(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175433
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】マイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/08 20060101AFI20221117BHJP
C09B 11/28 20060101ALI20221117BHJP
C09D 11/17 20140101ALI20221117BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20221117BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C09B67/08 A
C09B11/28 F
C09D11/17
B43K7/00
B43K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081807
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小椋 孝介
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350GA04
4J039BC09
4J039BC29
4J039BC33
4J039BD03
4J039BE01
4J039BE10
4J039BE11
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039EA29
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロイコ色素を用いたマイクロカプセル顔料を提供する。
【解決手段】ロイコ色素、下式(I)で示される顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料。
〔式中、R1はHもしくはC1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基;R2はC2~12のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基;A1及びA2のいずれか一方はC1~2のアルキル基、他方はH;B1及びB2のいずれか一方はC1~2のアルキル基、他方はHである。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコ色素、下記式(I)で示される顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことを特徴とするマイクロカプセル顔料。
【化1】
〔上記式(I)中、R1は水素原子もしくは炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、R2は炭素数2~12のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、A1及びA2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、B1及びB2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、上記R1とR2は、共に同一であっても、異なっていてもよい。〕
【請求項2】
上記式(I)中、R1は水素原子若しくは炭素数1~2のアルキル基、R2は炭素数2~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、A1またはA2はメチル基およびB1またはB2はメチル基であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセル顔料。
【請求項3】
平均粒子径が0.1~5.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロカプセル顔料。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一つに記載のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする筆記具用インク組成物。
【請求項5】
請求項4記載の筆記具用インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物等に関し、更に詳しくは、ロイコ色素、この色素の顕色、消色機構を利用した熱変色性のマイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物、並びに、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロイコ色素の顕色、消色機構を利用した熱変色性の色材を用いた筆記具用インク組成物は、通常、上記色素をマイクロカプセル化した顔料を使用している。
【0003】
例えば、1)(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、特定式で示されるエステル化合物の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物を内包したマイクロカプセル顔料と、溶剤とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性筆記具用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)、
2)(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物として2,2′-ジメチル-4,4′(フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノールと、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物、及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(例えば、特許文献2参照)、
3)(A)少なくとも1つの電子供与性色素化合物、(B)少なくとも1つの電子受容体化合物、及び(C)特定式(I)で示される少なくとも1つの化合物を含む熱変色性顔料組成物であって、上記(B)として、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)が用いられること(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、この種の顕色効果は、上記各特許文献1~3に記載されているように、顕色効果をコントロールする顕色剤である電子受容性化合物(顕色剤)が特定の化合物に限定されており、該化合物を構成成分として適用した系のみで発現されるものであり、顕色剤(電子受容性化合物)の選択の自由度が未だ低く、材料選択の自由度が小さいといった課題があり、そのため、製造の負荷の向上と熱変色の多様化が未だ十分でないのが現状であり、また、更に発色性や消去(消色)性を良好としたマイクロカプセル顔料が切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-213361号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2018-123204号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特表2020-517759号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、顕色剤を選択する際の材料選択の自由度を増し、その量を設定する際の設定の自由度を広げると共に、製造の負荷の低減と、熱変色の多様化の向上を図り、マイクロカプセル顔料の利用度を更に高めると共に、更に発色性や消去(消色)性を良好としたマイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物、並びに、筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、ロイコ色素、特定の顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことにより、上記目的のマイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物、並びに、筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明のマイクロカプセル顔料は、ロイコ色素、下記式(I)で示される顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことを特徴とする。
【化1】
〔上記式(I)中、R1は水素原子もしくは炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、R2は炭素数2~12のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、A1及びA2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、B1及びB2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、上記R1とR2は、共に同一であっても、異なっていてもよい。〕
上記式(I)中、R1は水素原子若しくは炭素数1~2のアルキル基、R2は炭素数2~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、フエネチル基であり、A1またはA2はメチル基およびB1またはB2はメチル基であることが好ましい。
上記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.1~5.0μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の筆記具用インク組成物は、上記構成のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする。
本発明の筆記具は、上記構成の筆記具用インク組成物を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顕色剤を選択する際の材料選択の自由度を増し、その量を設定する際の設定の自由度を広げると共に、製造の負荷の低減と、熱変色の多様化の向上を図り、マイクロカプセル顔料の利用度を更に高めると共に、更に発色性や消去(消色)性を良好としたマイクロカプセル顔料、これを含有した筆記具用インク組成物、並びに、筆記具が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)~(e)は、本発明のマイクロカプセル顔料に用いる式(I)で示される顕色剤の具体例を示す各化合物の構造式を表す図面である。
【
図2】(f)~(j)は、
図1からの続きであり、本発明のマイクロカプセル顔料に用いる式(I)で示される顕色剤の具体例を示す各化合物の構造式を表す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0012】
本発明のマイクロカプセル顔料は、ロイコ色素、下記式(I)で示される顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことを特徴とするものである。
【化2】
〔上記式(I)中、R1は水素原子もしくは炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、R2は炭素数2~12のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、A1及びA2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、B1及びB2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、上記R1とR2は、共に同一であっても、異なっていてもよい。〕
【0013】
<ロイコ色素>
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
用いることができるロイコ色素として、例えば、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1(3H)-イソベンゾフラノン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-m-トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン(BLACK 100)、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン(S-205)、3-(N-エチル-p-メチルフェニルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ETAC)などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する前記化合物などの他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、クロロ基等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
更に、黄色~赤色の発色を発現させるピリジン系化合物、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物等も用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0014】
<顕色剤>
本発明に用いる上記式(I)で示される顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものである。
上記式(I)中において、R1は水素原子もしくは炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等などが挙げられる。R2は炭素数2~12の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基であり、A1及びA2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、また、B1及びB2のいずれか一方は炭素数1~2のアルキル基、他方は水素原子であり、上記R1とR2は、共に同一であっても、異なっていてもよい。
好ましくは、更に本発明の効果を発揮せしめる点から、上記式(I)中、R1は水素原子若しくは炭素数1~2のアルキル基、R2は炭素数2~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基であり、A1またはA2はメチル基およびB1またはB2はメチル基が望ましく、特に好ましくは、R1とR2の合計炭素数が4~8の範囲となるものが望ましい。
【0015】
具体的に用いることができる上記式(I)で示される顕色剤としては、例えば、
図1及び
図2の(a)~(j)の構造式で示される各化合物を挙げることができる。
具体的には、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-エチルヘキサン〔
図1(a)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-エチルブタン〔
図1(b)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-メチルペンタン〔
図1(c)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-フェニルエタン〔
図1(d)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-フェニルプロパン〔
図1(e)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-5-メチルペンタン〔
図1(f)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-6-メチルヘキサン〔
図1(g)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-7-メチルヘプタン〔
図1(h)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-8-メチルオクタン〔
図1(i)〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-9-メチルノナン〔
図1(j)〕であり、これらは少なくとも1種用いることができる。
用いる上記式(I)で示される顕色剤は、その製造法等は既知であり、従来のトリフェニルメタン系の化合物やビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)などの化合物等からなる顕色剤に較べ、顕色効果が同等以上に良好となるものであり、材料選択の自由度を増し、その量を設定する際の設定の自由度などを広げることができるものとなる。
【0016】
本発明においては、これらの顕色剤を1種又は2種以上組み合わせて用いること、または、従来公知の顕色剤を本発明の顕色剤の諸特性を損なわない範囲内で組み合わせて用いることにより、発色時の色彩濃度を従来よりも自由に調節することができる。従って、その使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、前記したロイコ色素1質量部に対して、0.1~100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0017】
<変色温度調整剤>
本発明に用いる変色温度調整剤は、前記ロイコ色素と上記(I)で示される顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
【0018】
用いることができる変色温度調整剤としては、具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、コハク酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、コハク酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)
エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、コハク酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。 前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)などの少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1~1000質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
なお、本発明のインク組成物の諸特性を損なわない範囲内であれば、この種の感温変色性組成物において従来公知の変色温度調整剤を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
<マイクロカプセル顔料>
本発明のマイクロカプセル顔料は、少なくともロイコ色素、上記式(I)で示される顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、好ましくは、平均粒子径が0.1~1.0μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0021】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱撹拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0022】
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1~100、変色温度調整剤1~100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1~1である。
本発明のマイクロカプセル顔料では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
【0023】
本発明のマイクロカプセル顔料、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などで形成されること、更に好ましくは、製造性、保存安定性、筆記性の点から、メラミン樹脂で形成されることが望ましい。
マイクロカプセル顔料の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
なお、壁膜がアミノ樹脂で形成するためには、各マイクロカプセル化法を用いる際に、好適なアミノ樹脂原料(メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、並びに、分散剤、保護コロイドなどを選択する。
【0024】
本発明のマイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制する点から、好ましくは、0.1~5.0μm、更に好ましくは、0.3~1.0μmであるものが望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒度分布測定装置〔粒子径測定器N4Plus(COULTER社製)〕にて、平均粒子径を測定した値である。
この平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5.0μmを越えると、筆記性の劣化やマイクロカプセル顔料の分散安定性の低下が発生し、好ましくない。
なお、上記平均粒子径の範囲(0.1~5.0μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の撹拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0025】
このように構成される本発明のマイクロカプセル顔料は、ロイコ色素を用いたマイクロカプセル顔料において、用いる顕色剤を選択する際の材料選択の自由度を増し、その量を設定する際の設定の自由度を広げると共に、製造の負荷の低減と、熱変色の多様化の向上を図り、マイクロカプセル顔料の利用度を更に高めることができ、しかも、従来の熱変色性の色材と同等以上の発色濃度、易消色性に優れ、筆記具用の熱変色性の色材として好適に用いることができ、溶媒種が水性、または、油性の筆記具用インク組成物の色材として用いても、その溶媒種等に影響を受けずに、上記効果を発揮することができるものである。
【0026】
<筆記具用インク組成物>
本発明の筆記具用インク組成物は、上記構成のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とするものであり、ボールペン用、マーキングペン用等の筆記具用インク組成物として用いることをできる。
本発明のマイクロカプセル顔料の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、5~30質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、10~25%とすることが望ましい。
このマイクロカプセル顔料の含有量が5%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30%を超えると、カスレが生じやすくなり、好ましくない。
【0027】
<筆記具用水性インク組成物>
本発明の筆記具用インク組成物において、水性では、上記マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0028】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
【0029】
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0030】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0031】
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0032】
<筆記具用油性インク組成物>
本発明の筆記具用インク組成物において、油性では、上記構成のマイクロカプセル顔料を含有すると共に、主溶剤として、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つとを含有することが好ましい。これらの溶剤を主溶剤として選択、使用することで、上記マイクロカプセル顔料の経時的な凝集を発生しないように作用するものである。
【0033】
用いるポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールは、各重合度のものが使用できるが、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、ポリプロピレングリコールでは重合度(重量平均)400~700の範囲の使用が好ましく、ポリブチレングリコールでは重合度(重量平均)500~700の範囲の使用が好ましい。
また、本発明で用いるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕はジグリセリンの水酸基にポリオキシプロピレンが付加重合したものである。本発明においてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕におけるオキシプロピレンの付加モル数(n)は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、4~25が好ましく、更に好ましくは4~14である。
【0034】
これらの主溶剤の含有量は、インク組成物中の全溶剤量に対して、50~100%とすることが好ましく、更に好ましくは、80~100%とすることが望ましい。この主溶剤の含有量が、50%以上とすることにより、経時的な凝集の発生を極力抑制することができる。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上記主溶剤の他、主溶剤と相溶する性質を有する溶剤、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールなどの溶剤を適宜含有することができる。
【0035】
この筆記具用油性インク組成物では、上記マイクロカプセル顔料、主溶剤の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、また、必要に応じて、油性インクに悪影響を及ぼさず相溶することができる樹脂や分散剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤等を含有することができる。
用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
【0036】
用いることができる分散剤として、上記に挙げたような樹脂の中からマイクロカプセル顔料を分散できるものを選択して使用することができ、界面活性剤やオリゴマーでも目的に沿うものであれば、含有することができる。
具体的な分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン-マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン-アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
また、防錆剤、防腐剤、潤滑剤としては、上述の水性で用いた各種の防錆剤、防腐剤、潤滑剤を用いることができる。
【0037】
この筆記具用油性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記マイクロカプセル顔料の他、上記油性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0038】
このように構成される本発明の筆記具用インク組成物では、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップを筆記先端部に備えたマーキングペン体や、ボールペンチップを筆記先端部に備えたボールペン体に搭載して使用に供される。
本発明の筆記具用インク組成物及び筆記具では、ロイコ色素、上記式(I)で示される顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料を含有する水性、または、油性のインクを処方し、このインクを搭載したボールペン体、マーキングペン体などの筆記具にて紙面等に筆記しても、経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができ、発色性、消去(消色)性に優れた筆記具用インク組成物、筆記具が得られるものとなる。
【実施例0039】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。なお、以下において、配合単位である「部」は質量部を意味する。
【0040】
〔マイクロカプセル顔料:A-1~A-11の処方、下記表1〕
(マイクロカプセル顔料:A-1)
下記表1に示される各量となるロイコ色素、顕色剤、及び変色性温度調整剤の組み合わせにて色材を得た。
具体的には、ロイコ色素として、ETAC(山田化学工業社製):1部、顕色剤として、
図1の(a)で表される顕色剤:3部、及び変色性温度調整剤として、ミリスチン酸ミリスチル:24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂〔ガンツレッツAN-179:ISP(株)社製〕40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱撹拌して直径約0.5~5.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、メラミン樹脂(スミテックスレジンM-3、(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間加熱してマイクロカプセル化を行い、膜剤がメラミン樹脂からなる可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル分散液を得た。この分散液を常温に冷却後、酸添加、濾別、水洗を行い、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、平均粒子径が2.3μmとなるパウダー状のマイクロカプセル顔料を得た。色相は、発色状態(例えば、25℃室温下)においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0041】
(マイクロカプセル顔料:A-2~A-11)
下記表1に示される各量となるロイコ色素、顕色剤、及び変色性温度調整剤の組み合わせで、他は上記A-1の処方と同様にして、パウダー状の各マイクロカプセル顔料を得た。
得られたマイクロカプセル顔料A-2~A-11の平均粒子径、色相(発色状態)を下記表1に示す。なお、マイクロカプセル顔料A-2~A-11においても、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0042】
【0043】
(実施例1~8及び比較例1~3)
(インクの処方)
上記製造例で得られたマイクロカプセル顔料(A-1~A-11)を用いて下記表2に示す配合処方にしたがって、常法により各水性のボールペン用水性インク組成物を調製した。
【0044】
(ボールペンの作製)
上記で得られた各インク組成物を用いてボールペンを作製した。具体的には、ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:UF-202〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ90mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各インクを充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、ボールペンを作製した。
得られた実施例1~8及び比較例1~3の各ボールペンを用いて、下記評価方法で発色性評価、消去性評価の各評価を行った。
これらの結果を下記表2に示す。
【0045】
(発色性の評価方法)
上記ペンを用いて5周のらせんをPPC用紙に筆記後、筆記描線の発色性を目視で、下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準:
A:とても濃く鮮やか
B:濃い
C:若干薄い
D:薄い
【0046】
(消去性の評価方法)
上記ペンを用いて5周のらせんをPPC用紙に筆記後、往復動作する機械に、UF-202-05のキャップ(三菱鉛筆株式会社製)からなる消し具と荷重500gを取り付け、筆記描線(塗膜)上を5往復させた。そのときの消去具合(消色状態)を下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準:
A:完全に消色した。
B:完全でないが消えている。
C:消えない箇所が多数ある。
D:消えない。
【0047】
【0048】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明となる実施例1~8の筆記具用インク組成物は、満足のいく十分な発色性、消色性となることが判明した。これにより、ロイコ色素を用いたマイクロカプセル顔料において、用いる顕色剤を選択する際の材料選択の自由度を増し、その量を設定する際の設定の自由度が広がると共に、製造の負荷の低減と、熱変色の多様化の向上が図られ、マイクロカプセル顔料の利用度を更に高めると共に、更に発色性や消去(消色)性を良好としたマイクロカプセル顔料得られること、この優れたマイクロカプセル顔料を含有した筆記具用インク組成物、このインク組成物を搭載した筆記具が得られることが確認された。