hの底辺(二等辺三角形における底辺)部は、例えば1~4cm幅(長さ)に亘って、内側(傘の場合で説明すると裏側(下側))に折り返されている。つまり、傘地の周縁側の1~4cm程度の幅(長さ)が、折り畳み(折り返し)によって、2重になっている。前記連結部(縫合ライン)22よりも前記シート片21a,21b,…,21hの内側位置であって、かつ、前記連結部(縫合ライン)22に沿って(シート片の等辺部に沿って)、前記シート片21a,21b,…,21hの前記2重部位が縫合されている。更に、前記2重部位のシート(傘布)端縁(傘地の周縁側の端縁)は縫合されなくても良いが、前記端縁から内側の位置においては、前記シート片21a,21b,…,21hの前記2重部位が縫合されている。すなわち、前記2重部位が、例えば略∩(逆U字)形状に縫合されている。この縫合ラインが符号23で示される。
【0030】
上記符号22と符号23とで示される位置の縫合によって、前記シート21の内側には袋状部24が構成される事になる。すなわち、例えば前記シート片21aの右側等辺部の内側の縫合ライン23と前記シート片21bの左側等辺部の内側の縫合ライン23との間の前記2重部位は縫合されていない。つまり、連結部(縫合ライン)22を中心にして片側2~10mm(合計で4~20mm)程度の長さに亘って前記2重部位が縫合されていないので、当該箇所が袋状になっている。すなわち、袋状部24が構成された事になる。前記袋状部24は縫合ライン22の位置に対応して存在している。前記縫合ライン22は親骨25が対応した位置である。開いた傘を内側(下側)から眺めた場合、縫合ライン22は親骨25によって隠れている(
図1参照)。前記親骨25の先端に露先部材26が取り付けられる。親骨25が前記縫合ライン22に重なる位置である事から、前記露先部材26が前記袋状部24内に収納されるのは好都合である。親骨25の先端に取り付けられた露先部材26は前記シート(カバー:傘布:傘地)21によって覆われる事から、周りに居る者に露先が当たって起きる事故が少なくなる。シート(カバー:傘布:傘地)21を工夫した事で、露先を簡単に覆う事が出来る。露先部材が特別な形状・構造でなくても済む。つまり、従来からの一般的な傘に採用されている露先部材でも対応できる。特に、通常の一直線状の筒タイプの露先にも適用可能である。しかも、簡単に実施できる。上記実施形態の傘は、露先までシート(カバー:傘布:傘地)21が存在しているから、その分だけ傘の大きさが大きい。従って、雨傘であれば雨に濡れ難く、日傘であれば直射日光が当たり難い。
【0031】
27は袋状部24の開口を閉じる為の縫合糸である。すなわち、先端側に略球形部が構成された露先部材26が袋状部24内に収納された後、袋状部24の開口から露先部材26が抜け落ち難くする為に、袋状部24の開口が一部閉塞されたのである。
【符号の説明】
【0032】
21 シート(傘布:傘地)
21a,21b,…,21h シート片
22 シート片とシート片との連結部(縫合ライン)
23 2重部位における縫合ライン
24 袋状部
25 親骨
26 露先部材
27 縫合糸
【手続補正書】
【提出日】2022-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘であって、
前記シートは、
略三角形状のシート片を具備してなり、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋がれてなり、
前記シート片は、
前記略三角形状の底辺部が折り返されてなり、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、かつ、前記略三角形状のシート片同士が繋がれた位置よりも内側の位置において、繋がれてなり、
前記シート片同士の繋がりと前記折り返されて重なった部分における繋がりとによって、前記折り返されて重なった部分に袋状部が構成されてなり、
前記露先部材の先端側は前記袋状部内に挿入されて覆われており、
前記露先部材の先端側が挿入された前記袋状部の口部が閉じられてなる
傘。
【請求項2】
前記略三角形状の底辺部側から見た場合に、前記折り返されて重なった部分が略∩形状に繋がれてなる
請求項1の傘。
【請求項3】
前記繋ぎが縫合または溶着による
請求項1又は請求項2の傘。
【請求項4】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘であって、
前記シートには前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が設けられてなり、
前記露先部材の先端側が挿入された前記袋状部の口部が閉じられてなる
傘。
【請求項5】
前記露先部材は先端側に大形部を有する
請求項1~請求項4いずれかの傘。
【請求項6】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端側に設けられた露先部材とを具備した傘の製造方法であって、
略三角形状のシート片の底辺部が折り返される工程と、
前記折り返されて重なった部分が、前記略三角形状の両側辺部に沿って、繋ぎ合わされる工程と、
複数枚の前記略三角形状のシート片の側辺部同士が繋ぎ合わされて前記シートになる工程と、
前記繋ぎ合わせ工程を経て前記重なった部分に構成された袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程と、
前記露先部材の先端側が挿入された前記袋状部の口部が閉じられる工程
とを具備する傘の製造方法。
【請求項7】
シートと、前記シートを保持する親骨と、前記親骨の先端に設けられた直線状の露先部材とを具備した傘の製造方法であって、
前記シートに袋状部を設ける工程と、
前記袋状部の内側に前記露先部材が挿入される工程と、
前記シートが前記親骨に取り付けられる工程と、
前記露先部材の先端側が挿入された前記袋状部の口部が閉じられる工程
とを具備する傘の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
第1の発明は傘である。前記傘はシート(傘布:傘地)を具備する。前記シートは、傘を開いた状態において、平面視では、一般的には正多角形状である。例えば、正八角形状である。勿論、是に限られない。前記シートの中央部には孔が設けられている。前記孔に傘のシャフトが挿通され、前記シート(傘布:傘地)の上から前記シャフトに石突(キャップ)が設けられる。これによって、前記シート(傘布:傘地)中央部が固定される。前記傘は親骨を具備する。前記親骨に前記シート(傘布:傘地)は取り付けられる。前記取付け方は固定方式が考えられる。面ファスナー(所謂、マジックテープ(登録商標))を用いたならば、前記シート(傘布:傘地)は前記親骨に対して着脱自在(着脱可能)となる。何れの取り付け方であっても良い。是によって、前記シートは親骨に保持される。前記傘は露先部材(所謂、露先)を具備する。前記露先部材の基端側が前記親骨に取り付けられる。一般的に、前記露先部材は直線状である。従来の一般的な形状・構造のものが用いられる。特許文献1,2の如きの特別な形状である必要はない。寧ろ、特別な形状・構造の露先ではないから、即ち、従来の一般的な傘の露先であるから、それだけ傘のコストが低廉である。尚、直線状とは、多少は湾曲(円弧状など)している場合も含まれる。それは本発明の本質的要素ではないからである。前記露先部材は前記親骨の先端に設けられる。例えば、筒状の露先の基端側が前記親骨の先端に差し込まれる。シート(傘布:傘地)に取り付けられた露先を前記親骨の先端に差し込む事によって取付が行われる。前記シート(傘布:傘地)には、前記露先部材の先端側が挿入される袋状部が設けられている。前記袋状部内に前記露先部材を差し込む(挿入する)だけで、前記露先部材の配置(配設)作業は終了する。是は至って簡単である。つまり、前記シート(傘布:傘地)に予め設けられていた袋状部内に前記露先部材を差し込む(挿入する)だけで、前記露先部材を覆う作業は終了する。