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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175458
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】インバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221117BHJP
   H02M 7/487 20070101ALI20221117BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081841
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】アリプル・ジャベル
(72)【発明者】
【氏名】六車 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】相馬 英明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 康弘
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA11
5H770CA05
5H770DA01
5H770DA02
5H770DA34
5H770DA41
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】平滑コンデンサと連系リアクトル間を分離させるとともに、ノイズと漏洩電流の発生を抑止できるインバータを提供する。
【解決手段】交流電源7を含む交流電力系統に連系させるように直流電源2の直流電力を交流電力に変換するインバータ1であって、直流電源に並列接続されて、その直流電圧を1/2に分圧する2つの直列接続された平滑コンデンサC1、C2と、直流電力を交流電力に変換する、少なくとも4個のスイッチング素子を有し、上下アームをそれぞれもつ2つのレグからなるブリッジ回路3と、ブリッジ回路と交流電力系統とを接続する2つの交流出力線に配置された連系リアクトル5と、平滑コンデンサと連系リアクトルとの間を還流により分離する分離用スイッチング素子S5,S6を含む分離回路6とを備え、2つの平滑コンデンサ間の中点P1が、分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点と接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源または負荷を含む交流電力系統に連系させるように直流電源の直流電力を交流電力に変換するインバータであって、
直流電源に並列接続されて、その直流電圧を1/2に分圧する2つの直列接続された平滑コンデンサと、直流電力を交流電力に変換する、少なくとも4個のスイッチング素子を有し、上下アームをそれぞれもつ2つのレグからなるブリッジ回路と、前記ブリッジ回路と前記交流電力系統とを接続する連系リアクトルと、前記平滑コンデンサと前記連系リアクトルとの間を還流により分離する分離用スイッチング素子を含む分離回路とを備え、
前記2つの平滑コンデンサ間の中点が、前記分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点と接続された、インバータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記ブリッジ回路は、各レグの下アームのスイッチング素子がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードを有するものであり、
前記分離回路は、各レグの上アームと下アームの接続点同士の間に、スイッチング素子およびこれにそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードを有する2個の分離用スイッチング素子が逆方向に直列接続されてなり、
前記分離用スイッチング素子の接続点と各上アームの正側の接続点間に還流ダイオードが設けられており、さらに、
前記2つの平滑コンデンサ間の中点と、前記2個の分離用スイッチング素子の接続点とが、スイッチング素子およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードを有する中性点クランプ用スイッチング素子を介して接続されている、インバータ。
【請求項3】
請求項1において、さらに、
前記2つの平滑コンデンサ間の中点と前記交流電力系統のO点とが接続されて単相三線システムとなっているインバータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のインバータを含み、前記直流電源が分散型電源である、分散型電源システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用の電力系統または負荷に連系させるように、直流電力を交流電力に高効率で変換するインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池のような分散型電源で発電された直流電力を、インバータ回路により商用の電力系統に合った交流電力に変換して、電力系統へ供給することが知られている。トランスレスのインバータ回路は、例えば図18に示すように、太陽電池2に並列接続された入力側の平滑コンデンサC、4個のスイッチング素子S101~S104およびそれぞれ逆並列に接続された4個の還流ダイオードD101~D104を有し、スイッチングにより直流電力を交流電力に変換するブリッジ回路(Hブリッジ)103、出力電流を正弦波電流に変換する出力側の連系リアクトル5、および電力系統に連系する交流電源7または負荷8を有する。
【0003】
さらに、平滑コンデンサCと連系リアクトル5との間の電流の戻りによりエネルギー損失が発生して電力変換効率が低下するのを防止するために、還流の際に平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離する分離回路を設けている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7046534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、Hブリッジインバータがユニポーラパルス幅変調で動作する場合、電力変換効率の一層の向上とフィルタの小型化が期待される一方で、ユニポーラパルス幅変調でHブリッジを運転すると、インバータの小型化は可能になるが、漏洩電流と、これによるEMI(電磁障害)のノイズの発生という問題があり、これを抑制する必要がある。
【0006】
また、単相3線式インバータシステムで不平衡負荷接続されている場合、中性点の両側にある負荷の大きさの差等により中性点の両側の出力電圧に不平衡が生じ易い。
【0007】
本発明は、平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離させることで電流の戻りによりエネルギー損失を抑制するとともに、ノイズと漏洩電流の発生を抑止できるインバータを提供することを目的としている。
【0008】
また、ユニポーラパルス幅変調で動作するインバータが単相3線式システムで使用されている場合には、AC中性点の両側の出力電圧の不平衡を解消することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るインバータは、交流電源または負荷を含む交流電力系統に連系させるように直流電源の直流電力を交流電力に変換するインバータであって、
直流電源に並列接続されて、その直流電圧を1/2に分圧する2つの直列接続された平滑コンデンサと、直流電力を交流電力に変換する、少なくとも4個のスイッチング素子を有し、上下アームをそれぞれもつ2つのレグからなるブリッジ回路と、前記ブリッジ回路と前記交流電力系統とを接続する連系リアクトルと、前記平滑コンデンサと前記連系リアクトルとの間を還流により分離する分離用スイッチング素子を含む分離回路とを備え、
前記2つの平滑コンデンサ間の中点が、前記分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点と接続されている。
【0010】
この構成によれば、分離回路により平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離させて電力変換効率を向上させるとともに、2つの平滑コンデンサ間の中点が、前記分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点に接続されているから、コモンモードノイズがバイパスされるので、ノイズと漏洩電流の発生を抑止できる。
【0011】
好ましくは、前記ブリッジ回路は、各レグの下アームのスイッチング素子がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードを有するものであり、
前記分離回路は、各レグの上アームと下アームの接続点同士の間に、スイッチング素子およびこれにそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードを有する2個の分離用スイッチング素子が逆方向に直列接続されてなり、
前記分離用スイッチング素子の接続点と各上アームの正側の接続点間に還流ダイオードが設けられており、さらに、
前記2つの平滑コンデンサ間の中点と、前記2個の分離用スイッチング素子の接続点とが、スイッチング素子およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードを有するクランプ用スイッチング素子を介して接続されている。
【0012】
この構成によれば、いわゆるH6.5インバータにクランプ用スイッチング素子を付加することにより、低コストでEMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止できる。
【0013】
好ましくは、前記2つの平滑コンデンサ間の中点と前記交流電力系統の中性点であるO点とが接続されて単相三線システムとなっている。したがって、単相三線システムにおいて平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離させるとともに、EMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止できる。さらに、前記O点の両側の負荷の大きさが相違する不平衡負荷でも、各々の相の電圧振幅に関するバランスが崩れない安定した交流出力が得られる。これは、クランプ用スイッチング素子により2つの平滑コンデンサ間の中点と負荷または交流電源の中性点であるO点とが接続されているので、このO点の電圧が常時ゼロレベルに保持されることで、平衡が維持されるからである。
【0014】
本発明に係る分散型電源システムは、前記インバータを含み、前記直流電源が分散型電源である。この構成によれば、分散型電源の直流電力がインバータにより高効率、低ノイズで交流電力に変換される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、分離回路により平滑コンデンサと前記連系リアクトルとの間を還流により分離し、2つの平滑コンデンサ間の中点と、分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点とが接続されているので、平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離させるとともに、EMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータを示す回路図である。
図2図1のインバータの変調ロジック図である。
図3図1のインバータの変調ロジック図である。
図4図1のインバータの各モードを示す波形図である。
図5図1のインバータの動作を示す回路図である。
図6図1のインバータの動作を示す回路図である。
図7図1のインバータの動作を示す回路図である。
図8図1のインバータの動作を示す回路図である。
図9図1のインバータの動作を示す回路図である。
図10図1のインバータの動作を示す回路図である。
図11図1のシミュレーション用のインバータを示す回路図である。
図12図11のシミュレーション結果を示す特性図である。
図13】従来のH6.5インバータを示す回路図である。
図14図13の回路のシミュレーション結果を示す特性図である。
図15】(A)、(B)は第1実施形態の変形例を示す回路図である。
図16】(A)~(C)は第1実施形態の他の変形例を示す回路図である。
図17】本発明の第2実施形態に係る単相二線システムのインバータを示す回路図である。
図18】従来の高効率のインバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る3レベル中性点クランプ型のインバータ1を示す回路図である。このインバータ1は、トランスレスで、交流電源7または負荷8を含む交流電力系統に連系させるように、分散型電源である太陽電池のような直流電源2の直流電力を交流電力に変換するインバータである。
【0018】
インバータ1は、直流電源2に並列接続されて、その直流電力を平滑化、安定化するために中間的に蓄電し、かつ直流電圧Edを1/2・Edに分圧する2つの直列接続された平滑コンデンサC1、C2と、直流電力を交流電力に変換する、4個のスイッチング素子を有するブリッジ回路3と、ブリッジ回路3と交流電源7とを接続する連系リアクトル5、5と、平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5との間を分離する分離回路6とを備えている。スイッチング素子(スイッチ)には、IGBTのようなトランジスタが使用されているが、MOSFET等でもよい。
【0019】
ブリッジ回路3は、各スイッチS1~S4の上下アームをそれぞれもつ2つのレグからなる。各下アームのスイッチS2、S4はそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD2、D4を有し、各上アームのスイッチS1、S3はそれぞれ単独で、下アームのような還流ダイオードを有していない。
【0020】
分離回路6は、各レグの上アームと下アームの接続点P2、P3同士の間に、2個の分離用スイッチS5、S6が逆方向に直列接続されており、各スイッチS5、S6はそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD5、D6を有する。
【0021】
前記分離用スイッチS5、S6の接続点P4と各上アームの正側の接続点P5間に還流ダイオードD7が設けられている。これにより、スイッチ6個とダイオード5個のH6.5インバータが構成される。
【0022】
本インバータ1は、さらに、2つの平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と、2個の分離用スイッチS5、S6の接続点P4とが、中性点クランプ用スイッチSclampを介して接続されている。中性点クランプ用スイッチSclampには逆並列に接続されたダイオードD8が設けられている。
【0023】
すなわち、本インバータ1は、平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と、各レグの上アームと下アームの接続点P2、P3とが接続され、さらに、この接続点P2、P3に、それぞれ連系リアクトル5、5を介して、交流電力系統7,8の出力端子U、Wが接続されており、出力電位が+Ed、0、-Edの3レベル中性点クランプのインバータを構成する。
【0024】
本インバータ1は、さらに、2つの平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と交流電力系統7,8のO点とが接続されており、例えば2つの100Vおよび1つの200Vの負荷を有する単相三線システムとなっている。以下、本インバータ1の動作を説明する。
【0025】
図2のPWM(パルス幅変調)ロジック図に示すように、正弦波状の電圧指令信号(Modulating Signal)と搬送波の三角波キャリア信号(Carrier)とを比較して得られたスイッチング信号を用いて、スイッチS1~S4などのオンオフを行う。電圧指令信号を正弦波状に変化させることにより、交流出力信号を得ることができ、単相のPWMインバータとして用いられる。図2のロジックは図示しないコントローラにより作成される。
【0026】
図3(A)、(B)において、オン信号を太線で、パルス信号を破線で示す。図3(A)は電圧指令信号が正(プラス)のハーフサイクルの場合の変調ロジックを、図3(B)は、電圧指令信号が負(マイナス)のハーフサイクルの場合の変調ロジックを、それぞれ示す。
【0027】
図3(A)では、スイッチS1、S2がオンオフし、スイッチS5はオンで、スイッチS6は、中性点クランプスイッチSclampのオンパルスでオンとなる。交流出力はない。図3(B)では、スイッチS3、S4がオンオフし、スイッチS6はオンで、スイッチS5は、中性点クランプ用スイッチSclampのオンパルスでオンとなる。
【0028】
図3(A),(B)の変調ロジックにより得られた出力電圧Vおよび出力電流Iを図4に示す。電圧、電流の正負の状態でモードI~VIが定まる。
【0029】
図5図10は、図2の制御回路からの出力信号によりスイッチS1~S6が制御されて交流電圧Vと交流電流Iの種々の組み合わせが出力されるインバータ1の動作を示す回路図である。
【0030】
図5は、図3(A)の変調ロジックに基づいてスイッチ群が制御され、図5のスイッチS1,S2が所定のデューティー比でオンオフされ、矢印で示すように電流が流れる。両スイッチS1、S2がオフとなるとき、中性点クランプ用スイッチSclampがオン、スイッチS6もオンとされる。このとき、出力電位は0である(図4のモードIに対応)。
【0031】
図6では、分離用スイッチS5がオンし、このスイッチS5と還流用ダイオードD6を通って、矢印で示すように電流が流れる。これにより、連系リアクトル5→還流ダイオードD6→分離用スイッチS5→連系リアクトル5と導通して、この有効電力の還流期間に平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間が分離される(図4のモードIIに対応)。
【0032】
これにより、還流の際に平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間を分離する分離回路6が作用して、平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5間の電流の戻りによるエネルギー損失の発生を抑止することから、インバータの電力変換効率を向上させることができる。
【0033】
図7では、図3(B)の変調ロジックに基づいてスイッチ群が制御され、図7の矢印で示すように、連系リアクトル5、5中の電磁エネルギーが、交流電力系統7,8と分離用ダイオードD6、ダイオードD1、スイッチS4のダイオードD4とを通って直流側へ還流される。この無効電力の還流期間に電流平滑用の連系リアクトル5,5中の電磁エネルギーが減少していくと、回路の通電は行われなくなる(図4のモードIIIに対応)。
【0034】
図8では、所定のデューティー比でオンオフされるスイッチS3およびS4のオン期間に、矢印で示すように、スイッチS3およびS4を通って交流電力系統7,8側へ電流が流れることにより、直流側から交流側へ通電する。このときの出力電位はゼロである。(モードIVに対応)。
【0035】
図9では、矢印で示すように、連系リアクトル5→還流ダイオードD5→分離用スイッチS6→連系リアクトル5と導通して、有効電力の還流期間に平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間が分離される。このとき、中性点クランプ用スイッチSclampとスイッチS6はオンとなり、平滑コンデンサC1,C2間の中点P1と交流出力側のO点とがクランプされる(図4のモードVに対応)。
【0036】
図10では、分離用スイッチS5、S6がオフである。このとき、矢印で示すように、連系リアクトル5、5中の電磁エネルギーが、交流電力系統7,8と分離用ダイオードD6、ダイオードD1、スイッチS2のダイオードD2とを通って直流側へ還流される(図4のモードVIに対応)。
【0037】
こうして、分離回路6により平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5との間を還流により分離し、中性点クランプにより、出力電位は{+Ed、-Ed、0}の3レベルとなる。さらに、2つの平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と交流電源7のO点とが接続されており、単相三線システムとなっている。すなわち、本インバータ1は、単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータを構成する。
【0038】
図11は、図1における単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータ1のシミュレーション用の回路図を示す。主として負荷大きさの差による不平衡負荷の影響を軽減するために、交流電力系統を構成する負荷8が3パートに分割されている。0.1~0.414秒の間に、5Ωの負荷抵抗L1が100VのUO端子間に接続されている。0.247~0.747秒の間に、10Ωの負荷抵抗L2が200VのUW端子間に接続されている。0.58~0.914秒の間に、5Ωの負荷抵抗L3が100VのOW端子間に接続されている。その後、シミュレーション終了まで無負荷状態である。
【0039】
図12は、本単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータのシミュレーション結果を示す。図13は、図11の中性点クランプ用スイッチSclampを有しない従来のインバータH6.5を示し、図14は、そのシミュレーション結果を示す。
【0040】
図14の(a)は負荷の電流波形を示し、(b)はUO端子間の電圧VuoおよびOW端子間の電圧Vowの波形を示し、(c)は同電圧の二乗平均平方根(RMS)で表した値を示す。図14の(c)から分かるように、UO端子間の電圧VuoおよびOW端子間の電圧Vowは100Vから上下に大きくずれる不平衡が生じる。これは上述のとおり、主として素子の特性のバラツキによるものと考えられる。
【0041】
これに対し、図12(b)、(c)のように、本単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータは、出力側のO点(中性点)が中性点クランプ用スイッチSclampにより平滑コンデンサC1、C2間の中点P1にクランプされているので、交流線に不平衡負荷があっても、また、素子の特性にバラツキがあっても、図14の(b)、(c)と比べて、各々の相の電圧バランスがとれるようになる。特に、図12(c)から分かるとおり、UO端子間の電圧VuoおよびOW端子間の電圧Vowは100V付近で安定している。
【0042】
このように、本インバータ1は、分離回路6を有する3レベル中性点クランプ型で、平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と交流電源7のO点とが接続された単相三線システムとなっており、平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間を分離して、平滑コンデンサC1,C2と連系リアクトル5,5間の電流の戻りを防止するとともに、EMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止でき、さらに不平衡負荷であっても、各々の相の電圧バランスがとれるようになる。
【0043】
図15および図16は、第1実施形態の変形例を示す。いずれも図1のような分離回路6を有しており、単相三線システムの3レベル中性点クランプ型のインバータである。これらの変形例も、第1実施形態と同様に、平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間を分離させるとともに、EMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止でき、不平衡負荷でも安定した交流出力が得られる効果を有する。
【0044】
図15(A)では、図1と異なり、ブリッジ回路の各上アームのスイッチS10、S11がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD10、D11を有しており、還流ダイオードD7を有していない。その他の構成は図1と同様である。
【0045】
図15(B)では、図15(A)と同様に、ブリッジ回路の各上アームのスイッチS10、S11がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD10、D11を有しており、図1の還流ダイオードD7を有していない。さらに、2個の分離用スイッチに代えて、図15(B)では分離用スイッチS12およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードD12と、ダイオードD14とが直列接続されている。また、分離用スイッチS13およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードD13と、ダイオードD15とが直列接続されており、これら2つの直列接続回路が並列接続されている。中性点クランプ用スイッチSclampは、ダイオードD15と分離用スイッチS13の直列接続点に接続されている。
【0046】
図16(A)では、図15(A)と同様に、ブリッジ回路の各上アームのスイッチS10、S11がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD10、D11を有しており、還流ダイオードD7(図1)を有していない。分離用スイッチS12およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードD12と、ダイオードD14とが直列接続され、分離用スイッチS13およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードD13と、ダイオードD15とが直列接続されている。これら2つの直列回路が並列接続されている。さらに、図1の中性点クランプ用スイッチSclampに代えて、2つのダイオードD17、D18が、上記2つの直列回路の直列接続点にそれぞれ接続されている。
【0047】
図16(B)では、図16(A)と同様に、ブリッジ回路の各上アームのスイッチS10、S11がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD10、D11を有しており、還流ダイオードD7を有していない。図15(A)と異なり、ダイオードD21,25が直列接続され、ダイオードD22,26が直列接続され、これら2つの直列回路が並列接続されている。分離用スイッチS23およびこれに逆並列に接続された還流ダイオードD23が上記2つの直列回路の直列接続点に接続されており、さらに、2つのダイオードD27,28が、上記2つの直列接続点にそれぞれ接続されている。
【0048】
図16(C)では、図1と異なり、ブリッジ回路の各上アームのスイッチS10、S11がそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオードD10、D11を有しており、還流ダイオードD7を有していない。さらに、図1の直列接続された2個の分離用スイッチに代えて、双方向性のスイッチS15を有しており、中性点クランプ用スイッチに代えて、並列に配置された2つのスイッチS16、S17が、双方向性スイッチS15の入出力点にそれぞれ接続されている。
【0049】
本発明は単相三線システムのインバータに限定されない。図17は、第2実施形態にかかる単相二線システムにおけるインバータを示す回路図である。第1実施形態が図1の平滑コンデンサC1、C2間の中点P1と交流電源7のO点とが接続された単相三線システムであるのに対し、第2実施形態は、中点P1とO点が接続されていない単相二線システムである点で異なり、その動作はほぼ第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
この場合、第1実施形態と同様に、分離回路6により平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5との間を還流により分離し、2つの平滑コンデンサC1、C2間の中点と、分離用スイッチS5、S6の接続点とが接続されている。
これにより、平滑コンデンサC1、C2と連系リアクトル5、5の間を分離させるとともに、2つの平滑コンデンサ間C1,C2の中点が、前記分離用スイッチング素子S5,S6,Sclampを介して各レグの上下アームの接続点に接続されているから、コモンモードノイズがバイパスされ、EMI(電磁障害)、漏洩電流の発生を抑止できる。
【0051】
このように、本発明では、分離回路により平滑コンデンサと連系リアクトルとの間を還流により分離し、2つの平滑コンデンサ間の中点と、分離用スイッチング素子を介して各レグの上下アームの接続点とが接続されているので、平滑コンデンサと連系リアクトルの間を分離させるとともに、ユニポーラパルス幅変調の方式を使用してEMI(電磁障害)のノイズと漏洩電流の発生を抑止できる。
【0052】
また、2つの平滑コンデンサ間の中点と交流電力系統のO点とが接続されて3レベル中性点型の単相三線システムとなっている場合には、不平衡負荷でも各々の相の電圧バランスがとれるようになる。
【0053】
なお、上記各実施形態では、分散型電源として太陽電池を使用しているが、燃料電池等を使用してもよい。
【0054】
なお、本インバータをコンバータとして動作させてもよい。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1:インバータ
2:直流電源
3:ブリッジ回路
5:連系リアクトル
6:分離回路
7:交流電源
8:負荷
10:制御部
C1、C2:平滑コンデンサ
D2、D4:ブリッジ回路の還流ダイオード
D5、D6:還流ダイオード
D7:還流ダイオード
P1:平滑コンデンサの中点
P2、P3:ブリッジ回路の各レグの上アームと下アームの接続点
S1~S4:ブリッジ回路のスイッチング素子(スイッチ)
S5、S6:分離用スイッチング素子(分離用スイッチ)
Sclamp:クランプ用スイッチング素子(クランプ用スイッチ)



図1
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