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特開2022-175454樹脂被覆波長変換粒子および光硬化性インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175454
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂被覆波長変換粒子および光硬化性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20221117BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20221117BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C09C3/10
C09D11/00
C09K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081837
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】591075467
【氏名又は名称】冨士色素株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311007545
【氏名又は名称】GSアライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】森 良平
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA13
4J037AA17
4J037AA30
4J037CC12
4J037CC13
4J037CC16
4J037CC23
4J037CC24
4J037EE04
4J037FF02
4J037FF22
4J039AD21
4J039BC20
4J039BE01
4J039CA01
4J039EA06
4J039EA28
(57)【要約】
【課題】量子ドット等の波長変換粒子が、光硬化性インク組成物中に使用される場合でも、波長変換粒子の波長変換特性を好適に維持することができる、樹脂被覆波長変換粒子、これを用いた光硬化性インク組成物、及び樹脂被覆波長変換粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子と、前記波長変換粒子を被覆し、透光性樹脂を含む第1被覆材と、前記第1被覆材を被覆し、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む第2被覆材と、を含む樹脂被覆波長変換粒子、これを用いた光硬化性インク組成物、及び樹脂被覆波長変換粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子と、
前記波長変換粒子を被覆し、透光性樹脂を含む第1被覆材と、
前記第1被覆材を被覆し、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む第2被覆材と、
を含む樹脂被覆波長変換粒子。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ化合物は、単数又は複数の脂肪族環とこれに直接結合する単数又は複数の酸素原子からなるものである、請求項1に記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【請求項3】
前記透光性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、又はポリオレフィン樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【請求項4】
前記波長変換粒子は、500~580nmに発光波長を有するか、又は600~680nmに発光波長を有するものである、請求項1~3いずれか1項に記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の樹脂被覆波長変換粒子と、
ラジカル重合性化合物と、
光重合開始剤と、
を含む光硬化性インク組成物。
【請求項6】
量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子が透光性樹脂を含む第1被覆材で被覆された第1被覆粒子と、脂環式エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含む分散体を、光照射下で噴霧して、前記脂環式エポキシ化合物が硬化した樹脂被覆波長変換粒子を得る工程を含む、樹脂被覆波長変換粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット等の波長変換粒子が樹脂で被覆された樹脂被覆波長変換粒子、これを用いた光硬化性インク組成物、及び樹脂被覆波長変換粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)などのフラットパネルディスプレイ市場では、画像表示における色再現性の向上が益々要求されている。この点に関し、近年、発光材料として、量子ドット(Quantum Dot、QD)が注目を集めている。例えば、バックライトから量子ドットを含む波長変換部材に励起光が入射すると、量子ドットが励起され蛍光を発光する。ここで異なる発光特性を有する量子ドットを用いることで、赤色光、緑色光、および青色光を発光させることができる。量子ドットによる蛍光は半値幅が小さいため、再現性に優れる。
【0003】
特許文献1には、このような波長変換膜を形成するための量子ドット含有重合性組成物として、(メタ)アクリレートモノマー等からなる重合体と亜リン酸トリエステルとを含む有機マトリックス中に、量子ドットを分散させた重合性組成物が提案されている。
【0004】
しかし、量子ドット等を使用する場合、ガスバリア層を設けないと、水・酸素により、量子ドットが劣化するため、耐久性が低くなるという問題があった。このためガラスで挟み込んで端部をシールする必要があり、コストアップ、重量アップ、可撓性がない等の原因となっていた。
【0005】
このようなディスプレイ用途以外にも、量子ドットを含有するインク組成物が知られている。例えば、量子ドットを含有する光硬化性インク組成物としては、特許文献2のように、量子ドットにリガンドを結合させて、エポキシ樹脂を含むUV硬化性樹脂中に分散させた光硬化性インク組成物が提案されている。
【0006】
また、樹脂で被覆した蛍光体顔料を使用する技術として、例えば特許文献3のように、蛍光体等の顔料をエポキシ樹脂等の樹脂で被覆したものを、カチオン重合性化合物に分散させた光硬化性インク組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-62458号公報
【特許文献2】特表2021-501230号公報
【特許文献3】特開2005-132874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~2のように、量子ドット又は有機蛍光体を被覆せずに、光硬化性インク組成物中にそのまま分散させると、組成物中に含まれる酸性基、重合時に生成するラジカルや酸などによって、量子ドット等が劣化するため、波長変換特性が低下するという問題があった。
【0009】
また、本発明者らの検討によると、特許文献3のように、量子ドット等を直接エポキシ樹脂で被覆したものを用いる場合、エポキシ樹脂と共に使用される酸発生剤等により、量子ドット等が劣化するため、得られる印刷物の波長変換特性が低下することが判明した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、量子ドット等の波長変換粒子が、光硬化性インク組成物中に使用される場合でも、波長変換粒子の波長変換特性を好適に維持することができる、樹脂被覆波長変換粒子、これを用いた光硬化性インク組成物、及び樹脂被覆波長変換粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、透光性樹脂を含む第1被覆材と、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む第2被覆材とで波長変換粒子を被覆することで、光硬化性インク組成物中に使用しても、波長変換粒子の波長変換特性が好適に維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の内容を含む。
【0013】
[1]量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子と、前記波長変換粒子を被覆し、透光性樹脂を含む第1被覆材と、前記第1被覆材を被覆し、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む第2被覆材と、を含む樹脂被覆波長変換粒子。
【0014】
[2]前記脂環式エポキシ化合物は、単数又は複数の脂肪族環とこれに直接結合する単数又は複数の酸素原子からなるものである、[1]に記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【0015】
[3]前記透光性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、又はポリオレフィン樹脂である、[1]又は[2]に記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【0016】
[4]前記波長変換粒子は、500~580nmに発光波長を有するか、又は600~680nmに発光波長を有するものである、[1]~[3]いずれかに記載の樹脂被覆波長変換粒子。
【0017】
[5][1]~[4]いずれかに記載の樹脂被覆波長変換粒子と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む光硬化性インク組成物。
【0018】
[6]量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子が透光性樹脂を含む第1被覆材で被覆された第1被覆粒子と、脂環式エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含む分散体を、光照射下で噴霧して、前記脂環式エポキシ化合物が硬化した樹脂被覆波長変換粒子を得る工程を含む、樹脂被覆波長変換粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の樹脂被覆波長変換粒子によると、量子ドット等の波長変換粒子が、光硬化性インク組成物中に使用される場合でも、波長変換粒子の波長変換特性を好適に維持することができる。その理由の詳細は明確でないが、波長変換粒子に対して、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む第2被覆材を設けることで、耐水性とガスバリア性が特に高められるため、波長変換粒子の劣化を抑制できると考えられる。また、予め透光性樹脂を含む第1被覆材を設けることで、脂環式エポキシ化合物と共に使用される酸発生剤等により、量子ドット等が劣化するのを抑制できると考えられる。
【0020】
また、本発明の光硬化性インク組成物によると、このような効果を奏する樹脂被覆波長変換粒子と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含むため、光硬化性インク組成物中に使用される場合でも、波長変換粒子の波長変換特性を好適に維持することができ、また、光硬化によって迅速にインクを硬化させることができる。
【0021】
更に、本発明の樹脂被覆波長変換粒子の製造方法によると、第1被覆粒子と、脂環式エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含む分散体を、光照射下で噴霧して、前記脂環式エポキシ化合物が硬化した樹脂被覆波長変換粒子を得る工程を含むため、樹脂被覆波長変換粒子を比較的均一な粒子径を有する微粒子として、連続的に安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<樹脂被覆波長変換粒子>
本発明の樹脂被覆波長変換粒子は、波長変換粒子と、前記波長変換粒子を被覆する第1被覆材と、前記第1被覆材を被覆する第2被覆材と、を含む。第1被覆材で波長変換粒子が被覆された1つの粒子(以下、「第1被覆粒子」という)中には、単数又は複数の波長変換粒子を含有していてもよい。また、第2被覆材で被覆された1つの粒子(以下、「第2被覆粒子」という場合がある)中(即ち、樹脂被覆波長変換粒子中)には、単数又は複数の第1被覆粒子を含有していてもよい。
【0023】
本明細書において、「被覆」とは被覆対象物の表面積の60%以上を被覆している状態をいい、好ましくは90%以上を被覆している状態であり、より好ましくは100%を被覆している状態である。また、「被覆」とは、粒子が層状に覆われている場合の他、母材中に粒子が分散している状態も包含する概念である。
【0024】
樹脂被覆波長変換粒子の形状としては、何れの形状でもよいが、インク等に添加して微細パターンを形成するのに適するなど観点から球状、楕球状などが好ましい。同様に、第1被覆粒子の形状としては、何れの形状でもよいが、インク等に添加して微細パターンを形成するのに適するなど観点から球状、楕球状などが好ましい。
【0025】
樹脂被覆波長変換粒子の好ましい粒子構造としては、複数の波長変換粒子が粒子状の第1被覆材中に分散しており、単数の第1被覆粒子を第2被覆材が層状に覆っている構造である。又は、単数の波長変換粒子を第1被覆材中が層状に覆っており、単数の第1被覆粒子を第2被覆材が層状に覆っている構造であることが好ましい。
【0026】
第2被覆粒子(樹脂被覆波長変換粒子)の平均粒子径(体積基準のD50)は、耐薬品性能、ガスバリア性能を確保しつつ、インク等に添加して微細パターンを形成するのに適するなどの観点からから、9~300nmが好ましく、90~150nmがより好ましい。
【0027】
第1被覆粒子の平均粒子径(体積基準のD50)は、第2被覆材の厚みを確保しつつ十分な発光強度を得る観点から、20~50nmが好ましく、20~30nmがより好ましい。
【0028】
樹脂被覆波長変換粒子において、波長変換粒子は、量子ドット又は有機蛍光体を含み、第1被覆材は透光性樹脂を含み、第2被覆材は脂環式エポキシ化合物の硬化物を含む。以下、各材料等について説明する。
【0029】
[波長変換粒子]
波長変換粒子は、量子ドット又は有機蛍光体の1種以上を含み、樹脂被覆波長変換粒子がこれらを含有することによって、波長変換機能を有するものとなる。
【0030】
量子ドット又は有機蛍光体の波長変換特性としては、特に限定されないが、樹脂被覆波長変換粒子の波長変換特性として、青色の励起光である400nm~480nm、好ましくは440~470nmの波長に対して、赤色光を発光させる場合、発光波長(ピーク波長)が600~680nmであることが好ましく、610nm~640nmであることがより好ましい。また、緑色の光を発光させる場合、発光波長(ピーク波長)が500~580nmであることが好ましく、520nm~560nmであることがより好ましい。
【0031】
(量子ドット)
量子ドットは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの粒子のことを指し、粒子サイズによって光学特性を調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持つ。本発明では、変換光の発光波長に応じて、半導体系量子ドット、炭素系量子ドット、シリコン量子ドット、ペロブスカイト型量子ドットなどを使用することができる。また、これらから選択した複数の量子ドットを用いて、各々の含有量を調整することで、所望の発光波長を得ることができる。
【0032】
樹脂被覆波長変換粒子における量子ドットの含有量は、被覆材の厚みや量を確保しつつ、十分な発光強度を得る観点から、1~10質量%が好ましく、2~6質量%がより好ましい。
【0033】
(炭素系量子ドット)
炭素系量子ドットは、炭素原子間のπ結合に起因して、粒径に依存した発光特性を有するものである。炭素系量子ドットとしては、グラフェン構造を有するグラフェン量子ドット、グラフェン構造を有しないカーボン量子ドット、これらを化学修飾した量子ドット等が挙げられるが、量子収率の観点からグラフェン量子ドット又は化学修飾したグラフェン量子ドットが好ましい。
【0034】
これらの炭素系量子ドットは、シグマ-アルドリッチ社、冨士色素株式会社、GSアライアンス株式会社、フナコシ株式会社、キシダ化学株式会社などから、市販されており、これらを何れも使用することができる。
【0035】
(グラフェン量子ドット)
グラフェン量子ドットとしては、非官能化グラフェン量子ドット、官能化グラフェン量子ドット、原初の(pristine)グラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
官能化グラフェン量子ドットは1つ以上の官能基で官能化されていてもよい。官能基には、酸素基、カルボキシル基、カルボニル基、非晶質炭素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、エステル、アミン、アミド、ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
また、グラフェン量子ドットには、1つ以上のアルキル基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットが含まれる。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびこれらの組み合わせが含まれる。幾つかの態様において、アルキル基にはオクチル基(例えば、オクチルアミン)が含まれる。
【0038】
また、グラフェン量子ドットは、1種以上のポリマー先駆物質で官能化することができる。例えば、グラフェン量子ドットは1種以上のモノマー(例えば、ビニルモノマー)で官能化することができる。
【0039】
グラフェン量子ドットは、重合するポリマー先駆物質で官能化することにより、ポリマー官能化グラフェン量子ドットを形成することができる。例えば、重合するビニルモノマーで端部を官能化することにより、端部官能化ポリビニルの付加物を形成することができる。
【0040】
グラフェン量子ドットは、1種以上の親水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。親水性官能基には、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0041】
グラフェン量子ドットは、1種以上の疎水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。疎水性官能基には、アルキル基、アリール基、およびこれらの組み合わせが含まれる。疎水性官能基には1種以上のアルキルアミドまたはアリールアミドが含まれる。
【0042】
グラフェン量子ドットは端部官能化グラフェン量子ドットを含む。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述した1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述したような1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、やはり前述したような1種以上の親水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の酸素の付加物が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の非晶質炭素の付加物が含まれる。
【0043】
グラフェン量子ドットは、アルキルアミドまたはアリールアミドなどの1種以上のアルキル基またはアリール基で端部が官能化されている。アルキル基またはアリール基を用いるグラフェン量子ドットの端部官能化は、グラフェン量子ドットの端部におけるアルキルアミドまたはアリールアミドのカルボン酸との反応によって行われる。
【0044】
グラフェン量子ドットには原初の(pristine)グラフェン量子ドットが含まれる。原初のグラフェン量子ドットは、合成後に未処理のままのグラフェン量子ドットを含む。原初のグラフェン量子ドットは、合成後にいかなる追加の表面変性も行われていないグラフェン量子ドットを含む。
【0045】
グラフェン量子ドットは様々な発生源から得ることができる。例えば、グラフェン量子ドットには、石炭由来のグラフェン量子ドット、コークス由来のグラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが含まれる。グラフェン量子ドットにはコークス由来のグラフェン量子ドットが含まれる。グラフェン量子ドットには石炭由来のグラフェン量子ドットが含まれる。石炭には、(これらに限定はされないが)無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、変性瀝青炭、アスファルテン、アスファルト、泥炭、亜炭、ボイラー用炭、石化油(petrified oil)、カーボンブラック、活性炭、およびこれらの組み合わせが含まれる。炭素源は瀝青炭である。炭素には瀝青炭が含まれる。
【0046】
グラフェン量子ドットは様々な直径を有することができる。例えば、グラフェン量子ドットは約1nmから約100nmまでの範囲の直径を有することが好ましく、約1nmから約50nmまでの範囲の直径を有することがより好ましく、約1nmから約20nmまでの範囲の直径を有することが更に好ましい。
【0047】
グラフェン量子ドットはまた、様々な構造を有することもできる。例えば、グラフェン量子ドットは結晶質の構造を有していてもよく、例えば結晶質の六方晶構造を有する。グラフェン量子ドットは単層又は複層を有していてもよく、例えばグラフェン量子ドットはおよそ2つの層からおよそ4つの層までを有する。
【0048】
グラフェン量子ドットは、様々な量子収率を有することもできる。グラフェン量子ドットは約30~80%までの範囲の量子収率を有することが好ましい。また、グラフェン量子ドットの水分散体における蛍光特性は、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長が380nm~650nmであることが好ましい。
【0049】
グラフェン量子ドットは粉末の形態であってもよく、ペレットの形態であってもよい。グラフェン量子ドットは液体状態であってもよく、分散液、溶液、溶融した状態であってもよい。
【0050】
グラフェン量子ドットを形成するために、様々な方法を利用することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成する工程は、炭素源を酸化剤に曝し、その結果としてグラフェン量子ドットを形成することを含むことができる。炭素源には、石炭、コークス、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
酸化剤には酸が含まれ、酸には、硫酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、発煙硫酸、塩化水素酸、オレウム、クロロスルホン酸、およびこれらの組み合わせが含まれる。また、酸化剤には、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、次亜リン酸、硝酸、硫酸、過酸化水素、およびこれらの組み合わせが含まれる。好ましい酸化剤は過マンガン酸カリウム、硫酸および次亜リン酸の混合物である。
【0052】
酸化剤の存在下で炭素源を音波処理することによって炭素源は酸化剤に曝される。酸化剤の存在下で炭素源を加熱することが含まれる。加熱は少なくとも約100℃の温度において行われる。
【0053】
グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法の使用も想定することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法は、国際特許出願であるPCT/US2014/036604号に開示されている。グラフェン量子ドットを製造するさらなる適当な方法は、次の参考文献にも開示されている:ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 7041-7048;および、Nature Commun. 2013, 4:2943, 1-6。
【0054】
(カーボン量子ドット)
カーボン量子ドットは、グラフェンのような環状構造を持っていない量子ドットである。pH値によってグラフェン量子ドットより影響を受け易く、発光強度、ピーク位置が変化する性質を有する。
【0055】
カーボン量子ドットは様々な直径を有することができる。例えば、カーボン量子ドットは約1nmから約100nmまでの範囲の直径を有することが好ましく、約1nmから約50nmまでの範囲の直径を有することがより好ましく、約1nmから約30nmまでの範囲の直径を有することが更に好ましい。
【0056】
カーボン量子ドットはまた、様々な量子収率を有することもできる。カーボン量子ドットは約20~50%までの範囲の量子収率を有することが好ましい。また、カーボン量子ドットの水分散体における蛍光特性は、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長が380nm~600nmであることが好ましい。
【0057】
カーボン量子ドットの製造方法は、グラフェン量子ドットの製造方法と大差はなく、使用原料や製造条件がグラフェン構造を形成し易いか否かの違いのみである。
【0058】
従って、両者を含む炭素系量子ドットは、例えば、炭素ターゲットをレーザーアブレーション(laserablation)後、化学処理を実施して製造する手法(特表2012-501863号公報)や蝋燭の煤から製造する手法(H. Liu, et al., Angew. Chem.Int. Ed. 2007, 46, 6473-6475.)、グラファイト酸化物を化学処理して製造する手法(G. Eda, et al., Adv. Mater.2010, 22, 505-509.)、グラファイト酸化物を前駆体とする化学反応から製造する手法(特開2012-136566号公報)、フラーレンの転換反応から製造する手法(J. Lu, et al., Nature Nanotech.2011, 6, 247-252.)、更に、炭素繊維や活性炭など、より安価な炭素原料を化学処理して製造する手法(J. Peng, et al., Nano Lett. 2012, 12, 844-849.、Z.A. Qiao, ChemCommun. 2010, 46,8812-8814.、Y. Dong, et al., Chem. Mater.2010, 22, 5895-5899.)で製造することも可能である。
【0059】
なお、これらの手法は、大別してトップダウン(top-down)の手法であるが、有機前駆体分子のポリマー化から炭素量子ドットを製造するボトムアップ(bottom-up)の手法(G. A. Ozin, et al., J. Mater. Chem., 2012, 22, 1265-1269.)でも製造可能である。
【0060】
また、炭素材と過酸化水素とを混合し、過酸化水素により炭素を分解反応させ、炭素量子ドット生成液を調製する工程と、炭素量子ドット生成液中の炭素量子ドットと過酸化水素を分離して分解反応を停止させ、炭素量子ドットを取得する工程と、を含む炭素量子ドットの製造方法(特開2014-133685号公報)で製造することも可能である。
【0061】
(炭素系量子ドットの波長変換特性)
炭素系量子ドットを用い場合の波長変換特性(蛍光特性)としては、汎用性の高い蛍光材料とする観点から、励起光300nm~470nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長(ピーク波長)が400nm~750nmであることが好ましく、発光波長が450nm~650nmであることがより好ましく、発光波長が500nm~600nmであることが更に好ましい。このような発光波長は、単結晶YAG・Ceとほぼ同じ領域の発光となる。
【0062】
また、発光ピーク波長を中心とした発光の半値幅が40nm~100nmであることが好ましく、発光波長が400nm~700nmであることがより好ましく、発光波長が420nm~750nmであることが更に好ましい。
【0063】
なお、このような蛍光特性を得る観点から、原料となる炭素系量子ドットの水分散体における蛍光特性としては、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長(ピーク波長)が380nm~600nmであることが好ましく、発光波長が400nm~550nmであることがより好ましく、発光波長が420nm~500nmであることが更に好ましい。
【0064】
また、蛍光体組成物の量子収率(発光効率)は、25%以上が好ましく、さらに50%以上がより好ましく、特に70~80%が好ましい。
【0065】
(シリコン量子ドット)
半導体はナノ粒子化すると、量子サイズ効果(閉じ込め効果)によりバンド構造が変化し、粒径に応じた色の蛍光を示す。シリコン量子ドットは、代表的なIV族半導体の量子ドットである。
【0066】
シリコン量子ドットの合成法の代表的なものとして、シリコンウェハーのエッチングが挙げられる。フッ化水素酸(HF)を用いた電解エッチングによりバルクのシリコンを微細化することで、ナノ粒子を得ることができる。このとき、得られる粒子の粒径は、エッチング時間などで制御することが可能である。比較的多い量の粒子を生成できるボトムアップ的な合成法としては、シラン(SiH)の熱分解による粒子合成が知られている。シランの熱分解によってSi原子が生成され、これが過飽和となり、核発生・成長することで粒子が生成される。このとき生成される粒子はサイズが比較的大きいため、その後フッ化水素酸(HF)/硝酸(HNO)の混合液によって粒子をエッチングすることで、量子サイズ効果が現れる領域まで粒径を小さくしている。
【0067】
エッチングの過程を経ずに一段階でシングルナノメートルの粒子を合成する方法として、プラズマCVD法を用いた合成方法も知られている。前駆体である四臭化ケイ素(SiBr)をRFプラズマ場で分解してSi原子を生成し、これを反応器内で核発生・成長させることで、ナノ粒子を生成させることができる。
【0068】
シリコン量子ドットは、GSアライアンス株式会社、シグマ-アルドリッチ社などから市販されており、それらを使用することが可能である。市販されているシリコン量子ドットは、サイズが数Åから10nm以下の大きさであり、量子収率は約20~30%である。
【0069】
シリコン量子ドットは、粒子径に応じた発光波長とすることができ、本発明では、緑色~黄色を得るための波長変換粒子、又は赤色を得るための波長変換粒子の両者に使用することができる。
【0070】
シリコン量子ドットを含む樹脂被覆波長変換粒子では、青色の励起光である400nm~470nmの波長に対して、赤色光を発光させる場合、発光波長(ピーク波長)が610nm~640nmであることが好ましく、発光波長が620nm~640nmであることがより好ましい。また、緑色~黄色の光を発光させる場合、発光波長(ピーク波長)が520nm~560nmであることが好ましく、発光波長が530nm~550nmであることがより好ましい。
【0071】
(ペロブスカイト型量子ドット)
ペロブスカイト型量子ドットは、ペロブスカイト結晶構造を有するものである。一般的にペロブスカイト結晶構造は、イオンA、イオンBおよびイオンXを用いたABXの組成式で表され、8つの頂点にイオンAが、6つの面の中心にイオンXが、格子の中心部分にイオンBが存在し、イオンBがイオンAより比較的小さいため、イオンBが動きやすいことに起因して正負の電荷の重心が分かれた状態になることができる。ペロブスカイト型量子ドットにおいて、イオンXはハロゲン原子(好ましくは、F、Cl、Br、I)であることが好ましく、イオンAはCsであることが好ましく、イオンBはPbであることが好ましい。
【0072】
ペロブスカイト型量子ドットは、一般式(1):CsPbY(上記一般式(1)中、YおよびZはそれぞれ独立して、F、Cl、BrまたはIを表し、aおよびbはそれぞれ独立して、0以上3以下の実数を表し、a+b=3である。)であることが好ましい。また、CHNHPbX(X=Cl,Br,I)の組成であるものも使用できる。
【0073】
ペロブスカイト型量子ドットは、赤色光を発光するペロブスカイト型量子ドットから選択される少なくとも1種の量子ドットを含むことが好ましい。量子ドットなどの発光用ナノ結晶の発光色は、量子ドットの粒子径と発光用ナノ結晶が有するエネルギーギャップとに依存するため、使用するペロブスカイト型量子ドットの種類とその粒子径を調整することにより発光色を選択することができる。
【0074】
市販されているペロブスカイト型量子ドットは、ペロブスカイト型化合物をナノ結晶化したものであり、CHNHPbX、CsPbX(X=Cl,Br,I)が代表的な組成である。また、量子収率は約50~80%であり、半値幅は約18nm~39nmである。
【0075】
ペロブスカイト型量子ドットを含む樹脂被覆波長変換粒子では、青色LEDの励起光である400nm~470nmの波長に対して、赤色光を発光させる場合、発光波長(ピーク波長)が610nm~650nmであることが好ましく、発光波長が615nm~635nmであることがより好ましい。
【0076】
(半導体系量子ドット)
半導体系量子ドットとしては、II-VI族、III-V族、IV-VI族、及びIV族半導体を含む任意のタイプの半導体が挙げられる。好適な半導体材料としては、限定はされないが、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、AlCO、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0077】
また、コアシェル構造を有する半導体系量子ドットを用いることも可能である。その場合、コア材料としては、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、及びInSbからなる群から選択されるIII-V族ナノ結晶が好ましい。
【0078】
シェル材料としては、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、Co、Au、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、AlCO、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
また、コア材料をドープすることも可能であり、ドーパントとしては、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、CuInS、CuInSe、AlN、AlP、AlAs、GaN、GaP、又はGaAsが挙げられる。
【0080】
代表的な半導体系量子ドットとしては、ZnS、InP/ZnS、CdS、CdSe、CuInS(CIS)、CuInSe、CuInS/ZnS、PbS、AgInSなどが挙げられる。
【0081】
半導体系量子ドットの場合、半導体の種類、構造、粒子径などによって、発光波長を変えることができるが、本発明に使用することが好ましい半導体系量子ドットの平均粒子径は、2~10nmであり、3~6nmがより好ましい。
【0082】
(有機蛍光体)
有機蛍光体の材料としては、例えば、アクリジンオレンジ、アミノアクリジン、キナクリン、アニリノナフタレンスルホン酸誘導体、アンスロイルオキシステアリン酸、オーラミンO、クロロテトラサイクリン、メロシアニン、1,1’-ジヘキシル-2,2’-オキサカルボシアニンのようなシアニン系色素、ダンシルスルホアミド、ダンシルコリン、ダンシルガラクシド、ダンシルトリジン、ダンシルクロリドのようなダンシルクロライド誘導体、ジフェニルヘキサトリエン、エオシン、ε-アデノシン、エチジウムブロミド、フルオレセイン、フォーマイシン、4-ベンゾイルアミド-4’-アミノスチルベン-2,2’-スルホン酸、β-ナフチル3リン酸、オキソノール色素、パリナリン酸誘導体、ペリレン、N-フェニルナフチルアミン、ピレン、サフラニンO、フルオレスカミン、フルオレセインイソシアネート、7-クロロニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾル、ダンシルアジリジン、5-(ヨードアセトアミドエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸、5-ヨードアセトアミドフルオレセイン、N-(1-アニリノナフチル4)マレイミド、N-(7-ジメチル-4-メチルクマニル)マレイミド、N-(3-ピレン)マレイミド、エオシン-5-ヨードアセトアミド、フルオレセインマーキュリーアセテート、2-(4’-(2’’-ヨードアセトアミド))アミノナフタレン-6-スルホン酸、エオシン、ローダミン誘導体、有機EL色素、有機ELポリマーや結晶、デンドリマー等を挙げることができる。
【0083】
有機蛍光体は、第1被覆材中に分散していてもよく、溶解していてもよい。有機蛍光体が分散している場合の平均粒子径としては、例えば30~50nm程度である。
【0084】
樹脂被覆波長変換粒子における有機蛍光体の含有量は、被覆材の厚みや量を確保しつつ、十分な発光強度を得る観点から、1~10質量%が好ましく、2~6質量%がより好ましい。
【0085】
[第1被覆材]
波長変換粒子を被覆する第1被覆材は、透光性樹脂を含んでいる。透光性樹脂を含む第1被覆材で波長変換粒子を被覆することで、脂環式エポキシ化合物の硬化に必要な酸の影響を抑制して、波長変換粒子の劣化を抑制することができる。
【0086】
樹脂被覆波長変換粒子における第1被覆材の含有量は、第2被覆材の厚みや量を確保しつつ、十分なバリア効果を得る観点から、10~40質量%が好ましく、20~35質量%がより好ましい。
【0087】
(透光性樹脂)
透光性樹脂としては、透光性の樹脂であれば何れも使用でき、例えばビニル系ポリマーおよびコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー等の一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0088】
透光性樹脂は、疎水性であることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、又はポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0089】
透光性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、核剤、透明化剤、光安定剤、帯電防止剤 などを添加することも可能である。
【0090】
[第2被覆材]
第1被覆材(第1被覆粒子)を被覆する第2被覆材は、脂環式エポキシ化合物の硬化物を含むが、脂環式エポキシ化合物は、酸触媒の存在下で硬化させることができる。酸触媒の存在下で硬化させる場合、脂環式エポキシ化合物に光酸発生剤などの開始剤を添加したり、脂環式エポキシ化合物を酸性溶液に添加したりすることで、硬化させることができる。従って、脂環式エポキシ化合物の硬化物には、脂環式エポキシ化合物に由来する成分だけでなく、光酸発生剤などの開始剤に由来する成分を含有していてもよい。
【0091】
第2被覆材が脂環式エポキシ化合物の硬化物を含むことにより、被覆材の耐水性とガスバリア性が特に高められるため、波長変換粒子の劣化を抑制できる。
【0092】
樹脂被覆波長変換粒子における第2被覆材の含有量は、第1被覆粒子の大きさや機能を確保しつつ、十分な耐水性とガスバリア性を得る観点から、60~85質量%が好ましく、70~85質量%がより好ましい。
【0093】
(脂環式エポキシ化合物)
脂環式エポキシ化合物とは、1分子内に脂環式エポキシ基を1つ又は2つ以上含有する化合物をいうが、2つ以上含有する化合物の方がカチオン触媒との反応性の観点から好ましい。脂環式エポキシ化合物は、一種のみであってもよく、構造の異なる二種以上であってもよい。なお以下において、脂環式エポキシ化合物に関する含有量とは、構造の異なる二種以上の脂環式エポキシ化合物を用いる場合には、これらの合計含有量をいうものとする。脂環式エポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物と比べて光照射による硬化性が良好である。光硬化性に優れる重合性化合物を用いることは、生産性を向上させることに加え、光照射側と非照射側とで均一な物性を有する層を形成できる点でも有利である。なおエポキシ化合物は、一般に、光硬化時の硬化収縮が少ない傾向もある。
【0094】
脂環式エポキシ化合物は、少なくとも1つの脂環式エポキシ基を有する。ここで脂環式エポキシ基とは、エポキシ環と飽和炭化水素環との縮環を有する1価の置換基をいい、好ましくはエポキシ環とシクロアルカン環との縮環を有する1価の置換基である。より好ましい脂環式エポキシ化合物としては、エポキシ環とシクロヘキサン環が縮環した下記構造を1分子中に1つ以上有するものを挙げることができる。
【0095】
【化1】
【0096】
上記構造は、1分子中に2つ以上含まれていてもよく、好ましくは1分子中に1つまたは2つ含まれる。また、上記構造は、1つ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1~6のアルキル基)、水酸基、アルコキシ基(例えば炭素数1~6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基等を挙げることができる。上記構造は、無置換であることが好ましい。
【0097】
また、脂環式エポキシ化合物は、脂環式エポキシ基以外の重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基とは、ラジカル重合、またはカチオン重合によって重合反応を起こすことができる官能基を指し、例えば(メタ)アクリロイル基を挙げることができる。
【0098】
脂環式エポキシ化合物として好適に使用できる市販品としては、(株)ダイセルのセロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド3000、セロキサイド8000、サイクロマーM100、エポリードGT301、エポリードGT401、シグマアルドリッチ社製の4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、日本テルペン化学(株)のD-リモネンオキサイド、新日本理化(株)のサンソサイザーE-PS等を挙げることができる。これらは、一種単独で、または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0099】
中でも、透明性、耐水性、ガスバリア性、耐光性、などの観点からは、単数又は複数の脂肪族環とこれに直接結合する単数又は複数の酸素原子からなる脂環式エポキシ化合物が特に好ましい。このような脂環式エポキシ化合物としては、下記の脂環式エポキシ化合物が、それぞれENEOS社製のエポカリックTHI-DE,DE-102,DE-103として入手することができる。
【0100】
【化2】
【0101】
また、脂環式エポキシ化合物は、公知の合成方法により製造することもできる。その合成方法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213~、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds-Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村,接着,29巻12号,32,1985、吉村,接着,30巻5号,42,1986、吉村,接着,30巻7号,42,1986、特開平11-100378号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0102】
脂環式エポキシ化合物に加えて、オキセタン化合物を併用することができる。オキセタン化合物としては、オキセタン構造を一分子内に一つ以上有するものであれば特に制限はなく、一分子内に二つ以上有することもできる。
【0103】
具体的化合物例としては、2-エチルへキシルオキセタン(東亜合成株式会社製 アロンオキセタンOXT-212)、キシリレンビスオキセタン(東亜合成株式会社製 アロンオキセタンOXT-121)、3-エチル-3{[メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成株式会社製 アロンオキセタンOXT-221)、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 OXE-10)、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製 OXE-30)等が挙げられる。
【0104】
また、脂環式エポキシ化合物に加えて、グリシジル型エポキシ化合物を併用することができる。
【0105】
(光酸発生剤)
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、およびそれらの混合物などを使用することができる。
【0106】
これらの化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン-4-ナフトキノンジアジドスルフォネート、4-N-フェニルアミノ-2-メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、4-N-フェニルアミノ-2-メトキシフェニルジアゾニウムp-エチルフェニルスルフェート、4-N-フェニルアミノ-2-メトキシフェニルジアゾニウム2-ナフチルスルフェート、4-N-フェニルアミノ-2-メトキシフェニルジアゾニウムフェニルスルフェート、2,5-ジエトキシ-4-N-4'-メトキシフェニルカルボニルフェニルジアゾニウム-3-カルボキシ-4-ヒドロキシフェニルスルフェート、2-メトキシ-4-N-フェニルフェニルジアゾニウム-3-カルボキシ-4-ヒドロキシフェニルスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α-メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレート、みどり化学社製MPI-103(CAS.NO.(87709-41-9))、みどり化学社製BDS-105(CAS.NO.(145612-66-4))、みどり化学社製NDS-103(CAS.NO.(110098-97-0))、みどり化学社製MDS-203(CAS.NO.(127855-15-5))、みどり化学社製Pyrogallol tritosylate(CAS.NO.(20032-64-8))、みどり化学社製DTS-102(CAS.NO.(75482-18-7))、みどり化学社製DTS-103(CAS.NO.(71449-78-0))、みどり化学社製MDS-103(CAS.NO.(127279-74-7))、みどり化学社製MDS-105(CAS.NO.(116808-67-4))、みどり化学社製MDS-205(CAS.NO.(81416-37-7))、みどり化学社製BMS-105(CAS.NO.(149934-68-9))、みどり化学社製TMS-105(CAS.NO.(127820-38-6))、みどり化学社製NB-101(CAS.NO.(20444-09-1))、みどり化学社製NB-201(CAS.NO.(4450-68-4))、みどり化学社製DNB-101(CAS.NO.(114719-51-6))、みどり化学社製DNB-102(CAS.NO.(131509-55-2))、みどり化学社製DNB-103(CAS.NO.(132898-35-2))、みどり化学社製DNB-104(CAS.NO.(132898-36-3))、みどり化学社製DNB-105(CAS.NO.(132898-37-4))、みどり化学社製DAM-101(CAS.NO.(1886-74-4))、みどり化学社製DAM-102(CAS.NO.(28343-24-0))、みどり化学社製DAM-103(CAS.NO.(14159-45-6))、みどり化学社製DAM-104(CAS.NO.(130290-80-1)、CAS.NO.(130290-82-3))、みどり化学社製DAM-201(CAS.NO.(28322-50-1))、みどり化学社製CMS-105、みどり化学社製DAM-301(CAS.No.(138529-81-4))、みどり化学社製SI-105(CAS.No.(34694-40-7))、みどり化学社製NDI-105(CAS.No.(133710-62-0))、みどり化学社製EPI-105(CAS.No.(135133-12-9))、ダイセルUCB社製UVACURE1591、ランベルティ-社製ESACURE-1064などを挙げることができる。
【0107】
なかでも光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、およびパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルフォニウム塩を挙げることができる。
[その他の成分]
第2被覆材には、本発明の効果を損なわない範囲で、光増感剤、重合禁止剤、などを添加することも可能である。
【0108】
[樹脂被覆波長変換粒子の用途]
樹脂被覆波長変換粒子は、印刷インキ、インクジェットインク、塗料、加工顔料、機能性色素、それらの原料となる分散体、顔料成分などとして使用することができる。
【0109】
樹脂被覆波長変換粒子は、耐酸性、耐酸化性、耐水性などを有するため、光硬化性インク、
水性インク、水性塗料などに好適に使用することができる。
【0110】
<光硬化性インク組成物>
光硬化性インク組成物は、以上のような樹脂被覆波長変換粒子と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、を含むものである。
【0111】
光硬化性インク組成物における樹脂被覆波長変換粒子の含有量は、印刷物の強度と耐久性を確保しつつ、印刷後の発光強度を得る観点から、5~75質量%が好ましく、20~75質量%がより好ましい。
【0112】
[ラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物は特に限定されるものではないが、硬化後の硬化被膜の透明性、密着性等の観点からは、単官能または多官能(メタ)アクリレートモノマー等の(メタ)アクリレート化合物や、そのポリマー、プレポリマー等が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、アクリレートとメタクリレートとの少なくとも一方、または、いずれかの意味で用いるものとする。「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0113】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリル酸およびメタクリル酸、それらの誘導体、より詳しくは、(メタ)アクリル酸の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を分子内に1個有するモノマーを挙げることができる。それらの具体例として以下に化合物を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0114】
メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~30であるアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル基の炭素数が7~20であるアラルキル(メタ)アクリレート;ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル基の炭素数が2~30であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(モノアルキルまたはジアルキル)アミノアルキル基の総炭素数が1~20であるアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテルの(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールブチルエーテルの(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルの(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルの(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールのモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールのモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ヘプタプロピレングリコールのモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のアルキレン鎖の炭素数が1~10で末端アルキルエーテルの炭素数が1~10のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの(メタ)アクリレート;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルの(メタ)アクリレート等のアルキレン鎖の炭素数が1~30で末端アリールエーテルの炭素数が6~20のポリアルキレングリコールアリールエーテルの(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチレンオキシド付加シクロデカトリエン(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する総炭素数4~30の(メタ)アクリレート;ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート等の総炭素数4~30のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレン鎖の炭素数が1~30のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0115】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、炭素数が4~30のアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、炭素数12~22のアルキル(メタ)アクリレートを用いることが、量子ドットの分散性向上の観点から、より好ましい。量子ドットの分散性が向上するほど、波長変換層から出射面に直行する光量が増えるため、正面輝度および正面コントラストの向上に有効である。具体的には、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、オレイル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等が好ましい。中でもラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0116】
また、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、波長変換層の酸素透過係数の更なる低減や他の層または部材との密着性向上の観点から、ヒドロキシル基およびアリール基からなる群から選択される1つ以上の基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。
【0117】
単官能(メタ)アクリレート化合物が有する基としては、ヒドロキシ基およびフェニル基が好ましい。好ましい具体的な化合物としては、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、4―ヒドロキシブチルアクリレートを挙げることができる。
【0118】
(メタ)アクリル酸の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を1分子内に1個有するモノマーと共に、(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを併用することもできる。
【0119】
2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられる。
【0120】
また、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ECH(エピクロロヒドリン)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられる。
【0121】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、紫外線あるいは可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されない。例えば、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系の光重合開始剤が挙げられる。
【0122】
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4'-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4'-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジ(メトキシカルボニル)-4,4'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4'-ジ(メトキシカルボニル)-4,3'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4'-ジ(メトキシカルボニル)-3,3'-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(4'-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3',4'-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2',4'-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2'-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4'-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2'-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4'-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。
【0123】
光重合開始剤の含有量は、光硬化性インク組成物の総量の1~20質量%であると、紫外線に対する光硬化性に優れるため好ましく、より好ましくは2~15質量%であり、さらに好ましくは3~10質量%である。
【0124】
[その他の成分]
光硬化性インク組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を添加することができる。その他の成分としては、重合禁止剤、フィラー類、顔料・染料、各種コーティング用添加剤(レべリング、消泡、粘度調整)が挙げられる。
【0125】
[光硬化性インク組成物の用途]
光硬化性インク組成物は、樹脂被覆波長変換粒子を含むため、蛍光特性を利用した種々の用途、例えば、ディスプレイ用等の波長変換部材、蛍光印刷物、蛍光ラベル などに使用することができる。特に、バックライトからの青色光を部分的に赤色光、緑色光に変換するための波長変換部材を製造するためのインクジェットインク、オフセットインクとして、効果的に使用することができる。
【0126】
特に光硬化性インク組成物をバックライト用に用いる場合、インクジェットインクの光硬化性インク組成物の粘度としては、1~100mPa・sが好ましく、オフセットインクの光硬化性インク組成物の粘度としては、10~100Pa・sが好ましい。
【0127】
<樹脂被覆波長変換粒子の製造方法>
前述した樹脂被覆波長変換粒子は、本発明の製造方法により好適に製造することができる。即ち、本発明の製造方法は、量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子が透光性樹脂を含む第1被覆材で被覆された第1被覆粒子と、脂環式エポキシ化合物と、光酸発生剤と、を含む分散体を、光照射下で噴霧して、前記脂環式エポキシ化合物が硬化した樹脂被覆波長変換粒子を得る工程(以下、「噴霧工程」という)を含むことを特徴とする。
【0128】
なお、前述した樹脂被覆波長変換粒子は、本発明の製造方法とは異なる方法でも製造することができ、例えば第1被覆粒子と、脂環式エポキシ化合物とを含む分散体を噴霧して、酸性溶液に接触させることで、前記脂環式エポキシ化合物が硬化した樹脂被覆波長変換粒子を得ることも可能である。以下、本発明の製造方法について説明する。
【0129】
[第1被覆粒子の作製工程]
量子ドット又は有機蛍光体を含む波長変換粒子が透光性樹脂を含む第1被覆材で被覆された第1被覆粒子を作製する方法としては、透光性樹脂を溶媒に溶解させつつ波長変換粒子を分散させた樹脂溶液をスプレー(噴霧)して溶媒を乾燥固化させる方法、波長変換粒子を透光性樹脂中に分散させた混合物を微粉砕する方法する方法が挙げられる。使用原料としては、前述した量子ドット、有機蛍光体、透光性樹脂などが何れも使用できる。
【0130】
溶媒としては、透光性樹脂が溶解可能な溶媒を何れも使用することができる。スプレー法における樹脂溶液中の樹脂濃度は、乾燥速度と粘度等の観点から、10~30質量%が好ましい。
【0131】
量子ドット又は有機蛍光体の分散性を高めるために、表面改質を行なったり、分散剤やカップリング剤を添加することも可能である。また、溶媒中に分散した波長変換粒子を使用する場合、溶媒を置換することが好ましい場合がある。例えば水性溶媒に分散した量子ドットの溶媒を有機溶媒に置換することなどが好ましい場合がある。
【0132】
[噴霧工程]
噴霧工程における光酸発生剤の使用量としては、脂環式エポキシ化合物の十分な硬化性を確保しつつ、緻密な樹脂被覆波長変換粒子を得る観点から、1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。なお、噴霧工程における分散体には、必要に応じて、溶媒等を含有させることも可能である。
【0133】
噴霧工程における光照射の条件としては、噴霧により脂環式エポキシ化合物が硬化可能であればよく、硬化速度の観点から、紫外線による照射が好ましい。また、気流を発生させて噴霧粒子の滞留時間を増加させることも可能である。
【0134】
噴霧により得られた被覆波長変換粒子は、後硬化処理、分級、表面処理、解砕などの処理を行なってもよい。
【実施例0135】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0136】
(1)蛍光スペクトルの測定
評価用ペレットを硬化させて、サイズΦ1mmの測定用試料を作成し、蛍光分光光度計(RF-5300PC、島津製作所製)を用いて蛍光スペクトルを測定した。
【0137】
(2)青色光の耐久性の評価
評価用ペレットを用いて、消費電力20Wのドミナント光450nmの青色LEDによる投光器下(照射距離30cm)で6ヶ月間放置し、6ヶ月間放置後の発光の維持状態を目視で調べた。早期に発光が消失するものについては、何日間で発光が消失するかについて評価した。
【0138】
(3)粒子径の測定
粒子を濃度0.05質量%で溶媒(キシレン)中に超音波分散し、動的光散乱法 式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)社製、UPA-EX150)を用いて、粒度分布を測定した。平均粒子径は体積基準のメジアン径(中位径、頻度の累積が50%になる粒子径、D50)で求めた。
【0139】
<実施例1>(QD/PMMA/THI-DE/TMP-A)
容器中で、アクリル樹脂(三菱ケミカル社製、PMMAペレット)5gをアセトン100mlに溶解し、樹脂溶液とした。この樹脂溶液に、InP/ZnS量子ドット(GSアライアンス株式会社製、半導体系量子ドット、溶媒:トルエン、固形分含有量5質量%)7mlを投入し、70℃に加温した不活性ガス(N)にスプレーすることで、平均粒子径25nmに微粒子化し、第1被覆材(アクリル樹脂)で被覆された量子ドットからなる第1被覆粒子を得た。
【0140】
脂環式エポキシ化合物(ENEOS社製、エポカリックTHI-DE(登録商標))60質量%に光カチオン重合開始剤としてスルフォニウム塩系開始剤(サンアプロ株式会社製、CPI-100P)5質量%と第1被覆粒子35質量%を混合して混練し、1.5kwメタルハライドランプ(波長405nm)で照射された空間にスプレーし、第2被覆材(脂環式エポキシ樹脂)で被覆された樹脂被覆波長変換粒子を得た。この時の粒径は、30nm~40nm(平均粒子径D50=35nm)であった。また、樹脂被覆波長変換粒子中の固形分量は、波長変換粒子が2質量%、第1被覆材が34質量%、第2被覆材が64質量%であった。
【0141】
得られた樹脂被覆波長変換粒子を用いて、更にUVインクを調製した。即ち、容器中で、ラジカル重合性化合物であるアクリルレート(共栄化学製、ライトアクリレートTMP-A:トリメチロルプロパントリアクリレート)75質量%に、ホスフィンオキシド系光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、Omnirad 819:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)5質量%を混合し、樹脂被覆波長変換粒子20質量%を加えてUVインクを調製した。
【0142】
評価用ペレットを作製するためのシリコーン製型に、得られたUVインクを投入し、1.5kwメタルハライドランプ(波長405nm)の光で重合させ評価用ペレット(板状体、厚み10mm)を作製した。評価用ペレット中(固形分中)の樹脂被覆波長変換粒子の含有量は20質量%であった。
【0143】
以上で使用した材料、含有量等を表1に示す。また、この評価用ペレットを用いて、青色光耐久性の評価と、蛍光スペクトルの測定を行なった結果を表1に併せて示す。その結果、6ヶ月間放置後において、量子ドットの発光を97%以上維持していることが確認できた。また、励起光(波長450nm)に対する評価用ペレットの発光のピーク波長は650nmであり、半値幅は40nmであった。
【0144】
<実施例2>(OF/PMMA/THI-DE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、量子ドットを用いる代わりに、有機蛍光体OF(東京化成工業株式会社製、ブロモピロガロールレッド、平均粒子径50nm)4gを用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示す蛍光特性を有しており、6ヶ月間放置後において、有機蛍光体の発光を90%以上維持していることが確認できた。
【0145】
<実施例3>(QD/PSt/THI-DE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、アクリル樹脂を用いる代わりに、ポリスチレン樹脂PS(東洋エンジニアリング株式会社製、GPSS)5gを用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示す蛍光特性を有しており、6ヶ月間放置後において、量子ドットの発光を97%以上維持していることが確認できた。
【0146】
<実施例4>(QD/PMMA/DE-103/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、脂環式エポキシ化合物(ENEOS社製、エポカリックDE-103(登録商標))を同じ量用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示す蛍光特性を有しており、6ヶ月間放置後において、量子ドットの発光を97%以上維持していることが確認できた。
【0147】
<比較例1>(QD/PMMA/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、第2被覆材を設けないこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示すように、3日で発光を確認できなくなった。
【0148】
<比較例2>(QD/THI-DE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、第1被覆材を設けないこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示すように、1日で発光を確認できなくなった。
【0149】
<比較例3>(QD/PVA/THI-DE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、アクリル樹脂を用いる代わりに、ポリビニルアルコール樹脂PVA(株式会社クラレ製、エクセバール)を同じ量用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示すように、7日で発光を確認できなくなった。
【0150】
<比較例4>(QD/PMMA/GE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、脂環式エポキシ化合物を用いる代わりに、グリシジル型エポキシ化合物GE(共栄社化学株式会社社製、エポライト40E:エチレングリコールジグリシジルエーテル)を同じ量用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示すように、20日で発光を確認できなくなった。
【0151】
<比較例5>(OF/THI-DE/TMP-A)
実施例1において、表1に示すように、量子ドットを用いる代わりに、有機蛍光体OF(東京化成工業株式会社製、ブロモピロガロールレッド、平均粒子径50nm)4gを用い、かつ第1被覆材を設けないこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂被覆波長変換粒子を調製し、UVインクにより評価用ペレットを作製して青色光の耐久性を評価した。その結果、表1に示すように、1日で発光を確認できなくなった。
【0152】
【表1】