(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175592
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】血液凝固因子活性の測定試薬および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/86 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
G01N33/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082137
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】591122956
【氏名又は名称】株式会社LSIメディエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
(72)【発明者】
【氏名】楊 宇航
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045CA26
(57)【要約】
【課題】血液凝固因子活性測定において、凝固時間測定試薬の影響を受けず、正確性の向上した凝固因子活性測定試薬および測定方法を提供する。
【解決手段】前記測定試薬は、標準品と、標準品希釈液と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固因子活性の測定試薬用の標準品希釈液であって、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、前記の標準品希釈液。
【請求項2】
標準品と、標準品希釈液と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、血液凝固因子活性の測定試薬。
【請求項3】
前記標準品希釈液が、前記の活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿である、請求項2に記載の血液凝固因子活性の測定試薬。
【請求項4】
標準品と標準品希釈液とを、所定の割合で混合した混合サンプルを調製する工程、
混合サンプルの凝固時間を測定する工程、
混合サンプルの測定値に基づいて検量線を作成する工程、
検体と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを混合し、凝固時間を測定する工程、
検量線に基づいて検体の血液凝固因子の活性を算出する工程
を含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、血液凝固因子活性の測定方法。
【請求項5】
前記標準品希釈液が、前記の活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿である、請求項4に記載の血液凝固因子活性の測定方法。
【請求項6】
混合サンプルを調製する工程が、凝固時間測定を行う分析装置のサンプルノズルユニットにより行われる、請求項4又は5に記載の血液凝固因子活性の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固因子活性の測定試薬および血液凝固因子活性の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固因子活性の測定は、凝固一段法と呼ばれる凝固時間法をベースとした方法が広く用いられている。その試薬構成は、凝固時間測定試薬、検体希釈液、凝固因子欠乏血漿の3種類を基本とする(特開2002-90361号公報、特開2006-119126号公報)。凝固因子活性の測定試薬の問題点として、ベースとなる凝固時間試薬(PT/APTT)の試薬組成の影響を受けることが挙げられる。具体的には、試薬組成によっては検体中のマトリクスの影響を受け、正確性(希釈直線性)が悪化する現象が認められている。特に、凝固因子活性の低値領域では、この影響をより顕著に受ける。低値領域は臨床的意義上、正確性が重要となるため、大きな課題となっている。これに対し、検体の使用量を減らすことで、検体中のマトリクスの影響を回避し、希釈直線性を改善する方法が知られている。しかし、この方法では、自動分析装置で分注できる精度の下限を下回ることから、精度の高い測定を実現することが困難である。そのため検体量を変えることなく、希釈直線性を改善する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-90361号公報
【特許文献2】特開2006-119126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況に鑑み、血液凝固因子活性測定において、凝固時間測定試薬の影響を受けず、正確性の向上した凝固因子活性測定試薬および測定方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、標準品希釈液に凝固因子欠乏血漿を使用することにより希釈直線性を改善できることを見出した。
しかし、通常、自動分析装置で実施される凝固時間の測定では、検量線作成のための標準品の希釈は反応キュベット内で行われる。一般的に標準品の希釈には検体希釈液が用いられるが、標準品がサンプルノズルにより反応キュベット内に吐出されるのに対し、検体希釈液は試薬ノズルにより反応キュベット内に吐出される。ところが、標準品の希釈に欠乏血漿を使用する場合、試薬ノズルにより欠乏血漿を吸引吐出すると、その後に凝固時間測定試薬を吸引吐出した際に血漿成分が干渉する可能性があり、測定の正確性が損なわれてしまうという問題があった。そこで、予めサンプルラック内でサンプルノズルにより標準品と標準品希釈液との希釈系列を調製し、その混合サンプルを測定して検量線を作成することにより、測定試薬に影響を与える可能性のある溶液でも標準品希釈液に用いることが可能となり、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する:
[1]血液凝固因子活性の測定試薬用の標準品希釈液であって、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、前記の標準品希釈液。
[2]標準品と、標準品希釈液と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、血液凝固因子活性の測定試薬。
[3]前記標準品希釈液が、前記の活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿である、[2]の血液凝固因子活性の測定試薬。
[4]標準品と標準品希釈液とを、所定の割合で混合した混合サンプルを調製する工程、
混合サンプルの凝固時間を測定する工程、
混合サンプルの測定値に基づいて検量線を作成する工程、
検体と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを混合し、凝固時間を測定する工程、
検量線に基づいて検体の血液凝固因子の活性を算出する工程
を含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む、血液凝固因子活性の測定方法。
[5]前記標準品希釈液が、前記の活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿である、[4]の血液凝固因子活性の測定方法。
[6]混合サンプルを調製する工程が、凝固時間測定を行う分析装置のサンプルノズルユニットにより行われる、[4]又は[5]の血液凝固因子活性の測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の凝固因子活性測定試薬および測定方法によれば、凝固時間測定と凝固因子活性測定とで検体の使用量を変えることなく、凝固因子活性測定の低値領域での希釈直線性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】正常管理血漿であるコアグジェネシス コントロールI(LSIメディエンス社製)を、凝固第VIII因子欠乏血漿であるコアグジェネシス ファクターVIII(LSIメディエンス社製)を用いて10段階希釈し、それぞれ第VIII因子活性を測定し、実施例1及び比較例1で作成した検量線を用いて、それぞれの第VIII因子活性を演算し希釈直線性を比較した結果を示すグラフである。
【
図2】
図1に示す結果から算出した、各希釈率における測定値/理論値(%)を示すグラフである。
【
図3】正常管理血漿であるコアグジェネシス コントロールI(LSIメディエンス社製)を、凝固第IX因子欠乏血漿であるコアグジェネシス ファクターIX(LSIメディエンス社製)を用いて10段階希釈し、それぞれ第IX因子活性を測定し、実施例1及び比較例1で作成した検量線を用いて、それぞれの第IX因子活性を演算し希釈直線性を比較した結果を示すグラフである。
【
図4】
図3に示す結果から算出した、各希釈率における測定値/理論値(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による血液凝固因子活性の測定試薬は、少なくとも、(1)標準品、(2)標準品希釈液、(3)検体希釈液、(4)活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿(以下、欠乏血漿と称することがある)、(5)凝固時間測定試薬とを含み、その特徴は、前記の(2)標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含むことにある。
すなわち、従来の血液凝固因子活性の測定試薬では、通常、標準品は検体希釈液(緩衝液)で希釈するが、本発明は、標準品の希釈に、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を用いることを特徴とする。なお、本発明においては、(2)標準品希釈液と(4)欠乏血漿とを別々の容器に入れた状態で提供することもできるし、あるいは、同一の容器に入れた状態で提供し、使用時に分取することもできる。
【0010】
本発明において活性測定の対象となる血液凝固因子は、凝固時間測定試薬を用いる活性測定方法が公知である血液凝固因子であれば特に限定されるものではないが、例えば、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定試薬を用いる場合、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子を挙げることができ、プロトロンビン時間(PT)測定試薬を用いる場合、第II因子、第V因子、第VII因子、第X因子を挙げることができる。
【0011】
本発明における検体としては、血液凝固因子活性の測定に用いられる通常の検体、例えば、抗凝固剤(特には、クエン酸ナトリウム)添加血漿を用いることができる。
【0012】
本発明の測定試薬は、標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含むこと以外は、従来公知の血液凝固因子活性の測定試薬と同様の構成をとることができる。
【0013】
本発明で用いる標準品(検量線作成用スタンダード)は、活性測定の対象となる血液凝固因子を所定量含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、市販されている標準血液や標準血漿のほか、健常人より採取した血液、該血液から調製された血漿などの血液検体を挙げることができる。また、活性測定の対象となる血液凝固因子それ自体であってもよく、例えば、血液から精製した天然のもの、遺伝子組換え技術によって調製された組換え体などを用いることもできる。
【0014】
本発明で用いる検体希釈液としては、通常、緩衝液を用いることができ、所望により、例えば、安定化剤、防腐剤、増感剤などを添加することができる。
【0015】
本発明で用いる凝固時間測定試薬は、活性測定の対象となる血液凝固因子に応じて、適宜選択することができる。各凝固時間測定試薬は、以下に示す主成分以外に、所望により、例えば、防腐剤、安定化剤、増感剤などを添加することができる。
【0016】
第VIII因子、第IX因子、第XI因子、又は第XII因子の活性測定に使用することのできるAPTT測定試薬(キット)は、例えば、合成リン脂質及び、活性化剤としてエラジン酸もしくは、コロイダルシリカを含むAPTT試薬と、塩化カルシウム溶液との組合せであり、血漿検体にAPTT試薬を添加して接触因子系を活性化し、さらに塩化カルシウムを加えて凝固反応を開始させ、フィブリン析出までの時間を求めることができる。前記APTT測定試薬(キット)は通常、二試薬系で提供できる。
【0017】
第II因子、第V因子、第VII因子、又は第X因子の活性測定に使用することのできるPT測定試薬は、例えば、ヒト組織トロンボプラスチン及び塩化カルシウムを含むものであり、血漿検体にヒト組織トロンボプラスチンと塩化カルシウムを加えて凝固反応を開始させ、フィブリン析出までの時間を求めることができる。前記PT測定試薬は一試薬系であるが、ヒト組織トロンボプラスチン溶液と、塩化カルシウム溶液との二試薬系とすることもできる。また、ヒト組織トロンボプラスチンとして、天然型のヒト組織トロンボプラスチンを用いることもできるし、あるいは、遺伝子組換え技術によって調製されたリコンビナントヒト組織トロンボプラスチンを用いることもできる。
【0018】
本発明で用いる「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」とは、活性測定の対象となる血液凝固因子を含有せず、且つ、フィブリン形成(血液凝固)に関係する因子(但し、活性測定の対象となる前記血液凝固因子を除く)が充分に含まれている血漿を意味する。
【0019】
例えば、活性測定の対象が第VIII因子である場合、第VIII因子を欠乏している血漿(第VIII因子欠乏血漿)としては、少なくとも第IX因子、第XI因子、及び第XII因子を充分に含有する血漿を挙げることができ、より具体的には、先天性第VIII因子欠乏症(血友病A)患者由来の血漿や、正常血漿から免疫学的手法等により第VIII因子を除去したものを挙げることができる。
第VIII因子以外の血液凝固に関係する因子が充分に含まれている第VIII因子欠乏血漿中に検体血漿を添加した場合、検体血漿中の第VIII因子活性に比例してAPTT(凝固時間)の補正効果が認められるため、検体のAPTTを測定することにより、標準品を用いて作成した検量線に基づいて、検体の第VIII因子活性を算出・決定することができる。
【0020】
例えば、活性測定の対象が第IX因子である場合、第IX因子を欠乏している血漿(第IX因子欠乏血漿)としては、少なくとも第VIII因子、第XI因子、及び第XII因子を充分に含有する血漿を挙げることができ、より具体的には、先天性第IX因子欠乏症(血友病B)患者由来の血漿や、正常血漿から免疫学的手法等により第IX因子を除去したものを挙げることができる。
第IX因子以外の血液凝固に関係する因子が充分に含まれている第IX因子欠乏血漿中に検体血漿を添加した場合、検体血漿中の第IX因子活性に比例してAPTT(凝固時間)の補正効果が認められるため、検体のAPTTを測定することにより、標準品を用いて作成した検量線に基づいて、検体の第IX因子活性を算出・決定することができる。
【0021】
例えば、活性測定の対象が第II因子、第V因子、第VII因子、又は第X因子である場合、第II因子、第V因子、第VII因子、又は第X因子を欠乏している血漿としては、それぞれ、先天性第II因子欠乏症患者、先天性第V因子欠乏症患者、先天性第VII因子欠乏症患者、又は先天性第X因子欠乏症患者の各血漿を挙げることができる。
測定対象の血液凝固因子以外の血液凝固に関係する因子が充分に含まれている欠乏血漿中に検体血漿を添加した場合、検体血漿中の測定対象因子の活性に比例してPT(凝固時間)の補正効果が認められるため、検体のPTを測定することにより、標準品を用いて作成した検量線に基づいて、検体の測定対象因子の活性を算出・決定することができる。
【0022】
本発明で用いる「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」は、所望により、防腐剤、安定化剤などを添加することができる。
【0023】
本発明で用いる標準品希釈液は、或る態様として、「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」を含み、別の態様として、「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」からなる(すなわち、「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」である)。この用語「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」に関しては、本発明の測定試薬を構成する試薬の一つである前記の「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」に関する説明を適用することができる。
【0024】
本発明においては、前記「標準希釈液」と、本発明の測定試薬を構成する試薬の一つである前記「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」とは、含有成分の種類およびそれらの配合比に関して、完全に同一であることもできるし、あるいは、それらの内の少なくとも1つが異なっていてもよい。本発明の測定試薬を構成する試薬の種類を実質的に減らすことができる点で、含有成分の種類およびそれらの配合比に関して、完全に同一であることが好ましい。
【0025】
なお、含有成分の種類およびそれらの配合比が完全に同一である場合、前記「標準希釈液」と、本発明の測定試薬を構成する試薬の一つである前記「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」とを別々の容器に入れた状態で提供することもできるし、あるいは、同一の容器に入れた状態で提供し、使用時に分取することもできる。前者の場合、使用時に分取する必要がない利点がある。後者の場合、本発明の測定試薬を構成する試薬数を減らすことができる利点がある。
【0026】
本発明で用いる標準品希釈液は、主成分である「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」に加え、所望により、防腐剤、安定化剤、増感剤などを添加することができる。
【0027】
本発明による血液凝固因子活性の測定試薬の一態様である、血液凝固第VIII因子の測定試薬は、標準品(血液凝固第VIII因子)、標準品希釈液、検体希釈液、第VIII因子欠乏血漿、APTT測定試薬(キット)を含み、前記標準品希釈液が、第VIII因子欠乏血漿を含む。前記APTT測定試薬(キット)は、通常、APTT試薬と塩化カルシウム溶液からなる。
【0028】
本発明による血液凝固因子活性の測定試薬の別の一態様である、血液凝固第IX因子の測定試薬は、標準品(血液凝固第IX因子)、標準品希釈液、検体希釈液、第IX因子欠乏血漿、APTT測定試薬(キット)を含み、前記標準品希釈液が、第IX因子欠乏血漿を含む。前記APTT測定試薬(キット)は、通常、APTT試薬と塩化カルシウム溶液からなる。
【0029】
血液凝固第VIII因子活性又は血液凝固第IX因子活性は、標準品と標準品希釈液とを所定の割合で混合した混合サンプルを調製し、欠乏血漿とAPTT測定試薬(キット)を用いて前記混合サンプルの凝固時間を測定して検量線を作成し、検体、検体希釈液、欠乏血漿、及びAPTT測定試薬(キット)を混合して前記検体の凝固時間を測定し、前記検量線に基づいて活性に変換することにより決定することができる。
【0030】
本発明による血液凝固因子活性の測定方法は、
標準品と標準品希釈液とを、所定の割合で混合した混合サンプルを調製する工程(混合サンプル調製工程)、
混合サンプルの凝固時間を測定する工程(混合サンプル測定工程)、
混合サンプルの測定値に基づいて検量線を作成する工程(検量線作成工程)、
検体と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを混合し、凝固時間を測定する工程(検体測定工程)、
検量線に基づいて検体の血液凝固因子の活性を算出する工程(血液凝固因子活性算出工程)
を含み、前記標準品希釈液が、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿を含む。
【0031】
本発明の測定方法において、用語「血液凝固因子」、「標準品」、「標準品希釈液」、「検体」、「検体希釈液」、「活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿」、「凝固時間測定試薬」については、本発明の測定試薬において先述した説明をそのまま適用することができる。
【0032】
本発明方法における混合サンプル調製工程では、標準品と標準品希釈液とを、所定の割合で混合した種々の希釈率(例えば、100%/50%/25%/10%/5%/2%/1%)の混合サンプルを調製する。前記標準品希釈液は欠乏血漿を含む(あるいは、欠乏血漿である)ため、血液凝固因子の活性測定を自動分析装置を用いて実施する場合には、試薬瓶等から試薬を採取すると共にキュベットへ吐出する試薬ノズルユニットではなく、採血管等からサンプルを採取すると共にキュベットへ吐出するサンプルノズルユニットにより標準品希釈液の吸引吐出を行う。この理由は、標準品希釈液と、後述の凝固時間測定試薬とを同じノズルで吸引吐出すると、ノズル内で反応が開始してしまうからである。
【0033】
本発明方法における混合サンプル測定工程では、前記混合サンプル調製工程で調製した各混合サンプルと、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを混合し、凝固時間を測定する。
【0034】
本発明方法における検量線作成工程では、前記混合サンプル測定工程で得られた測定値に基づいて検量線を作成する。
【0035】
本発明方法における検体測定工程では、検体と、検体希釈液と、活性測定の対象となる血液凝固因子を欠乏している血漿と、凝固時間測定試薬とを混合し、凝固時間を測定する。
【0036】
本発明方法における血液凝固因子活性算出工程では、検体測定工程で得られた検体の各測定値を、検量線に基づいて検体の血液凝固因子の活性に変換することにより、検体の血液凝固因子活性を算出する。
【実施例0037】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例及び比較例に示す測定は全て、血液凝固検査システム STACIA CN10(LSIメディエンス社製)を用いた。
【0038】
《実施例1:凝固第VIII因子測定用検量線の作成》
STACIA CN10は、サンプルノズルユニットを用いて、サンプルラックに設置したサンプルカップに希釈系列を作製する多点希釈機能を有する。この機能を利用して、凝固第VIII因子が欠乏した血漿であるコアグジェネシス ファクターVIII(LSIメディエンス社製)(以下、CG-FVIIIと記す)と、正常血漿であるコアグジェネシス キャリブレータ―(LSIメディエンス社製)を種々の希釈率(100%/50%/25%/10%/5%/2%/1%)で混合したサンプルを調製した。
【0039】
凝固第VIII因子活性の測定には、APTT時間測定試薬としてコアグジェネシス APTT(LSIメディエンス社製)を用いた。調製したサンプル5μL及びコアグジェネシス共通希釈液(LSIメディエンス社製)20μLをキュベットにとり、これにCG-FVIII 25μL、及び、APTT試薬50μLを加え、37℃で3.5分間加温した後、塩化カルシウム溶液50μLを加え、37℃で加温しながら波長660nmで吸光度の変化を測定し、フィブリン析出までの時間を求めた。多重度2で測定し、その結果の平均値を用いて検量線を作成した。なお、検量線の回帰は折れ線を用いた。
【0040】
《比較例1:凝固第VIII因子測定用検量線の作成》
キャリブレーターの希釈に、コアグジェネシス共通希釈液(LSIメディエンス社製)(HEPES 50mmol/L、NaCl 150mmol/L、pH7.5)を使用すること以外は、実施例1の手法に従って行った。
【0041】
《第VIII因子活性の希釈直線性》
正常管理血漿であるコアグジェネシス コントロールI(LSIメディエンス社製)をCG-FVIIIを用いて10段階希釈し、それぞれ多重度2で第VIII因子活性を測定した。実施例1及び比較例1で作成した検量線を用いて、それぞれの第VIII因子活性を演算し希釈直線性を比較した結果を、
図1に示す。また、各希釈率における測定値/理論値(%)を
図2に示した。比較例1では、活性が低くなるほど測定値と理論値の解離が大きくなるが、実施例1では直線性は良好であった。このことから、凝固第VIII因子が欠乏した血漿を用いてキャリブレーターを希釈することにより、低値領域まで正確に第VIII因子活性の測定が可能となることが分かった。
【0042】
《実施例2:凝固第IX因子測定用検量線の作成》
凝固第IX因子が欠乏した血漿であるコアグジェネシス ファクターIX(LSIメディエンス社製)(以下、CG-FIXと記す)と、正常血漿であるコアグジェネシス キャリブレーター(LSIメディエンス社製)を種々の希釈率(125%/100%/50%/25%/10%/5%/2%/1%)で混合したサンプルを調製した。
【0043】
凝固第IX因子活性の測定には、APTT時間測定試薬としてコアグジェネシス APTT(LSIメディエンス社製)を用いた。調製したサンプル5μL及びコアグジェネシス共通希釈液(LSIメディエンス社製)20μLをキュベットにとり、これにCG-FIX 25μL、及び、APTT試薬50μLを加え、37℃で3.5分間加温した後、塩化カルシウム溶液50μLを加え、37℃で加温しながら波長660nmで吸光度の変化を測定し、フィブリン析出までの時間を求めた。多重度2で測定し、その結果の平均値を用いて検量線を作成した。なお、検量線の回帰は折れ線を用いた。
【0044】
《比較例2:凝固第IX因子測定用検量線の作成》
キャリブレーターの希釈に、コアグジェネシス共通希釈液(LSIメディエンス)(HEPES 50mmol/L、NaCl 150mmol/L、pH7.5)を使用すること以外は、実施例2の手法に従って行った。
【0045】
《第IX因子活性の希釈直線性》
正常管理血漿であるコアグジェネシス コントロールI(LSIメディエンス社製)をCG-FIXを用いて10段階希釈し、それぞれ多重度2で第IX因子活性を測定した。実施例2及び比較例2で作成した検量線を用いて、それぞれの第IX因子活性を演算し希釈直線性を比較した結果を、
図3に示す。また、各希釈率における測定値/理論値(%)を
図4に示した。比較例2では、活性が低くなるほど測定値と理論値の解離が大きくなるが、実施例2では直線性は良好であった。このことから、凝固第IX因子が欠乏した血漿を用いてキャリブレーターを希釈することにより、低値領域まで正確に第IX因子活性の測定が可能となることが分かった。