(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175599
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】配線基板、半導体装置、および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20221117BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20221117BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20221117BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20221117BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221117BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20221117BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20221117BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 J
H01L23/14 C
H01L23/36 C
H05K1/03 610E
H05K3/28 A
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082150
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博仁
(72)【発明者】
【氏名】高木 桂二
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康行
【テーマコード(参考)】
5E314
5F136
5F142
【Fターム(参考)】
5E314AA04
5E314BB06
5E314BB13
5E314CC13
5E314GG26
5F136BB04
5F136DA33
5F136FA14
5F136FA16
5F142AA42
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CD02
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F142CD49
5F142CG03
5F142DA14
(57)【要約】
【課題】窒化アルミニウムを含有する基板上に形成されている導体層から基板への熱伝達をより向上させることのできる配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板1は、窒化アルミニウムを主成分とするセラミック基板10と、セラミック基板10上に設けられている接続パッド21とを備えている。セラミック基板10は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部(基体部11)と、酸化アルミニウムを主成分とする第2部(酸化被膜13)とを有している。この第2部は、セラミック基板10の接続パッド21、22が設けられた表面において、接続パッド21、22の形成領域以外の領域に設けられている。第2部と第1部との境界は、断面視で、接続パッド21または22と第1部との境界よりもセラミック基板10の内側に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウムを主成分とする絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられている導体層と
を備える配線基板であって、
前記絶縁基板は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部と、酸化アルミニウムを主成分とする第2部とを有し、
前記第2部は、前記絶縁基板の前記導体層が設けられた表面において、前記導体層の形成領域以外の領域に設けられており、
前記絶縁基板の厚み方向の断面視で、前記第2部と前記第1部との境界は、前記導体層と前記第1部との境界よりも前記絶縁基板の内側に位置している、配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板と、
前記配線基板上に搭載される半導体素子と
を備えている半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子は、発光ダイオード素子である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
窒化アルミニウムを主成分とする絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられている導体層と
を備える配線基板の製造方法であって、
窒化アルミニウムを主成分とする絶縁シート上に、導電性材料を含有する導体パターンを形成するパターン形成工程と、
前記導体パターンが形成された前記絶縁シートを焼成する、焼成工程と
を含み、
前記焼成工程では、前記絶縁シートの表面における前記導体パターンの形成領域以外の領域に酸化アルミニウムを形成する、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などが実装される配線基板、およびこの配線基板の製造方法に関する。また、本発明は、配線基板上に半導体素子が搭載された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発光ダイオード(LED)素子などの半導体素子が搭載される配線基板には、半導体素子から発生する熱を効率よく放散させることへの要求がある。そこで、配線基板を構成する絶縁基板として、高い熱伝導率を有する窒化アルミニウム(AlN)の焼結体を用いることが検討されている。半導体素子が搭載される配線基板に熱伝導率の高い窒化アルミニウム基板を用いることで、半導体素子から発生する熱の放熱性を高めることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、窒化アルミニウム質焼結体からなる基板本体と、酸化アルミニウムを主成分として含有しているとともにナノメートルオーダーの厚みを有しており、前記基板本体の外表面を被覆している酸化物層とを備える絶縁基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている絶縁基板は、基板本体の表面を被覆している酸化物層によって基板本体の窒化アルミニウムの溶出を抑制することができる。しかし、窒化アルミニウム基板の表面に酸化物層が形成されることで、酸化物層が形成された領域では放熱性が低下する可能性がある。そのため、特許文献1に開示されている絶縁基板10のように、酸化物層2で被覆された基板本体1上に薄膜配線導体3を形成すると、薄膜配線導体3を介して接続された電子部品4で発生した熱の伝達は、酸化物層2によって抑制される可能性がある。これにより、電子部品4から基板本体1への熱伝達効率が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、窒化アルミニウムを含有する基板上に形成されている導体層から基板への熱伝達をより向上させることのできる配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる配線基板は、窒化アルミニウムを主成分とする絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられている導体層とを備えている。この配線基板において、前記絶縁基板は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部と、酸化アルミニウムを主成分とする第2部とを有している。前記第2部は、前記絶縁基板の前記導体層が設けられた表面において、前記導体層の形成領域以外の領域に設けられている。前記絶縁基板の厚み方向の断面視で、前記第2部と前記第1部との境界は、前記導体層と前記第1部との境界よりも前記絶縁基板の内側に位置している。
【0008】
上記の構成によれば、絶縁基板の表面の大部分には酸化アルミニウムを主成分とする第2部が形成されている一方、導体層は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部と接触させることができる。導体層が第1部と接触していることで、導体層と絶縁基板との間の熱伝達を高めることができる。したがって、他の電子部品から導体層へ伝わった熱を効率的に絶縁基板に伝達して放熱させることのできる配線基板を得ることができる。
【0009】
本発明のもう一つの局面は、半導体装置に関する。この半導体装置は、上記の本発明の一局面にかかる配線基板と、前記配線基板上に搭載される半導体素子とを備えている。
【0010】
上記の構成によれば、他の電子部品から導体層へ伝わった熱を効率的に絶縁基板に伝達することのできる配線基板を備えていることで、配線基板上に搭載される半導体素子で発生した熱の放出を促進させることができる。
【0011】
上記の本発明の一局面にかかる半導体装置において、前記半導体素子は、発光ダイオード素子であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、より発熱量の大きい発光ダイオード素子を配線基板上に配置することで、発光ダイオード素子から発生した熱の配線基板側への伝達が促進されるため、半導体装置の放熱効果をより高めることができる。
【0013】
本発明のさらにもう一つの局面は、窒化アルミニウムを主成分とする絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられている導体層とを備える配線基板の製造方法に関する。この製造方法は、窒化アルミニウムを主成分とする絶縁シート上に、導電性材料を含有する導体パターンを形成するパターン形成工程と、前記導体パターンが形成された前記絶縁シートを焼成する、焼成工程とを含む。前記焼成工程では、前記絶縁シートの表面における前記導体パターンの形成領域以外の領域に酸化アルミニウムを形成する。
【0014】
上記の製造方法によれば、絶縁シートの表面のうち、導体パターンが形成されている領域には酸化アルミニウムが形成されることなく、それ以外の領域に酸化アルミニウムを形成することができる。これにより、絶縁基板の表面の大部分には酸化アルミニウムを主成分とする第2部が形成されている一方、導体層は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部と接触した状態の配線基板を得ることができる。したがって、上記の製造方法によれば、導体層から絶縁基板への熱伝達をより向上させることのできる配線基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、窒化アルミニウムを含有する基板上に形成されている導体層から基板への熱伝達をより向上させることができる。また、本発明の一局面にかかる配線基板の製造方法によれば、窒化アルミニウムを含有する基板上に形成されている導体層から基板への熱伝達をより向上させることのできる配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態にかかる配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図2】
図1に示す配線基板を備えるLEDパッケージの構成を示す断面模式図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示す製造工程中の前半部分を説明する模式図である。
【
図5】
図3に示す製造工程中の後半部分を説明する模式図である。
【
図6】第2の実施形態にかかる半導体装置の内部構成を示す断面模式図である。
【
図7】
図6に示す半導体装置の製造工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。配線基板1は、例えば、発光ダイオード(LED)素子などの半導体素子を搭載するための配線基板として利用される。
【0019】
図1には、配線基板1の断面構成を示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体素子が搭載される側の面を上面10aとし、その反対側の面を下面10bとする。但し、配線基板1の上面および下面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0020】
配線基板1は、主として、セラミック基板(絶縁基板)10と、複数の導体パターンとで構成されている。
【0021】
セラミック基板10は、配線基板1の土台となる部材である。セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする。ここで、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするとは、セラミック基板10に含まれる種々の化合物のうち、AlNの含有量が最も多いことを意味する。セラミック基板10に含まれるAlNの含有量は、質量比で90%以上であることが好ましい。
【0022】
セラミック基板10は、1つまたは複数のセラミックグリーンシート(AlNシートとも呼ばれる)を焼成して得られる。セラミック基板10が複数のAlNシートから形成される場合には、セラミック基板10は、積層された複数のAlN層を有している。
【0023】
セラミック基板10の上面10aおよび下面10bなどの露出面には、例えば、酸化アルミニウム被膜13(以下、酸化被膜13とも呼ぶ)が形成されている。この酸化被膜13は、導体パターンが形成されたAlNシートの焼成時に、AlNシートに含まれるアルミニウムが酸化することによって形成される。
【0024】
すなわち、セラミック基板10は、主として、AlNを主成分とする基体部(第1部)11と、酸化アルミニウムを主成分とする酸化被膜(第2部)13とで構成されている。酸化被膜13は、基体部11の表面を被覆するように設けられている。
【0025】
酸化被膜13に含まれている酸化アルミニウムは、基体部11に含まれているAlNと比べて、化学的な安定性が高い。そのため、基体部11の上面10aなどを覆うように酸化被膜13が設けられていることで、基体部11を保護することができ、セラミック基板10に含まれる窒化アルミニウムの変質を抑制することができる。
【0026】
導体パターンは、セラミック基板10の上面10a、下面10b、および内部などに設けられている。各導体パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、接続パッド、および電極などとして機能する。
【0027】
例えば、
図1に示す例では、セラミック基板10の上面10aに、導体パターンの一例である接続パッド(導体層)21が2個設けられている。また、セラミック基板10の下面10bに、導体パターンの一例である下面側接続パッド(導体層)22が2個設けられている。接続パッド21および下面側接続パッド22は、バンプ20とも呼ばれ、他の電子部品との接続端子などとして用いられる。例えば、接続パッド21は、発光ダイオード素子などの半導体素子の接続端子(バンプとも呼ばれる)と電気的に接続される。
【0028】
また、セラミック基板10の内部には、導体パターンの一例である導電性ビア25が設けられている。導電性ビア25は、セラミック基板10の内部を貫通するように配置され、接続パッド21と下面側接続パッド22とを電気的に接続する。
【0029】
また、セラミック基板10の内部には、導体パターンの一例である内層配線(図示せず)が設けられている。
【0030】
導体パターンは、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。
【0031】
セラミック基板10の上面10aおよび下面10bに設けられている導体パターンの表面(セラミック基板10から突出している部分)は、メッキ層で覆われている。例えば、接続パッド21の表面には、メッキ層31が設けられている。また、下面側接続パッド22の表面には、メッキ層32が設けられている。なお、メッキ層31および32は、特許請求の範囲に記載の「導体層」には含まれない。
【0032】
メッキ層31および32は、例えば、Niメッキ、およびAuメッキなどを含む。メッキ層31および32は、単層のメッキ層で構成されていてもよいし、複数のメッキ層で構成されていてもよい。メッキ層31および32は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基板10から露出している導体パターン(例えば、接続パッド21および下面側接続パッド22)の表面にメッキ被膜を形成することができる。
【0033】
本実施形態では、メッキ層31および32は、Niメッキ層とAuメッキ層とが積層された積層構造を有している。この場合、導体パターンの表面を覆うようにNiメッキ層が設けられ、Niメッキ層を覆うようにAuメッキ層が設けられていることが好ましい。これにより、接続パッド21は、金属元素Auを含有するメッキ層31で覆われ、配線基板1と電気的に接続される他の半導体素子などの接続端子に含まれる金(Au)との間で、例えば、Au-Auフリップチップ接続が実現できる。
【0034】
続いて、セラミック基板10の表面周辺のより具体的な構成について説明する。
図1の右下には、セラミック基板10の表面周辺の一部分(
図1中、Aで示す箇所)を拡大して示す。
【0035】
図1に示すように、接続パッド21は、セラミック基板10上に設けられている。より具体的には、接続パッド21は、セラミック基板10の基体部(第1部)11上に、基体部11と接触するように設けられている。そして、セラミック基板10の酸化被膜13は、基体部11の表面における接続パッド21との接触部分以外の部分に設けられている。すなわち、酸化被膜13は、セラミック基板10の接続パッド21が設けられた上面10aにおいて、接続パッド21の形成領域以外の領域に設けられている。
【0036】
また、
図1に示すように、セラミック基板10の厚み方向の断面視で、酸化被膜13と基体部11との境界B1は、接続パッド21と基体部11との境界B2よりもセラミック基板10の内側(
図1のAでは、下方側)に位置している。
【0037】
なお、下面側接続パッド22におけるセラミック基板10表面との境界部分も、接続パッド21と同様の構成を有している。
【0038】
酸化被膜13に含まれる酸化アルミニウムの熱伝導率は、基体部11に含まれるAlNの熱伝導率と比較して小さい。そのため、導体パターンとセラミック基板との境界に酸化被膜13が介在するように存在していると、導体パターンとセラミック基板との間の熱伝達が低下する可能性がある。
【0039】
そこで、本実施形態にかかる配線基板1では、セラミック基板10の上面10aおよび下面10bに設けられている導体パターン(具体的には、接続パッド21および下面側接続パッド22)は、AlNを主成分とする基体部11と接触するように設けられている。すなわち、接続パッド21または下面側接続パッド22と、セラミック基板10の基体部11との間に、酸化被膜13が存在しない構成となっている。
【0040】
これにより、接続パッド21からセラミック基板10(または、基体部11)への熱伝達が、酸化被膜13によって妨げられることがなくなる。したがって、接続パッド21とセラミック基板10との間の熱伝達をより高めることができる。
【0041】
そのため、本実施形態にかかる配線基板1によれば、接続パッド21(すなわち、バンプ20)に接続されている半導体素子などから配線基板1側へ伝わった熱を、高い放熱性を有するAlNを主成分とする基体部11へより効率的に伝達することができる。
【0042】
上記のような構成を有するセラミック基板10は、後述するように、焼成前のAlNシート上に所定形状の導体パターンを形成した後に、AlNシートと導体パターンとを同時に焼成する、いわゆる同時焼成法によって形成することができる。
【0043】
続いて、本実施形態にかかるLEDパッケージ100について説明する。このLEDパッケージ100は、本発明にかかる半導体装置の一例である。
【0044】
図2には、LEDパッケージ100の断面構成を示す。LEDパッケージ100は、主として、配線基板1と、配線基板1上に搭載されたLED素子(発光ダイオード素子)50とを備えている。
【0045】
図2に示すように、LEDパッケージ100では、
図1に示す配線基板1が複数に分割された状態の配線基板101が使用される。各配線基板101に設けられているバンプ20(すなわち、接続パッド21)上には、半導体素子の一例であるLED素子50が実装されている。
【0046】
このように、LEDパッケージ100を構成する配線基板101は、
図1に示す配線基板1などが複数個に分割(ダイシング)されたものの一つである。このような配線基板101においては、セラミック基板10の側面(例えば、切断面10c)に酸化被膜13は形成されておらず、基体部11が露出している。
【0047】
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは、接続パッド21などの導体パターンを形成する工程を中心に説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0048】
図3には、配線基板1の製造工程の一部を工程順に示す。
図3では、主に、ビア形成工程(S10)からメッキ工程(S40)までの各工程を示している。また、
図4および
図5には、各工程の様子を、工程Aから順に模式的に示す。
【0049】
図3に示す各工程を行うにあたって、先ず、AlNシート(絶縁シート)15を準備する(
図4の工程A参照)。AlNシート15は、主原料である窒化アルミニウム(AlN)粉末に、焼結助剤(例えば、イットリア、カルシアなど)および適当な有機溶剤、並びに溶媒などを添加混合してスラリーを作製した後、シート状に成形することで得られる。
【0050】
AlNシート15を準備した後、ビア形成工程(S10)を行う。この工程では、先ず、AlNシート内の所定の位置(例えば、導電性ビア25が形成される位置)に貫通孔16を形成する(
図4の工程B参照)。その後、貫通孔16内に導電性ペースト40を充填する。導電性ペースト40は、例えば、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの金属材料を主成分として含有する。これにより、AlNシート15内の所定位置に導電性ビア25となる領域が形成される。
【0051】
次に、導体パターン形成工程(S20)を行う。この工程では、従来公知のパターン形成方法(例えば、印刷ペーストによるメタライズ法、フォトリソグラフィなど)を用いて、AlNシート上の所定の領域に、導電性材料を含有する導体パターン(例えば、導体パターン41)を形成する。導体パターンは、例えば、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの金属材料を主成分として含有する。
【0052】
この導体パターン41は、焼成後に、例えば、接続パッド21および下面側接続パッド22となる。
【0053】
以上のようにして、AlNシート15の所定の領域に導電性ペースト40および導体パターン41が配置された構造体が得られる(
図4の工程C参照)。なお、複数のAlN層を有する配線基板1の場合には、上記の方法で、複数のAlNシート15の構造体を形成した後、各構造体を決められた順序で積層する。
【0054】
その後、焼成工程(S30)を行う。焼成工程(S30)では、導電性ペースト40および導体パターン41が形成されたAlNシート15、またはその積層体を同時焼成する。これにより、AlNシート15はセラミック基板10となる。また、焼成工程(S30)を行うことによって、セラミック基板10の上面10aおよび下面10bなどに酸化被膜13が形成される。
【0055】
なお、焼成工程(S30)には、主として基体部11を形成する工程(S31)と、主主として酸化被膜13を形成する工程(S32)とが含まれる。
【0056】
基体部11を形成する工程(S31)では、例えば、1000℃以上1800℃以下の温度で、かつ、無酸素雰囲気下で、AlNシート15の構造体を焼成する。これにより、AlNシート15の大部分は、AlNを主成分とする基体部11となる(
図4の工程D参照)。また、導電性ペースト40は導電性ビア25となり、導体パターン41は、接続パッド21および下面側接続パッド22などの導体層となる。
【0057】
また、酸化被膜13を形成する工程(S32)では、例えば、1000℃以上1800℃以下の温度でAlNシート15の構造体を焼成した後に、得られた構造体を、例えば、800℃以上であり、かつ、基体部11を形成する工程(S31)での焼成温度以下の温度で熱処理する。具体的には、水素と水蒸気ガスとの混合気体を炉内に供給して焼成する。これにより、AlNシート15の構造体における外側に露出した領域(すなわち、AlNシートの表面における導体パターン41の形成領域以外の領域)に、酸化アルミニウムを主成分とする酸化被膜13が形成される(
図5の工程E参照)。
【0058】
焼成工程(S30)が終了すると、メッキ工程(S40)が行われる。メッキ工程(S40)は、例えば、従来公知の電解めっき法によって実施される。電解めっき法を行うことで、セラミック基板10から露出している導体パターンの表面にメッキ被膜を形成することができる。これにより、例えば、接続パッド21の表面にメッキ層31が形成され、下面側接続パッド22の表面にメッキ層32が形成される(
図5の工程F参照)。
【0059】
メッキ工程(S40)が終了すると、洗浄などの後処理の工程が行われる。以上のようにして、配線基板1が製造される。製造された配線基板1は、例えば、LEDパッケージなどの半導体装置の部品として利用される。
【0060】
例えば、配線基板1がLEDパッケージ100の部品として使用される場合には、配線基板1の接続パッド21上にLED素子50が実装される(
図5の工程G参照)。ここでの接続方法としては、例えば、はんだ接合、Au-Au接合などが挙げられる。はんだを用いた実装は、Au-Au接合と比較して、容易かつ安価に実施できる。また、Au-Au接合を用いた実装を行うことで、LED素子50から配線基板1への熱伝達効率をより高めることができる。
【0061】
接続パッド21上にLED素子50が実装された配線基板1は、ブレード70などを用いてダイシングされる。これにより、例えば、
図2に示すようなLEDパッケージ100が得られる。
【0062】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板10と、セラミック基板10上に設けられている少なくとも一つの導体層(例えば、接続パッド21、および下面側接続パッド22など)とを備えている。セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする。導体層には、配線基板1に実装されるLED素子などの半導体素子が接合される。
【0063】
配線基板1が窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミック基板10で形成されていることで、例えば、酸化アルミニウムを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。したがって、配線基板1は、例えば、LED素子などの発熱性の高い半導体素子を搭載するための配線基板として好適に用いられる。
【0064】
この配線基板1において、セラミック基板10は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部(具体的には、基体部11)と、酸化アルミニウムを主成分とする第2部(具体的には、酸化被膜13)とを有している。この第2部は、セラミック基板10の導体層が設けられた表面(すなわち、接続パッド21が設けられた上面10a、および下面側接続パッド22が設けられた下面10b)において、導体層の形成領域以外の領域に設けられている。また、セラミック基板10の厚み方向の断面視で、第2部と第1部との境界(例えば、
図1に示す境界B1)は、接続パッド21と第1部との境界(例えば、
図1に示す境界B2)よりもセラミック基板10の内側に位置している。
【0065】
上記の構成によれば、セラミック基板10の表面の大部分には酸化アルミニウムを主成分とする第2部(すなわち、酸化被膜13)が設けられている一方、導体層は、窒化アルミニウムを主成分とする第1部(すなわち、基体部11)と接触させることができる。これにより、導体層からセラミック基板10の基体部11への熱伝達が、酸化被膜13によって妨げられることがなくなる。したがって、導体層とセラミック基板10との間の熱伝達をより高めることができる。
【0066】
また、セラミック基板10の表面の大部分が、化学的な安定性のより高い酸化アルミニウムを主成分とする第2部で覆われていることで、セラミック基板10の内側の部分を保護することができる。したがって、セラミック基板10の内側に位置する第2部に含まれる窒化アルミニウムの変質を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態にかかるLEDパッケージ100は、配線基板1と、配線基板1上に搭載されたLED素子(発光ダイオード素子)50とを備えている。上述したように、配線基板1は、他の電子部品から導体層へ伝わった熱を効率的にセラミック基板10の基体部11へと伝達することができる。そのため、本実施形態にかかるLEDパッケージ100においては、LED素子50で発生した熱をより効率的にセラミック基板10へ伝達させることができ、AlNを主成分とするセラミック基板10からの放熱を促進させることができる。
【0068】
また、本実施形態にかかる配線基板の製造方法は、窒化アルミニウムを主成分とする絶縁シート(例えば、AlNシート15)上に、導電性材料を含有する導体パターン(例えば、導体パターン41)を形成するパターン形成工程(S20)と、導体パターンが形成された絶縁シートを焼成する、焼成工程(S30)とを含む。すなわち、この製造方法では、焼成前のAlNシート上に所定形状の導体パターンを形成した後に、AlNシートと導体パターンとを同時に焼成する、いわゆる同時焼成法によって配線基板が製造される。
【0069】
そして、焼成工程(S30)では、絶縁シートの表面における導体パターンの形成領域以外の領域に酸化アルミニウムを形成する。より具体的には、焼成工程(S30)は、無酸素雰囲気下でAlNシート15を焼成して主に基体部11を形成する工程(S31)と、焼成したAlNシート15を熱処理して主に酸化被膜13を形成する工程(S32)とを含む。
【0070】
上記の製造方法によれば、AlNシート15の表面のうち、導体パターン41が形成されている領域には酸化アルミニウムの被膜が形成されることなく、それ以外の領域に酸化アルミニウムの被膜を形成することができる。
【0071】
これにより、セラミック基板10の表面の大部分には酸化アルミニウムを主成分とする酸化被膜13が設けられている一方、導体層は、窒化アルミニウムを主成分とする基体部11と接触した状態の配線基板を得ることができる。また、セラミック基板10の厚み方向の断面視で、酸化被膜13と基体部11との境界(例えば、
図1に示す境界B1)が、接続パッド21と基体部11との境界(例えば、
図1に示す境界B2)よりもセラミック基板10の内側に位置しているような構成を有する配線基板を得ることができる。すなわち、本実施形態にかかる配線基板1のような構成を有する配線基板を製造することができる。
【0072】
以上のように、本実施形態にかかる配線基板の製造方法によれば、導体層からセラミック基板への熱伝達をより向上させることのできる配線基板を製造することができる。また、この製造方法で得られる配線基板においては、導体層の下面が基体部11と接触しつつ、導体層の周囲を酸化被膜13で囲まれた状態とすることができる。これにより、セラミック基板に対する導体層の密着性を高めることができる。
【0073】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる半導体装置200について、
図6および
図7を参照しながら説明する。本実施形態にかかる半導体装置200は、例えば、LED照明装置などの電子部品として好適に利用され得る。
【0074】
図6に示すように、半導体装置200は、主として、配線基板201と、LED素子250と、プリント基板260とを備えている。配線基板201は、第1の実施形態で説明した配線基板101と同様の構成が適用できる。
【0075】
配線基板201は、主として、セラミック基板(絶縁基板)10と、複数の導体パターンとで構成されている。第1の実施形態と同様に、セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする。本実施形態では、便宜上、略平板状のセラミック基板10においてLED素子50と接続される側の面を上面10aとし、プリント基板260と接続される側の面を下面10bとする。
【0076】
また、配線基板1を分割(ダイシング)して得られる配線基板201の切断面を、セラミック基板10の側面10cとする。この側面10cには、酸化被膜13は設けられていない。
【0077】
導体パターンは、セラミック基板10の上面10a、および下面10bなどに設けられている。
図6に示す例では、セラミック基板10の上面10aに、導体パターンの一例である接続パッド(導体層)21が2個設けられており、セラミック基板10の下面10bに、導体パターンの一例である下面側接続パッド(導体層)22が2個設けられている。第1の実施形態と同様に、接続パッド21の表面には、メッキ層31が設けられており、下面側接続パッド22の表面には、メッキ層32が設けられている。
【0078】
接続パッド21は、LED素子250との電気接続を実現するための第1接続端子221となる。また、下面側接続パッド22は、プリント基板260との電気接続を実現するための第2接続端子222となる。
【0079】
LED素子250は、主として、発光部251、蛍光体252、およびバンプ253などを備えている。また、LED素子250の周囲は、樹脂255によって覆われている。
【0080】
バンプ253は、発光部251の下面に少なくとも一つ設けられている。
図6に示す例では、配線基板201に設けられている2つの第1接続端子221と対応する位置に、2つのバンプ253が設けられている。バンプ253の表面は、金(Au)を含有する金属被膜(例えば、メッキ層)などで形成されている。
【0081】
これにより、配線基板201の第1接続端子221表面のメッキ層31に含まれる金(Au)と、LED素子250のバンプ253に含まれる金(Au)との間で、Au-Auフリップチップ接続が実現できる。
【0082】
プリント基板260は、半導体装置200の土台部分を構成する。プリント基板260は、主として、本体部261、および複数の導体パターン(例えば、薄膜導体層262など)を備えている。本体部261は、主に絶縁基板で形成されている。導体パターンは、本体部261の表面および内部などに設けられている。各導体パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、および接続端子などとして機能する。
【0083】
導体パターンの一例である薄膜導体層262は、プリント基板260の上面に設けられている。
図6に示す例では、配線基板201に設けられている2つの第2接続端子222と対応する位置に、2つの薄膜導体層262が設けられている。薄膜導体層262は、例えば、はんだ264によって配線基板201の第2接続端子222と電気的に接続されている。
【0084】
半導体装置200を製造する場合には、先ず、第1の実施形態で説明した方法などを用いて配線基板1を製造する。その後、配線基板201の上面10a側に、例えば、Au-Au接続などによってLED素子250を実装する。
【0085】
その後、配線基板1上にLED素子250が搭載された状態で、LED素子250の周囲に、液状の樹脂材料が流し込まれる。この樹脂材料が硬化することで、LED素子250は、樹脂255によって密封された状態となる。
【0086】
図7のAには、配線基板1の上面10a上にLED素子250が実装され、LED素子250の周囲に樹脂255が形成された状態の構造体を示す。この構造体を、ブレード70などを用いてダイシングする。これにより、
図7のBに示すような構造体(すなわち、配線基板201上にLED素子250が実装された構造体)が得られる。
【0087】
続いて、プリント基板260上に、
図7のBに示す構造体を実装する。具体的には、例えば、はんだ264を用いて、プリント基板260の薄膜導体層262と、配線基板201の第2接続端子222とを接続する。これにより、
図6に示す半導体装置200が得られる。
【0088】
以上のように、本実施形態にかかる半導体装置200は、AlNを主成分とするセラミック基板10を有する配線基板201を備えている。配線基板201のセラミック基板10がAlNを主成分とする材料で形成されていることで、例えば、アルミナを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。
【0089】
そのため、LED素子250などのように発熱量のより大きい半導体素子を実装する場合に、本実施形態の構成を適用することで、LED素子250で発生した熱を、バンプ253と第1接続端子221との接続部分を介して、より効率的にセラミック基板10へ伝達させることができる。
【0090】
セラミック基板10へ伝達された熱は、第2接続端子222および薄膜導体層262を介して、プリント基板260側へと伝達される。プリント基板260には、ヒートシンクなどの放熱部材(図示せず)が設けられていることが好ましい。これにより、プリント基板260へ伝達された熱を、放熱部材から効率よく放出させることができ、LED素子250が高温となることをさらに抑制することができる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 :配線基板
10 :セラミック基板(絶縁基板)
10a :(セラミック基板の)上面(絶縁基板の表面)
10b :(セラミック基板の)下面(絶縁基板の表面)
11 :基体部(第1部)
13 :酸化アルミニウム被膜(第2部)
20 :バンプ
21 :接続パッド(導体層)
22 :下面側接続パッド(導体層)
31 :メッキ層
32 :メッキ層
50 :LED素子(半導体素子)
100 :LEDパッケージ(半導体装置)
101 :配線基板
200 :半導体装置
210 :配線基板
250 :LED素子(半導体素子)
260 :プリント基板