(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175586
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20221117BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20221117BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L23/20
B32B27/32 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082128
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 七央
(72)【発明者】
【氏名】森脇 良司
(72)【発明者】
【氏名】江川 真
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】水間 貴大
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
(72)【発明者】
【氏名】保谷 裕
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK09A
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JA13A
4F100JK06
4F100JL12A
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB031
4J002BB052
4J002BB173
4J002GF00
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】内容物を保護可能でありながら、市場で求められるイージーピール性を発現できる程度にヒートシール強度が低く、剥離面の外観が良好なシーラントフィルムおよび積層フィルム、ならびに、その材料を提供する。
【解決手段】(a-1)~(a-3)を満たすブテン系重合体(A)を5~30質量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)を42~90質量%、(c-1)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を3~38質量%(但し(A)、(B)、(C)の合計を100質量%とする)含み、高圧法低密度ポリエチレン(B)とエチレン・α-オレフィン共重合体(C)の質量比[(B)/(C)]が60/40~93/7である樹脂組成物:(a-1)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が5~20;(a-2)DSCにより測定される融点が100~130℃;(a-3)MFR(190℃、2.16kg荷重)が0.3~10g/10分;(c-1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が0.1~16g/10分。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要件(a-1)、(a-2)および(a-3)を満たすブテン系重合体(A)を5~30質量%、
高圧法低密度ポリエチレン(B)を42~90質量%、
要件(c-1)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を3~38質量%(但し、ブテン系重合体(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(C)の合計を100質量%とする)含み、
前記高圧法低密度ポリエチレン(B)および前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の質量比[(B)/(C)]が60/40~93/7であることを特徴とする樹脂組成物。
(a-1):GPC法により測定される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比であるMw/Mnが5~20である。
(a-2):示差走査熱量計により測定される融点が100~130℃である。
(a-3):メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.3~10g/10分である。
(c-1):メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~16g/10分である。
【請求項2】
前記ブテン系重合体(A)がさらに要件(a-4)を満たす請求項1に記載の樹脂組成物。
(a-4):GPC法による測定によって得られた積分分子量分布曲線から求められる分子量が10,000以下である成分の割合が、2%以上である。
【請求項3】
前記ブテン系重合体(A)がさらに要件(a-5)を満たす請求項1または2に記載の樹脂組成物。
(a-5):1-ブテンから導かれる構成単位(i)と、炭素数2~10のα-オレフィン(ただし、1-ブテンを除く。)から導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)90~100モル%と、当該構成単位(ii)0~10モル%とからなる。
【請求項4】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)が要件(c-2)を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(c-2):密度が870~936kg/m3である。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルムと他の層とが積層されてなる積層フィルム。
【請求項7】
シーラント層と基材層とが積層されてなり、前記シーラント層が請求項5のフィルムからなる請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
シーラント層と中間層と基材層とがこの順序で積層されてなり、前記シーラント層がエチレン系重合体からなり、前記中間層が請求項5のフィルムからなる請求項6に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物およびその用途に関し、より詳細にはシーラントフィルムの原料として適した樹脂組成物、ならびにシーラントフィルムおよびこのシーラントフィルムを用いた積層フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装材に使用される易剥離性(イージーピール性)を有するシーラントフィルムには、密封性と易剥離性という、相反する性能を同時に満足することが要求されている。その内、密封性に関しては、常に内容物を保護可能にする程度以上のヒートシール強度を有すること、および多種多様な基材に対応するためにヒートシール強度の温度依存性が小さいことが求められている。一方、イージーピール性に関しては、手による剥離が容易な程度にヒートシールされていることが要求されている。
【0003】
特許文献1には、分子量が10,000以下の成分割合が2%以上で、融点が100~130℃であり、かつ、MFRが0.3~10g/10分であるブテン系重合体と、エチレン系重合体とを含有し、該エチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレンを90~40質量%、およびエチレン・α-オレフィン共重合体を10~60質量%含む(該エチレン系重合体の合計量を100質量%とする)組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
市場では該組成物から製造されたシーラントフィルムよりもさらに剥離が容易なシーラントフィルムが求められている。しかし、例えば特許文献1に記載された組成物において、ヒートシール強度をより低くするためにブテン系重合体の配合比を大きくすると、シーラントフィルムの剥離面に糸状の樹脂が残ってしまい、剥離外観が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、内容物を保護可能でありながら、市場で求められるイージーピール性を発現できる程度にヒートシール強度が低く、剥離面の外観が良好なシーラントフィルムおよび積層フィルム、ならびに、その材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が研究を進めた結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。本発明の構成例は、以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0008】
[1] 要件(a-1)、(a-2)および(a-3)を満たすブテン系重合体(A)を5~30質量%、
高圧法低密度ポリエチレン(B)を42~90質量%、
要件(c-1)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を3~38質量%(但し、ブテン系重合体(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(C)の合計を100質量%とする)含み、
前記高圧法低密度ポリエチレン(B)および前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の質量比[(B)/(C)]が60/40~93/7であることを特徴とする樹脂組成物。
(a-1):GPC法により測定される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比であるMw/Mnが5~20である。
(a-2):示差走査熱量計により測定される融点が100~130℃である。
(a-3):メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.3~10g/10分である。
(c-1):メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~16g/10分である。
【0009】
[2] 前記ブテン系重合体(A)がさらに要件(a-4)を満たす[1]に記載の樹脂組成物。
(a-4):GPC法による測定によって得られた積分分子量分布曲線から求められる分子量が10,000以下である成分の割合が、2%以上である。
【0010】
[3] 前記ブテン系重合体(A)がさらに要件(a-5)を満たす[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
(a-5):1-ブテンから導かれる構成単位(i)と、炭素数2~10のα-オレフィン(ただし、1-ブテンを除く。)から導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)90~100モル%と、当該構成単位(ii)0~10モル%とからなる。
【0011】
[4] 前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)が要件(c-2)を満たす請求項[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
(c-2):密度が870~936kg/m3である。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【0013】
[6] [5]に記載のフィルムと他の層とが積層されてなる積層フィルム。
【0014】
[7] シーラント層と基材層とが積層されてなり、前記シーラント層が[5]のフィルムからなる[6]に記載の積層フィルム。
【0015】
[8] シーラント層と中間層と基材層とがこの順序で積層されてなり、前記シーラント層がエチレン系重合体からなり、前記中間層が[5]のフィルムからなる[6]に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内容物を保護可能でありながら、市場で求められるイージーピール性を発現できる程度にヒートシール強度が低く、剥離面の外観が良好なシーラントフィルムおよび積層フィルム、ならびに、その材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪樹脂組成物≫
本発明に係る樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、特定のブテン系重合体(A)を5~30質量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)を42~90質量%、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体(C)3~38質量%含み(ただし、(A)、(B)、(C)の合計を100質量%とする)、下記の要件(X)を満たす。
【0018】
〔要件(X)〕
高圧法低密度ポリエチレン(B)とエチレン・α-オレフィン共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]が60/40~93/7であり、好ましくは70/30~92/8であり、より好ましくは75/25~90/10である。
高圧法低密度ポリエチレン(B)とエチレン・α-オレフィン共重合体(C)との質量比が93/7以下であると、本組成物をシーラントフィルムとした場合に、該シーラントフィルムの剥離面に糸状の樹脂が残りにくく、剥離面の外観が良好であるため好ましい。前記質量比[(B)/(C)]が93/7以下であると剥離面の外観が良好になる理由は、高圧法低密度ポリエチレン(B)とブテン系重合体(A)間の界面強度が向上するためである、と推測される。すなわち、高圧法低密度ポリエチレン(B)とブテン系重合体(A)間の界面強度の向上により、ブテン系重合体(A)の高圧法低密度ポリエチレン(B)からの剥離が剥離面近傍でしか起こらなくなる結果、ブテン系重合体(A)が剥離面に残りにくくなるため、と推測される。一方、剥離面の外観が良好ではない場合には、剥離面近傍以外でもブテン系重合体(A)が高圧法低密度ポリエチレン(B)から剥離することにより、剥離面から比較的離れた位置のブテン系重合体(A)が剥離面近傍のブテン系重合体(A)に連なって剥離面に残り、剥離面での糸引きが起こる、と推測される。
前記質量比[(B)/(C)]が60/40以上であると、ヒートシール強度が低くなるので好ましい。前記質量比[(B)/(C)]が60/40以上であると上記効果が得られる理由は、前記質量比で調整した組成物をシーラントとした場合に材料強度が低くなるため、と推測される。
【0019】
本組成物中のブテン系重合体(A)の含有量は5~30質量%であり、好ましくは8.5~30質量%、より好ましくは10~30質量%である(ただし、ブテン系重合体(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(C)の合計を100質量%とする)。
ブテン系重合体(A)の含有量が上記範囲にあると、ヒートシール強度が低くなるので好ましい。
【0020】
<ブテン系重合体(A)>
ブテン系重合体(A)の例としては、1-ブテンの単独重合体、および1-ブテンと、1-ブテンを除く炭素数2~10のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。本組成物に用いられるブテン系重合体(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0021】
前記α-オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセンが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが挙げられ、より好ましくはエチレン、プロピレンが挙げられる。
【0022】
ブテン系重合体(A)には、必要に応じて、本発明の効果が損なわれない範囲で他のコモノマーが少量共重合されていてもよい。前記他のコモノマーとは、1-ブテンおよび前記α-オレフィン以外のモノマーであって、1-ブテンと前記α-オレフィンの少なくとも一方と共重合可能なモノマーである。前記他のコモノマーは、1-ブテンおよび前記α-オレフィンの両方と共重合可能なモノマーであってもよい。
ブテン系重合体(A)の1-ブテン含量は、以下の要件(a-5)で詳述するとおり、好ましくは90~100モル%である。また、α-オレフィン含量は、通常、0~10モル%である(ただし、1-ブテン含量およびα-オレフィン含量の合計を100モル%とする。)。
【0023】
前記ブテン系重合体(A)は、以下の要件(a-1)~(a-3)を満たす。
【0024】
〔要件(a-1)〕
後述する実施例で採用された条件下でゲルパーミエーション(GPC)法(ポリスチレン換算)により測定される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比、すなわちMw/Mnが、5~20であり、好ましくは5~10であり、より好ましくは6~9である。
Mw/Mnがこの範囲にあるとエチレン系重合体と混練した際の分散性が向上するため、易剥離性が向上する。
Mw/Mnを調整する場合、たとえば重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、またはMw/Mnのいずれか1つ以上が異なる2種以上のブテン系重合体を準備し、これらを混合することによってMw/Mnを増大させることができる。
【0025】
〔要件(a-2)〕
示差走査熱量計により、後述する実施例で採用された条件下で測定される融点が100~130℃であり、好ましくは105~130℃であり、より好ましくは110~125℃である。
融点がこの範囲にあるとフィルムの耐熱性が向上し、ボイル・レトルト殺菌を行う包装形態へ適応でき、また幅広いシール温度でヒートシールが可能である。
【0026】
〔要件(a-3)〕
メルトフローレート(ASTM D-1238、190℃、2.16kg荷重)が、0.3~10g/10分であり、好ましくは1.2~8g/10分であり、より好ましくは2~5g/10分である。
メルトフローレートがこの範囲にあると、既存の成形機を用いて高い成形スピードで本発明の樹脂組成物をフィルム成形することができるので好ましい。
【0027】
前記ブテン系重合体(A)は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比、融点、およびメルトフローレートの値が特定の範囲にあることにより、エチレン系重合体と混練した際の分散性と易剥離性のバランスに優れる。換言すると、要件(a-1)~(a-3)を満たすブテン系重合体(A)を配合することにより、本組成物から得られたフィルムでは幅広いシール温度で低いヒートシール強度を実現できる、と推測される。
【0028】
前記ブテン系重合体(A)は、以下の要件(a-4)~(a-6)のうちの1つ以上を満たしてもよく、好ましくは以下の要件(a-4)、(a-5)を満たす。
【0029】
〔要件(a-4)〕
ゲルパーミエーション(GPC)法(ポリスチレン換算)で得られた積分分子量分布曲線から求められる分子量が10,000以下である成分の割合が、好ましくは2%以上であり、より好ましくは2.5%以上である。また、分子量が10,000以下である成分の割合の上限値は、主に要件(a-1)および(a-3)に依存して定まるが、好ましくは5%以下である。なお、GPC法による測定の条件は、後述する実施例に記載の条件である。
【0030】
前記割合がこの範囲にあるとエチレン系重合体と混練した際の分散性が向上するため、易剥離性が向上する。
前記割合は、たとえば多段重合プロセスの一工程において低分子量のブテン系重合体を重合すること、あるいは低分子量のブテン系重合体を溶融混練することによって増加させることができる。
【0031】
〔要件(a-5)〕
ブテン系重合体(A)の1-ブテン含量は、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%であり、α-オレフィン含量は、0~10モル%、好ましくは0~5モル%、より好ましくは0~2モル%である(ただし、1-ブテン含量およびα-オレフィン含量の合計を100モル%とする。)。
【0032】
〔要件(a-6)〕
後述する実施例で採用された条件下で測定される密度が、880~925kg/m3、好ましくは885~920kg/m3である。ブテン系重合体(A)の密度がこの範囲にあると、樹脂組成物から成形したフィルム表面の摩擦係数が小さいことから、最終的にフィルムから容器を製造した時に、高い充填速度で内容物を充填することが可能である。
【0033】
〔ブテン系重合体(A)の製造方法〕
ブテン系重合体(A)の製造方法としては、国際公開第2002/002659号などに記載された方法が挙げられる。この特許文献の第32~33頁には、ブテン系共重合体の製造に用いる固体状チタン触媒(A')の製造方法の例として、以下の(M1)と(M2)が記載されている。
(M1)ハロゲン含有マグネシウム化合物(α)と、ハロゲン含有マグネシウム化合物(α)を溶解し得る可溶化剤(β)とを溶媒(γ)中で接触させて溶液(I)を得、
該溶液(I)に複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する第1の化合物(δ)を加えて溶液(II)を得、
該溶液(II)に液体状態のチタン化合物(ε)を接触させて溶液(III)を得るか、さらに溶液(III)から固体を分離する方法。
(M2)ハロゲン含有マグネシウム化合物(α)と、ハロゲン含有マグネシウム化合物(α)を溶解し得る可溶化剤(β)とを溶媒(γ)中で接触させて溶液(I)を得、
該溶液(I)に複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する第1の化合物(δ)を加えて溶液(II)を得、
該溶液(II)に液体状態のチタン化合物(ε)を接触させて溶液(III)を得、
該溶液(III)に複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する第2の化合物(δ')を加えて溶液(IV)を得るか、さらに溶液(IV)から固体を分離する方法。
本発明においては分子量が10,000以下の成分の割合が高いブテン系重合体(A)を製造する観点から、好ましくは、(M1)の方法(すなわち、溶液(III)に複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する第2の化合物(δ')を加えて溶液(IV)を得るか、さらに溶液(IV)から固体を分離する工程を含まない方法)で製造された固体状チタン触媒(A')の存在下で1-ブテンが(共)重合され、ブテン系重合体(A)が製造される。
【0034】
また、2種以上のブテン系重合体(ただし、各ブテン系重合体は要件(a-1)~(a-3)のすべてを満たしていてもよく、満たしていなくてもよい。)を準備し、これらを混合して、混合物全体として要件(a-1)~(a-3)が満たされるようにブテン系重合体(A)を調製してもよい。
【0035】
<高圧法低密度ポリエチレン(B)>
高圧法低密度ポリエチレン(B)のメルトフローレート(ASTM D-1238、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.2~30g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分、さらに好ましくは0.8~8g/10分である。メルトフローレートがこの範囲内にあると、既存の成形機を用いて高い成形スピードで本組成物をフィルム成形することができる。
【0036】
高圧法低密度ポリエチレン(B)の密度は、通常900~940kg/m3、好ましくは910~930kg/m3である。
【0037】
高圧法低密度ポリエチレン(B)としては、市販品であれば、たとえば、NUC8160(MFR=2.4g/10分、密度=922kg/m3、(株)ENEOS NUC製)が挙げられる。
【0038】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(C)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)としては、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体が挙げられる。前記α-オレフィンは、炭素原子数が3~20、好ましくは3~10のα-オレフィンであり、その例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセンおよび4,4-ジメチル-1-ヘキセンが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、必要に応じてエチレンおよびα-オレフィン以外の少量のコモノマーがさらに重合されたものであっても良い。
【0039】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のα-オレフィン含量は、好ましくは0.1~15モル%、より好ましくは、0.5~10モル%である。ただし、エチレン含量およびα-オレフィン含量の合計を100モル%とする。
【0040】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、以下の要件(c-1)を満たし、好ましくは、以下の要件(c-1)と(c-2)とを満たす。
【0041】
〔要件(c-1)〕
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のメルトフローレート(ASTM D-1238、190℃、2.16kg荷重)は、0.1~16g/10分であり、好ましくは0.5~9g/10分、より好ましくは0.5~3.5g/10分である。メルトフローレートが前記範囲内にあるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を用いると、ブテン共重合体(A)の分散性が向上することから、易剥離性が向上するため、本組成物から得られるシーラントフィルムのヒートシール強度が低く、剥離面の外観が良好になる。
【0042】
〔要件(c-2)〕
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の密度は、通常870~936kg/m3であり、好ましくは885~932kg/m3であり、より好ましくは912~927kg/m3である。エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の密度がこの範囲にあると、透明性と、低温シール性とに優れたフィルムを得ることができるので好ましい。密度が前記範囲内にあるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)を用いると、高圧法低密度ポリエチレン(B)とブテン系重合体(A)間の界面強度が剥離外観を良好にできる程度に向上し、かつ、シール強度が高くなりすぎない。このため、本組成物から得られるシーラントフィルムのヒートシール強度が低く、剥離面の外観が良好になる。
【0043】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の例としては、市販品であれば、Evolue SP2510(MFR=1.5g/10分、密度923kg/m3、(株)プライムポリマー製)、Evolue SP2540(MFR=3.8g/10分、密度924kg/m3、(株)プライムポリマー製)、Evolue SP1510(MFR=1.0g/10分、密度915kg/m3、(株)プライムポリマー製)が挙げられる。
【0044】
<各種添加剤>
本組成物には、任意の添加剤、たとえば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、充填剤等が、本発明の効果を阻害しない範囲において(たとえば、本組成物中に合計で1質量%以下)含まれていてもよい。
【0045】
<本組成物の製造方法>
本組成物は、ブテン系重合体(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(C)、ならびに任意に各種添加剤を従来公知の方法で混合することにより、調製することができる。
【0046】
≪フィルムおよび積層フィルム≫
本発明に係るフィルムは、本組成物からなり、包装材用のシーラントフィルムとして好ましく用いられる。
【0047】
前記フィルムの厚さは、フィルムの用途に応じて適宜設定され、たとえばシーラントフィルムとして使用される場合は、好ましくは3~100μmである。
本発明に係るフィルムは、本発明に係る樹脂組成物を成形することによって製造することができる。フィルム成形法の例としては、キャスト成形法およびインフレーション成形法が挙げられる。フィルム成形時の溶融樹脂の温度は好ましくは160~260℃である。
【0048】
また本発明に係る積層フィルムは、上述した本発明に係るフィルムと他の層とが積層されてなる。本発明に係る積層フィルムの例としては、以下の2種類が挙げられる。
(i)シーラント層と基材層とが積層されてなり、前記シーラント層が本発明に係るフィルム(シーラントフィルム)からなる積層フィルム。
(ii)シーラント層と中間層と基材層とがこの順序で積層されてなり、前記シーラント層がエチレン系重合体からなり、前記中間層が本発明に係るフィルムからなる積層フィルム。
【0049】
なお、本発明に係る積層フィルムにおいて、積層フィルム(ii)のように中間層として本発明に係るフィルムが用いられる場合、積層フィルムの剥離開始部分はシーラント層と積層フィルムでシールされた物(被シール物)との間であるが、層間の破壊がすぐにシーラント層と中間層の間に移るため、実質的には、シーラント層から中間層が剥離される。換言すると、剥離面はシーラント層と中間層との間であり、シーラント層は被シール物から実質的に剥離されない。
【0050】
前記積層フィルムの各層間の接着力が十分でない場合には、各層間に接着層を有していてもよい。
前記積層フィルムは、好ましくは包装フィルムないし包装シートとして使用され、容器材料あるいは容器の蓋材料として使用されることもある。
【0051】
前記基材層の例としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィンのフィルム、スチレン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム、ナイロン6またはナイロン6,6等のポリアミドのフィルム、ポリオレフィンフィルムとポリアミド樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂等のガスバリヤー性のある樹脂フィルムとの積層フィルム、アルミニウム等の金属の箔、アルミニウムやシリカ等が蒸着された蒸着フィルム、あるいは紙等が挙げられる。前記基材層は、包装材の使用目的等に応じて適宜選択され、1種単独で使用してもよく、2種以上を積層して使用してもよい。
【0052】
積層フィルムの製造方法の例としては、以下の(M11)~(M13)が挙げられる。
(M11)シーラント層用の原料樹脂類および基材層用の原料樹脂類ならびに任意に中間層用の原料樹脂類を、それぞれ別の押出機に供給し、それぞれ溶融後に合流させて積層し、Tダイからシート状に押し出す方法(共押出法)。
(M12)シーラント層用の原料樹脂類を押出機に投入し、予め製造した基材層上、あるいは予め製造した基材層および中間層からなる積層体の中間層上に溶融押出しして積層する方法(溶融ラミネート法)。
(M13)シーラント層および基材層ならびに任意に中間層を、それぞれ対応する原料樹脂類から作製し、これらを過熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)。
これらの方法のうち、製造に要する時間が短く、かつ層間の接着性が良好であるという点で共押出法(M11)が好ましい。
【0053】
本発明のフィルムまたは積層フィルムをヒートシールする際のシール温度は、通常100~180℃であり、好ましくは140~170℃である。またシール圧力は、通常0.1~0.5MPaである。
【0054】
このシーラントフィルム(シーラント層)同士を重ねてヒートシール操作を加えたり、あるいはこのシーラントフィルム(シーラント層)を他のフィルムに重ねてヒートシール操作を加えたりすると、シーラントフィルム(シーラント層)の持つ接着力によって重ねられたフィルム同士が互いに強固に接合すると共に、また適度な力で相互に引き離すことが可能になる。このため、本発明のフィルムおよび積層フィルムは、ヒートシール性と易剥離性とを兼ね備えたフィルムとして利用することができる。
【0055】
また本発明に係る積層フィルムが、シーラント層と中間層と基材層とがこの順序で積層されてなり、前記シーラント層がエチレン系重合体からなり、前記中間層が本発明に係るフィルムからなる積層フィルム(ii)である場合、シーラント層の原料の例としてはポリエチレンが挙げられる。シーラント層の原料として使用可能なポリエチレンの例としては、高圧法低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンとエチレン・α-オレフィン共重合体との混合物が挙げられ、これら2種の樹脂の質量比は、たとえば高圧法低密度ポリエチレン:エチレン・α-オレフィン共重合体=1:0~70:30である。
【0056】
積層フィルム(ii)におけるシーラント層の原料として使用可能なエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、好ましくは870~920kg/m3、より好ましくは880~905kg/m3である。特に低密度のエチレン・α-オレフィン共重合体を配合することで、低温でのヒートシール性が改良され、高速シール適正(生産性)が向上する。また、積層フィルム(ii)におけるシーラント層の原料として使用可能なエチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5~7.0g/10分、より好ましくは1.0~4.0g/10分である。シーラント層の原料として使用可能なエチレン・α-オレフィンの例としては、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)として挙げられる共重合体の他、タフマー A-1085S(MFR=1.2g/10分、密度=885kg/m3、三井化学(株)製)が挙げられる。
【0057】
本発明に係る積層フィルムを2枚用意してシーラント層面同士を向かい合わせ、または本発明に係る積層フィルムを折り曲げてシーラント層同士が向かい合うように配置し、あるいは本発明に係る積層フィルムのシーラント層と他のフィルムとを向かい合わせ、その後いずれか一方の外表面側から所望容器形状になるようにその周囲をヒートシールすることによって、密閉された、例えば袋状容器を製造することができる。この袋状容器の成形工程を内容物の充填工程と組み合わせると、袋状容器の底部および側部をヒートシールした後に内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで、自動的に包装体を完成させることができる。したがって、この積層体フィルムは、スナック菓子等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に供給して利用することができる。
【0058】
また、本発明に係る積層フィルムを、または他のフィルムを予め真空成形や深絞り成形等の手段でカップ状容器形状に成形しておき、あるいは通常の射出成形容器を準備し、その容器中に内容物を充填し、その後積層体フィルムまたは他のフィルムを蓋材として被覆し、容器上部側または側部の周囲に沿ってヒートシールすれば、内容物の入った包装体が得られる。この場合、本発明に係るシーラントフィルムは、蓋材のシーラント層、容器本体のシーラント層、または両者のいずれにも使用することができる。この容器は、カップラーメン、味噌、ハム、ベーコン、ゼリー、プリン、スナック菓子等の包装に好適に利用することができる。
【0059】
容器の構造や製造方法は、前記した説明に限定されるものではなく、任意に変更することができる。また、本発明に係るフィルムまたは積層フィルムと組み合わせて使用できる他のフィルムないし容器としては、従来使用されているポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等の樹脂から成形した包装材料が挙げられる。たとえば、そのような材料から開口部に鍔を有する容器状成形体を成形し、その開口部の鍔部にシーラント層面を重ね合わせるようにして積層し、ヒートシールすることによって両面を接合して容器包装体とすることができる。シーラントフィルムないしシーラント層と前記包装材料とは十分な接着強度でヒートシール可能であるし、また易剥離性を有しているので容易に開封することができる。したがって、この容器は、密封性があり、かつイージーピール性のある包装容器として、特に食品包装の分野に好適に使用することができる。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0061】
[分子量分布(Mw/Mn)、分子量10,000以下成分の割合]
東ソー(株)製ゲル浸透クロマトグラフHLC-8321 GPC/HT型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6-HTが2本およびTSKgel GMH6-HTLが2本であり、カラムサイズはいずれも内径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とした。移動相としてオルトジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)、酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株)製)0.025重量%を用い、流速を1.0mL/分とした。試料濃度を30mg/20mLとし、試料注入量を0.4mLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準試料として、東ソー(株)製TSK標準ポリスチレン16点を用いた。分子量計算には、データ処理ソフトWaters社製Empower3を用い、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)、分子量10,000以下成分の割合を算出した。
【0062】
[1-ブテン・エチレン共重合体中のエチレン含量の測定]
ブルカー・バイオスピン(株)製AVANCEIII500(CryoProbe)型NMR測定装置を用いて、下記のように測定した。
【0063】
内径5mmのNMRチューブに試料60mgとオルトジクロロベンゼン0.5mlを装入し、加熱溶解させた。この溶液に重水素化ベンゼン0.1mlを加え、120℃で13C-NMR測定を行った。積算回数は、128回以上とした。得られた13C-NMRスペクトルにより、1-ブテンおよびエチレンの組成を定量化した。
【0064】
[融点]
1-ブテン由来の構成単位を含む重合体を以下のプレス成形条件で成形し、得られた1mm厚のプレスシートを10日間室温で保管したものをサンプルとして使用した。該サンプルを用いて、示差走査熱量計(DSC)により、以下に記載のDSC測定条件で融点を測定した。
【0065】
〔プレス成形条件〕
プレス機:関西ロール株式会社製(型番:PEWE-70/50 35)
加熱時間:5分
加熱温度:200℃
加熱時圧力:5MPa
冷却速度:40℃/分以上(30℃に設定した別のプレス機により、5MPaで4分間加圧し、室温まで冷却)
【0066】
〔DSC測定条件〕
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)にて、約5mgの試料を10℃/分で室温から200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのうち、最も大きいピークを融点とした。
【0067】
[密度]
融点の測定の際と同様の条件により1mm厚のプレスシートを生成し、10日間室温で保管した後、ASTM D-1505-68に準拠した測定方法で密度を測定した。
【0068】
[メルトフローレート(MFR)]
ASTM D-1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重下にて測定を行った。
【0069】
[調製例]ブテン系重合体(BER-1)の調製
特開2019-123842号公報に記載の製造方法により、固体チタン触媒成分を調製した。得られた固体チタン触媒成分を用いて、特開2019-123842号公報に記載の製造方法に準じた方法で、適宜、1-ブテン、エチレン、および水素の供給量を変更して、1-ブテンとエチレンの共重合を行い、ブテン系重合体(BER-1)を得た。重合体BER-1の物性を表1に示す。
【0070】
【0071】
<原材料>
以下の実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0072】
[ブテン系重合体(A)]
・「BER-1」: 上記調整例で調整した重合体BER-1をブテン系重合体(A)として用いた。
【0073】
[高圧法低密度ポリエチレン(B)]
・「LDPE-1」: NUC8160((株)ENEOS NUC製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=2.4g/10分、密度=922kg/m3
【0074】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(C)]
・「LLDPE-1」: ウルトゼックス 2022L((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=2.0g/10分、密度919kg/m3
・「LLDPE-2」: Evolue SP2510((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=1.5g/10分、密度923kg/m3
・「LLDPE-3」: Evolue SP2540((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=3.8g/10分、密度924kg/m3
・「LLDPE-4」: Evolue SP1510((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=1.0g/10分、密度915kg/m3
・「LLDPE-5」: Evolue SP1540((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=3.8g/10分、密度913kg/m3
・「LLDPE-6」: Evolue SP1071C((株)プライムポリマー製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=10g/10分、密度910kg/m3
・「EBR-1」: A-1085S(三井化学(株)製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=1.2g/10分、密度885kg/m3
・「EBR-2」: A-4085S(三井化学(株)製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=3.6g/10分、密度885kg/m3
【0075】
[その他の共重合体]
・「EBR-3」: A-20085S(三井化学(株)製)、MFR(190℃、2.16kg荷重)=18g/10分、密度885kg/m3
【0076】
[実施例1]
〔積層フィルムの製造〕
基材層成形用にスクリュー径40mmの押出機を備え、シーラント層成形用に30mmの押出機を備えた、ダイ幅300mmの2層T-ダイキャスト成形機を用い、各層に以下の樹脂組成物を使用して、下記の成形条件により、フィルムを作製した。すなわち、本組成物から成形されたシーラントフィルムをシーラント層とし、該シーラント層と基材層とが積層された積層フィルムを作製した。
【0077】
(各層の製造用樹脂組成物)
・基材層:
LDPE-1およびLLDPE-1を、それぞれ50質量部ずつブレンドして得られる樹脂組成物。
・シーラント層:
ブテン系重合体(A)としてBER-1を20質量部、高圧法低密度ポリエチレン(B)としてLDPE-1を70質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)としてLLDPE-2を10質量部ブレンドして得られた樹脂組成物。
【0078】
(成形条件)
・フィルムの成形温度:230℃
・チルロール温度:30℃
・フィルム構成:基材層/シーラント層(50μm/20μm)
・フィルム成形速度:10m/分
【0079】
〔ヒートシール強度の測定〕
実施例1で成形した積層フィルム2枚を、シーラント層同士が向き合うように、各シーラント層のMD方向(成形時に溶融樹脂を流した方向)同士を揃えて重ね、重ねたフィルムの両面を厚さ50μmのテフロン(登録商標)シートで挟んで試験体とした。次いで、ヒートシールテスター(テスター産業(株)製、TP-701-G型)のヒートシールバーを幅5mm×長さ300mmに設置し、下ヒートシールバーを70℃に設定した。上ヒートシールバーを120℃に設定し、該試験体(テフロンシート/積層フィルム/積層フィルム/テフロンシート)をシールバーで挟み、0.2MPaの圧力で1.0秒間ヒートシールした。テフロンシートを外し、ヒートシールされたフィルム部分を約23℃で1日間放置した。その後、フィルムのヒートシール部分を含むように15mm幅のスリットを入れ、シールされていない部分を引張試験機(「島津製作所社製、EZ-LX」)に固定し、300mm/分の速度でフィルムの剥離強度を測定した。上記操作を5回行い、その平均値をヒートシール強度とした。剥離強度としては最大剥離強度を採用した。得られた結果を表2に示す。
上ヒートシールバーの設定温度を、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、または、180℃に変更して、同様の実験を行った。これらの設定温度で得られた結果も表2に示す。
【0080】
〔シール強度評価〕
ヒートシール強度を以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:ヒートシール温度が140℃である場合のヒートシール強度が1N/15mm以上であり、かつ、ヒートシール温度が160℃である場合のヒートシール強度が2N/15mm以下である。
△:ヒートシール温度が140℃である場合のヒートシール強度が1N/15mm以上であり、かつ、ヒートシール温度が160℃である場合のヒートシール強度が2N/15mmを超え、3N/15mm以下である。
×:ヒートシール温度が140℃である場合のヒートシール強度が1N/15mm未満であるか、または、ヒートシール温度が160℃である場合のヒートシール強度が3N/15mmを超えている。
【0081】
〔糸引き性の評価〕
ヒートシール強度測定後のフィルムサンプルのシール面を観察し、シール面およびその周辺に糸状樹脂が付着しているかによって、以下の評価基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
(評価基準)
○:シール面またはシール面の周辺に糸状樹脂が全く見られない。
△:シール面またはシール面の周辺に1mm未満の長さの糸状樹脂が付着した。
×:シール面またはシール面の周辺に1mm以上の長さの糸状樹脂が付着した。
【0082】
〔外観評価〕
160℃における糸引き性の評価結果を、外観評価の結果とした。
【0083】
〔総合評価〕
シール強度評価と外観評価の結果に基づいて、以下の評価基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
(評価基準)
○:シール強度評価と外観評価のいずれでも評価が○であった。
△:シール強度評価と外観評価の少なくとも1つが△であり、かつ、×と評価された項目がない。
×:シール強度評価と外観評価の少なくとも1つが×であった。
【0084】
[実施例2~実施例13、比較例1~5]
シーラント層用の樹脂組成物として、表2に記載の樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを製造し、実施例1と同様な評価方法でヒートシール強度および糸引き性を評価した。表2に結果を示す。
なお、一部の実施例および比較例では、130℃、150℃、および170℃でのヒートシール強度を測定していないので、ヒートシール強度を「-」と示す。ヒートシール強度を測定していない条件では糸引き性の評価も行っていないので、評価結果を「-」としている。
【0085】
【0086】