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特開2022-175578歯科治療廃水処理システム及びその廃水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175578
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】歯科治療廃水処理システム及びその廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/00 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61C17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082104
(22)【出願日】2021-05-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】514043779
【氏名又は名称】JMS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大一
(57)【要約】
【課題】歯科治療廃水の流速を低下させることなく、金属の沈降効率を高めることで、歯科治療の廃水中から金属を効率よく回収することができ、かつ歯科治療廃水処理システムのユニットに容易に着脱自在に装着することができる。
【解決手段】歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を歯科用吸引装置55により吸引するバキュームチップ53と、バキュームチップ53により吸引した廃水と空気について、その流れを下向きの渦巻き形状に変え、この廃水に含まれた金属粉、歯牙片を沈降分離させて回収する沈殿物沈降分離回収器11と、沈殿物沈降分離回収器11により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器56と、分離器56で分離された廃水中から金属粉を回収する金属回収器59と、を備えた。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理システムであって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を歯科用吸引装置(55)により吸引するバキュームチップ(53)と、
前記バキュームチップ(53)により吸引した廃水と空気について、その流れを下向きの渦巻き形状に変え、この廃水に含まれている金属粉、歯牙片を沈降分離させて回収する沈殿物沈降分離回収器(11)と、
前記沈殿物沈降分離回収器(11)により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器(56)と、
前記分離器(56)で分離された廃水中から金属粉を回収する金属回収器(59)と、を備えた、ことを特徴とする歯科治療廃水処理システム。
【請求項2】
前記沈殿物沈降分離回収器(11)は、
金属粉を含む沈殿物を沈降回収するボトル(12)と、
該ボトル(12)の上部に着脱自在に取り付けられた半球形状のキャップ部(13)と、
該キャップ部(13)に取り付けられた、廃水を取り入れる取入口(14)と排出する排出口(15)と、
該取入口(14)から流入する廃水が空気と共に当たり、その流れ方向を変える邪魔板(16)と、を備え、
該邪魔板(16)は、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられた、ことを特徴とする請求項1に記載の歯科治療廃水処理システム。
【請求項3】
前記ボトル(12)の底部に、ここに堆積した沈殿物を取り出すための開閉蓋(17)が設けられた、ことを特徴とする請求項2に記載の歯科治療廃水処理システム。
【請求項4】
前記邪魔板(16)の前記取入口(14)側に、廃水と空気の流れを規制する案内凸条(18)を形成した、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の沈殿回収システム。
【請求項5】
前記邪魔板(16)は、前記排出口(15)側へ突出するように湾曲して形成された、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の沈殿回収システム。
【請求項6】
歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理方法であって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を、キャップ部(13)に取入口(14)と排出口(15)を有するボトル(12)内に吸引し、
この廃水を、キャップ部(13)に設けられた邪魔板(16)に空気と共に衝突させて、この廃水の流れを下向きの渦巻き形状に変えて誘導し、
この廃水が、前記ボトル(12)内において、キャップ部(13)の取入口(14)から排出口(15)までの滞留する時間を長くして固形物を沈殿させる、ことを特徴とする歯科治療廃水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療の際に生じる汚物と排水を分離し、この排水中から金属を回収する歯科治療廃水処理システム及びその廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用チェアユニット51には、図10の概略構成図に示すように、口腔内をうがいするスピットン(洗口台)52、歯の治療に際して生じる歯牙片、金属粉、冷却用噴霧水、唾液等を吸引するバキュームチップ(吸引器具)53及び治療時の口腔外への飛散物を吸引する口腔外バキューム54が備えられている。これらのスピットン52、バキュームチップ53及び口腔外バキューム54には、歯科治療時に生じる切削物、歯牙片、唾液、血液、肉片、薬剤、洗浄水などからなる汚物が吸い込まれる。
【0003】
バキュームチップ53は、口腔内に挿入する吸引器具が、ホース、フィルタ、廃水分離器等を介して歯科用吸引装置(ポンプ)55につながれ、口腔内に噴霧した冷却用水、切削物を、唾液、血液、口腔内に存在する種々の雑菌と共に吸引して排出する器具である。汚染防止対策としては、切削物等の粒子の大きいものをフィルタで捕獲除去し、分離器56とバキュームモータ57で気体と水分を分離して、排水管58へ排出するようになっている。なお排水管58へ排出する前に浄化装置で清浄化してから排出することもある。
【0004】
このバキュームチップ53から吸引する歯牙片、金属粉には、歯の捕填物であるプラチナ、金、銀、パラヂウム、チタンなどの高価な貴金属類が含まれている。従来はこれを歯牙片等と共に廃棄していたが、今は資源の無駄になるとの観点から主に貴金属類を回収するようになった。そこで、このような歯の治療の際に生じる切削物から貴金属を回収する技術が提案されている。例えば、特許文献1の特開2006-15057号公報「歯治療汚物処理システムおよびヘドロ溜め装置」のように、口腔内の歯治療時発生汚物を吸い込む口腔内吸引端末装置と、この口腔内吸引端末装置で吸い込んだ前記歯治療時発生汚物を浄化装置や下水などへ送り出す排出部とからなる歯治療発生汚物処理システムに取付けるヘドロ溜め装置であって、前記歯治療発生汚物処理システムの取付け部位にセットされるヘドロを溜める容器本体と、この容器本体の上部側に設けられた前記歯治療時発生汚物を該容器本体内に導入する導入口と、前記容器本体に設けられた収納される汚物のうちのヘドロを除いた汚水を排出する排出口とからなり、前記容器本体にヘドロを溜め収納した状態のまま前記歯治療発生汚物処理システムの取付け部位から外し回収するヘドロ溜め装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-15057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の「歯治療汚物処理システムおよびヘドロ溜め装置」によれば、切削物、歯牙片、唾液、血液、肉片、薬剤、洗浄水等の汚物のヘドロを取り出すことはできる。しかし、このヘドロは貴金属が含まれた状態で取り出されるものであり、このヘドロ溜め装置内にどの程度の貴金属が回収されているか目視だけでは判断しづらいという問題を有していた。
【0007】
また、ヘドロには治療の際に用いたレジン、硬質レジン、セラミック等の貴金属との分離が容易でないものも含まれており、このヘドロから貴金属のみを効率よく取り出すことが困難になることもあった。分離器56の後に金属類(金属粉)を回収する金属回収器59を備えたシステムも提案されている。しかし、従来の金属回収器59は、金属粉を沈降させて回収するものであるが、流速を速めると金属粉の沈降率が下がり、充分に沈降する前に排水することになる。逆に流速を遅くすると金属粉の沈降率は上がるが、処理量が低下するという問題を有していた。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、歯科治療廃水の流速を低下させることなく、金属の沈降効率を高めることで、歯科治療の廃水中から金属を効率よく回収することができ、かつ歯科治療廃水処理システムのユニットに容易に着脱自在に装着することができる歯科治療廃水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の歯科治療廃水処理システムは、歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理システムであって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を歯科用吸引装置(55)により吸引するバキュームチップ(53)と、
前記バキュームチップ(53)により吸引した廃水と空気について、その流れを下向きの渦巻き形状に変え、この廃水に含まれている金属粉、歯牙片を沈降分離させて回収する沈殿物沈降分離回収器(11)と、
前記沈殿物沈降分離回収器(11)により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器(56)と、
前記分離器(56)で分離された廃水中から金属粉を回収する金属回収器(59)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
例えば、前記沈殿物沈降分離回収器(11)は、
金属粉を含む沈殿物を沈降回収するボトル(12)と、
該ボトル(12)の上部に着脱自在に取り付けられた半球形状のキャップ部(13)と、
該キャップ部(13)に取り付けられた、廃水を取り入れる取入口(14)と排出する排出口(15)と、
該取入口(14)から流入する廃水が空気と共に当たり、その流れ方向を変える邪魔板(16)と、を備え、
該邪魔板(16)は、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられたものである。
【0011】
例えば、前記ボトル(12)の底部に、ここに堆積した沈殿物を取り出すための開閉蓋(17)が設けられたものである。
前記邪魔板(16)の前記取入口(14)側に、廃水と空気の流れを規制する案内凸条(18)を形成したものである。
前記邪魔板(16)は、前記排出口(15)側へ突出するように湾曲して形成することも可能である。
【0012】
本発明の廃水処理方法は、歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理方法であって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を、キャップ部(13)に取入口(14)と排出口(15)を有するボトル(12)内に吸引し、
この廃水を、キャップ部(13)に設けられた邪魔板(16)に空気と共に衝突させて、この廃水の流れを下向きの渦巻き形状に変えて誘導し、
この廃水が、前記ボトル(12)内において、キャップ部(13)の取入口(14)から排出口(15)までの滞留する時間を長くして固形物を沈殿させる、ことを特徴とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の歯科治療廃水処理システムでは、バキュームチップ(53)と分離器(56)の間に取り付けた沈殿物沈降分離回収器(11)は、吸引した廃水と空気の流れを下向きの渦巻き状に形成するために、沈降分離距離(時間)を長くすることができる。その結果、そのまま流れる汚物と沈降する金属粉との分離効率が高くなる。この沈降した沈殿物からプラチナ、金、銀、パラヂウム、チタンなどの高価な貴金属を効率よく回収することができる。この沈殿物沈降分離回収器(11)は、コンパクトな構成であるために分離器(56)に組み付けるといった後付けが簡単にでき、既存の排水設備に容易に組み込むことができる。
ボトル(12)内に金属粉等の固形物が溜まったら、このボトル(12)をキャップ部(13)から取り外し、その中の廃水を捨て、開閉蓋(17)に堆積している固形物を回収する。この際に人の手が廃水に直接触れることがないので、衛生的に扱うことができる。感染症の対策に寄与することが可能である。
【0014】
半球形状のキャップ部(13)内に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)は、廃水と空気の流れを下向きの渦巻き状に形成するために、廃水の沈降分離距離(時間)が長くなり、分離効率を高めることができる。
【0015】
ボトル(12)は、その底部に堆積した沈殿物を取り出すため開閉蓋(17)が設けられているので、沈殿物を容易に回収できる。
邪魔板(16)に、廃水と空気の流れを規制する案内凸条(18)を形成したものは、取入口(14)から流入する廃水と空気が、キャップ部(13)内に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)の案内凸条(18)に当たり、下方かつその案内凸条(18)の向きに沿って流れ、渦巻状に形成されやすく、沈降分離距離(時間)が長くなり、分離効率が高くなる。
湾曲して形成された邪魔板(16)は、廃水と空気の流れに乱流の発生が防止でき、その分離効率が高くなる。
【0016】
本発明の歯科治療廃水処理システムでは、廃水と空気の流れを下向きの渦巻き状に形成するために、沈降分離距離(時間)が長くなり、分離効率が高くなる。大量の廃水を迅速に処理でき、廃水中から金属、貴金属を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の歯科治療廃水処理システムと歯科用チェアユニットを示す概略構成図である。
図2】沈殿物沈降分離回収器を示す正面図である。
図3】沈殿物沈降分離回収器を示す縦断面図である。
図4】キャップ部の平面図である。
図5】キャップ部の底面図である。
図6】沈殿物沈降分離回収器の廃水の流れについて説明する説明斜視図である。
図7】廃水の流れと処理状態についての説明図であり、(a)は廃水が流れている状態、(b)は廃水の流れを止めている状態、(c)はボトルと開閉蓋を外した状態である。
図8】変形例1の邪魔板に廃水の流れを規制する案内凸条を形成した状態を示すキャップ部の縦断面図である。
図9】変形例2の邪魔板を湾曲形成した状態を示すキャップ部の縦断面図である。
図10】従来の歯科治療廃水処理システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の歯科治療廃水処理システムは、歯科治療の際に生じる汚物と排水を分離し、この排水中から金属を回収するシステムである。
【実施例0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
<歯科治療廃水処理システムの構成>
図1は実施例1の歯科治療廃水処理システムと歯科用チェアユニットを示す概略構成図である。
歯科用チェアユニット51は、患者が座るチェア、このチェアを足で操作するフットスイッチと、器具、薬剤等を置く補助テーブル、嗽をするスピットン(洗口台52)、無影灯のライトアーム、更に洗浄水や冷却用水と排水の管設備を備えている。本発明の歯科治療廃水処理システムはこの排水設備に備える装置である。
【0020】
実施例1の歯科治療廃水処理システムは、歯科治療に使用するバキュームチップ53と、このバキュームチップ53により吸引した廃水について、その流れを下向きに変えることにより金属粉、歯牙片のような沈殿物を沈降分離させて回収する沈殿物沈降分離回収器11と、この沈殿物沈降分離回収器11により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器56と、この分離器56で分離された廃水中から金属を回収する金属回収器59とを備えたものである。廃水に含有する金属粉を、沈殿物沈降分離回収器11と分離器56と金属回収器59との二段階で回収する。
【0021】
バキュームチップ53は、歯科治療に際して生じる歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤、洗浄水の汚物を吸引するために、患者の口腔に入れて使用する。この吸引は歯科用吸引装置55を用いる。
【0022】
分離器56は、バキュームチップ53により吸引した歯科治療に際して生じた歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤等の汚物と洗浄水について、ヘドロと、金属粉が含有する液体(廃水)とに分離する装置である。この分離器56の操作は、バキュームモータ57による。
【0023】
金属回収器59は、分離器56で分離された廃水中から金属を回収する装置である。これは、沈殿物沈降分離回収器11で回収できなかった金属粉を回収する装置である。この金属回収器59は、図示していないが、回収器本体と蓋体とから成り、この回収器本体12は上方に開口を有する筐体である。蓋体13は、回収器本体12の開口を着脱自在に閉止する部材である。
【0024】
<沈殿物沈降分離回収器の構成>
図2は沈殿物沈降分離回収器を示す縦断面図である。図3は沈殿物沈降分離回収器を示す平断面図である。
沈殿物沈降分離回収器11は、バキュームチップ53と分離器56の間に、着脱自在に取り付けられる。沈殿物沈降分離回収器11は金属粉を含む沈殿物を沈降回収するボトル12と、このボトル12の上部に着脱自在に取り付けられた半球形状のキャップ部13を備えた装置である。その上流側にバキュームチップ53を、下流側に分離器56をそれぞれ連結したものである。各連結手段は、容易に着脱自在に連結できるようになっている。従来の歯科治療廃水処理システムに後付けできるようになっている。
【0025】
キャップ部13には、廃水を取り入れる取入口14と排出する排出口15と、邪魔板16が取り付けられている。この邪魔板16は取入口14から流入する廃水と空気が当たり、その流れ方向を変える機能を有する。
【0026】
ボトル12は、円筒形状の一時回収容器である。このボトル12は後述するように、廃水の滞在時間、即ち沈降分離時間を長くさせるために、この廃水が渦巻き形状を形成するように円筒形状が好ましい。また、内部の状態を外から確認できるように透明な素材が好ましい。
【0027】
ボトル12の底部には、開閉蓋17が設けられている。この開閉蓋17を外して堆積した沈殿物を取り出すことができる。
【0028】
<キャップ部の構成>
図4はキャップ部を示す平面図である。図5はキャップ部を示す底面図である。
キャップ部13は、半球形状の一側に廃水と空気を取り入れる取入口14が、その反対側に廃水と空気を排出する排出口15が取り付けられている。取入口14はバキュームチップ53の下流側に連結されている。排出口15は分離器56の上流側に連結されている。この連結は容易に着脱自在に連結できるようになっている。
【0029】
キャップ部16には、取入口14から流入する廃水と空気が当たり、その流れ方向を変える邪魔板16が取り付けられている。この邪魔板16は、図3の断面図に示すように、半球形状のキャップ部13に合わせて、半円形状の板材を取り付けたものである。この邪魔板16の下辺から、取入口14から取り入れた廃水をボトル12に落とし込むようになっている。
【0030】
邪魔板16は、取入口14の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられている。このように傾斜して取り付けられた邪魔板16は、これに当たった廃水と空気をボトル12内において下向きの渦巻き状の流れに変える機能を有する。単に円筒形状のボトル12内において上から下に向かって廃水を落とし込むものではなく、この円筒形状のボトル12内において、廃水と空気を渦巻き状の流れに変え、その流速を遅くする機能を有する。換言すれば廃水の流路距離が長くなる。その結果、沈降分離距離(時間)が長くなるため、汚物と金属粉などの固形物との分離効率を高めることができる。
【0031】
例えば、図5に示すようにキャップ部13内に、邪魔板16を水平方向に45度の角度で配置した。このように傾斜して配置した理由は、直進して流入する廃水と空気がこの邪魔板16に当たって跳ね返らないようにするためである。また、廃水の流れを空気と共に下向きの渦巻き状に形成するためでもある。
【0032】
この傾斜角度は、邪魔板16が、廃水の流れを下向きの渦巻き状に形成することができれば、この45度に限定されない。直進している廃水と空気が層流を崩さない状態で、その進路方向を変えられるものであれば良い。この角度は適宜変えられる。また、図示していないが、必要に応じてキャップ部13内において、邪魔板16を水平方向に角度を可変自在に取り付けることも可能である。当然であるが、取入口14と排出口15と干渉しない範囲で角度を調節する必要がある。
【0033】
<沈殿物沈降分離回収器の説明>
図6は沈殿物沈降分離回収器の廃水の流れについて説明する説明斜視図である。
(1)このように構成した、沈殿物沈降分離回収器11の取入口14に流入する廃水は、歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水である。このときは図示するように、分離器56に吸引された廃水は、パイプ内の下に流れ、その上方には空気が同時に吸引される。この取入口14に流入した廃水と空気は、キャップ部13内の邪魔板16に当たる。
(2)この邪魔板16は、取入口14の流入方向の軸線方向に対して水平方向に傾斜した角度で配置されている。この邪魔板16に当たった廃水と空気は、その流れ方向が変えられる。
(3)廃水はキャップ部13の下部に円筒形状のボトル12内に誘導される。この廃水は円筒形状のボトル12内において、その固形物を含んでいるのと、その流れ方向が変えられているため、下方へ渦巻き状の流れに変化する。このときに空気の流れ方向も変えられているので、廃水は渦巻き状の流れになりやすくなる。
(4)渦巻き状の流れに変化した廃水は、比重の大きな金属粉、歯牙片などの固形物は沈降し、そのまま開閉蓋17に堆積する。
(5)ボトル12内に堆積物が所定量に達したら、キャップ部13からボトル12を取り外し、その中の廃水を捨てる。人の手が廃水に直接触れることがない。この開閉蓋17をボトル12から外し、金属粉を含む固形物を取り出す。
比重の小さいヘドロなどを含む廃水は排出口15から排出される。
(6)このボトル12をキャップ部13から取り外し、その中の廃水を捨てる。次に開閉蓋17に堆積している固形物を回収する際に、人の手が廃水に直接触れることがないので、衛生的に扱うことができる。感染症の対策に寄与することが可能である。
【0034】
図7は廃水の流れと処理状態についての説明図であり、(a)は廃水が流れている状態、(b)は廃水の流れを止めている状態、(c)はボトルと開閉蓋を外した状態である。
沈殿物沈降分離回収器11に廃水を吸引して流していると、図7(a)に示すように、キャップ部13とボトル12内に流れる。このとき廃水の水面は、ボトル12の開口部よりやや下の位置の高さになる。これは分離器56に吸引された廃水は、取入口14のパイプの下を流れ、そのパイプの上方には空気が同時に吸引されて流れるからである。
図6に示したように、ボトル12内を通過する廃水は比重の大きなものは沈降し、比重の小さいものはそのまま排出口15へ流される。
【0035】
次に、吸引を止めると、図7(b)に示すように、廃水の水面はボトル12の開口部よりやや下の位置の高さになる。廃水はボトル12内のみになる。この状態でボトル12をキャップ部13から外しても、ボトル12内の廃水はこぼれることが無く、廃水を衛生的に排水処理することができる。
【0036】
最後に、図7(c)に示すように、ボトル12内の廃水を捨てた後で、開閉蓋17を外せば、そこに堆積した貴金属を含む沈殿物を容易に回収することができる。このときも、衛生的に沈殿物の回収処理ができる。
【0037】
<沈殿物沈降分離回収器の邪魔板の変形例1>
図8は変形例1の邪魔板に廃水と空気の流れを規制する案内凸条を形成した状態を示すキャップ部の縦断面図である。
変形例1の邪魔板16には、廃水と空気の流れを規制する案内凸条18を形成したものである。このように案内凸条18を形成することで、取入口14から流入する廃水と空気が、キャップ部13内に傾斜して取り付けられた邪魔板16の案内凸条18に当たり、下方かつその案内凸条18の向きに沿って流れやすくなり、廃水が渦巻状に形成されやすくなる。その結果沈降分離距離(時間)が長くなり、分離効率が高くなる。
【0038】
<沈殿物沈降分離回収器の邪魔板の変形例2>
図9は変形例2の邪魔板を湾曲形成した状態を示すキャップ部の縦断面図である。
変形例2の邪魔板16は、この邪魔板16自体を湾曲形成したものである。このように邪魔板16を湾曲形成することで、取入口14から流入する廃水と空気が、この湾曲形成された邪魔板16に当たり、この形状に沿って曲げられかつ下方へ流れ、渦巻状に円滑に流れるやすくなる。
【0039】
なお、本発明は、歯科治療廃水の流速を低下させることなく、金属の沈降効率を高めることで、歯科治療の廃水中から金属を効率よく回収することができ、かつ歯科治療廃水処理システムのユニット51に容易に着脱自在に装着することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の歯科治療廃水処理システム及びその廃水処理方法は、歯科治療の際に生じる金属の回収に限定されず、貴金属を用いたアクセサリー加工、廃水に貴金属が含有する際にもこのシステムと方法を利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
11 沈殿物沈降分離回収器
12 ボトル
13 キャップ部
14 取入口
15 排出口
16 邪魔板
17 開閉蓋
18 案内凸条
51 歯科用チェアユニット
53 バキュームチップ
55 歯科用吸引装置
56 分離器
59 金属回収器


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の歯科治療廃水処理システムは、歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理システムであって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を歯科用吸引装置(55)により吸引するバキュームチップ(53)と、
前記バキュームチップ(53)により吸引した廃水と空気について、その流れを下向きの渦巻き形状に変え、この廃水に含まれている金属粉、歯牙片を沈降分離させて回収する、金属粉を含む沈殿物を沈降回収するボトル(12)と、該ボトル(12)の上部に着脱自在に取り付けられた半球形状のキャップ部(13)と、該キャップ部(13)に取り付けられた、廃水を取り入れる取入口(14)と排出する排出口(15)と、該取入口(14)から流入する廃水が空気と共に当たり、その流れ方向を、該ボトル(12)の上部において変えるように、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)と、から成る沈殿物沈降分離回収器(11)と、
前記沈殿物沈降分離回収器(11)により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器(56)と、
前記分離器(56)で分離された廃水中から金属粉を回収する金属回収器(59)と、を備えた、ことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の廃水処理方法は、歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理方法であって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を、取入口(14)と排出口(15)を有する半球形状のキャップ部(13)が上部に設けられたボトル(12)内に吸引し、
この廃水を、前記キャップ部(13)に設けられた、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)に空気と共に衝突させて、この廃水の流れを下向きの渦巻き形状に変えて誘導し、
この廃水を、前記ボトル(12)内において、キャップ部(13)の取入口(14)から排出口(15)までの滞留する時間を長くして汚物と金属粉などの固形物とに分離し、固形物沈殿させ、汚物と洗浄水を含む廃水は排出口(15)から排出させる、ことを特徴とする、ことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理システムであって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属粉、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を歯科用吸引装置(55)により吸引するバキュームチップ(53)と、
前記バキュームチップ(53)により吸引した廃水と空気について、その流れを下向きの渦巻き形状に変え、この廃水に含まれている金属粉、歯牙片を沈降分離させて回収する、金属粉を含む沈殿物を沈降回収するボトル(12)と、該ボトル(12)の上部に着脱自在に取り付けられた半球形状のキャップ部(13)と、該キャップ部(13)に取り付けられた、廃水を取り入れる取入口(14)と排出する排出口(15)と、該取入口(14)から流入する廃水が空気と共に当たり、その流れ方向を、該ボトル(12)の上部において変えるように、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)と、から成る沈殿物沈降分離回収器(11)と、
前記沈殿物沈降分離回収器(11)により吸引した廃水について、ヘドロと、沈降分離されなかった金属粉が含有する廃水とに分離する分離器(56)と、
前記分離器(56)で分離された廃水中から金属粉を回収する金属回収器(59)と、を備えた、ことを特徴とする歯科治療廃水処理システム。
【請求項2】
前記ボトル(12)の底部に、ここに堆積した沈殿物を取り出すための開閉蓋(17)が設けられた、ことを特徴とする請求項1に記載の歯科治療廃水処理システム。
【請求項3】
前記邪魔板(16)の前記取入口(14)側に、廃水と空気の流れを規制する案内凸条(18)を形成した、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の沈殿回収システム。
【請求項4】
前記邪魔板(16)は、前記排出口(15)側へ突出するように湾曲して形成された、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の沈殿回収システム。
【請求項5】
歯科用チェアユニット(51)において歯科の治療の際に生じた汚物、洗浄水から金属粉を回収する歯科治療廃水処理方法であって、
歯科治療時に生じた歯牙、金属、レジンの切削物、唾液、血液、肉片、薬剤のような汚物、洗浄水を含む廃水を、取入口(14)と排出口(15)を有する半球形状のキャップ部(13)が上部に設けられたボトル(12)内に吸引し、
この廃水を、前記キャップ部(13)に設けられた、前記取入口(14)の流入方向の軸方向に対し、水平方向に傾斜して取り付けられた邪魔板(16)に空気と共に衝突させて、この廃水の流れを下向きの渦巻き形状に変えて誘導し、
この廃水を、前記ボトル(12)内において、キャップ部(13)の取入口(14)から排出口(15)までの滞留する時間を長くして汚物と金属粉などの固形物とに分離し、固形物沈殿させ、汚物と洗浄水を含む廃水は排出口(15)から排出させる、ことを特徴とする歯科治療廃水処理方法。