(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175501
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081911
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本城 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 一二
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA38
3D301EA86
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC55
(57)【要約】
【課題】車両の走行制御をより最適な状態にすることができる車両制御装置および車両制御システムを提供する。
【解決手段】車両制御装置は、例えば、前記車両制御装置が設けられる車両に搭載された検出部で検出される現在の走行状態における検出情報と、車両の現在の位置を示す位置情報とを取得する取得部と、取得した検出情報と位置情報とを関連付けた走行情報を外部の管理装置に送信する送信部と、管理装置で、車両の現在の走行状態に対して、当該車両の走行制御に影響する車両の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの車両の諸元情報を受信する受信部と、諸元情報を受信した場合に、諸元情報に対応する車両の諸元を変更して、車両の走行制御に反映させる制御部と、備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置であって、
前記車両制御装置が設けられる車両に搭載された検出部で検出される現在の走行状態における検出情報と、前記車両の現在の位置を示す位置情報とを取得する取得部と、
取得した前記検出情報と前記位置情報とを関連付けた走行情報を外部の管理装置に送信する送信部と、
前記管理装置で、前記車両の現在の走行状態に対して、当該車両の走行制御に影響する前記車両の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの前記車両の諸元情報を受信する受信部と、
前記諸元情報を受信した場合に、前記諸元情報に対応する前記車両の諸元を変更して、前記車両の走行制御に反映させる制御部と、
を備える、車両制御装置。
【請求項2】
前記諸元情報は、前記車両の現在の前記走行情報である第一の走行情報と、前記管理装置に蓄積された前記車両が過去に同じ位置を走行した場合の前記第一の走行情報に対応する第二の走行情報との差分が予め定めた閾値以上の場合に、前記差分が前記閾値未満になるように変更された諸元を含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記諸元情報は、少なくとも前記車両のサスペンションのばね上速度を演算する際に利用する第一の諸元と、前記サスペンションのストローク速度を演算する際に利用する第二の諸元である、請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記諸元情報は、前記車両の性能影響寄与度と、予め定められた変更頻度とに基づき、一定期間定額で取得可能な第一の取得形態と、取得の都度に取得料金が発生する第二の取得形態と、に分類されて取得可能である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記諸元情報は、前記車両の整備条件が所定の条件を満たした場合、前記車両の設計時に定められた標準諸元を変更済みの前記諸元情報とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
車両に設けられ、当該車両の走行制御に用いる諸元を変更可能に管理する車両制御装置と、
前記車両の外部に設けられ、前記車両との間で情報の送受信が可能で、前記車両から取得した情報を蓄積するとともに、前記情報に基づき前記車両の前記諸元の管理を行う管理装置と、
を備え、
前記車両制御装置は、
前記車両に搭載された検出部で検出される現在の走行状態における検出情報と、前記車両の現在の位置を示す位置情報とを取得する取得部と、
取得した前記検出情報と前記位置情報とを関連付けた走行情報として、前記管理装置に送信する送信部と、
前記管理装置で、前記車両の現在の走行状態に対して、当該車両の走行制御に影響する前記車両の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの前記車両の諸元情報を受信する受信部と、
前記諸元情報を受信した場合に、前記諸元情報に対応する前記車両の諸元を変更して、前記車両の走行制御に反映させる制御部と、
を備え、
前記管理装置は、
前記車両から送信された前記走行情報を受信する受信部と、
受信した前記走行情報を蓄積するデータ蓄積部と、
前記車両の現在の前記走行情報である第一の走行情報と、前記データ蓄積部に蓄積された前記車両が過去に同じ位置を走行した場合の前記第一の走行情報に対応する第二の走行情報との差分が予め定めた閾値以上の場合に、前記差分が前記閾値未満になるように変更された諸元を算出する変更諸元算出部と、
変更済みの前記車両の前記諸元情報を前記車両に送信する送信部と、
を備える、車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両制御装置および車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両をより快適に走行させるために、走行時の自車両の挙動を、自車両に搭載した各種センサを用いて検出して、走行制御に適宜反映させる車両制御装置が提案されている。例えば、路面状態に応じてサスペンションの減衰係数等を変化させて、制振性を向上するサスペンション制御装置が提案されている。このようなサスペンション制御装置を搭載する車両の中には、外部のサーバと通信を行い、同じ道路区間を走行する他車両の走行情報を取得し、その他車両の走行情報を自車両のサスペンション制御に適用することにより、自車両における演算処理負荷を軽減しつつ、自車両の制振性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の場合、自車両とは異なる他車両が同じ道路区間を走行した際に取得した走行情報を利用して自車両における減衰係数等の制御目標値の算出を行っている。そのため、他車両の走行情報に基づいて算出した減衰係数等の制御目標値を車両諸元の異なる自車両に対して適用しても、自車両で期待する制御結果(例えば、制振性能等)を得ることが難しいという問題があった。さらに、制御目標値を算出する際に利用する自車両の各種諸元は、一般的には車両設計時等に設定された諸元を利用して演算を行うが、自車両の使用状況によって諸元が変化したり、意図的に変更されたりする場合がある。このような場合も期待する制御結果が得られ難くなる場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、自車両の走行制御をより最適な状態にすることができる車両制御装置および車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる車両制御装置は、例えば、前記車両制御装置が設けられる車両に搭載された検出部で検出される現在の走行状態における検出情報と、前記車両の現在の位置を示す位置情報とを取得する取得部と、取得した前記検出情報と前記位置情報とを関連付けた走行情報を外部の管理装置に送信する送信部と、前記管理装置で、前記車両の現在の走行状態に対して、当該車両の走行制御に影響する前記車両の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの前記車両の諸元情報を受信する受信部と、前記諸元情報を受信した場合に、前記諸元情報に対応する前記車両の諸元を変更して、前記車両の走行制御に反映させる制御部と、備える。この構成によれば、例えば、車両の現在の走行状態に基づき、車両の諸元の変更が可能になるため、車両の走行制御をより最適化することができる。
【0007】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御装置の前記諸元情報は、例えば、前記車両の現在の前記走行情報である第一の走行情報と、前記管理装置に蓄積された前記車両が過去に同じ位置を走行した場合の前記第一の走行情報に対応する第二の走行情報との差分が予め定めた閾値以上の場合に、前記差分が前記閾値未満になるように変更された諸元を含んでもよい。この構成によれば、例えば、より効率的かつ適切に車両の変更された諸元を車両に提供することができる。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御装置の前記諸元情報は、例えば、少なくとも前記車両のサスペンションのばね上速度を演算する際に利用する第一の諸元と、前記サスペンションのストローク速度を演算する際に利用する第二の諸元であってもよい。この構成によれば、例えば、サスペンションの制振制御をより正確に行うことができる。
【0009】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御装置の前記諸元情報は、例えば、前記車両の性能影響寄与度と、予め定められた変更頻度とに基づき、一定期間定額で取得可能な第一の取得形態と、取得の都度に取得料金が発生する第二の取得形態と、に分類されて取得可能であるようにしてもよい。この構成によれば、例えば、車両にとって適切な諸元をより効率的に取得することができる。
【0010】
また、本発明の実施形態にかかる車両制御装置の前記諸元情報は、例えば、前記車両の整備条件が所定の条件を満たした場合、前記車両の設計時に定められた標準諸元を変更済みの前記諸元情報としてもよい。この構成によれば、例えば、車両の部品の消耗等が原因で諸元情報が変更されている場合、車両の整備や部品(タイヤ等も含む)の交換によって消耗等による原因が解消された場合、標準諸元に一度戻される。その結果、その後の車両の走行状況等に基づく、諸元情報の変更をより正確に行うことができる。
【0011】
本発明の実施形態にかかる車両制御システムは、例えば、車両に設けられ、当該車両の走行制御に用いる諸元を変更可能に管理する車両制御装置と、前記車両の外部に設けられ、前記車両との間で情報の送受信が可能で、前記車両から取得した情報を蓄積するとともに、前記情報に基づき前記車両の前記諸元の管理を行う管理装置と、を備える。前記車両制御装置は、前記車両に搭載された検出部で検出される現在の走行状態における検出情報と、前記車両の現在の位置を示す位置情報とを取得する取得部と、取得した前記検出情報と前記位置情報とを関連付けた走行情報として、前記管理装置に送信する送信部と、前記管理装置で、前記車両の現在の走行状態に対して、当該車両の走行制御に影響する前記車両の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの前記車両の諸元情報を受信する受信部と、前記諸元情報を受信した場合に、前記諸元情報に対応する前記車両の諸元を変更して、前記車両の走行制御に反映させる制御部と、を備える。また、前記管理装置は、前記車両から送信された前記走行情報を受信する受信部と、受信した前記走行情報を蓄積するデータ蓄積部と、前記車両の現在の前記走行情報である第一の走行情報と、前記データ蓄積部に蓄積された前記車両が過去に同じ位置を走行した場合の前記第一の走行情報に対応する第二の走行情報との差分が予め定めた閾値以上の場合に、前記差分が前記閾値未満になるように変更された諸元を算出する変更諸元算出部と、変更済みの前記車両の前記諸元情報を前記車両に送信する送信部と、を備える。この構成によれば、例えば、車両の現在の走行状態に基づき、車両の諸元の変更が可能になるため、車両の走行制御をより最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)の制御対象となり得るサスペンションおよびその周辺の構造を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)のサスペンション制御に関する諸元変更の影響因子の性能影響寄与度と変更頻度の関係を示す例示的な説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)のサスペンション制御に関する諸元変更の変化要因と、入力加速度変化例と影響因子の関係を示す例示的な図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる車両制御システムの処理の流れを説明する例示的なフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)の諸元を変更する際の提供形態(課金形態)を示す例示的な図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる車両制御システム(車両制御装置)のリアステアリング制御に関する諸元変更の影響因子の性能影響寄与度と変更頻度の関係を示す例示的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0014】
図1は、実施形態にかかる車両制御システム10(車両制御装置10A)の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0015】
車両制御システム10は、自車両12に搭載された車両制御装置10Aと、外部の管理センター等に設置された管理装置14とで構成されている。本実施形態では、車両制御装置10Aの制御対象として、自車両12に搭載されている電子制御サスペンション装置とする場合を一例として説明する。電子制御サスペンション装置は、車両が走行する路面の状況に応じて、目標制御量を算出して振動を抑制して車両の乗り心地を向上させるものである。したがって、
図1の場合、車両制御装置10Aは、サスペンション制御ECU(Electronic Control Unit)である場合が示されている。
【0016】
電子制御サスペンションにおいて、目標制御量を算出する場合に利用する情報は、大別して、車載センサを用いて路面の状況(凹凸等)によって変化する自車両12の挙動をリアルタイムで収集される検出信号と、車両開発(適合)にて定められる制御定数(設計段階で定めた標準諸元に基づく定数)である。目標制御量を算出する際に用いる制御定数または標準諸元の値は、車両がユーザの手に渡った以降変更されることはないが、実際の車両としては、積載条件をはじめ、様々な諸元が変更される可能性があり、演算により導かれる目標制御量が必ずしも狙いの値になるとは限らない、という状況が生じる。なお、制御定数には、物理的に定められる車両の標準諸元の他に、物理式にて求められる車両状態量と実車両状態量との差分を合わせるために設定される同定定数が含まれる。
【0017】
前述したように、設計時に定められた諸元(標準諸元)は、車両がユーザの手に渡った後、一般的には変更されないが、自車両12の使用状況によって、搭乗人数や荷物の量が変化する。つまり、車両重量が変化する。また、諸元は、走行に伴うサスペンションの構成部品(ばねやブッシュ等)の摩耗によって変化してしまったり、例えば、夏タイヤと冬タイヤとの交換や、サスペンションのスプリングの交換等によって変化してしまったりする場合がある。一方、車載センサを用いてリアルタイムで収集する検出信号は、走行する路面の状態(凹凸状態や路面の摩擦係数等)や車速等によって変化する。したがって、電子制御サスペンション装置の目標制御量が狙いの値にならない場合(例えば、振動抑制が十分にできない場合)に、検出信号の変化(路面状態や車速の変化等)が原因であるか、制御定数(標準諸元)の変化(交換や摩耗等)が原因であるかの判別がつきにくい場合がある。
【0018】
ところで、自車両12が走行する場合、同じ路面(同じ路面状況の道路)を同じ速度で走行する場合、車載センサで検出される検出結果は、概ね同じ結果になる。そこで、本実施形態の車両制御システム10の場合、同じ条件で走行している場合、例えば、同じ道路を同じ速度で走行している場合における自車両12の走行状態を検出する。例えば、自車両12が個人所有の車両である場合、その保管場所は、自宅である場合が多い。この場合、自宅周辺道路の路面状況(路面の舗装状態や凹凸状態、マンホールの有無、道路の繋ぎ目の存在等)は、走行タイミングに拘わらず概ね同じであると見なせる。また、その道路を走行する場合、制限速度が変更されることはほぼなく、また交通状況(渋滞の程度)も時間帯によって異なるものの、同じ時間帯であれば概ね同じであると見なせる。したがって、自車両12は、自宅周辺で、走行位置(走行道路)が同じであれば概ね同じ走行状態で走行すると見なせる。
【0019】
このとき、走行状態が過去の走行状態と比較して変化していた場合、制御定数(標準諸元)の変化が原因で走行状態が変化していると推定できる。この場合、自車両12の乗り心地に変化が生じている可能性があり、電子制御サスペンション装置の目標制御値を算出する場合に、制御定数の修正が必要であると判定することができる。つまり、本実施形態の車両制御システム10の場合、従前では、固定値として利用していた、車両の開発(設計)時に定められた制御定数(標準諸元に基づく定数)を、自車両12の走行状態に応じて変化させる。その結果、現在の走行状態に適した目標制御値を算出し、より適切な制御を実現することができるようになる。
【0020】
以下、自車両12の走行状態に応じて制御定数(従来、固定値であった諸元情報)を変化させる、本実施形態の車両制御装置10Aの構成を詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の車両制御装置10Aは、自車両12の走行時に取得される走行状態における検出情報と、その検出情報を取得したときの位置情報とを関連付けた走行情報を管理装置14に送信する。そして、管理装置14は、送信した現在の走行情報を逐次蓄積して、自車両12の走行時における車両の状態を示す専用のデータベースを構築する。この場合、送信する走行情報には、一定の条件を満たす道路、すなわち、上述した「いつも通る道路」、例えば、自宅周辺の道路を走行した場合の情報が含まれる。
【0022】
車両制御装置10Aは、CPU(central processing unit)や、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、SSD(solid state drive、フラッシュメモリ)等の記憶装置(記憶部)を有する。CPUは、例えば、ROM等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することで、電子制御サスペンション装置の目標制御量を決定するとともに、その制御量に基づいて、各車輪の電子制御サスペンション装置の制御を行う。
【0023】
車両制御装置10Aは、例えば、送受信部16、取得部18、車両諸元記憶部20、信号処理部22、制御部24、出力処理部26等を含む。送受信部16、取得部18、信号処理部22、制御部24、出力処理部26等は、その全て、または、その一部がROM等の記憶されたプログラムをCPUに読み込み実行することで実現される機能モジュールによって動作するようにしてもよい。また、個別にハードウエアとして実現されてもよい。車両諸元記憶部20は、書き換え可能なSSDやHDD(hard disk drive)で実現されてもよい。車両諸元記憶部20は、車両制御装置10Aとは別に設けられてもよい。
【0024】
外部の管理センター等に設置された管理装置14は、一般的なパーソナルコンピュータを利用可能であり、例えば、送受信部34、データ蓄積部36(サーバ)、異常検出部38、変更諸元算出部40等を備える。
【0025】
車両制御装置10Aの送受信部16は、管理装置14に設けられた送受信部34と間で通信を行い、種々の情報の送受を行う。なお、車両制御装置10Aの送受信部16や管理装置14の送受信部34は、送信部と受信部とが別々の構成として設けられてもよい。
【0026】
送受信部16は、取得部18が取得した検出信号(車載センサ28やGPS受信部30が取得した情報)を信号処理部22で信号処理して走行情報として、管理装置14側に送信する。また、管理装置14で、自車両12の現在の走行状態に対して、当該自車両12の走行制御に影響する自車両12の諸元の変更が必要であると判定された場合に送信される、変更済みの自車両12の諸元情報を受信可能である。
【0027】
取得部18は、例えば、自車両12に搭載された車載センサ28(検出部)で検出される現在の走行状態における検出情報(例えば、加速度情報)と、GPS受信部30で取得する自車両12の現在の位置を示す位置情報とを取得する。車載センサ28は、例えば、電子制御サスペンション装置に設けられた、加速度センサや各タイヤ(車輪)に設けられた車輪速センサ等である。また、GPS受信部30は、車両制御システム10用の専用受信部として設けられてもよいし、ナビゲーションシステムからGPS信号を取得するものでもよい。この場合、取得部18は、ナビゲーションシステムから直接GPS信号(位置情報)を取得してもよい。そして、信号処理部22は、検出情報と、位置情報とを関連付けた、自車両12の走行情報を生成して送受信部16に提供する。送受信部16は、信号処理部22が生成した走行情報を管理装置14側の送受信部34に送信する。なお、取得部18は、現在の自車両12の走行情報をRAMやSSD等に走行履歴として保存してもよい。
【0028】
車両諸元記憶部20は、自車両12の開発(設計)時に定めた諸元(標準諸元)を更新(上書き)可能に記憶する。車両諸元記憶部20は、管理装置14側で、自車両12の現在の走行状態に対して、自車両12の諸元の変更が必要であると判定された場合に算出された諸元情報(変更済みの諸元)を、送受信部16を介して取得した場合に更新し記憶する。なお、車両諸元記憶部20は、書き換え不可の標準諸元を記憶する固定領域と、同じ標準諸元を書き換え可能な更新領域に記憶しておいてもよく、変更済みの諸元情報を取得した場合に、更新領域で上書き処理を行うようにしてもよい。
【0029】
信号処理部22は、車載センサ28で取得した各検出情報の信号処理を行う。信号処理部22は、例えば、ばね上速度演算処理部22a、・・・、ストローク速度推定処理部22n等の複数の信号処理部を含む。例えば、ばね上速度演算処理部22aは、電子制御サスペンション装置に設けられた加速度センサからばね上加速度を取得し、ばね上速度を算出する。また、信号処理部22では、算出したばね上速度に基づき、自車両12のヒーブ、ロール、ピッチの速度演算等も行うことができる。信号処理部22は、自車両12のヒーブ、ロール、ピッチごとのばね上共振、ばね下共振の組合せ(6種類)に分類する処理等も行うことができる。また、例えば、ストローク速度推定処理部22nは、ばね上加速度に基づき、サスペンションのストローク速度の推定値等を算出する。なお、例えば、ばね上速度演算処理部22a、ストローク速度推定処理部22nに関しては、管理装置14から変更済みの諸元情報が提供され、車両諸元記憶部20に記憶されている諸元が更新されている場合、変更済みの諸元情報を用いてばね上速度やストローク速度推定値の算出が行われる。この場合、現在の自車両12の状態に応じた、より正確なばね上速度やストローク速度推定値を得ることができる。
【0030】
制御部24は、管理装置14から更新済みの諸元情報を取得した場合、現在に車両諸元記憶部20に記憶されている対応する諸元情報を変更(更新、上書き)して、自車両12の走行制御に反映させる。制御部24は、例えば、乗り心地制御部24a、・・・、大振幅ショック低減制御部24n等の複数の制御部を含み、信号処理部22での信号処理の結果を用いて、電子制御サスペンション装置を制御するための種々の制御値の算出を行う。例えば、乗り心地制御部24aは、車輪速センサで取得した検出情報を信号処理部22で処理することにより取得した車体速度や、信号処理部22での演算の結果得られた、ばね上速度、ヒーブ、ロール、ピッチの速度、ストローク速度推定値等および車両諸元記憶部20に記憶されている最新の諸元情報(諸元情報が更新された場合の諸元情報、標準諸元のままの場合の諸元情報も含む)に基づき、乗り心地を改善するためのばね上制振制御のための目標制御値を算出する。また、例えば、大振幅ショック低減制御部24nは、車体速度やストローク速度推定値等および諸元情報に基づき大振幅ショックを低減するための目標制御値を算出する。このように、信号処理部22における各演算において、管理装置14から変更済みの諸元情報が提供され、車両諸元記憶部20に記憶されている諸元が更新されている場合、変更済みの諸元情報を用いて各種演算が実行される。その結果、現在の自車両12の状態に応じた、より正確な目標制御値を算出することができる。
【0031】
ここで、目標制御値の算出について説明する。本実施形態の車両制御システム10を、電子制御サスペンション装置の制御に適用する場合、従前では固定値として利用されていた制御定数(諸元情報)を走行状態に応じて更新(書き換える)ことにより、サスペンションの減衰係数等をより適切に制御し、自車両12の乗員に対する入力(振動)を可能な限り減少させる。その結果、乗り心地の向上を行う。
【0032】
例えば、
図2は、電子制御サスペンション装置の単輪モデルで、タイヤWとばね下、ばね上を模擬したものである。また、そのときのばね上共振の運動方程式が式1で、ばね下共振の運動方程式が式2である。
【数1】
【数2】
図2において、Gは路面であり、M1はばね下重量(サスペンションアーム等の部品重量)、M2は、ばね上重量(自車両12のボディ重量等)であり、路面Gとばね下(ばね下重量M1)との間にタイヤW(弾性体)が存在する。Ktはタイヤ特性である。また、変位zは、タイヤWの変位(振動量)である。また、ばね下(ばね下重量M1)、ばね上(ばね上重量M2)との間には、サスペンションS(ばねやショックアブソーバ、ダンパ等)が存在する。なお、CsはサスペンションSの減衰係数、KsはサスペンションSのばね定数である。また、X1はばね下の変位量、X2はばね上の変位量である。
【0033】
ここで、電子制御サスペンション装置の性能に影響する要因は、例えば、
図3に示されるようなものが考えられる。
図3は、車両制御システム10(車両制御装置10A)のサスペンション制御に関する諸元変更の影響因子の性能影響寄与度と変更頻度の関係を示す例示的な説明
図42である。具体的には、乗員・積載条件(前後バランス等)、サスペンションSのアブソーバ油温、トーイングの有無、アブソーバシール変化(特性変化)、タイヤ空気圧、システム電源電圧、タイヤ銘柄(サマー/スタッドレス)、エンジンオイル、タイヤ摩耗状況、ブレーキパッドの摩耗状況、E/G(エンジン)、T/M(トランスミッション)のマウント特性、シート特性変化、サスブッシュ特性、ボディー剛性等である。また、これらの要因は、それぞれ、変更頻度が
図3に示されるように異なる。例えば、乗員・積載条件は、乗車のたびに乗員数が変化したり、搭載する荷物の量や重さが変化したりするため、日毎に変更される可能性がある。同様に、アブソーバ油温は、日々の走行状況により変化(変更)される可能性がある。また、トーイング(牽引車の接続)の有無は、例えばレジャーシーズン等に行われるため、数ヶ月(例えば3ヶ月)に一度等の頻度で変更される可能性がある。同様に、タイヤ空気圧等は、数ヶ月(例えば3ヶ月)に一度の点検等の際に調整(変更)される可能性がある。また、タイヤ銘柄(サマー/スタッドレス)の交換は、6ヶ月ごとに行われる可能性がある。また、タイヤ摩耗状況やブレーキパッドの摩耗状況等は、年単位(例えば1年)で見直される可能性がある。E/G(エンジン)、T/M(トランスミッション)のマウント特性以降は、さらに長い期間(例えば3年や6年)等で見直される可能性がある。
【0034】
前述したように、
図3で示す要素は、標準諸元として固定値が利用され、各種演算が行われる。したがって、例えば、上述の式1や式2を用いて演算を行う場合でもばね下重量M1やばね上重量M2は固定値として利用される。その結果、前述したように、目標制御値を算出する場合に、走行時の路面状況等を考慮しても、期待する制御がしにくい場合がある。
【0035】
図4は、車両制御システム10(車両制御装置10A)のサスペンション制御に関する諸元変更の変化要因と、入力加速度変化例と影響因子の関係を示す例示的な関係
図44である。
図4に示されるように、例えば、ばね上重量M2の場合、乗員/積載状態に応じてUP/DOWNする。その結果、走行時に自車両12の車載センサ28の入力加速度が変動する。同様に、サスペンション特性は、温度の変化、摺動特性の変化、アブソーバやブッシュ等の劣化により、サスペンションSの減衰係数CsやサスペンションSのばね定数KsがUP/DOWNする。その結果、走行時に自車両12の車載センサ28の入力加速度が変動する。また、例えば、ばね下重量M1の場合、タイヤWの交換やホイールの交換等によってUP/DOWNする。その結果、走行時に自車両12の車載センサ28の入力加速度が変動する。さらに、例えば、タイヤ特性Ktの場合、タイヤWの交換やタイヤ空気圧の変化、ブッシュの劣化等によってUP/DOWNする。その結果、走行時に自車両12の車載センサ28の入力加速度が変動する。したがって、「いつも通る道路」において、過去の走行状態と現在走行状態を比較することにより、自車両12の走行制御に影響する制御定数(諸元情報)の変化が生じているか否かを検出し、変化が生じている場合に自車両12の制御定数(諸元情報)の更新を行う。その結果、現在の自車両12の車両状態(走行状態)に最も適した目標制御値を算出することができる。
【0036】
図1に戻り、出力処理部26は、制御部24が算出した各種目標制御値に基づき、アクチュエータ32(例えば、電子制御サスペンション装置のソレノイド等)の制御を実現する目標電流を出力する。出力処理部26は、例えば、最終目標出力演算部26a、電流フィードバック部26b等を含む。最終目標出力演算部26aは、制御部24の算出した各種目標制御値に基づき、電子制御サスペンション装置のアクチュエータ32に入力する最終制御値を算出する。すなわち、最終目標出力演算部26aは、自車両12に対する制振特性を最適な状態にする最終制御値(自車両12に搭乗している乗員に対する振動入力を最小にする制御値)を算出する。そして、電流フィードバック部26bは、現時点で、アクチュエータ32に提供されている電流値と最終目標出力演算部26aが算出した最終制御値とに基づき、現時点で実際にアクチュエータ32に提供すべき電流値を算出し、アクチュエータ32を駆動する。
【0037】
一方、管理装置14のデータ蓄積部36は、前述したように、自車両12の送受信部16から送信される、自車両12の走行時における走行情報(取得部18が取得した車載センサ28やGPS受信部30の検出情報(走行情報)を逐次記憶し、自車両12の挙動(振動の状態等)を示す専用のデータベースを構築する。つまり、「いつも通る道路」、例えば、自宅周辺の道路を走行した場合に得られる振動状態を示すデータベースを構築する。なお,この場合、走行情報には、自車両12の走行時間や日時、天候等を関連付けて記憶してもよい。例えば、走行時間や時期(季節)が異なる場合、渋滞状態が異なったり、周囲の明るさ、路面の状態(ドライやウエット、凍結等)の違いにより走行速度が変化したりする場合がある。このような場合、「いつも通る道路」における走行速度が変化し、電子制御サスペンション装置の挙動が異なる原因になる場合がある。したがって、自車両12の走行時間や日時、天候等を考慮することにより、さらに高精度の自車両12の走行状態の把握が可能になる。
【0038】
異常検出部38は、送受信部34が車両制御装置10Aから受信した自車両12の現在の走行情報(第一の走行情報)と、データ蓄積部36に蓄積された自車両12が過去に同じ位置(いつも通る道路の同じ位置)を走行した場合の第一の走行情報に対応する蓄積情報(第二の走行情報)との比較を行う(例えば、差分を算出する)。なお、第二の走行情報は、「いつも通る道路」を前回走行したときの走行情報でもよいし、過去に走行した走行情報の平均値でもよい。そして、異常検出部38は、第一の走行情報と第二の走行情報との間に、予め定めた閾値以上の差異(差分)が存在する場合、自車両12の走行制御に影響する制御定数(諸元)の変化(変更)が生じた(目標制御値の算出に異常が生じる可能性がある)と異常判定を行う。なお、異常検出部38は、第一の走行情報と第二の走行情報との間の差異が、予め定めた閾値未満である場合、自車両12の走行制御に影響する諸元の変化(変更)は生じていないと判定する。つまり、自車両12の諸元情報は更新されずに、現状の状態が維持される。
【0039】
このように構成される、車両制御システム10の処理の流れの一例を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
車両制御装置10Aは、例えば、GPS受信部30が取得したGPS信号に基づく位置情報により、自車両12が「いつも通る道路」、例えば自宅周辺の道路を走行していると判定した場合(S100のYes)、車載センサ28を介して自車両12の走行状態を示す検出情報(例えば加速度情報)を取得する。そして、検出情報とGPS受信部30が取得した位置情報とを関連付けた走行情報を送受信部16を介して管理装置14(送受信部34)に逐次送信する(S102)。管理装置14は、自車両12(車両制御装置10A)から走行情報を受信すると、逐次データ蓄積部36に蓄積しデータベースの更新を行う(S104)。つまり、「いつも通る道路」を走行する自車両12に関し、走行情報に関する専用のデータベースを構築する。
【0041】
管理装置14は、車両制御装置10A(自車両12)から走行情報(自車両12の現在の走行情報である第一の走行情報)と、データ蓄積部36に蓄積された自車両12が過去に同じ位置を走行した場合の第一の走行情報に対応する第二の走行情報との比較を行う(S106)。そして,第一の走行情報と、第二の走行情報との間の差分が予め定めた閾値以上の場合、つまり、「いつも通る道路」をいつものように走行しているにも拘わらず、走行状態に閾値以上の変化がある場合(S106のYes)、自車両12の走行制御に影響する諸元の変更が必要であると判定する。変更諸元算出部40は、第一の走行情報と、第二の走行情報との間の差分が閾値未満になるように自車両12の制御定数(諸元情報)を算出する(S108)。つまり、変更済みの諸元情報を算出する。
【0042】
変更諸元算出部40によって、変更済みの諸元情報が算出されると、送受信部34は車両制御装置10A(自車両12)の送受信部16に変更済みの諸元情報を送信する(S110)。車両制御装置10Aは、変更済みの諸元情報を受信すると、車両諸元記憶部20に記憶された、これまでの諸元情報を変更済みの諸元情報で更新する(S112)。信号処理部22、制御部24は、変更済みの諸元情報を用いて、電子制御サスペンション装置としての制御効果を狙い通り、つまり、自車両12に搭乗している乗員に対する振動入力を最小にする目標制御値を算出し、自車両12の電子制御サスペンション装置の制御を実行する(S114)。
【0043】
このように、従来、固定値を用いて演算を行っていた場合に比べ、電子制御サスペンション装置の振動抑制をより効果的に行うことが可能となり、自車両12の乗り心地をより改善することができる。
【0044】
なお、S106の処理において、第一の走行情報と、第二の走行情報との間の差分が閾値未満の場合(S106のNo)、S108~S112の処理をスキップする。つまり、車両制御装置10A(自車両12)の車両諸元記憶部20における諸元情報は更新されず、現状が維持される。つまり、自車両12の諸元情報は、現状では最適で有り、電子制御サスペンション装置の制振制御は十分に機能していることになる。また、S100において、自車両12が「いつも通る走路」ではないところを走行している場合は、S102~S112の処理をスキップし、諸元情報は更新されず現状が維持される。なお、この場合、自車両12は、自宅から出発した際に「いつも通る走路」を走行したと見なすことが可能である。つまり、自車両12の諸元情報は、「いつも通る走路」を走行した時点で、現在の自車両12の搭乗人員数や荷物量、タイヤWの状態等に適した諸元情報に更新されているとことになる。したがって、自車両12の電子制御サスペンション装置は、自車両12が「いつも通る走路」を走行した後でも、最適な状態で制振制御(走行制御)が可能であり、自車両12の乗り心地を改善することができる。
【0045】
このように、本実施形態の車両制御システム10によれば、適宜諸元情報を更新することにより、自車両12の走行制御をより最適な状態にすることができる。
【0046】
なお、
図5のフローチャートは、所定の制御周期で実行されるが、制御周期を短くして、諸元情報の更新頻度を高くすることにより、そもそもの目標制御量算出における検討条件(要素)を一定範囲内に絞り込める。その結果、制御としてのロバスト性が高くなり、より制御効果を高めることができる。
【0047】
図3に示す各要素のうち、乗員・積載条件が変化した場合やタイヤ銘柄が変化等を除き、温度の変化や空気圧の変化等は、上述したように、変更諸元算出部40は、第一の走行情報と、第二の走行情報との間の差分が閾値未満になるように自車両12の制御定数(諸元情報)を算出する。つまり、複数の要素に基づく変化を包括するような制御定数を算出する。一方、乗員・積載条件が変化した場合、タイヤ銘柄が変化した場合等は、ばね上重量M2やばね下重量M1の変化として、数値で諸元情報を算出して、自車両12の諸元情報を変更するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、温度の変化や空気圧の変化等を包括的に扱い制御定数を算出したが、別の実施形態では、個々の要素の変化をそれぞれの車載センサ28で検出し、管理装置14に送信し、それぞれの要素に対応する個別の諸元情報を更新するようにしてもよい。この場合、より高精度に自車両12の状態把握が可能になり、より正確な車両制御を行うことができる。
【0048】
また、上述したような諸元情報の更新を行うシステムの場合、
図3に示すように、電子制御サスペンション装置の性能に影響する要因の更新頻度は様々である。したがって、諸元情報の更新を行うサービスを有料で行う場合、異なる料金体系でサービスを行ってもよい。例えば、
図6の関係
図46に示すように、自車両12の性能影響寄与度と、予め定められた変更頻度とに基づき、一定期間定額で変更済みの諸元情報を取得可能な第一の取得形態(サブスク領域46aのサービス形態)と、変更済みの諸元情報を取得の都度に取得料金が発生する第二の取得形態(都度課金領域46bのサービス形態)と、に分類してもよい。例えば、要素の変化が比較的頻繁な要素(毎日~3ヶ月で変化するような要素)は、定額制(サブスクリプション方式)で、逐次諸元情報の更新を可能にする。一方、要素が比較的長い周期(例えば、6ヶ月以上)で変化するものは、例えば、定期点検時等に、その都度自車両12の状態に応じて諸元情報を更新するようにしてもよい。その結果、例えば、自車両12にとって適切な諸元情報をより効率的、かつ適切なタイミングで取得させることが可能で、使用しやすい諸元情報更新サービスを提供することができる。
【0049】
なお、
図6において、タイヤが新しいものと交換された場合(例えば、自車両12の整備条件(タイヤの整備条件)が所定の条件(例えば新品との交換)を満たした場合)を例にあげると、ゴムの摩耗による体積減少やゴムの硬化などの経年劣化により、タイヤ特性(ばね定数)Ktが上がっている古いタイヤの場合に比べて、タイヤ特性Ktが下がることになる。その結果、ばね下重量M1の共振周波数が下がり、突起乗り越し等での入力が減少する。この場合、諸元情報としては、設計時に定めた標準諸元を用いることで、設計通りに振動を抑制することができる。
【0050】
上述した実施形態では、車両制御システム10の制御対象を電子制御サスペンション装置にする場合を示した。他の実施形態では、例えば、車両制御システム10の制御対象をリアステアリングシステムとしてもよく、リアステアリングシステムに関する諸元情報を自車両12の走行情報の変化に基づいて、逐次更新するようにしてもよい。この場合、車両のリアステアリングシステムにおけるリアステア要求ヨーレート、あるいはリアステア要求横加速度を演算する際に利用する第一の諸元と、要求後輪操舵角を演算する際に利用する第二の諸元であってもよい。その結果、上述した実施形態と同様に、自車両12の走行制御の向上に寄与することができる。例えば、乗り心地の向上や旋回安定性の向上に寄与できる。この場合、車両制御システム10(車両制御装置10A)における、リアステアリングシステムの諸元変更の影響因子の性能影響寄与度と変更頻度の関係は、
図7に示す説明
図48のようになり、電子制御サスペンション装置に適用した場合と同様な効果を得ることができる。
【0051】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…車両制御システム、10A…車両制御装置、12…自車両、14…管理装置、16,34…送受信部、18…取得部、20…車両諸元記憶部、22…信号処理部、22a…ばね上速度演算処理部、22n…ストローク速度推定処理部、24…制御部、24a…乗り心地制御部、24n…大振幅ショック低減制御部、26…出力処理部、26a…最終目標出力演算部、26b…電流フィードバック部、28…車載センサ、30…GPS受信部、32…アクチュエータ、36…データ蓄積部、38…異常検出部、40…変更諸元算出部。