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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175552
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】硬質表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20221117BHJP
   C11D 1/38 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 1/52 20060101ALI20221117BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/38
C11D3/04
C11D1/66
C11D3/26
C11D1/62
C11D1/68
C11D1/72
C11D1/52
C11D17/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082063
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】秋冨 名子
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AC03
4H003AC04
4H003AC05
4H003AC08
4H003AC09
4H003AC13
4H003AC15
4H003AE05
4H003BA12
4H003BA22
4H003DA05
4H003DA09
4H003DC02
4H003EA12
4H003EA14
4H003EA16
4H003EA19
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB19
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA28
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】1回拭きの少ない量でも硬質表面に抗菌性を付与でき、アルミニウムの変色がなく、拭き筋も目立たない硬質表面用液体洗浄剤組成物、硬質表面用洗浄シート、及び硬質表面に抗菌性を付与する方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.01質量%以上1質量%以下、(c)成分を0.005質量%以上1.5質量%以下、及び水を含有し、25℃におけるpHが3.5以上7.5以下である、硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:陽イオン界面活性剤
(b)成分:無機金属塩
(c)成分:非イオン界面活性剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.01質量%以上1質量%以下、(c)成分を0.005質量%以上1.5質量%以下、及び水を含有し、25℃におけるpHが3.5以上7.5以下である、硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:陽イオン界面活性剤
(b)成分:無機金属塩
(c)成分:非イオン界面活性剤
【請求項2】
(a)成分が、下記一般式(1a)で表される第4級アンモニウム塩、及び下記一般式(2a)で表される第4級アンモニウム塩から選ばれる1種以上の第4級アンモニウム塩である、請求項1に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【化1】

〔式中、R1aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基であり、R2a及びR3aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【化2】

〔式中、R4aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基であり、R5aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R6a及びR7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【請求項3】
(b)成分が、亜鉛及び銅から選ばれる1種以上の無機金属塩である、請求項1又は2に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、亜鉛又は銅の、硫酸塩、水酸化物、塩化物、硝酸塩、及び炭酸塩から選ばれる1種以上の無機金属塩である、請求項1~3の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(c)成分が、グリコシド型非イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル型界非イオン界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、及びアルカノールアミド型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤である、請求項1~4の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)が0.1以上80以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(b)/(c)が0.1以上40以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項8】
アルミニウム、又はアルミニウムを含有する合金の構造体を含む硬質表面用である、請求項1~7の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項9】
病院施設又は介護施設の硬質表面用である、請求項1~8の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物と、不織布又は織布とを含んでなる、硬質表面用洗浄シート。
【請求項11】
請求項10に記載の硬質表面用洗浄シートで硬質表面を拭く、硬質表面に抗菌性を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物、硬質表面用洗浄シート、及び硬質表面に抗菌性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
器具、器機等の殺菌洗浄、病院施設又は介護施設等の衛生管理が必要な施設の床や壁の清掃消毒などにおいて、殺菌剤を含む洗浄液を不織布又は織布に含浸させた洗浄シートで清拭することが行われている。特に病院施設では、感染対策ガイドラインで、通常の清掃に加え、日常的に手が接触する環境表面に対して、1日1回以上清拭することが記載されており、1日に複数回の清拭が求められるが、清拭回数を減らすために、1回の清拭で抗菌効果が持続する技術が求められる。
【0003】
特許文献1には、セルロース系繊維を80質量%以上含む坪量20~120g/mの基材シートに液体洗浄性組成物を含浸させてなり、該液体洗浄性組成物が、有機酸0.01~0.50質量%、界面活性剤0.1~1.0質量%および2価以上の金属イオン化合物0.5~5.0質量%を含有する除菌性清掃物品が開示されている。
特許文献2には、グリコール誘導体を3~20質量%及びカチオン系抗菌剤を0.1~5.0質量%含有する液剤を不織布又は織布シートに含侵してなる除菌清拭用硬質洗浄シートが記載されている。
特許文献3には、水系溶媒に、抗菌性を有する金属の水溶性塩と、金属キレート剤と、陽イオン界面活性剤と、両性界面活性剤と、酸性物質とが溶解され、安定した状態となっていることを特徴とする抗菌性液体が開示されている。
特許文献4には、セルロース系繊維を含む不織布と、前記不織布に含浸させた、第四級アンモニウム塩及び無機塩を含む水溶液と、を、含有するウェットワイパーが開示されている。
特許文献5には、四級アンモニウム塩と、金属塩または金属酸化物と、を含有することを特徴とする抗菌・防カビ・防藻組成物が開示されている。
特許文献6には、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び第4級アンモニウムイオンを含む複合物を含む、抗菌及び抗ウイルス加工剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-110323号公報
【特許文献2】特開2010-138519号公報
【特許文献3】特開平11-315001号公報
【特許文献4】特開2018-15442号公報
【特許文献5】特開2013-184906号公報
【特許文献6】特開2017-88583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体洗浄剤組成物を不織布又は織布に含浸させた洗浄シートで硬質表面を清拭して、硬質表面に抗菌性を持たせる場合、硬質表面への液体洗浄剤組成物の付着量は僅かであり、微量の液体洗浄剤組成物で、硬質表面に抗菌性を持たせる必要がある。またアルミニウム又はアルミニウムを含有する合金の構造体を含む硬質表面を清拭する場合、アルミニウムの変色がないことが求められ、また美的観点から、清拭後の硬質表面に拭き筋が目立たないことが求められる。
【0006】
本発明は、1回拭きの少ない量でも硬質表面に抗菌性を付与でき、アルミニウムの変色がなく、拭き筋も目立たない硬質表面用液体洗浄剤組成物、硬質表面用洗浄シート、及び硬質表面に抗菌性を付与する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.01質量%以上1質量%以下、(c)成分を0.005質量%以上1.5質量%以下、及び水を含有し、25℃におけるpHが3.5以上7.5以下である、硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:陽イオン界面活性剤
(b)成分:無機金属塩
(c)成分:非イオン界面活性剤
【0008】
また本発明は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物と、不織布又は織布とを含んでなる、硬質表面用洗浄シートに関する。
【0009】
また本発明は、本発明の硬質表面用洗浄シートで硬質表面を拭く、硬質表面に抗菌性を付与する方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1回拭きの少ない量でも硬質表面に抗菌性を付与でき、アルミニウムの変色がなく、拭き筋も目立たない硬質表面用液体洗浄剤組成物、硬質表面用洗浄シート、及び硬質表面に抗菌性を付与する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は硬質表面用液体洗浄剤組成物、及びそれを含侵する硬質表面用洗浄シート並びにそれらを用いた硬質表面に抗菌性を付与する方法に関するものである。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物、及び硬質表面用洗浄シートは1回拭きの少ない量でも硬質表面に抗菌性を付与でき、ベットやワゴン等に多く使用されているアルミニウムに対する変色をさせず、拭き筋も目立たなくさせることができる。
【0012】
[硬質表面用液体洗浄剤組成物]
<(a)成分>
(a)成分は、陽イオン界面活性剤である。
陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上20以下、好ましくは10以上18以下、より好ましくは10以上14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基、好ましくはメチル基、エチル基、及びベンジル基からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。なかでも、抗菌性能及び洗浄力を有する4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が好ましく、抗菌性能の点から、ベンジル基を有する4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0013】
(a)成分の陽イオン界面活性剤としては、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、下記一般式(1a)で表される第4級アンモニウム塩及び下記一般式(2a)で表される第4級アンモニウム塩から選ばれる1種以上の第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
〔式中、R1aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基であり、R2a及びR3aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【0016】
【化2】
【0017】
〔式中、R4aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基であり、R5aは、炭素数8以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R6a及びR7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Xは陰イオンである。〕
【0018】
一般式(1a)中、R1aは、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、炭素数が、好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(1a)中、R2a、R3aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上2以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
また一般式(1a)中のXとしては、好ましくは塩化物イオン等のハロゲンイオンであり、より好ましくは塩化物イオン(Cl)である。
【0019】
一般式(2a)中、R4aは、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、炭素数が、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(2a)中、R5aが炭素数8以上20以下の炭化水素基である場合、R5aは、抗菌性及び拭き筋の観点から、炭素数が、好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
また一般式(2a)中、R5aが炭素数1以上3以下のアルキル基である場合、R5aは、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上2以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
また一般式(2a)中、R6a、R7aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上2以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
また一般式(2a)中のXとしては、好ましくは塩化物イオン等のハロゲンイオンであり、より好ましくは塩化物イオン(Cl)である。
【0020】
<(b)成分>
(b)成分は、無機金属塩である。
(b)成分の無機金属塩としては、亜鉛、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、及びニッケルから選ばれる1種以上の無機金属塩が挙げられ、抗菌性の観点から、好ましくは亜鉛、銅、マンガン、コバルト、及びニッケルから選ばれる1種以上の無機金属塩であり、より好ましくは亜鉛、及び銅から選ばれる1種以上の無機金属塩であり、更に好ましくは亜鉛の無機金属塩である。
(b)成分の無機金属塩の塩としては、硫酸塩、水酸化物、塩化物、硝酸塩、及び炭酸塩から選ばれる1種以上の塩が挙げられ、抗菌性の観点から、好ましくは硫酸塩、塩化物、硝酸塩、及び炭酸塩から選ばれる1種以上の塩であり、より好ましくは硫酸塩、及び硝酸塩から選ばれる1種以上の塩であり、更に好ましくは硫酸塩である。
(b)成分は、抗菌性の観点から、亜鉛又は銅の、硫酸塩、水酸化物、塩化物、硝酸塩、及び炭酸塩から選ばれる1種以上の無機金属塩が好ましい。
【0021】
(b)成分の無機金属塩としては、より具体的には、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸マンガン、硝酸コバルト、及び硝酸ニッケルから選ばれる1種以上の無機金属塩が挙げられ、抗菌性の観点から、好ましくは硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硝酸亜鉛、硝酸銅、及び硝酸ニッケルから選ばれる1種以上の無機金属塩であり、より好ましくは硫酸亜鉛、硫酸銅、硝酸亜鉛及び硝酸銅から選ばれる1種以上の無機金属塩であり、より更に好ましくは硫酸亜鉛、及び硫酸銅から選ばれる1種以上の無機金属塩であり、より更に好ましくは硫酸亜鉛である。
【0022】
<(c)成分>
(c)成分は、非イオン界面活性剤である。
(c)成分の非イオン界面活性剤としては、グリコシド型非イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル型界非イオン界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、及びアルカノールアミド型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が挙げられ、拭き筋の抑制及び殺菌性の観点から、好ましくはグリコシド型非イオン界面活性剤、及び多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤、より好ましくはグリコシド型非イオン界面活性剤、及び多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤である。なお多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤には、グリコシド型非イオン界面活性剤が含まれていてもよい。
【0023】
グリコシド型非イオン界面活性剤としては、炭素数が、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を有し、単糖の平均縮合度が好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下のグリコシド型非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0024】
グリコシド型非イオン界面活性剤としては、下記一般式(1c)で表される化合物が好適である。
1c(OR2c (1c)
〔式中、R1cは炭素数8以上20以下の炭化水素基を示し、R2cは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは炭素数5又は6の単糖に由来する残基を示し、xはその平均値が0以上5以下となる数を示し、yはその平均値が1以上3以下となる数を示す。なおR1c又は(OR2c)とGとの結合はエーテル結合又はエステル結合が好ましい。〕
【0025】
上記一般式(1c)において、R1cは、殺菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。また、R2cで示されるアルキレン基としては、炭素数2のものが好ましい。また、Gで示される炭素数5又は6の糖に由来する残基は、使用される単糖類もしくは2糖類以上の糖によってその構造が決定される。Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、洗浄力の点、及びこれらの入手性及び低コストの点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0026】
また、上記一般式(1c)中のxは、OR2cの平均付加モル数であり、好ましくは0以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下であり、また0であってもよい。
【0027】
また上記一般式(1c)中のyの平均値が1より大きい場合、つまりグリコシド型非イオン界面活性剤が2糖類以上の糖鎖を親水性基とする場合、糖鎖の結合様式が1-2、1-3、1-4、1-6結合又はα-、β-ピラノシド結合もしくはフラノシド結合及びこれらの混合された結合様式である任意の混合物を含むことが可能である。
【0028】
上記一般式(1c)中のyは、その平均値が、1以上、そして、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。このyの値(糖の平均縮合度)は1H-NMRにより測定する。具体的な測定方法としては、特開平8-53696号公報第6頁第10欄26行目~7頁第11欄15行目を参照する。
【0029】
ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル型非イオン界面活性剤としては、下記一般式(c2)で表される非イオン界面活性剤が挙げられる。
3cO-(AO)-H (c2)
[式中、R3cは、炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基、AOは、炭素数1以上3以下のアルキレンオキシ基、nは1以上20以下の数である。]
【0030】
一般式(c2)中、R3cの炭素数は、拭き筋を目立たなくさせる観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。R3cは、拭き筋を目立たなくさせる観点から、アルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは高級アルコール由来のアルキル基であり、より好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、更に好ましくは直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基である。
一般式(c2)中、AOは、好ましくは炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレンオキシ基、すなわちエチレンオキシ基である。
一般式(c2)中、nは、拭き筋性の観点から、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、そして、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下の数である。
【0031】
多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤としては、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下の脂肪酸又は脂肪族アルコールと分子中にヒドロキシ基を3個以上10個以下有する多価アルコールとのエステル又はエーテル化合物が好ましい。多価アルコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ショ糖などの、単糖もしくはオリゴ糖、及びそれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。多価アルコール脂肪酸エステル型又は多価アルコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤は、好ましくはソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシ基の平均付加モル数は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上、30以下、好ましくは25以下である。アルキレンオキシ基、好ましくはエチレンオキシ基は、多価アルコール脂肪酸エステルの場合、脂肪酸エステルを構成するアルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基と多価アルコール化合物との間に、多価アルコールアルキルエーテルの場合、アルキルエーテル基と多価アルコール化合物との間に付加することが好ましい。
【0032】
ソルビタン脂肪酸エステルは、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分の炭素数が、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下である。脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であり、不飽和脂肪酸が好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは1.5以下であり、更に好ましくは1、すなわちモノエステルである。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート(などが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルは、主たる構造はモノエステル体が好ましいが、ジエステル体やトリエステル体を含んでいてもよい。
【0033】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、抗菌性及び拭き筋を目立たなくさせる観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分の炭素数が、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下である。脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であり、不飽和脂肪酸が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、拭き筋を目立たなくさせる観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは1.5以下であり、更に好ましくは1、すなわちモノエステルである。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのオキシエチレン基の平均付加モル数は、拭き筋を目立たなくさせる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(炭素数12の飽和脂肪酸、エチレンオキサイド(以下EOという場合もある)平均付加モル数=20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(炭素数18の飽和脂肪酸、EO平均付加モル数=20)、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート(炭素数18の1価不飽和脂肪酸。EO平均付加モル数=6)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(炭素数18の1価不飽和脂肪酸。EO平均付加モル数=20)などが挙げられる。
【0034】
アルカノールアミド型非イオン界面活性剤としては、脂肪酸モノエタノールアミド、及び脂肪酸ジエタノールアミドから選ばれる1種以上が挙げられる。脂肪酸アルカノールアミドの脂肪酸部分(アシル基)の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
【0035】
<組成等>
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(a)成分を、抗菌性の観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下含有する。
なお本発明において、(a)成分の質量に関する規定は、塩化物塩に換算した値を用いることとする。
【0036】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(b)成分を、抗菌性の観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、そして、アルミニウム変色防止の観点から、1質量%以下、好ましくは0.75質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.45質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下含有する。
なお本発明において、(b)成分の質量に関する規定は、無水物に換算した値を用いることとする。
【0037】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(c)成分を、拭き筋残りを目立たせなくさせる観点から、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、より更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.08質量%以上、そして、1.5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する。
【0038】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)は、抗菌性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上、より更に好ましくは3以上、そして、拭き筋残りを目立たせない観点から、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下である。
【0039】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物において、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(b)/(c)は、抗菌性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.75以上、そして、アルミニウム変色防止及び拭き筋残りを目立たせない観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは7.5以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4.8以下である。
【0040】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(a)成分、(c)成分以外の界面活性剤(以下(d)成分という場合がある)を含有することができるが、本発明の効果を損なわない観点から、その含有量は制限される。
なお本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物において、全界面活性剤中の(a)成分と(c)成分の合計含有量の割合は、拭き筋残りを目立たせない観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下である。
【0041】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、アルミニウム変色防止の観点から、25℃におけるpHが、3.5以上、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは4.6以上、そして、アルミニウム変色防止及び拭き筋残りを目立たなくさせる観点から、7.5以下、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.5以下、更により好ましくは5.4以下である。特に(b)成分の無機金属塩の含有量が増えてくると、アルミニウムへの変色の影響は出やすくなるため、pHを上記範囲にすることが好適である。
このpHは以下の測定法によるものである。
(1)pHの測定法
pHメーター(株式会社堀場製作所製、pH/イオンメーターF-23)にpH電極内部液を飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)としたpH測定用複合電極(株式会社堀場製作所製、ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となる硬質表面用液体洗浄剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0042】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、残部として水含有する。水は、特に限定するものではないが、水道水、井戸水、脱イオン水、蒸留水等が挙げられ、脱イオン水が好ましい。水は、組成物の残部の量(合計が100質量%となる量)で用いられることが好ましい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、水を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.3質量%以下含有する。
【0043】
本発明における硬質表面用液体洗浄剤組成物には、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水以外の基剤が含まれていてもよい。かかる添加剤としては、公知の硬質表面用液体洗浄剤組成物に用いられる化合物が挙げられ、具体的には、(a)及び(c)成分以外の界面活性剤(以下、(d)成分という場合がある)、グリコール系溶剤(以下、(e)成分という場合がある)を更に配合することができる。
【0044】
<(d)成分>
(d)成分としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等の陰イオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。このうち両性界面活性剤が好ましく、炭素数12以上18以下好ましくはアルキルジメチルアミンオキシドがより好ましく、ラウリルジメチルアミンオキシドがより好ましい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(d)成分として、1種以上の界面活性剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(d)成分を含有することにより、高い洗浄力を発揮させる効果が奏されるため好ましい。
【0045】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(d)成分を、洗浄性の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、より更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0046】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物において、(a)成分、(c)成分及び(d)成分の合計含有量は、前記各界面活性剤成分濃度の規定と矛盾しない範囲で、洗浄性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、拭き筋を残さない観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更により好ましくは1.2質量%以下である。
【0047】
<(e)成分>
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、後述する硬質表面用洗浄シートとして使用する場合は、(e)成分として、揮発し易く洗浄性にも優れるグリコール系溶剤を含有することが好ましい。(e)成分は、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる1種以上を挙げることができ、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0048】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは7質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下含有する。ABS樹脂等のプラスチックに対する損傷を軽減させる効果、及び充分な防腐効果が発揮される観点から、(e)成分は硬質表面用液体洗浄剤組成物中に下限値以上含有されることが好ましく、防腐効果に見合った量を含有させるという観点から、(e)成分は硬質表面用液体洗浄剤組成物中に上限値以下含有されることが好ましい。
【0049】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記グリコール系溶剤以外のエタノール等の溶剤、酵素(タンパク質分解酵素、油脂分解酵素、糖質分解酵素等)、前記溶剤以外のパラトルエンスルホン酸ナトリウム等のハイドロトロープ剤、ポリアクリル酸塩等の分散剤、キサンタンガムのような粘度調整剤、着色剤、BHA等の酸化防止剤、プロキセルBDN(商標)等の商標名で市販されている防菌防カビ剤、シリコーン等の公知の抑泡剤、次亜塩素酸塩や過酸化水素等の漂白剤、漂白活性化剤などの成分、pH調整剤、紫外線吸収剤、着色剤、公知の香料等を配合することができる。
なお本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物では、クエン酸、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)、MGDA(メチルグリシン2酢酸)及びコハク酸、並びのそれらのアルカリ金属塩で示される分子量500以下のポリカルボン酸基を有する多価金属イオンキレート剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくはは0.01質量%以下である。
【0050】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃における粘度は、ふき取り易さの観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2mPa・s以上、そして、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以上、である。この粘度は、B型粘度計で測定されたものである。
【0051】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物が対象とする硬質表面としては、居間、部屋、台所、浴室、トイレといった居住まわり等の床、壁、天井、家具等の硬質表面が挙げられる。特に本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、該組成物を用いた1回の清拭で抗菌性能を発現することから、病院施設又は介護施設等の衛生管理が高度に必要な施設における床、壁、天井、家具、器具、器機等の硬質表面用に好適である。
また本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物が対象とする硬質表面の材質としては、プラスチック、セラミックス、金属、木、ガラス、ゴム、炭素材料などの材質からなる硬質表面が挙げられる。特に本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、該組成物をアルミニウムに接触させても変色しないことから、アルミニウム又はアルミニウムを含有する合金の構造体を含む硬質表面用として好適である。
【0052】
[硬質表面の洗浄方法、硬質表面に抗菌性を付与する方法、硬質表面用洗浄シート]
本発明は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を硬質表面に接触させる、硬質表面の洗浄方法を提供する。
また本発明は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を硬質表面に接触させる、硬質表面に抗菌性を付与する方法を提供する。
以下、本発明の硬質表面の洗浄方法、硬質表面に抗菌性を付与する方法に共通する事項にについて、本発明の方法と称して説明する。
【0053】
本発明の方法では、前記硬質表面用液体洗浄剤組成物を、対象物である硬質表面の面積1mに対して、抗菌性の観点から、好ましくは0.4g以上、より好ましくは0.8g以上、更に好ましくは1g以上、そして、好ましくは10g以下、より好ましくは15g以下、更に好ましくは10g以下の割合で接触させる、更に、塗布又は噴霧することが好ましい。
【0054】
前記硬質表面用液体洗浄剤組成物を、硬質表面に接触させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法が好ましい。具体的には、スプレー手段を用いる。すなわち本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる硬質表面用洗浄剤物品を用いるのが好ましい。すなわち、本発明は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品を提供する。
【0055】
本発明のスプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品における本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を充填するスプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0056】
前記硬質表面用液体洗浄剤組成物を硬質表面に接触させた後は、不織布又は織布を硬質表面に押し当てて、洗浄対象部分に損傷を与えない範囲で人の手などによる外力を加えて、洗浄対象部分に付着した汚れを不織布又は織布に移し取ればよく、擦る、揉む、叩く、のいずれであってもよい。
【0057】
本発明の方法では、不織布又は織布に本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を含ませたもので、硬質表面を清拭してもよい。
すなわち本発明は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物と、不織布又は織布とを含んでなる、硬質表面用洗浄シートを提供する。
また本発明は、本発明の硬質表面用洗浄シートで硬質表面を拭く、硬質表面の洗浄方法を提供する。
また本発明は、本発明の硬質表面用洗浄シートで硬質表面を拭く、硬質表面に抗菌性を付与する方法を提供する。
【0058】
不織布又は織布は、シート状に加工したものであり、不織布又は織布を構成する繊維は、親水性繊維、及び疎水性繊維から選ばれる1種以上の繊維から構成されるものが好ましい。
本発明において、親水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5%を超える繊維を指している。なお標準状態の水分率は、JISL 1013、JISL1015に規定される方法により測定される。また疎水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5質量%以下の繊維を指す。
【0059】
疎水性繊維である化学繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0060】
親水性繊維としては、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維(親水化処理されたポリエチレンテレフタレート繊維であり、前記の標準状態の水分率が親水性繊維の範囲にある繊維)等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0061】
本発明に用いる不織布又は織布の坪量は、好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上、そして、好ましくは100g/m以下、より好ましくは80g/m以下、更に好ましくは60g/m以下ある。
【0062】
不織布又は織布の質量に対する本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の質量割合(含浸率(質量%))は、好ましくは100質量%以上、より好ましくは150質量%以上、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下である。拭き取り効果を発揮する観点から、含浸率は100し質量%以上が好ましく、キーボード等の機器内部への水分の進入を防止する観点から、含浸率は250質量%以下が好ましい。含浸率は、以下の式より算出する。
含浸率(質量%)=((硬質表面用液体洗浄剤組成物を含浸させた不織布又は織布の質量)/(乾燥した不織布又は織布の質量)-1)×100
【0063】
本発明の硬質表面用洗浄シートを用いて硬質表面を拭く方法は、対象とする硬質表面に本発明の硬質表面用洗浄シートを押し当てて、洗浄対象部分に損傷を与えない範囲で人の手などによる外力を加えて、洗浄対象部分に付着した汚れを該硬質表面用洗浄シートに移し取ればよく、擦る、揉む、叩く、のいずれであってもよい。
【実施例0064】
実施例、比較例で用いた配合成分を以下にまとめて示す。
【0065】
<(a)成分>
・BAC:塩化ベンザルコニウム(C12-16)、一般式(1a)中、R1aが炭素数12~16のアルキル基、R2a及びR2aがメチル基、Xが塩化物イオンである化合物、サニゾールB―50、花王(株)製
・DDAC:塩化ジデシルジメチルアンモニウム、一般式(2a)中、R4aが炭素数10のアルキル基、R5aが炭素数10のアルキル基、R6a及びR7aがメチル基、Xが塩化物イオンである化合物、コータミンD―10E、花王(株)製
・TAC:塩化アルキルトリメチルアンモニウム(C12-16)、一般式(2a)中、R4aが炭素数12~16のアルキル基、R5a、R6a及びR7aがメチル基、Xが塩化物イオンである化合物、コータミン24P、花王(株)製
【0066】
<(b)成分>
・ZnSO4:硫酸亜鉛七水和物、富士フイルム和光純薬(株)製
・CuSO4:硫酸銅(II)五水和物、富士フイルム和光純薬(株)製
【0067】
<(c)成分>
・AG:アルキルグリコシド、一般式(1c)中、Gがグルコースであり、R1cが炭素数10~14のアルキル基(質量比:C10/C12/14=60/30/10)、xが0、yが平均1.3の化合物(単糖、2糖及び3糖の混合物)、マイドール12、花王(株)製
・POE(6):ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル、一般式(c2)中、R3cが炭素数12のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、平均付加モル数であるnが6の化合物、エマルゲン108、花王(株)製
・sec-POE(7):ポリオキシエチレン(7)アルキルエーテル、R3cが炭素数11~15の直鎖2級アルコール由来のアルキル基、AOがエチレンオキシ基、平均付加モル数であるnが7の化合物、ソフタノール70、日本触媒(株)製
・Tween80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(炭素数18の1価不飽和脂肪酸とソルビタンとのエステル化合物のエチレンオキシド付加物。(EOエチレンオキシド)平均付加モル数=20)、レオドールTW-O120V、花王(株)製
【0068】
<(d)成分>
・LAS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ネオぺレックスG25、花王(株)製
【0069】
上記に記載の配合成分を用いて、表1~3に示す硬質表面用液体洗浄剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1~3に示す。表1~3の硬質表面用液体洗浄剤組成物を得るにあたり、まずイオン交換水に、(a)~(d)成分を表中の含有量となるように添加し、室温(20℃)で溶解させた。配合後、pH調整剤として、硫酸を添加し、pHを表1~3中に記載の値になるように調整した。なお、pHはガラス電極法で測定した。また、表1~3中の含有量は質量基準の割合であり、全て有効分に基づく数値である。表1~3の含有量は、イオン交換水の量で調整したので、便宜的にイオン交換水の含有量を「残部」と表記している。なお本発明品の粘度はいずれも2.8±0.5mPa・sである。
【0070】
[抗菌性評価]
(評価方法)
JIS Z 2801(「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」 適用範囲:繊維製品及び光触媒抗菌加工製品を除く、プラスチック製品、金属製品、セラミックス製品など抗菌加工を施した製品の表面における細菌に対する抗菌性試験方法及び抗菌効果について規定する。)に準じて評価した。
試験片(日本テストパネル(株) SUS304 5cm×5cm)に、各硬質表面用液体洗浄剤組成物を2.4μL(清拭1回で表面に付着する想定量)均一塗布して乾燥させた。硬質表面用液体洗浄剤組成物を塗布しない無加工試験片も併せて用意した。
大腸菌(E.coli NBRC3972)を用い、菌数が106個/mLとなるように普通ブイヨン培地1/500NBで菌液を調整した。各試験片に菌液を0.4mL滴下し、4cm×4cmのフイルムを被せて滅菌したシャーレに入れ、相対湿度90%以上の状態にしたパッキンケース内に入れ、35±1℃の培養庫にて24時間静置した。24時間後、試験片を10mLのSCDLP液体培地にて洗い出し、りん酸緩衝液生理食塩水を用いて適宜希釈し、50℃に保温したSCDLP寒天培地と混釈し、冷却乾固させた寒天培地を35℃庫内にて48時間培養し、生菌数を測定した。
抗菌活性値は下記の式で求め、下記の基準で評価した。結果を表1~3に示す。
抗菌活性値=無加工試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値-各講師湯表面用液体洗浄剤組成物塗布試験片の24時間後の生菌数の対数値の平均値
(評価基準)
5: 生菌数が検出限界
4: 生菌数が検出限界未満~抗菌活性値が4.0以上
3: 抗菌活性値が4.0未満~2.0以上
2: 抗菌活性値が2.0未満~0.1以上
1: 抗菌活性値が0
【0071】
[アルミニウム変色評価]
(評価方法)
透明容器にアルミニウムテストピース(日本テストパネル(株) A1050P 1.0×20×50mm)を斜めに立てて配置し、テストピースが半分浸漬する量の各硬質表面用液体洗浄剤組成物を入れ、40℃に設定した保管庫に静置し、1日後の外観を観察した。外観の変化を下記の基準で評価した。結果を表1~3に示す。
(評価基準)
4:変色なし
3:ほぼ変色なし
2:やや変色あり
1:変色あり
【0072】
[拭き筋残り評価]
(評価方法)
不織布(ダイワボウポリテック株式会社製、ASP-40KS、140mm×200mm)に各硬質表面用液体洗浄剤組成物を含浸率186%(質量比)で含浸させた硬質表面用洗浄シートで、アルミニウム製の硬質表面を10往復拭き、乾燥させた後の外観の状態を観察した。外観を下記の基準で評価した。結果を表1~3に示す。
(評価基準)
4:拭き筋がやや残るが、目立たない
3:拭き筋がやや残るが、ほぼ目立たない
2:拭き筋が残り、やや外観不良
1:拭き筋が過度に残り、外観不良
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
<配合例>
表4にその他の成分を配合した場合の本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の配合例を示す。なおその他成分は以下の通りである。
(d)成分
・A20N:ラウリルジメチルアミンオキサイド(アンヒトール20N、花王株式社製)
(e)成分
・MFG:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・PG :プロピレングリコール
【0077】
【表4】