(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175634
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】カード収納具
(51)【国際特許分類】
A45C 11/18 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A45C11/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082227
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】506413694
【氏名又は名称】株式会社クロンティップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 和実
(72)【発明者】
【氏名】福井 正樹
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA00
3B045CE08
3B045CE09
3B045DA31
3B045JA02
3B045JB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カードを複数枚収納することができるカード収納具に関し、カードの収納枚数が増えてもカードをコンパクトに収納することができるとともにカードを簡単に引き出すこともできる。
【解決手段】カードC2~C8の後端からカードC2~C8が差し込まれるスリットが複数設けられ、収納状態では隣合うスリットに差し込まれたカードどうしの少なくとも一部が重なるカード差込部12と、スリットに差し込まれたカードC2~C8の後端を、収納状態から展開状態へ移行させる操作に応じて押し上げる押上部13と、展開状態においてカードC2~C8の後端を押し上げている押上部13の状態を維持させる維持機構(蓋部材32と基部10の下縁部10b)とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの後端から該カードが差し込まれるスリットが複数設けられ、収納状態では隣合う該スリットに差し込まれたカードどうしの少なくとも一部が重なるカード差込部と、
前記スリットに差し込まれたカードの後端を、前記収納状態から展開状態へ移行させる操作に応じて押し上げる押上部と、
前記展開状態においてカードの後端を押し上げている前記押上部の状態を維持させる維持機構とを備えたことを特徴するカード収納具。
【請求項2】
前記カード差込部は、前記展開状態では、奥行き方向に間隔をあけて前記スリットが並べられたものであり、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を、手前方向に操作部を引き寄せる操作に応じて押し上げるものであり、
前記維持機構は、手前方向に引き寄せた前記操作部を固定する機構であることを特徴とする請求項1記載のカード収納具。
【請求項3】
基部と、
前記基部につながり該基部との境部分で折り返されて該基部に重なるフラップ部とを備え、
前記カード差込部、前記押上部および前記操作部は、前記基部側に設けられたものであり、
前記カード差込部よりも手前側にコイン収納部を有し、
前記操作部は、前記コイン収納部の蓋を兼ねたものであり、
前記維持機構は、前記操作部を前記基部の縁部に固定する機構であることを特徴とする請求項2記載のカード収納具。
【請求項4】
前記カード差込部は、奥行き方向に間隔をあけて前記スリットが並べられたものであり、
前記カード差込部よりも手前側にコイン収納部を有し、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を、前記コイン収納部を手前側に倒す操作に応じて押し上げるものであることを特徴とする請求項1記載のカード収納具。
【請求項5】
前記維持機構は、手前側に倒れた前記コイン収納部の一部を固定し、手前側に倒れた姿勢を保持させることで、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を維持させるものであることを特徴とする請求項4記載のカード収納具。
【請求項6】
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を受け止め、手前側と奥側のうちの一方側の端部が固定され他方側の端部が移動可能なガード片を有するものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載のカード収納具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを複数枚収納することができるカード収納具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、クレジットカードやキャッシュカード、あるいはポイントカードなど多数枚のカードを所有することが多く、それに伴いより多くのカードを収納可能なカード収納具が求められている。また、カード収納具は、カードの収納枚数が増えても、できる限りコンパクトであることも求められている。これらの求めに応じて、従来では、複数枚のカードを重ねた状態で収納した二つ折りの閉じた状態から、V字状に開くことで複数枚のカードが持ち上がり、カードを引き出しやすくしようとしたカード収納具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のカード収納具では、カード収納具をV字状に開くには両手を使う必要があり、両手が塞がった状態でカードを引き出さなければならないといった問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、カードの収納枚数が増えてもカードをコンパクトに収納することができるとともにカードを簡単に引き出すこともできるカード収納具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明のカード収納具は、
カードの後端から該カードが差し込まれるスリットが複数設けられ、収納状態では隣合う該スリットに差し込まれたカードどうしの少なくとも一部が重なるカード差込部と、
前記スリットに差し込まれたカードの後端を、前記収納状態から展開状態へ移行させる操作に応じて押し上げる押上部と、
前記展開状態においてカードの後端を押し上げている前記押上部の状態を維持させる維持機構とを備えたことを特徴する。
【0007】
本発明のカード収納具によれば、多数枚のカードを収納可能でありながらも、収納状態では、隣合う前記スリットに差し込まれたカードどうしの少なくとも一部が重なるため、カードの収納枚数が増えてもカードがコンパクトに収納される。また、前記維持機構によって、前記展開状態でカードの後端を押し上げている前記押上部の状態が維持されるため、片手はカード収納具を持つだけですみ、もう一方の手でカードを簡単に引き出すことができる。
【0008】
なお、前記展開状態とは、前記収納状態では厚み方向に重なっていたカードの該厚み方向の間隔が該収納状態よりも広がったカード収納具の状態のことをいい、例えば、隣合うカードどうしの間隔が、後端よりも前端の方が広くなって、前端の間隔に指を入れてカードを引き出しやすくなった状態のことをいう。また、前記展開状態では、カードが前記カード差込部より半分以上突出していることが好ましく、こうすることでカードをより簡単に引き出すことができる。
【0009】
なお、前記維持機構は、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を前記操作からつながった固定操作によって維持させるものであってもよい。
【0010】
また、
前記カード差込部は、前記展開状態では、奥行き方向に間隔をあけて前記スリットが並べられたものであり、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を、手前方向に操作部を引き寄せる操作に応じて押し上げるものであり、
前記維持機構は、手前方向に引き寄せた前記操作部を固定する機構であることを特徴とする第1態様であってもよい。
【0011】
前記操作部が固定されることで、該操作部は操作前の状態に戻ることはなく、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を安定して維持させることができる。
【0012】
また、上記第1態様において、
基部と、
前記基部につながり該基部との境部分で折り返されて該基部に重なるフラップ部とを備え、
前記カード差込部、前記押上部および前記操作部は、前記基部側に設けられたものであり、
前記カード差込部よりも手前側にコイン収納部を有し、
前記操作部は、前記コイン収納部の蓋を兼ねたものであり、
前記維持機構は、前記操作部を前記基部の縁部に固定する機構であることを特徴としてもよい。
【0013】
前記コイン収納部を有することで、上記カード収納具は財布としても機能することになる。また、前記コイン収納部の蓋という財布として使用する場合に通常操作する部分が、前記操作部を兼ねることで操作がわかりやすく、操作性も良好になりやすい。
【0014】
また、
前記カード差込部は、奥行き方向に間隔をあけて前記スリットが並べられたものであり、
前記カード差込部よりも手前側にコイン収納部を有し、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を、前記コイン収納部を手前側に倒す操作に応じて押し上げるものであることを特徴とする第2態様であってもよい。
【0015】
この第2態様のカード収納具であれば、手前側に倒した前記コイン収納部は該コイン収納部に収納されたコインの重みにより手前側に倒れた姿勢を保持することができ、結果としてカードの後端を押し上げている前記押上部の状態が維持される。このため、コインが収納されたコイン収納部が前記維持機構として機能する。すなわち、前記維持機構は、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を前記コイン収納部に収納されたコインの重みにより維持させるものになる。
【0016】
さらに、上記第2態様において、
前記維持機構は、手前側に倒れた前記コイン収納部の一部を固定し、手前側に倒れた姿勢を保持させることで、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を維持させるものであることが好ましい。
【0017】
すなわち、前記維持機構は、手前側に倒した前記コイン収納部の一部を固定する機構である。こうすることで、前記コイン収納部にコインが収納されていなくても、カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を安定して維持させることができる。
【0018】
また、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を受け止め、手前側と奥側のうちの一方側の端部が固定され他方側の端部が移動可能なガード片を有するものであることを特徴としてもよい。
【0019】
例えば、前記ガード片は、手前側の端部が固定され奥側の端部が移動可能なものであってもよい。
【0020】
前記他方側の端部は、案内部材に案内されて移動するものであってもよいし、自由端であってもよい。
【0021】
前記ガード片は、複数の前記スリットそれぞれに差し込まれたカードの後端が他の箇所に挟み込まれたり引っ掛からないように、該後端の動きを規制するものである。例えば、前記ガード片は、最も前記他方側のスリットに差し込まれたカードの端部が、該他方側にズレることを規制するものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカード収納具によれば、カードの収納枚数が増えてもカードをコンパクトに収納することができるとともにカードを簡単に引き出すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のカード収納具の一実施形態に相当する折畳財布を開いた状態を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す折畳財布を閉じた状態を模式的に示した側面図である。
【
図3】一方の手で基部を持ち、もう一方の手で蓋部材を手前側に少し引いた状態を左斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示す状態から蓋部材をさらに手前側に引いた状態を
図3と同じように左斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】(a)は展開状態の折畳財布を、
図3及び
図4と同じように左斜め下方から見た斜視図であり、(b)は蓋部材における下端部を基部の下縁部に下方から嵌め込んだ様子を模式的に拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明のカード収納具の一実施形態に相当する折畳財布を開いた状態を示す平面図であり、
図2は、
図1に示す折畳財布を閉じた状態を模式的に示した側面図である。
【0026】
図1に示す折畳財布1は、基部10とその基部10につながったフラップ部20を備えたものである。フラップ部20は、境部分21とカバー面22を有する。フラップ部20は、境部分21で折り返されてカバー面22が基部10に重なる。この折畳財布1は、フラップ部20を上下方向に開閉するようにして使用する。すなわち、折畳財布1は、縦持ちの状態で使用される。この縦持ちの使用状態では、
図1の紙面手前側が手前側になり、
図1の紙面に対して垂直方向が奥行き方向になる。また、閉じた状態を示す
図2では、図の左右方向が奥行き方向になり、図の左側が手前側(使用者側)になり、右側が奥側になる。この
図2に示す閉じた状態の折畳財布1は、
図2に示す矢印のようにフラップ部20が上方向に向けて開かれる。以下の説明で単に上又は下といった場合には
図1に示す縦持ちの使用状態における上又は下を意味する。
【0027】
基部10には、基部10よりわずかに小さく、
図1では右上隅となる位置に切り欠き11cが設けられた板状の札挟みポケット形成部材11が取り付けられている。札挟みポケット形成部材11は、
図1では左縁と下縁が基部10に固定されており、基部10と札挟みポケット形成部材11との間が札挟みポケットになる。
図2では、この札挟みポケット11Pの厚み(奥行き方向の長さ)を誇張して示してある。使用者は、切り欠き11cに指を引っ掛けて札挟みポケット形成部材11を持ち上げ、札挟みポケット11Pに紙幣の一部を挟み込む。
【0028】
図2に示すように、札挟みポケット形成部材11よりも手前側には、コイン収納部30が配置されている。コイン収納部30は、コインポケット部31と、縦持ちの使用状態で上下方向に開閉する蓋部材32を有する。蓋部材32は、コインポケット部31の奥面31bにつながったものであり、コインポケット部31は、この蓋部材32によって覆われている。
図2ではコインポケット部31が蓋部材32によって覆われている部分は点線で示している。コインポケット部31の開口31aは上端面に設けられており、この開口31aからコインを出し入れする。
図2では、この開口31aは蓋部材32によって覆われている。なお、開口31aを、上端面から下方へ切欠き、開口面積を大きくとった形状に変更してもよい。また、
図2に示すフラップ部20が閉じた状態では、蓋部材32は、下半分が奥側に突出している。
【0029】
札挟みポケット形成部材11とコイン収納部30との間にはカード差込板12が架け渡されている。すなわち、
図2に示すように、カード差込板12の上端部分12uは、奥側の札挟みポケット形成部材11に固定されており、カード差込板12の下端部分12bは、コインポケット部31の奥面31bに固定されている。
図1に2点鎖線で示すように、カード差込板12には複数のスリットS1~S8が設けられている。なお、スリットS1~S6は蓋部材32に覆われて本来であれば見えず、
図1に示す状態では、スリットS7及びスリットS8も両端の一部しか本来であれば見えないが、
図1では各スリットS1~S8を明確化のため仮想的に示している。このように
図1に仮想的に示されたスリットS1~S8は、
図1における左右方向(横方向)に交互にずらして設けられている。すなわち、
図1に示すカード差込板12には、右側に4つの横方向のスリットS1、S3、S5、S7が並べられており、左側にも4つの横方向のスリットS2、S4、S6、S8が並べられている。右側のスリットS1、S3、S5、S7と左側のスリットS2、S4、S6、S8は一部が左右方向に重なっている。クレジットカードやキャッシュカードやポイントカードといった各種のカードをこれらのスリットS1~S8に差し込み、スリットS1~S8に差し込まれたカードは重ねられた状態で収納される。
図1及び
図2では、カードを灰色で示す。
図1には、右側の一番下に配置されているスリットS1に差し込まれたカードC1と、左側の一番下に配置されているスリットS2に差し込まれたカードC2が図示されている。また、カードが重なっていて見えないが、右側のカードC1の奥には3枚のカードが収納されており、左側のカードC2の奥にも3枚のカードが収納されている。すなわち、右側の一番下に配置されているスリットS1に差し込まれたカードC1が最も手前側に位置し、左側の一番下に配置されているスリットS2に差し込まれたカードC2が2番目に手前側に位置している。側面図である
図2には、8枚のカードC1,C2・・・C8が示されている。
図1や
図2に示す折畳財布1は、カードをコンパクトに収納した収納状態である。縦持ちされた折畳財布1では、収納状態にあるカード差込板12は、立った状態であり、誇張して示せば、
図2に示すように下方に向かうにつれて手前側に傾斜したような状態である。
【0030】
また、
図2に示すように、コインポケット部31の奥面31bの下部と札挟みポケット形成部材11は、下部接続部材13によって接続されている。この下部接続部材13は、カード差込板12を延長しカード差込板12と一体になったものであってもよい。コイン収納部30は、カード差込板12と札挟みポケット形成部材11を介して基部10に接続されているとともに、下部接続部材13と札挟みポケット形成部材11を介しても基部10に接続されている。
図2に示すように、収納状態の下部接続部材13は、側方から見ると下方に凸の形状に折れ曲がっている。
【0031】
さらに、
図2に示すように、コインポケット部31の奥面31bの下部には、ガード片14も取り付けられている。このガード片14は、手前側の端部141がコインポケット部31の奥面31bの下部に固定されており、U字状の底部142を形成した後、奥側部分は上方へ向けて延びている。ガード片14の奥側の端部143は自由端になっている。収納状態のガード片14は、スリットS1~S8に差し込まれたカードC1,C2・・・C8の後端を底部142で受け止めている。ガード片14は、下部接続部材13よりも内側(カード側)に位置するものである。
【0032】
また、フラップ部20が閉じた状態を維持することができるよう、コインポケット部31の手前面31f(
図2参照)には雌型ホック31hが取り付けられており、コインポケット部31に被さる蓋部材32には、その雌型ホック31hが露出するように貫通孔32hが設けられている。一方、フラップ部20のカバー面22には、雌型ホック31hに嵌合する雄型ホック22hが取り付けられている。なお、雌型ホック31hと雄型ホック22hの位置関係は逆であってもよいし、ホックに限らず、磁石や面ファスナ等の固定手段であってもよい。
【0033】
以上、カードを厚み方向に重ねて収納した収納状態の折畳財布1について説明した。続いて、折畳財布1を、収納状態から、カードの厚み方向の間隔が収納状態よりも広がった展開状態へ移行する様子について説明する。
【0034】
図3は、一方の手で基部を持ち、もう一方の手で蓋部材を手前側に少し引いた状態を左斜め下方から見た斜視図である。この
図3には、基部10と札挟みポケット形成部材11との間の札挟みポケットに一部が挟み込まれた紙幣Bが示されている(
図4及び
図5においても同じ)。
【0035】
図3では使用者の手は不図示であるが、例えば、左手で基部10を持ち、左手の親指を境部分21の左端に添えることで、カバー面22が
図3のように持ち上がった状態を維持することができる。また、蓋部材32の左側面32Lと右側面32Rを、右手の親指と人差し指でつまんで蓋部材32を手前側に引けばよい。
図3に示すカード差込板12は、手前側に少し移動したコインポケット部の奥面31bに引っ張られ、傾斜角度が大きくなっている。また、
図3には、下部接続部材13とガード片14のそれぞれの一部も示されている。この
図3では、コインポケット部の奥面31bに手前側部分が固定された下部接続部材13が奥側に位置するポケット形成部材11から離れ始めているのがわかる。
【0036】
図4は、
図3に示す状態から蓋部材をさらに手前側に引いた状態を
図3と同じように左斜め下方から見た斜視図である。
【0037】
図4に示すコイン収納部30は、下縁を中心に手前側へ倒れ込むように回動しており、コイン収納部30は、基部10に対して90度近くまで開いた状態にある。また、これまで傾斜姿勢であったカード差込板12は、上方に凸になるように湾曲し始めており、コインポケット部の奥面31bに固定されていた下端部分12bは大きく持ち上げられている。さらに、
図4にも、下部接続部材13とガード片14のそれぞれの一部も示されている。この
図4では、それまで下方に凸の形状に折れ曲がっていた下部接続部材13が直線上に延びている。また、ガード片14も、コインポケット部の奥面31bに固定されていた手前側の端部が大きく持ち上げられており、
図4に示すガード片14は、下方に凸になるように湾曲している。
図4には、カード差込板12の左側のスリットS2、S4、S6、S8に差し込まれたカードC2、C4、C6、C8は図示されているが、右側のスリットに差し込まれた
図1に示すカードC1や、その奥側のカードC3、C5、C7(
図5参照)は図示されていない。
図4に示す状態では、いずれのカードC1~C8の下端もガード片14に受け止められており、さらに、そのガード片14は、直線上に延びた下部接続部材13に下方から支えられている。この
図4に示す状態では、各カードC1~C8の後端は、ガード片14を介して下部接続部材13によって押し上げ始められている。カード後端が下部接続部材13によって押し上げ始められると、隣合うカードどうしの間隔が、後端よりも前端の方が広くなり始める。
【0038】
図5(a)は、展開状態の折畳財布を、
図3及び
図4と同じように左斜め下方から見た斜視図である。
【0039】
図4に示すようにコイン収納部30が基部10に対して90度近くまで開いた状態であると、蓋部材32を持った手を離すことで折畳財布1は収納状態へ戻ってしまう。本実施形態の折畳財布1では、基部10に対して90度近くまで開いた状態のコイン収納部30を、蓋部材32を持って下方へ引き下げるように操作する。すると、直線上に延びていた下部接続部材13の、コインポケット部31の奥面31bに固定されていた部分の近傍部分13mが、上方に凸の形状に折れ曲がる。
図5では、右側のスリットに差し込まれた
図1に示すカードC1は見えていないが、それ以外の7枚のカードC2~C8は図示されている。各カードC1~C8の後端は、ガード片14を介して、近傍部分13mが上方に凸の形状に折れ曲がった下部接続部材13によってさらに押し上げられ、隣合うカードどうしの前端の間隔Wがより広がる。また、各カードC1~C8は下部接続部材13によってさらに押し上げられたことで、カード差込板12より半分以上が突出している。
図5(a)に示す、下部接続部材13の近傍部分13mが上方に凸の形状に折れ曲がった折畳財布1は展開状態である。下部接続部材13は、蓋部材32の操作に応じてカード後端を押し上げる押上部の一例に相当する。なお、ガード片14も、蓋部材32の操作に応じてカード後端を押し上げる押上部の一例に相当するものと見ることもできる。
【0040】
そして、下方へ引き下げた蓋部材32における下端部32b(
図4参照)を基部10の下縁部に下方から嵌め込み、蓋部材32を基部10に係止する。
【0041】
図5(b)は、蓋部材における下端部を基部の下縁部に下方から嵌め込んだ様子を模式的に拡大して示す図である。
【0042】
下方へ引き下げた蓋部材32を、奥側の基部10に向けて
図5(b)に示す矢印のように回動させる。蓋部材32は水平状態になり、それまで下端部32bであった部分が、基部10の下縁部10bに下方から嵌め込まれ、蓋部材32が基部10の下縁部10bに固定される。この結果、水平状態の蓋部材32の姿勢が保持され、近傍部分13mが上方に凸の形状に折れ曲がった下部接続部材13の状態が維持されるようになり、折畳財布1の展開状態も維持されるようになる。蓋部材32と基部10の下縁部10bが維持機構の一例に相当する。なお、折畳財布1の展開状態を維持する維持機構としては、蓋部材32を基部10にホックによって固定したり、磁石や面ファスナ等の固定手段によって固定する態様であってもよい。
【0043】
なお、水平状態になった蓋部材32は机等の平らな場所に載置することができ、展開状態の折畳財布1を立たせておくこともできる。
【0044】
続いて、ガード片14の機能について説明する。
【0045】
図5(a)に示すガード片14の奥側の端部143は自由端であることから、ポケット形成部材11に沿って上方に移動しており、カード差込板12の、ポケット形成部材11に固定された上端部分12uに当接している。このように、ガード片14の奥側の端部143が移動可能であることにより、下部接続部材13における、下方に凸の形状に折れ曲がった状態から直線状態を経て上方に凸の形状に折れ曲がるといった動きが、可能になり、またその動きがスムーズに行われるようになる。
【0046】
ここで、仮にガード片14が無かった場合、カード差込板12に差し込まれたカードC1~C8の後端は、下部接続部材13に受け止められることになり、上方に凸の形状に折れ曲がった近傍部分13mに沿って奥側へズリ落ちてしまい(
図5(a)において2点鎖線で示した矢印参照)、カードC1~C8の後端が、札挟みポケット形成部材11と下部接続部材13の下端部分との間に挟み込まれて、カードを引き出すことが困難になる可能性がある。ガード片14は、このようなカード後端のズリ落ちを防止するためのものであり、カード後端の動きを規制するものになる。
【0047】
なお、ガード片14の奥側の端部143が、ポケット形成部材11に沿って上方により安定的に移動可能にするには、ガード片14の奥側の端部143をポケット形成部材11から離れないようにしながらも、ポケット形成部材11に沿って上下動可能なようにすることが好ましい。例えば、ポケット形成部材11に、ガード片14の奥側の端部143を上下方向に案内する案内溝を設け、その端部143を案内溝内に移動自在に嵌め込んでおくようにすればよい。また、ガード片14は、奥側の端部143がポケット形成部材11に固定され、手前側の端部が、下部接続部材13にそって移動するものであってもよい。
【0048】
以上、
図3~
図5を用いて説明した操作では、使用者は、親指を境部分21の左端に添えた左手を動かす必要はなく、蓋部材32を右手一本で操作すればよく、蓋部材32を基部10に係止する操作も簡単に行うことができる。また、蓋部材32を基部10に係止してしまえば、右手は自由になり、この右手でカードを簡単に引き出すことができる。しかも、展開状態に維持されている折畳財布1では、カード差込板12より各カードC1~C8が半分以上突出しており、隣合うカードどうしの前端の間隔Wも広く、この間隔Wに右手の指を入れて、カードを容易に引き出すことができる。
【0049】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上述の実施の形態では、蓋部材32と基部10の下縁部10bが維持機構の一例に相当していたが、コインが収納されたコイン収納部30が維持機構として機能する場合もある。すなわち、コインポケット部31にコインが沢山収納されていればいるほど、コイン収納部30は重くなり、コイン収納部30が基部10に対して90度を超えた状態まで開いていれば、近傍部分13mが上方に凸の形状に折れ曲がった下部接続部材13の状態がコイン収納部30の重みにより維持されるようになり、折畳財布1の展開状態も維持されるようになる。
【0050】
最後に、これまで説明したことを含めて以下に付記する。
【0051】
(付記1)
カードの後端から該カードが差し込まれるスリットが複数設けられたカード差込部と、
前記スリットに差し込まれたカードの後端を操作に応じて押し上げる押上部とを備え、
前記カード差込部は、奥行き方向に前記スリットが並べられたものであり、
前記押上部は、前記スリットに差し込まれたカードの後端を、手前方向に操作部を引き寄せる操作に応じて押し上げるものであって、該スリットに差し込まれたカードの後端を受け止めるガード片を有するものであり、
前記ガード片は、手前側と奥側のうちの一方側の端部が固定され他方側の端部が移動可能なものであることを特徴するカード収納具。
【0052】
(付記2)
カードの後端を押し上げている前記押上部の状態を維持させる維持機構を備えたことを特徴する付記1記載のカード収納具。
【符号の説明】
【0053】
1 折畳財布
10 基部
11 ポケット形成部材
11P ポケット
12 カード差込板
S1~S8 スリット
13 下部接続部材
14 ガード片
20 フラップ部
21 境部分
22 カバー面
30 コイン収納部
31 コインポケット部
31a 開口
32 蓋部材
B 紙幣