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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175523
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】印褥体及びスタンプ台又は朱肉
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/54 20060101AFI20221117BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20221117BHJP
【FI】
B41K1/54 D
C09D11/00
B41K1/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081989
(22)【出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大崎 友也
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】三矢 貴幸
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BC57
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE28
4J039BE30
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】
本発明は、捺印品質を維持しつつ、設置の自由度が高いスタンプ台又は朱肉であって、紙媒体等に捺印する前の段階で、インキを補充すべき時期を、利用者が判断することの出来る印褥体及び前記印褥体を備えるスタンプ台又は朱肉を提供することを目的とする。
【解決するための手段】
インキが含侵された印褥体であって、前記印褥体表面に表示部及び非表示部を備え、捺印可能な状態において、前記表示部の表示色と前記非表示部の表示色の色彩が同一であり、前記印褥体に含まれるインキの消費に伴い、前記表示色と非表示色との色彩が異なることを特徴とする印褥体である。より好ましくは、前記表示部の版下画像が30%~70%省略されていることを特徴とする請求項1に記載の印褥体である。さらに好ましくは、前記表示部のL*値がインキ未含侵時において44.5~62.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印褥体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキが含侵された印褥体表面に表示部及び非表示部を備え、捺印可能な状態において、前記表示部の表示色と前記非表示部の表示色とが同一色彩であり、前記印褥体に含まれるインキの消費に伴い、前記表示部の表示色と非表示部の表示色との色彩が同一でなくなる印褥体であって、前記表示部の一部が省略されていることを特徴とする印褥体。
【請求項2】
前記表示部の版下画像が30%~70%省略されていることを特徴とする請求項1に記載の印褥体。
【請求項3】
前記表示部のL*値がインキ未含侵時において44.5~62.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印褥体。
【請求項4】
前記印褥体が、上方が開放されたケースに収容されることを特徴とする請求項1~3に記載のスタンプ台又は朱肉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印鑑やスタンプなど捺印時に使用するスタンプ台等の改良に係るものであり、インキを補充すべき時期を明確にすることを目的とするスタンプ台又は朱肉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印鑑やスタンプ等の捺印時に使用するスタンプ台等には、従前から様々な種類の形状のもの、例えば朱肉液(朱油)をパッドに含侵させた丸形のスタンプ台や、黒色・赤色等のスタンプ台インキをパッドに含侵させた丸型のスタンプ台等がある。また、特許文献1のように、前記パッドの表面に、企業のロゴや、住所等が印刷されたスタンプ台が使用されている。前記のような印刷されたスタンプ台は、広告・宣伝を目的とするものであり、使用する者が、印刷されたロゴや住所等をはっきりと確認できるように、例えば、含侵されたインキの色を赤色、印刷されたインキの色を黒といった様に、両者のインキ色を異ならせることが通例であった。
【0003】
一方、スタンプ台等の利用者には、スタンプ台等を使用する際に、インキを補充すべき時期を明確にしてほしいという要望がある。利用者は、スタンプ台中の印褥体に含まれるインキを、ゴム印等の印判の印面に接触させ、印面に付着したインキを、紙媒体等に捺印、転写する。前記の捺印作業を数千回繰り返すと、次第にスタンプ台に備えられた印褥体に含まれるインキが減少し、ゴム印等の印判の印面を、前記印褥体に接触させても、印面に十分なインキが付着せず、結果として紙媒体に捺印された印影が薄くかすれる現象が起こる。このような状態が、インキを補充すべき時期であり、捺印された印影が薄いと感じた利用者が、前記印褥体にインキを補充して、前記のような不具合を解消している。即ちインキを補充すべき時期は利用者が実際に紙媒体に捺印して初めて認識できるものであり、例えば利用者が、インキを補充すべき時期を認識することなく、契約書などの重要な書類に捺印した結果、著しくかすれた印影が前記契約書に捺印されてしまい、再度契約書の発行を申請しなくてはならないという事態が起こり得る。
【0004】
また、インキを補充すべき時期を明確にして欲しいという要望は、スタンプラリーイベントにおいても顕在化する。スタンプラリーを行う主催者は、常にスタンプラリー参加者が、スタンプ台を用いて捺印するインキ印影を監視することが出来ない。そうすると、インキを補充すべき時期を発見するのは通常参加者であり、スタンプラリーイベント参加の記念にスタンプを収集することを楽しみにしていた参加者の要望を充足することが出来ないという事態が起こり得る。実際に紙媒体等に捺印する前の段階で、インキを補充すべき時期を、利用者が判断することの出来るスタンプ台が求められていた。
【0005】
さらに、特許文献2には、インキを補充すべき時期を、客観的に判断することの出来るスタンプ台として、捺印カウンターを備え、設定した捺印回数を超えた場合に、一定量の捺印補充を自動で行うことの出来る捺印装置の開示があるが、電源が必要となったり、装置が大型化したり、コストが高くなったりなど、設置場所の自由度は低かった。
【0006】
また、インキ補充すべき時期を明確化する為、例えば図1に記載のスタンプパッド表面に「補充をしてください」などの補充を促す文字を印刷し、前記印刷色と、パッドに含浸するインキとの色彩を同一とするスタンプ台が考案されている。このようなスタンプ台を用いて捺印を行うことにより、捺印可能な状態においては、印刷色とパッドに含浸したインキとが同一色彩である為、印刷された文字が認識されないが、スタンプ台の使用に伴って、前記パッド表面のインキが薄くなって、印刷された文字が認識されるより、スタンプ台の使用者は、わざわざ捺印を行うことなく、インキ補充時期を確認することが出来るのである。
しかし、前記のスタンプパッドは、印刷色とパッドに含浸するインキとを、極めて近い色彩のものとしなければならない為、含浸するインキ色によっては、同一色彩の印刷色が存在しない場合があり、そのようなインキ色では、目視でインキ補充時期を明確に判断することが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平06-63337
【特許文献2】特開2016-203568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決する為、捺印品質を維持しつつ、設置の自由度が高いスタンプ台又は朱肉に用いられるものであって、紙媒体等に捺印する前の段階でインキを補充すべき時期を利用者が判断することが出来、かつ含浸されるインキ色を幅広く選択することが可能な印褥体及びスタンプ台又は朱肉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、インキが含侵された印褥体表面に表示部及び非表示部を備え、捺印可能な状態において、前記表示部の表示色と前記非表示部の表示色とが同一色彩であり、前記印褥体に含まれるインキの消費に伴い、前記表示色と非表示色との色彩が異なることを特徴とする印褥体である。
【0010】
請求項2の発明は、前記表示部の版下が30%~70%省略されていることを特徴とする請求項1に記載の印褥体。
【0011】
請求項3の発明は、前記表示部のL*がインク未含侵時において44.5~62.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印褥体。
【0012】
請求項4の発明は、前記印褥体が、上方が開放されたケースに収容されることを特徴とする請求項1~3に記載のスタンプ台又は朱肉である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スタンプ台の、未使用時や使用初期の状態(捺印可能な状態)は、印褥体表面における表示部6と非表示部7の部分の色彩が目視で同一な為、表示部を目視認識することが不可能だが、経時の使用に伴う印褥体表面の含侵インキの減少に伴い、印褥体表示部以外のインキ色彩の変化により、表示部が目視で認識可能となる為、使用者が紙媒体等に捺印する前の段階で、インキを補充すべき時期を判断することが可能となる。
また、表示部6の版下画像の一部を省略することにより、スタンプ台等が捺印可能な状態において、表示部6を目視認識しにくくなる。よって、表示部6に用いる色材と非表示部7に用いる含浸インキの組み合わせをより多様なものとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のスタンプ台を使用する状態の斜視図である。
図2】本発明のスタンプ台を使用する状態の正面図である。
図3】本発明のスタンプ台を使用する状態のA-A断面図である。
図4】本発明のスタンプ台を使用する状態のB-B断面図である。
図5】本発明の表示部における印刷画像の一部が、ハーフトーン処理で省略されている印褥体表面である。
図6】本発明の表示部の別の形態である。
図7】本発明の表示部の別の形態である。
図8】微小面色差計の測定視野15を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態において、印褥体が収容されたスタンプ台の位置関係を説明する為、図2及び図3で示されるように、基箱2底面2a側を下側、印褥体3表布3a側を上側、ヒンジ部側を後ろ側、その反対側を前側、スタンプ台正面図から向かって右方向を右側、左方向を左側と定義する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るスタンプ台1を使用する状態の斜視図、図2は、スタンプ台1を使用する状態の正面図、図3はスタンプ台を使用する状態のA-A断面図であって、当該スタンプ台1の外形は、印褥体3に朱肉液(インキ)を含侵させた四角型のものであり、基箱2と、基箱2内に収容された印褥体3と、印褥体3を覆う蓋体4と、前記蓋体4を基箱2に対して開閉自在に枢着するヒンジ部5から構成されている。
【0017】
本発明の基箱2は、略正方形板状の底面部2aと、前記正方形板状の底部外縁を囲うように上方向垂直に延接する壁面部2bからなるが、基箱2底面部2aの形状は、正方形板状に限らず、丸形、長方形、多角形状など幾多の形態が考えられる。また、底面部2aは、板状である必要もなく、底面部2aにリブを設けても良いし、波型形状などであっても良い。
また、基箱2の壁面部2bの内側には、上端部において爪部を設けた先端が内側方向へ延設し、全体が断面視L字形状の印褥体盤面枠8が嵌着されている。印褥体盤面枠8は、後述する表布貼り枠9と嵌合し、印褥体3を固定する役割を果たす。
【0018】
前記底面部2aと壁面部2bとで形成されるケース2の内側空間部分に、印褥体3が収容されている。本発明でいう印褥体とは、例えば朱肉用のパッドやスタンプ用のパッド等の朱肉液や各種のインキを貯留するパッドを意味するものである。ケース2に収容される印褥体3は、連続気孔を有するインキ含侵体3bと表布3aの2層構造からなる。本発明の実施形態における印褥体3は、インキ含侵体3bにフェルト、表布3aにポリエステル製の合成繊維を用いているが、必ずしも、2層構造とする必要はなく、単層、多層のいずれの構成をとることが出来る。また、本発明の実施形態に用いるスタンプ台1は、表布3aの外周部と略同一形状の表布貼り枠9を備えている。前記表布3aと前記表布貼り枠9は、表布3a裏面周部に塗布されたホットメルト接着剤により一体化されている(図示しない)。また、本発明の実施形態におけるスタンプ台1は、基箱2の壁部2bの内側には、印褥体体盤面枠8を備えている。
本発明の実施形態におけるスタンプ台1は、前記基箱2底部2aの上部にインキ含侵体3bが載置され、前記表布3aと一体化した前記表布貼り枠9が、前記インキ含侵体3b外周を包囲し、さらに、前記表布貼り枠9の上端と前記盤面枠8が凹凸嵌合することにより、印褥体3を固定する構成となっているが、本発明の目的を達成するのであれば、表布3aとインキ含侵体3bとの間や、前記基箱2の底面2aとインキ含侵体3bとの間にホットメルト接着剤を直接に塗布接着するような構成としても良い。また、印褥体3の形状は正方形に限られず、基箱の形状により幾多の形態をとり得る。また、印褥体3は、インキが含侵されることにより、インキ色がそのまま反映されやすい白色が望ましいが、インキ含侵によりインキ色が反映されるのであれば、着色の有無は問わない。さらに、インキ含侵体3bは、ゴム多孔質素材や圧縮ウレタン、フェルトなどの不織布を用いることができる。また、表布も適宜に選択可能であり、ポリエステルなどの合成繊維、木綿などの天然繊維から適宜に選択可能である。また、本発明の実施形態において、表示部6を備える表布3aは、インキが含侵されることにより、インキ色がそのまま反映されやすい白色が望ましいが、インキ含侵によりインキ色が反映されるのであれば、印褥体表面の着色の有無は問わない。さらに、表示部6は、印褥体表面に表示され、本発明の目的を達成するものであればよい。従って、表示部は、必ずしも表布に表示されている必要性はなく、例えば印褥体の構成をインキ含侵体1層構造として、インキ含侵体3b表面に、表示部を備えるような構成とすることも出来る。
【0019】
蓋体4は、前記基箱2の底面部2aと略同一形状である正方形板状の天面部4aと天面部の外縁から下側垂直方向に延接する壁面部4bとからなる。蓋体4天面部4aの形状は、前記底面部2aと同様に、正方形板状に限らず、丸形、長方形、多角形状など幾多の形態が考えられる。また、天面部4aは、板状である必要はなく、天面部4aにリブを設けても良いし、波型形状などであっても良い。本発明のスタンプ台1は、特にスタンプ台不使用時に、蓋を閉じた状態で固定するようなロック部材を備えていないが、例えば蓋体4の壁面部4bに凸部と、基箱2の壁面部2bに先端が爪形状のロック部材を設け、スタンプ台不使用時には、前記凸部先端と、前記ロック部材の先端とが互いに隙間なく嵌合するような構成とするロック機構を設けても良い。これにより、印褥体3に含侵されたインキの揮発やインキが外に飛び出したりするのを防止したり、利用者が誤って、印褥体3を触って手を汚したりすることが防止出来る。基箱2と蓋体4との嵌合は、凹凸嵌合に限られず、螺合によるものなど幾多の形態が考えられる。しかし、印褥体3に含侵されるインキの性質によっては、必ずしも基箱2と蓋体4とを嵌合させる必要性はない。
【0020】
図4は、スタンプ台を使用する状態のB-B断面図である。ヒンジ部5は、基箱2後ろ側面の左右両側に備えられる、外部が円形状で内部が略同心円の中空を形成するヒンジ軸受け部10、基箱2後ろ側中央部に備えられる外部が円形状で、内部が略同心円の中空を形成するヒンジ結合部11、前記ヒンジ軸受け部10及びヒンジ結合部11の円形状の中空部分に、挿入嵌着されてなる縦長円柱形状のヒンジ軸12とからなる。前記ヒンジ軸受け部10の円形状の中空部分とヒンジ結合部11の円形状の中空部分は、蓋部後ろ側及び基箱2後ろ側で、ほぼ完全一致した状態で嵌合わされており、それぞれの中空内部部を貫通するようにヒンジ軸12が嵌着されている構成とすることにより、蓋部4は、基箱2に対して、回動可能となっている。本発明のスタンプ台は、上記のようにヒンジ部5を備え、蓋部4が基箱2に対して回動可能とすることにより、蓋部4を開閉する構成としているが、蓋部4の開閉構成は限定されず、例えば、ヒンジ部を設けず、基箱外周に備える嵌合部と、蓋とを嵌合・脱着させるような構成や、基箱と蓋とを羅合により脱着させる構成など幾多の形態が考えられる。さらに、印褥体の汚れや、印褥体に含まれるインキの揮発を考慮する必要がないのであれば、蓋を必要としない。
【0021】
本発明において、印褥体3に含侵されているインキの成分は、一般的なヒマシ油系の油性顔料や朱肉であるが、油性/水性、顔料/染料は問わない。油性顔料の粘度は、500~5000Pas・S(60rpm・25℃)が好ましい。
【0022】
油性インキを使用する場合採用する溶剤としては、多価アルコール誘導体からなる溶剤を用いることができ、例えばジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのグリコール系溶剤や、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸や、ひまし油、アルキレンオキサイドによりひまし油を変性したひまし油脂肪酸多価アルコールエーテルや、アルコールによりひまし油を変性したひまし油脂肪酸アルキルエステルなどのひまし油脂肪酸誘導体や、流動パラフィン、マシン油、グリセリンなどを挙げることができる。本発明では、前記溶剤を単独又は混合して用いることができ、インキ全量に対して20~95重量%が望ましい。
【0023】
また、水性インキを使用する場合の溶剤は、水であるが、水と湿潤剤を併用しても良い。水は、イオンを除いたイオン交換水、天然水中に種々の不純物を除いた純水、水道水などが含まれる。湿潤剤は、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の各種グリコール類からなるものがあり、それらを併用しても良い。上記湿潤剤は、単独或いは混合して任意に使用することが出来、その配合量は、インキ全量に対して20~95重量%が望ましい。
【0024】
使用される色材は、溶剤に溶解あるいは分散するものであればよく、従来公知の染料や顔料を使用することができる。染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、などの油溶性染料および水溶性染料が用いられる。顔料としては、カーボンブラック、群青、紺青、弁柄、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、インダスロンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、レーキレッド、リソールレッド、ハンザイエロー、酸化チタン、蛍光顔料、有機顔料や無機顔料、パール顔料や金属光沢を有するキレート顔料などが使用できる。また、顔料の分散性などを改善するため合成樹脂、ワックス等で処理した加工顔料を用いることもできる。色材は1種または2種以上混合して用いられ、その使用量はインキ組成物全量に対して3~20質量%が適当である。
【0025】
さらに本発明におけるインキには、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル等の染料溶解助剤、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンポリオキシプロピレントリオール等の界面活性剤、公知のpH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、高分子分散剤、増粘剤などを適宜配合することもできる。
【0026】
また、本発明に使用する印褥体及びインキは、市販のスタンプ台・朱肉に採用されているものを用いても良い。例えば、シヤチハタ社製スタンプ台特大型(HGN-4-V、R、B、K、OR、G、BR、P、LB、Y)、水性顔料スタンプ台大型(HKN-3-R、B、K)シヤチハタ社製スタンプ台特大型速乾シヤチハタ朱肉コンパクトタイプ30号(MQC-30-1、2)、速乾シヤチハタ朱肉コンパクトタイプ40号(MQC-40-1、2)、シヤチハタ社製いろもよう各色(HAC-1-R、P、CY、OCG、DYG、G、TQ、B、RV、BR、GR、K、OR、LP、PP、Y、YG、PG、PB、LB、CB、PV、PBR、LBR)等である。
【0027】
また、本発明に用いられる印褥体3の表面である表布3aは、表示部6を備えている。表示部6は、印褥体表面に表示され、本発明の目的を達成するものであればよい。従って、表示部は、必ずしも表布に表示されている必要性はなく、例えば印褥体の構成をインキ含侵体1層構造として、インキ含侵体3b表面に、表示部を備えるような構成とすることも出来る。
表示部6は通常文字及び記号で表され、本実施形態のスタンプ台には、「インキを補充してください」の文字部と、インク滴下を表すしずくマークが記号部として表されている。表示部6に用いられる文字及び記号のフォントやサイズは問わない。表示部6の形成方法は、印褥体3に含侵されているインキと表示部6の形成に用いられるインキとが相溶せず、本発明の目的を達成することが出来るものであれば形態は問わない。表示部6の形成方法として、例えば、印刷インキや手書き文字による形成が考えられるが、表示文字の視認性を考慮すると、表示部の形成は印刷インキによるものが好ましい。印刷方法は、印刷用インキが盤面表布5の繊維に固着し、印刷用インキによって、捺印品質に影響を与えない印刷方法であれば、例えばパッド印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷等、電子写真印刷、インクジェット印刷等、如何なる印刷方法でもあっても良い。
【0028】
前記表示部6の形成に用いられるインキ組成物に含まれていてもよい着色剤としては、これまでインキ組成物の調製に用いられてきた着色力を付与する成分であればいずれのものでも用いることができ、このようなものとしては、例えば、無機着色顔料、有機着色顔料、光輝顔料、染料、蛍光顔料、着色樹脂粒子等があげられ、その状態は、粒子や分散液であってよく、所望の色調とするために、2種以上の着色剤を混合して用いてもよい。
また、これらのうち、顔料や着色樹脂粒子等の粒子は、ロジン系化合物、シランカップリング剤、樹脂、顔料誘導体などの表面処理剤により表面処理されていてもよいし、未処理であってもよい。
【0029】
本発明において、表布3aの印刷されている表示部6の印刷インキ成分は、一般的な油性顔料であるが、油性/水性、顔料/染料は問わない。
【0030】
前記印刷インキ組成物に含まれる溶媒としては、これまでインキ組成物の調製に用いられてきた液体成分であって、樹脂を溶解させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために使用されるものである。
このような液体成分としては、印刷時の温度(通常は、10℃~40℃)で液体状態を示すものであって、動植物系油及び/又は動植物系油誘導体、有機溶剤、鉱物油、水等の液状化合物の少なくとも1種以上があげられる。
【0031】
また、前記印刷インキ組成物に含まれる着色剤としては、従来からインキ組成物に使用されている、赤、青、黄、緑、紫、黒、白、オレンジ、ブラウン、金銀パールなどの特殊光沢色、蛍光色等各種の色の無機着色顔料及び/又は有機着色顔料を挙げることができ、所望の色調とするために、2種以上の無機着色顔料及び/又は有機着色顔料が用いられる。前記印刷インキ組成物に含まれる着色剤は、染料を使用しても良く、塩基性染料、酸性染料、直接染料、などの油溶性染料および水溶性染料が用いられる。
無機着色顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白、黄色鉛、亜鉛黄、カドミウム黄、べんがら、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系、コバルト・アルミニウム系、コバルト・アルミニウム・クロム系、ウルトラマリンブルー)等が使用可能である。
【0032】
さらに、前記印刷インキ組成物には、分散剤、界面活性剤、安定剤、泡消剤、重合開始剤、耐摩擦剤(ワックス)、ゲル化剤、粘度調整剤、可塑剤、重合禁止剤、酸化防止剤、pH調整剤、殺菌・防黴剤、シランカップリング剤等のインキ組成物の分野で通常使用されている添加剤の1種以上を添加することが出来る。
【0033】
また、前記印刷インキは、市販の印刷インキを用いても良く、例えば、セイコーアドバンス社製のスクリーン印刷シリーズ・溶剤タイプインキ/ビニル系のLOV(E)、LOV(E)YS、ACT、SG720、HIP(Z)、SG700(Z)、SG700(Z)YS、ポリエステル系のPALマット8、GAP新、RAM(R)、SG590、アクリル・PC系の2500(R)、2500YS、2500H(R)、CAVメイバン(E)、CAVメイバン(E)YS、SG240、SG75、ウレタン系のVIC(Z)、SG740、SG460、HF HSD、HF S-PAD、SG410、SG410 YS、RUX、MS8、HAC、MP-4(Z)、MP-4遅乾(Z)、HF GV2、ポリオレフィン系のOP22、60A、70B、70B-AM、PP、PPT(N)、PP耐酸、SPP、エポキシ系の1000、1300、1300HK、1400N、1400Q、1690N、蛍光のVルミノ(Z)、セイコーアドバンス社製のスクリーン印刷/鏡面インキシリーズのOSP RX25、OSH RX01、SG429B、500N、HFGV2、HFGV3、SG460超遅乾、VIC(Z)、HAC、BMR、GAP新、セイコーアドバンス社製のスクリーン印刷/UVタイプインキシリーズのULA、UVA、HUG、RIG FP、PZU、SOX、UV特殊、メジューム、SPU、UAD、UPG、UVM、US125、US180NS、UVK100C、UV5412、UC410、UV406M、UV8606A改、UV BOND、TJNメジューム F、UVテクスチャーインキ、UVP RX01、BLL・BLL,UV、UVソフトタッチRX01などが挙げられる。
【0034】
本発明は、表示部の表示色と前記非表示部の表示色とが同一色であること特徴としているが、本発明における同一色とは、目視認識において両者の色彩が同一と認識可能な範囲であることを言う。
両者の色彩が同一と認識出来る範囲は、色差△E値などが指標として用いられる。色差△E*abは、CIE(国際賞美恵委員会)が1976年に定めたL*a*b*空間の2点間の距離によって定められた色の違いを表す指標である。ただし、△E*abは、色の彩度や色相(赤や緑、青等の視感覚の属性)により人間の色値感覚との相関性が得られない場合がある。
色差△E00はCIEが2001年に推奨、CIE No.15:2004で採用された人間の色差知覚と相関性が得られるように従来の色差式△E*abから改善された指標であり、△E00は、CIELAB空間で低彩度領域の補正、明度と彩度の重み付け係数の採用、青領域の色差補正を行い、より色差知覚と相関性が得られるようになっている。
本発明において、両者の色彩が同一と認識出来る範囲は、微小面分光測色計にて測定した色差△E00を指標としている。本発明は、スタンプ台未使用時、或いは初期使用時などの印褥体3にインキを補充する必要のない時期(捺印可能な状態という)は、表示部6と、非表示部7との色差△E00を低くなるよう設計することにより、両者の色彩が目視で同一と認識されるが、経時の使用に伴う印褥体表面の含侵インキの減少に伴って、表示部6と非表示部7との色差△E00が大きくなり、表示部の文字、記号が目視で認識可能となることで、スタンプ台盤面を目視するのみでインキを補充すべき時期を判断することが出来るのである。
なお、前記捺印可能な状態の印褥体とは、前述したように印褥体3にインキを補充する必要のない時期、即ち前記捺印可能な状態の印褥体を用いて捺印を行った場合の印影に擦れが生じず、鮮明に視認できる状態を指す。
【0035】
さらに、本発明の印褥体3の表示部6は、印刷画像により形成され、前記印刷の版下画像の一部が省略されていても良い。通常印刷の版下画像は表布などの印刷媒体上の各点について、インクを置くか、そのままにしておくかという二値状態で情報を表している。その場合、文字部分及び記号部分には、インクが隙間なく連続的に置かれ、そうでない部分には、インクは置かれない。しかし、例えば網点技法などで、文字部分中に置かれるインクを一定の間隔で小さな点のパターンとして並べることが可能であり、前記版下の印刷画像の一部が省略されている状態とは、上記の文字部分及び記号部分に置かれるインクが連続的で隙間なく置かれておらず、離散的にインクが置かれている状態を指す。前記版下の印刷画像の一部が省略されている状態の具体例としては、網点処理やハーフトーン処理が挙げられるが、それに限定されない。また、網点処理画像処理を行った際の線数(lpi)や網点形状は、任意に選択できるが、線数(lpi)については、100~200lpiが好ましい。
前記省略された版下の印刷画像を、網点技法などで、文字部分中に固着されるインクを離散的に一定の間隔で小さな点のパターンとして並べることにより、文字部分が目立たなくなる効果が生じる。
前記の作用効果により、表示部6に表示する印刷画像の色彩をより幅広く選択することが可能となる。前記版下の印刷画像の一部の省略は、一定間隔で省略されていることがより好ましく、具体的には網点処理やハーフトーン処理による省略が理想的である。省略される版下の印刷画像の割合、即ち、文字部分及び記号部分中のインクが置かれない部分の割合は、30%~70%の割合が好ましい。前記割合が30%より小さいと、表示部6と非表示部7の部分との境界が認識されにくくなるという効果が生まれない。一方省略されている割合が70%より大きいと、インキ補充時期においても、使用者は文字の認識が出来なくなってしまう為、好ましくない。
本発明における版下の印刷画像とは、例えばパッド印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷等、電子写真印刷、インクジェット印刷等によって形成される画像に加え、捺印具による画像形成や、焼き付けによる画像形成も含まれる。前記省略された版下の印刷画像でプリント印刷された表示部6は、インクが離散的に固着している為、測定孔径Φ0.4mmで微小面光度計で測定すると、図8で示したように、測定視野中に、インクが固着していない部分若しくは、インク濃度が比較的低い部分(非着色部)を含むことになる。
前記版下の印刷画像の一部が省略された表示部6の省略された画像の割合が大きい程、インキ含侵後、捺印可能な状態の表示部6が目視で認識しにくくなる効果が生じる。また、インキ未含侵時における表示部6の色差計測定時のL*値が高い程、インキが含浸され、捺印可能な状態の表示部6の目視認識がしやすくなることがわかっている。前述のように、インキ未含侵時の印褥体表面の表示部6の色彩を色差計で測定する場合、測定視野中にインクが固着していない部分若しくは、インク濃度が比較的低い部分(非着色部16)を含むことになる。スタンプ台等に用いる印褥体は通常白色であるため、インキ未含浸時の測定視野中にインクが固着していない部分若しくは、インク濃度が比較的低い部分(非着色部16)を多く含む程、明るさを表す指標L*値が大きくなる。
省略される印刷画像の割合は、版下作成時に調整することが可能であるが、用いる印褥体や印刷画像形成に用いるインクによっては、表示部形成の際にインクが滲むなどして、版下の印刷画像が、表示部6上にそのまま反映されない場合がある。前記L*値を指標とすることで、表面に表示部6が形成された後の印褥体3が、インキを含浸し捺印可能な状態で、表示部6を目視認識しにくくなるか否かを判断することが出来る。インキ未含侵時の印褥体表面の表示部6のL*値は44.5~62.2が好ましい。L*値が44.5より小さいと、表示部6と非表示部7の部分との境界が認識されにくくなるという効果が生まれない。また、L*値が62.2より大きいと、インキ補充時期においても、使用者は文字の認識が出来なくなってしまう為好ましくない。
【0036】
図5は、ハーフトーン処理により版下の印刷画像が省略された状態を表す図である。図5では、「濃淡」文字及び円枠内に網目格子を設けた記号の組み合わせが5種類並んでいるが、前記5種類のパターンは、ハーフトーン処理により版下の印刷画像が省略されている割合が異なる。図5左側から順に、省略されている割合が、80%、60%、40%、20%、0%(省略無し)の順に並んでいる。
図6、7は、本発明の表示部の別の形態である。図6は、文字枠部13と白抜き部14で形成されており、前記文字枠部13にハーフトーン処理が施されている。図6及び図7は、前記文字枠部13の形態が異なる。本発明においては、前記白抜き部14は非表示部、前記文字枠部13は表示部に該当する。本発明において、文字枠部13は非着色部16を含む。
図8は、微小面色差計の測定視野15を表した図である。本発明において、ハーフローン処理が施された印刷画像を微小面色差計で測定すると、測定視野中に、インクが固着していない部分若しくは、インク濃度が比較的低い部分(非着色部16)を含むことになる。
【0037】
実施例及び比較例に使用したサンプルはいずれも、シヤチハタ社製スタンプ台特大型の印褥体表面に、印刷インキにより表示部6が形成されている。実施例及び比較例に用いたスタンプ台及び印刷インキの組み合わせを以下に示す。シヤチハタ社製スタンプ台特大型で使用するスタンプ台用インクは、油性顔料である。
実施例及び比較例に用いた印刷画像はいずれも、図1の印褥体盤面に表された「インキを補充してください」及び「インクの液滴を示す図」を用いた。各実施例及び比較例は、前記図1の印刷画像にハーフトーン処理を施し、ハーフトーン処理により省略する画像の割合を変更し、同一のスタンプ台、印刷インキを用いて試験を行っている。また、印刷インキはいずれもスクリーン印刷法により表示部6を形成した。なお、実施例 及び 比較例に用いる試験前スタンプ台の印褥体には、最大含侵量に対して、重量比でスタンプインキ(油性顔料)が45%含侵されている。
用いたスタンプインキの主溶剤は、いずれもポリオキシアルキレングリセルエーテルを使用した。また、実施例及び比較例に使用したサンプルは、ポリエステル系の合成繊維を使用している。なお、前記最大含侵量は、懸吊試験により算出した。具体的には、スタンプ台に用いる印褥体にインキを含侵させた後、前記印褥体をタコ糸を用いて一定高さに吊るした状態で放置し、インキ自重と印褥体のインキを保持する力が平衡となって、印褥体からインキが滴下しなくなった状態の印褥体に含まれるインキ重量をインキ最大含侵量とした。ハーフトーン処理を行ったサンプルの線数はいずれも150である。

実施例1
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 緑 (HGN-4-G)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 緑 (SG410 350グリーン MATTE)
ハーフトーン処理 省略70%

実施例2
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 緑 (HGN-4-G)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 緑 (SG410 350グリーン MATTE)
ハーフトーン処理 省略30%

実施例3
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 藍 (HGN-4-B)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 赤 (SG410 440 ブルー MATTE)
ハーフトーン処理 省略60%

実施例4
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 赤 (HGN-4-R)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 赤 (SG410 510 アメリカンレッド MATTE)
ハーフトーン処理 省略60%

比較例1
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 緑 (HGN-4-G)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 緑 (SG410 350グリーン MATTE)
ハーフトーン処理 省略0%

比較例2
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 緑 (HGN-4-G)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 緑 (SG410 350グリーン MATTE)
ハーフトーン処理 省略80%

比較例3
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 緑 (HGN-4-B)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 緑 (SG410 440ブルー MATTE)
ハーフトーン処理 省略0%

比較例4
スタンプ台 シヤチハタ社製スタンプ台特大型 藍 (HGN-4-R)
印刷インキ セイコーアドバンス社製の溶剤系インク 青 (SG410 510 アメリカンレッド MATTE)
ハーフトーン処理 省略0%
【0038】
(未使用:非補充時期 スタンプ台色彩の目視評価)
実施例及び比較例において、未使用のスタンプ台の印褥体表面における表示部6と前記表示部6近傍の非表示部7との色彩の差異を目視で確認した。各実施例及び比較例のスタンプ台サンプルのインキ量はいずれも約45%である。両者に色彩の差が生じず、表示部6と非表示部7を拡大又は凝視しても、同一色として認識出来る場合は〇、表示部6と非表示部7を拡大又は凝視してはじめて両者の境界が薄っすらと認識されると判断出来るものは△、表示部6と非表示部7の部分との境界が、拡大又は凝視せずとも表示部に表示されている文字、記号がはっきりと認識出来る場合は×と評価した。
(使用初期:非補充時期 スタンプ台色彩の目視評価)
実施例及び比較例において、事前にスタンプ台を2000回使用した状態のスタンプ台印褥体表面における表示部6と前記表示部6近傍の非表示部7の部分との色彩の差異を目視で確認した。評価基準は、未使用時のスタンプ台色彩の目視評価の場合と同様である。なお、捺印には、丸形直径40mmの印判を使用した。
(5000回捺印:補充時期 スタンプ台色彩の目視評価)
実施例及び比較例において、事前にスタンプ台を5000回使用し、インキ補充時期となった状態のスタンプ台印褥体表面における表示部6と前記表示部6近傍の非表示部7の部分との色彩の差異を目視で確認した。両者に色彩の差が生じ、表示部6と非表示部7の部分との境界が認識出来、表示部に表示されている文字、記号がはっきりと認識出来る場合は〇と評価した。一方、両者に色彩の差が生じず、少なくとも拡大又は凝視しないと、表示部6の文字及び記号が認識出来きない場合×と評価した。
(色差△E00 及び L*値の測定)
各実施例及び比較例サンプルを微小面分光測色計C50μ型(スガ試験機株式会社製)を用いて以下3つの特性値を測定した。1つ目は、インキが含侵され、捺印試験前の表示部6及び非表示部7とを測定し、捺印前の△E00を算出した。2つ目は、インキ補充時期である5000回捺印後の表示部6及び非表示部7とを測定しインキ補充時期の△E00を算出した。さらに3つ目はのインキ未含侵状態の表示部6を測定し、インキ未含侵状態における表示部6のL*値を算出した。
なお、ハーフトーン処理を行っているサンプルの表示部6の測定は、測定視野中にインクが固着していない部分若しくは、インク濃度が比較的低い部分(非着色部)を含むこととなった。また、捺印試験を5000回行った際の印影は、各色ともに捺印印影に擦れが生じ、判読が難しくなっているのでインキ補充時期と言える。
<測定条件>
光源:標準光C、視野角:2度、測定孔径:Φ0.4mm
【0039】
実施例及び比較例の評価結果の一覧を表1に示す。
実施例1~4における未使用スタンプ台色彩の目視評価及び使用初期のスタンプ台色彩の目視評価は、〇であったのに対し、比較例1、3、4における未使用スタンプ台色彩の目視評価は△又は×となった。比較例1の使用初期のスタンプ台(非補充時期)色彩の目視評価は×であったのに対し、実施例1、2は〇となっており、ハーフトーン処理を実施することにより、使用初期のスタンプ台(非補充時期)色彩の目視評価が改善される結果となった。
また、比較例2のサンプルは、補充時期のスタンプ台色彩の目視評価が×となった。補充時期のスタンプ台色彩の目視評価については、実施例1~4、比較例1、3、4のサンプルはいずれも、スタンプ台の5000回の使用によって、印褥体表面のインキが減少することにより、表示部に形成される文字・記号がはっきりと認識されるようになったが、比較例2のサンプルについては、インキ補充時期となっても、少なくとも、拡大、凝視することなく表示部の文字等を目視で認識することは出来なかった。
各実施例及び各比較例の結果から、版下の印刷画像が省略されている割合は30~70%が適していると考えられ、また、インキ未含侵時の表示部6のL*値は、44.5~62.2が適していると考えられる。
【0040】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うスタンプ台の仕様もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0041】
1 スタンプ台
2 基箱
2a 底面部
2b 壁面部
3 印褥体
3a 表布
3b インキ含侵体
4 蓋部
4a 底面部
4b 壁面部
5 ヒンジ部
6 表示部
7 非表示部
8 印褥体盤面枠
9 表布貼り枠
10 ヒンジ軸受け部
11 ヒンジ結合部
12 ヒンジ軸
13 文字枠部
14 白抜き部
15 微小面分光測色計の測定視野
16 非着色部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8