(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175572
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】防災支援装置、防災支援方法、プログラムおよび防災支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20221117BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082094
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 孔司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】ユーザが防災意識または防災行動を身に付けることを支援する。
【解決手段】ユーザの位置データを受信する受信部と、位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する送信部と、を備える、防災支援装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置データを受信する受信部と、
位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、
前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する送信部と、
を備える、防災支援装置。
【請求項2】
前記防災に関するメッセージは、防災に関する問いを示すメッセージを含む、請求項1に記載の防災支援装置。
【請求項3】
前記防災支援装置は、前記防災に関する問いに対する前記ユーザからの回答に基づいて前記ユーザについての指標を算出する指標算出部をさらに備え、
前記1または2以上の規則のうちの少なくともいずれかの規則は、前記指標に関する条件をさらに含む、請求項2に記載の防災支援装置。
【請求項4】
前記1または2以上の規則のうちの少なくともいずれかの規則は、現在の気象に関する条件をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の防災支援装置。
【請求項5】
前記1または2以上の規則は、前記防災に関するメッセージの送信頻度を示す情報をさらに含み、
前記送信部は、前記送信頻度を示す情報に従った頻度で前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する、請求項1~4のいずれか一項に記載の防災支援装置。
【請求項6】
前記1または2以上の規則は、実際の災害の発生時または仮想的な災害に対する訓練時に適用される非常時用規則を含み、
前記非常時用規則は、前記実際の災害または前記仮想的な災害におけるフェーズに関する条件をさらに含み、
前記非常時用規則に含まれる前記防災に関するメッセージは、前記ユーザの行動を誘導する誘導メッセージである、請求項3に記載の防災支援装置。
【請求項7】
前記指標算出部は、前記誘導メッセージが前記情報端末に送信された場合には、当該情報端末を利用するユーザの行動に基づいて当該ユーザについての前記指標を算出する、請求項6に記載の防災支援装置。
【請求項8】
ユーザの位置データを受信することと、
位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則のうちのいずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信することと、
を含む、防災支援方法。
【請求項9】
コンピュータを、
ユーザの位置データを受信する受信部と、
位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、
前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する送信部と、
として機能させるための、プログラム。
【請求項10】
ユーザが利用する情報端末、および防災支援装置を有する防災支援システムであって、
前記防災支援装置は、
前記情報端末から前記ユーザの位置データを受信する受信部と、
位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、
前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記情報端末に送信する送信部と、
を備える、防災支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災支援装置、防災支援方法、プログラムおよび防災支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震および津波などの災害による被害を回避するための方法が検討されている。例えば、以下の特許文献1には、自治体が管理する防災情報サーバから住民が所持する情報端末に災害のフェーズ情報を配信する方法が開示されている。住民が所持する情報端末は、配信されたフェーズ情報、および災害のフェーズ毎に策定された住民個人の個人別災害行動計画(以下、マイタイムラインとも称する。)に基づいて、フェーズ情報に対応するマイタイムラインを表示する。これにより、住民である情報端末のユーザは被害回避に向けて自分がとるべき行動を確認し、実行に移し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、平時においてユーザの防災意識・行動が十分に身に付いていない場合には、災害発生時にマイタイムラインに沿った行動を着実に実施することが難しいという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ユーザが防災意識または防災行動を身に付けることを支援することが可能な、新規かつ改良された防災支援装置、防災支援方法、プログラムおよび防災支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ユーザの位置データを受信する受信部と、位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する送信部と、を備える、防災支援装置が提供される。
【0007】
前記防災に関するメッセージは、防災に関する問いを示すメッセージを含んでもよい。
【0008】
前記防災支援装置は、前記防災に関する問いに対する前記ユーザからの回答に基づいて前記ユーザについての指標を算出する指標算出部をさらに備え、前記1または2以上の規則のうちの少なくともいずれかの規則は、前記指標に関する条件をさらに含んでもよい。
【0009】
前記1または2以上の規則のうちの少なくともいずれかの規則は、現在の気象に関する条件をさらに含んでもよい。
【0010】
前記1または2以上の規則は、前記防災に関するメッセージの送信頻度を示す情報をさらに含み、前記送信部は、前記送信頻度を示す情報に従った頻度で前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信してもよい。
【0011】
前記1または2以上の規則は、実際の災害の発生時または仮想的な災害に対する訓練時に適用される非常時用規則を含み、前記非常時用規則は、前記実際の災害または前記仮想的な災害におけるフェーズに関する条件をさらに含み、前記非常時用規則に含まれる前記防災に関するメッセージは、前記ユーザの行動を誘導する誘導メッセージであってもよい。
【0012】
前記指標算出部は、前記誘導メッセージが前記情報端末に送信された場合には、当該情報端末を利用するユーザの行動に基づいて当該ユーザについての前記指標を算出してもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ユーザの位置データを受信することと、位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則のうちのいずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信することと、を含む、防災支援方法が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、ユーザの位置データを受信する受信部と、位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記ユーザが利用する情報端末に送信する送信部と、として機能させるための、プログラムが提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ユーザが利用する情報端末、および防災支援装置を有する防災支援システムであって、前記防災支援装置は、前記情報端末から前記ユーザの位置データを受信する受信部と、位置に関する条件、および防災に関するメッセージを含む1または2以上の規則を記憶する記憶部と、前記受信部により受信された前記ユーザの位置データが、いずれかの規則に含まれる前記位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる前記防災に関するメッセージを前記情報端末に送信する送信部と、を備える、防災支援システムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、ユーザが防災意識または防災行動を身に付けることを支援することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による防災支援システムの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の構成を示す説明図である。
【
図3】記憶部240が記憶するデータの具体例を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の動作を示すフローチャートである。
【
図7】防災管理サーバ20のハードウェア構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
【0020】
<防災支援システムの構成>
本発明の一実施形態は、防災を支援するための防災支援システムに関する。近年では、防災のためにハザードマップが整備され、また、マイタイムラインの作成も推奨されている。ハザードマップは、自然災害の被害想定区域、避難経路、避難場所などを示す情報である。マイタイムラインは、予想される災害に対する個人の防災行動を時系列に定義した情報である。本発明の一実施形態による防災支援システムは、これらハザードマップおよびマイタイムラインなども活用しながら、ユーザが防災意識または防災行動を身に付けることを支援する。以下、
図1を参照し、このような本発明の一実施形態による防災支援システムの構成を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による防災支援システムの構成を示す説明図である。
図1に示したように、本発明の一実施形態による防災支援システムは、複数の情報端末10と、防災管理サーバ20とを有する。複数の情報端末10および防災管理サーバ20は、ネットワーク12を介して接続されている。ネットワーク12は、ネットワーク12に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。例えば、ネットワーク12は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク12は、IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0022】
(情報端末10)
情報端末10は、防災支援システムによる支援の対象となる地域の住民(以下、ユーザと称する場合もある。)が利用する携帯型の情報処理装置である。情報端末10は、情報端末10の位置を推定する位置推定機能、防災管理サーバ20と通信する通信機能、表示画面を表示する表示機能、およびユーザによる操作を受け付ける操作検出機能、などを有する。位置推定機能は、例えばGPS(Global Positioning System)により実現され得る。通信機能は、セルラー網を利用する移動通信機能、または無線LAN通信機能などにより実現され得る。なお、情報端末10は音声の出力機能を有してもよく、この場合、情報端末10は後述する支援データを音声により出力してもよい。
【0023】
(防災管理サーバ20)
防災管理サーバ20は、ユーザが利用する情報端末10に防災に関する支援データを提供する防災支援装置の一例である。例えば、防災管理サーバ20は、位置に関する条件および支援データを含む1または2以上の規則を記憶しており、ユーザの位置データがいずれかの規則に含まれる位置に関する条件を満たす場合に、当該規則に含まれる支援データを当該ユーザが利用する情報端末10に送信する。以下、このような防災管理サーバ20の構成および動作を順次詳細に説明する。
【0024】
<防災管理サーバの構成>
図2は、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の構成を示す説明図である。
図2に示したように、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20は、通信部220、防災データ取得部230、記憶部240、支援データ提供部250および指標算出部260を有する。
【0025】
(通信部220)
通信部220は、情報端末10からデータを受信する受信部、および情報端末10にデータを送信する送信部としての機能を有する。例えば、通信部220は、情報端末10から情報端末10の位置データ、および後述する支援データに対する回答データまたは反応データなどを受信する。また、通信部220は、支援データ提供部250から供給された支援データを情報端末10に送信する。
【0026】
また、通信部220は、ハザードマップを管理するサーバ、災害情報を管理するサーバおよび気象情報を管理するサーバなどと通信し、各サーバから、ハザードマップ、災害情報および気象情報などを受信する。災害情報は、自治体などが発表する災害の予想と実況の情報である。気象情報は、気象庁などが発表する気象の予想と実況の情報である。
【0027】
(防災データ取得部230)
防災データ取得部230は、防災データを取得し、防災データを記憶部240に格納する。防災データとしては、上述したハザードマップ、災害情報および気象情報に加え、防災知識、ユーザごとのマイタイムラインが挙げられる。防災知識は、災害または防災に関する教育情報(知識)である。ユーザごとのマイタイムラインは、ユーザが自治体のシステムを操作することで内容が更新される情報である。防災データ取得部230は、ユーザごとのマイタイムラインを自治体のサーバと同期することで通信部220を介して取得し、ユーザごとのマイタイムラインを記憶部240に格納する。
【0028】
(記憶部240)
記憶部240は、防災管理サーバ20の動作に用いられる多様なデータを記憶する。以下、
図3を参照して、記憶部240が記憶するデータの具体例を説明する。
【0029】
図3は、記憶部240が記憶するデータの具体例を示す説明図である。
図3に示したように、記憶部240は、防災データ、平時用規則、非常時用規則およびユーザごとの行動変容指標を記憶する。防災データの内容は上述した通りである。
【0030】
平時用規則は、平時に適用される規則であり、幾つかの条件、支援データおよび頻度情報を含む。非常時用規則は、災害発生時または訓練時などの非常時に適用される規則であり、幾つかの条件および支援データを含む。これら平時用規則および非常時用規則は、支援データ提供部250においてユーザに提供する支援データを決定するために用いられる。行動変容指標は、ユーザについての指標の一例であり、ユーザの防災行動に対する行動変容の度合いを表す。以下、
図4および
図5を参照し、平時用規則および非常時用規則の具体例を説明する。
【0031】
図4は、平時用規則の具体例を示す説明図である。
図4に示したように、平時用規則は、位置に関する条件、気象条件、行動変容指標に関する条件、平時の支援データおよび頻度情報を含む。支援データは、クイズ形式の問いを示すメッセージ、または情報提示形式のメッセージであってもよい。
【0032】
例えば、
図4における規則#1は、位置に関する条件として「浸水想定が0.5m以上の場所」という条件、気象条件として「雨」という条件、支援データとして「この付近の浸水の想定は何メートルでしょうか?」という問いを示すメッセージ、頻度情報として「中」を含む。
【0033】
他の規則#2は、位置に関する条件として「自宅付近」という条件、気象条件として「雨」という条件、行動変容指標に関する条件として「高」という条件、支援データとして「この周辺で大雨が長引く場合、避難場所はどこが適切でしょうか?」という問いを示すメッセージ、頻度情報として「低」を含む。また、規則#3は、位置に関する条件として「自宅付近」という条件、行動変容指標に関する条件として「低」という条件、支援データとして「この周辺の避難場所は○○です」というメッセージ、頻度情報として「高」を含む。このように、行動変容指標が低い場合には、防災の基本的な考え方や行動を示す支援データが繰り返し提供され、行動変容指標が高い場合には、個別のケースでの具体的な行動を示す支援データが提供されるように規則を用意することで、行動変容の度合いに応じた適切な行動変容支援が可能である。
【0034】
図5は、非常時用規則の具体例を示す説明図である。
図5に示したように、非常時用規則は、位置に関する条件、フェーズに関する条件、行動変容指標に関する条件および災害時または訓練時の支援データを含む。支援データは、ユーザの行動を誘導する誘導メッセージであってもよい。
【0035】
例えば、
図5における規則#1は、位置に関する条件として「自宅」という条件、フェーズに関する条件として「氾濫注意報発表時」という条件、支援データとして「母の避難準備を始めてください。常備薬を忘れずに」という誘導メッセージを含む。
【0036】
他の規則#2は、位置に関する条件として「自宅以外」という条件、フェーズに関する条件として「氾濫注意報発表時」という条件、支援データとして「すぐに自宅に戻り、母の避難準備を始めてください」という誘導メッセージを含む。規則#3は、位置に関する条件として「自宅」という条件、フェーズに関する条件として「同図#2の発生時刻以降」という条件、行動変容指標に関する条件として「低」という条件、支援データとして「母の避難準備を始めてください。常備薬を忘れずに」という誘導メッセージを含む。規則#3のように、行動変容指標が低い場合には、確実な行動を促すために避難行動をわかりやすく繰り返し提供する。
【0037】
なお、各支援データの内容は、マイタイムラインの情報に基づいて設定される。
【0038】
(支援データ提供部250)
支援データ提供部250は、ユーザに提供する支援データを決定する。支援データ提供部250は、通信部220を介して情報端末10の位置データを取得し、記憶部240に記憶されている気象情報および災害情報などを参照し、平時用規則および非常時用規則のうちで条件が満たされる規則があるか否かを判断する。そして、支援データ提供部250は、条件が満たされる規則がある場合、当該規則に含まれる支援データをユーザに提供することを決定し、当該支援データを通信部220に供給する。
【0039】
例えば、平時において、ユーザが自宅付近に存在し、気象が雨であり、当該ユーザの行動変容指標が「高」である場合、
図4に示した平時の規則#2の条件が満たされる。この場合、支援データ提供部250は、当該規則#2に含まれる「この周辺で大雨が長引く場合、避難場所はどこが適切でしょうか?」という支援データを通信部220に供給し、通信部220は、当該支援データをユーザが利用する情報端末10に送信する。これにより、ユーザが利用する情報端末10に「この周辺で大雨が長引く場合、避難場所はどこが適切でしょうか?」という支援データが表示され、ユーザが当該支援データを確認することができる。
【0040】
(指標算出部260)
指標算出部260は、支援データの提供を受けたユーザの反応に基づいて、当該ユーザの行動変容指標を算出または更新する。平時にクイズ形式の支援データがユーザに提供された場合には、ユーザの反応として当該支援データに対する回答が用いられ得る。具体的には、指標算出部260は、ユーザからのこれまでの回答の正答率に基づいてユーザの行動変容指標を更新してもよい。例えば、指標算出部260は、行動変容指標を1~10の整数で表現し、クイズ正答率が8割以上の時に行動変容指標を1加算し、3割以下の時に行動変容指標を1減算する。なお、利用者が本システムを利用開始した際には、指標算出部260は行動変容指標を1とする。
【0041】
また、非常時に支援データとして誘導メッセージがユーザに提供された場合には、ユーザの反応としてユーザの時刻ごとの位置データである行動データが用いられ得る。具体的には、指標算出部260は、ユーザの行動データと誘導メッセージが示す行動とがどれだけ合致しているかを評価することにより、ユーザの行動変容指標を更新してもよい。例えば、指標算出部260は、現在の行動変容指標と過去24時間の行動評価値によりユーザの行動変容指標を更新する。行動評価値は、支援データが示す支援データの内容(時刻毎の位置情報)と実際の行動データ(時刻毎の位置情報)との一致度を10点満点で表現する指標である。そして、指標算出部260は、行動評価値が8点以上の時に行動変容指標を1加算し、3点以下の時に行動変容指標を1減算する。例えば、
図5に示した規則#2の「すぐに自宅に戻り、母の避難準備を始めてください」という支援データが提供された場合、指標算出部260は、実際の行動データにおける位置データが自宅への移動を示しているか、すぐに行動しているか、という観点で行動評価値を計算する。
【0042】
<防災管理サーバの動作>
以上、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の構成を説明した。続いて、
図6を参照し、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の動作を整理する。
【0043】
図6は、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20の動作を示すフローチャートである。
図6に示したように、まず、防災データ取得部230が各種防災データを取得し、防災データを記憶部240に格納する(S1)。
【0044】
そして、支援データ提供部250は、記憶部240に格納された防災データに基づいて、現在が平時であるか、または、非常時(災害時または訓練時)であるかを判断する(S2)。なお、自治体等が訓練を実施する場合、訓練を示す識別子を含む災害情報および気象情報が提供される。支援データ提供部250は、災害情報および訓練を示す識別子の有無などに基づき、上記の現在が平時であるか、または、非常時であるかの判断を行い得る。現在が平時である場合にはS3~S6の処理が行われ、現在が非常時である場合にはS7~S10の処理が行われる。
【0045】
具体的には、平時においては、支援データ提供部250は、通信部220を介して情報端末10から情報端末10の位置データを取得し、記憶部240から気象情報を取得する(S3)。そして、支援データ提供部250は、記憶部240に格納されている平時用規則を参照し、条件が満たされる平時用規則があるか否かを判断する(S4)。より具体的には、支援データ提供部250は、情報端末10の位置データが位置データに関する条件を満たし、気象情報が気象条件を満たし、情報端末10のユーザの行動変容指標が行動変容指標に関する条件を満たす平時用規則があるか否かを判断する。
【0046】
そのような平時用規則がある場合(S4/Yes)、支援データ提供部250は、当該平時用規則に含まれる支援データを情報端末10に通信部220を介して提供する(S5)。一方、そのような平時用規則がない場合(S4/No)、S1からの処理が繰り返される。
【0047】
情報端末10にクイズ形式の支援データが提供された後、情報端末10から支援データに対する回答が受信された場合、指標算出部260は、例えば当該回答を含むこれまでの回答の正答率に基づいて情報端末10のユーザの行動変容指標を更新する(S6)。その後、S1からの処理が繰り返される。
【0048】
一方、非常時においては、支援データ提供部250は、通信部220を介して情報端末10から情報端末10の位置データを取得し、記憶部240に格納されている災害情報から災害のフェーズ情報を取得する(S7)。フェーズ情報は、警報または勧告などの発表状況、または警報または勧告などが発表されてからの時間経過を示す情報であってもよい。
【0049】
そして、支援データ提供部250は、記憶部240に格納されている非常時用規則を参照し、条件が満たされる非常時用規則があるか否かを判断する(S8)。そのような非常時用規則がある場合(S8/Yes)、支援データ提供部250は、当該非常時用規則に含まれる支援データを情報端末10に通信部220を介して提供する(S9)。一方、そのような非常時用規則がない場合(S8/No)、S1からの処理が繰り返される。
【0050】
そして、情報端末10に支援データとして誘導メッセージがユーザに提供された後、指標算出部260は、ユーザの行動データと誘導メッセージが示す行動とがどれだけ合致しているかを評価することにより、ユーザの行動変容指標を更新する(S10)。その後、S1からの処理が繰り返される。
【0051】
<作用効果>
以上説明した本発明の一実施形態によれば、多様な作用効果が得られる。例えば、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20は、平時において、ユーザが防災上の重要な場所に接近した場合、および特定の気象条件に遭遇した場合などに、実際に災害が発生した際にとるべき行動に関連する支援データをユーザに提供する。このため、ユーザが防災意識および行動を身に付けやすく、さらに、いざというときの防災の行動変容が起きやすくなる。
【0052】
また、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20は、災害時および訓練時において、ユーザの位置データおよびフェーズなどに応じてユーザの行動を誘導する支援データを提供する。このため、ユーザが適切なタイミングで緊急避難行動を着実に実施することを支援することが可能である。
【0053】
また、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20は、ユーザの行動変容指標に応じて異なる支援データをユーザに提供し得る。このため、例えば、防災意識の低いユーザには防災に関する基本的な考え方や行動の情報を提供し、防災意識の高いユーザには災害発生時の様々なケースに対する具体的な対処行動の情報を提供するなど、ユーザごとの防災行動に対する習熟度に応じて適切な支援を行うことが可能である。
【0054】
また、本発明の一実施形態による防災管理サーバ20は、上記の行動変容指標を、クイズ形式の支援データに対するユーザからの回答、または支援データの提供後のユーザの行動データに基づいて更新する。従って、防災管理サーバ20は、妥当性のある行動変容指標を得ることができ、結果、支援データを適切に提供することが可能となる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態を説明した。以下では、上述した実施形態の幾つかの変形例を説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で上述した実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで上述した実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、上述した実施形態の構成に代えて適用されてもよいし、上述した実施形態の構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0056】
例えば、上記では防災データ取得部230が取得する防災データとしてハザードマップ、防災知識、マイタイムライン、災害情報および気象情報などを説明したが、防災データはこれらに限定されない。利用者の位置に応じて防災の行動変容を促すために適した情報が含まれる他のデータがあれば、当該データが防災データとして用いられてもよい。
【0057】
また、上記では平時にクイズ形式の支援データが提供される例を説明したが、支援データの形式は、支援データに対するユーザの反応を確認できる形式であればよく、クイズ形式に限られない。例えば、支援データを、情報メッセージおよび当該情報メッセージの理解度を問う質問としてもよい。この場合、指標算出部260は、ユーザが情報端末10に入力した理解度に基づいてユーザの行動変容指標を更新することが可能である。
【0058】
また、指標算出部260は、支援データが情報端末10に提供されてからユーザが支援データを閲覧するまでの時間、またはユーザが支援データを閲覧している時間などに基づいて、支援データに対するユーザの理解度を計算し、当該理解度に基づいて行動変容指標を更新してもよい。例えば、支援データが情報端末10に提供されてからユーザが支援データを閲覧するまでの時間が短いほど理解度が高く、ユーザが支援データを閲覧している時間が長いほど理解度が高いという解釈で理解度の計算が行われてもよい。なお、情報端末10が理解度の計算を行い、情報端末10が防災管理サーバ20に理解度を示す情報を送信してもよい。
【0059】
また、上記では防災データ取得部230、支援データ提供部250および指標算出部260などが防災管理サーバ20に実装される例を説明したが、防災データ取得部230、支援データ提供部250および指標算出部260の一部は情報端末10に実装されてもよい。例えば、支援データ提供部250および指標算出部260に対応する機能は情報端末10に実装されてもよい。
【0060】
<ハードウェア構成>
以上、本発明の各実施形態を説明した。上述した支援データの提供および行動変容指標の算出などの情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明する防災管理サーバ20のハードウェアとの協働により実現される。
【0061】
図7は、指標算出部260防災管理サーバ20のハードウェア構成を示したブロック図である。防災管理サーバ20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、を備える。また、防災管理サーバ20は、ブリッジ205と、外部バス206と、インターフェース207と、入力装置208と、表示装置209と、音声出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、ネットワークインターフェース215とを備える。
【0062】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って防災管理サーバ20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。これらCPU201、ROM202およびRAM203とソフトウェアとの協働により、上述した防災データ取得部230、支援データ提供部250および指標算出部260などの機能が実現され得る。
【0063】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0064】
入力装置208は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、センサー、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。防災管理サーバ20のユーザは、該入力装置208を操作することにより、防災管理サーバ20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0065】
表示装置209は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、プロジェクター装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。また、音声出力装置210は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。
【0066】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる防災管理サーバ20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid Strage Drive)、あるいは同等の機能を有するメモリ等で構成される。このストレージ装置211は、ストレージを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0067】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、防災管理サーバ20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203またはストレージ装置211に出力する。また、ドライブ212は、リムーバブル記憶媒体24に情報を書き込むこともできる。
【0068】
ネットワークインターフェース215は、例えば、ネットワーク12に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。また、ネットワークインターフェース215は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0069】
なお、上述した防災管理サーバ20のハードウェア構成は情報端末10にも適用可能である。
【0070】
<補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、本明細書の防災管理サーバ20の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、防災管理サーバ20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0072】
また、防災管理サーバ20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアに、上述した防災管理サーバ20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0073】
10 情報端末
20 防災管理サーバ
220 通信部
230 防災データ取得部
240 記憶部
250 支援データ提供部
260 指標算出部