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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175480
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221117BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20221117BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081879
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航
(72)【発明者】
【氏名】金子 文吉
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA46
2H199DA48
3D344AA03
3D344AA08
3D344AA12
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】 環状オレフィン系樹脂製の反射部を回転駆動させるものでありながら、反射部の背面を保持するホルダが不要となるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 画像を表す表示光を出射する表示器2と、表示光を反射する反射部4と、反射部4を回転軸線A周りに回転させる回転駆動部9と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、反射部4は、環状オレフィン系樹脂製であり、一端部に回転軸線A方向に沿う第1軸部を一体に有し、他端部に別体の軸部材6が連結され、軸部材6は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂製であり、回転軸線A方向に沿う第2軸部S2と、回転駆動部9に連結される連結レバー部62と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す表示光を出射する表示器(2)と、
前記表示光を反射する反射部(4)と、
前記反射部を回転軸線周りに回転させる回転駆動部(9)と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置(100)であって、
前記反射部は、環状オレフィン系樹脂製であり、一端部に前記回転軸線方向に沿う第1軸部(S1)を一体に有し、他端部に別体の軸部材(6)が連結され、
前記軸部材は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂製であり、前記回転軸線方向に沿う第2軸部(S2)と、前記回転駆動部に連結される連結レバー部(62)と、を有する、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1軸部を回転可能に支持する第1回転支持部(7)と、
前記第2軸部を回転可能に支持する第2回転支持部(8)と、を更に備え、
前記第1回転支持部は、前記反射部の前記回転軸線方向の位置を位置決めする、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記反射部の他端部は、ネジを介して前記軸部材に固定される板状の固定部(43)を一体に有し、
前記固定部は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂で形成されたワッシャ(64)と前記軸部材とに挟まれた状態で前記軸部材にネジ固定される、請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第1軸部には、シリコン系グリスが塗布される、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオレフィンポリマー(COP)などの環状オレフィン系樹脂を基材とする反射部(凹面鏡)を備えたヘッドアップディスプレイ装置が知られている。環状オレフィン系樹脂は、高流動性で高硬度のため位置決め精度が良く、光学系の部品に広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-218163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環状オレフィン系樹脂は、長期的な負荷等によりクラックが生じる可能性がある。そのため、特許文献1のように反射部を回転駆動させる場合は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂で形成され、反射部の背面を保持可能なホルダを別途用意し、ホルダを介して反射部を回転駆動部に連結させる必要があった。
【0005】
そこで、本開示は、環状オレフィン系樹脂製の反射部を回転駆動させるものでありながら、反射部の背面を保持するホルダが不要となるヘッドアップディスプレイ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
(1)画像を表す表示光を出射する表示器と、前記表示光を反射する反射部と、前記反射部を回転軸線周りに回転させる回転駆動部と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、前記反射部は、環状オレフィン系樹脂製であり、一端部に前記回転軸線方向に沿う第1軸部を一体に有し、他端部に別体の軸部材が連結され、前記軸部材は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂製であり、前記回転軸線方向に沿う第2軸部と、前記回転駆動部に連結される連結レバー部と、を有することを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、前記第1軸部を回転可能に支持する第1回転支持部と、前記第2軸部を回転可能に支持する第2回転支持部と、を更に備え、前記第1回転支持部は、前記反射部の前記回転軸線方向の位置を位置決めすることを特徴とする。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記反射部の他端部は、ネジを介して前記軸部材に固定される板状の固定部を一体に有し、前記固定部は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂で形成されたワッシャと前記軸部材とに挟まれた状態で前記軸部材にネジ固定されることを特徴とする。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの構成において、前記第1軸部には、シリコン系グリスが塗布されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、環状オレフィン系樹脂製の反射部を回転駆動させるものでありながら、反射部の背面を保持するホルダを不要にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す概略断面図である。
図2】ヘッドアップディスプレイ装置が備える反射部及び反射部回転機構を示す斜視図である。
図3】反射部の第1軸部及び第1回転支持部を示す斜視図である。
図4】反射部の第1軸部及び第1回転支持部を示す分解斜視図である。
図5】第1回転支持部の支持部本体を示す斜視図である。
図6】反射部の第1軸部及び第1回転支持部を示す断面図である。
図7】反射部の第2軸部(軸部材)、第2回転支持部及び回転駆動部を示す斜視図である。
図8】反射部の第2軸部(軸部材)、第2回転支持部及び回転駆動部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置100について詳細に説明する。
【0013】
[ヘッドアップディスプレイ装置の概要]
ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば自動車に搭載されるものであり、図1及び図2に示すように、筐体1と、表示器2と、平面鏡3と、反射部4と、反射部回転機構5と、図示しない回路基板と、を備える。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示器2が出射した所定の画像を表す表示光Lを、平面鏡3と反射部4とで反射させ、ヘッドアップディスプレイ装置100が搭載される車両のフロントガラス200に照射して表示を行う。ヘッドアップディスプレイ装置100がこのように表示する内容は、車両の走行速度や各種警告などの車両情報、ナビゲーション情報等である。
【0015】
筐体1は、例えば黒色の合成樹脂から形成され、表示器2、平面鏡3、反射部4、反射部回転機構5、及び、回路基板(図示せず)を内部に収容する。筐体1のフロントガラス200に対向する部分には、後述する表示光Lをフロントガラス200に通過させる開口部10が形成され、この開口部10は、透光性カバー11に覆われている。
【0016】
表示器2は、所定の情報(各種車両情報やナビゲーション情報等)を報知するための画像(報知画像)を表す表示光Lを出射するものであり、例えば、液晶パネルとバックライト用光源から構成される透過型液晶ディスプレイ、又は、自発光型ディスプレイから構成される。
【0017】
平面鏡3は、表示器2が出射した表示光Lを、反射部4に向けて反射させるものである。
【0018】
反射部4は、平面鏡3で反射した表示光Lをさらに反射させ、フロントガラス200に向けて出射する。反射部4は、合成樹脂材料からなる基材の表面に、蒸着等の手段により反射膜を形成した凹面鏡からなる。反射部4は、回転軸線A方向の両端部に第1軸部S1及び第2軸部S2を備え、第1軸部S1(図4参照)及び第2軸部S2を支点とする回転軸線A方向周りの回転によって表示光Lの反射角度を調整する。なお、反射部4については、後に詳述する。
【0019】
反射部4で反射した表示光Lは、筐体1の開口部10に設けられた透光性カバー11を透過して、フロントガラス200に向かう。フロントガラス200に到達し、反射された表示光Lは、フロントガラス200の前方位置F(図1参照)に報知画像の虚像(観察者Eに視認される表示像)を形成するとともに、前方からの光を透過する。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置100は、虚像と前方に実際に存在する外景等の双方を、観察者E(主に車両の運転者)に視認させることができる。
【0020】
反射部回転機構5は、反射部4を回転軸線A周りに回転させるものであり、図2等に示すように、反射部4の第1軸部S1を回転可能に支持する第1回転支持部7と、反射部4の第2軸部S2を回転可能に支持する第2回転支持部8と、反射部4の第2軸部S2側に連結され、反射部4を回転駆動させる回転駆動部9と、を備える。なお、反射部回転機構5については、後に詳述する。
【0021】
なお、図1図8には、回転軸線Aと平行な方向をY方向(車幅方向)、水平面上でY方向と直交する方向をX方向(車両長さ方向)、Y方向及X方向と直交する方向をZ方向(車両高さ方向)として示す。以下では、反射部4及び反射部回転機構5の構成の理解を容易にするために、Y方向を示す矢印が向く方向を「+Y方向」、その反対方向を「-Y方向」として、適宜、反射部4及び反射部回転機構5の各部を説明する。また、同様に、X方向を示す矢印が向く方向を「+X方向」、その反対方向を「-X方向」とし、Z方向を示す矢印が向く方向を「+Z方向」、その反対方向を「-Z方向」とする。
【0022】
図示しない回路基板は、例えば筐体1内の所定位置に配設され、CPUとRAMとROM等の演算装置と記憶装置を組み合わせたマイクロコントローラからなる制御部(図示せず)を実装したプリント回路板である。回路基板の制御部は、表示器2及び回転駆動部9の各々と電気的に接続されている。制御部は、車両ECU(Electronic Control Unit)等の外部装置(図示せず)から通信ラインにより伝送される車両の状態情報を取得し、これに応じて表示器2を駆動する(つまり、表示器2に所定の報知画像を表示させる)。また、ヘッドアップディスプレイ装置100には、観察者E等のユーザが、反射部4の角度を調整するための入力手段(図示せず)が設けられており(この入力手段は、制御部と電気的に接続されたヘッドアップディスプレイ装置100の外部装置であってもよい)、制御部は、ユーザの入力手段からの操作内容に応じて、回転駆動部9を駆動し、反射部4を回転軸線A周りに所望の角度だけ回転させる。このような反射部4の角度調整により、搭乗者の視線の高さに合った適切な位置に虚像を表示できる。
【0023】
[反射部及び反射部回転機構の詳細]
ここからは、反射部4及び反射部回転機構5について、図2図8を参照して詳細に説明する。
【0024】
(反射部)
反射部4は、合成樹脂材料からなる基材の表面に、蒸着等の手段により反射膜を形成した凹面鏡である。反射部4の基材となる合成樹脂材料としては、高流動性で高硬度のため位置決め精度が良い環状オレフィン系樹脂が選択される。環状オレフィン系樹脂の具体例としては、シクロオレフィンポリマー(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)が含まれる。
【0025】
反射部4は、表面に形成される凹面鏡部41と、背面の周囲に突出形成される背面補強リブ42と、+Y方向側端部に+Y方向に向けて突出形成される第1軸部S1と、-Y方向側端部に-Y方向に向けて突出形成される板状の固定部43と、を一体に有する。第1軸部S1は、第1回転支持部7によって回転可能に支持され、固定部43には、別体の軸部材6がネジ固定される。なお、固定部43と軸部材6の固定構造については、後に詳述する。
【0026】
軸部材6は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂製であり、例えば、ポリカーボネート(PC)や、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタラート(PET)のポリマーアロイ(PC/PET)を用いて形成されている。
【0027】
軸部材6は、固定支持部61と、第2軸部S2と、連結レバー部62と、を一体に有する。固定支持部61は、反射部4の固定部43を固定支持する。第2軸部S2は、固定支持部61から-Y方向に向けて突出形成され、第2回転支持部8によって回転可能に支持される。連結レバー部62は、固定支持部61から+X方向に向けて突出形成され、回転駆動部9に連結される。
【0028】
このような構成によれば、環状オレフィン系樹脂製の反射部4を回転駆動させるものでありながら、反射部4の背面を保持するホルダが不要となる。また、回転駆動部9の駆動力を受ける第2軸部S2側は、環状オレフィン系樹脂よりも剛性が低い別体の軸部材6で構成されるので、回転駆動部9の駆動力で反射部4にクラックが生じる可能性を低減できる。また、回転駆動部9の駆動力を受けない第1軸部S1側は、反射部4に一体形成されるので、第1軸部S1側を別部材で構成する場合に比べて部品点数の削減や構造の簡略化が図れる。
【0029】
図2及び図8に示すように、軸部材6の固定支持部61は、固定部当接面(図示せず)と、補強リブ61aと、位置決め突起61bと、ネジ穴(図示せず)を備える。固定部当接面には、反射部4の固定部43の+X側の面が当接される。補強リブ61aは、固定部当接面の端縁部から-X方向に突出形成される。補強リブ61aは、軸部材6を補強するとともに、固定部43を位置決めする機能を有する。位置決め突起61bは、固定部当接面に複数形成され、固定部43に形成される位置決め孔43aに係合して固定部43を位置決めする。ネジ穴は、固定部当接面に複数形成され、反射部4の固定部43と軸部材6の固定支持部61とを連結するネジ63が螺合される。
【0030】
反射部4の固定部43は、複数の位置決め孔43aと、複数のネジ挿通孔43bと、を備える。複数の位置決め孔43aは、位置決め突起61bに係合して固定部43を位置決めする。ネジ挿通孔43bは、ネジ63が挿通される孔である。ネジ63は、ネジ挿通孔43bを介して軸部材6側のネジ穴に螺合することで、反射部4の固定部43と軸部材6の固定支持部61とを連結させる。このとき、ネジ63のネジ頭63aと反射部4の固定部43との間には、樹脂製のワッシャ64が介装される。ワッシャ64は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の樹脂で形成された樹脂ワッシャであり、反射部4の固定部43は、環状オレフィン系樹脂よりも低剛性の軸部材6及びワッシャ64に挟まれた状態で軸部材6にネジ固定される。これにより、環状オレフィン系樹脂からなる反射部4の固定部43を樹脂製のワッシャ64を介さずに軸部材6にネジ固定する場合に比べ、反射部4の固定部43に作用する負荷を低減し、クラックの発生を抑制できる。
【0031】
図2図4に示すように、第1軸部S1は、反射部4の+Y方向側端部に台座部44を介して一体に形成されている。台座部44は、X方向から視て略コの字状を有し、先端面に第1軸部S1が突出形成される。第1軸部S1は、貫通孔45aを有する円筒軸部45と、円筒軸部45を中心に120°間隔で3つ設けられた球面部46と、を有する。円筒軸部45の先端部には、傾斜面45bが形成されている。第1軸部S1は、円筒状となっていることや、球面部46が所定間隔で複数設けることにより、射出成型などの金型を用いて成形する際のヒケ(成形収縮によって生じるへこみや窪み)の発生が抑制される。
【0032】
(第1回転支持部)
図2図6に示すように、第1回転支持部7は、第1支持部材71と、第1弾性部材72と、を備える。第1支持部材71は、例えば、所定の合成樹脂から形成され、筐体1に取り付けられることで、筐体1に対して不動となる部材である。第1弾性部材72は、断面略コの字状をなすアルミニウムなどの金属製の板バネからなる。第1弾性部材72は、第1軸部S1を第1支持部材71に押し付けるように配設される。
【0033】
第1支持部材71は、図5に示すように、円筒軸部45よりも一回り大きい円筒形状の孔からなる第1孔部71aと、第1孔部71aと連通する第2孔部71bと、を備える。第1孔部71aと第2孔部71bには円筒軸部45が挿通され、第1孔部71aが円筒軸部45を収容し、第2孔部71bが球面部46を収容する。また、第2孔部71bを形成する内面には、回転軸線A方向に高さを有する三角錐の側面に沿う形状からなる摺動面が形成されており、このそれぞれの摺動面が球面部46と対になって当接する。第1支持部材71の+Y方向端面には、第1孔部71aを囲って+Y方向に隆起する凸部71cが形成されている。
【0034】
第1弾性部材72は、図4及び図6に示すように、一端部72aと他端部72bとで挟持する断面コの字状の板バネである。第1弾性部材72の一端部72aには孔部72cが設けられており、他端部72bには孔部72cに向かって凸となる球面の凸部72dが設けられている。また、第1弾性部材72の一端部72aの端部には、外側へ反るように屈曲した傾斜部72eが設けられ、第1弾性部材72の他端部72bの端部内側にはフック部72fが設けられている。
【0035】
図6に示すように、第1軸部S1は、円筒軸部45が第1孔部71aに挿通されて、円筒軸部45の先端部(傾斜面45b)が第1孔部71aから突出するように第1支持部材71に組み付けられる。
【0036】
また、第1弾性部材72は、第1支持部材71に組み付けられた第1軸部S1に装着される。第1弾性部材72の装着は、一端部72aの内面と第1支持部材71の凸部71cとが接触又は近接し、孔部72cに円筒軸部45の先端部が挿通し、他端部72bの凸部72dが貫通孔45aの基端側周縁部に接触又は近接するようになされる。
【0037】
このように第1支持部材71に組み付けられた第1軸部S1に第1弾性部材72が装着されると、第1支持部材71と第1軸部S1は、第1弾性部材72の一端部72aと他端部72bの内面とで挟持され、第1軸部S1が第1支持部材71に押圧固定される。これにより、反射部4の回転軸線A方向の位置が位置決めされる。そして、第1支持部材71と第1軸部S1は、球面部46と第2孔部71bとが実質的に点接触又は線接触状態となり、接触抵抗が極力抑制されたかたちで、第1軸部S1が第1支持部材71に回転可能に支持される。
【0038】
また、第1弾性部材72を装着するにあたっては、傾斜部72eが円筒軸部45の傾斜面45bに沿って案内されて装着し易くなっている。また、装着後、第1弾性部材72の一端部72aは、孔部72cに円筒軸部45の先端部が挿通されることによって脱落が防止され、他端部72bはフック部72fが台座部44に係合することによって脱落が防止される。
【0039】
第1軸部S1と第1回転支持部7との摺動部には、潤滑用のグリスが塗布される。環状オレフィン系樹脂は、油系グリスで融解するため、第1軸部S1と第1回転支持部7との摺動部に塗布するグリスには、シリコン系グリスが選択される。これにより、環状オレフィン系樹脂からなる第1軸部S1の融解を回避しつつ、第1軸部S1と第1回転支持部7との摺動部を潤滑することが可能になる。
【0040】
(第2回転支持部)
図7及び図8に示すように、第2回転支持部8は、第2支持部材81と、第2弾性部材82と、を備える。第2支持部材81は、例えば、所定の合成樹脂から形成され、筐体1に取り付けられることで、筐体1に対して不動となる部材である。第2弾性部材82は、アルミニウムなどの金属製の板バネからなる。第2弾性部材82は、第2軸部S2を第2支持部材81に押し付けるように配設される。
【0041】
第2支持部材81は、支持部81aと、ネジ孔部81bと、係止部81cと、を有する。支持部81aは、第2軸部S2を支持する軸受である。ネジ孔部81bは、第2弾性部材82と共に第2支持部材81を筐体1にネジ固定するための孔である。係止部81cは、後述する第2弾性部材82のフック部82bが係止される貫通孔である。
【0042】
第2弾性部材82は、+X方向側に貫通孔部82aを有し、-X方向側端部にフック部82bを有する板バネである。第2弾性部材82は、フック部82bが係止部81cに挿通された状態で、貫通孔部82aとネジ孔部81bにネジ(図示せず)を挿通して固定すると、押圧部82cが支持部81aに支持された第2軸部S2に当接する。つまり、回転軸線Aと直交して支持部81aを挟むように貫通孔部82aとフック部82bが形成され、支持部81aに対向する位置に押圧部82cが位置する。これにより、第2軸部S2が支持部81aに押し付けられる。
【0043】
また、第2弾性部材82は、貫通孔部82aと押圧部82cとの間に、屈曲部82dが形成されている。この屈曲部82dが形成されていない場合においては、ネジによる締め付けにより第2弾性部材82が貫通孔部82aを中心に歪みが生じると、第2軸部S2と押圧部82cとの間に隙間が生じる可能性がある。この場合、車両の走行などにより生じた揺れが伝達してヘッドアップディスプレイ装置100が振動すると、異音が生じる可能性がある。
【0044】
一方で、屈曲部82dが形成されている場合においては、ネジによる締め付けにより第2弾性部材82に貫通孔部82aを中心に歪みが生じても、この歪みが屈曲部82dより-X方向側の押圧部82cに伝わらず、第2軸部S2と押圧部82cとの間に隙間が生じる可能性が低減される。
【0045】
さらに、第2弾性部材82の+X方向側端部には、上方(+Z方向)に向かって屈曲して延びる持ち手部82eが形成されている。ヘッドアップディスプレイ装置100を組立する作業者は、この持ち手部82eを持って組み付けることができるため、組み付け性が良好となる。
【0046】
(回転駆動部)
回転駆動部9は、フレーム91と、モータ92と、送りネジ軸93と、送り部材94と、を備える。フレーム91は、モータ92を固定支持するとともに、送りネジ軸93を回転可能に支持する。また、フレーム91は、送り部材94の送りネジ軸93周りの回転を規制する。モータ92は、反射部4を回転軸線A周りに回転させるための駆動力を生むステッピングモータである。送りネジ軸93は、モータ92の出力軸(図示せず)に連結され、モータ92の駆動に応じて正逆回転する。送り部材94は、送りネジ軸93に螺合する螺合部94aと、軸部材6の連結レバー部62に当接状に連結される連結部94bと、を備える。モータ92の駆動に応じて送りネジ軸93が回転すると、フレーム91によって送りネジ軸93周りの回転が規制された送り部材94は、送りネジ軸93の軸線に沿って+Z方向及び-Z方向に移動する。これにより、連結レバー部62を介して反射部4が回転軸線A周りに回転し、反射部4の反射角度が変更される。
【0047】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 ヘッドアップディスプレイ装置
1 筐体
10 開口部
11 透光性カバー
2 表示器
3 平面鏡
4 反射部
41 凹面鏡部
42 背面補強リブ
43 固定部
43a 位置決め孔
43b ネジ挿通孔
44 台座部
45 円筒軸部
45a 貫通孔
45b 傾斜面
46 球面部
5 反射部回転機構
6 軸部材
61 固定支持部
61a 補強リブ
61b 位置決め突起
62 連結レバー部
63 ネジ
63a ネジ頭
64 ワッシャ
7 第1回転支持部
71 第1支持部材
71a 第1孔部
71b 第2孔部
71c 凸部
72 第1弾性部材
72a 一端部
72b 他端部
72c 孔部
72d 凸部
72e 傾斜部
72f フック部
8 第2回転支持部
81 第2支持部材
81a 支持部
81b ネジ孔部
81c 係止部
82 第2弾性部材
82a 貫通孔部
82b フック部
82c 押圧部
82d 屈曲部
82e 持ち手部
9 回転駆動部
91 フレーム
92 モータ
93 送りネジ軸
94 送り部材
94a 螺合部
94b 連結部
S1 第1軸部
S2 第2軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8