(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175557
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】矩形渠用可撓継手
(51)【国際特許分類】
E02B 5/02 20060101AFI20221117BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20221117BHJP
E02D 31/04 20060101ALI20221117BHJP
E02D 29/045 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E02B5/02 Z
E02B5/02 J
E03F3/04 Z
E02D31/04
E02D29/045 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082071
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000224215
【氏名又は名称】藤村クレスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521208169
【氏名又は名称】株式会社リグドロップ
(71)【出願人】
【識別番号】591082362
【氏名又は名称】シントク工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】田澤 貴光
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA26
2D147AC00
2D147CA04
2D147JC06
2D147JC09
2D147JD01
2D147NA02
(57)【要約】
【課題】 コンクリート製矩形渠間の継ぎ目に対し、ホールインアンカーを用いることなく又は必要最小限のホールインアンカーだけで確実且つ容易に施工することができるようにした矩形渠用可撓継手を創出することを課題とする。
【解決手段】 縦列方向の両端に一対の止水部11Aを有すると共に該一対の止水部11A間に伸縮可能な変形部11Bを備え、前記連結される前後の矩形渠1の内壁2側の継ぎ目に跨設されるスリーブ状の可撓性遮水シート11と、止水部11A上に載置されると共に前記縦列方向と直交する幅方向に沿って隣接配置され且つ前記止水部11Aを前記矩形渠1の内壁2に向かって押し付ける加圧プレート12と、幅方向に沿って複数配置されて前記加圧プレート12に加圧力を付与する反力フレーム13と、幅方向に隣接配置された前記反力フレーム13同士を枠状に連結する連結部材14と、を有する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦列方向に沿って連結される前後の矩形渠間の継ぎ目に設けられる矩形渠用可撓継手であって、
縦列方向の両端に一対の止水部(11A)を有すると共に該一対の止水部(11A)間に伸縮可能な変形部(11B)を備え、前記連結される前後の矩形渠(1)の内壁(2)側の継ぎ目に跨設されるスリーブ状の可撓性遮水シート(11)と、前記止水部(11A)上に載置されると共に前記縦列方向と直交する幅方向に沿って隣接配置され且つ前記止水部(11A)を前記矩形渠(1)の内壁(2)に向かって押し付ける加圧プレート(12)と、幅方向に沿って複数配置されて前記加圧プレート(12)に加圧力を付与する反力フレーム(13)と、幅方向に隣接配置された前記反力フレーム(13)同士を枠状に連結する連結部材(14)と、を有することを特徴とする矩形渠用可撓継手。
【請求項2】
反力フレーム(13)に、加圧プレート(12)を加圧すると共に、加圧された加圧プレート(12)により止水部(11A)を矩形渠(1)の内壁(2)に押し付けて圧縮するボルト(15)が螺着されている請求項1記載の矩形渠用可撓継手。
【請求項3】
枠状に連結された反力フレーム(13)、連結部材(14)及び可撓性遮水シート(11)を覆う保護カバー(17)が設けられている請求項1又は2記載の矩形渠用可撓継手。
【請求項4】
幅方向に隣接配置された反力フレーム(13)間に組立用の隙間余裕(S)が設けられており、該隙間余裕(S)を挟んで幅方向に対向する加圧プレート(12)の各押圧部(12A)と止水部(11A)とが対向する部分に薄板状の補助板(18)が配置されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の矩形渠用可撓継手。
【請求項5】
反力フレーム(13)と連結部材(14)の互いの対向面に凹凸部が夫々形成され、前記凹凸部同士が噛み合う状態で前記反力フレーム(13)と前記連結部材(14)とが連結されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の矩形渠用可撓継手。
【請求項6】
幅方向に隣接配置された反力フレーム(13)の間にクサビ状のスペーサーを挟入した請求項1乃至5のいずれか一項に記載の矩形渠用可撓継手。
【請求項7】
連結部材(14)に貫通孔(14b)が形成された固定部(14C)が延設されており、可撓継手(10)が、アンカーボルト(19)を前記貫通孔(14b)及び矩形渠(1)の内壁(2)に形成した取付孔(2a)取り付けることにより固定されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の矩形渠用可撓継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路を構築するコンクリート製矩形渠間の継ぎ目部分における止水を行う矩形渠用可撓継手に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のコンクリート製矩形渠を連結して構築される水路においては、地震等による大きな地盤変動が発生すると、矩形渠間の継ぎ目が大きく変位し、変位した継ぎ目を介して外部から地下水や土砂が侵入する問題や、内部から水等が漏水する問題が発生することから、従来より水密性能を保持するゴム製シート(可撓性遮水シート)から成る可撓継手で継ぎ目を覆うことでこれらの問題に対処する方法が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1に記載の先行技術は、可撓性遮水シート5の、一方の第1定着部5aを第1膨れ抑制用板状体10とコンクリート構造物B1との間に挟んだ状態で止め付け部材(ホールインアンカーなど)30を用いて加圧固定し、同様に他方の第2定着部5bを第2膨れ抑制用板状体20とコンクリート構造物B2との間に挟んだ状態で止め付け部材31(ホールインアンカーなど)を用いて加圧固定することで、可撓性遮水シート5を固定するというものである。
【0004】
他方、特許文献2に記載の先行技術は、コンクリート構造物2の目地部3を跨って配設され、押し部4を両側に有する可撓性材の伸縮部(ゴム製シート)5と、押し部4に長手方向に渡って被せられる断面コの字状の当接部6と、目地部3の側に位置する下方に折れた短脚11b及び目地部3の反対側に位置する下方に折れた長脚11dを有して当接部6に被せられる当圧部11とを備え、アンカーボルトボルト(ホールインアンカー)12に螺合するナット13を締め付け、当圧部11を介して押し部4をコンクリート構造物2に押し付けることで可撓性材の伸縮部(ゴム製シート)5を固定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-167126号公報
【特許文献2】特開2014-234652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記いずれの手段においても、ホールインアンカーを用いて可撓継手(ゴム製シート)を固定する構成であり、コンクリート構造物の継ぎ目に沿ってドリル等を用いて多数の孔を削孔する作業が必要になるという問題がある。
【0007】
またホールインアンカーは、打ち込み式や樹脂により固定する方式のものがあるが、いずれもコンクリート構造物へのドリル等による削孔を伴うところ、共用中の水の中では、削孔からホールインアンカーの設置作業及びホールインアンカーに可撓継手を設置して組み立てる一連の施工作業を行うことは困難で、作業中は水を切り回し(迂回)する必要があった。
【0008】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく発明されたものであり、コンクリート製矩形渠間の継ぎ目に対し、ホールインアンカーを用いることなく又は必要最小限のホールインアンカーだけで確実且つ容易に施工することができるようにした矩形渠用可撓継手を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
縦列方向の両端に一対の止水部を有すると共に該一対の止水部間に伸縮可能な変形部を備え、前記連結される前後の矩形渠の内壁側の継ぎ目に跨設されるスリーブ状の可撓性遮水シートと、前記止水部上に載置されると共に前記縦列方向と直交する幅方向に沿って隣接配置され且つ前記止水部を前記矩形渠の内壁に向かって押し付ける加圧プレートと、幅方向に沿って複数配置されて前記加圧プレートに加圧力を付与する反力フレームと、幅方向に隣接配置された前記反力フレーム同士を枠状に連結する連結部材と、を有することを特徴とする、と云うものである。
【0010】
また本発明の他の手段は、上記主たる手段に、反力フレームに、加圧プレートを加圧すると共に、加圧された加圧プレートにより止水部を矩形渠の内壁に押し付けて圧縮するボルトが螺着されている、との手段を加えたものである。
【0011】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、反力フレーム、連結部材及び可撓性遮水シートを覆う保護カバーが設けられている、との手段を加えたものである。
【0012】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、幅方向に隣接配置された反力フレーム間に組立用の隙間余裕が設けられており、該隙間余裕を挟んで幅方向に対向する加圧プレートの各押圧部と止水部とが対向する部分に薄板状の補助板が配置されている、との手段を加えたものである。
【0013】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、反力フレームと連結部材の互いの対向面に凹凸部が夫々形成され、前記凹凸部同士が噛み合う状態で前記反力フレームと前記連結部材とが連結されている、との手段を加えたものである。
【0014】
更に本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、幅方向に隣接配置された反力フレームの間にクサビ状のスペーサーを挟入した、との手段を加えたものである。
【0015】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、連結部材に貫通孔が形成された固定部が延設されており、可撓継手が、アンカーボルトを貫通孔及び矩形渠の内壁に形成した取付孔取り付けることにより固定されている、との手段を加えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、枠状に一体に連結した反力フレームが加圧プレートを加圧して可撓性遮水シートの止水部を強力に圧縮する構成であるため、止水部からの水漏れを効果的に防止することができる。
またホールインアンカーを用いることなく又は必要最小限のホールインアンカーだけで確実且つ容易に施工することが可能であるため、水路を併用しながら可撓継手を施工することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態として、矩形渠用可撓継手の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】(a)は
図1A-A線におけるゴム製シートの断面図、(b)は
図1B-B線における加圧プレートの断面図、(c)は
図1C-C線における反力フレームの断面図、(d)は
図1D-D線における連結部材の断面図である。
【
図3】矩形渠に施工した可撓継手を示す部分断面図であり、(a)は反力フレームを連結部材で連結した連結部における断面図、(b)は連結部以外の部分における断面図である。
【
図4】矩形渠内に可撓継手を施工する際の組立手順の一例を段階的に示すものであり、(a)は組立前段階、(b)は可撓性遮水シートの組立段階、(c)は下部側の組立途中段階、(d)下部側の組立終了段階、(e)は上部側の組立途中段階、(f)は組立終了段階を示している。
【
図5】可撓継手の機能を示す断面図であり、(a)はボルト締め付け前の状態、(b)はボルトを締め付けた後の状態を示している。
【
図7】保護カバーを取り付けた矩形渠用可撓継手の幅方向における断面図を示し、(a)は変位前の状態、(b)は変位後の状態を示している。
【
図8】補助板を取り付けた状態を示す可撓継手の縦列方向における断面図である。
【
図9】可撓継手を矩形渠に固定する一例を示す斜視断面図である。
【
図10】反力フレームを適正な位置に施工する第1実施例を示す断面図であり、(a)は施工前、(b)は施工後を示している。
【
図11】反力フレームを適正な位置に施工する第2実施例を示す平面図であり、(a)は施工前、(b)は施工後を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態として、矩形渠用可撓継手の概略構成を示す分解斜視図、
図2(a)は
図1のA-A線におけるゴム製シートの断面図、
図2(b)は
図1のB-B線における加圧プレートの断面図、
図2(c)は
図1のC-C線における反力フレームの断面図、
図2(d)は
図1のD-D線における連結部材の断面図である。
図3(a)は矩形渠用可撓継手の幅方向における断面図、
図3(b)は矩形渠用可撓継手の縦列方向における断面図である。尚、
図1では保護カバーを省略している。
尚、以下の説明において、縦列方向とは水平方向にのうち複数の矩形渠が連結されて水路が流れる方向を意味し、幅方向とは水平方向のうち縦列方向と直交する方向(周方向でもある)を意味する。
【0019】
本発明の矩形渠用可撓継手(以下、「可撓継手」という)10は、複数のコンクリート構造物から成る矩形渠(ボックスカルバートなど)1を水路が延びる縦列方向に沿って連結するものであり、縦列方向前後に隣り合う矩形渠1の端面間の継ぎ目4を、矩形渠1の内側から覆うように施工されるものである。
【0020】
図1に示すように、本実施例に示す矩形渠1は、閉断面四角形(正方形又は長方形)状に開口形成された内壁2の四隅に傾斜部3を備えて縦列方向に延びる箱型のコンクリート構造物である。
【0021】
図1及び
図2(a)-(d)に示すように、可撓継手10は、可撓性遮水シート11と、可撓性遮水シート11を矩形渠1の内壁に加圧固定する加圧プレート12と、加圧プレート12に加圧力を付与する反力フレーム13と、反力フレーム13同士を幅方向に沿って連結する連結部材14と、反力フレーム13と連結部材14を連結するボルト15及びこれらを覆う保護カバー17(
図6参照)とを有して形成されている。
【0022】
可撓性遮水シート11は、縦列方向に所定の幅寸法を有してスリーブ状(リング状又は環状ともいう)に形成されて成るゴム製のシート部材である。可撓性遮水シート11の外面で且つ縦列方向の両端の位置には肉厚に形成されてなる一対の止水部11Aが形成され、一対の止水部11A間にはそれよりも肉薄で形成されて縦列方向に伸縮可能な変形部11Bが設けられている。
【0023】
図2(b)に示すように、加圧プレート12は長板状の金属プレートから形成されており、押圧部12Aの両側を断面コの字状に折り曲げた一対の側板12Bを有する部材である。加圧プレート12を側方から見ると、矩形渠1の内壁2の傾斜部3に対応する対応傾斜部12Cを有して略L字に屈曲形成されている(
図1参照)。尚、矩形渠1が内壁2に傾斜部3を有しない構成である場合には、対応傾斜部12C部分を直角とする構成にすることができる。押圧部12Aは、一対の側板12Bを有する内面側が被加圧面として、その外面が加圧面として機能する。
【0024】
図2(c)に示すように、反力フレーム13も長板状の金属プレートから構成され、主面13Aの両側を断面コの字状に折り曲げた一対の側板13Bを備える部材である。反力フレーム13を側方から見ると、加圧プレート12同様に矩形渠1の内壁2の傾斜部3に対応する対応傾斜部13Cを有する略L字に屈曲形成されている(
図1参照)。尚、矩形渠1が内壁2に傾斜部3を有しない構成である場合には、対応傾斜部13C部分を直角とすることができる。
主面13Aにはボルト15を螺嵌するための複数のネジ孔13aが幅方向に沿って所定の間隔で形成されている。ネジ孔13aは主面13Aに直接螺子孔を形成する構成であってもよいし、
図2(c)に示すように主面13Aの裏側に貫通孔13a1に合わせて溶接等の手段によって固定したナット16をネジ孔13aとする構成としてもよい。尚、一対の側板13B間の対向寸法は、加圧プレート12の一対の側板12B間よりも広い寸法を有して形成されている。
【0025】
図2(d)に示すように、連結部材14も長板状の金属プレートで形成され、主面14Aの両側を断面コの字状に折り曲げて形成した一対の側板14Bを備えた部材であり、主面14Aにはボルト15を通すための複数の連結孔14aが幅方向に沿って所定の間隔を有して形成されている。また一対の側板14B間の対向寸法は、反力フレーム13の一対の側板13B間よりも広い寸法を有して形成されている。
【0026】
次に、上記矩形渠内に施工される可撓継手の構成について説明する。
図3(a)(b)に示すように、可撓継手10は、端面同士が近接配置されて縦列方向に並ぶ一方の矩形渠1Aと他方の矩形渠1Bとの継ぎ目4に跨設される。すなわち、可撓性遮水シート11は、一方の止水部11Aを一方の矩形渠1Aの端部近傍の内壁2に幅方向に沿って周設配置し、同様に他方の止水部11Aを他方の矩形渠1Bの端部近傍の内壁2に幅方向に沿って配置することにより、一方の矩形渠1Aと他方の矩形渠1Bと間に環状に跨設される。尚、変形部11Bは蛇腹状等、伸張前の状態に設定される。
加圧プレート12は、内面側の一対の側板12Bを矩形渠1A、1Bの中心方向(
図3では上方)に向けると共に、外面側の押圧面を止水部11A上に載置される。
【0027】
反力フレーム13は、加圧プレート12の上に被せるように配置されると共に、
図3(a)に示す連結部においては、連結部材14が幅方向に隣接配置された反力フレーム13間の上に跨るように被せて設置される。そして、反力フレーム13と連結部材14とが、ボルト15及びナット16を用いて夫々連結される。すなわち、幅方向に隣接する反力フレーム13の間に連結部材14を配置すると共に、ボルト15を反力フレーム13のネジ孔13aと連結部材14の連結孔14a内に連通させ、更にはナット16に螺合させることにより固定される。
【0028】
次に、可撓継手の組立手順について、加圧プレート12と反力フレーム13を4分割した例を用いて説明する。
図4(b)に示すように、最初に可撓性遮水シート11を矩形渠1の内壁2に、すなわち一方の矩形渠1Aと他方の矩形渠1Bと間に跨設する。次に
図4(c)に示すように、矩形渠1の下部側左側の位置に、予め加圧プレート12を反力フレーム13に組み込んだ部材を仮設置する。続いて
図4(d)に示すように、同様に矩形渠1の下部側右側の位置に、上記同様予め加圧プレート12を反力フレーム13に組み込んだ部材を設置した後、下部側左右の反力フレーム13間に連結部材14を仮設置する。次に
図4(e)に示すように、上記同様に矩形渠1の上部側左側の位置に、予め加圧プレート12を反力フレーム13に組み込んだ部材を仮設置し、上下左側の反力フレーム13間に連結部材14を仮設置する。
続いて、
図4(f)に示すように、上記同様に矩形渠1の上部側右側の位置に、予め加圧プレート12を反力フレーム13に組み込んだ部材を仮設置し、上部側左右の反力フレーム13間及び上下右側の反力フレーム13間に連結部材14を夫々仮設置する。最後に各反力フレーム13に設置したボルト15を締め込み、可撓性遮水シート11の止水部11Aを矩形渠1の内壁2に押し付けて圧縮する。
【0029】
このよう組立作業を矩形渠1Aと矩形渠1Bの双方において行うと、可撓継手10は分割形成された4つの反力フレーム13をその間の4箇所に設けた連結部材14によって枠状に一体化することできる。そして、この一体に連結された枠状の反力フレーム13がゴム製の止水部11Aを圧縮する。
【0030】
図5(a)(b)に示すように、ボルト15を締め付けると、ボルト15の先端が加圧プレート12押圧部12Aの内面(被加圧面)を押圧するため、その外面(加圧面)が止水部11Aを矩形渠1の内壁2に押し付ける。この際、ボトル15の締付力F1は外側に向かって加圧プレート12の押圧部12Aに作用するため、押圧部12Aはボルト15に対応する位置に設けられた止水部11Aを矩形渠1の内壁2に押し付けて圧縮させることができる。同時に、ゴム製の止水部11Aからの反力F2が、締め付けたボトル15と対称となる反対側の位置に設けられたボルト15に伝わって加圧プレート12を介して止水部11Aを矩形渠1の内壁2に押し付けて圧縮する。
【0031】
このため、各ボルト15を適度に締め付けると、止水部11Aと矩形渠1の内壁2とが接する幅方向の全周において、止水部11Aと矩形渠1の内壁2との密着度を高めることができるため、水漏れを効果的に防止することができる。しかもボルト15による締付力F1と止水部11Aによる反力F2とのバランスが、矩形渠1の内壁2の全周に亘って維持されるようになるため、一体に連結された枠状の反力フレーム13を有する可撓継手10を矩形渠1内に強固に保持することができる。
【0032】
尚、反力フレーム13と連結部材14とが接触する互いの対向面に複数の鋸状の凹凸部を夫々形成し、互いの凹凸部同士が噛み合う状態で反力フレーム13と連結部材14とが連結される構成が好ましい。この構成では凹凸部同士が互いに噛み合うことで反力フレーム13と連結部材14との間の幅方向への滑りを抑制することが可能となるため、反力フレーム13の辺長変化(幅方向(周方向)への変位)を防止し、その噛み合わせによって適切な位置で固定すること(固定位置の調整)ができる。
【0033】
図6は保護カバーの概要を示す斜視図、
図7は保護カバーを取り付けた矩形渠用可撓継手の断面図を示し、(a)は変位前の状態、(b)は変位後の状態を示している。
図6に示すように、保護カバー17は、幅方向に延びる主面17Aと、主面17Aの両端から縦列方向に向かって傾斜状に折り曲げられた一対の斜面17Bを有する金属製(例えばステンレス製)の部材であり、主面17Aには縦列方向に沿って開口する一対の長孔17aが幅方向に沿って所定の間隔を有して複数配置されている。
【0034】
図7(a)に示すように、保護カバー17を矩形渠1内に設置するには、保護カバー17を、反力フレーム13の上に載置した状態(連結部では保護カバー17を連結部材14の上に載置した状態(図示せず))で、ボルト15を保護カバー17の長孔17a及び反力フレーム13のネジ孔13aに連通させ、更に連結部では連結部材14の連結孔14a内に連通させると共に、ナット16に螺合させることにより固定される。
【0035】
保護カバー17は、その下に設けられる可撓継手10の全体を覆い隠し、矩形渠1内における流水の流れを滑らかにする機能を有する。また
図7(b)に示すように、例えば、矩形渠1の端面間の継ぎ目4が広がる方向に変位した場合においては、可撓性遮水シート11は変形部11Bがその変位に追従して伸張しようとする。この際、ボルト15は保護カバー17の長孔17a内を孔の形状に沿って幅方向に移動することが許容されるため、許容範囲内の変位量であれば、変位後においても保護カバー17の機能を維持することができる。更には、例えば外水圧によって可撓性遮水シート11が過度に内壁2側に膨張することを防止することが可能となる。
【0036】
図8は補助板を取り付けた状態を示す可撓継手の縦列方向における断面図である。
図8に示すように、幅方向に隣接する左右の加圧プレート12間(反力フレーム13間でもある)には、組立用の隙間余裕Sを設ける必要があるが、隙間余裕Sを有する部分では加圧プレート12の押圧部12Aが止水部11Aを直接加圧はできない。このため、止水部11Aを幅方向全周に渡って均等に加圧圧縮することができなくなるため、圧縮が弱い部分(隙間余裕Sに対応する部分)では水漏れが生じやすくなる可能性がある。
そこで、隙間余裕Sに対応する位置で且つ加圧プレート12の押圧部12Aと止水部11Aとの間に薄板状の補助板18を配置する構成にすると、隙間余裕Sを有する構成であっても、ボルト15の締付力F1を、隙間余裕S部分を含めた止水部11Aの幅方向の全周に渡って一様に作用させることが可能となり、水漏れし難くすることができるようになる点で好ましい。
【0037】
次に、上記のような組立作業において、反力フレーム13を矩形渠1の適正な位置に施工する方法について説明する。
反力フレーム13を矩形渠1の適正な位置に施工するには、まずは組立用の拡張式の治具を用いることが好適である。
【0038】
図9は可撓継手を矩形渠に固定する一例を示す斜視断面図である。
図9に示すように、連結部材14の側板14Bの一方の下端を水平方向に延長して固定部14Cを設け、この固定部14Cに貫通孔14bを形成すると共に、矩形渠1側の内壁2の適正な位置に取付孔2aを形成し、アンカーボルト19を貫通孔14b及び取付孔2aに取り付けて固定することにより、可撓継手10を適正な位置に確実に施工することが可能となる。
【0039】
本実施例のように、4つの反力フレーム13を枠状に配置する構成では連結部材14は4ケ必要であり、連結部材14を固定するアンカーボルト19の数量も4ケで足りることから、多数のアンカーボルトを必要とする従来に比較して組立作業を容易化することができる。
また従来に比較し、数分の1程度の数のアンカーボルトしか用いる必要がないことから、切り回しの時間の大幅な短縮及び部分的な切り回しを可能とすることができる。
【0040】
図10は反力フレームを適正な位置に施工する調整手段の第1実施例を示す断面図であり、(a)は施工前、(b)は施工後を示している。また
図11は反力フレームを適正な位置に施工する調整手段の第2実施例を示す平面図であり、(a)は施工前、(b)は施工後を示している。
反力フレーム13を施工した直後では、幅方向において隣接する左右の反力フレーム13間が互いに接近しすぎた不適正な状態(隙間余裕Sが狭い状態)にあると、反力フレーム13の周方向の全長が短くなり、加圧プレート12に与える加圧力が弱くなって水漏れしやすくなる虞がある。
【0041】
そこで、
図10(a)(b)に示す第1実施例では、幅方向に隣接する左右の反力フレーム13間の隙間余裕S内に、クサビ状のスペーサー20を内壁2に対して垂直に打ち込んで挟入し、隙間余裕Sを拡張させている。
また他の方法として、
図11(a)(b)に示す第2実施例では、幅方向に隣接する左右の反力フレーム13間の隙間余裕S内に、一対のクサビ状のスペーサー20を縦列方向の両側から内壁2に対して水平に打ち込んで挟入し、隙間余裕Sを拡張させている。
【0042】
上記いずれの実施例においても、隣接する反力フレーム13が互いに離れる幅方向に移動させられ、各反力フレーム13を適正な位置に施工することができる。その結果、反力フレーム13は加圧プレート12に対して強い加圧力を付与することができ、可撓性遮水シート11を内壁2に強力に押し付けて水漏れを抑制することが可能となる。
【0043】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0044】
例えば、上記実施例では、矩形渠1の閉断面形状として正方形状の場合を示すと共に、略L字に屈曲形成された加圧プレート12及び反力フレーム13を4分割した例を用いて説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではなく、矩形渠1の閉断面形状はその他例えば長方形状やその他の形状であってもよいし、加圧プレート12及び反力フレーム13を4分割以上に分割して構成される構成としてもよい。
特に長方形状の矩形渠1を使用した場合には、略L字に屈曲形成を有して4分割した加圧プレート12及び反力フレーム13を角部に使用し、両角部の間の長辺部については直線状の加圧プレート12及び反力フレーム13で補うと共に、上記同様に連結部材14で連結することによって枠状に一体化することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、1A、1B : 矩形渠(ボックスカルバート)
2 : 内壁
2a : 取付孔
3 : 傾斜部
4 : 継ぎ目
10 : 可撓継手
11 : 可撓性遮水シート
11A: 止水部
11B: 変形部
12 : 加圧プレート
12A: 押圧部
12B: 側板
12C: 対応傾斜部
13 : 反力フレーム
13A: 主面
13B: 側板
13C: 対応傾斜部
13a: ネジ孔
13a1:貫通孔(ネジ孔)
14 : 連結部材
14A: 主面
14B: 側板
14C: 固定部
14a: 連結孔
14b: 貫通孔
15 : ボルト
16 : ナット(ネジ孔)
17 : 保護カバー
17A: 主面
17B: 斜面
17a: 長孔
18 : 補助板
19 : アンカーボルト
20 : スペーサー
F1 : 締付力
F2 : 反力
S : 隙間余裕