(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175605
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】リサイクルポリマー組成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20221117BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082164
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】519261770
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミット・ブイ・デサイ
(72)【発明者】
【氏名】フレディ・フェルフールト
(72)【発明者】
【氏名】ラリッサ・ピニェイロ
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ・ア・エル・マリ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA002
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD041
4J002BN151
4J002BP033
4J002CC031
4J002CF001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG001
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL001
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DK006
4J002DL006
4J002FD016
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】成形品又は押出品としての使用に好適な十分な物理的特性を有する又は衝撃強度などの物理的特性が向上した様々な起源のリサイクル材料を豊富に含むポリマー組成物を提供すること。
【解決手段】リサイクルポリマー組成物が開示される。該リサイクルポリマー組成物は、消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料(集合的にPCRという)を含有する。前記リサイクル組成物は、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、フランジカルボン酸のポリエステル、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物から選択される50~99.5重量%のPCR、35重量%以下の未使用ポリマー及び0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー(SBC)を含有する。SBCを含有するリサイクルポリマー組成物から形成された物品は、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、SBCを含まない組成物から形成された物品と比較して、少なくとも10%高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、該組成物の全重量に対して、
プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、フランジカルボン酸のポリエステル、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物の群から選択される50~99.5重量%の消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料、
引張弾性率(ASTM D638による)が少なくとも200psiである35重量%以下の未使用ポリマー、及び
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)、スチレン-イソプレン(SI)及びそれらの混合物の群から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー
から本質的になり、
前記ポリマー組成物から形成された試料が、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、前記スチレンブロックコポリマーを含まない組成物から形成された試料と比較して、少なくとも10%高い、
ポリマー組成物。
【請求項2】
前記スチレンブロックコポリマーが、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)の群から選択され、
前記スチレンブロックコポリマーが、スチレン又はエチレン-ブチレンブロックのいずれかにグラフト化された少なくとも1つの官能基を有し、官能基が、シラン、スルホン酸、エポキシド、アクリレート及びカルボン酸基の群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記スチレンブロックコポリマーが、部分的に水素化、選択的に水素化又は完全に水素化される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記スチレンブロックコポリマーが、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記未使用ポリマーが、ASTM D1238による190℃/2.16kgにおけるメルトフローレートが少なくとも0.5g/10分である、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物から形成された試料が、前記スチレンブロックコポリマーを含まないポリマー組成物から形成された試料と比較して、曲げ弾性率の低下が40%未満である、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料が、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料が、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
ポリマー組成物であって、該組成物の全重量に対して、
プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、フランジカルボン酸のポリエステル、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物の群から選択される85~99.5重量%の消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料、及び
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)及びそれらの混合物から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー
から本質的になり、
前記ポリマー組成物から形成された試料が、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、前記スチレンブロックコポリマーを含まない組成物から形成された試料と比較して、少なくとも10%高い、
ポリマー組成物。
【請求項10】
リサイクルポリマー組成物であって、該組成物の全重量に対して、
少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは100重量%の、カーペットパイルからのポリアミド、オレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はそれらの混合物からなる群から選択されるカーペットパイル材料から回収されたポリマーを含む85~99.5重量%のリサイクルカーペット材料、及び
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)及びそれらの混合物から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー
から本質的になる、組成物。
【請求項11】
前記リサイクルカーペット材料が、炭酸マグネシウム、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、フライアッシュ、ガラスカレット、重晶石、ガラス繊維、ガラス粉末、金属粉末、アルミナ、アルミナ水和物、粘土、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、タルク、カーボンブラック又は黒鉛、フライアッシュ、セメント粉塵、長石、霞石、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、ガラス微小球、チョーク、酸化アンチモン、酸化デカブロモビフェニル、ホウ酸塩、ハロゲン化化合物及びそれらの混合物から選択される充填剤をさらに含む、請求項10に記載のリサイクルポリマー組成物。
【請求項12】
前記リサイクルカーペット材料が、カーペット裏地及びカーペットバインダー並びにそれらの混合物のいずれかをさらに含む、請求項10~11に記載のリサイクルポリマー組成物。
【請求項13】
リサイクルポリマー組成物であって、該組成物の全重量に対して、
カーペット裏地及びカーペットバインダーのいずれかから回収され、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは100重量%の、スチレンブタジエンゴム、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(c-SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、スチレンアクリルラテックス及びビニルアクリルコポリマーを含むアクリルラテックス、スチレン-ブタジエンコポリマー及びそれらの組み合せから選択されるラテックスバインダーを含む、85~99.5重量%のリサイクルカーペット材料、及び
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)及びそれらの混合物から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー
から本質的になり、
前記リサイクルポリマー組成物から形成された物品が、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、前記スチレンブロックコポリマーを含まない組成物から形成された物品と比較して、少なくとも10%高い、
リサイクルポリマー組成物。
【請求項14】
前記リサイクルカーペット材料が、ポリアミド、ポリアミドコポリマー、ポリアミドターポリマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの組み合せから選択されるリサイクルカーペットパイル材料をさらに含む、請求項13に記載のリサイクルポリマー組成物。
【請求項15】
リサイクルポリマー組成物であって、該組成物の全重量に対して、
a)85~99.5重量%のリサイクルカーペット材料であって、
カーペットパイルからのポリアミド、オレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はそれらの混合物からなる群から選択されるカーペットパイル材料からの40~60重量%のポリマー、
カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(c-SBR)を含むスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、アクリルラテックス、スチレン-ブタジエンコポリマー及びそれらの混合物から選択される10~50重量%のカーペット裏地又はカーペットバインダー
を含む、リサイクルカーペット材料、
b)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SEB/SS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)及びそれらの混合物から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマー、及び
c)炭酸マグネシウム、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、フライアッシュ、ガラスカレット、重晶石、ガラス繊維、ガラス粉末、金属粉末、アルミナ、アルミナ水和物、粘土、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、タルク、カーボンブラック又は黒鉛、フライアッシュ、セメント粉塵、長石、霞石、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、ガラス微小球、チョーク、酸化アンチモン、酸化デカブロモビフェニル、ホウ酸塩、ハロゲン化化合物及びそれらの混合物から選択される、5重量%以下の充填剤
から本質的になり、
前記リサイクルポリマー組成物から形成された物品が、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、前記スチレンブロックコポリマーを含まない組成物から形成された物品と比較して、少なくとも10%高い、
リサイクルポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リサイクル材料、例えばポリマーを含有する組成物及び前記組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リサイクル材料、例えば消費財廃棄物リサイクル(PCR)材料及び産業廃棄物リサイクル(PIR)材料を利用する必要性が高まっている。欧州連合は、各加盟国が2030年までに全ての包装品の少なくとも70%をリサイクルし、2035年までに家庭のリサイクル率を65%にするとの目標を設定した。リサイクル材料、特にPCR源に対する近代的な選別技術により、ポリマーを様々な画分、例えばプロピレン系画分及びエチレン系画分に選別することが可能であるが、この選別は完璧でなく、まだ汚染がある。汚染があるため、各画分を問題なく使用できる用途は、相当する未使用ポリマーを使用する用途に比べて限定的である。リサイクル画分を含有する組成物は、一般に、ブロー成形品及び押出品を含む異なる用途に対する十分な衝撃強度などの好適な物理的特性を発揮しないため、末端使用側の耐久性が限られてしまう。この問題は、リサイクル樹脂に不純物が存在する場合に悪化し、リサイクルポリマー中の不純物又は汚染物質が欠陥として作用して、靭性及び強度などの機械特性をさらに低下させる。
【0003】
アメリカ人は、毎年約390万トンのカーペット及び絨毯を廃棄している(2019年のデータ)。米国初のカーペットリサイクル法により、CARE(CARPET AMERICA RECOVERY EFFORT)の下で取り組みが行われて、カリフォルニアでは最大24%のリサイクル率が達成された。カーペット屑は、カーペットの製造又は古い車のパーツ又は建設業から生じる廃棄物になり得る。引張強度及び曲げ弾性率を高めるためにプラスチック木材にカーペット繊維リサイクレートが添加されたが、この手法は衝撃強度の低下をもたらすものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品又は押出品としての使用に好適な十分な物理的特性を有する又は衝撃強度などの物理的特性が向上した様々な起源のリサイクル材料を豊富に含むポリマー組成物を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
第1の態様では、リサイクルポリマーを含有する組成物が開示される。前記組成物は、組成物の全重量に対して、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、フランジカルボン酸のポリエステル、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物の群から選択される50~99.5重量%の消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料、(ASTM D638による)引張弾性率が少なくとも200psiである25重量%以下の未使用ポリマー、及びスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)、それらの水素化同等物及びそれらの混合物から選択される0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマーを含む又は当該材料から本質的になる又は当該材料からなる。前記ポリマー組成物から形成された試料が、ASTM D256に従って23℃で測定したノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値が、前期スチレンブロックコポリマーを含まない組成物から形成された試料と比較して、少なくとも10%高い。
【0006】
別の態様では、リサイクルポリマー組成物から形成された物品の性能を高める方法が開示される。前記方法は、50~99.5重量%の消費財廃棄物及び/又は産業廃棄物のリサイクル材料、(ASTM D638による)引張弾性率が少なくとも200psiである25重量%以下の未使用材料、及び0.5~15重量%のスチレンブロックコポリマーから本質的になる混合物を混和することを含む又は当該工程から本質的になる又は当該工程からなる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に用いられている以下の用語は、以下の意味を有する。
【0008】
「産業廃棄物リサイクル」(PIR)は、工業的過程から発生するプラスチック屑材料を指す。PIRは、一般に、汚染前の状態であり、投入樹脂の種類は公知である。
【0009】
「リサイクレート」は、廃棄物リサイクル工場又は材料回収施設に送られて処理され、新たな製品を形成するのに使用されることになる原料を指す。
【0010】
ポリマー又は材料に関する「消費財廃棄物リサイクル」(PCR)は、本来の材料メーカーによって最初に加工された後で押し出されたポリマー材料を指す。換言すれば、PCRは、例えば消費者包装又は工業包装として既に使用されたポリマー材料を指す。PCR材料は、消費財廃棄物リサイクル源に由来する、又は産業廃棄物リサイクル(即ちPIR)源と消費財廃棄物リサイクル源との混合物に由来してもよい。PCRは、未使用ポリマーを含まない又は除外するものである。
【0011】
消費財廃棄物リサイクル、PCR、PCR材料又はPCRポリマー若しくはPCRは、PIR、異なるPIR、異なる起源のPIR、リグラインドPCR、異なるPCR、異なる起源のPCR、リサイクレート及びそれらの混合物を含む「リサイクル組成物」、「リサイクルポリマー」、「廃ポリマー」と区別なく使用可能である。
【0012】
「未使用ポリマー」は、製造産業における又は消費者による末端用途向けの物品に未加工かつ/又は未形成の、製造時の状態のポリマーを指す。未使用ポリマーは、未使用ポリマーを得るためにモノマー及び/又はコモノマーの重合に通常使用される添加剤を含んでもよい。かかる添加剤としては、触媒、阻害剤、捕捉剤、溶媒、連鎖調節剤、加工補助剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
「モノビニルアレン」又は「モノアルケニルアレン」又は「ビニル芳香族化合物」は、単一の炭素-炭素二重結合、少なくとも1つの芳香族部分及び8~12個の炭素原子など合計8~18個の炭素原子を含有する有機化合物を指す。例としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン又はそれらの混合物のいずれかが挙げられる。実施形態において、モノアルケニルアレンブロックは、実質的に純粋なモノアルケニルアレンモノマーを含む。いくつかの実施形態において、スチレンが主成分であり、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、a-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン又はそれらの混合物などの構造的に関連するビニル芳香族モノマーを低比率(10重量%未満)で含む。実施形態において、スチレン単独が使用される。
【0014】
「共役ジエン」は、共役状態にある2つのアルケン結合を含む分子を指し、換言すれば、共役ジエンは1つの一重結合によって分離された共役二重結合を有する。共役ジエンは、1,3-ブタジエン並びにイソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、クロロプレン及びピペリレンなどの置換ブタジエン又はそれらの組み合せのいずれかとなり得る合計4~12個の炭素原子、例えば4~8個の炭素原子を有する。実施形態において、共役ジエンブロックはブタジエンとイソプレンモノマーとの混合物を含む。実施形態において、1,3-ブタジエン単独が使用される。
【0015】
「ブタジエン」は1,3-ブタジエンを指す。
【0016】
「ビニル含有量」は、ブタジエンの場合は1,2-付加を介して又はイソプレンの場合は3.4-付加を介して重合されて、ポリマー骨格に隣接する一置換オレフィン又はビニル基を生成する共役ジエンの含有量を指す。ビニル含有量は、核磁気共鳴分析法(NMR)によって測定可能である。
【0017】
「分子量」又はMWは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのkg/mol単位のスチレン相当分子量を指す。MWは、例えばASTM5296-19に従って行われる、ポリスチレン較正標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である。GPC検出器は、紫外線検出器又は示差屈折率検出器又はそれらの組み合せとすることができる。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を用いて較正される。このように較正されたGPCを用いて測定されるポリマーのMWは、スチレン相当分子量又は見掛け分子量である。本明細書に記載のMWは、GPCトレースのピークで測定され、通常、Mpで表されるスチレン相当「ピーク分子量」と呼ばれる。
【0018】
「カップリング効率」は、%CEで表わされ、結合ポリマーの重量%及び非結合ポリマーの重量%の値を用いて計算される。結合ポリマー及び非結合ポリマーの重量%は、示差屈折率検出器の出力を用いて測定される。特定の溶出体積における信号強度は、その溶出体積で検出されるポリスチレン標準に相当する分子量を有する材料の量に比例する。結合ポリマーに相当するMW範囲に広がる曲線下の面積は、結合ポリマーの重量%を表わし、非結合ポリマーについても同様である。%CEは、(結合ポリマーの重量%/結合ポリマーの重量%+非結合ポリマーの重量%)の100倍によって与えられる。カップリング効率は、GPCによるデータを計算すること、即ち全ての結合ポリマー(2アーム、3アーム、4アームなどのコポリマーを含む)のGPC曲線下の積分面積を、結合ポリマー及び非結合ポリマーのGPC曲線下の積分面積で割って測定することもできる。
【0019】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含有量」又はPSCは、ブロックコポリマーにおけるビニル芳香族化合物、例えばポリスチレンの重量%を指し、全てのビニル芳香族ブロックの分子量の合計を、ブロックコポリマーの総分子量で割ることによって計算される。PSCは、プロトン核磁気共鳴(NMR)などの好適な手法を用いて測定可能である。
【0020】
スチレンブロックコポリマーに関する「放射状」は、星形の、対称分岐形状又は異分岐形状又は非対称分岐形状を指し、これらと同義に用いられる。
【0021】
「tanδピーク」は、スチレンブロックコポリマーの固体粘弾性測定(1Hz)によって得られる温度損失正接(tanδ)曲線を指し、水素化ブロックコポリマーのガラス転移が指定範囲内にあることを示す。
【0022】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」及び同様の用語は、2種以上のポリマーからなる組成物を指す。かかるブレンドは、混和性であってもなくてもよい。かかるブレンドは、相分離していてもいなくてもよい。かかるブレンドは、領域構成の測定及び/又は特定に用いられる透過電子分光法、光散乱、X線散乱及び他の方法から判定される1つ以上の領域構成を含んでいてもいなくてもよい。
【0023】
本開示は、少なくとも50%の消費財廃棄物リサイクル(PCR)材料、25重量%以下の未使用ポリマー及び剛性を有意に低下させることなく必要な衝撃強度を実現するための添加剤としてのスチレンブロックコポリマー(SBC)を含むリサイクルポリマー組成物又はブレンドに関する。実施形態において、リサイクルポリマー組成物は80~99.5%の量のPCR材料及びSBCである残余から本質的になる又は当該材料からなる。SBC添加剤を使用すると、最終組成物においてより多量のリサイクル含有物を使用することが可能になる。
【0024】
PCR/PIR成分:リサイクルポリマー組成物は、(ポリマー組成物の全重量に対して)50重量%以上99.5重量%以下のPCR材料を含有する。実施形態におけるPCRは、産業廃棄物リサイクルポリマー、消費財廃棄物リサイクルポリマー及びそれらの組み合せを含む追跡可能な起源から調達される。
【0025】
PCRの起源は工業的起源又は消費者起源とすることができ、非限定的な例としては、食品包装、消費者包装、ブロー成形ボトル、フィルム、注射器ケース、点滴バッグ、チュービング、チュービング取り付け具及びそれらの組み合せが挙げられる。実施形態におけるPCRとしては、ソーダボトル及び他の特注PET容器から回収されたポリエチレンテレフタレート(PET)材料、ミルクボトル及び着色高密度ポリエチレン(HDPE)容器を含むがこれらに限定されない起源から回収されたHDPE、並びにポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA6及び/又はPA66)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、(ガラス繊維含有)ポリエステル、尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物からなる他のPCR材料が挙げられる。
【0026】
実施形態におけるPCR材料は、主たるリサイクルポリマー以外の材料、例えばその本来の使用後の残留物、紙、接着剤、インク、ナイロン、臭気発生剤などを含んでもよい。実施形態において、PCRは非ポリマー材料及び汚染物質を含む。実施形態において、PCRは、エチレン酢酸ビニル(EVA)及び/又はEVOH(エチレンビニルアルコール)を含有することが多い、ラベルをボトルに貼り付けるために使用される接着剤を含む。
【0027】
実施形態において、PCRは、カーペット材料、例えば、カーペット廃棄物、例えば、カーペット裏地、カーペットパイル及びそれらの組み合せのいずれかであり得る消費財廃棄物カーペット及び/又はカーペット屑材料を含み、リサイクルカーペット材料はリサイクレート又は樹脂の形態で入手可能である。一般に販売されているカーペット全体は約40~60重量%のパイル、10~15%の裏地、35~50%のバインダー(例えばラテックス材料)、5%以下の充填材料を含有する。消費財廃棄物カーペットは、40~55%のパイル、10~15%の裏地(織物を含んでもよい)、30~35%のバインダー並びに5~20%のデブリ(例えば汚れ)、充填材料及び他の不純物を含んでもよい。
【0028】
カーペット裏地は、カーペットパイルを固定するカーペットの下側を指し、カーペットにさらなる強度及び寸法安定性を与える。いくつかのカーペットは、糸が織り込まれた一次裏地、床と接触する外側材料である二次裏地及び任意選択の一次裏地層と二次裏地層との間にある任意選択のバインダー層を含む二重背面を有する。実施形態において、カーペット裏地は、ポリ塩化ビニル(PVC)並びに/又はカルボキシル化スチレンブタジエンゴム(c-SBR)を含むスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、スチレンアクリルラテックス及びビニルアクリルコポリマーを含むアクリルラテックス、スチレン-ブタジエンコポリマー及びそれらの組み合せから選択されるラテックスバインダーを含む。実施形態において、カーペット裏地は、オレフィン織物裏地などの織物裏地及びバインダー材料(例えば無機充填剤及び接着剤)をさらに含む。織物裏地は、輪状のポリマー繊維(カーペットパイル)を機械的にかつ/又は化学的に(例えば接着剤を介して)固定するために使用される。
【0029】
カーペットパイルは、ループパイル、カットパイル又はタフトパイルの形態とすることができるカーペット表面の個々の房又は糸を含む、カーペット表面を指す。実施形態におけるリサイクルカーペットパイルの糸/房は、ポリアミド(例えばナイロン6及び/又はナイロン6,6及び/又はコポリマー/ターポリマー)、ポリオレフィン(PE、PP及びそれらのコポリマー)及びPET並びにそれらの混合物のいずれかを含む。充填材料は、炭酸マグネシウム、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、フライアッシュ、ガラスカレット、重晶石、ガラス繊維、ガラス粉末、金属粉末、アルミナ、アルミナ水和物、粘土、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、タルク、カーボンブラック又は黒鉛、フライアッシュ、セメント粉塵、長石、霞石、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、ガラス微小球、チョーク、酸化アンチモン、酸化デカブロモビフェニル、ホウ酸塩、ハロゲン化化合物及びそれらの混合物から選択される。
【0030】
実施形態におけるリサイクルカーペット材料からのPCRは、参照により本明細書に組み込む米国特許第5,194,384号及び米国特許公開第20150322231号に従って加工又は生成された全ての成分を含有するリサイクレートであり、カーペットは成分部分に分離することなく溶融ブレンドされて異種組成物とされた後、押出物に成形される。リサイクルカーペット材料は、無機充填剤をカーペットから回収するために、参照により本明細書に組み込む欧州特許公開第0728565号に従って加工された、ナイロン繊維粒子を裏地材料粒子から分離して加工された、又は米国特許公開第US20100330288号に開示されているように加工された、リサイクルカーペットからの個別成分として使用することも可能である。
【0031】
実施形態において、リサイクルカーペット材料からのPCRは、カーペットパイルからのポリアミド、オレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はそれらの混合物から選択される40~60重量%のカーペットパイル材料、5重量%以下の充填材料及び骨材材料又は別の成分としてのc-SBRなどのラテックスバインダーを含む10~50%の裏地材料を含有する。
【0032】
実施形態において、リサイクルカーペットからのPCRは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは100重量%のカーペットバインダー/カーペット裏地材料を含む。
【0033】
実施形態において、リサイクルカーペットからのPCRは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは100重量%のカーペットパイルを含む。
【0034】
実施形態において、リサイクルカーペットからのPCRは、統合した全ての材料、即ちカーペットパイル並びにカーペット裏地/バインダー材料を含むリサイクレートである。
【0035】
実施形態において、PCRは、オレフィン系材料、例えばプロピレン系ポリマー及びエチレン系ポリマー及び混合物である。非限定的な例としては、PCRポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、極低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレンン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/a-オレフィンマルチブロックコポリマー(又はオレフィンブロックコポリマー(OBC))、実質的に線状又は線状のプラストマー/エラストマー及び高密度ポリエチレン(HDPE)のいずれかからのPCRが挙げられる。
【0036】
実施形態において、PCRは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5フランジカルボキシレート(PEF)などのフランジカルボン酸のポリエステル及びそれらの混合物の群から選択される。
【0037】
実施形態において、PCRは、カーペット裏地、カーペットパイル及びそれらの組み合せのいずれかとすることができるカーペット屑材料からのリサイクレート並びにポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド及びラテックス材料のいずれかの混合物を含む又は当該材料から本質的になる又は当該材料からなる。
【0038】
実施形態において、PCRは、極性ポリマー、例えばポリアミド(ナイロン6及び/又はナイロン6/6を含む)、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの混合物を含む、当該材料から本質的になる又は当該材料からなる。
【0039】
実施形態において、リサイクルポリマー組成物におけるPCRの量は、リサイクルポリマー組成物の全重量の70%以上又は75%以上又は90%以上又は98%以上又は50~80重量%又は85~99.5重量%であり、PCRはPCR HDPE、PCR PET、PCR PP及びそれらの混合物の群から選択される。
【0040】
実施形態において、リサイクルポリマーは、PCR PETとPCR HDPE(又はPCR PP)との混合物を1:1~1:4の範囲の比率で含有する。
【0041】
未使用ポリマー:実施形態において、リサイクル組成物は、(最終のポリマー組成物の全重量に対して)35重量%以下又は20重量%以下又は0~30重量%の、(ASTM D638による)引張弾性率が200psi超又は225psi超又は250psi超である未使用ポリマーを含有する。実施形態において、未使用ポリマーは、ASTM D1238による190℃/2.16kgにおけるメルトフローレートが0.5g/10分超又は0.75g/10分超又は1.0g/10分超又は1.5g/10分超である。未使用ポリマーは、PCRに含まれるポリマーと同一又は異なる、様々なポリマーの混合物とすることができる。
【0042】
未使用ポリマーは、存在すれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA6及び/又はPA66)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル尿素-ホルムアルデヒド及びそれらの混合物の群から選択される。実施形態において、未使用ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらのコポリマーから選択される。
【0043】
スチレンブロックコポリマー添加剤:この添加剤は、ジエンモノマー又は複数のジエンモノマーの混合物を含むゴム中間ブロック相及び環状共役ジエンモノマー又はビニル芳香族モノマー又はそれらの混合物を含む剛性相を有する、スチレンブロックコポリマー(SBC)である。実施形態において、ブロックコポリマーは、ジエンゴム中間ブロックに共重合された環状共役ジエンモノマー及びビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを有する。実施形態において、ブロックコポリマーは水素化されない、又は部分的、選択的若しくは完全に水素化される。
【0044】
実施形態において、SBCは完全に水素化されるが、これは、SBC中の各水素化モノアルケニルアレンポリマーブロックは92%超又は95%超又は99%超の水素化レベルを有し、水素化共役ジエンは90%超又は92%超又は95%超又は99%超、又は好ましくは99.5%超、又は最も好ましくは99.8%超の水素化レベルを有することを意味する。
【0045】
実施形態において、SBCは部分的に水素化されるが、これは、共役ジエンの水素化の比率又はレベルは95%以下、好ましくは20~90%であることを意味する。
【0046】
実施形態において、SBCは選択的に水素化されるが、これは、脂肪族不飽和が有意に除去される一方、芳香族不飽和の大部分が影響を受けずに残る、即ちポリモノアルケニルアレーン単位は選択的水素化の過程で水素化されないことを意味する。
【0047】
SBC添加剤は、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)及びスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)又はそれらの水素化同等物のいずれかから選択される。スチレンモノマーは、任意の順序及び任意の配分でジエンブロックに導入又は共重合させることができる。SBCは、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーポリマーブロックA及び少なくとも1つの共役ジエンポリマーブロックB、任意選択的に結合剤残留物Xを含む、線状、放射状又は分岐状(多アーム)のブロックコポリマーのいずれかであり得る。実施形態において、ブロックBは、シクロヘキサジエンブタジエン及びイソプレンブロックのコポリマーの少なくとも1つを含み、ポリブタジエン及びポリイソプレンのソフトブロックを水素化することができ、ポリシクロヘキサジエンブロックを水素化又は脱水素化することができる。
【0048】
実施形態におおいて、SBCは、スチレン-イソプレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン(SIBIS)などの非水素化ペンタブロックコポリマーである。実施形態において、実施形態のSBCは、A-B-A、A-I-B-I-A、(A-I-B)n-X又は(A-B)n-Xの一般的構造を有する非水素化ブロックコポリマーである。各Aブロックは、独立にビニル芳香族化合物である。各Iは、主にイソプレンである。各Bは、主にブタジエンである。Xは結合剤残留物であり、nは2以上の整数である。
【0049】
実施形態において、SBCは、式A-B-A又は(A-B)n-Xの水素化ブロックコポリマーであり、Xは結合剤残留物であり、nの値は3である。水素化の前は、各Bブロックは共役ジエンのポリマーであり、各Aブロックはビニル芳香族化合物である。
【0050】
実施形態において、SBCは、官能基とのグラフト反応によって修飾され、スチレン又はエチレン-ブチレンブロックの化学的官能性部分に化学的に結合される。官能基の例としては、1つ以上の飽和基、又はそれらの誘導体、例えば、カルボン酸基及びそれらの塩、無水物、エステル、イミド、アミド若しくは酸クロリド基を有する不飽和モノマーが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、官能基は、シラン、スルホン酸、リン酸塩、ホスフィンオキシド、リン酸、アルコキシド、ニトリル、チオエーテル、チオール、シリコン含有化合物又はホウ素含有化合物及びそれらの組み合せから選択される。実施形態において、官能基は、アクリル酸の塩、エステル及び共役塩基及びエポキシド及びそれらの組み合せから選択される。例としては、アルコキシ-シラン化合物及びエポキシ化合物が挙げられる。
【0051】
実施形態において、SBCは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸無水物、無水イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物及びアリルコハク酸無水物のいずれかによってグラフト化される。
【0052】
実施形態において、グラフト化用化合物は、1つ以上の官能基、又はそれらの誘導体、例えば、カルボン酸基及びそれらの塩、無水物、エステル、イミド基、アミド基、アミン基、臭化物、酸クロリドなどを有する。例としては、四級アンモニウム塩、カルボン酸/塩、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、アクリル酸グリシジル、シアノアクリレート、ヒドロキシC1~C20アルキルメタクリレート、アクリルポリエーテル、アクリル酸無水物、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウム及びそれらの組み合せが挙げられる。
【0053】
実施形態において、SBCは、10~40%又は12%超又は35%未満又は13~40%の範囲のPSCを有する。実施形態における分子量MWpは、50~250kg/mol又は70kg/mol超又は100kg/mol超又は200kg/mol未満の範囲である。実施形態におけるSBCは、少なくとも40又は45~90又は80未満又は50~75のショアA硬度を有する。
【0054】
実施形態において、SBCは、ジブロック若しくはトリブロック構造又はジブロックとトリブロックとの混合物を有する非水素化ブロックコポリマーである。他の実施形態において、SBCは、式A-B-Aの水素化線状ブロックコポリマー又は式(A-B)n-X(Xは結合剤残留物であり、nの値は3である)の結合ポリマー又はそれらの混合物である。実施形態において、SBCは65~175kg/molのMWp、10~35のPSC及び30~50のビニル含有量を有する。実施形態において、SBCはマレイン酸によってさらにグラフト化される。
【0055】
実施形態において、SBCは、-90℃~20℃又は-50℃未満又は40℃未満の範囲のtanδピーク温度を有する。
【0056】
リサイクル組成物中のPCRの量、使用するPCRの種類及び末端用途に応じて、SBS添加剤の量は、全重量の0.5~15重量%又は1~10重量%又は2重量%超又は9重量%以下又は12重量%以下の範囲である。SBS添加剤の添加を伴う実施形態において、先行技術のようにポリオレフィンエラストマー(POE)添加剤を添加する必要がないことが注目される。実施形態において、リサイクル組成物は、1重量%未満又は0.5重量%未満又は0.25重量%未満のPOE添加剤を含有する。
【0057】
任意選択の成分:実施形態におけるリサイクル組成物は、10重量%以下の、当該技術分野において公知の添加剤、例えば着色剤、潤滑剤、可塑剤、抗酸化剤、安定剤、滑り助剤、抗ブロック剤、充填剤などをさらに含む。
【0058】
SBC添加剤を含むPCR組成物の特性:リサイクル組成物へのSBS添加剤の添加は、リサイクル組成物から形成される物品の剛性、即ち曲げ弾性率に有意に影響することなくリサイクル組成物の衝撃強度を高めることが期待される。SBS添加剤を使用すると、最終のポリマー組成物においてより多量のPCRを使用することも可能になる。
【0059】
実施形態において、SBS添加剤を使用すると、組成物から形成された物品のアイゾッド特性(ASTM D256による23℃におけるノッチ付きアイゾッド又はノッチなしアイゾッド)が、スチレンブロックコポリマーを含まないリサイクルポリマー組成物から形成された物品のノッチ付きアイゾッド衝撃エネルギー値に比べ、少なくとも10%高くなる。実施形態において、23℃におけるノッチ付きアイゾッド特性の上昇は20%以上又は30%以上又は100%以上又は600%以下であり、ノッチ付きアイゾッド特性の上昇は添加したSBSの量に比例する。
【0060】
実施形態におけるノッチ付きアイゾッド特性の上昇は、若干の剛性(曲げ弾性率)低下をもたらし、この低下は添加したSBS添加剤の量に左右され、例えば、使用したSBSの量が少ないほど、剛性低下も少なくなる。実施形態において、剛性低下は10~40%又は30%未満又は15~25%又は5%超の範囲である。
【0061】
組成物/物品の形成方法及びそれらの用途:SBC添加剤をドライブレンドして、当該技術分野において公知の方法、例えば射出成形、ブロー成形、熱成形又は他の公知の加工方法を用いてペレット又は物品を形成する後続の溶融加工向けの混合PCR又はリサイクレートを有する配合物を含め、少なくとも70%のPCR樹脂又はリサイクレートを含有する配合物にすることができる。
【0062】
PCR樹脂は、リサイクル材料から製造された樹脂材料を指す。PCR樹脂は、再生樹脂(再溶融処理後に添加剤と併せて粒状化させたもの)、リグラインド(添加剤を使用せず、再溶融処理後に粒状化させたもの)又は凝集体(添加剤不使用)であってもよい。
【0063】
実施形態において、SBC添加剤を、全てのカーペット成分を含むリサイクレートと直接ドライブレンドすることができる。
【0064】
実施形態において、SBC添加剤は、参照により本明細書に組み込む欧州特許公開第0728565号に従って加工されたリサイクルカーペットからの複合成分又は個別成分と一緒に使用され、ナイロン繊維粒子が裏地材料粒子から分離される。
【0065】
実施形態において、SBC添加剤は、埋立地に送られる廃材又は廃棄物、例えば、LLDPE、使用済みPET系プラスチックボトルなどを含む廃ベールラップと直接ドライブレンドすることができる。
【0066】
実施形態において、SBC添加剤は溶融ブレンドされて、当該技術分野において公知の機器、射出成形機、ブロー成形機、押出機などによるペレット又は物品の形成のための配合物になる。リサイクルポリマー組成物は、容器、標識、車輪、玩具、園芸用品、燃料タンク、家具などの物品の形成に使用することができる。
【0067】
実施形態において、PCRは細胞毒性スコアがゼロである、又は生体適合性を有すると考えられるPCRの場合、PCRポリプロピレンを含むリサイクルポリマー組成物を、医療器具、例えば注射器、針シールド、採血装置などに、成形し、押出し又は他の方法で形成することができる。
【実施例0068】
以下の実施例は、非制限的であることを意図するものである。
【0069】
実施例では、以下の材料が使用される。
【0070】
SBC1は、透明の線状トリブロックグラフト化コポリマーであり、1.4~2重量%のマレイン酸無水物(BAM1026)、30%のPSC、79kg/molのMWp、22g/10分の溶融指数(ASTM D1238による230℃、5kgの条件)及び-44℃のtanδピークを有する。SBC1は、12~36g/10分のメルトフロー(ASTM D1238による230℃、2.16kgの条件)、0.91の比重(ASTM D792)、1360psiの引張強度(ASTM D412)、295%の破断点伸び(ASTM D412)、260psiの100%伸長時弾性率(ASTM D412)を有する。
【0071】
SBC11は、スチレン及びエチレン/ブチレン(SEBS)に基づく線状コポリマーと結合SEBSとの1:1の混合物のマレイン化生成物である。線状SEBSは、29.2%のPSC、79kg/molのMWp、29%のビニル含有量及び6g/10分のMFI(ASTM D1238による230℃、2.16kgの条件)を有する。結合SEBSは、13.3%のPSC、71%のカップリング効率、145kg/molのMWp、44%のビニル含有量及び24g/10分のMFI(ASTM D1238による230℃、2.16kgの条件)を有する。
【0072】
SBC11は、1.4~2.0%のマレイン酸無水物、10~40のPSC、70~150kg/molのMWp、35~50%のビニル含有量、12~36g/10分の溶融指数(ASTM D1238による230℃、2.16kgの条件)及び-40℃のtanδピークを有する。SBC1100は、0.91の比重(ASTM D792)、74のショアA硬度(ASTM D2240)、1360psiの引張強度(ASTM D412)、395%の破断点伸び(ASTM D412)を有する。
【0073】
SBC2は、スチレン及びエチレン/ブチレン(SEBS)に基づく透明の結合線状トリブロックコポリマーであり、13.3のPSC、145kg/molのMWp、44%のビニル含有量、71%のカップリング効率、24g/10分の溶融指数(ASTM D1238による230℃、2.16kgの条件)、-44℃のtanδピーク、580psiの引張強度(ASTM D412)、724%の破断点伸び(ASTM D412)、0.9の比重(ASTM D4025)及び267psiの300%伸びにおける弾性率(ASTM D412)を有する。
【0074】
SBC3は、SBSトリブロックとSBジブロックとの混合物を有するスチレン及びブタジエンに基づく透明の線状ブロックコポリマーであり、29.5のPSC、122kg/molのMWp、83%のカップリング効率、17%のジブロック含有量、39%のビニル含有量、8.5g/10分の溶融指数(ISO 1133による200℃、5kgの条件)、-80℃のtanδピーク、28MPaの引張強度(ISO 37)、1000%の破断点伸び(ISO 37)、0.9の比重(ISO 2781)及び3.6%の300%伸びにおける弾性率(ISO 37)を有する。
【0075】
PCR HDPE1は、PCR高密度ポリエチレンであり、190℃、16kgの条件で0.20~0.80g/10分のメルトフロー指数(MFI)(ASTM D1238)、2000~6000MPaの弾性率(ASTM D638)、8~25MPaの引張降伏強度(ASTM D638)、10~30MPaの流動強度(ASTM D638)、30~80%の比変形(specific deformation)(ASTM D638)、60~100kgfの牽引力(ASTM D638)及び55~65のショアD硬度(ASTM D2240)を有する。
【0076】
PCR HDPE2は、混合色のPCR高密度ポリエチレンであり、0.5g/10分のメルトフロー指数(MFI)(ASTM D1238)、0.95g/mlの比重、3,100psiの引張降伏強度(ASTM D638)、125,000psiの曲げ弾性率(ASTM D790)及びポリプロピレン7%(ASTM D5576)を有する。
【0077】
PCR HDPE3は、PCR高密度ポリエチレンであり、4g/10分のメルトフロー指数(MFI)(ASTM D1238)、0.947g/mlの比重、2+ft-lb/inのノッチ付きアイゾッド衝撃強度(ASTM D256A)、125,000psiの曲げ弾性率(ASTM D1790)、3,000psiの引張降伏強度(ASTM D638)及びポリプロピレン15%(ASTM D5576)を有する。
【0078】
PCR PP1は、PCRポリプロピレンであり、16g/10分のメルトフロー(ASTM D1238)、0.915の比重(ASTM D792)、0.580g/cm3の嵩密度、1200MPaの曲げ弾性率(23℃)、1300MPaの引張弾性率(23℃)、27MPaの引張降伏強度(23℃)、40%の破断点引張歪み(23℃)及び6.0kJ/m2のシャルピー衝撃強度(23℃、タイプ1、エッジ方向、ノッチA)を有する。
【0079】
PCR PP2は、PCRポリプロピレンであり、20g/10分のメルトフロー(ASTM D1238)、0.92の比重(ASTM D792)、3100psiの引張降伏強度(ASTM D638)、8%の伸び(ASTM D638)、130,000psiの曲げ弾性率(ASTM D790)及び2ft-lb/inのノッチ付きアイゾッド(ASTM D256)を有する。
【0080】
PCR PETは、PCRポリエチレンテレフタレートであり、飲料ボトルから調達され、1.394~1.398の密度、0.833g/ccの嵩密度及び240~252℃の融点を有する。
【0081】
POE1は、エチレンオクテンコポリマーであり、0.870g/cm3の密度(ASTM D792)、5g/10分の溶融指数(ASTM D1238による190℃/2.16kgの条件)、2.30MPaの引張弾性率(ASTM D638)、5.70MPaの引張強度(圧縮成形、ASTM D638)、1100%の引張伸び(ASTM D638)、10.9MPaの曲げ弾性率(1,580psi-ASTM D790)、66のショアA硬度(1秒、圧縮成形、ASTM D2240)、-53℃のTg、37℃のTsp(ASTM D1525)及び59℃の融点を有する。
【0082】
POE2は、主に、ランダムエチレン分布を伴うイソタクチックプロピレン反復単位からなり、0.862g/cm3の密度、9.1g/10分の溶融指数(ASTM D1238による190℃、2.16kgの条件)、15%のエチレン含有量、20g/10分の溶融質量流量(230℃/2.16kg)、2.19MPaの100%時引張応力、5.52MPa超の破断点引張強度、800%超の破断点伸び及び12.8MPaの曲げ弾性率を有する。
【0083】
実施例1A~7A
表1に記載の成分がドライブレンドされていくつかの配合物となり、次いで曲げ弾性率測定(ASTM D412)及びノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ASTM D256)向けに230℃で射出成形されてASTM標準バーとなった。コンパウンドのメルトフロー指数(MFI)が230℃、5kgで測定された(ASTM D1238)。結果が表1に示されている。SBC添加剤を含む配合物は、剛性(即ち曲げ弾性率)の有意な低下を生じることなく、ノッチ付きアイゾッド特性の有意な向上を示す。
【0084】
【0085】
実施例1B~10B
表2に記載の配合物が、二軸スクリュー配合機(直径25mm、長さ対直径比又はL/Dは49)を使用して溶融温度230℃で配合された。配合ペレットが220℃で射出成形されて、曲げ弾性率測定(ISO 179)及びノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ISO 190)用のISO標準バーに成形された。コンパウンドのMFIが230℃、2.16kgで測定された(ISO 1133)。結果が表2に示されている。この場合も、SBC添加剤を添加すると、ノッチ付きアイゾッド特性が向上しやすく、曲げ弾性率の低下も比較的小さくなる。
【0086】
【0087】
実施例1C~5C
表3の成分の混合物が、配合をたて、二軸スクリュー配合機(直径25mm、長さ対直径比又はL/Dは35)を使用して230℃の溶融温度で配合された。配合ペレットが240℃で射出成形されて、引張試験(ASTM D638)及びノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ASTM D256)用のASTM標準バーに成形された。表3に示される結果も、曲げ弾性率が幾分低下したが、ノッチ付きアイゾッドが有意に向上することを示している。
【0088】
【0089】
実施例1D~5D
表4に示される配合の混合物が、実施例1C~5Cと同様に配合され、射出成形され、測定された。表4に示される結果は、曲げ弾性率が幾分低下するが、ノッチ付きアイゾッドが有意に向上することを示している。
【0090】
【0091】
実施例1E~5E
実施例1Eの場合、ドライブレンドされた70%のPCR PP1、25%の未使用ポリプロピレン、4%のマスターバッチ色素及び1%のSBS300からなる配合物が230℃で射出成形されて、曲げ弾性率測定(ASTM D412)及びノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ASTM D256)用のASTM標準バー(プラーク)に成形された。これらの実施例は、再加工PCRの強度特性が、5回「再加工」された後でもPCR材料について許容可能な変動レベル内に留まることによって、SBS添加剤が「リサイクル可能」となり得ることを示す。
【0092】
プラークがリグラインドされ、「新たな」プラークがリグラインドから生成され、特性が実施例2Eと同様に再測定された。
【0093】
実施例2Eが3E、4E及び5Eとして繰り返され、各リグラインドがプラーク化された後に曲げ弾性率及び衝撃強度特性が測定された。結果が分析された。
【0094】
実施例2E~5Eでは、MFI(6.0~7.1g/10分)(230℃、2.16kg)が、各射出成形サイクル後に非常に類似していた。実施例1Eでは、材料ブレンドが均一でなかったため、MFIを測定しなかった。
【0095】
ノッチ付きアイゾッド衝撃強度は、変動範囲が55J/m~63J/m(室温)であり、再加工材料では正常な変動であると考えられるが、SBS3000を含まないブレンドの衝撃強度よりさらに高い。
【0096】
曲げ弾性率(室温での剛性)は、変動範囲が800MPa~約950MPaであり、リサイクル材料について許容可能な範囲内である。
【0097】
各実施例の(成形前の)リグラインドが、水を入れた瓶に投入され、観察された。同等の配合物(SBS3000を含まない)によるリグラインドは瓶の底に沈んだのに対して、SBS3000を含む実施例からのリグラインドは水に浮いた。リサイクル処理を容易にするために、リグラインド(又はリサイクル材料)を水に浮くようにすることが望ましい。
【0098】
実施例1F~7F
表5に記載の配合物が、二軸スクリュー配合機(直径25mm、長さ対直径比又はL/Dは35)を使用して210℃の溶融温度で配合された。配合ペレットが240℃で射出成形されて、引張試験(ASTM D638)及びノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ASTM D256)用のASTM標準バーに成形された。表4に記載の結果は、曲げ弾性率が幾分低下するが、ノッチ付きアイゾッドが有意に向上することを示している。
【0099】
【0100】
実施例1G~7G
表6の通り異なる量のSBC添加剤及び異なるPCR HDPEを用いたことを除いては、上記実施例が繰り返される。ここでも、結果は、曲げ弾性率が幾分低下するが、ノッチ付きアイゾッドが有意に向上することを示している。
【0101】
【0102】
実施例1H~7H
表7の配合物によりPCR PP2が用いられ、若干、配合溶融温度が230℃であることを除いては上記実施例が繰り返される。ここでも、結果は、曲げ弾性率が幾分低下するものの、ノッチ付きアイゾッドが有意に向上することを示している。
【0103】
【0104】
実施例1I~5I
約49重量%のPET、21重量%のPP、30重量%のc-SBR(Synthomer1319)及び4.1重量%の充填剤(チョーク)を含むカーペット屑材料が、表8に記載の組成を有するブレンドに使用された。プレブレンドがドライブレンダーGunter Papermeierで調製され、最大速度で3分間混合され、130℃で終夜乾燥された。25mmの二軸スクリュー押出機を使用して235~260℃の範囲で溶融ブレンドが実施されて糸状になり、次いで粒状化された。コンパウンドは130℃で真空乾燥され、260℃で圧縮成形されて、乾燥バーとしての試験用の4mmのプレートに成形された。メルトフローレートの測定前に試料が130℃で終夜乾燥された。
【0105】
圧入ショアD硬度がASTM D2240に従って測定された。曲げ特性がASTM D790に従って測定された。ノッチなしアイゾッド衝撃試験がASTM D256に従って、1つのジュールハンマーを使用して行われた。ISO 75の方法Aに従ってブレンドの熱変形温度(HDT)を測定するため、1.8N/mm2の繊維応力が用いられた。メルトフローレート(MFR)がISO 1133に従って、2.16kgの荷重で試験された。
【0106】
これらの実施例はSBC1、即ち官能化スチレンブロックコポリマーを使用して行われた。非官能化SBC(例えばSBC2)でも同様の結果が得られると予想される。
【0107】
【0108】
本明細書及び添付の請求項の目的上、別段に示される場合を除き、本明細書及び請求項において用いられている数量、百分率又は割合を表わす数及び他の数値は全て、あらゆる場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。相応に、特に逆の記載がない限り、以下の明細書及び添付の請求項に記載の数値パラメーターは、得ようとされている望ましい特性に応じて変動し得る近似値である。本明細書及び添付の請求項に用いられているように、単数形の「1つの」(a、an)及び「その」(the)は、1つの指示対象に明示的かつ明確に限定される場合を除き、複数形の言及を含むことに留意されたい。本明細書に用いられている用語「含む」(include)及びその文法上の変形は、リスト内の項目の引用が、列挙されている項目に対して代替又は追加され得る他の同様の項目の除外につながらないよう、非限定的となることを意図するものである。本明細書に用いられている用語「含む」(comprising)は、その用語に付帯して特定される要素又は工程を包含することを意味するが、かかる要素又は工程は排他的でなく、1つの実施形態が他の要素又は工程を含み得ることを意味する。用語「含む」(comprising及びincluding)は本明細書において様々な態様の記述に用いられているが、本開示のより特異的な態様を提供するために、用語「本質的に~からなる」(consisting essentially of)及び「~からなる」(consisting of)を「含む」に代わり使用することができ、それらも開示される。
【0109】
別段に指定される場合を除き、元素、材料又は他の成分からなる属を列挙し、そこから個別の成分又は成分の混合物が選択され得る場合、これは列挙された成分及びそれらの混合物について可能なあらゆる亜属の組み合せを含むことを意図するものである。
【0110】
特許可能な範囲は請求項によって定義され、当業者に対して発生する他の例を含み得る。かかる他の例は、請求項の文字どおりの言語と異ならない構造的要素を有する場合又は請求項の文字どおりの言語との差異がごくわずかである同等の構造的要素を有する場合、請求項の範囲に含まれることを意図するものである。本明細書との不整合がない限り、本明細書における引用は全て、参照により本明細書に組み込む。