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  • 特開-遊戯用鋼球及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175626
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】遊戯用鋼球及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/40 20060101AFI20221117BHJP
   C09D 183/16 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20221117BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20221117BHJP
   A63B 45/00 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221117BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A63F7/40
C09D183/16
C09D1/00
C09D5/16
A63B45/00 Z
B05D7/14 P
B05D7/00 K
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082208
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】513260959
【氏名又は名称】株式会社G-POWER
(71)【出願人】
【識別番号】519379329
【氏名又は名称】株式会社G-POWER Earth
(71)【出願人】
【識別番号】514227759
【氏名又は名称】株式会社応援団
(71)【出願人】
【識別番号】521208505
【氏名又は名称】KYORAKU AMAZE MAGICS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】金山 智富
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075BB21X
4D075BB26Z
4D075BB65X
4D075BB68X
4D075BB69X
4D075BB79X
4D075CA02
4D075CA34
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB04
4D075CB06
4D075DA10
4D075DB02
4D075DC38
4D075EA06
4D075EB42
4D075EC05
4D075EC10
4D075EC30
4J038DL171
4J038KA06
4J038NA01
4J038NA05
4J038PB14
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】表面に、鉛筆硬度6以上の硬質シリカガラスを備え、優れた透明性の光沢を有し、汚れも付きにくく、洗浄も容易な硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球を提供する
【解決手段】遊戯用鋼球、例えばパチンコの表面にポリシラザン等のシリカガラス前駆体を塗布し、転化して硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球を製造する。
硬質シリカガラス層が硬質微小粒体又は光触媒あるいは硬質微小粒体及び光触媒を含むものであってもよい。
硬質シリカガラス層の硬度は鉛筆硬度で6H以上である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカガラス前駆体を転化して得られた硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
【請求項2】
シリカガラス前駆体のポリシラザンを転化して得られた硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
【請求項3】
硬質シリカガラス層が硬質微小粒体又は光触媒あるいは硬質微小粒体及び光触媒を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
【請求項4】
硬質シリカガラス層の硬度が鉛筆硬度で6H以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
【請求項5】
遊戯用鋼球の表面に、シリカガラス前駆体を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
【請求項6】
遊戯用鋼球の表面に、ポリシラザンと有機溶媒と水を含む混合物を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
【請求項7】
遊戯用鋼球の表面に、(1)ポリシラザンと(2)有機溶媒と(3)水と(4)硬質微小粒体又は光触媒あるいは硬質微小粒体及び光触媒を含む混合物を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ、スリングショット、スマトボール等に使用される遊戯用鋼球に関し、特に汚染及び腐食が少なく、優れた光沢を有する遊戯用鋼球及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊戯用鋼球であるパチンコ玉は直径11mm程度の鉄製のもので、素材としては軟鉄に浸炭・焼入れしたものやオーステナイト系ステンレスがある。
パチンコ玉は使用中に汚れが付き易く、その洗浄も容易でない。
そして、その表面は腐食防止や美観形成等のため、チタン、クロム、ニッケル、陽極酸化アルミニウム等の各種被膜でコーティングされたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-154359号公報
【特許文献2】特開平8-57147号公報
【特許文献3】特開平10-118329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来はパチンコ玉を、アルコール、エーテル、トリクレン、フェノール、ベンゼン等を溶剤として用いた洗浄液で洗浄していたが、異臭、悪臭を放つとともに、揮発性を有するので、取り扱いに注意を要し、また洗浄液の廃液処理を容易に行えなかった。
さらに、界面活性剤を含む水で洗浄する方法もあるが、廃液処理が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、異臭、悪臭,洗浄液の取扱い廃液処理の問題を解消し、かつ光沢の優れたパチンコ玉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の遊戯用鋼球及びその製造方法である。
〔1〕シリカガラス前駆体を転化して得られた硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
〔2〕シリカガラス前駆体のポリシラザンを転化して得られた硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
〔3〕硬質シリカガラス層が硬質微小粒体又は光触媒あるいは硬質微小粒体及び光触媒を含むものであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
〔4〕硬質シリカガラス層の硬度が鉛筆硬度で6H以上であることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球。
〔5〕遊戯用鋼球の表面に、シリカガラス前駆体を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
〔6〕遊戯用鋼球の表面に、ポリシラザンと有機溶媒と水を含む混合物を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
〔7〕遊戯用鋼球の表面に、(1)ポリシラザンと(2)有機溶媒と(3)水と(4)硬質微小粒体又は光触媒あるいは硬質微小粒体及び光触媒を含む混合物を塗布し、転化させ硬化させて硬質シリカガラス層を形成させることを特徴とする硬質シリカガラス層でコーティングされた遊戯用鋼球の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉛筆硬度6以上の硬質シリカガラスを備え、優れた透明性の光沢を有する美麗で、かつ汚れも付きにくく、洗浄も容易な遊戯用鋼球を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の硬質シリカガラス層でコーティングされたパチンコ玉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態について説明する。
まず図1は本発明の硬質シリカガラスガラス層でコーティングされたパチンコ玉の断面図であり、1は鋼球、2は硬質シリカガラスコーティング層、3は硬質シリカガラス層でコーティングされたパチンコ玉である。
本発明に掛かる遊戯用鋼球としては、主にパチンコ玉が挙げられ、その素材としては軟鉄に浸炭・焼入れしたものやオーステナイト系ステンレス等が挙げられる。
その鋼球の表面にコーティングされる硬質シリカガラス層は表面に塗布されたシリカガラスの前駆体を転化させて形成される。
シリカガラスの前駆体としては、好ましくはポリシラザンが挙げられるが、その組成は、下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有するものである。
・(SiR12NR3)n- ・・・(1)
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基又はビニル基で示される単位からなる主骨格を有する化合物である。
【0010】
なお、式(1)における(R1、R2、R3)の具体的な組合せの例としては、(R1、R2、R3)が、(メチル基、水素原子、水素原子)、(メチル基、メチル基、水素原子)、(メチル基、メチル基、メチル基)、(メチル基、メチル基、3-(トリエトキシシリル)プロピル基)、(水素原子、メチル基、3-(トリエトキシシリル)プロピル基)等である組合せが挙げられる。
また、R1、R2及びR3のすべてが水素原子である場合を除く構成の有機ポリシラザンの数平均分子量は、好ましくは100~50000、より好ましくは数平均分子量が300~10000である。
上記有機ポリシラザンの例としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシラザン、シクロテトラシラザン及びテトラメチルジシラザンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0011】
さらに、R1、R2及びR3のすべてが水素原子である場合の無機ポリシラザンとしては下記式(2):
・(SiH2NH)n- ・・・(2)
で示される単位からなる主骨格を有する化合物が挙げられる。すなわちパーヒドロポリシラザン(PHPS)が挙げられる。
【0012】
そして、ポリシラザンは水の存在により、下記式(3)で反応してシリカガラス(SiO2)nに転化される。
・(SiH2NH)- +2H2O→ ・(SiO2)- +NH3+2H2 ・・・(3)
【0013】
本発明のコーティング組成物の硬化反応(シリカガラス転化反応)温度は、例えば、約50℃~約200℃で、約1分~約120分間の加熱をすることにより行われる。
また、硬質シリカガラス層には、硬質微小粒体、光触媒又は着色料等を含有させることもできる。
硬質微小粒体としては、セラミックや金属が挙げられ、セラミックとしてはアルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。
金属としては、チタン、ステンレススチール、鋼鉄等が挙げられる。
また、清掃作用を発揮するチタン系、銀系、パラジウム、白金系等の光触媒を含ませることもできる。
【0014】
シリカガラスの前駆体であるポリシラザンを転化させて形成されるシリカガラスは、硬質なものであり硬度が鉛筆硬度で6H以上のものとなる。
硬質シリカガラス層の生成に用いられる塗布剤としては、ポリシラザンと有機溶媒と水を含む混合物、あるいはポリシラザンとセラミックや金属の微小粒体と有機溶媒と水との混合物が用いられ、
有機溶媒としては、炭化水素、ケトン、エステル及びエーテル等が挙げられ、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0015】
パチンコ玉の表面に、硬質シリカガラス層を形成させるには、まず上記シリカガラス前駆体のポリシラザンを含む混合物を塗布した後、水と反応させシリカガラスに転化させる。
上記の塗布剤としての混合物をパチンコ玉の表面に塗布する方法は、刷毛塗り法、ディッピング法、スプレー法等の周知の方法で行うことができる。
なお、ポリシラザンのシリカガラスへの転化のための水分の供給方法は、上記混合物に水分を含有させずに、水分のない混合物を塗布した後、塗布物に過熱水蒸気を照射することによって行うことも好ましい。過熱水蒸気を照射することにより、水分の供給と加熱を同時に行って、硬質シリカガラスの生成を促進させることができる。
【実施例0016】
本発明の実施例について説明する。
実施例1;
まず、パチンコ玉を界面活性剤を溶かした水で洗った後、トルエンに煮浸して洗浄した。
次に、洗浄されたパチンコ玉の表面に、メチルエチルケトンと無機ポリシラザンの混合物からなる塗布剤をスプレィした後、100℃の過熱水蒸気を1分間噴射して放置し、パチンコ玉の表面に膜厚5μmの硬質シリカガラス被膜を形成させた。
得られたパチンコ玉は鉛筆硬度6以上の硬質シリカガラスを備え、優れた透明性の光沢を有する美麗なものであった。
また、汚れも付きにくく、洗浄も容易であった。
【0017】
実施例2;
まず、実施例1と同様にしてパチンコ玉を洗浄した。
次に、洗浄されたパチンコ玉の表面に、ジブチルエーテルと無機ポリシラザンとヘキサジメチルジシラザンとの混合物からなる塗布剤をスプレィした後、100℃の過熱水蒸気を2分間噴射して放置し、パチンコ玉の表面に膜厚5μmの硬質シリカガラス被膜を形成させた。
得られたパチンコ玉は鉛筆硬度6以上の硬質シリカガラスを備え、優れた透明性の光沢を有する美麗なもので、汚れも付きにくく、洗浄も容易であった。
【0018】
実施例3;
まず、実施例1と同様にしてパチンコ玉を洗浄した。
次に、洗浄されたパチンコ玉の表面に、ジブチルエーテルと無機ポリシラザンとヘキサジメチルジシラザンとアルキルシランと塩化パラジウム触媒との混合物からなる塗布剤をスプレィした後、100℃の過熱水蒸気を2分間噴射して放置し、パチンコ玉の表面に膜厚8μmの硬質シリカガラス被膜を形成させた。
得られたパチンコ玉は鉛筆硬度7以上の硬質シリカガラスを備え、優れた透明性の光沢を有する美麗なもので、汚れも付きにくく、洗浄も容易であった。
図1