IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特開2022-175563射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法
<>
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図1
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図2
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図3
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図4
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図5
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図6
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図7
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図8
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図9
  • 特開-射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175563
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20221117BHJP
   B29C 45/48 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082083
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中野 耕太郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AR021
4F206AR07
4F206AR08
4F206AR11
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN13
4F206JN22
4F206JP13
4F206JP18
4F206JP23
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】金型に射出材料を充填する工程について、設定可能な制御方法の自由度が高い制御装置を提案する
【解決手段】制御装置(4)において、成形サイクルの制御に関して、射出工程と保圧工程とを区別しないで扱う。具体的には、金型(13、14)に射出材料を充填する工程を、指定した区間数によって複数の制御区間に分割する。そしてそれぞれの制御区間に対して、用意された複数の制御モードから1個を選択できるようにする。制御モードには、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含める。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、成形サイクルのうち金型に射出材料を充填する工程を複数の制御区間に分割し、該複数の制御区間を順次実行して前記射出成形機を制御し、
前記複数の制御区間は、区間数が指定可能になっていると共に、それぞれの前記制御区間に対して複数の制御モードのうちの1個が選択可能になっており、
前記複数の制御モードは、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含んでいる、制御装置。
【請求項2】
前記複数の制御区間の完了条件は、前記制御モードとして前記圧力制御が選択されているときは指定した時間の経過時、前記位置制御または速度制御が選択されているときは指定したスクリュ位置への到達時である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数の制御区間は、前記制御モードとして前記圧力制御が選択されているときは指定したスクリュ位置への到達時に、前記位置制御または速度制御が選択されているときは指定した時間の経過時に、それぞれ制御を中断して次の前記制御区間に移行する、請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記複数の制御モードは、スクリュ位置を維持する停止制御を含み、前記停止制御のときの完了条件は指定した時間の経過時である、請求項1~3のいずれかの項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記複数の制御モードは、スクリュ速度をゼロに維持するゼロ速度制御を含み、前記ゼロ速度制御のときの完了条件は指定した時間の経過時である、請求項1~4のいずれかの項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は推奨演算部を備え、前記推奨演算部は金型の形状に関する金型形状情報と射出材料に関する射出材料情報とが入力されると、推奨される前記区間数を出力すると共に、前記複数の制御区間のそれぞれに対して推奨される前記制御モードを出力する、請求項1~5のいずれかの項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記金型形状情報は、前記金型内の射出材料の流動解析で得られた流動解析情報を含む、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記推奨演算部は機械学習された機械学習器を備え、該機械学習器が推奨される前記区間数と前記複数の制御区間のそれぞれに対して推奨される前記制御モードとを出力する、請求項6または請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記機械学習器は、前記金型形状情報及び前記射出材料情報と、オペレータによって実際に指定された前記区間数と、オペレータによって実際に指定された前記複数の制御区間ごとに指定された前記制御モードとを訓練データとして学習される、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記金型形状情報及び前記射出材料情報と、オペレータによって実際に指定された前記区間数と、オペレータによって実際に指定された前記複数の制御区間ごとに指定された前記制御モードと、実成形により得られる不良度に応じた報酬とに基づいて、前記機械学習器を強化学習させる、請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
金型を型締めする型締装置と、
加熱シリンダとスクリュとを備え前記金型に射出材料を射出する射出装置と、
前記型締装置と前記射出装置とを制御する制御装置と、を備えた射出成形機であって、
前記制御装置は、成形サイクルのうち前記金型に射出材料を充填する工程を複数の制御区間に分割し、該複数の制御区間を順次実行して前記射出成形機を制御し、
前記複数の制御区間は、区間数が指定可能になっていると共に、それぞれの前記制御区間に対して複数の制御モードのうちの1個が選択可能になっており、
前記複数の制御モードは、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含んでいる、射出成形機。
【請求項12】
前記複数の制御区間の完了条件は、前記制御モードとして前記圧力制御が選択されているときは指定した時間の経過時、前記位置制御または速度制御が選択されているときは指定したスクリュ位置への到達時である、請求項11に記載の射出成形機。
【請求項13】
前記複数の制御区間は、前記制御モードとして前記圧力制御が選択されているときは指定したスクリュ位置への到達時に、前記位置制御または速度制御が選択されているときは指定した時間の経過時に、それぞれ制御を中断して次の制御区間に移行される、請求項11または請求項12に記載の射出成形機。
【請求項14】
金型を型締めする型締装置と加熱シリンダとスクリュを含み前記金型に射出材料を射出する射出装置を有する射出成形機と、請求項6~9のいずれかの項に記載の制御装置と、を備え、
前記制御装置は前記射出成形機に付属して前記射出成形機を制御する付属制御装置と、該付属制御装置とネットワーク接続されている外部制御装置とから構成され、
前記推奨演算部は前記外部制御装置に設けられ、推奨される前記区間数と前記複数の制御区間のそれぞれに対して推奨される前記制御モードとを、前記付属制御装置に送信する、射出成形システム。
【請求項15】
射出成形機を制御する制御方法であって、
成形サイクルのうち金型に射出材料を充填する工程を複数の制御区間に分割し、該複数の制御区間を順次実行して前記射出成形機を制御し、
前記複数の制御区間は、区間数が指定可能になっていると共に、それぞれの前記制御区間に対して複数の制御モードのうちの1個が選択可能になっており、
前記複数の制御モードは、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含んでいる、制御方法。
【請求項16】
金型の形状に関する形状情報と射出材料に関する射出材料情報とに基づいて、推奨される前記区間数を出力すると共に、前記複数の制御区間のそれぞれに対して推奨される前記制御モードを出力する、請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
射出成形機を制御する制御装置の表示装置に表示される設定画面であって、
前記制御装置は、成形サイクルのうち金型に射出材料を充填する工程を複数の制御区間に分割し、該複数の制御区間を順次実行して前記射出成形機を制御するようになっており、
前記設定画面には、前記複数の制御区間の区間数を指定する区間数入力欄が表示され、該区間数入力欄において前記区間数を指定すると、前記区間数と同数の制御モード選択欄が表示されるようになっており、
前記制御モード選択欄は、それぞれ前記複数の制御区間に対応し、複数の制御モードのうちの1個が選択可能になっており、
前記複数の制御モードは、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含んでいる設定画面。
【請求項18】
前記設定画面には、前記複数の制御区間のそれぞれに対して、制御区間の完了を判断する完了条件を設定する完了条件入力欄と、制御の中断を判断する中断条件を設定する中断条件入力欄とが表示される、請求項17に記載の設定画面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機を制御する制御装置、射出成形機、および射出成形機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は金型を型締めする型締装置と、金型に射出材料を射出する射出装置と、を備え、これらはコントローラによって制御されている。成形品を成形する成形サイクルは、射出装置において射出材料を溶融し計量する計量工程、金型を型締めする型締工程、射出材料を金型に射出する射出工程、圧力を印加して射出材料を補充する保圧工程、型開工程、成形品を突き出す突出工程、等を備えている。
【0003】
成形サイクルにおいて金型に射出材料を充填する工程は、射出工程と保圧工程とからなる。これらの工程は、例えば特許文献1に記載されているように制御する。すなわち、射出工程は射出装置のスクリュを速度制御により軸方向に駆動して射出材料を射出し、金型に充填する。そしてスクリュが予め設定されている切換位置に達したら、射出工程を完了し保圧工程に移行する。すなわちスクリュの軸力を制御する圧力制御に移行する。つまり射出材料の圧力を制御して金型に射出材料を補充する。
【0004】
射出工程や保圧工程は複数の段に分割して制御することもできる。例えば射出工程を2段に分割し、射出材料がゲートに達するまでは比較的低速度でスクリュを速度制御し、キャビティ内への充填が開始したら高速でスクリュを速度制御する、等することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-128812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
射出工程や保圧工程を複数の段に分割して複雑な制御を実施することによって、色々な成形品に対応して適切に成形することはできる。しかしながら、射出工程はスクリュを速度制御により駆動する工程であり、保圧工程は圧力制御により駆動する工程であり、それぞれ制御方法は固定されている。つまり選択できる制御方法の自由度は制限されている。近年、色々な技術分野においてAI等の活用により、従来熟練したオペレータが実施してきた制御方法より、優れた制御方法が見いだされる場合がある。射出成形の分野においても、AIの活用が提案されており、従来の制御方法より優れた制御方法が見いだされる可能性もある。しかしながら、前記したように制御方法の選択の自由度が制限されていると、対応することができない。
【0007】
本開示において、金型に射出材料を充填する工程について、制御方法を自由に設定・選択できる射出成形機の制御装置を提案する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
制御装置において、成形サイクルの制御に関して、射出工程と保圧工程とを区別しないで扱う。具体的には、金型に射出材料を充填する工程を、指定した区間数によって複数の制御区間に分割する。そしてそれぞれの制御区間に対して、用意された複数の制御モードから1個を選択できるようにする。制御モードには、スクリュ位置を制御する位置制御と、スクリュ速度を制御する速度制御と、スクリュ軸力を制御する圧力制御と、を含める。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、制御方法の選択の自由度が高くなり、色々な成形品の成形に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の第1の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の第1の形態に係る射出成形機の制御装置によって表示される設定画面の正面図である。
図3】本実施の第1の形態に係る射出成形機において実施可能な制御方法を説明するものであり、金型に射出材料を充填する工程におけるスクリュの位置、スクリュの速度、圧力の変化を示すグラフである。
図4】本実施の形態に係る射出成形機の制御装置において実施される、金型に射出材料を充填する工程についてのフローチャートである。
図5】従来の射出成形機の制御装置によって表示される設定画面の正面図である。
図6】従来の射出成形機において実施される制御方法を説明するものであり、射出工程と保圧工程におけるスクリュの位置、スクリュの速度、圧力の変化を示すグラフである。
図7】本実施の第2の形態に係る射出成形機の制御装置を示す、ブロック図である。
図8】本実施の第3の形態に係る射出成形機の制御装置を示す、ブロック図である。
図9】本実施の第4の形態に係る射出成形機の制御装置を示す、ブロック図である。
図10】本実施の形態に係る射出成形機システムを示すネットワーク図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、金型を型締めする型締装置2と、射出材料を溶融して射出する射出装置3と、これらを制御する本実施の形態に係る第1の制御装置4Aと、から概略構成されている。
【0014】
<型締装置>
型締装置2はベッドB上に固定されている固定盤5と、ベッドB上をスライドする型締ハウジング6と、ベッドB上を同様にスライドする可動盤7とを備えている。固定盤5と型締ハウジング6は複数本、例えば4本のタイバー9、9、…によって連結されている。可動盤7は、固定盤5と型締ハウジング6の間でスライド自在になっている。型締ハウジング6と可動盤7の間には型締機構11が設けられている。型締機構11は直圧式の型締機構、つまり型締シリンダから構成してもよいが、本実施の形態においてはトグル機構から構成されている。固定盤5と可動盤7にはそれぞれ金型13、14が設けられ、型締機構11を駆動すると金型13、14が型開閉される。
【0015】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ16と、この加熱シリンダ16に入れられているスクリュ17と、スクリュ17を駆動するスクリュ駆動装置18とから構成されている。加熱シリンダ16はその後端部近傍にホッパ20が、そして先端に射出ノズル22が設けられている。
【0016】
<本実施の第1の形態に係る制御装置>
本実施の第1の形態に係る制御装置4Aつまりコントローラは、型締装置2、射出装置3を制御して成形サイクルを実施する。本実施の形態に係る制御装置4Aは、成形サイクルのうち、金型13、14に射出材料を充填する工程について制御方法の選択において自由度が高くなっている点に特徴がある。制御装置4Aには、画面を表示する入力装置を備えたモニタ23が設けられている。このモニタ23には、次に説明する充填工程設定画面が表示される。
【0017】
<充填工程設定画面>
本実施の形態において、金型13、14に射出材料を充填する工程を充填工程と呼ぶ。充填工程は従来、射出工程と保圧工程として2個の工程に区別されていた工程である。充填工程における制御方法を設定する画面、つまり充填工程設定画面25の一部が図2に示されている。
【0018】
<制御区間の区間数>
本実施の形態において充填工程は、複数の区間数の制御区間に分割できるようになっている。区間数はオペレータによって指定可能である。充填工程設定画面25の区間数入力欄26に所望の区間数を入力する。図2の例では区間数として5が指定されている。次いで実行ボタン28を選択する。そうすると、充填工程設定画面25の下段において、指定した区間数だけ制御区間が表示される。つまり「1st」~「5th」の5個の制御区間が表示される。
【0019】
<制御モード>
複数の制御区間のそれぞれは、制御モード選択欄より所望の制御モードを選択できるようになっている。すなわち、充填工程設定画面25には制御モード選択プルダウンリスト31、31、…が設けられ、複数個の制御モードから1個の制御モードを選択することができるようになっている。本実施の形態において選択可能な制御モードは5種類が用意されている。すなわち、速度制御、位置制御、圧力制御、停止制御、ゼロ速度制御である。それぞれについて説明する。
【0020】
<速度制御>
速度制御は、スクリュ17(図1参照)の速度つまりスクリュ速度について目標速度になるように制御する制御モードである。速度制御を実施する場合、制御区間の完了を判断する条件つまり完了条件はスクリュ位置になる。つまりスクリュ17が予め設定したスクリュ位置に達したら制御区間を完了する。図2に示されている例では、「1st」の制御区間と、「3rd」の制御区間とについて速度制御が選択され、目標速度が符号33、34で示されているようにそれぞれ75.0mm/s、70.0mm/sに設定されている。また、完了条件であるスクリュ位置が符号35、36で示されているように、それぞれ83.00mm、45.00mmに設定されている。なお、符号35、36で示されている入力欄は、完了条件入力欄と呼ぶことができる。
【0021】
それぞれの制御モードには、制御区間の中断を判断するための設定値、つまり中断条件も定義されている。中断は制御区間の完了を待たずにその制御区間を途中で終了することであり、次の制御区間に移行する。速度制御では中断は、制御開始からの経過時間で判断される。従って経過時間が設定されている。図2の例では「1st」と「3rd」の制御区間において、符号38、39で示されているように、中断条件である経過時間としてそれぞれ2.50s、2.50sが設定されている。これらの経過時間を経過したら速度制御を中断して次の制御区間に移行することになる。なお、符号38、39で示されている欄は、中断条件入力欄と呼ぶことができる。
【0022】
それぞれの制御モードでは異常が検出された制御を中止するようになっている。制御区間では異常の判断の条件として射出材料の圧力値が設定されている。図2の例では「1st」と「3rd」の制御区間に対して符号41、42で示されているように、それぞれの170.0MPa、177.0MPaが設定されている。
【0023】
<位置制御>
位置制御は、スクリュ17(図1参照)の位置つまりスクリュ位置について目標位置になるように制御する制御モードである。位置制御を実施する場合、制御区間の完了条件はスクリュ位置で設定する。また、中断条件は経過時間で判断するようになっており、設定された経過時間に達した場合には位置制御を中断して次の制御区間に移行することになる。図2の例では「2nd」の制御区間が位置制御に選択されている。目標位置であるスクリュ位置が符号44の欄において81.00mm、完了条件であるスクリュ位置が符号46の欄において75.00mm、そして中断条件が符号45の欄において0.20s、とそれぞれ設定されている。符号46の欄、符号45の欄は、それぞれ完了条件入力欄、中断条件入力欄と呼ぶことができる。
【0024】
<圧力制御>
圧力制御は、スクリュ17(図1参照)の軸力を制御する制御モードである。つまりスクリュ17によって印加する射出材料の圧力を目標圧力になるように制御する。圧力制御を実施する場合、制御区間の完了条件は経過時間で設定する。また、中断条件はスクリュ位置で判断し、設定されたスクリュ位置に達した場合には圧力制御を中断して次の制御区間に移行することになる。図2の例では「5th」の制御区間が圧力制御に選択されている。目標圧力が符号51の欄において50.0MPa、完了条件が符号52の欄において2.50s、そして中断条件であるスクリュ位置が符号53の欄において32.00mm、とそれぞれ設定されている。符号52の欄、符号53の欄は、それぞれ完了条件入力欄、中断条件入力欄と呼ぶことができる。
【0025】
<停止制御>
停止制御は、スクリュ位置を現在の位置に維持する制御である。つまり現在のスクリュ位置を目標位置として位置制御する。仮に射出材料の圧力によりスクリュ位置が一時的に変化した場合にも、その変化した位置を新たな目標位置として位置制御することになる。図2には停止制御が選択されている例は示されていない。停止制御を実施する場合、制御区間の完了条件は経過時間で設定する。また、中断条件はスクリュ位置で判断し、設定されたスクリュ位置に達した場合には停止制御を中断して次の制御区間に移行することになる。
【0026】
<ゼロ速度制御>
ゼロ速度制御は、スクリュ速度をゼロに制御する制御モードである。ゼロ速度制御を実施する場合、制御区間の完了条件は経過時間で設定する。また、中断条件はスクリュ位置で判断し、設定されたスクリュ位置に達した場合にゼロ速度制御を中断して次の制御区間に移行することになる。図2の例では「4th」の制御区間が「0速度」つまりゼロ速度制御に選択されている。完了条件が符号55の欄において0.10s、そして中断の判断をするため条件であるスクリュ位置が符号56の欄において41.00mmに設定されている。符号55の欄、符号56の欄は、それぞれ完了条件入力欄、中断条件入力欄と呼ぶことができる。
【0027】
<制御モードの変形>
本実施の形態においては、このように制御モードとして速度制御、位置制御、圧力制御、停止制御、ゼロ速度制御の5種類が用意され、これらから選択できるようになっている。しかしながら、他の制御方法による制御モードを追加してもよい。つまり6種類以上用意してもよい。あるいは、制御モードとして速度制御、位置制御、圧力制御の3種類だけ用意してこれらから選択するようにしてもよい。いずれにしても、複数の制御区間において自由に制御モードが選択できるようになっている点に本実施の形態に係る制御装置4A(図1参照)の特徴がある。
【0028】
<制御装置による充填工程の制御>
図1に示されている制御装置4Aが実施する充填工程の制御について、図4を参照して説明する。充填工程において制御装置4Aは最初の制御区間つまり「1st」の制御区間に移行する(ステップS1)。制御装置4Aは選択されている制御モードを取得する(ステップS2)。制御モードによって異なる処理に分岐する。
【0029】
速度制御が選択されている場合には、ステップS11に移行して速度制御を実施する。すでに説明したように、設定されているスクリュ速度を目標速度としてスクリュ17(図1参照)を駆動する。完了条件に達したか否かをステップS12で判断する。つまり、設定したスクリュ位置に到達したか否かを判断する。到達していなければステップS13に移行する。一方、完了条件に達していれば、制御区間を完了してステップS4に移行する。ステップS13では中断条件に該当するか否かを判断する。中断条件である経過時間に達したら、制御を中断してステップS4に移行する。中断条件に該当しなければ、ステップS11に戻って速度制御を継続する。
【0030】
位置制御が選択されている場合には、ステップS21に移行して位置制御を実施する。つまり、設定されているスクリュ位置を目標位置としてスクリュ17(図1参照)を駆動する。完了条件に達したか否かを判断する(ステップS22)。すでに説明したように完了条件はスクリュ位置である。スクリュ17がスクリュ位置に達したら制御区間を完了してステップS4に移行する。一方、完了条件に達していなければステップS23に移行して中断条件に該当するか否かを判断する。中断条件は経過時間であり、経過時間に達したら制御区間を中断してステップS4に移行する。中断条件に該当しなければステップS21に戻る。
【0031】
圧力制御が選択されている場合には、ステップS31に移行して圧力制御を実施する。つまり、設定されている圧力を目標圧力としてスクリュ17(図1参照)を駆動する。完了条件に達したか否かを判断する(ステップS32)。すでに説明したように完了条件は経過時間である。経過時間に達したら制御区間を完了してステップS4に移行する。一方、完了条件に達していなければステップS33に移行して中断条件に該当するか否かを判断する。中断条件はスクリュ位置でありスクリュ17が該スクリュ位置に達したら制御区間を中断してステップS4に移行する。中断条件に該当しなければステップS31に戻る。
【0032】
停止制御が選択されている場合には、ステップS41に移行して停止制御を実施する。つまり、現在のスクリュ位置を維持するようにスクリュ17(図1参照)を駆動する。完了条件に達したか否かを判断する(ステップS42)。すでに説明したように完了条件は経過時間である。経過時間に達したら制御区間を完了してステップS4に移行する。一方、完了条件に達していなければステップS43に移行して中断条件に該当するか否かを判断する。中断条件はスクリュ位置である。スクリュ17がスクリュ位置に達したら制御区間を中断してステップS4に移行する。中断条件に該当しなければステップS41に戻る。
【0033】
ゼロ速度制御が選択されている場合には、ステップS51に移行して停止制御を実施する。つまり、スクリュ速度がゼロになるように速度制御する。完了条件に達したか否かを判断する(ステップS52)。すでに説明したように完了条件は経過時間である。経過時間に達したら制御区間を完了してステップS4に移行する。一方、完了条件に達していなければステップS53に移行して中断条件に該当するか否かを判断する。中断条件はスクリュ位置である。スクリュ17がスクリュ位置に達したら制御区間を中断してステップS4に移行する。中断条件に該当しなければステップS51に戻る。
【0034】
ステップS4において次の制御区間が存在するか否かをチェックする。次の制御区間が存在しなければ制御を完了する。次の制御区間が存在する場合、ステップS2に戻る。そして次の制御区間について選択されている制御モードを取得し、同様に処理を繰り返す。
【0035】
<充填工程の例>
図2に示されている条件に従って、本実施の形態に係る制御装置4A(図1参照)によって制御した充填工程のグラフが図3に示されている。すなわち、速度制御、位置制御、速度制御、ゼロ速度制御、圧力制御を順次実施したときの、スクリュ速度61、スクリュ位置62、そして射出材料圧力63の、それぞれの変化が示されている。これらのグラフから、充填工程において自由度の高い制御が実施できることが理解できる。
【0036】
<従来の射出保圧設定画面>
図5には、従来の射出保圧設定画面101が示されている。射出保圧設定画面101では、その上段において符号102で示されているように射出工程に関して設定し、下段において符号103で示されているように保圧工程に関して設定するようになっている。まず、射出工程においては、スクリュ速度を制御する速度制御のみ設定するようになっている。この例では、射出工程は2段に分かれており、1段目は符号105で示されているように70.0mm/sで速度制御して符号106で示されているようにスクリュ位置が83.00mmに達したら、完了するように設定されている。そして2段目は符号107で示されているように75.0mm/sで速度制御し、符号108で示されているようにスクリュ位置が45.00mmに達したら保圧工程に移行するように設定されている。
【0037】
保圧工程は圧力制御のみ設定するようになっており、この例では2段に分かれている。すなわち、1段目は符号110、111で示されているように、50.0MPaで0.50sだけ圧力制御し、次いで2段目は符号112、113で示されているように、40.0MPaで0.50sだけ圧力制御するように設定されている。
【0038】
図5に示されている条件によって、従来の制御装置により射出工程と保圧工程とを制御した様子が、図6のグラフに示されている。すなわち射出工程において速度制御を、保圧工程において圧力制御を実施したときに変化する、スクリュ速度115、スクリュ位置116、射出材料圧力117のグラフが示されている。従来の制御装置で実施される制御方法は、選択できる制御方法が限られている。
【0039】
<第2の実施の形態に係る制御装置>
本実施の第2の形態に係る制御装置4Bが、図7に示されている。この実施の形態に係る制御装置4Bは、推奨演算部70Bを備えている。推奨演算部70Bは、充填工程について推奨する区間数つまり推奨区間数77と、複数の制御区間のそれぞれについて推奨する制御モードつまり推奨制御モード78とを出力するようになっている。オペレータは新しい金型について充填工程を設定するとき、これら推奨区間数77と推奨制御モード78とを参考にすることができる。なお、制御装置4Bが、自動で充填工程の設定を行うようにしてもよい。この実施の形態において推奨演算部70Bは教師あり学習により機械学習する機械学習器71を備えている。つまり学習済み機械学習器71が推奨区間数77と推奨制御モード78とを出力するようになっている。
【0040】
機械学習器71にはSVM(Support Vector Machine)、ステップワイズ方法等、色々なアルゴリズムを採用することができるが、この実施の形態においては複数層からなるニューラルネットワークが採用されている。機械学習器71は事前に学習させる必要がある。まず、複数の訓練データ73を用意する。訓練データ73は、色々な金型と射出材料とに関する大量のデータからなる。具体的には、金型形状情報と、射出材料情報と、区間数と、制御区間毎における制御モードとからなる。
【0041】
金型形状情報は、金型の形状に関する情報であり、例えばランナ容積、成形品の容量、等を含んでいる。さらには、射出材料を金型に充填するときの、金型内における射出材料の速度、圧力等の挙動を解析して流動解析情報を得、これを金型形状情報に含めるようにしてもよい。射出材料情報は樹脂の種類、温度等の、射出材料に関する情報である。ところで訓練データ73に含まれる区間数と制御モードは、熟練したオペレータが実際に設定した区間数と、それぞれの制御区間に対して選択した制御モードからなる。このような区間数と制御モードとが機械学習における教師データになる。大量の訓練データ73によって機械学習器71を学習させる。
【0042】
この実施の形態に係る制御装置4Bを備えた射出成形機1において、新しい金型について充填工程を設定するとき、次のようにする。新しい金型について、金型形状情報75を得、射出する予定の射出材料について射出材料情報76を得る。金型形状情報75は前記したように流動解析情報を含めるようにしてもよい。このような金型形状情報75と射出材料情報76とを推奨演算部70B、つまり機械学習器71に入力する。学習済みの機械学習器71は、適切な推奨区間数77と、それぞれの制御区間における適切な推奨制御モード78とを出力することになる。
【0043】
<第3の実施の形態に係る制御装置>
図8には第3の実施の形態に係る制御装置4Cが示されている。この実施の形態においても制御装置4Cは推奨演算部70Cを備えている。しかしながらこの実施の形態において推奨演算部70Cは、強化学習により機械学習する機械学習器80を備えている。この機械学習器80は、新しい金型についての金型形状情報75と射出材料情報76とを入力すると、推奨区間数77と推奨制御モード78とを出力するようになっている。
【0044】
詳しく説明すると、機械学習器80は行動器81を備え、行動器81は入力された金型形状情報75と射出材料情報76とを状態として扱い、この状態に対して適切な行動、つまり推奨区間数77と推奨制御モード78とを決定し、出力するようになっている。つまり行動器81は状態が与えられたときに、どのような行動を決定するかについて確率として表現されたポリシーを備えており、ポリシーに基づいて行動を決定するようにしている。
【0045】
オペレータは、出力された推奨区間77と推奨制御モード78とを採用し、これらに基づいて充填工程を設定する。次いで設定した充填工程に基づいて射出成形機1において成形サイクルを実施して、実際に成形品を成形する。得られた成形品について良否の判定、つまり成形品良否判定84を実施する。成形品良否判定84は、カメラで成形品の画像を得て画像処理装置により成形不良の種類、成形不良の程度を判定するようにしてもよいし、他の手段により、あるいはオペレータの主観により判定してもよい。いずれにしても得られた成形不良の種類、程度に基づいて、その良否について数値化し、これを報酬として機械学習器80に与える。
【0046】
機械学習器80は評価器82を備えており、評価器82は状態毎にその価値を表現する状態価値関数を備えている。与えられた報酬に従って状態価値関数を更新する。このような状態価値関数と報酬とによって、行動器81のポリシーが備えている確率を更新する。すなわち強化学習する。次いで、行動器81は、更新されたポリシーに基づいて与えられた状態に対する適切な行動、つまり推奨区間数77と推奨制御モード78とを出力する。オペレータは充填工程を設定し、射出成形機1によって成形品を成形する。成形品良否判定84を実施して、機械学習器80に報酬として与え、強化学習する。このようなサイクルを繰り返す。強化学習が進むと、出力される推奨区間数77と推奨制御モード78はより適切になっていく。
【0047】
<第4の実施の形態に係る制御装置>
図9には第4の実施の形態に係る制御装置4Dが示されている。この実施の形態においても制御装置4Dは推奨演算部70Dを備えている。しかしながらこの実施の形態において推奨演算部70Dは、金型形状情報75と射出材料情報76とを入力データとし、ルールベース88に基づいて、推奨区間数77と推奨制御モード78とを出力するようになっている。ルールベース88は、予め定義された複数のルールが格納されたデータベースである。ここで、複数のルールは、例えば、キャビティの厚さが30mm以下でかつ容量が100cm以上のときは区間数を4以上とする、樹脂の流路の断面積に比例して速度を設定する、等のように、金型形状情報75や射出材料情報76と、推奨区間数77や推奨制御モード78との間にある、取り決め事である。
【0048】
<射出成形機システム>
図10には、本実施の形態に係る射出成形機システム90が示されている。射出成形機システム90は、射出成形機1と射出成形機1に付属している付属制御装置91と、付属制御装置91とネットワーク95を介して接続されている外部制御装置92とから構成されている。この射出成形機システム90において、外部制御装置92に推奨演算部70Eが設けられている。推奨演算部70Eは、機械学習器を備えていてもよいし、ルールベースを参照するものであってもよい。推奨演算部70Eは、金型形状情報75と射出材料情報76とが入力されると、推奨区間数77と推奨制御モード78とを出力する。そして推奨区間数77と推奨制御モード78とを通信により付属制御装置91に送信するようになっている。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
5 固定盤 6 型締ハウジング
7 可動盤 9 タイバー
11 型締機構 13 金型
14 金型 16 加熱シリンダ
17 スクリュ 18 スクリュ駆動装置
20 ホッパ 22 射出ノズル
23 モニタ 25 充填工程設定画面
26 区間数入力欄 28 実行ボタン
31 制御モード選択プルダウンリスト
70 推奨演算部 71 機械学習器
73 訓練データ 75 金型形状情報
76 射出材料情報 77 推奨区間数
78 推奨制御モード 80 機械学習器
81 行動器 82 評価器
84 成形品良否判定 88 ルールベース
90 射出成形機システム 91 付属制御装置
92 外部制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10