(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175560
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221117BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082076
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥井 宏明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056HA05
2C056KB16
2C057AF84
2C057AG29
2C057AG31
2C057AG44
2C057AG77
2C057AM31
2C057AP02
2C057AR18
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置の低コスト化を図りつつ、インクの増粘を低減する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、ノズルが設けられた複数の個別流路と、複数の個別流路に液体を供給する共通供給流路と、複数の個別流路から液体を排出させる共通排出流路と、複数の個別流路を迂回して共通供給流路と共通排出流路とを連通させるバイパス流路と、を有し、バイパス流路と複数の個別流路の合成流路抵抗は、共通供給流路の流路抵抗よりも大きく、かつ、共通排出流路の流路抵抗よりも大きい。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが設けられた複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に液体を供給する共通供給流路と、
前記複数の個別流路から液体を排出させる共通排出流路と、
前記複数の個別流路を迂回して前記共通供給流路と前記共通排出流路とを連通させるバイパス流路と、を有し、
前記バイパス流路と前記複数の個別流路の合成流路抵抗は、前記共通供給流路の流路抵抗よりも大きく、かつ、前記共通排出流路の流路抵抗よりも大きい、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記バイパス流路と前記複数の個別流路との合成流路抵抗は、前記バイパス流路と前記複数の個別流路と前記共通供給流路と前記共通排出流路との合成流路抵抗に対して、50%以上70%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記バイパス流路の流路抵抗は、前記複数の個別流路の合成流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記バイパス流路の流路抵抗は、前記複数の個別流路の合成流路抵抗に対して25%以上55%以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の個別流路のそれぞれは、前記複数のノズルから液体を吐出するために圧力を付与する圧力室と、前記圧力室に液体を供給する個別供給流路と、前記圧力室から液体を排出させる個別排出流路と、を含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記バイパス流路の流路抵抗は、前記複数の個別流路に含まれる個別供給流路の合成流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記バイパス流路の流路抵抗は、前記複数の個別流路に含まれる個別排出流路の合成流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記複数の個別流路に含まれる個別供給流路のそれぞれの流路抵抗と前記複数の個別流路に含まれる個別排出流路のそれぞれの流路抵抗とは、互いに略等しい、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記共通供給流路の流路抵抗は、前記共通排出流路の流路抵抗よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記バイパス流路の流路抵抗は、液体の粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、2.23×1010[N・s/m5]以上6.69×1010[N・s/m5]以下である、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記バイパス流路と前記複数の個別流路との合成流路抵抗は、液体の粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、1.67×1010[N・s/m5]以上5.02×1010[N・s/m5]以下である、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記共通供給流路の流路抵抗は、液体の粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、9.76×109[N・s/m5]以上2.93×1010[N・s/m5]以下である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記共通排出流路の流路抵抗は、液体の粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、1.39×109[N・s/m5]以上4.18×109[N・s/m5]以下である、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記ノズルから液体が吐出される方向を第1方向とし、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、
前記第1方向および前記第2方向の両方に直交する方向を第3方向としたとき、
前記バイパス流路は、
前記第1方向に沿って延びており、前記共通供給流路に接続する第1部分と、
前記第1方向に沿って延びており、前記共通排出流路に接続する第2部分と、
前記第2方向および前記第3方向の両方に平行な平面に沿って延びており、前記第1部分および前記第2部分のそれぞれに接続する第3部分と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第3部分は、前記第1方向にみたとき、U字形状をなす、
ことを特徴とする請求項14に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記第1部分および前記第2部分のそれぞれの流路抵抗は、前記第3部分の流路抵抗よりも大きい、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドによる液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンターに代表される液体吐出装置では、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されるように、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド内の液体を循環させる構成を有する場合がある。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドは、ノズル開口に連通する複数の圧力発生室と、複数の圧力発生室に連通する第1マニホールドおよび第2マニホールドと、これらのマニホールド間を圧力発生室とは別系統で接続するバイパス流路と、を有する。ここで、第1マニホールドには、ポンプの駆動力により、インクカートリッジからインクが供給される。当該インクは、第1マニホールドから圧力発生室またはバイパス流路を介して第2マニホールドに流入した後、インクカートリッジに戻る経路で循環される。特許文献1では、バイパス流路の流路抵抗をRとし、圧力発生室を含んで2つのマニホールド間を接続する流路の流路抵抗をrとし、ノズル開口の数をNとしたとき、R<r/Nを満たす。
【0004】
特許文献2に記載のヘッドは、ノズルと連通する複数の圧力室と、圧力室に液供給路を通じて供給される液を貯留する供給側共通流路と、圧力室から液循環路を通じて回収される液を貯留する循環側共通流路と、供給側共通流路から液を循環側共通流路に流すバイパス用流路と、を有する。ここで、バイパス用流路の流路抵抗をRとし、圧力室の数をNとし、液供給路から圧力室を経て液循環路までの流路抵抗をrとしたとき、r/N<R<rの関係を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1および特許文献2に記載の構成では、低コスト化を図りつつ、インクの増粘を低減することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、ノズルが設けられた複数の個別流路と、前記複数の個別流路に液体を供給する共通供給流路と、前記複数の個別流路から液体を排出させる共通排出流路と、前記複数の個別流路を迂回して前記共通供給流路と前記共通排出流路とを連通させるバイパス流路と、を有し、前記バイパス流路と前記複数の個別流路の合成流路抵抗は、前記共通供給流路の流路抵抗よりも大きく、かつ、前記共通排出流路の流路抵抗よりも大きい。
【0009】
本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、前述の態様の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドによる液体の吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る液体吐出装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る液体吐出ヘッドを有する液体吐出モジュールの斜視図である。
【
図3】
図2に示す液体吐出ヘッドの分解斜視図である。
【
図4】液体吐出ヘッドの有するヘッド本体の流路を模式的に示す平面図である。
【
図5】液体吐出ヘッドの有するヘッド本体の断面図である。
【
図7】ホルダーに設けられる流路とヘッド本体とを示す斜視図である。
【
図11】液体吐出ヘッドに設けられる流路の等価的な回路図である。
【
図12】実施形態に係る液体吐出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。X1方向またはX2方向は、「第2方向」の一例である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。Y1方向またはY2方向は、「第3方向」の一例である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。Z1方向またはZ2方向は、「第1方向」の一例である。
【0013】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、「第2方向」は、Z軸に直交する方向であればよく、例えば、Y1方向またはY2方向でもよい。「第3方向」は、「第1方向」および「第2方向」の両方に直交すればよく、例えば、「第2方向」がY1方向またはY2方向である場合、X1方向またはX2方向である。
【0014】
1.実施形態
1-1.液体吐出装置100
【0015】
図1は、実施形態に係る液体吐出装置100の構成例を示す概略図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体Mに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体吐出装置100は、インクを吐出する複数のノズルが媒体Mの幅方向での全範囲にわたり分布する、いわゆるライン方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0016】
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体容器110と、「制御部」の一例である制御ユニット120と、搬送機構130と、液体吐出モジュール140と、循環機構150と、を有する。
【0017】
液体容器110は、インクを貯留する容器である。液体容器110の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器110に貯留されるインクの種類は任意である。
【0018】
本実施形態の液体容器110は、図示しないが、第1液体容器と第2液体容器とを含む。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。例えば、第1インクおよび第2インクは、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。
【0019】
制御ユニット120は、液体吐出装置100の各要素の動作を制御する。制御ユニット120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数の処理回路と、半導体メモリー等の1または複数の記憶回路とを含む。当該記憶回路には、各種プログラムおよび各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0020】
搬送機構130は、制御ユニット120による制御のもとで、媒体Mを方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、Y2方向である。
図1に示す例では、搬送機構130は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構130は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体Mを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラムまたは無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0021】
液体吐出モジュール140は、制御ユニット120による制御のもとで、液体容器110から循環機構150を介して供給されるインクを複数のノズルのそれぞれからZ2方向に媒体Mに吐出する。液体吐出モジュール140は、X軸の方向における媒体Mの全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される複数の液体吐出ヘッド10を有するラインヘッドである。つまり、複数の液体吐出ヘッド10の集合体は、X軸に沿う方向に延びる長尺なラインヘッドを構成する。複数の液体吐出ヘッド10からのインクの吐出が搬送機構130による媒体Mの搬送に並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。なお、1つの液体吐出ヘッド10の有する複数のノズルがX軸に沿う方向での媒体Mの全範囲にわたり分布するように配置されてもよく、この場合、例えば、液体吐出モジュール140は、当該1つの液体吐出ヘッド10で構成される。
【0022】
液体吐出モジュール140には、循環機構150を介して液体容器110が接続される。循環機構150は、制御ユニット120による制御のもとで、液体吐出モジュール140にインクを供給するとともに、液体吐出モジュール140から排出されるインクを液体吐出モジュール140への再供給のために回収する機構である。循環機構150は、例えば、インクを貯留するサブタンクと、サブタンクから液体吐出モジュール140にインクを供給するための供給流路と、液体吐出モジュールからインクをサブタンクに回収するための回収流路と、インクを適宜に流動させるためのポンプと、を有する。これらは、前述の第1液体容器および第2液体容器のそれぞれについて容器ごとに設けられる。以上の循環機構150の動作により、インクの粘度上昇を抑えたり、インク内の気泡の滞留を低減したりすることができる。
【0023】
1-2.液体吐出モジュール140
図2は、実施形態に係る液体吐出ヘッド10を有する液体吐出モジュール140の斜視図である。
図2に示すように、液体吐出モジュール140は、支持体41と複数の液体吐出ヘッド10とを有する。支持体41は、複数の液体吐出ヘッド10を支持する部材である。
図2に示す例では、支持体41は、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体吐出ヘッド10を取り付けるための取付孔41aが設けられる。取付孔41aには、複数の液体吐出ヘッド10がX軸に沿う方向に並ぶ状態で挿入されており、各液体吐出ヘッド10は、支持体41に対してネジ止め等により固定される。
図2では、2個の液体吐出ヘッド10が代表的に図示される。なお、液体吐出モジュール140における液体吐出ヘッド10の数は、任意である。また、支持体41の形状等も、
図2に示す例に限定されず、任意である。
【0024】
1-3.液体吐出ヘッド10
図3は、
図2に示す液体吐出ヘッド10の分解斜視図である。
図3に示すように、液体吐出ヘッド10は、流路構造体11と配線基板12とホルダー13と複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6と固定板15とベース16とを有する。これらは、Z2方向に向かって、ベース16、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6、固定板15の順に配置される。以下、液体吐出ヘッド10の各部を順次説明する。なお、以下では、ヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6のそれぞれをヘッド本体14という場合がある。
【0025】
流路構造体11は、循環機構150と複数のヘッド本体14との間でインクを流すための流路が内部に設けられる構造体である。流路構造体11には、
図3に示すように、接続管11a、接続管11b、接続管11c、接続管11dおよび孔11eが設けられる。
【0026】
ここで、
図3では図示を省略するが、流路構造体11の内部には、第1供給流路、第2供給流路、第1排出流路および第2排出流路等の流路が設けられる。第1供給流路は、第1インクを複数のヘッド本体14に供給するための流路である。第2供給流路は、第2インクを複数のヘッド本体14に供給するための流路である。これらの供給流路のそれぞれの途中には、異物等を捕捉するためのフィルターが設置される。第1排出流路は、複数のヘッド本体14から第1インクを排出するための流路である。第2排出流路は、複数のヘッド本体14から第2インクを排出するための流路である。なお、流路構造体11の流路については、後述の
図9および
図10に基づいて説明する。
【0027】
接続管11a、11b、11cおよび11dは、Z1方向に突出する管体である。より具体的には、接続管11aは、第1供給流路に第1インクを供給するための流路を構成する管体である。また、接続管11bは、第2供給流路に第2インクを供給するための流路を構成する管体である。一方、接続管11cは、第1排出流路から第1インクを排出するための流路を構成する管体である。また、接続管11dは、第2排出流路から第2インクを排出するための流路を構成する管体である。孔11eは、後述のコネクター12cを挿入するための孔である。
【0028】
配線基板12は、複数のヘッド本体14と後述の集合基板16bとを電気的に接続するための実装部品である。配線基板12は、例えば、リジッド配線基板である。配線基板12は、流路構造体11とホルダー13との間に配置されており、配線基板12における流路構造体11と対向する面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、後述の集合基板16bに接続される接続部品である。また、配線基板12には、複数の孔12aおよび複数の開口部12bが設けられる。各孔12aは、流路構造体11とホルダー13との接続を許容するための孔である。各開口部12bは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線基板14hが通される孔である。当該配線基板14hは、配線基板12のZ1方向を向く面に接続される。配線基板14hは、後述する圧電素子14eと電気的に接続される配線を含む部材であり、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)やCOF(Chip On Film)等である。
【0029】
ホルダー13は、複数のヘッド本体14を収容および支持する構造体である。ホルダー13は、例えば、樹脂材料または金属材料等で構成される。ホルダー13は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。また、ホルダー13には、接続管13a、接続管13b、複数の接続管13c、複数の接続管13dおよび複数の配線孔13eが設けられる。また、図示しないが、ホルダー13のZ2方向を向く面には、複数のヘッド本体14を収容する複数の凹部が設けられる。
【0030】
本実施形態では、ホルダー13には、6個のヘッド本体14_1~14_6が保持される。これらのヘッド本体は、ヘッド本体14_1、14_4、14_2、14_5、14_3、14_6の順に、X2方向に並ぶ。ここで、ヘッド本体14_1~14_3は、ヘッド本体14_4~14_6に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッド本体14_1~14_6は、X1方向またはX2方向にみて互いに重なる部分を有する。また、ヘッド本体14_1~14_6の後述する複数のノズルNの配列方向DNが互いに平行である。さらに、ヘッド本体14_1~14_6のそれぞれは、媒体Mの搬送方向である方向DMに対して配列方向DNが傾斜するように配置される。
【0031】
ここで、
図3では図示を省略するが、ホルダー13の内部には、第1分配供給流路、第2分配供給流路、複数の第1個別排出流路、複数の第2個別排出流路および複数のバイパス流路が設けられる。第1分配供給流路は、複数のヘッド本体14に第1インクを供給するための分岐を有する流路である。第2分配供給流路は、複数のヘッド本体14に第2インクを供給するための分岐を有する流路である。第1個別排出流路は、第1インクを排出するヘッド本体14ごとに設けられ、ヘッド本体14から排出される第1インクを流路構造体11の第1排出流路に導入するための流路である。第2個別排出流路は、第2インクを排出するヘッド本体14ごとに設けられ、ヘッド本体14から排出される第2インクを流路構造体11の第2排出流路に導入するための流路である。バイパス流路は、ヘッド本体14ごとに2個ずつ設けられ、後述の第1共通液室R1と第2共通液室R2とを連通させる迂回流路である。なお、ホルダー13の流路については、後述の
図6から
図8に基づいて説明する。
【0032】
本実施形態では、ヘッド本体14_1~14_6のうち、ヘッド本体14_1~14_3に第1インクが供給され、ヘッド本体14_4~14_6に第2インクが供給される。
【0033】
接続管13a、13b、13cおよび13dは、Z1方向に突出する管状の突起である。より具体的には、接続管13aは、第1分配供給流路に第1インクを供給するための流路を構成する管体であり、流路構造体11の第1供給流路に連通する。また、接続管13bは、第2分配供給流路に第2インクを供給するための流路を構成する管体であり、流路構造体11の第2供給流路に連通する。一方、接続管13cは、第1個別排出流路から第1インクを排出するための流路を構成する管体であり、流路構造体11の第1排出流路に連通する。また、接続管13dは、第2個別排出流路から第2インクを排出するための流路を構成する管体であり、流路構造体11の第2排出流路に連通する。配線孔13eは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線基板14hが通される孔である。
【0034】
各ヘッド本体14は、インクを吐出する。具体的には、
図3では図示を省略するが、各ヘッド本体14は、第1インクを吐出する複数のノズルと、第2インクを吐出する複数のノズルと、を有する。これらのノズルは、各ヘッド本体14のZ2方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。ヘッド本体14の詳細については、後述の
図4に基づいて説明する。
【0035】
固定板15は、複数のヘッド本体14をホルダー13に対して固定するための板部材である。具体的には、固定板15は、ホルダー13との間に複数のヘッド本体14を挟む状態で配置され、ホルダー13に対して接着剤により固定される。固定板15は、例えば、金属材料等で構成される。固定板15には、当該複数のヘッド本体14のノズルを露出させるための複数の開口部15aが設けられる。
図3に示す例では、当該複数の開口部15aは、ヘッド本体14ごとに個別に設けられる。なお、開口部15aは、2以上のヘッド本体14で共用される態様でもよい。
【0036】
ベース16は、前述の支持体41に対して、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14、および固定板15を固定するための部材である。ベース16は、本体16aと集合基板16bとカバー16cとを有する。
【0037】
本体16aは、ホルダー13に対してネジ止め等により固定されることにより、ベース16とホルダー13との間に配置される流路構造体11および配線基板12を保持する。本体16aは、例えば、樹脂材料等で構成される。本体16aは、前述の流路構造体11の板状部分に対向する板状の部分を有しており、当該板状の部分には、前述の接続管11a、11b、11cおよび11dが挿入される複数の孔16dが設けられる。また、本体16aは、当該板状の部分からZ2方向に延びる部分を有しており、当該部分の先端には、前述の支持体41に固定するためのフランジ16eが設けられる。
【0038】
集合基板16bは、制御ユニット120と前述の配線基板12とを電気的に接続するための実装部品である。集合基板16bは、例えば、リジット配線基板である。カバー16cは、集合基板16bを保護するとともに集合基板16bを本体16aに対して固定するための板状部材である。カバー16cは、例えば、樹脂材料等で構成されており、ネジ止め等により本体16aに固定される。
【0039】
1-4.ヘッド本体14
図4は、液体吐出ヘッド10の有するヘッド本体14の流路を模式的に示す平面図である。以下の説明は、便宜上、X軸、Y軸およびZ軸のほか、V軸およびW軸を適宜に用いて行う。また、V軸に沿う一方向がV1方向であり、V1方向と反対の方向がV2方向である。同様に、W軸に沿って互いに反対の方向がW1方向およびW2方向である。
【0040】
ここで、V軸は、後述の複数のノズルNの配列方向に沿う軸であり、Y軸をZ軸まわりに所定角度で回転させた軸である。W軸は、X軸をZ軸まわりに当該所定角度で回転させた軸である。したがって、V軸およびW軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。また、当該所定角度、すなわち、V軸とY軸とのなす角度、または、W軸とX軸とのなす角度は、例えば、40°以上60°以下の範囲内である。
【0041】
図4に示すように、ヘッド本体14には、複数のノズルNと複数の個別流路Pと第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設けられる。ここで、第1共通液室R1および第2共通液室R2は、複数の個別流路Pを介して連通する。また、
図4中の二点鎖線で示すように、第1共通液室R1および第2共通液室R2には、バイパス流路BP1、BP2が接続される。バイパス流路BP1、BP2は、複数の個別流路Pを迂回して第1共通液室R1と第2共通液室R2とを連通させる流路であり、ホルダー13に設けられる。バイパス流路BP1、BP2の詳細については、後述の
図6、
図7および
図8に基づいて説明する。
【0042】
ヘッド本体14は、媒体Mに対向する表面を有し、当該表面には、
図4に示すように、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNは、V軸に沿って配列される。複数のノズルNのそれぞれは、Z2方向にインクを吐出する。
【0043】
ここで、複数のノズルNの集合は、ノズル列Lnを構成する。また、複数のノズルNは、所定のピッチで等間隔に配列される。当該所定のピッチは、V軸に沿う方向における複数のノズルNの中心間の距離である。
【0044】
複数のノズルNのそれぞれには、個別流路Pが連通する。複数の個別流路Pのそれぞれは、W軸に沿って延びており、互いに異なるノズルNに連通する。複数の個別流路Pは、V軸に沿って配列される。
【0045】
図4に示すように、各個別流路Pは、圧力室Caと圧力室Cbとノズル流路Nfと個別供給流路Ra1と個別排出流路Ra2と第1連通流路Na1と第2連通流路Na2とを有する。
【0046】
各個別流路Pにおける圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれは、W軸に沿って延びており、当該個別流路Pに連通するノズルNから吐出されるインクが貯留される空間である。
図4に示す例では、複数の圧力室Caは、V軸に沿って配列される。同様に、複数の圧力室Cbは、V軸に沿って配列される。なお、各個別流路Pにおいて、V軸に沿う方向における圧力室Caおよび圧力室Cbの位置は、
図4に示す例では互いに同じであるが、互いに異なってもよい。なお、以下では、圧力室Caおよび圧力室Cbを特に区別しない場合に、これらのそれぞれを「圧力室C」という場合がある。
【0047】
各個別流路Pにおける圧力室Caと圧力室Cbとの間には、ノズル流路Nfが配置される。ここで、圧力室Caは、Z軸に沿って延びる第1連通流路Na1を介してノズル流路Nfに連通する。圧力室Cbは、Z軸に沿って延びる第2連通流路Na2を介してノズル流路Nfに連通する。
【0048】
各個別流路Pにおいて、ノズル流路Nfは、W軸に沿って延びる空間である。また、複数のノズル流路Nfは、互いに間隔をあけてV軸に沿って配列される。各ノズル流路Nfには、ノズルNが設けられる。各ノズル流路Nfでは、前述の圧力室Caおよび圧力室Cb内の圧力が変化することで、ノズルNからインクが吐出される。
【0049】
第1連通流路Na1および第2連通流路Na2のそれぞれは、Z軸に沿って延びる空間である。なお、第1連通流路Na1および第2連通流路Na2は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0050】
複数の個別流路Pには、第1共通液室R1および第2共通液室R2が連通する。ここで、圧力室Caは、Z軸に沿って延びる個別供給流路Ra1を介して第1共通液室R1に連通する。圧力室Cbは、Z軸に沿って延びる個別排出流路Ra2を介して第2共通液室R2に連通する。
【0051】
第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれは、複数のノズルNが分布する全範囲に亘ってV軸に沿って延びる空間である。ここで、第1共通液室R1は、各個別流路PのW2方向での端に接続される。第1共通液室R1には、各個別流路Pに供給するためのインクが貯留される。一方、第2共通液室R2は、各個別流路PのW1方向での端に接続される。第2共通液室R2には、吐出に供されずに各個別流路Pから排出されるインクが貯留される。
【0052】
第1共通液室R1には、供給口IO1と排出口IO3aと排出口IO3bとが設けられる。供給口IO1は、ホルダー13の分配供給流路SPから第1共通液室R1にインクを導入するための管路である。排出口IO3aは、第1共通液室R1からバイパス流路BP1にインクを排出するための管路である。排出口IO3bは、第1共通液室R1からバイパス流路BP2にインクを排出するための管路である。なお、分配供給流路SPは、後述の第1分配供給流路SP1または第2分配供給流路SP2である。
【0053】
ここで、分配供給流路SPは、流路構造体11の供給流路CCを介して循環機構150に接続される。したがって、接続管11aまたは接続管11bから第1共通液室R1に至る流路は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられており、複数の個別流路Pにインクを供給する共通供給流路CF1を構成する。なお、供給流路CCは、後述の第1供給流路CC1または第2供給流路CC2である。また、
図4では図示しないが、共通供給流路CF1には、第1共通液室R1、分配供給流路SPおよび供給流路CCのほか、後述の第1フィルター室RF1または第2フィルター室RF2も含まれる。
【0054】
第2共通液室R2には、排出口IO2と導入口IO4aと導入口IO4bとが設けられる。排出口IO2は、第2共通液室R2からホルダー13の個別排出流路DSにインクを排出するための管路である。導入口IO4aは、バイパス流路BP1から第2共通液室R2にインクを導入するための管路である。導入口IO4bは、バイパス流路BP2から第2共通液室R2にインクを導入するための管路である。なお、個別排出流路DSは、後述の第1個別排出流路DS1または第2個別排出流路DS2である。
【0055】
ここで、個別排出流路DSは、流路構造体11の排出流路CMを介して循環機構150に接続される。したがって、第2共通液室R2から接続管11aまたは接続管11bに至る流路は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられており、複数の個別流路Pからインクを排出させる共通排出流路CF2を構成する。なお、排出流路CMは、後述の第1排出流路CM1または第2排出流路CM2である。
【0056】
図5は、液体吐出ヘッド10の有するヘッド本体14の断面図である。
図5では、W軸およびZ軸を含む平面で切断されるヘッド本体14の断面が示される。ヘッド本体14は、
図5に示すように、ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14cおよび振動板14dと複数の圧電素子14eとケース14fと保護板14gと配線基板14hとを有する。
【0057】
ノズル基板14a、流路基板14b、圧力室基板14cおよび振動板14dは、この順にZ1方向に向かって積層される。これらの各部材は、V軸に沿って延びており、例えば、半導体加工技術を用いてシリコンの単結晶基板を加工することにより製造される。また、これらの部材は、接着剤等により互いに接合される。なお、これらの部材のうちの隣り合う2つの部材間には、接着層等の他の層または基板が適宜に介在してもよい。
【0058】
ノズル基板14aには、複数のノズルNが設けられる。複数のノズルNのそれぞれは、ノズル基板14aを貫通しており、インクを通過させる貫通孔である。複数のノズルNは、V軸に沿う方向に配列される。
【0059】
流路基板14bには、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの一部と複数の個別流路Pにおける圧力室Caおよび圧力室Cbを除く部分とが設けられる。すなわち、流路基板14bには、ノズル流路Nf、第1連通流路Na1、第2連通流路Na2、個別供給流路Ra1および個別排出流路Ra2が設けられる。
【0060】
第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの一部は、流路基板14bを貫通する空間である。流路基板14bのZ2方向を向く面には、当該空間による開口を閉塞する吸振体14jが設置される。
【0061】
吸振体14jは、弾性材料で構成される層状部材である。吸振体14jは、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれの壁面の一部を構成しており、第1共通液室R1および第2共通液室R2における圧力変動を吸収する。
【0062】
ノズル流路Nfは、流路基板14bのZ2方向を向く面に設けられる溝内の空間である。ここで、ノズル基板14aは、ノズル流路Nfの壁面の一部を構成する。
【0063】
第1連通流路Na1および第2連通流路Na2のそれぞれは、流路基板14bを貫通する空間である。
【0064】
個別供給流路Ra1および個別排出流路Ra2のそれぞれは、流路基板14bを貫通する空間である。個別供給流路Ra1は、第1共通液室R1と圧力室Caとを連通させており、第1共通液室R1からのインクを圧力室Caに供給する。ここで、個別供給流路Ra1の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別供給流路Ra1の他端は、個別流路Pの上流側の端であり、流路基板14bにおける第1共通液室R1の壁面に開口する。これに対し、個別排出流路Ra2は、第2共通液室R2と圧力室Cbとを連通させており、圧力室Cbからのインクを第2共通液室R2に排出する。ここで、個別排出流路Ra2の一端は、流路基板14bのZ1方向を向く面に開口する。一方、個別排出流路Ra2の他端は、個別流路Pの下流側の端であり、流路基板14bにおける第2共通液室R2の壁面に開口する。
【0065】
圧力室基板14cには、複数の個別流路Pの圧力室Caおよび圧力室Cbが設けられる。圧力室Caおよび圧力室Cbのそれぞれは、圧力室基板14cを貫通しており、流路基板14bと振動板14dとの間における間隙である。
【0066】
振動板14dは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板14dは、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成される第1層と、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成される第2層と、を含む積層体である。ここで、第1層と第2層との間には、金属酸化物等の他の層が介在してもよい。なお、振動板14dの一部または全部は、圧力室基板14cと同一材料で一体に構成されてもよい。例えば、所定厚の板状部材における圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板14dおよび圧力室基板14cを一体に形成することができる。また、振動板14dは、単一材料の層で構成されてもよい。
【0067】
振動板14dのZ1方向を向く面には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子14eが設置される。各圧電素子14eは、例えば、互いに対向する第1電極および第2電極と、両電極間に配置される圧電体層との積層により構成される。各圧電素子14eは、圧力室C内のインクの圧力を変動させることで圧力室C内のインクをノズルNから吐出させる。圧電素子14eは、駆動信号Comが供給されることにより、自身の変形に伴い、振動板14dを振動させる。この振動に伴って、圧力室Cが膨張および伸縮することにより、圧力室C内のインクの圧力が変動する。
【0068】
ケース14fは、インクを貯留するためのケースである。ケース14fには、第1共通液室R1および第2共通液室R2のそれぞれについて流路基板14bに設けられる一部以外の残部を構成する空間が設けられる。
【0069】
保護板14gは、振動板14dのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子14eを保護するとともに振動板14dの機械的な強度を補強する。ここで、保護板14gと振動板14dとの間には、複数の圧電素子14eを収容する空間が形成される。
【0070】
配線基板14hは、振動板14dのZ1方向を向く面に実装されており、制御ユニット120とヘッド本体14とを電気的に接続するための実装部品である。例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板14hが好適に利用される。配線基板14hには、前述の駆動回路14iが実装される。
【0071】
以上の構成のヘッド本体14では、前述の循環機構150の動作により、インクが第1共通液室R1、個別供給流路Ra1、圧力室Ca、ノズル流路Nf、圧力室Cb、個別排出流路Ra2および第2共通液室R2にこの順に流通する。
【0072】
また、駆動回路14iからの駆動信号Comにより、圧力室Caおよび圧力室Cbの両方に対応する圧電素子14eが同時に駆動することで、圧力室Caおよび圧力室Cbの圧力を変動させ、その圧力変動に伴ってノズルNからインクが吐出される。なお、循環機構150の動作については、後述の
図12に基づいて説明する。
【0073】
1-5.ホルダー13
図6は、ホルダー13の平面図である。
図7は、ホルダー13に設けられる流路とヘッド本体14とを示す斜視図である。なお、
図6では、Z2方向にみたホルダー13内の構造の一例が破線で示される。
図7では、ホルダー13の流路と複数のヘッド本体14とのほか、固定板15が図示される。
【0074】
図6および
図7に示すように、ホルダー13の内部には、第1分配供給流路SP1と第2分配供給流路SP2と3個の第1個別排出流路DS1と3個の第2個別排出流路DS2と6個のバイパス流路BP1と6個のバイパス流路BP2とが設けられる。
【0075】
第1分配供給流路SP1は、接続管13aに導入される第1インクを3個のヘッド本体14にインクを供給するための3つの分岐した部分を有する流路である。第2分配供給流路SP2は、接続管13bに導入される第2インクを3個のヘッド本体14に供給するための3つの分岐した部分を有する流路である。
【0076】
第1個別排出流路DS1は、第1インクを用いるヘッド本体14ごとに設けられ、当該ヘッド本体14から導入される第1インクを接続管13cから排出するための流路である。第2個別排出流路DS2は、第2インクを用いるヘッド本体14ごとに設けられ、当該ヘッド本体14から導入される第2インクを接続管13dから排出するための流路である。
【0077】
バイパス流路BP1およびバイパス流路BP2のそれぞれは、ヘッド本体14ごとに設けられ、前述の第1共通液室R1と第2共通液室R2とを連通させる流路である。ただし、バイパス流路BP1およびバイパス流路BP2は、X軸に沿う方向での第1共通液室R1または第2共通液室R2の中央に対して互いに反対側に位置する。
図6に示す例では、バイパス流路BP1は、バイパス流路BP2に対してV2方向に位置する。また、バイパス流路BP1およびバイパス流路BP2のそれぞれは、Z軸に沿う方向にみて、U字形状をなす。
【0078】
図8は、
図6中のA-A線断面図である。
図8では、ホルダー13のほか、ヘッド本体14および固定板15が図示される。
図8に示すように、ホルダー13は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。ホルダー13は、層31および層32を有し、これらは、この順でZ2方向に積層される。層31および層32のそれぞれは、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。層31および層32は、例えば、接着剤により互いに接合される。
【0079】
層31および層32からなる積層体には、ホルダー13の有する前述の各流路が設けられるとともに、層32のZ2方向を向く面には、ヘッド本体14を収容する凹部13fが設けられる。
図8に示す例では、層32の厚さが層31の厚さよりも厚い。このため、凹部13fの形成に必要な層32の厚さを容易に確保することができる。
【0080】
ここで、第1分配供給流路SP1は、縦流路SPaと横流路SPbとを有する。縦流路SPaは、Z軸に沿う方向に延びており、層32を貫通する孔で構成される。横流路SPbは、Z軸に直交する方向に延びており、層31と層32との間に設けられる。
図8に示す例では、横流路SPbは、層31のZ2方向を向く面に設けられる溝と、層32のZ1方向を向く面に設けられる溝と、で構成される。なお、
図8で図示しないが、第2分配供給流路SP2も、第1分配供給流路SP1と同様に構成される。
【0081】
バイパス流路BP1は、第1部分BP1aと第2部分BP1bと第3部分BP1cとを有する。第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれは、Z軸に沿う方向に延びており、層32を貫通する孔で構成される。第3部分BP1cは、Z軸に直交する方向に延びており、層31と層32との間に設けられる。
図8に示す例では、第3部分BP1cは、層31のZ2方向を向く面に設けられる溝と、層32のZ1方向を向く面に設けられる溝と、で構成される。
【0082】
同様に、バイパス流路BP2は、第1部分BP2aと第2部分BP2bと第3部分BP2cとを有する。第1部分BP2aおよび第2部分BP2bのそれぞれは、Z軸に沿う方向に延びており、層32を貫通する孔で構成される。第3部分BP2cは、Z軸に直交する方向に延びており、層31と層32との間に設けられる。
図8に示す例では、第3部分BP2cは、層31のZ2方向を向く面に設けられる溝と、層32のZ1方向を向く面に設けられる溝と、で構成される。
【0083】
1-6.流路構造体11
図9は、流路構造体11の平面図である。
図9では、Z2方向にみた流路構造体11内の構造の一例が破線で示される。
図9に示すように、流路構造体11の内部には、第1供給流路CC1と第2供給流路CC2と第1排出流路CM1と第2排出流路CM2と第1フィルター室RF1と第2フィルター室RF2とが設けられる。
【0084】
第1供給流路CC1は、接続管11aに導入される第1インクを前述のホルダー13に供給するための流路である。ここで、第1供給流路CC1は、第1フィルター室RF1を介して接続管11aの内部空間に連通する。第1供給流路CC1には、前述の接続管13aに接続される排出口CE1が連通する。
【0085】
第2供給流路CC2は、接続管11bに導入される第2インクを前述のホルダー13に供給するための流路である。ここで、第2供給流路CC2は、第2フィルター室RF2を介して接続管11bの内部空間に連通する。第2供給流路CC2には、前述の接続管13bに接続される排出口CE2が連通する。
【0086】
第1排出流路CM1は、前述のホルダー13からの第1インクを接続管11cから排出するための流路である。第1排出流路CM1には、前述の3個の接続管13cに接続される導入口CI1が連通する。
【0087】
第2排出流路CM2は、前述のホルダー13からの第2インクを接続管11dから排出するための流路である。第2排出流路CM2には、前述の3個の接続管13dに接続される導入口CI2が連通する。
【0088】
図10は、
図9中のB-B線断面図である。
図10では、流路構造体11について、接続管11aに対応する構成が代表的に図示される。接続管11bに対応する構成は、接続管11aに対応する構成と同様である。
【0089】
図10に示すように、流路構造体11は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。流路構造体11は、層21、22および23と、層21と層22との間に介在する固定部材24およびフィルター25とを有する。
【0090】
層21、22および23は、この順でZ2方向に積層される。層21、22および23のそれぞれは、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。層21、22および23は、例えば、接着剤により互いに接合される。なお、層21、22および23のZ軸に沿う厚さは、互いに同じでも異なってもよい。
【0091】
層21には、凹面21aと導入口21bと溝21cとが設けられる。凹面21aは、層21のZ2方向を向く面に設けられており、第1フィルター室RF1の壁面の一部を構成する。
図10に示す例では、凹面21aは、導入口21bに向けて連続的に深くなる形状をなす。導入口21bは、凹面21aに開口するとともに接続管11aの内部空間に連通する貫通孔である。
図10に示す例では、接続管11aが層21と一体で構成される。したがって、接続管11aが層21と同様に樹脂材料で構成される。溝21cは、層21のZ2方向を向く面に凹面21aの外周に沿って設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝21cは、接着剤の逃げ部としても機能し得る。
【0092】
なお、接続管11aは、層21と別体で構成されてもよい。この場合、接続管11aは、接続管11aが金属材料等で構成されてもよく、層21に対して接着剤等により固定される。また、溝21cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。また、接続管11aと同様に、接続管11b~11cは、層21と一体で構成されていてもよいし、層21と別体で構成されてもよい。
【0093】
層22には、凹部22aと溝22bと孔22cと孔22dとが設けられる。凹部22aは、層22のZ1方向を向く面に設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝22bは、層22のZ2方向を向く面に設けられており、第1供給流路CC1の一部を構成する。
図10に示す例では、第1供給流路CC1は、Y軸に沿って延びており、Y2方向に向けてX-Z平面における面積が狭くなる部分を有する形状をなす。孔22cおよび孔22dのそれぞれは、凹部22aおよび溝22bに開口しており、層22を貫通する孔である。
図10に示す例では、孔22cは、溝22bのY2方向での端に接続される。孔22dは、孔22cに対してY1方向の位置で溝22bに接続される。
【0094】
層23には、溝23aが設けられる。溝23aは、層23のZ1方向を向く面に設けられており、第1供給流路CC1の一部を構成する。
図10に示す例では、溝23aは、Y軸に沿って延びる形状をなす。なお、
図10に示す例では、層22の溝22bと層23の溝23aとで第1供給流路CC1が構成されるが、溝22bおよび溝23aのうちの一方で第1供給流路CC1が構成されてもよい。
【0095】
固定部材24は、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定するとともに、第1フィルター室RF1の壁面の一部を構成する略板状の部材である。
図10に示す例では、固定部材24は、前述の凹部22aに設置される。固定部材24は、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。ここで、フィルター25をインサート品とするインサート成形により固定部材24を形成することにより、フィルター25を固定部材24に対して固定することができる。また、固定部材24は、例えば、層21および層22の少なくとも一方に対して接着剤により固定される。
【0096】
このように、固定部材24を介してフィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定することにより、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に直接固定する構成に比べて、層21および層22の構成材料の選択の幅が広くなったり、接着剤がフィルター25に不本意に付着することを低減したりすることができる。なお、固定部材24の構成材料は、層21または層22の構成材料と同じでも異なってもよい。
【0097】
固定部材24には、底壁24aと枠部24bと第1排出口24cと第2排出口24dとが設けられる。
【0098】
底壁24aは、固定部材のZ1方向を向く面に設けられており、第1フィルター室RF1の壁面の一部を構成する。
図10に示す例では、底壁24aは、第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれに向けて連続的に深くなる形状をなす。枠部24bは、底壁24aの外周縁に沿う環状の壁部であり、第1フィルター室RF1の側壁を構成する。より具体的には枠部24bの内周面の一部は、下流室RFbの側壁24iを構成する。
図10に示す例では、枠部24bの一部が前述の溝21cに挿入される。この挿入により、層21に対して固定部材24が位置決めされる。また、枠部24bの外周面と凹部22aとの間には、隙間が形成される。この隙間は、接着剤の逃げ部として機能し得る。第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれは、底壁24aに開口するとともに、固定部材24を貫通する孔である。また、第1排出口24cは、前述の孔22cに接続されており、孔22cとともに第1流路C1を構成する。第2排出口24dは、前述の孔22dに接続されており、孔22dとともに第2流路C2を構成する。
【0099】
フィルター25は、インクの通過を許容しつつ、インクに混入する異物等を捕捉する板状またはシート状の部材である。フィルター25は、例えば、綾畳織または平畳織等の金属繊維で構成される。なお、フィルター25は、金属繊維を用いる構成に限定されず、例えば、不織布等の樹脂繊維で構成されてもよい。フィルター25は、典型的にはノズル面FNに対して平行となるように配置される。ただし、フィルター25は、ノズル面FNに対して0度以上45度以下の範囲で傾斜するように設けられていてもよい。
【0100】
フィルター25は、前述の固定部材24の枠部24bに固定される。ここで、第1フィルター室RF1は、フィルター25により上流室RFaと下流室RFbとに区分される。上流室RFaは、フィルター25よりもZ1方向に位置しており、凹面21aを壁面の一部とする空間である。下流室RFbは、フィルター25よりもZ2方向に位置しており、側壁24iおよび底壁24aを壁面の一部とする空間である。
【0101】
図11は、液体吐出ヘッド10に設けられる流路の等価的な回路図である。
図11では、当該流路の各部の流路抵抗が示される。
【0102】
前述のように、液体吐出ヘッド10は、複数の個別流路Pと共通供給流路CF1と共通排出流路CF2とバイパス流路BP1、BP2とを有する。複数の個別流路Pのそれぞれには、ノズルNが設けられる。共通供給流路CF1は、「液体」の一例であるインクを複数の個別流路Pに供給する。共通排出流路CF2は、複数の個別流路Pからインクを排出させる。バイパス流路BP1、BP2は、複数の個別流路Pを迂回して共通供給流路CF1と共通排出流路CF2とを連通させる。
【0103】
ここで、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pの合成流路抵抗Rsは、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinよりも大きく、かつ、共通排出流路CF2の流路抵抗Routよりも大きい。以下、このような合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routの大小関係とすることによる効果について説明する。
【0104】
液体吐出ヘッド10において、ノズルNを高密度で配置することで、画質を向上させることができるが、それに伴い、個別流路Pも高密度化する必要がある。したがって、画質の向上には、個別流路Pの断面積は小さくせざるを得ず、仮に液体吐出ヘッド10にバイパス流路BP1、BP2を設けないと、液体が十分に循環することができず、インクの粘性を好適に解消することができない。
【0105】
これに対し、液体吐出ヘッド10にバイパス流路BP1、BP2を設け、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを小さくすることにより、複数の個別流路Pとバイパス流路BP1、BP2との合成流路抵抗Rsも小さくなるので、循環機構150により循環させるインクの全体流量をある程度多くすれば、インクの粘性解消を好適化することができる。なお、流路抵抗RBPは、バイパス流路BP1およびバイパス流路BP2の合成流路抵抗である。
【0106】
しかし、インクの粘性解消だけを重視し、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを小さくしすぎると、複数の個別流路Pとバイパス流路BP1、BP2との合成流路抵抗Rsは、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinまたは共通排出流路CF2の流路抵抗Routよりも小さくなってしまう。そうすると、液体吐出ヘッド10内の流路の流路抵抗は、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinまたは共通排出流路CF2の流路抵抗Routに律速される。一方で、共通供給流路CF1および共通排出流路CF2のそれぞれは、複数の個別流路Pに共通に接続される。そのため、一般には、共通供給流路CF1および共通排出流路CF2のそれぞれは、流量をある程度多くする必要があり、そのために断面積をある程度大きく取らざるを得ない。したがって、流路抵抗Rin、流路抵抗Routがある程度小さくなってしまう。上述のように、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを小さくしすぎると、流路抵抗Rin、流路抵抗Routが液体吐出ヘッド10内の流路の流路抵抗の律速となっているため、流路抵抗Rinまたは流路抵抗Routが小さくなった結果、循環機構150によるインクの循環量が多くなり、循環機構150に用いるポンプの能力を高めたり数を多くしたりしなければならないという弊害がある。
【0107】
一方で、前述の困難性はあるものの、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routのそれぞれを大きくすることができれば、循環機構150によるインクの循環流量自体を小さくすることができる。しかし、そうすると、個別流路Pに流れるインクの量も当然少なくなるため、インクの粘性解消の効果が好適に得られなくなってしまう。
【0108】
そこで、液体吐出ヘッド10では、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pとからなる合成流路の流路抵抗である合成流路抵抗Rsが共通供給流路CF1の流路抵抗Rinと共通排出流路CF2の流路抵抗Routとのそれぞれよりも大きくなるように、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗が調整される。このようにバイパス流路BP1、BP2の流路抵抗を調整することにより、循環機構150によるインクの全体の循環流量をそれほど多くしなくて済むので、循環機構150に用いるポンプの能力を高めたり数を多くしたりする必要がない。また、個別流路Pに流れる流量をそれほど少なくしなくて済むので、インクの粘性解消の効果も好適に得ることができる。
【0109】
ここで、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pとの合成流路抵抗Rsは、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pと共通供給流路CF1と共通排出流路CF2との合成流路抵抗Rall、つまり液体吐出ヘッド10の流路全体の流路抵抗に対して、50%以上70%以下であることが好ましい。上述のように、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pとからなる合成流路の流路抵抗である合成流路抵抗Rsが、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinと共通排出流路CF2の流路抵抗Routとのそれぞれよりも大きくなる場合、1%単位で検討すると、合成流路抵抗Rsの最小値と最大値は以下のようになる。合成流路抵抗Rsの最小値は、合成流路抵抗Rallに対して34%(共通供給流路CF1、共通排出流路CF2の流路抵抗がそれぞれ33%)である。また、合成流路抵抗Rsの最大値は、合成流路抵抗Rallに対して98%(共通供給流路CF1、共通排出流路CF2の流路抵抗がそれぞれ1%)である。すなわち、合成流路抵抗Rsが、合成流路抵抗Rallに対して34%以上98%以下であれば、本発明の効果を得ることができる。しかし、実際には、液体吐出ヘッド10の流路全体の中で、共通供給流路CF1や共通排出流路CF2がインク流れの律速になってしまうと、複数の個別流路Pやバイパス流路BP1、BP2の流路抵抗を各実施形態のごとく調整しても、インクの全体流量を好適に制御することができない虞がある。ゆえに、共通供給流路CF1と共通排出流路CF2の合成流路抵抗は、合成流路抵抗Rallの50%よりも小さくする、言い換えれば合成流路抵抗Rsを合成流路抵抗Rallの50%以上とすることが好ましい。一方で、合成流路抵抗Rsが大きすぎると、複数の個別流路Pとバイパス流路BP1、BP2を流れるインクの流量が極端に制限され、その結果インクの種類によっては十分にインクの粘性を解消できなくなる虞がある。具体的には、合成流路抵抗Rsが合成流路抵抗Rallの70%以下であれば、種々のインクにおいてインクの粘性を好適に解消することができた。つまり、本発明においては、合成流路抵抗Rsが、合成流路抵抗Rallに対して34%以上98%以下である必要があるが、50%以上70%以下であることが特に好ましい。この50%以上70%以下とすることによる効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例2、3、4、5、6、12、13、14、15で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「A」が記載されたものに対応する。
【0110】
また、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPよりも小さいことが好ましい。更に、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPに対して25%以上55%以下であることがより好ましい。バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPが複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPに対して小さすぎると、個別流路Pに比してバイパス流路BP1、BP2にインクが多く流れ過ぎてしまい、個別流路Pに混入する気泡を除去するために全体流量を多くせざるを得ない虞がある。一方で、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPが複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPに対して大きすぎると、相対的に個別流路Pの流路抵抗は小さくなるため、個別流路Pの断面積がある程度大きくなり、ノズルNの密度が小さくなってしまい、好ましい画質が得られない虞がある。ノズルNの高密度化と循環機構150により循環させるインクの全体流量の低減とを好適に両立するためには、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPよりも小さくすることが好ましい。この効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、13、14、15で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「B」が記載されたものに対応する。更に、ノズルNの高密度化と循環機構150により循環させるインクの全体流量の低減とをより好適に両立するためには、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPに対して25%以上55%以下とすることがより好ましい。この効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例2、3、4、5、6、7、12、13、14、15で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「C」が記載されたものに対応する。
【0111】
前述のように、複数の個別流路Pのそれぞれは、ノズルNからインクを吐出するために圧力を付与する圧力室Cと、圧力室Cにインクを供給する個別供給流路Ra1と、圧力室Cからインクを排出させる個別排出流路Ra2と、を含む。
【0112】
ここで、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、複数の個別流路Pに含まれる個別供給流路Ra1の合成流路抵抗RCaよりも小さいことが好ましい。この場合、循環機構150により循環させるインクの全体流量を好適に少なくすることができる。
【0113】
また、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、複数の個別排出流路Ra2の合成流路抵抗RCbよりも小さいことが好ましい。この場合、循環機構150により循環させるインクの全体流量を好適に少なくすることができる。
【0114】
このバイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPを、複数の個別供給流路Ra1の合成流路抵抗RCa、複数の個別排出流路Ra2の合成流路抵抗RCbよりも小さくすることによる効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例1、2、3、4、5、6、7、12、13、14、15で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「D」が記載されたものに対応する。
【0115】
さらに、複数の個別流路Pに含まれる個別供給流路Ra1のそれぞれの流路抵抗と複数の個別流路Pに含まれる個別排出流路Ra2のそれぞれの流路抵抗とは、互いに略等しいことが好ましい。個別供給流路Ra1と個別排出流路Ra2の流路抵抗が異なると、同じように圧電素子14eを駆動させても、圧力室Caと圧力室Cbでノズルに到達するまでの間に液体の流れ(勢い)にばらつきが発生してしまう。よって、圧力室Caと圧力室Cbで、圧電素子14eの駆動を異ならせる等の調整が必要となる虞がある。これらの流路抵抗を略等しくすることで、この調整を割愛することができる。この効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「E」が記載されたものに対応する。
【0116】
さらに、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinと共通排出流路CF2の流路抵抗Routとの大小関係は、特に限定されないが、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinが共通排出流路CF2の流路抵抗Routよりも大きいことが好ましい。例えば、前述のように流路抵抗の増大の要素となるフィルター25が共通供給流路CF1に設け、ノズルNに向かう異物を捕集する場合、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinが大きくなりやすい。一方で共通排出流路CF2は、ノズルNよりも下流側なので、フィルター25を設ける効果は共通供給流路CF1よりも低く、寧ろフィルター25を設けないことでコストを低減すること等が可能となる。このとき、フィルターの有無により、流路抵抗Rinは流路抵抗Routよりも大きくなる。この効果は、後述する表1における各実施例のうち、実施例1、2、3、5、7、8、9、10、11で得ることができる。これらの実施例は、表1に示す「その他」の欄で「F」が記載されたものに対応する。
【0117】
また、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、用いるインクの種類等によって異なり、前述のような合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routの大小関係を満足することができればよく、特に限定されないが、例えば、インクの粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、2.23×1010[N・s/m5]以上6.69×1010[N・s/m5]以下であることが好ましい。流路抵抗RBPがこのような範囲内にあると、一般的なインクを用いる場合に適したバイパス流路BP1、BP2を得ることができる。
【0118】
さらに、バイパス流路BP1、BP2と複数の個別流路Pとの合成流路抵抗Rsは、用いるインクの種類等によって異なり、前述のような合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routの大小関係を満足することができればよく、特に限定されないが、例えば、インクの粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、1.67×1010[N・s/m5]以上5.02×1010[N・s/m5]以下であることが好ましい。合成流路抵抗Rsがこのような範囲内にあると、一般的なインクを用いる場合に適したバイパス流路BP1、BP2および個別流路Pを得ることができる。
【0119】
また、共通供給流路CF1の流路抵抗Rinは、用いるインクの種類等によって異なり、前述のような合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routの大小関係を満足することができればよく、特に限定されないが、例えば、インクの粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、9.76×109[N・s/m5]以上2.93×1010[N・s/m5]以下であることが好ましい。流路抵抗Rinがこのような範囲内にあると、一般的なインクを用いる場合に適した共通供給流路CF1を得ることができる。
【0120】
さらに、共通排出流路CF2の流路抵抗Routは、用いるインクの種類等によって異なり、前述のような合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routの大小関係を満足することができればよく、特に限定されないが、例えば、インクの粘度が6.00[m・Pa/s]である場合、1.39×109[N・s/m5]以上4.18×109[N・s/m5]以下であることが好ましい。流路抵抗Routがこのような範囲内にあると、一般的なインクを用いる場合に適した共通排出流路CF2を得ることができる。
【0121】
前述のように、バイパス流路BP1は、第1部分BP1aと第2部分BP1bと第3部分BP1cとを有する。第1部分BP1aは、「第1方向」の一例であるZ1方向またはZ2方向に沿って延びており、共通供給流路CF1に接続する。第2部分BP1bは、Z1方向またはZ2方向に沿って延びており、共通排出流路CF2に接続する。第3部分BP1cは、「第2方向」の一例であるX1方向またはX2方向と「第3方向」の一例であるY1方向またはY2方向との両方に平行な平面に沿って延びており、第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれに接続する。ここで、「第1方向」は、ノズルNからインクが吐出される方向である。「第2方向」は、「第1方向」に直交する方向である。「第3方向」は、「第1方向」および「第2方向」の両方に直交する方向である。
【0122】
このようなバイパス流路BP1では、第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれと第3部分BP1cとの間に屈曲または湾曲した部分が設けられるので、流路抵抗を高めやすいという利点がある。また、バイパス流路BP1、BP2の少なくとも一部をヘッド本体14とは異なる部材であるホルダー13に設けることができる。なお、バイパス流路BP2は、前述のように、第1部分BP2aと第2部分BP2bと第3部分BP2cとを有しており、バイパス流路BP1と同様に構成されるので、バイパス流路BP1と同様の効果を奏する。
【0123】
ここで、前述のように、第3部分BP1cは、Z1方向またはZ2方向にみたとき、U字形状をなす。このような形状の第3部分BP1cでは、流路抵抗を大きくしやすいという利点がある。
【0124】
また、第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれの流路抵抗は、第3部分BP1cの流路抵抗よりも大きいことが好ましい。第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれは、ホルダー13の厚さ方向であるZ1方向またはZ2方向に沿って延びることから、断面積を精度よく小さくすることが比較的容易である。したがって、第1部分BP1aおよび第2部分BP1bのそれぞれの流路抵抗を第3部分BP1cの流路抵抗よりも大きくすることにより、所望の流路抵抗のバイパス流路BP1を容易に製造することができる。
【0125】
以上の液体吐出装置100は、前述のように、液体吐出ヘッド10と、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出動作を制御する「制御部」の一例である制御ユニット120と、を有する。
【0126】
本実施形態では、制御ユニット120は、液体吐出ヘッド10からインクを吐出させる吐出動作のほか、液体吐出ヘッド10の状態を回復する回復動作と、液体吐出ヘッド10にインクを充填する充填動作と、を制御する。ここで、当該吐出動作は、例えば、画像情報に基づいて液体吐出ヘッド10を動作させることにより、当該画像情報に基づく画像を媒体Mに印刷する動作である。当該回復動作は、例えば、循環機構150を動作させることにより液体吐出ヘッド10内のインクの増粘等を解消することにより液体吐出ヘッド10によるインクの吐出特性を目標特性に近づける動作である。当該充填動作は、例えば、液体吐出ヘッド10の初期使用時に循環機構150を動作させることにより液体吐出ヘッド10にインクを充填する動作である。
【0127】
ここで、液体吐出装置100は、前述のように、循環機構150を有しており、制御ユニット120は、循環機構150の動作を制御する。具体的には、制御ユニット120は、回復動作時または充填動作時の循環機構150によるインクの単位時間あたりの流量を吐出動作時の循環機構150によるインクの単位時間あたりの流量よりも多くなるよう、循環機構150の動作を制御する。以下、液体吐出装置100の動作について説明する。
【0128】
図12は、実施形態に係る液体吐出装置100の動作の一例を示すフローチャートである。まず、制御ユニット120は、
図12に示すように、ステップS1において、吐出動作の指示の有無を判断する。この指示は、例えば、図示しない操作パネル等の入力装置へのユーサーの操作により行われる。
【0129】
吐出動作の指示がある場合、制御ユニット120は、ステップS2において、循環機構150によるインクの単位時間あたりの流量を第1流量に設定する。
【0130】
その後、制御ユニット120は、ステップS3において、吐出動作を行う。この吐出動作時には、制御ユニット120は、前述のステップS2で設定された第1流量となるよう、循環機構150の動作を制御する。ここで、安定した吐出特性を実現する観点から、第1流量は、吐出動作の実行期間にわたり一定であることが好ましい。
【0131】
一方、吐出動作の指示がない場合、または、吐出動作の終了後、制御ユニット120は、ステップS4において、回復動作の指示の有無を判断する。この指示は、例えば、図示しない操作パネル等の入力装置へのユーサーの操作により行われる。
【0132】
回復動作の指示がある場合、制御ユニット120は、ステップS5において、循環機構150によるインクの単位時間あたりの流量を第2流量に設定する。この第2流量は、前述の第1流量よりも多い量である。
【0133】
その後、制御ユニット120は、ステップS6において、回復動作を行う。この回復動作時には、制御ユニット120は、前述のステップS5で設定された第2流量となるよう、循環機構150の動作を制御する。また、この回復動作は、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出特性が所望となるまでの所定期間にわたり行われる。ここで、第2流量は、第1流量よりも多ければよいが、ノズルNからインクが吐出されない程度であることが好ましく、また、ノズルNからのインクの吐出を防止する観点から、回復動作の実行期間にわたり一定であることが好ましい。
【0134】
一方、回復動作の指示がない場合、または、回復動作の終了後、制御ユニット120は、ステップS7において、充填動作の指示の有無を判断する。この指示は、例えば、図示しない操作パネル等の入力装置へのユーサーの操作により行われる。
【0135】
充填動作の指示がある場合、制御ユニット120は、ステップS8において、循環機構150によるインクの単位時間あたりの流量を第3流量に設定する。この第3流量は、前述の第1流量よりも多い量である。ここで、第3流量は、第2流量と同一であっても異なっていてもよいが、第2流量以上であることが好ましい。この場合、充填動作に要する期間を短くしたり、回復動作時にノズルNからインクが漏れるのを防止したりすることができる。
【0136】
その後、制御ユニット120は、ステップS9において、充填動作を行う。この充填動作時には、制御ユニット120は、前述のステップS8で設定された第3流量となるよう、循環機構150の動作を制御する。また、この充填動作は、液体吐出ヘッド10に所定量のインクが充填されるまでの所定期間にわたり行われる。ここで、第3流量は、第1流量よりも多ければよく、充填動作の実行期間にわたり一定であっても変化してもよい。
【0137】
一方、充填動作の指示がない場合、または、充填動作の終了後、制御ユニット120は、ステップS10において、終了指示の有無を判断する。この終了指示は、例えば、図示しない操作パネル等の入力装置へのユーサーの操作により行われる。
【0138】
制御ユニット120は、終了指示がない場合、前述のステップS1に戻り、一方、終了指示がある場合、処理を終了する。
【0139】
以上の液体吐出装置100は、前述のように、液体吐出ヘッド10と、循環機構150と、「制御部」の一例である制御ユニット120と、を有する。液体吐出ヘッド10は、複数の個別流路Pと共通供給流路CF1と共通排出流路CF2とバイパス流路BP1、BP2とを有する。複数の個別流路Pのそれぞれには、ノズルNが設けられる。共通供給流路CF1は、「液体」の一例であるインクを複数の個別流路Pに供給する。共通排出流路CF2は、複数の個別流路Pからインクを排出させる。バイパス流路BP1、BP2は、個別流路Pを迂回して共通供給流路CF1と共通排出流路CF2とを連通させる。循環機構150は、共通供給流路CF1から供給されるインクを複数の個別流路Pまたはバイパス流路BP1、BP2を通って共通排出流路CF2から排出するように、インクを循環させる。制御ユニット120は、循環機構150の動作を制御する。
【0140】
ここで、制御ユニット120は、液体吐出ヘッド10からインクを吐出させる吐出動作時には、循環機構150により循環させるインクの単位時間あたりの流量を第1流量とし、液体吐出ヘッド10の状態を回復する回復動作時には、循環機構150により循環させるインクの単位時間あたりの流量を第1流量よりも多い第2流量とする。なお、前述のように、当該吐出動作は、液体吐出ヘッド10からインクを吐出させる動作である。当該回復動作は、液体吐出ヘッド10の状態を回復する動作である。
【0141】
以上の液体吐出装置では、回復動作時に循環機構150により循環させるインクの単位時間当たりの流量が吐出動作時よりも多い。このため、吐出動作時には、吐出特性に大きく影響するインクの増粘解消等により好適に液体吐出ヘッド10からインクを吐出させるのに必要な程度で循環機構150を動作させることができる。一方、回復動作時には、気泡の除去等により液体吐出ヘッド10の状態を回復するのに必要な程度で循環機構150を動作させることができる。このように、必要時のみインクの流量を多くすればよいので、循環機構150に用いるポンプの数を多くしたりポンプの能力を高めたりする必要がない。この結果、液体吐出装置の低コスト化を図りつつ、インクの増粘を低減したり気泡を除去したりすることができる。
【0142】
また、制御ユニット120は、充填動作時には、液体吐出ヘッド10に供給されるインクの単位期間あたりの流量を第1流量よりも多い第3流量とする。このため、充填動作時には、液体吐出ヘッド10にインクを充填するのに必要な程度で循環機構150を動作させることができる。なお、前述のように、当該充填動作は、液体吐出ヘッド10にインクを充填する動作である。
【0143】
ここで、第3流量が第2流量以上である場合、充填動作に要する期間を短くしたり、回復動作時にノズルNからインクが漏れるのを防止したりすることができる。
【0144】
2.変形例
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0145】
2-1.変形例1
前述の形態では、回復動作時または充填動作時の循環既往50によるインクの単位時間あたりの流量が吐出動作時よりも多い構成が例示されるが、当該構成に限定されず、回復動作時または充填動作時の循環既往50によるインクの単位時間あたりの流量が吐出動作時よりも少なくてもよい。
【0146】
2-2.変形例2
前述の形態では、液体吐出装置100が吐出動作のほか回復動作および充填動作を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、回復動作および充填動作のうちの一方または両方が省略されてもよい。
【0147】
2-3.変形例3
前述の形態では、液体吐出ヘッド10が6個のヘッド本体14を有する構成が例示されるが、当該構成に限定されず、液体吐出ヘッド10の有するヘッド本体14の数は、1個以上5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。
【0148】
2-4.変形例4
前述の形態では、互いに種類の異なる第1インクおよび第2インクを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されず、液体吐出ヘッド10に用いるインクの種類の数は、1種でもよいし、3種以上でもよい。
【0149】
2-5.変形例5
液体吐出ヘッド10内のインクの流路の各部の形状等の態様は、前述の形態に限定されず、例えば、ヘッド本体14の配置等に応じて適宜に変更してもよい。また、当該流路を構成する各部のホルダー13と流路構造体11とが一体で構成されてもよい。
【0150】
2-6.変形例6
前述の各形態で例示する液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【実施例0151】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0152】
A.液体吐出ヘッドの製造
A-1.実施例1
前述の
図3から
図10に示す構成の液体吐出ヘッドを製造した。ここで、複数の個別流路に含まれる個別供給流路の合成流路抵抗RCaは、6.39×10
10[N・s/m
5]であった。複数の個別流路に含まれる個別排出流路の合成流路抵抗RCbは、6.39×10
10[N・s/m
5]であった。バイパス流路の流路抵抗RBPは、3.12×10
10[N・s/m
5]であった。バイパス流路と複数の個別流路の合成流路抵抗Rsは、2.51×10
10[N・s/m
5]であった。共通供給流路の流路抵抗Rinは、1.95×10
10[N・s/m
5]であった。共通排出流路の流路抵抗Routは、1.12×10
10[N・s/m
5]であった。
【0153】
これらの流路抵抗について、合成流路抵抗Rsと流路抵抗Rinと共通排出流路の流路抵抗Routとの合計を100とした場合の各値について、小数第一位を四捨五入した上で記載する。個別供給流路の合成流路抵抗RCaは、115であった。個別排出流路の合成流路抵抗RCbは、115であった。バイパス流路の流路抵抗RBPは、56であった。バイパス流路と複数の個別流路の合成流路抵抗Rsは、45であった。共通供給流路の流路抵抗Rinは、35であった。共通排出流路の流路抵抗Routは、20であった。
【0154】
ここで、複数の個別供給流路の合成流路抵抗RCaと、複数の個別排出流路の合成流路抵抗RCbの合成流路抵抗と、の合成流路抵抗RCa+RCbは、229であった。なお、個別流路Pは個別供給流路と個別排出流路からなるため、合成流路抵抗RCa+RCbは、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPと等しい。よって、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBP=56は、個別流路Pの合成流路抵抗RP=229よりも小さい。
【0155】
更に、複数の個別流路Pの合成流路抵抗RPに対するバイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPの比RBP/(RCa+RCb)は、0.24であった。よって、バイパス流路BP1、BP2の流路抵抗RBPは、個別流路Pの合成流路抵抗RPに比して25%未満である。
【0156】
A-2.実施例2~15および参考例1~12
合成流路抵抗RCa、合成流路抵抗RCb、流路抵抗RBP、合成流路抵抗Rs、流路抵抗Rinおよび流路抵抗Routを表1に示すように設定した以外は、前述の実施例1と同様にして、実施例2~15および参考例1~12の液体吐出ヘッドを製造した。
【0157】
【0158】
B.評価
B-1.流量の評価
液体吐出ヘッドの流路全体のインクの流量について、以下の基準に従い評価を行った。
A:インク流量が適切である。
B:インク流量が若干多い。
C:インク流量が過多である。
この評価結果は、表1に示す「全体流量」の欄に記載の通りである。
【0159】
B-2.増粘の評価
液体吐出ヘッドのノズル付近のインクの増粘について、以下の基準に従い評価を行った。
A:増粘が生じない。
B:実使用上問題ないが、増粘の傾向がある。
C:実使用上問題のある増粘が生じる。
この評価結果は、表1に示す「増粘」の欄に記載の通りである。
【0160】
B-3.総合評価
前述の流量および増粘の評価の総合評価を以下の基準に従い行った。
A:流量および増粘の両方の評価に問題がない。
B:流量および増粘の少なくとも一方の評価に問題がある。
この評価結果は、表1に示す「総合」の欄に記載の通りである。
【0161】
B-4.その他の評価
各実施例のその他の評価を以下の基準に従い行った。
A:インクの粘性と流量とのバランスが特に優れる。
B:ノズル密度とインクの全体流量との両立が好適である。
C:ノズル密度とインクの全体流量との両立がより好適である。
D:インクの全体流量が特に少ない。
E:2つの圧力室間でのばらつきを低減する。
F:異物捕集性とコスト低減を両立する。
この評価結果は、表1に示す「その他」の欄に記載の通りである。なお、本評価は、複数の基準を満たす場合があり、満たす基準の数が多いほど、優れた評価であることを示す。
【0162】
表1に示す結果からわかるように、各実施例は、各参考例に比べて、優れた結果が得られた。なお、吐出動作、回復動作および充填動作のそれぞれについて、同様の結果が得られた。ここで、回復動作および充填動作のそれぞれについて、単位時間あたりのインクの流量を吐出動作よりも多くしたところ、流路内の気泡を好適に除去できることが確認された。
10…液体吐出ヘッド、11…流路構造体、11a…接続管、11b…接続管、11c…接続管、11d…接続管、11e…孔、12…配線基板、12a…孔、12b…開口部、12c…コネクター、13…ホルダー、13a…接続管、13b…接続管、13c…接続管、13d…接続管、13e…配線孔、13f…凹部、14…ヘッド本体、14_1…ヘッド本体、14_2…ヘッド本体、14_3…ヘッド本体、14_4…ヘッド本体、14_5…ヘッド本体、14_6…ヘッド本体、14a…ノズル基板、14b…流路基板、14c…圧力室基板、14d…振動板、14e…圧電素子、14f…ケース、14g…保護板、14h…配線基板、14i…駆動回路、14j…吸振体、15…固定板、15a…開口部、16…ベース、16a…本体、16b…集合基板、16c…カバー、16d…孔、16e…フランジ、21…層、21a…凹面、21b…導入口、21c…溝、22…層、22a…凹部、22b…溝、22c…孔、22d…孔、23…層、23a…溝、24…固定部材、24a…底壁、24b…枠部、24c…第1排出口、24d…第2排出口、24i…側壁、25…フィルター、31…層、32…層、41…支持体、41a…取付孔、100…液体吐出装置、110…液体容器、120…制御ユニット(制御部)、130…搬送機構、140…液体吐出モジュール、150…循環機構、BP1…バイパス流路、BP1a…第1部分、BP1b…第2部分、BP1c…第3部分、BP2…バイパス流路、BP2a…第1部分、BP2b…第2部分、BP2c…第3部分、C…圧力室、C1…第1流路、C2…第2流路、CC…供給流路、CC1…第1供給流路、CC2…第2供給流路、CE1…排出口、CE2…排出口、CF1…共通供給流路、CF2…共通排出流路、CI1…導入口、CI2…導入口、CM…排出流路、CM1…第1排出流路、CM2…第2排出流路、Ca…圧力室、Cb…圧力室、Com…駆動信号、DM…方向、DN…配列方向、DS…個別排出流路、DS1…第1個別排出流路、DS2…第2個別排出流路、FN…ノズル面、IO1…供給口、IO2…排出口、IO3a…排出口、IO3b…排出口、IO4a…導入口、IO4b…導入口、Ln…ノズル列、M…媒体、N…ノズル、Na1…第1連通流路、Na2…第2連通流路、Nf…ノズル流路、P…個別流路、R1…第1共通液室、R2…第2共通液室、RBP…流路抵抗、RCa…合成流路抵抗、RCb…合成流路抵抗、RF1…第1フィルター室、RF2…第2フィルター室、RFa…上流室、RFb…下流室、RP…合成流路抵抗、Ra1…個別供給流路、Ra2…個別排出流路、Rin…流路抵抗、Rout…流路抵抗、Rs…合成流路抵抗、S1…ステップ、S10…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、S7…ステップ、S8…ステップ、S9…ステップ、SP…分配供給流路、SP1…第1分配供給流路、SP2…第2分配供給流路、SPa…縦流路、SPb…横流路。