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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175466
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】制動ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/38 20060101AFI20221117BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A47C7/38
F16F7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081856
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 孝行
【テーマコード(参考)】
3B084
3J066
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DC01
3B084DD01
3J066AA22
3J066BA01
3J066BB01
3J066BD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安価で操作性が向上した制動ユニットを提供する。
【解決手段】制動ユニット1は、ブレーキブッシュ2と一対のブッシュ3,3との組が、筐体4におけるセンタービーム5の両側に配置されて構成されている。ブレーキブッシュ2は、スリット状に切り欠かれてすり割り2aが形成された円筒形状をしており、外径に外力が印加されると内径が縮径し、外力の印加が無くなると内径の大きさが元に戻る弾性を有する。トーションバネ6は、ブレーキブッシュ2の外径に取り付けられ、取り付けられると、ブレーキブッシュ2の径方向の寸法を縮める外力を外径に印加する。また、調整ネジ10をケース42の側面42fからトーションバネ6の他方の腕6bに近付く方向に変位させることで、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径に与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュ2の内径にロッドを挿入することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部から他方の端部にわたってスリット状に切り欠かれてすり割りが形成され、外径に径方向の寸法を縮める外力が印加されると前記すり割りの間隙の大きさが小さくなって内径が縮径し、前記外力の印加が無くなると内径の大きさが元に戻る弾性を有する円筒形状をしたブレーキブッシュと、
前記ブレーキブッシュの各端部の外径が挿入される内径、および、前記ブレーキブッシュの各端面に当接する内底面を有する円筒形状をした一対のブッシュと、
前記ブレーキブッシュの外径をコイル内径が覆って前記ブレーキブッシュに取り付けられ、保持するバネ弾性によって前記外力を前記ブレーキブッシュの外径に印加するねじりコイルバネと、
前記ブレーキブッシュの各端部の外径が内径に挿入された一対の前記ブッシュを挟持する対向する一対の側壁を有し、前記ねじりコイルバネの一方の腕を支持する支持部、および、前記ねじりコイルバネの他方の腕が嵌まってその他方の腕を支持する切り欠きが形成された支持壁を前記ブレーキブッシュを挟む両側に有する筐体と、
前記支持壁によって支持された他方の前記腕が前記ねじりコイルバネの軸心周りに回動して描く軌跡上における前記筐体の側面に進退自在に設けられ、前記側面から他方の前記腕に近付く方向に変位させられると、先端が他方の前記腕に接して他方の前記腕を前記ねじりコイルバネの軸心周りに回動させる軸状部材を有する調整機構と
を備える制動ユニット。
【請求項2】
前記筐体は、一対の前記側壁間における前記支持部を挟む両側に、前記ブレーキブッシュの各端部の外径が内径に挿入された一対の前記ブッシュをそれぞれ挟持することを特徴とする請求項1に記載の制動ユニット。
【請求項3】
前記支持部は、一対の前記側壁間に挟持される軸心方向長さを有する中空円筒状をしたビームによって構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制動ユニット。
【請求項4】
前記ビームを挟持する箇所の一対の各前記側壁に、前記ねじりコイルバネの軸心周りに前記ねじりコイルバネの一方の前記腕を回動させる方向に形成された長穴と、
各前記長穴および前記ビームの中空円筒部に挿通される外径および一対の前記側壁間の距離より長い長さを有し、一端に前記長穴の溝幅より大きな外形の頭部、他端に雄ネジが形成された支持ネジと、
一対の前記側壁間外に一方の前記長穴から突出する前記支持ネジの他端に形成された前記雄ネジに螺合することで、前記長穴の形成方向における一対の前記側壁間の任意の位置に前記ビームを固定させる、前記長穴の溝幅より大きな外形を有するナットと
を備えることを特徴とする請求項3に記載の制動ユニット。
【請求項5】
前記調整機構は、調整ネジによって形成された前記軸状部材と、前記調整ネジに螺合する雌ネジが内径に形成されて前記側面に開けられた雌ネジ穴とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制動ユニット。
【請求項6】
前記調整機構は、ピンによって形成された前記軸状部材と、前記ピンを挿通させる内径を有して前記側面に形成された挿通穴と、前記ピンの先端側に係止されて前記ピンの前記挿通穴からの抜け止めになる止め輪とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制動ユニット。
【請求項7】
前記調整機構は、前記ピンを挿通させる内径を有する貫通孔が軸心方向に開けられたボルトを備え、前記挿通穴は、前記ボルトに螺合する雌ネジが内径に形成され、前記止め輪は、前記ボルトの前記貫通孔からの抜け止めになることを特徴とする請求項6に記載の制動ユニット。
【請求項8】
前記ピンは前記先端側と反対側の端部に頭部を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の制動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドの動きを制止してロッドの支持物を制動する制動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の制動ユニットとしては、例えば、特許文献1に開示された椅子のヘッドレスト装置におけるものがある。このヘッドレスト装置は、ヘッドレスト本体がスライドバーに設けられたロッドを介して椅子の背板の上部に設けられている。スライドバー上下動モータが正逆回転することにより、スライドバーは上下動し、ロッドに支持されるヘッドレスト本体もスライドバーと共に上下動する。
【0003】
また、従来、この種の制動ユニットとして、例えば、特許文献2に開示された回転式歯科介護診療座椅子におけるものもある。この座椅子における安頭部は、安頭本体と、高低調整と傾き調節金具から構成され、高低調整と傾き調節金具は、支持脚と背もたれ部に設けられた受金物とから構成される。支持脚は、安頭本体の下面に取り付けられた上方金物と、この上方金物に対して締め付け水平ボルトを介して下方に垂下連結された支持縦板から構成される。安頭本体は、支持縦板用固定ボルトが締め付けられて、ロッドに相当する支持縦板の上下動が制止されることで、その上下動が制動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-131016号公報
【特許文献2】特開平10-33601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された制動ユニットでは、ロッドに支持されるヘッドレスト本体の動きは、スライドバー上下動モータの駆動停止によって制動される。このため、制動ユニットが電動式の構成をしているので、上記従来の特許文献1に開示された制動ユニットは、その価格が高くなってしまう問題があった。
【0006】
また、上記従来の特許文献2に開示された制動ユニットでは、安頭本体の上下位置を変えるには、支持縦板用固定ボルトを緩める操作と、安頭本体の所望の上下位置で支持縦板用固定ボルトを締め付ける操作とが必要になる。このため、上記従来の特許文献2に開示された制動ユニットは、操作性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
一方の端部から他方の端部にわたってスリット状に切り欠かれてすり割りが形成され、外径に径方向の寸法を縮める外力が印加されるとすり割りの間隙の大きさが小さくなって内径が縮径し、外力の印加が無くなると内径の大きさが元に戻る弾性を有する円筒形状をしたブレーキブッシュと、
ブレーキブッシュの各端部の外径が挿入される内径、および、ブレーキブッシュの各端面に当接する内底面を有する円筒形状をした一対のブッシュと、
ブレーキブッシュの外径をコイル内径が覆ってブレーキブッシュに取り付けられ、保持するバネ弾性によって外力をブレーキブッシュの外径に印加するねじりコイルバネと、
ブレーキブッシュの各端部の外径が内径に挿入された一対のブッシュを挟持する対向する一対の側壁を有し、ねじりコイルバネの一方の腕を支持する支持部、および、ねじりコイルバネの他方の腕が嵌まってその他方の腕を支持する切り欠きが形成された支持壁をブレーキブッシュを挟む両側に有する筐体と、
支持壁によって支持された他方の腕がねじりコイルバネの軸心周りに回動して描く軌跡上における筐体の側面に進退自在に設けられ、側面から他方の腕に近付く方向に変位させられると、先端が他方の腕に接して他方の腕をねじりコイルバネの軸心周りに回動させる軸状部材を有する調整機構と
を備えて、制動ユニットを構成した。
【0008】
本構成の制動ユニットによってロッドが支持する物を制動するには、最初に、調整機構の軸状部材を筐体の側面からねじりコイルバネの他方の腕に近付く方向に変位させ、支持壁に形成された切り欠きに支持されるねじりコイルバネの他方の腕を軸状部材の先端で押して、ねじりコイルバネの他方の腕をねじりコイルバネの弾性に抗してねじりコイルバネの軸心周りに回動させる。他方の腕のこの回動により、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュの内径の大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュの内径に、制動する物を支持するロッドを挿入する。次に、ねじりコイルバネの他方の腕を軸状部材の先端で押すことを止めることで、軸状部材はねじりコイルバネの保持するバネ弾性によって筐体の側面に対する進退位置が押し戻されて、ねじりコイルバネの他方の腕は、支持壁に形成された切り欠きに再度支持される。この状態で、ねじりコイルバネのブレーキブッシュ外径に与える外力がブレーキブッシュの内径を縮径する大きさになるように、ねじりコイルバネの両腕の開き角度を予め設定しておくことで、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュの内径に締め付けられる。したがって、ロッドは、ブレーキブッシュの軸心方向における移動が規制されて、ロッドの支持物はロッドと共に制動されることとなる。
【0009】
このため、本構成によれば、従来の制動ユニットのように電動モータを使用することなく、簡単な機構で、ロッドの支持物を制動することができるようになって、制動ユニットを安価に提供することが可能になる。また、ロッドが支持する物の支持位置の変更は、従来の制動ユニットのように、その都度、固定ボルトを緩める操作と締め付ける操作とを必要とすることなく、調整機構の軸状部材を筐体の側面に対して変位させるだけの簡単な操作で行え、制動ユニットの操作性が向上する。
【0010】
また、本発明は、筐体が、一対の側壁間における支持部を挟む両側に、ブレーキブッシュの各端部の外径に内径が挿入された一対のブッシュをそれぞれ挟持することを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、一対のロッドによって支持される支持物を安価な制動ユニットで操作性良く制動することが可能になる。
【0012】
また、本発明は、支持部が、一対の側壁間に挟持される軸心方向長さを有する中空円筒状をしたビームによって構成されることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、一対の側壁間にビームが挟持されることで、ねじりコイルバネの一方の腕がビームによって支持されると共に、筐体の強度が増す。
【0014】
また、本発明は、
ビームを挟持する箇所の一対の各側壁に、ねじりコイルバネの軸心周りにねじりコイルバネの一方の腕を回動させる方向に形成された長穴と、
各長穴およびビームの中空円筒部に挿通される外径および一対の側壁間の距離より長い長さを有し、一端に長穴の溝幅より大きな外形の頭部、他端に雄ネジが形成された支持ネジと、
一対の側壁間外に一方の長穴から突出する支持ネジの他端に形成された雄ネジに螺合することで、長穴の形成方向における一対の側壁間の任意の位置にビームを固定させる、長穴の溝幅より大きな外形を有するナットと
を備えることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、一対の側壁間に挟持されるビームは、支持ネジの他端にナットが締結されて固定される、長穴の形成方向における位置に応じ、ねじりコイルバネの一方の腕をねじりコイルバネの軸心周りに回動させる。したがって、ねじりコイルバネがその締め付け力によってブレーキブッシュの外径に与える外力は、一対の側壁間にナットによってビームを固定させる、長穴の形成方向における位置に応じて、その初期値を調整することができる。
【0016】
また、ビームと支持ネジとを別体にして支持部を構成することで、長穴を介してビームの中空円筒部に支持ネジを挿通し、一方の長穴から突出する支持ネジの他端にナットを締結させる作業により、一対の側壁間にビームを簡単に固定でき、ビームの筐体への組み付けが簡単に行えて、制動ユニットの組立性が向上する。また、ビームと支持ネジとを別体にして支持部を構成することで、支持部の部品加工が容易になる。
【0017】
また、本発明は、調整機構が、調整ネジによって形成された軸状部材と、調整ネジに螺合する雌ネジが内径に形成されて前記側面に開けられた雌ネジ穴とを備えることを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、調整ネジは、筐体の側面に開けられた雌ネジ穴に螺合して筐体の側面に進退自在に取り付けられる。したがって、調整ネジを回して筐体の側面に対する調整ネジの先端の進退位置を調節して、調整ネジを筐体の側面からねじりコイルバネの他方の腕に近付く方向に変位させることができる。これにより、支持壁に形成された切り欠きに支持されるねじりコイルバネの他方の腕を調整ネジの先端で押して、ねじりコイルバネの他方の腕をねじりコイルバネの弾性に抗してねじりコイルバネの軸心周りに回動させることができる。したがって、他方の腕のこの回動により、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュの内径の大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュの内径に、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、調整ネジを反対に回して筐体の側面に対する調整ネジの先端の進退位置を元に戻し、ねじりコイルバネの他方の腕を調整ネジの先端で押すことを止めることで、ねじりコイルバネの他方の腕は、支持壁に形成された切り欠きに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュの内径に締め付けられる。
【0019】
また、調整ネジを回して筐体の側面に対する調整ネジの先端の進退位置を調節することで、ねじりコイルバネの他方の腕を調整ネジの先端で支持壁に形成された切り欠きから押し上げて、ねじりコイルバネの軸心周りにおける他方の腕の回動位置を変化させることができる。変化させたその回動位置は、調整ネジと雌ネジ穴との螺合によって保持される。このため、本構成によっても、調整ネジを回して筐体の側面に対する調整ネジの先端の進退位置を調節することで、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力の初期値を調整することができる。
【0020】
また、本発明は、調整機構が、ピンによって形成された軸状部材と、ピンを挿通させる内径を有して前記側面に形成された挿通穴と、ピンの先端側に係止されてピンの挿通穴からの抜け止めになる止め輪とを備えることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、ピンは、筐体の側面に開けられた挿通穴に挿通され、止め輪によってその挿通孔からの抜け止めが施される。挿通穴に挿通されたそのピンを筐体の側面からねじりコイルバネの他方の腕に近付く方向に変位させ、支持壁に形成された切り欠きに支持されるねじりコイルバネの他方の腕をピンの先端で押すことで、ねじりコイルバネの他方の腕をねじりコイルバネの弾性に抗してねじりコイルバネの軸心周りに回動させることができる。他方の腕のこの回動により、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュの内径の大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュの内径に、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、ねじりコイルバネの他方の腕をピンの先端で押すことを止めることで、ピンは、ねじりコイルバネの保持するバネ弾性によって筐体の側面に対する進退位置が押し戻される。したがって、ねじりコイルバネの他方の腕は、支持壁に形成された切り欠きに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュの内径に締め付けられる。
【0022】
また、本発明は、調整機構が、ピンを挿通させる内径を有する貫通孔が軸心方向に開けられたボルトを備え、挿通穴が、ボルトに螺合する雌ネジが内径に形成され、止め輪が、ボルトの貫通孔からの抜け止めになることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、ボルトは、挿通穴の内径に形成された雌ネジに螺合して、筐体の側面に進退自在に取り付けられる。また、ピンは、ボルトの軸心方向に開けられた貫通孔に挿通され、貫通孔に案内されて筐体の側面に垂直な方向に移動する。また、止め輪によってボルトの貫通孔からの抜け止めがピンに施される。貫通孔に挿通されたそのピンをボルトの先端面からねじりコイルバネの他方の腕に近付く方向に変位させ、支持壁に形成された切り欠きに支持されるねじりコイルバネの他方の腕をピンの先端で押すことで、ねじりコイルバネの他方の腕をねじりコイルバネの弾性に抗してねじりコイルバネの軸心周りに回動させることができる。他方の腕のこの回動により、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュの内径の大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュの内径に、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、ねじりコイルバネの他方の腕をピンの先端で押すことを止めることで、ピンは、ねじりコイルバネの保持するバネ弾性によってボルトの先端面に対する進退位置が押し戻される。したがって、ねじりコイルバネの他方の腕は、支持壁に形成された切り欠きに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュの内径に締め付けられる。
【0024】
また、ボルトを回して筐体の側面に対するピンの先端の進退位置を調節することで、ねじりコイルバネの他方の腕をピンの先端で支持壁に形成された切り欠きから押し上げて、ねじりコイルバネの軸心周りにおける他方の腕の回動位置を変化させることができる。変化させたその回動位置は、ボルトと挿通穴の内径に形成された雌ネジとの螺合によって保持される。このため、本構成によっても、ボルトを回して筐体の側面に対するピンの先端の進退位置を調節することで、ねじりコイルバネがブレーキブッシュの外径に与える外力の初期値を調整することができる。
【0025】
また、本発明は、ピンが先端側と反対側の端部に頭部を有することを特徴とする。
【0026】
本構成によれば、筐体の側面に開けられた挿通穴またはボルトの軸心方向に開けられた貫通孔に挿通されたピンを筐体の側面またはボルトの先端面に対して変位させる操作は、ピンの頭部に対して、指先に痛みを感じることの無い好ましい触感で操作感良く行える。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、安価で操作性が向上した制動ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態による制動ユニットの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態による制動ユニットの分解斜視図である。
図3】第1の実施形態による制動ユニットを構成する筐体を示す図である。
図4図3に示す筐体にセンタービームから構成される支持部が取り付けられることを説明する図である。
図5】第1の実施形態による制動ユニットを構成するブレーキブッシュ、ブッシュ、トーションバネおよび調整ネジを示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態による制動ユニットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明による制動ユニットを実施するための形態について説明する。なお、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
【0030】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態による制動ユニット1の斜視図、図1(b)は平面図、図1(c)は側面図である。また、図2は制動ユニット1の分解斜視図である。
【0031】
制動ユニット1は、ブレーキブッシュ2と一対のブッシュ3,3との組が、筐体4におけるセンタービーム5の両側にそれぞれ配置されて構成され、一方のブレーキブッシュ2には、ねじりコイルバネであるトーションバネ6が取り付けられている。
【0032】
筐体4は、図3(a)に示すカバー41と、図3(b),(c)に示すケース42とから構成される。図3(b)はケース42を一方向から見た斜視図、図3(c)は別の方向から見た斜視図である。
【0033】
カバー41は、一対の取付ネジ7,7でケース42の一方の側面に固定される。カバー41およびケース42の各材質は基本的に金属であるが、プラスチック等の他の材質であってもよい。カバー41がケース42に取り付けられることで、筐体4には対向する一対の側壁41a,42aが形成される。各側壁41a,42aには、各ブッシュ3を取り付けるためのブッシュ取付穴41b,42bが、それぞれ2箇所に形成されている。また、カバー41における一対のブッシュ取付穴41b,41b間、および、ケース42における一対のブッシュ取付穴42b,42b間には、センタービーム5を一対の側壁41a,42a間に挟持するための長穴41c,42cが形成されている。
【0034】
図4(a)は、一対の側壁41a,42a間にセンタービーム5を挟持するために用いられる支持ネジ8の斜視図、図4(b)はセンタービーム5の斜視図である。センタービーム5は、一対の側壁41a,42a間にワッシャ5c,5cを介して挟持される軸心方向長さを有する、中空円筒状をしている。その中空円筒部5aには、図4(c)に示すように支持ネジ8を挿通させることができる。センタービーム5の外径5bの直径寸法は、長穴41c,42cの溝幅よりも大きく設定されている。センタービーム5および支持ネジ8の各材質は基本的に金属であるが、プラスチック等の他の材質であってもよい。支持ネジ8は、各長穴41c,42cおよびセンタービーム5の中空円筒部に挿通される外径、および、一対の側壁41a,42a間の距離より長い長さを有する。また、一端に、長穴41c,42cの溝幅より大きな外形の頭部8a、他端8bに、図示しない雄ネジが形成されている。頭部8aには工具を差し込むことが可能な十字穴等が設けられている。支持ネジ8の他端8bは、一対の側壁41a,42a間外に一方の長穴42cから突出し、図4(d)の斜視図に示すように、支持ネジ8の他端8bに形成された雄ネジにナット9が螺合することで、一対の側壁41a,42a間にセンタービーム5が固定される。ナット9は、長穴41c,42cの溝幅より大きな外形を有する。
【0035】
また、ケース42には、切り欠き42dが形成された支持壁42eが一対、対向して形成されている。トーションバネ6は、図1に示すように、一方の腕6aがセンタービーム5に支持され、他方の腕6bが、一方の支持壁42eの切り欠き42dに嵌まって支持される。また、ケース42の側面42fには雌ネジ穴を構成する挿通穴42gが開けられている。この挿通穴42gの内径には、調整機構を構成する調整ネジ10が螺合する雌ネジが形成されている。
【0036】
各長穴41c,42cは、一対の側壁41a,42a間で正対する位置に形成されている。また、各長穴41c,42cは、センタービーム5を挟持する箇所の一対の各側壁41a,42aに、トーションバネ6の軸心周りにその一方の腕6aを回動させる方向、つまり、各側壁41a,42aの短辺方向に形成されている。ナット9は、一方の長穴42cから突出する支持ネジ8の他端8bに形成された雄ネジに螺合することで、長穴41c,42cの形成方向における一対の側壁41a,42a間の任意の位置に、センタービーム5を固定させる。センタービーム5、ワッシャ5c,5c、支持ネジ8およびナット9は、トーションバネ6の一方の腕6aを支持する支持部を構成する。筐体4は、一対の側壁41a,42a間におけるこの支持部を挟む両側に、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bが内径3aに挿入された一対のブッシュ3,3をそれぞれ挟持する。なお、センタービーム5は必ずしも備える必要はなく、センタービーム5を備えない場合、トーションバネ6の一方の腕6aは支持ネジ8によって支持される。また、支持部自体を備えない場合、トーションバネ6の一方の腕6aはケース42の側面42fに直に支持される。
【0037】
図5(a)はブレーキブッシュ2の斜視図、図5(b)はブッシュ3を一方向から見た斜視図、図5(c)は別の方向から見たブッシュ3の斜視図、図5(d)はトーションバネ6の斜視図、図5(e)は調整機構を構成する調整ネジ10の側面図である。
【0038】
ブレーキブッシュ2は、一方の端部から他方の端部にわたってスリット状に切り欠かれてすり割り2aが形成された、円筒形状をしている。このブレーキブッシュ2は、外径2bに径方向の寸法を縮める外力が印加されると、すり割り2aの間隙の大きさが小さくなって内径2cが縮径し、外力の印加が無くなると内径2cの大きさが元に戻る弾性を有する。ブレーキブッシュ2の材質は基本的にプラスチックであるが、上記弾性を有する金属等の他の材質であってもよい。
【0039】
ブッシュ3は、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bが挿入される寸法の内径3a、および、ブレーキブッシュ2の各端面2d,2dに当接する内底面3bを有する、円筒形状をしている。内底面3bは、内径3aに挿入されたブレーキブッシュ2がブッシュ3の内径3aを貫通して、ブッシュ3から抜けてしまうのを防止する。また、ブッシュ3の一方端の外周には、外径が一段小さく形成された縮径部3cが形成されており、この縮径部3cからは周方向に所定間隔で側面3dが立ち上がり、各側面3d間には凹部3eが形成されている。また、縮径部3cの内側には、ブッシュ3の軸心方向に所定の長さを有する軸受部3fが形成されている。この軸受部3fには、制動ユニット1が制動する物を支持するロッドが挿入される。ロッドは、その外周がこの軸受け部3fの内周を摺動することで安定して動き、その直動動作が精度よくガイドされる。ブッシュ3に縮径部3c、側面3dおよび凹部3eが形成されることで、縮径部3cおよび軸受部3f間の肉厚の均一化が図られ、軸受部3fがロッドを支持する長さが確保されると共に、樹脂成形加工時に樹脂が引けることで生じる変形が防止されて、軸受部3fの円筒形状の寸法精度が高められている。ブッシュ3の材質も基本的にプラスチックであるが、金属等の他の材質であってもよい。
【0040】
図1に示すように、筐体4の対向する一対の側壁41a,42a間には、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bが内径3aに挿入された一対のブッシュ3,3が、2組み挟持される。この際、各ブッシュ3の縮径部3cがカバー41のブッシュ取付穴41b,41b、および、ケース42のブッシュ取付穴42b,42bに挿入され、各ブッシュ3の側面3dが各側壁41a,42aの側面に当接される。また、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bをブッシュ3の内径3aに挿入するとき、ブッシュ3の内径3aは直動動作のガイドとして機能する。
【0041】
トーションバネ6は、コイル本体6cの両側に各腕6a,6bが延出して形成されており、ブレーキブッシュ2の外径2bをコイル内径6dが覆ってブレーキブッシュ2に取り付けられる。この取り付け位置は、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bがブッシュ3の内径3aに挿入されて、ブレーキブッシュ2の各端面2d,2dが一対のブッシュ3,3の各内底面3b,3bに当接したときに露出する位置におけるブレーキブッシュ2の外径2bに設定される。トーションバネ6は、ブレーキブッシュ2の外径2bに取り付けられると、保持するバネ弾性によって、ブレーキブッシュ2の径方向の寸法を縮める外力をブレーキブッシュ2の外径2bに常時印加する。
【0042】
本実施形態による調整機構は、図5(e)に示す調整ネジ10によって形成された軸状部材と、上記の挿通穴42gとを備える。調整ネジ10にはトラスネジや鍋ネジを使用するが、六角ボルト、皿ネジ等を使用することも可能である。調整ネジ10は、挿通穴42gに螺合してケース42の側面42fに進退自在に取り付けられるが、この取り付け位置は、支持壁42eによって支持された他方の腕6bがトーションバネ6の軸心周りに回動して描く軌跡上にある。調整ネジ10は、回転操作されて、側面42fから他方の腕6bに近付く方向に変位させられると、図1(c)に示すように先端が他方の腕6bに接して、他方の腕6bをトーションバネ6の軸心周りに回動させる。
【0043】
本実施形態の制動ユニット1によってロッドが支持する物を制動するには、最初に、調整ネジ10をケース42の側面42fからトーションバネ6の他方の腕6bに近付く方向に変位させ、支持壁42eに形成された切り欠き42dに支持されるトーションバネ6の他方の腕6bを調整ネジ10の先端で押して、他方の腕6bをトーションバネ6の弾性に抗してトーションバネ6の軸心周りに回動させる。他方の腕6bのこの回動により、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュ2の内径2cの大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュ2の内径2cに、制動する物を支持するロッドを挿入する。次に、トーションバネ6の他方の腕6bを調整ネジ10の先端で押すことを止めることで、調整ネジ10はトーションバネ6の保持するバネ弾性によってケース42の側面42fに対する進退位置が押し戻されて、トーションバネ6の他方の腕6bは、支持壁42eに形成された切り欠き42dに再度支持される。
【0044】
この状態で、トーションバネ6のブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力がブレーキブッシュ2の内径2cを縮径する大きさになるように、センタービーム5の長穴41c,42cの形成方向における固定位置を調節して、トーションバネ6の両腕6a,6bの開き角度を予め設定しておくことで、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュ2の内径2cに締め付けられる。したがって、制動ユニット1を構造体に固定しておくことで、ロッドは、ブレーキブッシュ2の軸心方向における移動が規制されて、ロッドの支持物はロッドと共に制動されることとなる。トーションバネ6の両腕6a,6bの開き角度は、調整ネジ10の先端がトーションバネ6の他方の腕6bを切り欠き42dから押し上げる高さを調節することでも、予め設定しておくことができる。この場合、トーションバネ6の他方の腕6bの初期位置は、切り欠き42dで支持する位置に代わって、調整ネジ10の先端がトーションバネ6の他方の腕6bを切り欠き42dから押し上げる位置になる。なお、両腕6a,6bの開き角度は、トーションバネ6の加工状態によってバラツキがあることが想定される。
【0045】
このため、本実施形態による制動ユニット1によれば、従来の制動ユニットのように電動モータを使用することなく、簡単な機構で、ロッドの支持物を制動することができるようになって、制動ユニット1を安価に提供することが可能になる。また、ロッドが支持する物の支持位置の変更は、従来の制動ユニットのように、その都度、固定ボルトを緩める操作と締め付ける操作とを必要とすることなく、調整ネジ10をケース42の側面42fに対して変位させるだけの簡単な操作で行え、制動ユニット1の操作性が向上する。なお、調整ネジ10を操作せずに、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bを締め付ける力を越える力を、制動ユニット1に加えることでも、ロッドが支持する物の支持位置を変更することができる。
【0046】
また、本実施形態では、筐体4は、一対の側壁41a,42a間におけるセンタービーム5を挟む両側に、ブレーキブッシュ2の各端部の外径2bが内径3aに挿入された一対のブッシュ3,3をそれぞれ挟持するので、一対のロッドによって支持される支持物を安価な制動ユニット1で操作性良く制動することが可能になる。なお、本実施形態では、一方のブレーキブッシュ2だけにトーションバネ6を取り付けた場合について説明しているが、両方のブレーキブッシュ2にトーションバネ6を同様に取り付けることで、一対のロッドによって支持される支持物は、制動ユニット1によってより強固にバランスよく制動されるようになる。
【0047】
また、本実施形態では、トーションバネ6の一方の腕6aを支持する支持部が、一対の側壁41a,42a間に挟持される軸心方向長さを有する中空円筒状をしたセンタービーム5によって構成される。このため、一対の側壁41a,42a間に中空円筒状をしたセンタービーム5が挟持されることで、トーションバネ6の一方の腕6aが安定した状態でセンタービーム5によって支持されると共に、筐体4の強度が増す。
【0048】
また、本実施形態では、一対の側壁41a,42a間に挟持されるセンタービーム5は、支持ネジ8の他端8bにナット9が締結されて固定される、長穴41c,42cの形成方向における位置に応じ、トーションバネ6の一方の腕6aをトーションバネ6の軸心周りに回動させる。したがって、トーションバネ6がその締め付け力によってブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力は、一対の側壁41a,42a間にナット9によってセンタービーム5を固定させる、長穴41c,42cの形成方向における位置に応じて、その初期値を調整することができる。
【0049】
また、本実施形態では、センタービーム5と支持ネジ8とを別体にして支持部を構成することで、長穴41c,42cを介してセンタービーム5の中空部に支持ネジ8を挿通し、一方の長穴42cから突出する支持ネジ8の他端8bにナット9を締結させる作業により、一対の側壁41a,42a間にセンタービーム5を簡単に固定できる。したがって、センタービーム5の筐体4への組み付けが簡単に行えて、制動ユニット1の組立性が向上する。また、センタービーム5と支持ネジ8とを別体にして支持部を構成することで、支持部の部品加工が容易になる。
【0050】
また、本実施形態では、調整機構を構成する調整ネジ10は、ケース42の側面42fに開けられた挿通穴42gに螺合してケース42の側面42fに進退自在に取り付けられる。したがって、調整ネジ10を回してケース42の側面42fに対する調整ネジ10の先端の進退位置を調節して、調整ネジ10をケース42の側面42fからトーションバネ6の他方の腕6bに近付く方向に変位させることができる。これにより、支持壁42eに形成された切り欠き42dに支持されるトーションバネ6の他方の腕6bを調整ネジ10の先端で押して、トーションバネ6の他方の腕6bをトーションバネ6の弾性に抗してトーションバネ6の軸心周りに回動させることができる。したがって、他方の腕6bのこの回動により、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュ2の内径2cの大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュ2の内径2cに、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、調整ネジ10を反対に回してケース42の側面42fに対する調整ネジ10の先端の進退位置を元に戻し、トーションバネ6の他方の腕6bを調整ネジ10の先端で押すことを止めることで、トーションバネ6の他方の腕6bは、支持壁42eに形成された切り欠き42dに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュ2の内径2cに締め付けられる。
【0051】
また、調整ネジ10を回してケース42の側面42fに対する調整ネジ10の先端の進退位置を調節することで、トーションバネ6の他方の腕6bを調整ネジ10の先端で支持壁42eに形成された切り欠き42dから押し上げて、トーションバネ6の軸心周りにおける他方の腕6bの回動位置を変化させることができる。変化させたその回動位置は、調整ネジ10と挿通穴42gとの螺合によって保持される。このため、センタービーム5の固定位置を調節することに加えて、調整ネジ10を回してケース42の側面42fに対する調整ネジ10の先端の進退位置を調節することでも、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力の初期値を調整することができる。
【0052】
図6(a)は、本発明の第2の実施形態による制動ユニット1’の平面図、図6(b)は側面図である。また、図6(c)は、第2の実施形態による制動ユニット1’において調整機構を構成するピン11の側面図、図6(d)はその調整機構を構成する六角ボルト12の斜視図、図6(e)は六角ボルト12にピン11と止め輪13を組み付けた状態の側面図である。なお、図6において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0053】
第2の実施形態による制動ユニット1’は、調整機構の構成が第1の実施形態による調整機構と異なる点だけが、第1の実施形態による制動装置1と相違する。
【0054】
制動ユニット1’における調整機構は、ピン11によって形成された軸状部材と、ピン11を挿通させる内径を有する貫通孔12aが軸心方向に開けられた六角ボルト12と、ケース42の側面42fに形成された挿通穴42gと、六角ボルト12の貫通孔12aからの抜け止めになる止め輪13とを備える。挿通穴42gには、六角ボルト12に螺合する雌ネジが内径に形成されている。止め輪13はピン11の先端に形成された溝11aに嵌められて、ピン11の先端側に係止される。ピン11は、先端側と反対側の端部に頭部11bを有する。
【0055】
第2の実施形態による制動ユニット1’では、六角ボルト12が、挿通穴42gの内径に形成された雌ネジに螺合して、ケース42の側面42fに進退自在に取り付けられる。また、ピン11は、六角ボルト12の軸心方向に開けられた貫通孔12aに相対移動可能に挿通され、貫通孔12aに案内されてケース42の側面42fに垂直な方向に移動する。また、ピン11は、止め輪13によって六角ボルト12の貫通孔12aからの抜け止めが施される。貫通孔12aに挿通されたそのピン11を六角ボルト12の先端面からトーションバネ6の他方の腕6bに近付く方向に変位させ、支持壁42eに形成された切り欠き42dに支持されるトーションバネ6の他方の腕6aを、図6(b)に示すようにピン11の先端で押すことで、トーションバネ6の他方の腕6bをトーションバネ6の弾性に抗してトーションバネ6の軸心周りに回動させることができる。
【0056】
他方の腕6bのこの回動により、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュ2の内径2cの大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュ2の内径2cに、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、トーションバネ6の他方の腕6bをピン11の先端で押すことを止めることで、ピン11は、トーションバネ6の保持するバネ弾性によって六角ボルト12の先端面に対する進退位置が押し戻される。したがって、トーションバネ6の他方の腕6bは、支持壁42eに形成された切り欠き42dに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュ2の内径2cに締め付けられる。
【0057】
また、六角ボルト12を回してケース42の側面42fに対するピン11の先端の進退位置を調節することで、トーションバネ6の他方の腕6bをピン11の先端で支持壁42eに形成された切り欠き42dから押し上げて、トーションバネ6の軸心周りにおける他方の腕6bの回動位置を変化させることができる。変化させたその回動位置は、六角ボルト12と挿通穴42gの内径に形成された雌ネジとの螺合によって保持される。このため、センタービーム5の固定位置を調節することに加えて、六角ボルト12を回してケース42の側面42fに対するピン11の先端の進退位置を調節することでも、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力の初期値を調整することができる。
【0058】
このため、第2の実施形態による制動ユニット1’によっても、第1の実施形態による制動ユニット1と同様な作用効果が奏され、安価で操作性が向上した制動ユニット1’を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態では、ピン11が先端側と反対側の端部に頭部11bを有する。この頭部11bは必ずしも必要でないが、本実施形態によれば、六角ボルト12の軸心方向に開けられた貫通孔12aに挿通されたピン11を六角ボルト12の先端面に対して変位させる操作は、ピン11の頭部11bに対して、指先に痛みを感じることの無い好ましい触感で操作感良く行える。
【0060】
なお、上記の第2の実施形態において、六角ボルト12を備えず、挿通穴42gがピン11を挿通させる内径を有して、その内径に雌ネジが形成されないように構成してもよい。このとき、止め輪13はピン11の挿通穴42gからの抜け止めになる。
【0061】
このような第2の実施形態の変形例の構成によれば、ピン11は、ケース42の側面42fに開けられた挿通穴42gに挿通され、止め輪13によってその挿通孔42gからの抜け止めが施される。挿通穴42gに挿通されたそのピン11をケース42の側面42fからトーションバネ6の他方の腕6bに近付く方向に変位させ、支持壁42eに形成された切り欠き42dに支持されるトーションバネ6の他方の腕6bをピン11の先端で押すことで、トーションバネ6の他方の腕6bをトーションバネ6の弾性に抗してトーションバネ6の軸心周りに回動させることができる。
【0062】
他方の腕6bのこの回動により、トーションバネ6がブレーキブッシュ2の外径2bに与える外力を弱らせ、ブレーキブッシュ2の内径2cの大きさを元に戻した状態で、ブレーキブッシュ2の内径2cに、制動する物を支持するロッドを挿入することができる。また、トーションバネ6の他方の腕6bをピン11の先端で押すことを止めることで、ピン11は、トーションバネ6の保持するバネ弾性によってケース42の側面42fに対する進退位置が押し戻される。したがって、トーションバネ6の他方の腕6bは、支持壁42eに形成された切り欠き42dに再度支持されて、ロッドの外径は縮径したブレーキブッシュ2の内径2cに締め付けられる。
【0063】
また、この変形例でも、頭部11bは必ずしも必要でないが、ピン11が先端側と反対側の端部に頭部11bを有するので、ケース42の側面42fに開けられた挿通穴42gに挿通されたピン11をケース42の側面42fに対して変位させる操作は、ピン11の頭部11bに対して、指先に痛みを感じることの無い好ましい触感で操作感良く行える。
【0064】
このため、このような第2の実施形態の変形例によっても第2の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
各実施形態および変形例による制動ユニット1,1’は、歯科診療用椅子のロッドで支持されるヘッドレストを始め、理髪店で使用される散髪用椅子のロッドで支持されるヘッドレスト等の制動や、任意の物を昇降させる昇降装置のロッドで支持される昇降台の制動等に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,1’…制動ユニット、2…ブレーキブッシュ、2a…すり割り、2b…外径、2c…内径、2d…端面、3…ブッシュ、3a…内径、3b…内底面、3c…縮径部、3d…側面、3e…凹部、3f…軸受部、4…筐体、41…カバー、42…ケース、41a,42a…側壁、41b,42b…ブッシュ取付穴、41c,42c…長穴、42d…切り欠き、42e…支持壁、42f…側面、42g…挿通穴、5…センタービーム、5a…中空円筒部、5b…外径、5c…ワッシャ、6…トーションバネ(ねじりコイルバネ)、6a…一方の腕、6b…他方の腕、6c…コイル本体、6d…コイル内径、7…取付ネジ、8…支持ネジ、8a…頭部、8b…他端、9…ナット、10…調整ネジ、11…ピン、11a…溝、11b…頭部、12…六角ボルト、12a…貫通孔、13…止め輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6