(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175567
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】リサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20221117BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20221117BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20221117BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B09B3/00 Z
B09B3/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082088
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】小泉 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 格
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳祐
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004AA50
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA09
4D004CA10
4D004CA24
4D004CB01
4D004CB13
(57)【要約】
【課題】ファスニング製品を有する物品等から、鉄やアルミニウム等の不純物の含有濃度を低くして目的の金属をリサイクルすることが可能なリサイクル方法を提供する。
【解決手段】
金属部品を含むファスニング製品(40,50,80)を有する物品から、金属をリサイクルするリサイクル方法であって、少なくとも一部の前記金属部品を破砕する破砕工程(14,34)、及び、前記破砕工程(14,34)によって得られた破砕物から、特定の金属を含む破砕片を選別する選別工程を含むリサイクル方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品を含むファスニング製品(40,50,80)を有する物品から、金属をリサイクルするリサイクル方法であって、
少なくとも一部の前記金属部品を破砕する破砕工程(14,34)、及び、
前記破砕工程(14,34)によって得られた破砕物から、特定の金属を含む破砕片を選別する選別工程
を含むことを特徴とするリサイクル方法。
【請求項2】
前記選別工程において磁力選別を行うこと
を含む請求項1記載のリサイクル方法。
【請求項3】
前記破砕工程(14,34)の前に、前記物品を熱処理して前記ファスニング製品(40,50,80)の前記金属部品を繊維部分から切り離す熱処理工程(12,32)
を含む請求項1又は2記載のリサイクル方法。
【請求項4】
前記熱処理工程(12,32)において、前記繊維部分を炭化する炭化処理を行うこと、及び、
前記選別工程で選別された金属を再溶解すること
を含む請求項3記載のリサイクル方法。
【請求項5】
前記熱処理工程(12,32)後、前記破砕工程(14,34)を行う前に、ふるいによる選別を行うこと
を含む請求項3又は4記載のリサイクル方法。
【請求項6】
スライドファスナー用スライダー(43)から、又は前記スライダー(43)を有する物品から、前記スライダー(43)に含まれる金属をリサイクルするリサイクル方法であって、
少なくとも前記スライダー(43)を破砕する破砕工程(22)、及び、
前記破砕工程(22)によって得られた破砕物から、特定の金属を含む破砕片を選別する選別工程
を含むことを特徴とするリサイクル方法。
【請求項7】
前記選別工程において磁力選別を行うこと
を含む請求項6記載のリサイクル方法。
【請求項8】
前記破砕工程(14,22,34)において、前記金属部品又は前記スライダー(43)に高エネルギーの衝撃を繰り返し与えることを含む請求項1~7の何れかに記載のリサイクル方法。
【請求項9】
前記金属として、銅合金、ステンレス、アルミニウム、及び、亜鉛の少なくとも1つをリサイクルすることを含む請求項1~8の何れかに記載のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品を含むファスニング製品を有する物品から、又は、スライドファスナー用スライダーから、若しくはスライダーを有する物品から、金属をリサイクルするリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源を有効に活用する技術として、例えば特開2018-140329号公報(特許文献1)や特開2019-089037号公報(特許文献2)には、衣服のリサイクル装置及び方法が記載されている。
【0003】
特許文献1及び2に記載されている技術では、ファスナー等の装飾部品等が設けられている衣服に対し、衣服の布部分を脆化する加熱、布部分と装飾部品等を分離する破砕、及び、布部分を含む低比重物と金属を含む高比重物を分ける選別が順番に行われる。これにより、低比重物を燃料としてサーマルリサイクルするとともに、高比重物に含まれる有価金属をリサイクルすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-140329号公報
【特許文献2】特開2019-089037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載されている技術では、装飾部品等を有する衣服から有価金属をリサイクルできるため、資源を有効活用することが可能であるものの、目的の金属を高い含有率でリサイクルすることが難しかった。また、金属のリサイクルにおいて、例えばCO2の排出量の削減を考慮すると、リサイクルされる金属を再溶融して、目的の部材や部品を直接形成することがより有効的である。
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載されている技術では、例えばファスニング製品としてスライダーやリベット等の部品が用いられている場合、リサイクルされる金属に不純物が多く含まれ易くなるため、リサイクルされる金属を再溶融して、ファスニング製品用の部品を安定して得ることが難しかった。
【0007】
具体的に説明すると、例えばスライドファスナー用のスライダーには、ステンレス製の部品が使用されることがある。しかし、このようなステンレス製の部品を有するスライダーから、金属(例えば、銅合金)をリサイクルして、ファスニング製品用の部品を形成する場合、その部品を形成する金属中のFe濃度が高くなる。その結果、Fe濃度が高い金属製の部品を含むファスニング製品が衣服等の物品に取着された場合、その物品を検針機に通したときに、検針機を反応させるという不具合を発生させ易かった。
【0008】
また、例えばファスニング製品の1つであるリベットには、アルミニウムが使用されることが多い。しかし、リベットを含む部品から銅合金等の金属をリサイクルして、ファスニング製品用の部品を形成する場合、そのリサイクルされる金属にもアルミニウムが混入するため、部品の鋳造性及び加工性に悪影響を与える。
【0009】
そこで、本発明は、スライダーやリベット等を含むファスニング製品を有する衣服等の物品等から、鉄やアルミニウム等の不純物の含有濃度を低くして目的の金属をリサイクルすることが可能なリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明により提供される第1の形態に係るリサイクル方法は、金属部品を含むファスニング製品を有する物品から、金属をリサイクルするリサイクル方法であって、少なくとも一部の前記金属部品を破砕する破砕工程、及び、前記破砕工程によって得られた破砕物から、特定の金属を含む破砕片を選別する選別工程を含むことを特徴とするものである。
本発明の第1の形態に係るリサイクル方法は、前記選別工程において磁力選別を行うことを含むことが好ましい。
【0011】
本発明のリサイクル方法は、前記破砕工程の前に、前記物品を熱処理して前記ファスニング製品の前記金属部品を繊維部分から切り離す熱処理工程を含むことが好ましい。
この場合、このリサイクル方法は、前記熱処理工程において、前記繊維部分を炭化する炭化処理を行うこと、及び、前記選別工程で選別された金属を再溶解することを含むことが好ましい。
また、このリサイクル方法は、前記熱処理工程後、前記破砕工程を行う前に、ふるいによる選別を行うことが好ましい。
【0012】
本発明により提供される第2の形態に係るリサイクル方法は、スライドファスナー用スライダーから、又は前記スライダーを有する物品から、前記スライダーに含まれる金属をリサイクルするリサイクル方法であって、少なくとも前記スライダーを破砕する破砕工程、及び、前記破砕工程によって得られた破砕物から、特定の金属を含む破砕片を選別する選別工程を含むことを特徴とするものである。
本発明の第2の形態に係るリサイクル方法は、前記選別工程において磁力選別を行うことを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の第1及び第2の形態に係るリサイクル方法は、前記破砕工程において、前記金属部品又は前記スライダーに高エネルギーの衝撃を繰り返し与えることを含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明の第1及び第2の形態に係るリサイクル方法は、前記金属として、銅合金、ステンレス、アルミニウム、及び、亜鉛の少なくとも1つをリサイクルすることを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スライダーやリベット等を含むファスニング製品を有する衣服等の物品等から、鉄やアルミニウム等の不純物の含有濃度を低くして目的の金属をリサイクルすることが可能なリサイクル方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリサイクル方法を示すフロー図である。
【
図2】第1の実施形態に係るリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
【
図3】リサイクル方法の破砕工程で用いるチェーン式破砕機を模式的に示す模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るリサイクル方法を示すフロー図である。
【
図5】第2の実施形態に係るリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るリサイクル方法を示すフロー図である。
【
図7】第3の実施形態に係るリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお本発明において、ファスニング製品には、左右のファスナーストリンガー及びスライダーを少なくとも有するスライドファスナー、リベット、スナップボタン(スナップファスナー)、バックル、コードストッパー、ベルトアジャスター、ナス環などの製品が含まれる。このようなファスニング製品の中で、金属部品(金属製の部品)を含むファスニング製品、又はそのファスニング製品が取着された衣類等の物品が、金属のリサイクルを行う対象となる。
【0018】
また本発明において、ファスニング製品を有する物品、及びスライドファスナー用スライダーを有する物品には、衣服及びジーンズ等の衣類(衣料品)、カバン類、日用雑貨品類、及びこれらに使用される生地などの物品が含まれる。例えば、以下の第1の実施形態では、金属部品を備えたスライドファスナー及びリベットが取着されたジーンズから金属をリサイクルする場合について説明し、第3の実施形態では、金属部品を備えたスライドファスナーが取着された衣料生地から金属をリサイクルする場合について説明するが、本発明では、金属部品を含むファスニング製品が取り付けられたその他の物品(好ましくは、繊維製品)からでも金属をリサイクルすることが可能である。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるリサイクル方法を示すフロー図である。
図2は、第1の実施形態におけるリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
第1の実施形態では、金属部品を有するスライドファスナー40と金属部品を有するリベット50とが取着されたジーンズから、金属として、銅合金、アルミニウム、及びステンレス鋼を取り出して、再利用する場合について説明する。
【0020】
先ず、リサイクル工程を開始する前に、リサイクル対象となるファスニング製品を有する物品として、スライドファスナー40及び複数のリベット50が取り付けられたジーンズを事前に準備する(
図1の準備11)。
【0021】
この場合、スライドファスナー40は、
図2に模式的に示すように、ファスナーテープ41に銅合金製のファスナーエレメント42が取着されてエレメント列が形成されている左右一対のファスナーストリンガーと、エレメント列に摺動可能に取着されるスライダー43と、エレメント列の一端部及び他端部にそれぞれ隣接して設けられる銅合金製の第1止具(上止具)44及び銅合金製の第2止具(下止具)45とを有する。
【0022】
スライドファスナー40に用いられるスライダー43は、銅合金製のスライダー胴体43a及び引手43bと、スライダー43のロック機構(停止機構)に用いられるステンレス鋼製のロックピン(停止爪体)43cとを少なくとも有する。
【0023】
また、スライダー43は、小さいサイズで形成されているとともに、上述した部品の少なくとも一部に塑性変形加工(加締め加工)等が施されて部品が一体的に組み立てられることによって形成されている。このようなスライダー43は、従来から破砕方式として一般的に知られているハンマー式の破砕装置で破砕することが難しかった。また、回転する破砕刃を有する破砕装置を用いてスライダー43を破砕する場合、破砕刃が消耗し易いという問題があった。
【0024】
各リベット50は、塑性変形加工が施されたアルミニウム製のリベット芯部51と、リベット芯部51の一部を覆う銅合金製のリベットカバー部52とを少なくとも有する。また、リベット50は、部品の少なくとも一部に塑性変形加工等が施されて、デニム生地に一体的に取り付けられている。
【0025】
また、ジーンズの準備11では、例えばジーンズを切断することによって、ジーンズが、デニム生地にスライドファスナー40が取り付けられているパーツ、デニム生地にリベット50が取り付けられているパーツ、及び、デニム生地60のみのパーツ等の複数のパーツに分けられていてもよい。また、ジーンズは、切断されることなく、そのままの状態で準備されていてもよい。
【0026】
次に、準備したジーンズに対して熱処理(第1の実施形態では、炭化処理)を行う熱処理工程(炭化工程)12を行う。
この熱処理工程12では、準備したジーンズに対し、例えば過熱水蒸気の雰囲気下で300℃以上600℃以下の温度で加熱を行うことによって、ファスナーテープ41及びデニム生地60等の繊維部分を炭化させる。これによって、ファスナーテープ41のテープ形状やデニム生地60の形状が破壊され、繊維部分が小片状にばらばらに分離するとともに、ファスナーテープ41及びデニム生地60に直接的に又は間接的に取り付けられていたファスナーエレメント42、スライダー43、第1止具44、第2止具45、及びリベット50等の各金属部品を、繊維部分から切り離してばらばらにすることができる。
【0027】
また、炭化工程によって、デニム生地60及びファスナーテープ41等の繊維部分から、それぞれデニム生地60の炭化物60a、及びファスナーテープ41の炭化物41aを得ることができる。これらの炭化物60a,41aは、後述する銅合金の再溶解工程17において還元剤として使用することができる。
【0028】
このように炭化物60a,41aを還元剤として使用することにより、再溶解工程17で亜鉛の酸化を抑制できるため、再溶解工程17から作成されるファスニング製品の各部品(例えば、ファスナーエレメント42、スライダー胴体43a、引手43b、リベットカバー部52等)の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0029】
なお、第1の実施形態のように、熱処理工程12で炭化処理を行う場合、過熱水蒸気に代えて、天然ガス又は不活性ガスの雰囲気で加熱を行うことも可能である。また本発明では、熱処理工程12として、炭化処理を行う代わりに、デニム生地60等の繊維部分を燃焼させる燃焼処理が行われてもよい。この燃焼処理を行うことにより、デニム生地60等の繊維部分を燃焼させて除去することができ、それによって、上述した各金属部品を切り離してばらばらにすることが可能となる。
【0030】
熱処理工程12が終了した後、熱処理工程12でばらばらにされた各金属部品42,43,44,45,50と炭化物60a,41aに対し、ふるいによる選別工程(第1選別工程)13を行う。これによって、サイズが大きいデニム生地60の炭化物60a、スライダー43、及びリベット50等と、サイズが小さいファスナーテープ41の炭化物41a、ファスナーエレメント42、第1止具44、及び第2止具45等とを分離する。
【0031】
その結果、銅合金で形成されているファスナーエレメント42、第1止具44、及び第2止具45のみを、その他の金属も含まれるスライダー43等の金属部品から分離して回収できるため、鉄及びアルミニウムの含有量が少ない銅合金を安定してリサイクルすることができる。
【0032】
例えば、第1の実施形態の場合、ふるいによる選別工程13で分けられたファスナーエレメント42、第1止具44、及び第2止具45を再溶融することによって、ファスニング製品に用いられる部品等のような銅合金製の目的の部品又は部材を新たに形成することが可能となる。その結果、資源の有効活用やCO2の排出量の削減といった効果が得られる。なお本発明では、このふるいによる選別工程13を省略することも可能である。
【0033】
一方、ふるいによる選別工程13で分けられたデニム生地60の炭化物60a、スライダー43、及びリベット50等の大きいサイズの部品及び部分は、破砕工程14に送られ、破砕機70による破砕処理が行われる。第1の実施形態では、破砕機70として、
図3に示すチェーン式破砕機70(例えば、クロスフローシュレッダ(商品名)、佐藤鉄工株式会社製)が使用される。
【0034】
図3に示すチェーン式破砕機70は、円筒状に形成された破砕室71と、破砕室71の底面部に回転可能に配されるチェーン固定部72と、チェーン固定部72に一端部が固定される複数のチェーン73と、チェーン固定部72を回転駆動させる図示しない駆動部とを有する。このチェーン式破砕機70では、被破砕物(破砕対象物)であるデニム生地60の炭化物60a、スライダー43、及びリベット50等を破砕室71内に収容するとともに破砕室71を密閉した状態で、チェーン固定部72を高速で回転させることによって、被破砕物とチェーン73を繰り返し衝突させるとともに、被破砕物同士を繰り返し衝突させることができる。
【0035】
第1の実施形態において、破砕工程14で破砕処理されるスライダー43のスライダー胴体43a及び引手43bと、リベット50のリベットカバー部52とは、例えば銅合金で形成されているが、この銅合金は、展延性に優れ、比較的変形し易い金属であることが知られている。このため、第1の実施形態では、このような銅合金製の金属部品を破砕するため、スライダー43及びリベット50等の金属部品に対し、高エネルギーの衝突を繰り返して与える。例えば、高エネルギーの衝突として、高速での衝突や重量物の衝突を繰り返して与える。これにより、銅合金製の金属部品に加工硬化を生じさせて、金属部品を脆くすることができ、その結果、銅合金製の金属部品を適切に破砕することができる。
【0036】
第1の実施形態では、破砕工程14を行うことにより、スライダー43を、スライダー胴体43a、引手43b、ロックピン43cの各部品に分離するとともに、各部品をそれぞれ更に小さいサイズの破砕片に破砕することができる。また、リベット50も、スライダー43と同様に、リベット芯部51とリベットカバー部52に分離するとともに、それぞれを更に小さいサイズの破砕片に破砕することができる。例えば第1の実施形態の場合、破砕工程14によって、各金属部品を、それぞれ3mm~5mm程度の破砕片に破砕することができる。
【0037】
従って、破砕工程14後に得られる破砕物には、スライダー胴体43a、引手43b、及びリベットカバー部52を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、ロックピン43cを破砕して得られるステンレス製の破砕片と、リベット芯部51を破砕して得られるアルミニウム製の破砕片と、デニム生地60の炭化物60aとが含まれている。
【0038】
なお、第1の実施形態において、スライダー胴体43a、引手43b、ロックピン43c、リベット芯部51、及びリベットカバー部52の各部品は、破砕工程14が行われることによって、上述したように小さいサイズの複数の破砕片に実際に破砕されているが、
図2では、第1の実施形態の特徴を判り易く示すために、各部品が破砕された状態を、破砕片の状態ではなく、それぞれの元の形状のままで表している(後述する
図5及び
図7でも同様)。また本発明の破砕工程14は、スライダー43及びリベット50を破砕して各部品単位に分離することが可能であれば良く、破砕工程14の処理条件、及び、破砕工程14で得られる破砕片の大きさ等は特に限定されるものではない。
【0039】
破砕工程14によって得られた破砕物は、次に、磁力選別工程(第2選別工程)15に送られる。この磁力選別工程15では、磁力を利用して破砕物の中からステンレス製の破砕片(ロックピン43cの破砕片)を分離して回収する。
【0040】
より具体的に説明すると、第1の実施形態の磁力選別工程15では、鉄片などの磁性を有する金属を磁力によって選別して除去する第1磁力選別工程と、第1磁力選別工程よりも高い磁場を印加することによって弱磁性体であるステンレス製のロックピン43cの破砕片を選別して回収する第2磁力選別工程とが順番に行われる。
【0041】
始めに、一般的な磁場による第1磁力選別工程を行うことによって、高磁場による磁力選別を行ってステンレス製の破砕片を回収するときに、鉄片などの異物が混入するリスクを低減できる。その後、第1磁力選別工程が行われた破砕物に対し、高磁場による第2磁力選別工程を行うことによって、ステンレスの破砕片(ロックピン43cの破砕片)を効率的に回収して、再利用することや売却することが可能となる。
【0042】
一方、磁力選別工程15によって、磁性を有する金属とステンレスとが取り除かれた破砕物には、
図2に示すように、スライダー胴体43a、引手43b、及びリベットカバー部52を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、リベット芯部51を破砕して得られるアルミニウム製の破砕片と、デニム生地60の炭化物60aとが含まれている。
【0043】
磁力選別工程15を行った後、残存する破砕物に対して、湿式比重選別工程(第3選別工程)16を行う。この湿式比重選別工程16によって、スライダー胴体43a、引手43b、及びリベットカバー部52を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、リベット芯部51を破砕して得られるアルミニウム製の破砕片と、デニム生地60の炭化物60aとをそれぞれ分離して、別々に回収することができる。また、この湿式比重選別工程16で選別できなかった破砕片があった場合には、それらの破砕片に対して選別条件を変えた別の湿式比重選別を再度行うことによって、目的の材料毎に分離することが可能となる。
【0044】
湿式比重選別工程16で回収されるアルミニウム製の破砕片(リベット芯部51の破砕片)については、再利用や売却が可能となる。銅合金製の破砕片については、再溶解工程17に送って再溶融することによって、ファスニング製品に用いられる部品等のような銅合金製の目的の部品又は部材を新たに形成することが可能となる。それによって、資源の有効活用やCO2の排出量の削減といった効果が得られるため、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成に大きく貢献できる。炭化物60aについては、銅合金の再溶解工程17において還元剤として使用できる。
【0045】
なお、第1の実施形態では、上述した湿式比重選別工程16の代わりに、風力選別、エアテーブル選別、重液選別などの選別方法を利用することによっても、磁力選別工程15後に得られる破砕物から、目的の金属をそれぞれ選別して回収することも可能である。
【0046】
以上のような第1の実施形態におけるリサイクル方法によれば、上述したスライドファスナー40及びリベット50が取着されたジーンズから、金属として、ステンレス、アルミニウム、及び銅合金をそれぞれ単体分離して、安定して回収することができる。特に、銅合金については、ステンレス及びアルミニウム等の不純物の濃度が低く、純度の高い銅合金を安定して回収できる。例えば第1の実施形態では、回収された銅合金中のFe濃度及びAl濃度を何れも500ppm以下に、好ましくは300ppm以下にすることができる。
【0047】
このため、例えば回収された銅合金を用いてファスニング製品を製造する場合、そのファスニング製品が取り付けられた衣服等の物品を検針機に通したときに、その銅合金に起因して検針機が反応することを防止できる。また、銅合金中のアルミニウムに起因して、ファスニング製品に用いられる部品の鋳造性及び加工性が低下することを抑制できる。
【0048】
更に第1の実施形態では、繊維部分を炭化して炭化物60a,41aを回収することによって、上述したように、銅合金の再溶解工程17において還元剤として使用することが可能となるため、資源をより有効活用できる。また、再溶解工程17から得られる部品又は部材の歩留まりを向上させる効果も得られる。
【0049】
なお、第1の実施形態において、例えばリサイクル対象の物品が、アルミニウム製の部品を有するリベット50等を含まないものである場合には、アルミニウム製の破砕片を分離して回収する湿式比重選別工程16を省略することも可能である。この場合、磁力選別工程15後に得られる破砕物には、銅合金製の破砕片のみが含まれるため、銅合金製の破砕片を容易に回収してリサイクルすることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態におけるリサイクル方法を示すフロー図である。
図5は、第2の実施形態におけるリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
第2の実施形態では、スライドファスナー用のスライダー43のみをリサイクル対象として、スライダー43から銅合金及びテンレス鋼を取り出して再利用する場合について説明する。
【0051】
先ず、リサイクル対象となるスライダー43を事前に準備する(
図4の準備21)。このスライダー43は、前述した第1の実施形態のスライドファスナー40に含まれるスライダー43と実質的に同様に形成されている。すなわち、第2の実施形態におけるスライダー43は、銅合金製のスライダー胴体43a及び引手43bと、ステンレス鋼製のロックピン43cとを少なくとも有する。また、スライダー43は、部品の組み立て時に部品の少なくとも一部に塑性変形加工(加締め加工)等が施されている。
【0052】
次に、準備したスライダー43に破砕工程22を行う。この破砕工程22では、前述した第1の実施形態の場合と同様に、
図3に示した破砕機70による破砕処理が行われる。この破砕工程22を行うことにより、スライダー43を、スライダー胴体43a、引手43b、ロックピン43cの各部品に分離するとともに、各部品をそれぞれ更に小さいサイズの破砕片に破砕することができる。
【0053】
破砕工程22でスライダー43を破砕して得られた破砕物は、次に、磁力選別工程23に送られる。この磁力選別工程23では、前述した第1の実施形態の場合と同様に、磁性を有する金属を磁力によって選別して除去する第1磁力選別工程と、第1磁力選別工程よりも高い磁場を印加してステンレス製の破砕片を選別して回収する第2磁力選別工程とが行われる。
これによって、ステンレスの破砕片(ロックピン43cの破砕片)を効率的に回収して、再利用することや売却することが可能となる。
【0054】
また、磁力選別工程23によって、磁性を有する金属とステンレスとが取り除かれた破砕物には、
図5に示すように、スライダー胴体43a及び引手43bを破砕して得られる銅合金製の破砕片のみが含まれる。このため、銅合金製の破砕片を容易に回収でき、その回収された銅合金製の破砕片を再溶解工程24に送って再溶融できる。これによって、ファスニング製品に用いられる部品などのような銅合金製の目的の部品又は部材を新たに形成することが可能となる。
【0055】
以上のように、第2の実施形態におけるリサイクル方法によれば、スライダー43のみからであっても、金属として、ステンレスと銅合金とをそれぞれ単体分離して、安定して回収することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図6は、第2の実施形態におけるリサイクル方法を示すフロー図である。
図7は、第2の実施形態におけるリサイクル方法を模式的に説明する模式図である。
第3の実施形態では、金属部品を有するスライドファスナー80が取着された衣服から、金属として、亜鉛、銅合金、及びステンレス鋼を取り出して、再利用する場合について説明する。
【0057】
先ず、リサイクル工程を開始する前に、リサイクル対象として、金属部品を有するスライドファスナー80が取着された衣服を事前に準備する(
図6の準備31)。
【0058】
この場合、スライドファスナー80は、
図7に模式的に示すように、ファスナーテープ81に銅合金製のファスナーエレメント82が取着されてエレメント列が形成されている左右一対のファスナーストリンガーと、エレメント列に摺動可能に取着されるスライダー83と、エレメント列の一端部に隣接して設けられる銅合金製の止具(上止具)84と、エレメント列の一端部に隣接して設けられる亜鉛製の開離嵌挿具85とを有する。
【0059】
スライドファスナー80に用いられるスライダー83は、亜鉛製のスライダー胴体83a及び引手83bと、スライダー83のロック機構に用いられるステンレス鋼製のロックピン83cと、引手83bの一部及びロックピン83cを被覆する銅合金製のカバー部83dとを少なくとも有する。このスライダー83は、小さいサイズで形成されているとともに、上述した部品の少なくとも一部に塑性変形加工(加締め加工)等が施されて部品が一体的に組み立てられることによって形成されている。
【0060】
この準備31において、スライドファスナー80が取着された衣服(リサイクル対象)は、例えば切断等により、衣料生地61にスライドファスナー80が取り付けられているパーツ、及び、衣料生地61のみのパーツ等に分けられていてもよい。また、衣服は、衣服の状態でそのまま準備されていてもよい。
【0061】
次に、準備した衣服は、熱処理(炭化処理)を行う熱処理工程(炭化工程)32に送られる。
この熱処理工程32で炭化処理を行うことによって、ファスナーテープ81及び衣料生地61等の繊維部分を炭化させて小片状にばらばらに分離するとともに、ファスナーエレメント82、スライダー83、止具84、及び、開離嵌挿具85等の各金属部品を、繊維部分から切り離すことができる。また、この炭化処理の熱によって、亜鉛製のスライダー胴体83a、引手83b、及び開離嵌挿具85が溶融し、その溶融した亜鉛が冷却されることにより、亜鉛と幾つかの部品が一体化された亜鉛塊86が形成される。更に、繊維部分であるファスナーテープ81及び衣料生地61から、再溶解工程で還元剤として使用可能な炭化物81a,61aを得ることができる。
【0062】
熱処理工程32後、熱処理工程32で得られた各金属部品と炭化物81a,61aに対し、ふるいによる選別工程33を行って、サイズが大きい衣料生地61の炭化物61a及び亜鉛塊86と、サイズが小さく且つ亜鉛塊86に一体化されなかったファスナーテープ81の炭化物81a、ファスナーエレメント82、止具84、及びスライダー83のカバー部83dとを分離する(なお、
図7において、スライダー83のカバー部83dは亜鉛塊86に一体化された例を示している)。これによって、銅合金製のファスナーエレメント82、止具84、及びカバー部83dのみを回収でき、その結果、鉄の含有量が少ない銅合金をリサイクルすることができる。
なお本発明では、このふるいによる選別工程33を省略することも可能である。
【0063】
ふるいによる選別工程33で分けられた衣料生地61の炭化物60a及び亜鉛塊86等の大きいサイズの部品及び部分は、次に破砕工程34に送られ、前述した第1の実施形態の場合と同様に、
図3に示した破砕機70による破砕処理が行われる。この破砕工程34を行うことにより、衣料生地61の炭化物61aを破砕して小さくすることができる。また、亜鉛塊86を破砕して、小さいサイズの亜鉛製の破砕片87を形成するとともに、亜鉛塊86に一体化されていた各金属部品及び炭化物を分離し、更に分離した各金属部品及び炭化物をそれぞれ小さく破砕できる。
【0064】
この破砕工程34後に得られる破砕物には、亜鉛製の破砕片87と、ロックピン83cを破砕して得られるステンレス製の破砕片と、亜鉛塊86に一体化されていたファスナーエレメント82及びカバー部83d等を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、衣料生地61及びファスナーテープ81の炭化物61a,81aとが含まれている。
【0065】
破砕工程34によって得られた破砕物は、次に、磁力選別工程35に送られる。この磁力選別工程35では、前述した第1の実施形態の場合と同様に、磁性を有する金属を選別して除去する第1磁力選別工程と、第1磁力選別工程よりも高い磁場を印加することによって弱磁性体であるステンレス製の破砕片を選別して回収する第2磁力選別工程とが行われる。これによって、ステンレスの破砕片(ロックピン83cの破砕片)を効率的に回収して、再利用することや売却することが可能となる。
【0066】
また、磁力選別工程35によって磁性を有する金属とステンレスとが取り除かれた破砕物には、
図7に示すように、亜鉛製の破砕片87と、ファスナーエレメント82及びカバー部83d等を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、炭化物(不図示)とが含まれている。
【0067】
次に、第3の実施形態では、磁力選別工程35後に残存する破砕物に対して分級工程36を行う。この分級工程36を行うことにより、破砕片のサイズ及び形状によって、破砕片を複数のグループに分けることができる。例えば第3の実施形態の分級工程36では、磁力選別工程35後の破砕物に対し、ふるいによる選別を行うことによって、破砕片のサイズが大きい第1グループ91と、破砕片のサイズが中程度の第2グループ92と、破砕片のサイズが小さい第3グループ93とに分類する。
【0068】
このように破砕片のサイズ及び形状に応じて破砕物を3段階に分けて、グループごとに破砕片のサイズや形状を合わせることによって、比重差の小さい亜鉛と銅合金とを分離し易くし、亜鉛と銅合金の分離率を高めることができる。例えば、サイズが大きい第1グループ91には、亜鉛塊86を破砕して得られる亜鉛製の比較的大きな破砕片87が集められる。このため、亜鉛製の破砕片87のみを容易に回収して再利用できる。
【0069】
また、サイズが中程度の第2グループ92には、亜鉛塊86を破砕して得られる亜鉛製の破砕片87と、ファスナーエレメント82及びカバー部83d等を破砕して得られる銅合金製の破砕片と、炭化物とが集められる。この場合、第2グループ92に集められた破砕物に対し、例えば前述の第1の実施形態で行った湿式比重選別工程16等の選別工程を行うことによって、亜鉛製の破砕片87、銅合金製の破砕片、及び炭化物を分離して、それぞれを別々に回収することができる。
【0070】
また、回収される銅合金製の破砕片については、ステンレス及びアルミニウム等の不純物の濃度が低く、純度の高い銅合金であるため、再溶解工程に送って再溶融することによって、ファスニング製品に用いられる部品又は部材を新たに形成することが可能となる。
【0071】
サイズが小さい第3グループ93には、亜鉛製の破砕片87が主に集められるため、亜鉛製の破砕片87を回収して再利用することが可能である。また、第3グループ93に集められた破砕片に、亜鉛製の破砕片87以外に、銅合金製の破砕片及び炭化物の少なくとも一方が多く混入している場合には、第2グループ92の場合と同様に、湿式比重選別工程等の選別工程を更に行うことによって、亜鉛製の破砕片87、銅合金製の破砕片、及び炭化物を分離して別々に回収することができる。
【0072】
以上のように、第3の実施形態におけるリサイクル方法によれば、金属部品を有するスライドファスナー80が取着された衣服から、金属として、ステンレス、亜鉛、及び銅合金をそれぞれ単体分離して、安定して回収することができる。また、繊維部分を炭化して炭化物61a,81aを回収することによって、例えば銅合金の再溶解工程において還元剤として使用することが可能となるため、資源をより有効活用できるとともに、再溶解工程から得られる部品又は部材の歩留まりを向上させる効果も得られる。
【実施例0073】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明する。
実施例として、前述した第1の実施形態で説明したリサイクル方法を用いて、金属部品を有するスライドファスナー40と金属部品を有するリベット50とが取着されたジーンズから、金属として、銅合金の一つである真鍮、アルミニウム、及びステンレス鋼を分離して回収した。この場合、リサイクル対象であるジーンズに取着されているスライドファスナー40及びリベット50は、第1の実施形態で説明したように形成されている。
【0074】
また実施例では、湿式比重選別工程16後に回収された銅合金の破砕片を溶解し、高周波誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)による定量分析を行うことによって、銅合金中のFe濃度を調べた。
【0075】
一方、比較例として、実施例と同じジーンズを準備して、そのジーンズに対し、第1の実施形態で説明した熱処理工程(炭化工程)12を行い、その熱処理工程12後に得られた金属部品を回収した。また比較例では、回収した全ての金属部品を溶解し、ICP-OESによる定量分析を行うことによって、金属中のFe濃度を調べた。
【0076】
実施例で回収された銅合金と比較例で回収された金属とについて、Fe濃度を調べた結果、実施例で回収された銅合金中のFe濃度は180ppmであり、JIS規格で銅合金(C2100~C2700)について規定されているFe濃度よりも低くなっていることが確認された。一方、比較例で回収された金属中のFe濃度は、1000ppmと高い数値であることが判った。