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特開2022-175576食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175576
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082102
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】504225356
【氏名又は名称】プライフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】市来 清臣
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA01
4B011FA03
4B011FA05
(57)【要約】
【課題】 食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を確実に分離できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて胸骨稜に沿って筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断し、次いで鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せて当該胸肉から鎖骨を分離する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて胸骨稜に沿って筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断し、次いで鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せて当該胸肉から鎖骨を分離することを特徴とする食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法。
【請求項2】
食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉とササミに且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って筋入することを特徴とする請求項1に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法。
【請求項3】
食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向に且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、一対の回転丸刃を用いて且つ鎖骨を胸骨から離隔させる方向へ回転丸刃を回転させて、胸骨稜に沿って胸肉に筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断することを特徴とする請求項1又は2に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法。
【請求項4】
食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向へ且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、鎖骨基部で鎖骨周囲の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せることを特徴とする請求項3に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法。
【請求項5】
一対の第1ナイフを用いて鎖骨の体幅方向外側の胸肉を体厚方向へ筋入し、一対の第2ナイフを用いて鎖骨の体厚方向外側の胸肉を体幅中心線方向へ筋入し、押圧部材を筋入部に係合させて鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せることを特徴とする請求項4に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法。
【請求項6】
食鳥屠体上半部を係止すると共に頸椎を先頭にして胸骨稜長手延在方向へ食鳥屠体上半部を搬送する搬送装置と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に配設され、食鳥屠体上半部搬送方向に平行に延在し、胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に、且つ胸骨稜に近接する部位に胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて筋入する二枚刃の第1刃と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に且つ第1刃の下流に配設され、食鳥屠体搬送方向に直交して延在し鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に筋入する第2刃と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に且つ第2刃の下流に配設され、鎖骨周囲の前記一対の胸肉の筋入部に係合し当該筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の戦記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧する押圧部材と、を備えることを特徴とする食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項7】
第1刃は胸肉とササミに筋入れすることを特徴とする請求項6に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項8】
第1刃は回転丸刃であり、鎖骨を胸骨から離隔させる方向へ回転しつつ移動する食鳥屠体に係合して筋入することを特徴とする請求項6又は7に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項9】
第2刃は、鎖骨の体幅方向外側の胸肉を体厚方向に筋入する一対の第1ナイフと、鎖骨の体厚方向外側の胸肉を体幅中心線方向に筋入する一対の第2ナイフとを備え、移動する食鳥屠体の胸肉に係合して筋入し、押圧部材は移動する食鳥屠体の鎖骨周囲の胸肉の筋入部に係合し当該筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項10】
食鳥屠体の鎖骨基部が第2刃に接近したことを検知する検知装置を備えることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項11】
食鳥屠体の鎖骨基部が押圧部材に接近したことを検知する検知装置を備えることを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【請求項12】
第1刃と第2刃と押圧部材と検知装置の作動を制御すると共に、第1刃と第2刃と押圧部材の作動中食鳥屠体の移動を継続させる制御装置を備えることを特徴とする請求項11に記載の食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、食鳥屠体上半部の鎖骨外側の胸肉に切り込みを入れ、次いで胸肉を鎖骨に沿って胸骨端軟骨部位の方向へ押して、胸肉から鎖骨を分離し露出させることを特徴とする食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-15000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法及び装置には、左右一対の鎖骨直線部が先端交差部で繋がったまま胸肉を鎖骨に沿って押すので、胸肉と鎖骨との連結が強く、胸肉から鎖骨を分離できないという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を確実に分離できる方法及び装置を提供することを目的とする。
尚以下の記述において、頸椎を紙面上方へ差し向けて食鳥屠体上半部を胸側から見た図において左右方向を体幅方向と呼び、紙面に垂直方向を体厚方向と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて胸骨稜に沿って筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断し、次いで鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せて当該胸肉から鎖骨を分離することを特徴とする食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法を提供する。
本発明においては、食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて胸骨稜に沿って筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断して、胸骨稜を間に挟んで延在する一対の直線部と先端交差部とに鎖骨を3分割し、次いで鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せるので、当該胸肉から前記一対の鎖骨直線部を確実に分離することができる。
先端交差部を有さない単なる直線部材である鎖骨直線部は、胸肉を片寄せることにより胸肉から確実に分離される。
鎖骨先端交差部は胸骨稜上に残る狭幅の胸肉の頸椎側端部に連結しており、当該狭幅の胸肉は胸骨稜に沿った筋入によって胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉から分離されているので、鎖骨周囲の筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧する際に支障にならず、当該胸肉に付着することも無い。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部の胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉とササミに且つ胸骨稜に近接する部位に、胸骨稜に沿って筋入する。
胸肉の体厚方向内側にあるササミまで到達するように深く筋入することにより、鎖骨先端交差部で鎖骨を確実に切断することができる。
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向に且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、一対の回転丸刃を用いて且つ鎖骨を胸骨から離隔させる方向へ回転丸刃を回転させて、胸骨稜に沿って胸肉に筋入すると共に鎖骨先端交差部で鎖骨を切断する。
食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向に且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、一対の回転丸刃を用いて筋入することにより、作業効率が向上する。また鎖骨を胸骨から離隔させる方向へ回転丸刃を回転させることにより、回転丸刃に対する鎖骨の抵抗を増加させて鎖骨の切断を確実にする。
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向へ且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、鎖骨基部で鎖骨周囲の胸肉に胸骨稜長手延在方向に直交して筋入し、次いで鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せる。
食鳥屠体上半部を胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、鎖骨周囲の胸肉に筋入し、胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて片寄せることにより作業効率が向上する。
本発明の好ましい態様においては、一対の第1ナイフを用いて鎖骨の体幅方向外側の胸肉を体厚方向に筋入し、一対の第2ナイフを用いて鎖骨の体厚方向外側の胸肉を体幅中心線方向に筋入し、押圧部材を筋入部に係合させて鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧し片寄せる。
食鳥屠体上半部を胸骨稜長手延在方向へ且つ胸骨端軟骨部位から頸椎へ向かう方向へ移動させつつ、鎖骨周囲の胸肉を胸骨稜長手延在方向に直交して筋入するには、高速で筋入する必要がある。ナイフは軽量なので高速作動に適している。
【0007】
本発明においては、食鳥屠体上半部を係止すると共に頸椎を先頭にして胸骨稜長手延在方向へ食鳥屠体上半部を搬送する搬送装置と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に配設され、食鳥屠体上半部搬送方向に平行に延在し、胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉に、且つ胸骨稜に近接する部位に胸骨稜に沿って頸椎側から胸骨端軟骨部位へ向けて筋入する二枚刃の第1刃と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に且つ第1刃の下流に配設され、食鳥屠体搬送方向に直交して延在し鎖骨基部で鎖骨周囲の前記一対の胸肉に筋入する第2刃と、食鳥屠体上半部搬送経路の途上に且つ第2刃の下流に配設され、鎖骨周囲の前記一対の胸肉の筋入部に係合し当該筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧する押圧部材と、を備えることを特徴とする食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置を提供する。
搬送装置と、第1刃と、第2刃と、押圧部材を備えた装置を用いて、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を確実に分離できる。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、第1刃は胸肉とササミに筋入れする。
本発明の好ましい態様においては、第1刃は回転丸刃であり、鎖骨を胸骨から離隔させる方向へ回転しつつ移動する食鳥屠体に係合して筋入する。
本発明の好ましい態様においては、第2刃は、鎖骨の体幅方向外側の胸肉を体厚方向に筋入する一対の第1ナイフと、鎖骨の体厚方向外側の胸肉を体幅中心線方向に筋入する一対の第2ナイフとを備え、移動する食鳥屠体の胸肉に係合して筋入し、押圧部材は移動する食鳥屠体の鎖骨周囲の筋入部に係合し当該筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の胸肉を胸骨端軟骨部位へ向けて押圧する。
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置は、食鳥屠体の鎖骨基部が第2刃に接近したことを検知する検知装置を備える。
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置は、食鳥屠体の鎖骨基部が押圧部材に接近したことを検知する検知装置を備える。
本発明の好ましい態様においては、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する装置は、第1刃と第2刃と押圧部材と検知装置の作動を制御すると共に、第1刃と第2刃と押圧部材の作動中食鳥屠体の移動を継続させる制御装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、回転丸刃による胸肉の筋入と鎖骨の切断とを示す図である。食鳥屠体上半部は側面図である。
図2】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、回転丸刃による鎖骨の切断を示す図である。(a)は食鳥屠体上半部を胸側から見た正面図であり、(b)は鎖骨の正面図である。
図3】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、鎖骨基部の接近を検知する装置の外観斜視図である。
図4】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、鎖骨基部の接近を検知する装置の外観斜視図である。
図5】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、第1ナイフによる胸肉の筋入の様子を示す第1ナイフの外観斜視図である。
図6】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、第1ナイフによる胸肉の筋入の様子を示す第1ナイフの外観斜視図である。
図7】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、第2ナイフによる胸肉の筋入の様子を示す第2ナイフの外観斜視図である。
図8】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、第2ナイフによる胸肉の筋入の様子を示す第2ナイフの外観斜視図である。
図9】第1ナイフと第2ナイフによる胸肉の筋入を模式的に示す図である。
図10】第1ナイフと第2ナイフによる胸肉の筋入を模式的に示す図である。(a)は食鳥屠体上半部の正面図であり、(b)食鳥屠体上半部の側面図である。
図11】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、押圧板による胸肉の片寄せの様子を示す押圧板の外観斜視図である。
図12】本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を示す図であり、押圧板による胸肉の片寄せの様子を示す押圧板の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例に係る食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置を説明する。
図1、2に示すように、ガイドレール1aとガイドレール1aに係合して黒太矢印方向へ移動する保持具1bとによって、保持具1bに係止した食鳥屠体上半部100を、頸椎100aを先頭にして胸骨稜100b長手延在方向へ搬送する搬送装置1が形成されている。保持具1bの移動は図示しない制御装置によって制御される。
図1、2に示すように、食鳥屠体上半部100の搬送経路の途上に、前記制御装置よって回転駆動される二枚刃の回転丸刃2が配設されている。回転丸刃2は黒太矢印で示す食鳥屠体上半部100の送方向に平行に延在している。回転丸刃2は、黒太矢印の方向へ移動する食鳥屠体上半部100の、胸骨稜100bを間に挟んで対峙する一対の胸肉100cに且つ胸骨稜100bに近接する部位に係合して、胸骨稜100bに沿って頸椎100a側から胸骨端軟骨部位100dへ向けて胸肉100cに筋入する。胸肉100cに筋入する際に、鎖骨100eが、胸骨稜100bを間に挟んで延在する一対の直線部100eと先端交差部100eとに三分割される。
回転丸刃2は、胸肉100cのみならず胸肉100cの体厚方向内側にある図示しないササミにも筋入する。筋入深さが大なので、鎖骨100eが確実に三分割される。
食鳥屠体上半部100を胸骨稜長手延在方向に且つ胸骨端軟骨部位100dから頸椎100aへ向かう方向へ移動させつつ、一対の回転丸刃2を用いて筋入することにより、作業効率が向上する。
回転丸刃2は、図1に白抜矢印で示す方向に回転している。このため、図1、2から分かるように、回転丸刃2に係合した鎖骨100eは、胸骨100fから離隔する方向へ、すなわち体厚方向外側へ付勢される。この結果、回転丸刃2に対する鎖骨100eの抵抗が増加し、鎖骨100eは確実に切断される。
【0011】
図3、4に示すように、黒太矢印で示す食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して回転丸刃2の下流に、検知装置3が配設されている。検知装置3の回転レバー3aが、図3、4で黒太矢印の方向へ移動する食鳥屠体上半部100の肩部100gに当接して図4に白抜矢印で示す方向へ回転し、回転レバー3aの回転を近接センサ3bが検知し、検知信号が制御装置に送信される。
図5、6に示すように、黒太矢印で示す食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して検知装置3の直近下流に、食鳥屠体上半部100の胸骨稜100bを間に挟んで対峙する一対の第1ナイフ4a、4bが配設されている。第1ナイフ4a、4bは食鳥屠体100の搬送方向に直交して延在している。第1ナイフ4a、4bはエアシリンダ4a、4bによって進退駆動される。
検知装置3の検知信号を受信した制御装置は、食鳥屠体上半部100の鎖骨100eの基部が第1ナイフ4a、4bに接近したことを認識し、直ちに第1ナイフ4a、4bを図5に白抜矢印で示す方向へ駆動して進出させ、鎖骨100eの基部において、胸骨稜100bの長手延在方向に直交して、一対の鎖骨直線部100eの体幅方向外側の胸肉100cを体厚方向に筋入する。制御装置は、筋入完了後直ちに第1ナイフ4a、4bを図6に白抜矢印で示す方向へ駆動して退出させる。
第1ナイフ4a、4bの進退は高速で行われるので、黒太矢印の方向へ移動している食鳥屠体100の胸骨稜の長手延在方向に直交して支障なく筋入することができる。
第1ナイフ4a、4bは構成が簡単で軽量なので、高速作動に適している。
食鳥屠体上半部100を黒太矢印の方向へ移動させつつ筋入することにより作業効率が向上する。
【0012】
図3、4に示すように、食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して第1ナイフ4a、4bの下流に、検知装置5が配設されている。検知装置5の回転レバー5aが、図3、4で黒太矢印の方向へ移動する食鳥屠体上半部100の肩部100gに当接して図4に白抜矢印で示す方向へ回転し、回転レバー5aの回転を近接センサ5bが検知し、検知信号が制御装置に送信される。
図7、8に示すように、食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して検知装置5の直近下流に、食鳥屠体上半部100の胸骨稜100bを間に挟んで対峙する一対の第2ナイフ6a、6bが配設されている。第2ナイフ6a、6bは食鳥屠体100の搬送方向に直交して延在している。第2ナイフ6a、6bはエアシリンダ6a、6bによって進退駆動される。
検知装置5の検知信号を受信した制御装置は、食鳥屠体上半部100の鎖骨基部が第2ナイフ6a、6bに接近したことを認識し、直ちに第2ナイフ6a、6bを図7に白抜矢印で示す方向へ駆動して進出させ、鎖骨100eの基部において、胸骨稜100bの長手延在方向に直交して、一対の鎖骨直線部100eの体厚方向外側の胸肉100cを体幅中心線X方向に筋入する。制御装置は、筋入完了後直ちに第2ナイフ6a、6bを図8に白抜矢印で示す方向へ駆動して退出させる。
第2ナイフ6a、6bの進退は高速で行われるので、黒太矢印の方向へ移動している食鳥屠体100の胸骨稜の長手延在方向に直交して支障なく筋入することができる。
第2ナイフ6a、6bは構成が簡単で軽量なので、高速作動に適している。
食鳥屠体上半部100を黒太矢印の方向へ移動させつつ筋入することにより作業効率が向上する。
【0013】
第1ナイフ4a、4bによる筋入と、第2ナイフ6a、6bによる筋入と、鎖骨100eとの関係を、図9、10に模式的に示す。
第1ナイフ4a、4bにより、一対の鎖骨直線部100eの体幅方向外側の胸肉が、鎖骨100eの基部において、胸骨稜100bの長手延在方向に直交して矢印aの方向、すなわち体厚方向へ筋入され、第2ナイフ6a、6bにより、一対の鎖骨直線部100eの体厚方向外側の胸肉が、鎖骨100eの基部において、胸骨稜100bの長手延在方向に直交して体幅中心線X方向へ筋入される。この結果、一対の鎖骨直線部100e周囲の胸肉が、鎖骨100eの基部において胸骨稜100bの長手延在方向に直交して、門形断面を形成するように筋入される。
【0014】
図3、4に示すように、食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して第2ナイフ6a、6bの下流に、検知装置7が配設されている。検知装置7の回転レバー7aが、図3、4で黒太矢印の方向へ移動する食鳥屠体上半部100の肩部100gに当接して図4に白抜矢印で示す方向へ回転し、回転レバー7aの回転を近接センサ7bが検知し、検知信号が制御装置に送信される。
図11、12に示すように、食鳥屠体上半部100の搬送方向に関して検知装置7の直近下流に、押圧板8aが配設されている。押圧板8aは食鳥屠体100の搬送方向に直交して延在している。押圧板8aは、食鳥屠体上半部100の胸骨稜100bを間に挟んで二股に分かれている。二股部の切欠は、鎖骨直線部100eに係合することなく胸肉100cに係合するように形成されている。押圧板8aはエアシリンダ8bによって進退駆動される。
検知装置7の検知信号を受信した制御装置は、食鳥屠体上半部100の鎖骨基部が押圧板8aに接近したことを認識し、直ちに押圧板8aを図11に白抜矢印で示す方向へ駆動して進出させる。鎖骨100eの基部において、第1ナイフ4a、4bと第2ナイフ6a、6bとによって形成された、胸骨稜100bの長手延在方向に直交する胸肉100cの筋入部に押圧板8aが進入する。押圧板8aの進出は高速で行われるので、黒太矢印の方向へ移動している食鳥屠体100の胸肉100cの筋入部に、押圧板8aは支障なく進入することができる。
食鳥屠体100が図11に黒太矢印で示す方向へ移動する。図12に示すように、押圧板8aに当接した鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の一対の胸肉100cが胸骨端軟骨部位100dへ向けて押圧され片寄せられる。この結果、鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位側の一対の胸肉100cから鎖骨直線部100eが分離される。
先端交差部100eを有さない単なる直線部材である鎖骨直線部100eは胸肉100cを片寄せることにより胸肉100cから確実に分離される。
図12に示すように、鎖骨先端交差部100eは胸骨稜100b上に残る狭幅の胸肉の頸椎側端部に連結しており、当該狭幅の胸肉は胸骨稜100bに沿った筋入によって胸骨稜を間に挟んで対峙する一対の胸肉100cから分離されているので、鎖骨周囲の筋入部よりも胸骨端軟骨部位側の前記一対の胸肉100cを胸骨端軟骨部位へ向けて押圧して片寄せる際に支障にならず、当該胸肉に付着することもない。
制御装置は、胸肉100cの片寄せ完了後直ちに押圧板8aを図12に黒太矢印で示す方向へ駆動して退出させる。押圧板8aの退出は高速で行われるので、移動している食鳥屠体100から支障なく退出することができる。
食鳥屠体上半部100を胸骨端軟骨部位100dから頸椎100aへ向かう方向へ移動させつつ、鎖骨周囲の胸肉100cに筋入し、胸肉100cを胸骨端軟骨部位側へ片寄せることにより作業効率が向上する。
鎖骨100eが除去された、鎖骨周囲の筋入部より胸骨端軟骨部位100d側の一対の胸肉100cは、図示しない次工程で食鳥屠体上半部100から取り外される。
【0015】
回転丸刃2に代えて一対のナイフを用いても良い。但し回転丸刃の方が鎖骨切断の確実性は高いと考えられる。
ナイフ4a、4b、6a、6bに代えて回転丸刃を用いても良い。但し、回転丸刃よりも軽量のナイフは、高速での進退には適していると考えられる。
ナイフ4a、4b、6a、6bに代えて内縁に刃が形成された門形のナイフを用いて、1回の動作で鎖骨周囲の胸肉に筋入しても良い。但し、ナイフ6a、6bで筋入した鎖骨の体厚方向外側の胸肉100cに関しては押し切りとなるので、筋入の確実性が低下する可能性がある。
食鳥屠体肩の検知装置は、回転レバーと近接センサにより構成されるものに限定されない。既存の任意のセンサを用いて良い。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、食鳥屠体上半部の胸肉から鎖骨を分離する方法及び装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 搬送装置
1a ガイドレール
1b 保持具
2 回転丸刃
3、5、7 検知装置
3a、5a、7a 回転レバー
3b、5b、7b 近接センサ
4a、4b 第1ナイフ
6a、6b 第2ナイフ
8a 押圧板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12