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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175645
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20221117BHJP
   G09F 3/10 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
G09F3/02 A
G09F3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021082253
(22)【出願日】2021-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】厚東 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏祐
(72)【発明者】
【氏名】小東 剛
(72)【発明者】
【氏名】花谷 俊和
(57)【要約】
【課題】耐熱性の低いポリエチレンからなる基材を用い、白色又は乳白色の不透明な基材を用いた場合であっても、耐熱性を向上させてシワやカールの発生を抑制する材料とフィルムとの密着性を向上させたロールラベルを得ることを目的とする。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂からなる基材層の一方の面に、ニトロセルロースを含むコート層が形成され、コート層には、基材層との密着性を向上させるための密着性向上剤を、ニトロセルロースに対して0.5重量%以上15重量%以下含有させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂からなる基材層の一方の面に、ニトロセルロースを含むコート層が形成され、
前記コート層には、前記基材層との密着性を向上させるための密着性向上剤を、ニトロセルロースに対して0.5重量%以上15重量%以下含有させたラベル。
【請求項2】
前記密着性向上剤は、ポリスチレン系重合体及び脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
前記コート層のコート量は、固形分で0.2g/m以上7.0g/m以下である請求項1又は2に記載のラベル。
【請求項4】
前記基材層の表面粗さ(Sa)が0.3μm以上1.0μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリエチレンを基材層として用いるロールラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料等のボトルには、内容表示や加飾の目的で各種のラベルが装着される。このラベルとしては、収縮させてボトルに密着させるシュリンクラベルや、ロール状に形成し、ボトルに巻き付けながら所定長さで切断し、かつ、ホットメルト接着剤でボトルに固定するロールラベルが知られている。
ところで、ラベルの基材として、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムからなるロールラベルが知られている。これは、装着対象のボトルに柔軟性があっても、その柔軟性に追随し得るという特徴を有する(特許文献1)。
また、ラベルとして、基材に透明でなく、白色又は乳白色の不透明なフィルムを用いると、遮光性、隠蔽性、美粧性を向上させることができることが知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-037593号公報
【特許文献2】WO2004/094139号パンフレット
【特許文献3】特開平06-102826号公報
【特許文献4】特開2012-177903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、飲料用ボトルにロールラベルを巻き付ける場合、汎用的にホットメルト接着剤が使用される。
ラベルの基材として、ポリエチレンフィルム等の耐熱性が低いフィルムを用いる場合、ホットメルト接着剤を塗布する際、熱溶融したホットメルト接着剤が高温であるため、塗布部にシワやカールが生じてしまうことが多い。
【0005】
このカール等の発生を抑制するため、シュリンクラベルに対して、ラベルの外面にニトロセルロース系塗剤を塗工し、熱収縮時に発生するカールを抑制する方法が開示されている(特許文献4)。
【0006】
ラベル基材に前記の白色又は乳白色の不透明なフィルムを用いる場合、このフィルムには、無機物が添加されている場合が多い。それにより、表面に微細な凹凸が生じるため、コーティングやラミネートなどの加工を施す際に、それらの材料とフィルムとの密着性が低下する傾向がある。このため、使用できる材料が限定されることとなる。
【0007】
そこで、この発明では、耐熱性の低いポリエチレンからなる基材を用い、白色又は乳白色の不透明な基材を用いた場合であっても、耐熱性を向上させてシワやカールの発生を抑制する材料とフィルムとの密着性を向上させたロールラベルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ポリエチレンからなる基材層の一方の面に所定のコート層を形成することにより、前記の課題を解決したものであり、その要旨は、下記の[1]~[4]に存する。
【0009】
[1]ポリエチレン系樹脂からなる基材層の一方の面に、ニトロセルロースを含むコート層が形成され、前記コート層には、前記基材層との密着性を向上させるための密着性向上剤を、ニトロセルロースに対して0.5重量%以上15重量%以下含有させたラベル。
[2]前記密着性向上剤は、ポリスチレン系重合体及び脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種である[1]に記載のラベル。
【0010】
[3]前記コート層のコート量は、固形分で0.2g/m以上7.0g/m以下である[1]又は[2]に記載のラベル。
[4]前記基材層の表面粗さ(Sa)が0.3μm以上1.0μm以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載のラベル。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るラベルは、ニトロセルロースを含むコート層が形成され、このコート層に密着性向上剤を含有させるので、ラベル基材として、耐熱性の低いポリエチレンを用いても、さらにその基材が白色又は乳白色の不透明な場合でも、耐熱性を向上させてシワやカールの発生を抑制し、基材とコート層の密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明について説明する。
本願発明は、ポリエチレン系樹脂からなる基材層の一方の面に所定のコート層が形成されたラベルについての発明である。
【0013】
<基材層>
前記基材層としては、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムやシート等のフィルム状材があげられる。ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレンホモポリマーや、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン系共重合体があげられる。このエチレン系共重合体のエチレンの含有率は、特に限定されないが、柔軟性を発揮させる目的がある場合は、50重量%以上が好ましい。
【0014】
この基材層として、透明性の低い、若しくは不透明、具体的には、半透明や、白色、乳白色のフィルム状材を用いることができる。このフィルム状材には、無機物等が一般に添加されているため、その表面に微細な凹凸が生じる傾向がある。
前記無機物としては、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン等があげられる。
【0015】
この基材層の透明性の程度は、基材層の表面粗さと密接に関連する。この表面粗さとしては、三次元表面性状(面粗さ)を表す指標で、基準領域における各測定点の平均面からの高さの差を示す算術平均高さ(Sa)を用いることができる。
この基材層の表面粗さ(Sa)は、1.0μm以下がよく、0.8μm以下が好ましい。1.0μmより大きいと、本願発明を用いても、基材層とコート層との十分な密着性が得られない場合がある。また、0.3μm以上がよく、0.4μm以上が好ましい。0.3μmより小さくてもよいが、本願発明を用いなくても基材層とコート層との密着性が良好となる傾向があり、本願発明の効果を明確に発揮させるには、0.3μm以上が好ましい。
【0016】
この基材層の厚みは、10~80μmが好ましく、さらに好ましくは30~50μmである。厚みが10μmより小さいと、ラベルとしての強度が不十分となる。80μmより大きいと、ボトルへ装着する際の取扱いが困難になる上に、コスト的に不利になる。
この基材は、公知の方法によりフィルム状又はシート状に成形される。例えば、基材層の構成樹脂を加熱溶融し、Tダイ、サーキュラーダイ等で連続的に押し出してから冷却する方法があげられる。
【0017】
<コート層>
前記コート層は、前記基材層が熱を受けたときにシワやカールが生じるのを防止するために配される層であり、主樹脂としてニトロセルロースを含む層である。
前記基材層は、表面粗さ(Sa)が大きい場合、コート層が基材層と密着しにくくなることがあるため、前記コート層には、基材層との密着性を向上させるための密着性向上剤が含有される。
【0018】
この密着性向上剤としては、ポリスチレン系重合体や、酸アミド化合物等から選ばれる少なくとも1種があげられる。前記ポリスチレン系重合体としては、スチレンのホモポリマーであるポリスチレンや、スチレン-アクリル共重合体等のスチレンと他のモノマーとの共重合体があげられる。
【0019】
前記モノマーとしては、アクリル系単量体、ビニルエステル類等があげられる。
前記アクリル系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-へキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸等があげられる。前記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル等があげられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0020】
前記ポリスチレン系重合体の数平均分子量は、50,000~400,000が好ましく、100,000~300,000がより好ましい。数平均分子量がこの範囲内にあると、密着性向上剤としての効果を十分に発揮することができる。
【0021】
前記酸アミドとしては、脂肪酸アミド等のカルボン酸アミドがあげられる。この脂肪酸アミドの例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等があげられる。
【0022】
前記密着性向上剤の前記コート層に含有されるニトロセルロースに対する含有割合(=添加量)は、0.5重量%以上がよく、1重量%以上が好ましい。0.5重量%より少ないと、基材層と前記コート層との密着性が低下するおそれがある。また、15重量%以下がよく、10重量%以下が好ましい。15重量%より多いと、熱を受けたときにシワやカールが生じやすくなるという問題点が生じるおそれがある。
【0023】
<コート層のコーティング>
この発明に係るラベルは、前記コート層を前記基材層にコーティングすることにより製造することができる。具体的には、コート層を構成する成分を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、得られたコート層液を基材層にコーティングし、次いで、乾燥して溶剤を揮発させることにより製造することができる。
前記コート層に加える溶剤の量は、前記コート層液を前記基材層にコーティングが可能となる程度の量が好ましい。また、コーティング方法としては特に限定されないが、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等があげられる。
このコート層の前記基材層へのコート量は、固形分で、0.2g/m以上がよく、0.5g/m以上が好ましい。0.2g/mより少ないと、熱が加わったとき、基材にシワやカールが生じるおそれがある。また、7.0g/m以下がよく、5.0g/m以下が好ましい。7.0g/mより多いと、コーティングが困難になる上に、それ以上のコート量としても効果が向上しないので無駄になるという問題点が生じるおそれがある。
【0024】
<ラベル>
この発明にかかるラベルは、次の方法で製造することができる。
まず、前記基材層の一方の面に前記コート層液をコーティングし、次いで、乾燥して溶剤を揮発させる。これにより、基材層の一面にコート層を形成させることができる。
次いで、コート層が形成されていない側の基材層の面に印刷層を設ける。この印刷層は、内容表示や加飾の目的で、ラベルを装着するボトルに入れる製品の説明や、購買者に購買意欲を促進させるための意匠を形成するための層である。この印刷層のうち、容器の中身に合わせた意匠や内容を表示する部分(以後、「印刷柄」と称する場合がある。)は、各色の顔料や染料を含有するインキを用いて形成される。
この印刷層に用いるインキは特に限定されるものではなく、一般のインキを使用できる。このような印刷層を形成させる方法としては、グラビア印刷機やフレキソ印刷機を用いて印刷する方法がある。なお、前記印刷層のうち、印刷柄以外の部分は、無印刷の部分となる。
【0025】
前記印刷層としてラベル全面に単色印刷を施す場合と比べ、前記基材層に半透明や、白色、乳白色のフィルム状材を用いると、印刷工程が一部簡略化できる上に、コストも低減できる。
【0026】
<本発明に係るラベルのボトルへの装着>
得られるラベルは、ロールラベルであり、ホットメルト接着剤により、ボトルに装着される。
具体的には、ロール状のラベルをボトル1本分の側壁部全周の長さに合わせて切断し、その裏面の始端部と終端部となる位置にホットメルト接着剤を溶融貼着させて、始端部をボトル側壁部に貼り付ける。次いで、ラベルをボトルの側壁部に巻き付け、そのラベルの始端部の上に、終端部を貼り付ける。これにより、ラベルを、ボトル側壁部を覆うように装着することができる。
【実施例0027】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
まず、本実施例又は本比較例で使用した原材料及び評価方法を示す。
【0028】
<原材料>
[基材層]
・高密度ポリエチレンフィルム…船場化成(株)製:ニュースーパーパワーパック、酸化チタン含有、乳白色、厚み:40μm、表面粗さ(Sa):0.5μm、以下「HDPE」と称する。
・炭酸カルシウム含有フィルム…TBM社製:LIMEX(登録商標)、厚み:25μm、以下「LIMEX」と称する。
・デンプン含有フィルム…(株)コバヤシ製:ピリール(登録商標)、厚み:40μm、以下「ピリール」と称する。
【0029】
[コート層]
[主樹脂]
・ニトロセルロース…サカタインクス(株)製:XGS-4510 OPニス 改2、印刷用ニス、以下「CN」と称する。
[密着性向上剤]
・ポリスチレン…キシダ化学製:試薬、化学用、重合度:2400、以下「PS」と称する。
・スチレン-アクリル共重合体…星光PMC(株)製:PE-1304、以下「PSA」と称する。
・エルカ酸アミド…東京化成工業(株)製:試薬、純度:>85%、以下「EA」と称する。
・ポリアクリル酸…星光PMC(株)製:JE-1056、以下「PA」と称する。
・ポリウレタン…荒川化学(株)製:ユリアーノ3262、以下「PU」と称する。
【0030】
<評価方法>
[表面粗さ(Sa)]
測定器として、レーザー顕微鏡(オリンパス(株)製、「LEXT OLS5000」)を用い、ISO25178に従って測定した。
【0031】
[コート層密着性(セロピック試験)]
各実施例又は比較例の試験片(300mm×250mm)のコート層が表面になるように、450mm×300mmのガラス板にテープで固定し、コート面に24mm巾のセロテープ(ニチバン(株)、製品名:CT405AP-24)を貼付した直後、ガラス板と垂直方向に剥がした際のコート層剥がれを目視にて評価した。評価基準、採点、評価は下記に示すとおりである。なお、コート層密着性の評価は、3点以上が好ましく、より好ましくは4点以上である。この一連の動作を3回繰り返し、平均の採点を算出し、コート層密着性の指標とした。
・1…大きな面状のコート層剥がれがある。
・2…点状のコート層剥がれがある。
・3…小さな点状のコート層剥がれがある。
・4…わずかなコート層剥がれがある。
・5…コート層剥がれなし。
【0032】
[加熱後の外観]
各実施例又は比較例の試験片を70mm×50mmにカットし、試験片の端部から5mm離れた位置でヒートシーラー(テスター産業(株)、製品名:TP-701-B ヒートシールテスター、シール巾:10mm、圧力:1kgf、加熱温度:130℃、加熱時間:0.1秒)によりコート層を加熱し、加熱後の外観を目視にて評価した。評価基準、採点、評価は下記に示すとおりである。なお、加熱後の外観の評価は、3点以上が好ましく、より好ましくは4点以上である。この一連の動作を3回繰り返し、平均の採点を算出し、加熱後の外観の指標とした。
・1…溶断、または著しいカールや熱収縮がみられる。
・2…部分的に大きなカールや熱収縮がみられる。
・3…部分的に小さなカールや熱収縮がみられる。
・4…わずかなカールや熱収縮がみられる。
・5…カールや熱収縮がみられない。
【0033】
(実施例1~17、比較例1~9)
表1に記載の密着性向上剤をテトラヒドロフランで50質量%になるように希釈し、80℃に加熱しながら攪拌して完全に溶解させた。
次いで、このテトラヒドロフランに溶解させた密着性向上剤と表1に記載のニトロセルロース系の主樹脂を混合し、酢酸エチルで全固形分の濃度が20質量%になるように希釈した後、表1に記載のフィルム基材(大きさ:300mm×250mm)の表面に表1に記載の着量となるようにバーコーターでコーティングした。
そして、100℃で1分間、熱風乾燥機で乾燥し、コート層が形成されたラベルを作製した。これを試験片として、前記の各試験を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】