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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175548
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】デジタル回路
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/22 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
G06F11/22 675Z
G06F11/22 605B
G06F11/22 673F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082055
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】森本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】久保 憲司
【テーマコード(参考)】
5B048
【Fターム(参考)】
5B048AA20
5B048CC02
5B048CC11
5B048CC19
(57)【要約】
【課題】ハードウェアで自己診断が可能な基本回路構成を有し、種々のフィールドに対して適用可能なデジタル回路を得る。
【解決手段】本開示に係るデジタル回路は、SCANチェーンにより接続された複数のフリップフロップ回路と、擬似乱数パターンを生成させる乱数発生回路と、自己診断する際に回路を一時停止状態とし、擬似乱数パターンをSCANチェーンに入力させるコントローラと、擬似乱数パターンがSCANチェーンに入力された際に、複数のフリップフロップ回路の最終段のフリップフロップ回路から順次出力される出力信号に基づいてシグネチャを生成するシグネチャ生成回路と、シグネチャの期待値があらかじめ記憶された記憶部とを備え、コントローラは、シグネチャ生成回路で生成されたシグネチャと記憶部に記憶された期待値とが不一致の場合には自己診断結果が異常であると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCANチェーンにより接続された複数のフリップフロップ回路と、
擬似乱数パターンを生成させる乱数発生回路と、
デジタルLSI回路を自己診断する際に、前記デジタルLSI回路を一時停止状態とし、前記擬似乱数パターンを前記SCANチェーンに入力させるコントローラと、
前記擬似乱数パターンが前記SCANチェーンに入力された際に、前記SCANチェーンにより接続された前記複数のフリップフロップ回路の最終段のフリップフロップ回路から順次出力される出力信号に基づいて、シグネチャを生成するシグネチャ生成回路と、
前記擬似乱数パターンが前記SCANチェーンに入力された際に生成されるシグネチャの期待値があらかじめ記憶された記憶部と
を備え、
前記コントローラは、前記シグネチャ生成回路で生成された前記シグネチャと、前記記憶部に記憶された前記期待値との比較結果に基づいて、前記シグネチャと前記期待値とが不一致の場合には前記デジタルLSIの自己診断結果が異常であると判定する
デジタル回路。
【請求項2】
前記一時停止状態となった時点での前記複数のフリップフロップ回路のそれぞれの状態を、前記SCANチェーンを利用して保存する一時記憶部
をさらに備え、
前記コントローラは、前記シグネチャ生成回路で生成された前記シグネチャと、前記記憶部に記憶された前記期待値との比較結果に基づいて、前記シグネチャと前記期待値とが一致した場合には前記デジタルLSIの自己診断結果が正常であると判定し、前記一時記憶部に保存された前記複数のフリップフロップ回路のそれぞれの状態を保存状態リストアとして前記SCANチェーンに順次入力させることで、前記複数のフリップフロップ回路のそれぞれを一時停止前の元の回路状態に戻し、前記自己診断を行った後の通常動作の再開を可能とする
請求項1に記載のデジタル回路。
【請求項3】
第1の設定値を変更することで、前記自己診断を実行するためのクロックについて一時停止/再開の切り替えを行う第1のレジスタをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1の設定値を切り替えることで、前記自己診断の一時停止/再開の切り替えを可能とする
請求項1または2に記載のデジタル回路。
【請求項4】
前記SCANチェーンにより接続された複数のフリップフロップ回路を1つの基本回路として、前記デジタルLSI回路の機能単位ごとに複数の基本回路を有し、
第2の設定値を変更することで、前記複数の基本回路からのそれぞれの前記出力信号のいずれかを選択して前記シグネチャ生成回路に入力させる第2のレジスタをさらに備え、
前記コントローラは、前記第2の設定値を切り替えることで、前記自己診断を実行する機能と通常動作を継続する機能とを切り分け、前記機能単位ごとでの自己診断を可能とする
請求項1から3のいずれか1項に記載のデジタル回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィールドにおいてハードウェアで自己診断ができるデジタル回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載・産業分野において、フィールドにおける自己診断機能の欲求が高まっている。車載では、機能安全規格ISO26262に則り、ソフトウェアを含めたシステムの安全性を確保するために、ハードウェアにもフィールドで自己診断し、リカバリできることが求められている。
【0003】
従来技術として、LSIに自己診断回路を搭載し、電源立ち上げ時、電源立ち下げ時、動作無効期間のそれぞれにおいて自己診断を実施することで、信号処理の局所的な故障を検知する機能を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-111546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下のような課題がある。
特許文献1では、動作無効期間中における自己診断の自律的な停止および再開を行うことができない。このため、フィールドにおける柔軟な自己診断を行うことができないといった課題がある。
【0006】
また、特許文献1では、LSI全体動作の停止中に自己診断を行う。このため、特定機能の動作継続を目的としたケースにおいては、自己診断機能を活用しづらいといった課題がある。従って、種々のフィールドにおいてハードウェアで自己診断が可能な基本回路構成を有するデジタル回路が望まれている。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、ハードウェアで自己診断が可能な基本回路構成を有し、種々のフィールドに対して適用可能なデジタル回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るデジタル回路は、SCANチェーンにより接続された複数のフリップフロップ回路と、擬似乱数パターンを生成させる乱数発生回路と、デジタルLSI回路を自己診断する際に、デジタルLSI回路を一時停止状態とし、擬似乱数パターンをSCANチェーンに入力させるコントローラと、擬似乱数パターンがSCANチェーンに入力された際に、SCANチェーンにより接続された複数のフリップフロップ回路の最終段のフリップフロップ回路から順次出力される出力信号に基づいて、シグネチャを生成するシグネチャ生成回路と、擬似乱数パターンがSCANチェーンに入力された際に生成されるシグネチャの期待値があらかじめ記憶された記憶部とを備え、コントローラは、シグネチャ生成回路で生成されたシグネチャと、記憶部に記憶された期待値との比較結果に基づいて、シグネチャと期待値とが不一致の場合にはデジタルLSIの自己診断結果が異常であると判定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ハードウェアで自己診断が可能な基本回路構成を有し、種々のフィールドに対して適用可能なデジタル回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1に係るデジタル回路の基本回路構成を示す図である。
図2】本開示の実施の形態2に係るデジタル回路の応用回路構成を示す図である。
図3】本開示の実施の形態3に係るデジタル回路の応用回路構成を示す図である。
図4】本開示の実施の形態4に係るデジタル回路の動作タイムチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係るフィールドにおける自己診断機能を備えたデジタル回路の実施の形態につき図を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係るデジタル回路の基本回路構成を示す図である。図1において、自己診断回路17は、6個のSCAN用FF1~SCAN用FF6、および2個の組合せ論理7、組合せ論理8を備えて構成されている。ここで、FFとは、フリップフロップ回路の略称である。
【0013】
6個のSCAN用FF1~SCAN用FF6は、SCAN_EN信号およびSCAN_IN信号を起点として、図1に示すように、SCANチェーンで接続されている。
【0014】
SCANチェーン入力9は、SCAN用FF1の入力SCAN_INが起点で、SCAN用FF1の出力DATA_OUTがSCAN用FF2の入力SCAN_INに接続されている。さらに、SCAN用FF2の出力DATA_OUTがSCAN用FF3の入力SCAN_INに接続され、順に、各SCAN用FFの出力DATA_OUTが次段のSCAN用FFの入力SCAN_INに接続されている。このような構成のことを、本開示では、SCANチェーンと称する。
【0015】
図1の基本回路構成を用いた自己診断は、次のステップに従って実行されることとなる。
<ステップ1>
診断対象回路のクロックを止めて一時停止状態とする。例えば、診断対象回路が無線機能を実行する回路である場合には、クロックを止めることで、通信無応答の状態とする。
【0016】
<ステップ2>
SCANチェーンを利用して、一時停止状態となった時点におけるSCAN用FF1~SCAN用FF6のそれぞれの状態を、SRAM11に保存する。ここで、SRAMとは、Static Random Access Memoryの略称であり、SRAM11は、一時停止状態となった時点でのSCAN用FF1~SCAN用FF6のそれぞれの状態を保存する一時記憶部に相当する。
【0017】
すなわち、図1に示した構成により、SCAN用FF1~SCAN用FF6について、SCANチェーンを経由してクロックパルス毎に、順次、一時停止状態になった際のそれぞれのFFの回路状態をSRAM11に保存させることができる。
【0018】
<ステップ3>
LFSR10で生成された擬似乱数パターンをSCANチェーン入力9へインプットすることで、1段目のSCAN用FF1のSCAN_INに擬似乱数パターンを順次入力させる。ここで、LFSRとは、線形期間シフトレジスタ(Linear Feedback Shift Register)の略称であり、LFSR10は、乱数発生回路に相当する。
【0019】
一方、MISR12は、最終段のSCAN用FF4のDATA_OUTから出力信号として順次出力されるSCAN_OUTのデータから、シグネチャを生成する。ここで、MISRとは、複数入力シグネチャレジスタ(Multiple-Input Signature Register)の略称であり、MISR12は、シグネチャ生成回路に相当する。
【0020】
<ステップ4>
異常検出用比較14は、ROM13にあらかじめ格納されている期待値と、MISR12によって生成されたシグネチャの結果とを比較することで、異常を検知する。ここで、ROMとは、Read Only Memoryの略称であり、ROM13は、期待値が記憶された記憶部に相当する。
【0021】
CPU16は、異常検出用比較14による比較結果として、期待値とシグネチャとが不一致である場合には、自己診断結果が異常であると判定する。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略であり、自己診断対象であるデジタルLSI回路の動作制御を行うコントローラに相当する。
【0022】
一方、CPU16は、異常検出用比較14による比較結果として、期待値とシグネチャとが一致した場合には、自己診断結果が正常であると判定し、SRAM11に保存されている各FFの回路状態を、保存状態リストア15としてSCANチェーン入力9へ順次入力させる。そして、CPU16は、各SCAN用FF1~SCAN用FF6を、一時停止前の元の回路状態に戻した後、通常動作を再開することができる。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、SCANチェーンにより接続された複数のSCAN用FFを備えた基本回路構成を採用することで、フィールドにおける自己診断を容易に行うことができるデジタル回路を実現できる。
【0024】
実施の形態2.
本実施の形態2では、先の実施の形態1における図1に示した基本回路構成を応用して、特定機能を選択して効率的な自己診断を行う場合のデジタル回路の応用回路構成について説明する。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態2に係るデジタル回路の応用回路構成を示す図である。図2に示す回路構成においては、診断対象回路として、第1の自己診断回路17(1)と第2の自己診断回路17(2)の2つがあり、それぞれの自己診断を個別に実行する場合を例示している。
【0026】
本実施の形態2に係るデジタル回路は、複数の診断対象回路の選択を行うために、診断対象切替レジスタ18を備えている。CPU16から診断対象切替レジスタ18の設定値である第2の設定値を変更することで、診断を行う回路と診断を行わない回路とを自由に設定することが可能となる。ここで、診断対象切替レジスタ18は、第2のレジスタに相当する。
【0027】
このような選択動作を可能にするためには、デジタル回路内において、各診断対象回路と同階層に診断対象切替レジスタ18による選択回路を備えることが必要である。
【0028】
なお、診断対象となる機能の数に応じて診断対象切替レジスタ18のビット幅を増やすことが可能である。また、レジスタ設定値に応じて、複数の診断対象回路を同時に自己診断するように対応することも可能である。
【0029】
以上のように、実施の形態2によれば、SCANチェーンを診断対象機能単位で個別に設け、自己診断による異常判定を機能ごとに容易に行うことができるデジタル回路を実現できる。機能単位で異常検出が可能となり、動作継続できる機能と、動作を停止すべき機能との切り分けを行うことで、異常検出後のリカバリの可能性を高めることが可能となる。
【0030】
実施の形態3.
本実施の形態3では、先の実施の形態1における図1に示した基本回路構成を応用して、動作無効期間における自律的な自己診断の停止/再開を行う場合のデジタル回路の応用回路構成について説明する。
【0031】
図3は、本開示の実施の形態3に係るデジタル回路の応用回路構成を示す図である。図3に示す回路構成においては、1つの自己診断回路17に対して、自律的に自己診断の停止/再開を選択切り替えする場合を例示している。
【0032】
本実施の形態3に係るデジタル回路は、自律的な自己診断の停止/再開を行うために、自己診断有効/無効レジスタ19を備えている。CPU16から自己診断有効/無効レジスタ19の設定値である第1の設定値を変更することで、自己診断の保留(一時停止)/再開を繰り返すことが可能となる。ここで、自己診断有効/無効レジスタ19は、第1のレジスタに相当する。
【0033】
以上のように、実施の形態3によれば、自己診断の有効/無効を切り替えるレジスタの設定値変更を行うことで、SCANチェーンを用いた自己診断の保留(一時停止)/再開を容易に繰り返すことができるデジタル回路を実現できる。従って、フィールド時の非通信状態における時間を狙い、効率的な自己診断を行うことが可能となる。
【0034】
実施の形態4.
本実施の形態4では、実施の形態2で説明した特定機能を選択して効率的な自己診断を行う回路Aと、実施の形態3で説明した動作無効期間における自律的な自己診断の停止/再開を行う回路Bとを組み合わせた場合について説明する。
【0035】
図4は、本開示の実施の形態4に係るデジタル回路の動作タイムチャートを示した図である。図4に示す動作タイムチャートでは、回路Aと回路Bとを合わせ持ったデジタル回路において、時間帯に応じて、個別の自己診断を行う場合を例示している。このような動作を行うことで、フィールド時の非通信時における時間を狙った自己診断を実行し、機能単位での異常検出を可能とする。
【0036】
以上のように、実施の形態4によれば、特定機能を選択して効率的な自己診断を行う回路Aと、動作無効期間における自律的な自己診断の停止/再開を行う回路Bとを組み合わせたデジタル回路を採用することで、実施の形態2と実施の形態3の両方の効果を兼ね備えることができる。
【0037】
より具体的には、本開示に係るデジタル回路は、以下のような効果1~効果3を実現することができる。
(効果1)通信機能などは、所望のタイミングとしての非通信時においてSCAN経路による自己診断を可能とし、正常時の復旧、異常時のアラーム通知を実現する。
(効果2)自己診断したい特定の機能に絞ってパーシャルスキャンができるようにすることで、特定機能に絞って診断が可能となり、不具合機能の切り分けができる。
(効果3)自己診断の保留・再開を繰り返すことで、効率的な自己診断を実現できる。
【0038】
この結果、種々のフィールドに対して適用可能な、ハードウェアで自己診断が可能な基本回路構成を有するデジタル回路を実現できる。
【符号の説明】
【0039】
1~6 SCAN用FF、7~8 組合せ論理、9 SCANチェーン入力、10 LFSR(乱数発生回路)、11 SRAM(一時記憶部)、12 MISR(シグネチャ生成回路)、13 ROM(記憶部)、14 異常検出用比較、15 保存状態リストア、16 CPU(コントローラ)、17、17(1)、17(2) 自己診断回路、18 診断対象切替レジスタ(第2のレジスタ)、19 自己診断有効/無効レジスタ(第1のレジスタ)。
図1
図2
図3
図4